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8月18日でカードワース20周年!

2018.08.04(07:01) 473

 管理人のY2つです。

 来る2018年8月18日はカードワース20周年ですね。
 もう半月をきりました。

 始まった時も、記念日も、末8が3つで「末広がり参る」…なんて縁起がいい!
 世紀を超えて、ってフリーゲームはなかなかないんじゃないかなと。

 私も20周年企画は一応考えているのですが、8月は繁忙期であまり活動できません。
 完成品の発表というより製作開始報告になるかなぁ。
 本業の関係から、お盆過ぎまで低速になってるかと思いますが、悪しからず御了承下さい。

 皆さんは盛り上がってるイベント、是非楽しんでくださいね。
 
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Y字の交差路


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◆CWリプレイ:PyDSガイド◆

2018.07.29(08:07) 409

 2018年7月29ページ日 更新しました~

 現在カードワースのリプレイ再録をしています。
 この記事は目次代わりであり、旧リプレイより読みやすくなっています。

 更新の日付が変わっている時は、たいてい再録されたリプレイがアップされているので、「この記事が最新のまま変わらないよ」ってときも、よろしければ確認をしてみて下さい。
 知らないうちに話数が増えていたりするかも?


 旧宿データが吹っ飛んでしまい、前回のリプレイから相当年月が経っているため、思い切って様々な要素を詰め込んだリプレイ再録と相成りました。

 使用エンジンはカードワースPy Reboot。
 せっかくカードワースダッシュのスキンを作って紹介したので、そのStandardスキンを使うこととします。

 再録にあたり、Standardで宿を作りPCを作成し直しました。
 若干能力値が上がったり下がったりですが、大きく変わった感じはありません。
 Standardは標準の才能型がもう少し能力的に緩やかで、生命力の極端な低下を避けていて、子供の身体能力が抑えられている程度なので、特殊型ばかりの風を纏う者たちはあんまり影響がないです。

 せっかくなので別パーティも作成し、将来的にリプレイ2のオルフたちも作り直して第5パーティとして合流させようかなと。
 第2パーティの煌く炎たちは、元傭兵のマルス、すれっからしの女火精使いゼナ、高飛車尼僧レシール、燻し銀老魔術師カロック、野暮ったい盗賊ジェフの5人組。クロスの関係でリプレイできないシナリオや絶版になってリプレイに出せない古いシナリオなどをプレイして、アイテムのトレードなどで補助的な役割を果たす予定です。

 第3パーティ華麗なる花々は外伝に登場した年増姫こと白の妖精姫アルフリーデ様をリーダーにリプレイ2で登場したグウェンドリンとレベッカの盗賊仲間エメリーを加えた女性オンリーパーティ。予定では連れ込みのジゼルとシアをこっちに。最後枠は秀麗で女性なら何でもOKっぽい…(このパーティの特徴が女性で秀麗持ち)

 第4パーティは魔道具バザーのラファーガとアナベル、白弓の射手からリノウ、こびとのなくしたものからラディーという連れ込み混成の後輩パーティの予定。あと2枠は新人連れ込みキャラで適当なのを。

 第5パーティはオルフ、エルナ、フィリ、バッツ、コール、ニルダのリプレイ2メンバー予定。ある程度本編が書きあがったら入れて行きます。

 予備戦力としてサキュバスシリーズのアンジュ、銀斧のジハードからオロフ。そのうち人外の中堅レベル連れ込みキャラが増えたら第6立ち上げようかなぁ。この2人は本業が別です。(アンジュはささやかな宝の店員さん、オロフは宿専属の修理屋さん)

 こうやって連れ込みキャラ見てみると…専業僧侶少ないですね。


 この記事は単独カテゴリにして、記事へのリンクを張り、目次代わりになっています。
 ブログ記事は読み難いと思うので、どうぞ活用して下さい。

目次

・序章 パーティ結成(PC紹介)

PC1:シグルト
PC2:レベッカ
PC3:ロマン
PC4:ラムーナ
PC5:スピッキオ

・第一章 実力派の駆け出したち
『第一歩』
『希望の都フォーチュン=ベル』 ゴブリンと狼
『碧海の都アレトゥーザ』 新たなる地へ
『碧海の都アレトゥーザ』 碧海色の瞳
『碧海の都アレトゥーザ』 路地裏の鼠たち
『碧海の都アレトゥーザ』 図書室の少年
『碧海の都アレトゥーザ』 故郷は波間の先に
『碧海の都アレトゥーザ』 荒波の啓示
『古城の老兵』
『碧海の都アレトゥーザ』 デオタトの依頼
『街道沿いの洞窟』
『聖なる遺産』
『風繰り嶺』 風纏いて疾る男
『魂の色』
『Guillotine』
『防具屋』
『碧海の都アレトゥーザ』 風は留まらない

・第二章 英雄の片鱗
『ヒバリ村の救出劇』
『シンバットの洞窟』
『魔剣工房』
『希望の都フォーチュン=ベル』 オーガ討伐
『見えざる者の願い』
『解放祭パランティア』
『希望の都フォーチュン=ベル』 商船護衛
『古城の老兵』 【影走り】開眼
『碧海の都アレトゥーザ』 鼠たちの囁き
『希望の都フォーチュン=ベル』 魔法の大鍋
『碧海の都アレトゥーザ』 空に焦がれる踊り子
『碧海の都アレトゥーザ』 海風を震わす聖句
『闘技都市ヴァンドール』 “傷難の枝”

・第三章 出逢いと縁
『甘い香り』



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『甘い香り』

2018.07.29(08:03) 472

 闘技都市ヴァンドールから、シグルトはリューンに戻って来た。
 拠点である『小さき希望亭』に立ち寄るためである。

 北西に位置するヴァンドールから、リューンはそれほど離れていない。
 仲間もいないので、シグルトの移動速度なら半分の時間で踏破可能だ。

 剣術を修める過程で、シグルトは徹底的に足腰を鍛えた。
 それがリハビリになったのか、感覚の無かったアキレス腱は反応が多少鈍いものの機能するようになっていた。
 さらに身に宿したトリアムールの力で身体を支え、飛ぶように移動する。

 …常人が見れば仰天する速度である。

 おかげで、たった二日で『小さき希望亭』に到着することができた。
 ヴァンドールには半日ほど滞在していたので、リューンに着いたのは夕刻近くであったのだが。

 ドアにかけられたベルを鳴らして中に入ると、現在の『小さき希望亭』は閑散としていた。
 他の冒険者たちは出払っている様子で、宿の親父が一人黙々と食器を磨いている。

「親父さん、ただいま」

 シグルトが声をかける。

「おう、お帰り。

 シグルト、お前ひとりか?」

 親父は手を止めて迎えにカウンターを出てきた。

「ああ。
 薬なんかを調合すると言ってたロマン以外は、アレトゥーザで技能習得だ。

 俺は剣を学んで、半日ほど闘技場で新しい技を慣らしてところだ。
 リューンを通りかかったんで一旦ここによって、その後はフォーチュン=ベルでロマンと合流してから、アレトゥーザに向かおうかと考えている」

 シグルトが一人旅の理由と今後の予定を教えると、親父は思案顔になった。

「そうか。

 実はお前らが旅に出てから、“風を纏う者”目当ての教導希望者や依頼が多くてな。
 うちみたいな構成員が少ない宿では回し切らん。
 新しくうちに入る新人どもの吟味をしたいから、仲間と合流したら早めの戻ってくれ。

 “煌めく炎たち”は今日も討伐系の依頼をしに行ってる。

 回せなかった依頼は、お前たちと相談していた通り他の宿に回すことになったんだが、一件だけシグルトを指名の貴族の依頼があってな。
 面倒なやつなら不在を理由にお断りしようと思ってたんだが、紹介者があのヴェルヌー伯なんで、どうするか困ってたところだ。

 旅立つ前に、ちょっと確認して対応してくれんか」

 ふむ、とシグルトは承諾して封蝋のされた紋章入りの依頼書と添え書を受け取った。
  
 それは、「ある貴族の身辺護衛」をしてほしいというものだった。

 ヴェルヌー伯イザベルは、聖遺物の所有権をめぐった騒動をきっかけに、シグルトと“風を纏う者”の擁護者を名乗るようになった有力貴族だ。
 宿に紋章付きの感状を与え、“風を纏う者”が推進している孤児救済機構にも、少なからず名を貸し援助をしてくれている。

 優秀な冒険者のパトロンになることは、貴族のステータスの一つだ。
 時に他者の息のかからぬ私兵として戦場以外でも活躍し、護衛や私用を頼むにはもってこいである。

 “風を纏う者”は、普通は結成から一年以上かかる駆け出しの期間を大幅に短縮して、すでに中堅冒険者に近い実績を上げている。
 しかも、まだ貴族のお手付きではなかった。
 先日引き抜きを迫ってきたヤニックも、“風を纏う者”の人気を見てことに及んでいた。

 聡明なヴェルヌー伯は、シグルトとの接触後すぐに動き、宿のカウンターに飾れるように高級羊皮紙に金箔で装飾を施した感状を贈ってきた。
 ヴェルヌー伯は以前の依頼内容はぼかしつつ、シグルトへの報酬として〈銀貨一千枚と、伯爵との面識を有効に活用する権利〉を授けている。

 〈貴族との面識を活用する権利〉とは遠回しな支援宣言でもある。
 こういった貴族側からの囲い込みは、本来冒険者の方が喉から手が出るほど欲しい特権なのだ。

 自由を愛する冒険者であるが、実際は異国を旅し、怪物退治によって名声を得、遺跡の発掘に寄って宝物を獲得し、それらによって柵が生まれる。

 怪物退治では英雄としての名声を得るが、強大な武力を持っていると警戒される。
 遺跡の発掘によって得た宝物は、それを購入するのが有力者であり、販売先に関してもめる場合もある。
 出る杭は打たれるもので、力を持った冒険者ほど注目され、活動がままならなくなるのだ。

 ここで必要となるのが、権力者を後援者にすること。

 冒険者同士には縄張り争いもあり、下手をすればそれが抗争にもなる…冒険者とは武力を持った暴力集団なのだ。
 多くが食い詰め者…口減らしで村を追放されたり、敗戦により逃げてきた難民だったり、曰くつきの人間が多い。
 連盟の息がかかった冒険者の宿に所属することによって、少しはその身が保証されるとしても、無法者と紙一重の立場である。

 彼らがより大きな活動をするには、身分を保証し、問題が起きた時に尻拭いをしてくれる権力者が必要となる。
 そう、貴族や高位聖職者、地方有力者といった力ある後援者が。

 ヴェルヌー伯が賢かったところは、感状というごく平凡な感謝の形でジワリと宿の側に接近を図ったことである。
 冒険者の宿としては、【貴族に認められた】として感状の存在を有難く受け取るし、この類のものは宿の勲章として「見える場所に飾る」ものだ。
 そう、ヴェルヌー伯は一番にそれを行うことで、誰が見ても「自分が最初に目をかけている」と分かるようにしたのだ。

 このことに、シグルトやレベッカはむしろヴェルヌー伯を高く評価した。

 高飛車に縛るでもなく、宿という冒険者の本拠地へ配慮し、親父の顔を立てている。
 感状には伯爵からの謝意がつづられており、なんら“風を纏う者”を拘束する文章ではない。
 気配りができる貴族として、後援者にするには最適という評価となった。

 “風を纏う者”は、ヴェルヌー伯を自分たちの後援者の有力候補として定め、他の宿所属の冒険者に相談をした上でシグルトと宿の親父の連名で礼状を返し、「ヴェルヌー伯有事の際は『小さき希望亭』をあげて協力する」という返答をしておいた。
 これに対し、ヴェルヌー伯はすぐに返事をよこして、“風を纏う者”に限らず『小さき希望亭』の冒険者をヴェルヌー伯御用達と任じてくれた。

 以前ヤニックからの引き抜きに対して、“風を纏う者”は苛烈にこれ拒否をしていた。
 その後の復讐もありえたわけだが、ヴェルヌー伯の名はここで大きな力を発揮する。

 ヤニックの『金色の栄光亭』はバラチエ男爵という貴族の子息が後援者となっていたが、〈紋章入りの感状〉を受けている『小さき希望亭』にちょっかいをかけるということは、遥かに爵位が上位にあるヴェルヌー伯の威光を軽んじるということなのだ。
 貴族同士ではことさら面子というものにこだわるため、バラチエ伯爵は『小さき希望亭』に手を出すことはまかりならんとヤニックに厳命し、現在まで騒動は起きていない。

 このように有力者のコネクションを得ること。
 それもまた、優れた冒険者にとって大切な要素である。

 とはいえ、デメリットもある。
 ヴェルヌー伯の寵愛に対して、宿の側としても彼女を重んじなければならない。

 以前のアフマドの情報や、ヤニックの件で恩人でもあるヴェルヌー伯の頼みともなれば、義理堅いシグルトは無下にできなかった。
 短期間であることを条件に、引き受けることにしたのである。

 期間は、依頼人がリューンに滞在する二日間。

 一日目、護衛の仕事は順調にこなした。
 まともな武装が無いため、剣は借り物になったのだが。

 シグルトが関わった護衛任務は、成功率が極めて高い。
 これは、彼が単に強いという理由ではなかった。

 護衛対象をいかに守るか。
 そのための戦術を立てさせた時、シグルトの戦術観は最も冴えるのである。

 シグルトは優秀な戦士であったが、自分が最強ではないことをよく分かっている。
 自分に足りないものを理解し、対策を考え、神経質なほどの作戦を練る。
 特に人の命を守る依頼に対しては、どんな仕事よりも熱心だった。
 
 依頼人の市街の視察に随伴し、途中貴族嫌いの悪漢に絡まれるというハプニングがあった。

 絡んできた男は平民ではなく、リューンに交易の交渉に来ていた共和制都市国家の元首という身分である。
 貴族階級で言えば侯王に当たる地位であり、並の貴族では相手にならない。

 この時代貴族性が幅を利かせているが、全てが封建制の王政ではない。
 昔ながらの、部族・豪族の合議制を行う国家もわずかだが存在する。
 そういう国家に限って自国の政治形態を自慢にするもので、はなから貴族というものを軽んじていたのだ。

 しかし、シグルトの名を聞いたその男は途端に態度を改めた。

「お前のことは何度か名を聞いている。

 “風を纏う者”のシグルトが護衛するなら、その貴族には守る価値があるんだろう」

 そう言って、絡んだ男は態度を軟化させて去って行った。

 シグルトたちが信頼第一で行って来た行為は、このような形で確実に実を結びつつある。

 実力ある成功者たちは少なからずいる。
 でもリューンの若手冒険者で、“風を纏う者”ほど好ましい名声を得たパーティは少ないだろう。
 
 しかし、シグルトは過大な評価を受ければ受けるほど顔をしかめた。

「分不相応の評価は、同業者の嫉妬を呼ぶ。

 俺たちの仕事に、差しさわりがなければいいがな」

 どんなに褒め千切られても、シグルトは慢心しなかった。
 彼の心には、過去に味わった苦渋と後悔が重くのしかかっていたからだ。

 結果として、シグルトは大きな失敗をしていない。
 
 護衛対象の貴族…シャノワーヌ子爵は、そんなシグルトを大いに気にって、晩餐に招待してくれた。 
 子爵はシグルトの武勇譚を聞きたがったが、自分は口下手だからと、なんとか話をそらし気が付いてみればかなり遅い時間になっていた。

 泊まっていけと言う子爵の誘いを、けじめだからと断り、シグルトは夜道を急いで帰ることにしたのである。
 思案の末、早く宿に帰るために、普段は通らない歓楽街…酔夢街を横切ることにした。
 
 交易路の発展でつとに大きくなったリューンは、人口が密集する都市の一面として、多くの歓楽街や貧民街を抱えている。
 さらに、都市の外にそれらが出来、他の都市と関わりながら、混沌とした発展を遂げていた。

 荒んだ場所が増えれば、荒んだ職業も増えて行く。
 歓楽街には、艶やかな格好した娼婦たちが沢山見受けられた。

 シグルトは、こういった商売女を買ったことが無い。
 それは娼婦たちに魅力が無いわけでも、彼が極端な女嫌いだからというわけでもない。
 
 身を懸けて生きる女たちを軽い気持ちで買うのは、彼女たちを冒涜する気がする。
 病んだ自分には性欲など皆無に等しく、金銭を浪費する気にもなれない。

 シグルトは、娼婦という職業を尊敬さえしていた。

 伝承に詳しいシグルトは、娼婦が世界で最初の職業として成立したことを知っている。
 娼婦の始まりは聖娼と呼ばれた聖職であり、その性愛を受けられるということは、大地の女神を象徴する女性から受ける祝福だったのである。

 教会勢力の台頭によって、父性中心の倫理観が広がると、娼婦はいかがわしい仕事として卑下されるようになった。
 また、男の嫉妬心や独占欲によって起こる血生臭い争いも、彼女たちを貶める原因になっていたのである。
 
 一部の例外はあるだろうが、なりたくて娼婦になる女は少ない。

 仕方なく春をひさぐ者には、苦境の中で精一杯生きることに敬意を。
 性愛に奔放で、娼婦を天職と言う者には、大地母神に対するような尊崇を。

 一般的に見て、シグルトは少し変わった価値観と倫理観を持っていた。

 シグルトは、誰か一人を愛することと、操を守ろうとする気持ちは尊いとも思う。
 操という尊い宝を捧げる行為には、確かに愛を捧げることに通じると。
 
 彼の言う操とは〈精神の操〉…セカンドヴァージンのことである。
 誰かを心から愛そうとする時、想い人だけに捧げる心の操だ。
 娼婦は身体を売る職業だからこそ、その一面で高潔である者が意外と多い。

 性病や妊娠というリスクに対し身体を張って懸命に生きる娼婦たちは、決して穢れた存在ではない。
 心の操を持ち、男を愛し、宿した子を育てる彼女たちは偉大であるのだ、と。

 とまれ、そういう風に娼婦を考えるシグルトには、娼婦に対する蔑視の情が全く無い。
 生きるために客を良く見る娼婦たちには、それが分かる。

 それ故か、多くの街娼がシグルトに声をかけてくるが、取り合う彼ではなかった。
 彼は過去に自分の愛を捧げた女性がいる…娼婦を抱きたいという欲望も無い。
 それが理由だった。

 流石に夜の賑わった歓楽街で、その高速移動を披露するわけにもいかず、シグルトはただの速足で、帰りを急ぐ。

 そうして、人混みを避けるため裏道に入った時である。
 
「ねぇ、お兄さん…」

 声をかけられるのが流石に煩わしく感じていたシグルトは、掛けられた声の方にやや剣呑な様子で振り向いた。

 尊敬する職業にも、しつこくされれば疲れもするのだ。
 どんなに優れていても、彼も人間なのである。

 裏道まで追ってきた娼婦なら帰って貰わねば、と振り向いて、その声の主を見た時、シグルトは思わず目を見張った。

 見目麗しい女である。
 その美貌は、人間離れしていた。
 
 だがシグルトが目を見張ったのは、傾城の容姿に見とれたからではなかった。
 その娘は、かつてシグルトが巻き込んで死なせてしまった親友の妹、エリスに背丈や面影が似ていたのである。

 エリスはブロンドで、その少女はブラウンの髪…顔だってこの少女の方が垢抜けて美しい。
 なのに、目の大きさやはにかみ方がそっくりなのだ。
 透通るような白い肌も、故郷の人々を思い出させた。

 しばし黙っていたシグルトを見上げた女は、彼女自身もシグルトの美しさに見惚れているようだった。
 
 シグルトの容貌もまた、神々しいほどに美しい。
 雑な髪型とその仏頂面がなければ、まるで南海の芸能神アポロもかくやという美丈夫なのである。

「…びっくり。
 こんな綺麗な人だったなんて。

 ね、少しだけ、私とお話しない?」

 好奇心の籠った、人懐っこい口調で女が誘う。
 
 まだ少女のあどけなさがあるのに、 立ち居振舞いの一つ一つが妖艶だった。
 上目がちにこちらを眺めるその仕草だけで、普通の男なら虜になっていただろう。

「…本当に少しだけでいいの。 
 駄目かしら?
 
 貴方なら、狼さんになったりしないと思ったんだけど…」

 からかうような彼女の言葉に、シグルトは我に返った様に無愛想な態度で睨み返した。

「妙齢の女が、会話目的だけで裏道を通る男を呼びとめるのは考えものだ。
 相手次第では勘違いされるぞ。

 話をしたいのなら、御夫人にすればいい。
 俺は女性と話すような話題を持たない、武骨者なのでな。

 それに、急ぎの帰り道だ」

 彼のあまりに素気無い返事は、予想外だったのだろう。
 女は少しだけ眼を見開いて、シグルトをもう一度じっくり見つめる。

 …何かが入って来そうな視線だった。

 シグルトは腹の底に軽く力を込め、目を細めて、その視線に真っ向から抵抗する。

「…そんなに睨まないで。
 少し、人寂しかったから、お話したかったの。
 
 ここなら、静かだし、誰も通らないわ。
 ね?
 お話、しましょ」

 シグルトは、軽く息を吐くと、口をへの字に歪め首を横に振った。

 …この女の視線は危険だ。
 自分のように性欲の枯れた男に対しても、情動を喚起させる何かがある。
 話す言葉には前後に脈絡が無い…話す事と人気が無いことの脈絡が。

 それがさらに警戒心を起こさせた。

「話をするだけなら、こんな夜半に歓楽街の裏道で男を誘うなど、正気の沙汰ではないぞ。
 
 仕事柄こういった場所に知り合いがいるが、街娼ですら、普通は一人で立つなどありえん」

 本来娼婦という職業には、盗賊ギルドのような背後組織がついている。
 女性という立場は弱いため、客が代金を踏み倒したり、過剰なサービスを要求して娼婦を傷つけることがあるからだ。
 どこかに〈梟〉…見張りが立って、娼婦が強姦されたり変な客に捉らない様に監視しているはずである。

「それに、君の言っていること、やっていることは矛盾している。
 
 人寂しく話をしたいなら、何故表通りに出ない?
 こんな裏道を通る者など、俺みたいに近道をする部外者か、後ろ暗い奴ぐらいだ。
 
 好奇心で初めてこの町に入ったのなら、女衒(せげん…色街の女を売り買いする仕事)に見つからないうちに、すぐに出た方がいい。

 …もしここに迷い込んだというなら、家の近くまで送ろうか?
 君の家に立ち寄らないことを、条件にさせてもらうがな」

 有無を言わせぬシグルトの言葉に、女は円らな目を最大まで見開いた。
 だが、「送ろう」というシグルトの不器用な優しさを感じたためだろうか…
 
 結局、一緒に歓楽街を出ることになった。

 
 並んで歩く美女の表情は、嬉しそうである。

 シグルトに好意を持つ女性なら、このように並べれば有頂天になっただろう。
 だが、女のそれは美貌の男と歩くそれではなく、単に誰かが隣にいることへの悦びだった。

「私はアンジュ。

 貴方の名前、教えてくれる?」

 好奇心いっぱいの目で見つめる女に、シグルトは仕方ないという様子で名乗った。

「…シグルトだ。

 アンジュ、天使か。
 名付けた人は、きっと、とても君を愛していたのだろうな」

 ふ、と微笑んだシグルトに、アンジュと名乗った女は、少し寂しげな笑みを浮かべて頷いた。

「うん、気に入ってるの。

 貴方も素敵な名前ね。
 確か、不死身の竜殺しの名前よね?

 ちょっと発音が違うけど」

 シグルトは「故郷の訛りだ。名は分不相応だがな」と苦笑した。

「そうかな?
 武器を持ってないけど、貴方って戦士みたいに力強い目をしてる。

 とても似合ってるわ」

 クスリ、とアンジュが笑う。
 はにかんで目を細める仕草は、花が咲きそうなほど愛らしい。

(本当にエリスに似ているな。

 顔など、まるで似ていないのに)

 故郷の生活を思い出し、シグルトも少し目を細めた。

「仕事は何をしてるの?

 傭兵さんなら、武器を持ってるわよね?」

 好奇心が強い娘なのだろう。
 色々と聞こうとしてくる。

 知り合いに雰囲気が似ていたからだろうか、シグルトは渋々、彼女のおしゃべりに付き合うことにした。

「―…冒険者だ。

 今は別行動中だが、仲間もいる」

 仲間、と言う言葉に、アンジュは羨ましそうな顔をする。
 こんなところで話し相手を求めて来たのだ…孤独な生活をしているのかもしれない。

「冒険者かぁ。

 うん、分かる。
 貴方って、旅人の目をしているもの。

 大変な仕事って聞いたけど、順調なの?」

 話を途切れさせない様に、アンジュは問いを続ける。

「…好い仲間に出逢えて、それなりに成功しているよ。

 少なくとも、食うのには困らないでいられる。
 多分これは、幸せということなんだろうな」

 そう言ってシグルトは、現状に満足している自分にまた苦笑した。

 故郷で恋人と別れ、心の傷はまだ癒えていない。
 なのに、仲間たちの存在は頼もしく、仕事には充実感がある。
 
 それが心地良いと感じていた。

「羨ましいな。

 私なんて…」

 言いかけて止めるアンジュ。

「…私なんて、何だ?」

 シグルトが先を促すと、アンジュは誤魔化す様に頭を振った。

「秘密。

 その方がミステリアスでしょ」

 そう彼女が口にした時、歓楽街の出口が見えた。

 残念そうにアンジュは、シグルトから一歩離れる。

「有難う、送ってくれて。

 ね、最後に握手、しよ?」

 アンジュが手を差し出す。
 シグルトは、ふう、と溜息を吐いた。

「若い婦女子が、始めて歓楽街であった男に、握手など求めるな。

 そんなことでふしだらとまでは言わんが、少し無遠慮だぞ」

 シグルトの硬い返答は、彼が年頃の妹を持っていたことに起因する。

「…もう、さっきからお爺ちゃんみたいに説教臭いわ。

 私と大して歳、変わらないわよね?」

 最後が疑問形なのは、シグルトの年が分からなくなったからだろう。
 過去の悲壮と諦観を秘めたシグルトの青黒い瞳は、その年齢をもっと年寄りにも見せるのだ。

 シグルトがふと考えた時、近くの娼館から低い手振り鐘の音が響いた。
 日の終わりを告げる合図であり、歓楽街の本当の始まりを告げる音でもある。

「たった今、日が変わったようだな。
 西方の数え方なら、丁度十九になる。

 今聞かれて、気が付いたよ」

 シグルトの誕生日は、つまりたった今からである。

「っえ?、え~!!

 じゅ、十九?
 背、すごく高いし全然っ見えない…二十五歳ぐらいだと思ってた」

 驚くアンジュに、シグルトは少し仕返しを思いつく。
 そう、かつて妹や友人にした時のように。

「俺が目測二十五歳ということは、大して変わらないという君もそのぐらいということだな。

 もっと若いかと思っていたんだが…」

 シグルトにからかわれたアンジュは、真っ赤になった。

「ひ、ひど~い!
 
 私、そこまで年増じゃないよぉっ!!」

 この時代、女性で二十歳過ぎは行き遅れ、二十五歳は年増と呼ばれてもおかしくなかった。
 戦争や疫病の関係で、平均寿命が五十歳を下回ることも多いのだ。

 女の役目は早く子を産み、次世代を残すこと。
 古臭いこの御題目が、田舎の農村ではあたり前のように根付いている。
 
 さらに、難産や出産後の産褥熱で死ぬ女たちも多い。
 この当時の出産は、二十回に一回、母か子あるいは両方が死ぬ命懸けの苦行であった。
 高齢の女性は、初産が遅ければそれだけ出産での死亡率が跳ね上がる。

 女性の冒険者には二十歳過ぎも結構いるが、結婚適齢期過ぎなのを劣等感にしている場合が多い。
 〈年増〉や〈行き遅れ〉は禁句である。
 
 “風を纏う者”のレベッカもいつぞや、ある行商が口を滑らせた時に、「尻の毛まで毟る」程激昂したという。

 この場にレベッカがいなくて良かったな、と思いつつシグルトは「冗談だ」と言ってアンジュに謝った。

「うう、罰として、絶対明日も会って!

 そうしないと許さないからっ!!」

 そうくるか、とシグルトは苦笑する。
 拗ねた様にアンジュは口を尖らすと、シグルトの手をそっと握った。

(…ぬ?)

 一瞬、何かが身体から抜き取られる気がした。

「約束…だからね?」

 そう言って離れたアンジュは、夜の街に消えて行った。
 ――花のような、甘い香りを残して。


 次の日、シグルトは気だるい朝を迎えていた。 
 早起きの彼が、寝過ごすほどである。

「…もう〈お早う〉ではないな。

 起きるのが遅くなって、すまない」

 顔を合わすなり、シグルトは宿の親父に謝った。
 親父は気にするな、と首を横に振った。

 他の冒険者からすればずっと早い時間である。
 
 シグルトは、五時間以上寝ることがほとんど無い。 
 普段は一番鶏の鳴き声で起床し、一刻(二時間)程で日課の鍛錬を終える。
 
 鍛錬後はクールダウンをしっかり行い、宿の誰よりも早く朝食の席に着く。
 その規則正しさは、仲間内では有名なことだ。

「何、まだ早い。

 昨日は帰りも遅かったんだろ?
 無理もないさ」

 親父は、もう少し寝てても良いんだぞ、と付け加える。 
 …不真面目な他のメンバーには、こんなこと絶対に言わないのだが。

 すぐに、朝食を手際よく用意する。
 シグルトは、親父の作る暖かな手料理が好きだった。

「ふむ、思えば久し振りに親父の手料理を食えるな。

 小洒落た高級料理を上品に食べるよりも、この宿の朝飯に齧り付く方がずっといい」

 手渡された、鍋で炒めた塩漬け肉とチーズとハーブを挟んだパンは、まだほのかに暖かい。
 きっと冷めないように、オーブンの余熱で温めていたのだろう。

 こういう親父の気遣いが嬉しい。

 リューンが属する西方中部名産の、硬いパン。
 パン用の小麦にグルテンの含有が少ないためだ。

 対して、外国の焼き方を参考にした親父特製のパンは、かすかな甘みもあって軟らかく美味である。

 出された飲み物は、山羊のミルクだ。
 
 骨を強くするこの飲み物は、滋養強壮にも優れ、シグルトのスタミナ源となっている。
 普通は臭みが強いのでヨーグルトやチーズにして食べるのだが、シグルトは平気だった。
 彼の故郷では、病人以外めったに飲めない御馳走である。

 パンを齧り、山羊のミルクを飲む姿は決して品が良いとは言えないのだが、美貌のシグルトがやると妙に様になるから、不思議なものである。

「お前、少し顔色が悪いぞ。

 疲れてるなら、無理するな。
 丁度マルスたちがいるから、仕事の代理は立てられるしな」

 親父が皿を拭きながら、心配そうに声をかけてくる。

「朝稽古を休んだ上、仕事まで他人任せなら看板を下ろすさ。

 俺たち冒険者は、信用第一。
 シャノワーヌ子爵には、今日も是非にと言われている。

 あと一日頑張れば達成する仕事だ、これぐらいは大丈夫だ」

 生真面目なシグルトの体調管理は、宿でもピカ一だ。
 ならばと、親父もそれ以上は言わなかった。


 その日の仕事は、体調不良もあってかなり厳しいものになった。
 我慢強いシグルトのこと、そんな様子はおくびにも出さなかったが。

 顔色の悪さを補うため、シグルトは血色を良くする薬草と、結晶化した蜂蜜を湯で溶いて作った薬湯を飲んでから仕事に出かけた。
 蜂蜜の結晶は、多くがブドウ糖であり、てっとり早い疲労回復にはもってこいだ。
 ロマンが好んで疲労回復に使う方法である。

 高価な蜂蜜や黒糖を溶く甘い薬湯は、金がかかるので普段はあまり摂れない。
 だが、シグルトは肝心な時に動けないなら意味が無いと、妥協しなかった。

 甘いもので疲労を回復する方法は、多用すれば身体が慣れて効果が出ないまま、しかも高過ぎるカロリーのせいで身体に毒となる場合もある。
 反面、正しく希に使う場合は、絶大な効果が現れる。

 こういった薬湯を飲む時、シグルトは湯気を吸ってから飲むようにしていた。
 身体が疲弊すると、鼻や口、気道の粘膜も荒れる場合があるからだ。
 
 湯気は、気管を温め潤いを与えるため、程よく行えば呼吸が楽になる。
 医師に学んだことのあるシグルトは、こういったさりげない健康法を上手に使い、身体の故障を癒し、戦える身体を維持していた。
 
 普段から摂生に努めているシグルトだからこそ、回復の効果は顕著に表れた。
 湯気の熱気も手伝って、すっかり血色を回復したシグルトは、何事も無く一日の仕事を終えたのである。

 目聡い貴族を相手にする時、顔色が悪いなど不手際でしかない。
 この辺りのプロ意識も、周囲が優れた冒険者としてシグルトを認めている要因と言えた。
 
 無様な姿を見せず仕事を終えたシグルトは、昨晩から気になっていたことを見定めるため、仕事の休憩中に施したとある仕掛けを確かめると、酔夢街の入り口…アンジュと別れた場所を目指して歩き出した。

 
 辺りはすでに暗い。
 
 シグルトは近くの壁に寄り掛かると、目を閉じてアンジュが現れるのを待った。

 やがて、待ち人は現れる。
 アンジュはシグルトを見つけると、ぱっと笑顔になって息を切らして走って来た。

「うふふ、待たせちゃった?

 今夜も、良い夜よね」

 嬉しそうなアンジュに、シグルトはしばし空を見上げた後、軽く頷いた。

「…今日もお仕事帰り?」

 アンジュの言葉に、シグルトは目を瞬いた。

「何故、俺が仕事帰りだとわかった?」

 聞き返されたアンジュは、鼻白んで目を寄せる。

「何故って…

 少し疲れた顔してたでしょ。
 それに、どこかいらいらしてたみたいだし。

 今日もちょっと疲れ気味?」

 アンジュの説明に、シグルトは静かに耳を傾けていた。

 薬湯で回復したはずの体調不良を見抜いたことに、シグルトは内心あることを確信する。
 彼女は、目に見えない精気を感じ取れる、ということを。

「君は洞察力が優れているな」

 シグルトの評価に、アンジュは「人間観察が趣味だし、勘も鋭いのよ」と胸を張った。

 しばらくは何気ない会話を続ける。

「そう言えば、貴方って今日が誕生日よね。

 一人で寂しくない?」

 不意に聞き返したアンジュに、シグルトは苦笑して首を横に振った。

「俺の祖国があったグロザルム地方は、統一帝国時代の名残で回年という年齢の数え方が主流だった。
 さらに北から入って来た暦の影響だ。

 貧しい国でな…貴族であっても一人ひとりの誕生日を祝うなんてことはしない。
 
 皆、正月になったら一律に歳をとるという、考え方だ。
 祝うのも同じ日で、正月はすごく楽しみだったよ。

 東洋にも、〈数え年〉という考え方があるな。
 あれは一歳から数えるらしいが。

 妹が西方の暦で言う誕生日に憧れていて、自分以外の誕生日には、知り合いに贈り物をする癖が付いてしまった。

 考えてみれば、珍妙だ。
 しばらく自分の年齢は、忘れていたよ。

 俺のような根無し草の仕事に年齢なんて、関係無かったからかもしれんが」

 思い出すようなシグルトの言葉には、言い様の無い寂しさがあった。
 

「ねぇ、また明日も会える?」

 しばらく一緒に話していたアンジュは、シグルトに問うた。

「…いや、無理だ。

 仕事がなければ、俺は明日にでもリューンを発つ。
 仲間がいるからな」

 出たのは決別の言葉だった。
 アンジュは信じられないという風に、シグルトを見た。

「君が何者かは知らない。
 知るつもりも無い…君が話さない限り。

 今夜は約束だった。
 だから会った。

 だが、俺には俺の行く道がある。

 君が何故俺に関わって来たのかは分からないが、俺も君が知り合いに似ているから甘んじた。
 一晩考えれば、それがいかに弱い考えだったか思い知ったよ。

 君に対してもう亡くなってしまった知人を想うことは、君にも彼女にも失礼だった。

 だから、心から詫びよう…すまない」

 シグルトは頭を下げた。
 その静かな誠意が、返ってアンジュの胸を締め付ける。

(だめ、行ってしまう…この人は!)

 そして、シグルトは苦笑して別れを告げた。

「さよならだ。

 幾、健やかに」

 シグルトは答えを待たず、背を向けた。
 
 たとえ恨まれてもいい…
 互いの惰性でこれ以上は傷つくのは止めようという、シグルトらしい不器用な誠意だった。

 アンジュは堪らず、その背に抱きついた。
 自分と同じ、とてつもない何かを背負った、その背中に。

「…くっ…」

 それは彼の予想通り、起こる。
 根こそぎ体力を奪われる脱力感に、シグルトは耐えた。

「…あ、あぁ…」

 アンジュが呻くように 呟く。
 彼女の瞳から、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。
 
 前に別れた時の、甘い香りが鼻腔をくすぐる。

 シグルトはそのまま、崩れるように意識を失っていた。


 忘れられない情景があった。

 綺麗なハニ―ブロンドが自慢で、少し男勝りだが、そばかすの可愛らしい円らな瞳の娘だった。
 照れたり困った時、両手で一房ずつその髪の毛を掴む癖があった。

 ある日少女は、精一杯の化粧をして、シグルトに愛を告白した。
 もう一人の兄のように側にいた、シグルトを女として愛していると。

 その時シグルトには、すでに心から愛する女性がいた。

 少女を、シグルトも愛していたと思う。
 恋人や女性では無く、妹のような…幼馴染みというありふれた親しみで。

 不器用だが誠実な性格のシグルトは、その場の流れでうやむやになることを善しとしなかった。
 アンジュに別れを告げたのと同じように、恨まれることを覚悟して、きっぱりと自分の心を告げた。

 最後に別れた時、少女の顔は、言いようの無い悲しみで歪んでいた…
 彼女の顔に、アンジュの泣き顔が重なる。

 それは誤りではなかったのだと、自分の信念は告げていた。
 なのに、結果は誰も救われなかった。

 愛を告白し振られた少女は、シグルトへの想いを利用されて汚され、そして自ら命を絶った。


「――…ぬ?」

 目覚めた時、シグルトは狭い部屋の寝台に横たわっていた。
 
 壁画の描かれたその部屋には、迫られるような圧迫感がある。

 四角い机と赤い古びた大椅子が一つずつ。
 壁画以外、目立つ者も無い殺風景な場所だった。

 どこかの廃教会の一角、だろう。
 部屋の装飾の剥れ方から、何となく予想が付いた。
 起きてすぐに周囲を観察するのは、冒険者の性であった。

 覚えのある、花のような甘い匂いを嗅ぎ取り、そこが誰の部屋かも見当をつける。
 部屋の主を探して、周囲をもう一度見まわした。

 やがて足音と気配。
 女のものだ。
 奥にあった扉が開き、予想通りにアンジュが部屋に入って来た。

「…気が付いたのね、シグルト」

 心配そうに、アンジュはシグルトを見つめた。

 シグルトの観察力は、即座に必要な情報を導き出す。
 応えるように、一つだけ頷いてみせた。

「倒れた俺を、君が自分の部屋へ運んでくれた。

 そして介抱してくれたのだな?」

 そう、と彼女は頷いた。

「私、貴方に謝らなければならないことがあるの」

 絞り出すような告白に、シグルトは一瞬迷いそしてまた頷いた。

「礼を、言うべきではないのだろうな。
 そうしたら、もっと君を傷つけるだろう。

 君は、サキュバスかリリムの類か?
 精気を吸うという、化生なのだな。

 心をあやふやにする甘い香りと、目が覚めるような美貌。
 男なら吸い寄せられる妖艶な雰囲気。

 人の体力を奪い取り、食事とする。

 その、俺の知る限りでは、〈こと〉に及んでそういった力を使うと、聞いていたんだがな」

 言い難そうに語るシグルト。

 その全てに、アンジュは何度も頷いて肯定した。
 
 シグルトは、伝承に関する優れた知識がある。
 淫魔や夢魔とも呼ばれる、サキュバスとインキュバスの伝説も良く知っていた。

 女のサキュバスは男から精を奪って殺し、インキュバスと交わって精を渡し、インキュバスが人間の女にその魔精を植え付ける。
 生まれた子供は、魔の者であった。

 有名な騎士王の知恵袋である伝説の魔法使いは、こうした淫魔の子であると言われた。

 普通ならば、そういった化生に対して人が持つのは、怪物に対する敵意であろう。
 冒険者ならばなおのこと。
 鉄火場で怪物と刃を交わす武辺者であれば、このように悠長に問い返したりはできないはずである。

 シグルトは別だった、
 自身も精霊や妖精から力を引き出す力を持ち、実際に見定めたアンジュの人となりで、彼女がただ危険なだけの人間の敵ではないと断ずる。

 そんな特異を感じることも無く、アンジュは淡々と話し始めた。

「私は、触れるだけで食事ができるみたいなの。

 本来のサキュバスは、人間を食料か繁殖の道具にしか考えない。
 寝込みを襲う、魔物よ。

 でも、男女の交わりで食事をしない私は、普通のサキュバスじゃない。
 異端児なのよ。

 だから、サキュバスの世界を追われてこの都市に来たの」

 シグルトはふむと頷いた。

「淫魔が人に植え付ける魔精を、インキュバスがサキュバスの胎に植え付けた時、男ならインキュバス、女ならサキュバスが生まれる。

 異説では、性交で破滅させた者の魂を媒介に、子が生まれるともあるな。
 だから、奪う存在でありながら人間に依存する…そんな話を、聞いたことがある」

 シグルトの博識に、「私の説明はいらないわね」とアンジュは苦笑した。

「…たまにいるらしいわ。
 とても人間に近い、私のようなサキュバスが。

 だからかな?
 人間を殺せなかった。
 精を奪えなかったの。

 そんなのだから、人間の食事で我慢してたけど…
 
 それはあくまでも応急処置で、たくさん食べないともたないから、すぐに資金が尽きちゃった。
 私は、魔物だからお金の貯め方なんて分からないもの。

 何も食べないと、苦しくて、だから使いたくなかったけど、貴方から精気を貰ったの。
 貴方って、厳しい雰囲気を持ってるのに、とても優しい人だと分かったから。

 でも、悔やんだわ。
 貴方から力を奪って…貴方の顔色が青ざめて行くのが怖かった。

 だって、貴方はこんなにも私を真っ直ぐ見つめてくれるもの。
 何より、心配してくれた…下心を持たずに。
 
 なんとなく、貴方が私の正体に気付いているんじゃないかって感じてたわ。

 私たち淫魔は、その気になって見つめれば相手を欲情させられる。
 力の弱った私の視線にも、その魔力があったはずなのに…
 貴方は耐えて、なのに逃げなかった。

 分かっているのに、女の子を心配するみたいに、接してくれたわ。

 私を普通の女の子のように見てくれた、初めての人間。
 そんな貴方を、私は殺してしまいそうだった。

 凄く、嫌だったの…」

 俯いたアンジュは、死人のような顔で床を眺めていた。
 真っ直ぐシグルトを見れないのであろう。

「でも、貴方にきっぱり別れを告げられた時、頭が真っ白になったの。

 貴方は多分、私と同じように孤独な人。
 仲間がいるとしても、語れない大きな過去を抱えて苦悩している、孤高の人。
 私を分かってくれる人だと思ったわ。

 やっと見つけた、心の許せる人が行ってしまう…
 だから行かせたくなくて縋りついたの。

 でも、その時思わず貴方を望んでしまったから、生気を奪ってしまった。
 屈強そうな貴方が、すぐに倒れるほど。

 そんな自分が、許せなくて、悲しかった…」

 アンジュは顔を上げると、どこか悟ったようにシグルトを見つめた。

「もう、こんな風に奪って生きて行くのは嫌。

 私を理解してくれる人間なんていない…私は簒奪者だから。
 私を理解してくれる同族はいない…私は出来損ないだから。

 貴方以外、私を真っ直ぐに見てくれた人はいなかった。

 私は中途半端。
 殺して奪う淫魔であることも、耐えて人であることもできそうにない」

 何時の間にかぽろぽろと涙を流しながら、アンジュは自身の心を吐き出した。

「誰も認めない。
 認めてくれない。

 今まで、ずっとそうだった。
 でも、私は貴方と出会ってしまった。
 
 別れるなんて、怖くてできなかった。
 寂しくて、心細くて、気が狂いそうで。
 
 だから、お願い…
 私が孤独で壊れてしまう前に、貴方の手で、私を殺して…」

 悲痛な声でアンジュはシグルトに乞うた。
 今まで心にため込んだものが、シグルトというきっかけで決壊したのだろう。

 救いを求める幼子のように、たおやかな両手がシグルトに向かって差し出された。
 その名の如く、天使が翼を広げるように。

「それはしない。

 それが可能でも、だ」

 シグルトは即座に、強く強く拒絶した。

「どうして?

 私は貴方から、力を奪ったのよ?!」

 アンジュはなおも食い下がった。

 シグルトは、天井を一度見上げ、そして出逢った時のようにアンジュを睨み据えた。

「…都合のいいことを抜かすな。

 君が人を殺せないように、俺もまた殺せないものがある。
 
 少しでも親しく話した者を殺すのは、つらいことだ。
 君が俺を吸い尽くさず助けた…俺にだって似たような気持ちはある。

 俺にだけ求める君は、とても身勝手だぞ。
 
 自分の弱さを他人に処理させる、逃げ口上だ」

 シグルトの叱責は厳しかった。

「殺してほしいなら、何故俺と知り合ってから死を望んだ?
 殺す者の、見送る者の痛苦を、君は考えないのか?

 不幸に酔って、死ぬことまで他人任せか?

 …甘えるのも大概にしろっ!!」

 炎を吐くような苛烈な叫び。
 様々な苦しみを経て、なおも生き足掻いてきたシグルトの、魂の咆哮だった。
 
「…アンジュ、君に問おう。

 君は本当に死んでもいいのか?
 生きて、その業を克服したいとは思わないのか?

 何故生きて、足掻かない?」

 悲壮なシグルトの言葉には、茨の道を歩んで来た彼の血が染み込んでいるかのように、重く切実な響きがあった。
 
「…何故俺に、助けてくれと願わない?
 
 俺に死を望むのは、俺の無能という傷を抉る侮辱でしかない。
 親しくなった者に、〈殺せ〉と願うのは、そういうことだ」

 シグルトは諭すように告げると、手に巻いた布を解いた。
 生々しい傷痕に、アンジュの顔が引き攣る。

「――…見ろ、これが俺だ。

 この傷痕は、俺が取りこぼし抉られた過去そのものだ。

 俺は愛する人を手放した。
 友を護れなかった。
 父を失った。
 母を泣かせた。
 妹を巻き込んだ。
 
 俺を愛していると言ってくれた女の子を拒絶し、みすみす死なせてしまった。

 大切な人を誰も護れず、絶望の砂を噛みしめて、それでも俺は生きて来た。
 何故なら、生きることでしか償えず、生きることでしか贖えなかったからだ。

 だが俺にも、一緒に歩んでくれる仲間ができた。
 今、俺は生きて来た事を素直に喜べる。
 
 重い後悔が、夢で俺を苛む時があっても。
 今の我が身が、どれほどの罪と嘆きの上にあるのだとしても…

 俺は生きて来たことを、今胸を張って誇ろう。

 生きるということは、途方もなく痛苦に満ちている。
 だからこそ、乗り越えてある今の生は、様々な物を取りこぼしてしまった俺に残された、希望という名誉なんだ。
 俺にとって、生はそれ程尊い。

 だから、痛苦を歩む親しい者の生も、俺が守りたい名誉そのものだ。
 今日を、明日を、生きている親しい者は、命を賭けて救いたい存在だ。

 一度失ってしまったからこそ、俺はそれをもう零さないように足掻くと誓った。

 俺に君を殺せと頼むことは、俺にその名誉を捨てろと言うことだ。
 抱いた希望を踏み躙れということだ。

 そう…俺を殺すのと同義だ。
 過去に絶望した昔の自分を背負い、今を生き足掻くこの俺を。

 一時何かに頼ってもいい。
 君が孤独で潰れそうなら、俺が他に君を分かってくれる人間を探してやる。
 俺の時が許すなら、話し相手にもなろう。
 
 絶望に酔うな。
 そして甘えるな。

 不幸ばかりの生にも、幸福という先があり…
 それは自ら選んで求め努力した者だけが掴み、到る場所だ」

 諭すようにシグルトは言う。
 青黒い瞳は、厳しくそしてとても優しかった。
 
「だから、もしまだ心の奥底に、少しでも生きたいと願う心があるのなら…
 辛くても、生きろ。

 君が孤独なのは、今の君が諦め、新しい友を探さないからだ。
 求めない者に、足掻かない者に、与えられる結果はとても少ない。

 俺も孤独だった…かつてはな。
 だが、絶望を背負って生きた先に、肩を並べて戦える仲間と出逢った。
 
 こんな暗い場所でうずくまって、どうして一緒に歩める人を見つけられる?
 異端として殺されることが怖いからか?
 なら、死を求めるのは矛盾している。

 無いなら探せばいい。
 孤独な何も持たない者には、新しく探すべき余地が沢山ある。
 
 一時得られない、あるいは失ったからと、探すのを投げ出したのなら、その結果が今の孤独を形作っているんだ。
 俺も、その寂寥を乗り越えたから、はっきり言える。

 死ぬのは、求め続けた先でも遅くない。
 俺が得られたように、君にも未来はあるんだ。

 だから、死を求めるぐらいなら、生を求めてみろ。
 君が掴み取るべき未来と、友を夢見て。
 願うんだ、捨てるぐらいなら。
 
 願って選び、歩み出す。 
 それが〈生きる〉ということだ」

 もう一度、今度はゆっくりと、シグルトはアンジュを諭す。

「俺には、救えなかった人がいる。
 彼女は、我が身に起こった不幸に耐えられず、自ら命を絶った。
 彼女の兄は、彼女の無念を晴らそうとして命を落とした。

 残された俺は、とても無力で悲しかった。
 死後の先に救いを求める者もいるが、それは残されるものにとって新しい悲しみを残すだけだ。

 だから、君には生きてほしい。
 一時でも、親しく言葉を交わしたからこそ。
 
 その道が茨と刃の痛苦に満ちているとしても… 
 これは、苦しんで来た君の話を聞いても、変わらない俺の願いだ。

 君が俺に助けてくれと求めるのなら、それは惰性にならない。
 知り合った運命と、親しく話した時に懸けて、俺は俺のできる形で君の力になろう。

 俺が君に示してやれる道は、自殺の手伝いではなく、辛くても必死に生きることへの手伝いだけなんだ」

 シグルトは、話す間ずっと目をそらさず、真剣に語りかけた。
 アンジュは彼の瞳にただ説得しようとするための虚構が無く、とても真っ直ぐな想いがあることを強く感じていた。

 そして、彼の言葉を聞いて、胸の中に暖かな光が灯るのを感じていた。
 自分の生は、こんなにもこの男に望まれているのだと。
 
 自然とその頬を、先程とは違う涙がつたって零れ落ちる。
 それは暖かな、歓喜の涙だった。


 アンジュは、生きることを選んだ。

 彼女の「生きたい」という一言に、シグルトはしっかりと頷くと、迷わず彼女の手を取った。
 また命を奪うかもと真っ青になったアンジュに、シグルトは微笑んで手を見せる。

 何時の間にか、そこには夢精除け(精気を外に漏らさない)のまじないとアンジュの名前が記されていた。
 古くから伝わる、淫魔からの防衛手段である。
 
 そのまじないには、淫魔を追い払う力こそ無いが、夜に寝込みを襲われても殺されなくなるのだという。
 ただ、名前を知らなければ効果は薄まるらしい。

 アンジュに抱きつかれても倒れるだけで済んだのは、そんな仕込みのおかげだった。 

 シグルトは、貴族から得た謝礼金をアンジュに渡し、当座の資金にする。
 彼女を冒険者として生きられるように宿に迎え…またその知恵を振るった。

 宿の親父は新しい冒険者を探していたところで、シグルトの紹介という美しい娘を迎えることには反対しなかった。

 そして、自分が知る伝承の中からたった半日で、彼女が救われる光明を見つけ出したのである。

 かつて聞いたある物語。

 東洋のある鬼女が、人の子供たちをさらって血肉を食らう子供たちに与えていた。
 それを悲しむ親を憐れみ、偉大なる者が、智慧を持って鬼女を諭した。
 最も愛する末の子を隠された鬼女は、同じように悲しい親の気持ちを理解した。
 だが、鬼女もその子供たちも、人間の血肉を喰らわなければ生きられなかった。

 その時、血肉の代用品として登場したのが〈柘榴〉である。

 〈柘榴〉には、途方もない生命力が宿っており、主に婦人病に効果があるとされてきた。
 ものは試しに、とシグルトが柘榴酒を与えたところ、アンジュの飢えは嘘の様に消えたのである。

 酒精(アルコール)には魂が宿ると考えた者がいた。
 神々が、そして人が愛して止まない酒は、根本たる精力の宿るものだ。
 
 そう、血肉を意味する木の実を、魂たる酒に付け込んだ柘榴酒は、生そのものである。
 人と生きたいと願いながら、精気を奪って生きねばならない魔物が、求めて止まない希望なのだ。

 この日リューン郊外の小さな宿で、ささやかな救いの道が示された。
 人と生きることを願うサキュバスの、救いの道が。

 高価だが、人間の食事よりも代用品として優れている柘榴酒を手に入れるため、アンジュは冒険者として働くことになった。

 美貌のアンジュを見て、男たちは気色ばんだ。
 彼女の魔性の美貌は、希望に満ち溢れ、とてつもなく美しい。

 彼女をパーティにと願う声もあったが、一切を無視した。
 自分を命を賭して救うと言ってくれた、意中の男がいるからである。

 アンジュは何とかシグルトと行動したいと申し出たが、シグルトは「俺の役目はとりあえず終わったから」と、別件で仕事に勤しんでいる。
 何でも、ある子供から依頼を受けたそうである。
 
「あ~もう、ほんと鈍感っ」

 その日もアンジュは、シグルトに対する不満を口にした。
 
「何が、生きろ~よ。

 もう、こんな可愛い娘放っておいて仕事行っちゃうなんて、あいつ絶対○○よ、○○!
 女の子が瞳を潤ませて、〈お願い連れて行って〉って頼んだのよっ!

 ほんとに、もう…」

 不平を言うアンジュだったが、その表情は生き生きとしている。

 シグルトはきっと、自分と同じように子供を助けようとしているのだろう。
 なら、とても彼らしいではないか。

「…ライバルが多いわ。

 宿の娘さんなんて、最初っから警戒オーラ全開だし。
 でも、負けないんだから」

 そう言って艶やかな唇に指をあてると、サキュバスの少女は、普通の男ならばいちころの妖艶な笑みを浮かべた。
 とても幸せそうに。

 生きるために必要になるもの…それは生甲斐である。
 シグルトは、サキュバスの少女にそれを示した。

 生甲斐を得た者はそれを目標にできる。
 とても充実感のある生を歩める。

 時にそれは、幸せに成り得るのである。

 アンジュがにこやかに笑うと、えも言われぬ芳香が辺りに満ちる。
 彼女から薫るその甘い香りも、どこかそんな幸せに溢れているのだった。



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Y字の交差路


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特殊型と強さに関する考察(ぼやき)

2018.07.28(08:56) 471

◆特殊な才能型
 カードワースには特殊な才能型が存在します。
 隠しキャラに近いもので、その発生率は低め。

 特殊型は全部で6種類。
 条件を満たすと界の才能型選択で生まれます。

 標準型・万能型の上位型である英明型。
 勇将型・豪傑型の上位型である無双型。
 知将型・策士型の上位種である天才型。
 あらゆる能力値が一般人並、その代りレベルが12まで上がる凡庸型。
 万能で勇者のような才能と、レベル12まで上がる英雄型。
 そして、最も発生し難く能力値が高くてレベルも15まで上がる神仙型。

 その中で、Y2つは2世代目に英明型を発生させ、その特殊型の子供が英雄型になったことがあります。
 キャラクターを作った順番の遺伝子の変移を測って、狙ってやれば発生させられるのですが、最も発生が難しい神仙型とかは4世代めぐらいまで育てないと生まれなかったような…

 特殊な才能型…特殊型は、現在は新しいエンジンのBuilderで連れ込みPCを割と簡単に作れます。
 ただ、Builderで作成したキャラクターって特殊型の遺伝子持ってるんでしょうかね?
 遺伝子は親同士の持つ数列の組み合わせで発生したはずなので、連れ込みPCは遺伝称号を打ち込んでないと結局は能力値だけの凡人ということになるのではないかなと。
 カードワースの連れ込みキャラの遺伝情報はオール0だったような。

 拙作『特殊な種EX』を使えば、「遺伝子を持つ特殊型」を一応作成できます。
 本当は遺伝子のバリエーションを考えると、もっとやりようはあるかもなんですが、さすがに対応しきれません、と申しますか。

 特殊型発生について知りたい方は、ネットの海を検索しながら泳いでみてください。


◆特殊型は強い?
 Y2つめが特殊型を使った感想を言いますと、強いというよりは得意分野が多いだけのような気がしました。
 カードワースでは、宿で作成したキャラクターの能力値が12を超えることは基本的にありません。
 Pyでは特殊な計算をしていて、基礎値が高いと13を超えることもあったような。でも、13以上は下がったり上がったりしなくなったような気がするんですよね…Ver1.50やNEXTのシステムが元来のシステムを継承したものであるなら、たぶん12で止まるはずです。

 Y2つめは『特殊な種EX』を使って、Ver1.28で生まれるキャラクターの能力値変動をバイナリエディタで何度も何度も調べました。(実は、『特殊な種EX』の原型はこれらのデータ検証用に作ったものなのです)
 その時のシステム特徴から申しますと、特殊型は「バランスよく総合的に能力値が高め」なのと「正当な発生を経た特殊型は特殊な子を発生させやすい遺伝子を持っている」と言ったところです。
 特別ぶっちぎりで強いわけではありませんでした。


◆神仙型は強いが、性格的面白味は無いかも
 Y2つ、実は特殊型の中でも神仙型はあまり好きではありません。
 レベル15まで上がり、平均能力値8ぐらい。確かに強いですが…実は性格的な数値が平たんなのです。

 むしろ主人公っぽくて、ぎりぎり【ごく一部の人間のみが到達しうる領域であり、後世に“英雄”として長く語り継がれる存在】を体感でき、ほどぽどに発生する身近な特殊型のは英雄型かもしれません。

 神仙型は唯一レベルが15まで上がるじゃないか!とおっしゃる方。

 Y2つは、思ったのですがね。
 レベル15になって、無双スキルを山ほど付けて、防御無敵ギミックかます敵を防御貫通即死スキルで強敵をぶっ殺しても、虚しさが残るだけでした。
 いや、その時だけは痛快なんですけど、やった後に不毛だなぁ(自分の行為が)と。
 それにレベル上限は…これは最後の最後にしましょうか。

 神仙の世界は孤高です。
 神仙型を6人並べても、だから何なんだろう?と。

 レベル15を並べて思ったことは、「対応シナリオ少ないね」でした。

 圧倒的な強さで、今まで勝てなかった強敵を打ち破る。
 なろうのチート転生ものですよね、まるで。

 他の底辺キャラが持ってない特別な才能で無双しても、一時期優越感を得た後に「パワー的なごり押し」をしただけだと感じて、ゲームとしての達成感があまり無かったのです。

 あと、「ある意味でこれ以上が無い」ことでレベリングを極めることに飽きてしまいました。


◆特殊型的な強さの果てに
 結果としてY2つめは、「ごく一般的な」勇将型や「一般の限界よりちょっぴり強い」英雄型などで、レベルも能力値も高いチート敵キャラに工夫で勝つ楽しみに目覚めました。

 同時に、ASKさんがどうして通常レベル10を上限としたのか、何となく感じました。
 上限を設けないということは、キリがないのです。

 人間は不老不死に憧れます。
 永遠とは魅力的に見えますが、変化がありません。

 強さもそうです。
 限界の超越合戦をしてても、システムを握ってる製作者側がさらに上を用意できるんですよ。

 この事実に行き当たった時、Y2つめは「ただ数値が高いだけなのは、バランスを壊すばかりで好ましくない」と感じるようになりました。
 いつぞや、闘技場シナリオに関して「魔界闘技場」という表現を使いましたが、Y2つの最終的に至ったバランス感が、レベルや能力値を基準以上にすることにいくらか忌避感を与えていて、そう感じたのでしょうね。

 一般人を能力値平均4とする考えは、これで一般人より平均6の冒険者が少しだけ優位を感じられ、普通のキャラクターの実力を「主人公的若干の優位性を感じて」楽しめるのです。
 6を平均と考えて6を下回ると「劣る」と考える場合、得意分野を持つには神仙型の能力値バランスが「普通の優秀ライン」に見えてしまう恐ろしい勘違いを回避できるのだ、と考えるようになりました。

 多くの人間は、平均以下って言葉には忌避感を覚えるものです。
 6が平均って考えると、凡庸型って能力値がほぼ平均を下回ってしまうんですね。
 同時に普通に作成できる冒険者が、なんとなくちんけなキャラに見えてしまうのです。
 私は、だいぶ昔に自身がそういう歪んだ価値観に一度囚われたことがあるため、バランス感覚を見直した過程があります。

 そして、人型の能力値限界12でいいよね、と。
 レベル上限10で足掻いてこそ、人間らしいなぁと。

 Y2つは能力値平均5ぐらいでも、そこそこのキャラクターができると考えます。
 この理念のもと、「逆境や欠点、凡庸さ…へっぽこを楽しもうぜ!」的にできたのが、カードワースダッシュコモナーです。

 NPC作成は合計値を振り分けて作ることもできるので、能力値は普通よりそこそこ高め、性格は極端で作れば、十分な実力になります。
 無理にレベルを上げなくても、PCの実力は能力値1~12と考えれば、そっちに合わせた方が極端にならないのでは?とY2つは考えます。

 「普通の能力値のキャラクターだと一撃必殺される」と感じた方は、たぶん防具や防御バフのセットがいまいちです。

 単一ボスモンスターなら、PC6人分を相手にしていると考えて、体力3倍の防御力+5ぐらいで確かにちょうどいいでしょうね。まぁ、拙作のカウンターのような「集中攻撃で発動するギミック」や適性高めの【薙ぎ倒し】を適度に入れれば、緊張感は保たれるでしょう。巨体による部位を増やすことで、あたかも集団のスペックを持っているようにもできるでしょうね。

 これはPCにも言えることなのですが、高レベルのギミック戦闘は多くが【魔法の鎧】や【シルフィード】【硬練気】前提なんですね。

 拙作の【防具屋】は、「3~4レベル高いボスキャラに【甲冑】を装備させると、回避補正を含めてちょうどいい」という考えでして、雑魚にも防具を配ればそれなりに強くなります。
 
 カードワースでは、アイテムカードが「即使用できるので自動使用されやすい」「どんな設定でもできる」「スキルのような基準がない」「手札の循環を妨げる」などの理由から、嫌われている傾向があるように思われます。

 あまり使ってほしくないアイテムは、適性を苦手なものにすれば(あるいは使用効果をオフにすれば)調整はできるのでやり方次第だと思うのですが。

 レベルアップやステータス調整をして、無理にバランスを取ったギミック戦闘は「スキルの出し合い」に代わります。
 そこで、使用すると防御や見切りに類する効果を発生する防具は、アクションカードの延長的な意味で「普通に」使えますし、使わせたくなければリサイクルのキーコードを付けて使用回数を0にしてしまえばいいわけです。
 
 とまれ、強化対策が「人外方向」に向くとバランスが崩壊しやすくなる、とY2つは考えています。
 何十回もテスト戦闘をして、ものすごいピーキーな設定を維持することは凄いことですが、能力値やレベルの逸脱は、たぶんプレイヤー側にも「それが普通」と誤解させてしまう可能性をはらみ、結果として作り手とプレイヤーとの間で、人外 VS 凶悪装備、の比べっ子が起こるのではないかと。

 Y2つはプレイヤーとして、バランス論を出し、その上で自身が作り手として守る・バランスの保持をするための手段を考える、という考えも前提に、最近のシナリオを作成しています。

 旧シナリオのスキルも結構強そうに見えて、癖が強いので威力は据え置きのものが多かったり。
 召喚系+魔力溜めに時間がかかる【蹂躙の災禍】とか、超効果である石化は成功率が低くて事前の効果である睡眠効果が発動していないと強敵にはまず効かない上、召喚獣が攻撃でガスガス減る【氷雪の君主】など。
 あの当時も一応考えてたかも。


 閑話休題。

 特殊型は、通常冒険者に比べた微妙な優越感を遊ぶには適した才能型です。
 同時に、プレイヤーの特権としてNPC側には乱発は避けてほしいな、とも。
 普通に優秀なNPCは、一般冒険者並でも十分だと思います。

 遊ぶプレイヤー側は、玉に使ってみるとしても突出した才能がある特殊型(英雄型・神仙型)は抑えめでいいのではないかなと。
 特殊型ばっかりの“風を纏う者”リプレイを書いてて思うのですが、あれらは「シグルト以外は普通の特殊型+一般型もあり」で「5人でプレイする縛り」と「連れ込みキャラを加えて偉業達成(例えば某シナリオのクラーケン撃破)を狙う」目的もありますので、参考には多分ならないかも。
 私もお遊びが過ぎますかね?


 まぁ、これもリプレイ書きの戯言ということで。

 この記事は誰かやシナリオの在り方を貶すつもりで書いたものではありません。
 また、【バランスについて考える】啓蒙活動の一環だとも思うので、悪影響を与えるとかそういうつもりで書いたものでもありません。
 悪しからず御了承下さい。



 最後まで読んでいただいた方に、とっておきの裏技をお教えしましょう。
 どうせなら、某闘技場で一般作成キャラクターを使って神様に挑んでみたい方とか、古い作品に登場する親父に挑んでみたいなと言う方にお勧めの技です。

 それは…【バイナリエディタ等を使わなくてもできるレベル上限突破(15を超える)の方法】です。
 まさに、禁術中の禁術、バランスブレイカーの極致。

 Y2つはこれによって何が起きても責任は取りません。
 Y2つめはこの裏技を体感し、レベル上限突破した世界の虚しさを知りました。
 あれは…なんというか、山のてっぺんで寒風に吹かれる様な孤高感だったような。

 Y2つがこの裏技を紹介することを気にいらないと考える方に。
 〈一度バランスブレイカーの極致、超越レベリングの孤高を感じてもらうのもいいだろう〉、という意味で紹介するものですが、そういうのがいまいちわからない方は続きを読まないことをお勧めします。

 Y2つは、体感してみないとわからないこともあると思うのですよ。
 
 やる場合は、くれぐれも自己責任でやってください。

 ユーティリティを使えば、Ver1.50(たぶん同系列のNEXTでもできるでしょう)エンジンでしたら簡単にできるので、「どうしても強さを極めたいんだ!」と言う人のみお試しください。
 神仙を越えた、神の世界を体感できますよ。

 こういうのが嫌いな方は、この先は読まないでください。
 再度のお願いです。

 必要な方のみ、続きをお読みください。

⇒特殊型と強さに関する考察(ぼやき)の続きを読む

Y字の交差路


タイトル画像

『棒杖のお店』

2018.07.25(01:18) 470

 序盤用の低価格回復アイテムや解毒効果、準メジャーキーコード、マイナーキーコードの補てんなどを意識して、某TRPGのコモンルーンみたいな感覚で使えるアイテム供給を目指して作成されました。

 精神点消費の無いカードワースにそれらのシステムを導入する場合、低価格で魔力をチャージできるといいなぁということで、最大6回使用でき、『防具屋』と同じく販売価格の2割リサイクルできます。
 とっても経済的です。

 棒杖はただ価格破壊をしたのではなく、杖を振るう時に呪文を唱え、効果はインスタントな魔法として扱われるようになっています。ただ安価になったのではなく、魔法使い向きで適性も影響します。
 ソロプレイにおける回復補助や、ちょっとほしいバフ、強すぎないラインの攻撃魔法をキーコードを兼ねて、といったものがありますが、マニアックな内容の普通は何の役にもたたない品物までありますよ。

 某シナリオの憑精術が持つ特殊キーコードや、耐環境時限消滅称号(耐環境称号)と名付けた冒険中耐環境能力や特殊能力を得る時限消滅称号付与の杖があり、それらで、疫病のウイルスや放射能に汚染された場所に行く時の防護服代わり、火山や深海に行く、トンネルを掘ったり、透明化したり、探索から隠れたり、自分が魔法をかけられたり探されていたりすることを感じ取ったり…

 他にも『隠者の庵』の一部スキルに関するクロス、店主がする話題にニヤリとさせられるかもしれません。

 敵側の補助アイテムとして使ってみたり、使用回数が無い状態でも報酬として使えたり。
 いろいろなシナリオに対して、リソースデータとして使えそうなネタを入れてみました。
 リソースとして扱う場合のやり方や解説など、付属テキストで紹介しています。

 拙作『防具屋』とともに御活用いただければ幸いです。


ダウンロード場所は Y字の交差路別院


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・Y2つめの所在
◇メール:waiwai542●gmail.com
◇ブログ:Y字の交差路
 アドレス:■://aradia.blog69.fc2.com/ 
 ●を@
 ■をhttp
◇更新履歴
2017/12/20 Ver0.10 
2017/12/21 Ver0.11 【命知の棒杖】が消えないバグ・誤字などを修正。
           テキスト誤字修正。
2017/12/28 Ver0.12 来店初顔のループバグ修正。
           さつきさん、バグ報告有難う御座います!
2018/01/03 Ver0.13 #インポート利用書式例 のテキストを追加。
2018/01/08 Ver0.14 棒杖の敵に影響するものを必中(バグ)から抵抗に変更。
           【烈風の棒杖】の高威力バグを変更、ダメージだいたい半減。  
           展示速度に弊害があったので、商品をカスタムで並べました。
           一部テキスト修正、誤字の修正など。
           さすらい人さん、詳細なバグや不具合の報告有難う御座いました! 
2018/07/16 Ver1.00 新商品【秘匿の棒杖】【発覚の棒杖】追加。
           テキストの誤字修正、内容の加筆。 

Y字の交差路


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