Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

『黒い稲妻』

 ラングは適当な酒場を探して、交易都市を歩いていた。
 
 真昼からやっている酒場は意外と少なく、ましてゆっくり飲めそうな穴場はなかなか無い。
 たいてい酒場というものは、前日の酔っ払いの酸っぱい残り香を消すために、昼間は準備中である。
 
 冒険者のように自由な時間を持つ職業は、意外に少ないものだ。
 交易都市の多くの職人や商人たちは定期的な労働の後、夕方以降に酒を飲むのだから。
 このせいか、冒険者にはだらけた職業だ、という印象を抱く者も少なくない。
 

 貸切で高い酒を飲む手もあるが、しない。
 それを可能にするぐらいの金はあったが、そこまでして飲みたいわけでもなかった。
 
 飲酒は13歳で、女は14歳で。
 博打は幼少の頃に幼馴染と菓子を賭けた遊戯を除外するなら、15歳の時に初体験を済ましている。
 
 どれも、心を揺さぶるほどの快楽は得られなかった。
 飲酒だけは、酒精のもたらす高揚と熱さが、ラングの心の寂寥を埋めてくれる。
 でも、酔いから醒めた後は決まって虚しい。
 
 酒に溺れるほど、ラングは弱いくない。
 加えて知り合いの中では一級の酒豪と言われている。
 
 だが、ラングが他に酔えるものはない。
 生来の鈍感さと無頓着な気質が、快楽や好奇心を止めてしまうのだ。
 
 …無性に虚しかった。
 仕事である冒険でも、生甲斐を感じてはいなかった。
 
 食べるために冒険者となった。
 ラングは天涯孤独の身であり、子供の頃から一人で生きてきた。
 
 初めての冒険で壮絶な命のやり取りをして、小便を漏らした経験もある。
 背筋の凍るような思いをして、盗賊団を一人で叩き潰したこともある。
 
 しかし、戦いの奮えも死への恐れも、10代のうちに磨り減ってしまった。
 
 子供の死体に取り付いた亡霊を、死体ごと叩き斬ったこともある。
 巻き込まれた戦場で、妻子の名を唱えながら襲い掛かってくる新兵の頭蓋を砕いたこともある。
 
 命を重んじる聖北の僧侶たちがラングの過去を知れば、懺悔もしないこの男は地獄に落ちると言うだろう。
 
 冒険者になって、10数年。
 子供の頃に焦がれた、心許せる仲間と血湧き肉踊る冒険など、今の彼の現実にはまるで無かった。
 まして、正義の味方などにはなれないと思っていた。
 さらに加えるなら、ラングは《正義》という言葉はこそばゆくて嫌いだった。
  
 今では熟練の冒険者として、生き甲斐もないまま、呼吸するように仕事を淡々とこなしている。
 殺人の罪悪感で泣いた夜が懐かしいとさえ感じていた。
 
 …とどのつまり、ラング グリードという冒険者。
 現在は磨り減った心と、老い始める大きな体躯を引きずっているだけのような冒険者だった。
  
 空虚な日々にうんざりとなって増えた彼の眉間の皺は、ラングを余計に強面にしていた。
 
 
 ぼんやりと酒場を探してうろついていたラング。
 
 数人の男たちが並んで歩いてくるのが見えた。
 …肩を切って歩いている、そんな感じの連中だった。
 
 男の一人が、派手な女の腕をつかみ、周囲の人間を睨むようにしている。
 腰の下げた剣や服装から見て戦士風…傭兵か冒険者の集団だろう。
 
 派手な女は、そっぽを向いて俯いている。
 かなりの美人で、服装は良い物だ。
 化粧の仕方から、昼間の職業ではない。
 娼婦の類だろう。
 彼女をひっぱている男たちが買えるほど、安い女には見えなかった。
 
 女の右頬が腫れている。
 この男たちに殴られた、と男たちの女の扱いから予測する。
 
 昼間から酒場を探すような男でも、ラングは冷徹な意志を常に心のどこかに置いている。
 即座に分析をして、状況を把握する。
 
 女の身体を撫で回し、あるいは頬を緩めて下卑な表情を浮かべている男たちの様子は、何かの依頼で女を拘束しているという雰囲気ではない。
 
 ラングが最初に考えた仮説は、「初めてこの交易都市にやってきた傭兵崩れの荒くれが、気に入った美人の娼婦を昼間からひっかけようとして見事に振られ、頭にきて拉致した」といったところだ。
 
(もし、そうだとしたらよほど阿呆な連中か世間知らずだな…)
 
 このまま行けば巻き込まれるかもしれない。
 厄介ごとに首を突っ込むのは、賢明な冒険者のすることではないのだ。
 
 しかしラングにはこのとき、密かな期待があった。
 たまには喧嘩も悪くない、と。
 
 この手の連中は気に入らなければ因縁を吹っかけてくる。
 そのついでにぶちのめせば、ついでに女は逃げられるだろう。
 鬱屈した虚しさを、少しは解消できるかもしれない。
 
 …加えて女はラングの知り合いだった。
 
 ラングは娼婦を買ったことが数回ある。
 ずっと昔、好色な冒険者の先輩に勧められてのことだが。
 
 女はその時に知り合った古いなじみだ。
 ラングが買った娼婦の、友人だった人物である。
 
 磨り減った心の中にも、ラングはお人好しと呼ばれる気質は残している。
 知り合いが苦難にあれば、その味方をすべきだと当然思う。
 
 周囲の者たちが目を合わせないようにして、顔を背けて道を空ける中、ラングは真っ直ぐに歩いていった。
 
 
 距離にして十歩。
 戦士風の男たちは、立ち止まってラングを注視した。
 
 ラングは軽く片手を挙げて女にだけ声をかけた。
 
「よう、フランチェスカ。
 
 今日は随分と不機嫌な顔じゃねぇか。
 客は選んだほうがいいぞ」
 
 完全に男たちを無視して、陽気な声で、だ。
 
 女の顔がぱっと希望に明るくなる。
 
「ラングの旦那っ!
 
 助けておくれよ。
 絡まれてこまってるんだ」
 
 女を掴んでいた男が、激怒した様子で女の腕を引き殴ろうとする。
 ラングはすっと近付いて、その男の足を蹴り払う。
 男がこける前に、女を掴んでいた腕も払いのける。
 
 何か行動しようとしている時に、軸足を不意討ちで思いっきり払われると実に見事にすっころぶ。
 顔面から受身も取れずに転倒した男は、ぐぇ、と無様な声を上げた。
 
 よろけた女は上手く抱きとめて、すぐ背後に庇う。
 
「…てめぇ、何のつもりだ?!」
 
 いきなりのラングの行動に、戦士風の男たちは激昂して歯をむいた。
 
 一方、ラングはため息を吐きながら、起きようと呻いていた男の頭を地面に押し付けるように踏みつけた。
 再び頭を大地に叩き付けられた男は、失神して動かなくなる。
 
「…知り合いが困ってたから助けただけだ。
 
 大方、この都市の流儀をしらねぇおのぼりの傭兵あたりだろうが、あんまりオイタはいけねぇな。
 お前等が、勝ち戦でやり放題出来る場所とは違うんだぜ?
 
 女を買うときは、売ってくれた時だけ買う権利がある。
 力で手に入れようなんて、餓鬼のすることだぜ?
 
 “鼠”に齧られねぇうちに、とっとと消えろ。
 この女は、穴倉の大鼠と同じ釜の飯食ってんだ」
 
 ラングは最後の部分で隠語で使う。
 助けたフランチェスカという娼婦は、今では盗賊ギルドの幹部の女である。
 そこいらの雑魚が抱ける女ではない。
 
 “鼠”というのは盗賊のことである。
 盗賊ギルドは、こういった都市の暗黒面を、裏で司る犯罪組織のようなものだ。
 やくざやマフィアに近いが、もう少し複雑で偏って秩序的な組織である。
 
 ラングの言葉の意味が分からない奴は、ただの世間知らずだ。
 
「何、言ってるかわからねぇぞ、黒んぼ。
 
 あぁん、殺すぞ!」
 
 男たちの莫迦な反応に、ラングは確認を終える。
 どうやら本物のおのぼりらしい。
 
 後ろに嫌な組織は無いだろうと予測する。
 この都市の冒険者であれば、こんな無茶をするのは鼻つまみ者ぐらいだし、兵隊なら派手なことは出来ないはずだ。
 面倒な組織関係が無い連中なら、復讐があったとしてもたいしたことはない。
 
「なぁ、フランチェスカ。
 
 後でギックの野郎に口ぞえ頼むわ」
 
 この娼婦はラングのこの一言で何のことか理解し、大きく頷いた。
 
 万一、問題が起きたときの大義名分を作っておく。
 ギックというのはこの女の男で、盗賊ギルドの幹部である。 
   
「…てめぇ、無視すんじゃねえっ!」
 
 のらりくらりとして見えるラングの行動に、男たちの一人が痺れを切らして殴りかかってきた。
 実に単純な拳打である。
 
 ラングがさっと避ける。
 つんのめり、体勢が低くなった男。
 すれ違い様に鎖骨に肘を一発。
 
 メキャ…
 
 骨の砕けた鈍い音。
 絶妙の角度で、完璧ともいえる力加減で強打すると、骨は脆い。
 加えて延髄にも手刀を打ち込んでおく。
 男は白目をむいて昏倒した。
 
 万一おきたとしても、鎖骨の骨折ですぐには動けないはずだ。
 
「…ゆっくり酒が飲みたいから、場所を確保してくれ。
 助ける駄賃はそれでいい」
 
 そこまで言って、ラングはようやく男たちを見た。
 
 あっけなく、屈強の男を2人も倒してしまったラングの手際に、悪漢たちは緊張した顔立ちである。
 
「…いい面だ。
 一応は人殺しで飯食ってる連中ってことか。
 
 忠告しとくが、殺し合いは戦場以外でも結構あるもんだ。
 この手の荒事なんて、この大都市じゃ数しれねぇ。
 
 俺は冒険者で、《こういうの》が得意なんだよ。
 一応依頼を受けた形だから、あんまり容赦はできねぇぞ?
 
 あと、死にたくないなら、こういったでかい都市のルールぐらい覚えておきな。
 
 好い女にはたいてい強い男ってのがついてるもんだ。
 女って縄張りを荒らされると、男って連中はとたんに莫迦みたいに暴れるぜ。
 
 つまらない面子のことは考えるなよ。
 すぐにこの寝てる連中を担いで逃げるならよし。
 
 そうでなきゃ、全員寝首を掻かれるぜ。
 この女の男は、そのぐらいの力を持った野郎だ。
 
 その前に、かかってきたら俺が相手になるがな」
 
 男たちのリーダー風の男に、ゆっくりそう告げる。
 男たちはしかし、ラングの忠告を無視し全員腰の剣を抜いた。
 
「…ど阿呆め。
 こんな場所でダンビラ抜きやがって。
 
 商売が出来ね体になっても、後悔するなよ?」
 
 ラングはそう言って即座に一人の男を殴り、よろめいたその男を盾にタックルする。
 
 戦士風の男たちは全部で6人。
 そのうち2人は先ほど気絶させた。
 
 そして、今2人をまとめて叩きのめす。
 絡まるように鼻血を吹いて倒れる男たち。
 
 人間の頭蓋骨は、ことのほか優れた鈍器になる。
 武器扱いされる方は、たまったものではないのだが。
 容赦なく、両方の膝を砕いておいた。
 気絶したから痛まない分だけ、良心的なはずだ。
 
 先ほどと同じく、起きても行動不能の状態にしておく。
 
 この手の傭兵はタフである。
 あまり手を抜くと、起き上がって不意討ちで大怪我をさせられることがある。
 
 絡む際、盾兼鈍器にした男に、犠牲者の剣が当たって出血していたが、致命傷にはならない場所だったからよしとする。
 
 間髪入れずに、剣の間合いより一歩深く入って鎧の隙間から抉りこむように膝を入れて、一人を戦闘不能にしていた。
 
 ラングの戦い方は殺さない程度、という実に破壊的な戦い方である。
 確実な手段を行う、冷徹な戦い方だった。
 
 相手は刃物を抜き、殺すつもりになった。
 脅したが襲い掛かってくる連中だ。
 ならば、最後まで中途半端はよくない。
 ある程度壊すつもりで戦わないと、こちらが殺されるのだ。
 
 ラングは仲間を持たない。
 フォローしてくれる仲間がない分、ラングの行動は隙が無かった。
 
 力をつけて有名になり、そのくせなんでもない雑魚に殺された一流は多い。
 
 冷徹になった分、油断しない分、それがラングの生存率を高めている。
 生き残る冒険者とはそういうものだ。
 
 勢いでもう一人、と思った矢先、凄まじい剣閃がラングの頬を抉っていた。
 じくりと溢れる血と痛み。
 
「…いい技だな」
 
 ラングは相手の技量に少し感嘆した。
 この実力なら、中規模の隊をまとめるぐらいは出来るだろう。
 
 距離をすっと取り、腰を落とす。
 
 相手が剣を高く上げる。
 剣術の上段、【鷹の構え】だ。
 
 上段に構えた剣を、その重さを加えて次の技を出せる状態にする、古典的で効果的な構えである。
 かつてラングは、北方のある傭兵がこの技を使っていたところを見たことがあるが、次の一撃は激烈なものになるだろう。
 
 ラングの目が鋭く細められる。 
 そして、相手が間合いに踏み込んでくる前に腕を振るった。
 
 バチバチィッ!!!
 
 一瞬で走った眩い閃光。
 最後の敵は悲鳴をあげることも出来ず、剣を構えたまま煙を上げて昏倒した。
 
「…あつつ。
 
 やっぱ、素手でやるもんじゃねぇな」
 
 焦げた袖を押さえつつ、ラングは痛みに眉をしかめた。
 
「…すごいね、旦那。
 
 魔法ってやつかい?」
 
 フランチェスカが目を丸くしている。
 周囲の者には、ラングが稲妻を放ったように見えたのだ。
 
「はは、ちょっと違う。
 一応は体術の一種だ。
 
 面倒な呪文がいらねぇ分、こっちの方が便利だしな」
 
 ラングは放電の後遺症でわずかに痺れる手を揉み解しながら、にやりと唇を吊り上げた。
 
 秘剣【轟雷放】。
 
 昔、一緒に仕事をした東方出身の剣士に学んだ技を、ラングなりに改良、強化した技だ。
 
 丹田…臍の下にある器官に電気を集めて、剣から稲妻として撃ち放つ技である。
 本来は剣先を放電の装置にするのだが、今回のように素手で放つことも可能だ。
 …だが、たんぱく質で出来た人体は放電には向かないため、その箇所が焦げる。
 電撃を放つ箇所に負担がかかる技だった。
 
 体内から出て、空気に触れた瞬間、電気は凶器に変わる。
 その接点である放出場所は、当然影響を受ける。
 ラングほどの熟練した使い手が手加減して使ったからこそ、多少の腕の痺れで済んでいるのだ。
 
 もしラングが本気で稲妻を放っていたら、敵もラングの腕も黒焦げになっていただろう。
 
「なるほど。
 
 旦那が“黒い稲妻”って呼ばれてるのは、こいつのおかげなんだね」
 
 軽く頷くラング。
 
 ラングはこの技の習得で一流に慣れたといってもいい。
 放電による遠距離攻撃は、剣士の欠点である間合いを掌握することが出来る。
 
 空飛ぶ敵、高台から狙撃する敵。
 遠距離にある敵を焼き、不意討ちで使用して数多くの困難な戦闘を生き抜いてきた。
 
 加えて電撃には短時間相手を縛り、筋肉の硬直で動きを阻害できる。
 生物は、電気で筋組織を動かしている。
 感電は、全身の筋肉を全方向に無理やり動かすようなものだ。
 結果は痺れたようになる。
 
 この技で切り崩し、重い必殺剣で敵を粉砕することは、ラングの得意な戦い方の一つだった。
 騎士が数人でも勝てなかった巨大な目玉の怪物を、この技で縛って屠ったこともある。
 
 《稲妻を使う黒い鎧の戦士》
 
 ラングはいつしか、“黒い稲妻(ブラック・ライトニング)”と呼ばれるようになっていた。

 
 
 ラングの戦闘編です。
 
 冷静沈着で分析的な戦い方をする、熟練冒険者の雰囲気が出てればいいのですが…
 
 ラングは狡猾ではありませんが、効果的で合理的な戦い方が得意です。
 
 二人目の敵に対する粉砕攻撃は、威嚇と恫喝の意味もあります。
 多少ダーティに見せて敵の戦意を削ぐことは、集団戦では必要になることです。
 加えて後の憂いをしっかり断つのはあたりまえ。
 
 ラングはお人好しですが、敵には厳しいという誠実さを持ちます。
 戦う以上は容赦しねぇ…このへんがシングル冒険者でありながら、生き残ってきた彼らしさだったり。
 
 戦場では子供にも容赦しません。
 ラングの師匠は、そういう戦いの黒い面も最後に教えています。
 油断していなければ、相手の子供を殺さずに処理できる可能性があることをことを、ラングは身をもって知っています。
 彼自身、そういう油断ならない子供から身を立てた冒険者でして。
 
 
 ラングは娼婦を買ったり、数人の女性と肉体交渉を持った過去があります。
 彼の娼婦に対する考え方も、昔の恋人の影響があります。
 こういう描写が苦手な方はすみません。
 でも、SEXに関する倫理や色恋って、エロティック宣言した以上、もっと出るので悪しからず。
 
 
 ラングの【轟雷放】は【剣叫ぶ雷霆】の上位スキルです。
 2Rの呪縛効果付きで、7レベル。
 カードワースの呪縛って、実は2Rが強力かつ合理的に使えるんですよね。
 相手が遅ければ、怪力で解除される前に集中砲火で倒すコンボにも使えます。
 【剣叫ぶ雷霆】は、最近のプレイ、特にソロプレイで活躍しています。
 遠距離の奇襲攻撃が出来るのですごく便利です。
 カードワース、【遠距離攻撃】のキーコードに対応したシナリオ、多いですからね。
 
 ラングは【居合斬り】の上位スキルや、やや強い全体攻撃のスキルを持っています。
 装備品が濃いことも、彼が熟練である特徴です。
 
 加えて、こういう得意スキルから2つ名をつけられる冒険者って、けっこう多いのではないでしょうか。
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『白い殲滅者』

 そこは醜悪な場所だった。
 
 血肉を貪る怪物たち。
 かつては同じ村人だった者たちが、死んだ後に喰らう側と喰らわれる側に回った壮絶な地獄絵図。
 
 もはや、この村には生きる人間はいない。
 
 血の饗宴を眺めながら、杯に注いだ生き血をすすり、かしずく女の頭を撫でる男。
 
 女はかつて、村一番の美女だったものだ。
 血の気の無い青白い顔は、先ほどまで恐怖に歪んでいた。
 今ではただ奴隷のように男に従っている。
 
 この女は、明日は他の男と結婚する予定だったという。
 一目見て気に入った男は、村に女を要求した。
 
 男は奪うことが好きだった。
 気に入ったものは、何が何でも手に入れて来た。
 
 女も村人も、男を拒絶した。
 だから、村を滅ぼして女を奪った。
 
 女の婚約者だった男は、グールたちに貪り食われ、引き裂かれた。
 それを見て失禁して震える女を男は犯し、血を全て啜って夜の眷属に迎え入れたのだ。
 
 男は満足気に笑う。
 
 男には絶大な力があった。
 力を得る前は、ただの強欲な人間だったが、今の男は欲望のままに振舞える。
 その力の前に、この小さな村は一瞬で滅んだ。
 
 男は己の強さに酔って楽しげに笑い、女の冷たい肌を撫でた。
 
「…聖者は云った。
 
 死者は死すべきであると」
 
 唐突に闇から澄んだ声が聞こえてくる。
 
「死者には墓標と花束を。
 
 生者には恩寵と安寧を」
 
 夜の闇から現れたのは、白い外套を纏った者。
 声は女のものだった。
 
「…亡者には引導と鉄鎚を。
 
 見つけたわ、《塵》の亡者」
 
 外套の女は手前で十字を切った。
 
「…ディーン ベラル。
 
 貴方を、異端と認定し、御身を討滅する」
 
 武骨な籠手をぬっと突き出し、それに刻まれた十字の聖印にそっと口付けすると、女は闇に映える赤い眼光で男を射抜いた。
 
「…ふん、聖北の犬か。
 
 面白い。
 貴様も尻を振る奴隷、私の椅子にでもしてやろう」
 
 男はニタリと笑う。
 
 同時にグールたちが、外套の女に襲い掛かる。
 
 ヒュッ…
 
 風を切る音がした。
 そして、一体のグールが動きを止め、灰になった。
 
「…灰は灰に」
 
 女は白刃を躍らせた。
 グールが首を断たれ、見る間に崩れ去る。
 
「…塵は塵に」
 
 女の手に握られた鉄塊がグールの頭を半ば粉砕しつつ、かち割った。
 
「…土は土に」
 
 近寄るグールを、武骨な籠手で殴り飛ばし、即座に切り捨てる。
 
 外套の女が聖句を唱えると、残った亡者たちは蒼い炎に包まれて見る間に燃え尽きた。
 
「なんとっ!」
 
 男は目を見張った。
 
 外套の女は、金色の美しい柄の剣と、鉄の武骨な長剣を構えていた。
 その双剣を十字にクロスさせる。
 
「我は狩人、聖なる殲滅者。
 朽ちよ邪悪、滅びよ忌まわしき者。
 主よ、誇らしく称えん。
 
 主は偉大なり。
 
 我は主の御名において主の怨敵を滅し去る者。
 
 …聖なる鉄鎚なり」
 
 初めて男は恐怖を覚える。
 
 男はかしずいていた女の後ろに立った。
 
「行けっ!
 
 アイツを…」
 
 女がゆっくりと立ち上がり、牙をむいて外套の女に襲い掛かった。
 だが、その牙と爪が届く前に、外套の女は金色の柄の剣で、哀れな女の心臓を貫いていた。
 
 見る間に灰になって崩れていく女。
 女が掴みかけた外套からわずかに覗く、赤い瞳。
 
「…そうか、貴様、同族殺しかっ!」
 
 男は後ずさる。
 
「…主よ、許したまえ。
 
 この身の不浄を。
 煉獄の扉を開く、罪深きこの腕を…」
 
 祈るように双剣を打ち鳴らす。
 そして、一瞬で間合いをつめた。
 驚愕に歪んだ男の首を、双剣で挟むように跳ねる。
 
「煉獄にある者よ。
 地獄に堕ちる者よ。
 
 汝らにも主の恩恵があらんことを。
 願わくば主の慈悲があらんことを。
 
 主よ、罪深きこの身とともに救いたまえ。
  
 …主よ、哀れみたまえ」
 
 男が見る間に灰になっていく。
 
 ただ朗々と、外套の女の葬送の祈りが、夜の闇に融けていった。
 
 
 炎に包まれる村を後に、外套の女は振り返らず歩いていく。
 
 やがて、大きな広場に出ると、そこには数人の僧服の男たちが待っていた。
 
「…どうやら、無事任務を終えられたようですね」
 
 僧服の一人が、引きつった顔で言う。
 
「…あれを無事、というなら、貴方は聖職者を辞めたほうがいいわ」
 
 赤々と夜の闇に火の粉を吹く、吸血鬼に滅ぼされた村。
 
「口が過ぎますぞ、フェリス様。
 
 犠牲者を哀れむ気持ちは、皆同じはずですからな」
 
 でっぷりと太った男が、どこか蔑みを含んだ目で、外套の女を睨む。
 
「そう思うなら、吸血鬼が出たという話をなぜすぐに伝えなかったの?
 
 伝令が一日はやければ、犠牲者はほとんど出なかったでしょう。
 私が聞いたところでは…
 
 デップ司祭、貴方が独断で確認をさせたそうね?」
 
 外套の女はにらみ返すように、太った男を見る。
 男は慌てて目をそらした。
 
「…それは、ちゃんとした…」
 
 視線を泳がせる太った男に、外套の女はつかつかと歩み寄り、唐突に殴り飛ばした。
 
「…あぎゃぁっ!」
 
 まさに吹っ飛ぶ勢いで、太った男は無様に地面に叩きつけられる。
 歯が数本折れ、顔が歪んでいた。
 
「…貴方が法王庁のお偉い方に、私のことをあること無いこと吹き込むのは構わないわ。
 
 でも、貴方の身勝手な行動で、村が一つ滅んだ。
 
 吸血鬼のことは、我々“神の鉄鎚”に一任されているわ。
 この地区の指令をしているのは私よ。
 
 そして、私の指令着任の際も言ったはず。
 どんなガセでも、吸血鬼の出現は必ず報告し、速やかに行動するようにと。
 
 吸血鬼を敵にするときは、迅速さを最も尊ぶ。
 だからこそ、厳命しておいたはずなのに。
 
 異端討滅組織“神の鉄鎚”とは、異端審問で破門にする程度では危険な存在を、力で粉砕する破邪の鎚。
 柄の腐った鎚など、何の役にも立たないわ。
 
 命令を遅らせて、村が滅んだ責任問題で私の失脚を狙ったようだけど、残念ね。
 貴方は今回のことで、宗教裁判を受け、確実に破門になるでしょう。
 
 証拠の書類も、私の部下が押収しているわ。
 
 …くだらない貴方の権威欲で、一つの村が滅んだのだから。
 その身が極刑に処されない幸運をあたえたもう、主に感謝しなさい」
 
 あまり迫力に、周囲の僧服たちは皆腰を抜かしていた。
 
「貴方たちも、デップ司祭に加担した罪の責任はとってもらうわ。
 
 今後、こんな腐ったことをしたなら…
 私自ら鉄鎚をその頭に振り下ろすつもりだから、肝に銘じなさい」
 
 がくがくと頷く僧服たち。
 
 外套の女は、素早く踵を返すと、いらいらした足取りで去って行った。
 
「がぁ…
 
 くぅ、おのれ、おのれっ、あの“灰もどき”めがぁ!!!」
 
 殴られた顔を押さえ、太った男は怨嗟の叫びを上げた。
 
 
 聖北教会には非公式の組織がある。
 
 異端討滅組織、“神の鉄鎚”もそのひとつだ。
 
 異端討滅組織とは、異端審問では処理できない特別な宗教的敵を、文字通り討伐し滅する組織である。
 聖北の教えが表の上では平和的布教である以上、教会組織の異端審問など、できることはたかが知れている。
 
 せいぜい聖北の社会から破門する程度。
 
 処刑や拷問を行うイメージに取られがちな異端審問の組織は、実のところ一部の暴走した狂信者でもない限り、宗教上の問題を解決するために組織されたものでしかなく、破壊的な力はあまりないのだ。
 その組織が特別な権力や軍隊と結びついた場合は別なのだが。
 
 かつて行われた魔女狩りと称されるいわれのない異端狩りのせいで、教会は歴史上大きな汚名を背負うことになった。
 教会組織はイメージ改善のために慎重になり、異端審問を行う者にも同様の義務が課せられた。
 
 しかし、世の中には宗教的な過激犯や、邪悪で破門などまるで恐れない闇の住人たちがいるのも確かだった。
 そういった危険すぎる異端的存在は、放っておけば聖北の社会そのものを害することになる。
 
 そして、教会はそういった危険な存在を叩き潰す力を必要とし、公ではない形で力を持った組織を作り出した。
 
 迅速かつ徹底的に邪悪を叩き潰す、破壊の鎚。
 教会の闇を司る、いわゆる《潰し屋》である。
 
 “神の鉄鎚”が生まれたばかりの頃、教会は公ではないこの組織を体のよい暗殺組織のように利用した。
 組織には荒くれものばかりが集まり、神の名において恐ろしい破壊活動を命じられるままに行う。
 問題が起きた時、非公開のその組織の事はただ知らん振りをすればよい。
 教会にとって、実に都合の良い力であった。
 
 彼らはただ命じられるままに破壊し、蹂躙した。
 
 だが、この力に驕った時代は長く続かなかった。
 間もなく本物の邪悪…邪教や吸血鬼といった歴史の闇に蠢く恐ろしい存在とぶつかり合うことになったのである。
 
 本当に力在る一部の者以外、真の邪悪に対して“神の鉄鎚”は全く役に立たなかった。
 あせった教会は、失態を埋め合わせるために《毒》に手を出した。
 
 敵とする邪悪と同じ異形や異能の力を求めたのである。
 聖北教圏のあらゆる場所から、邪悪から厚生させることを名目に様々な子供たちが集められた。
 
 曰く、悪魔憑きの子供。
 曰く、淫魔の子供。
 曰く、呪われた子供。
 
 そういった子供たちは、所属する社会によってほとんどは抹殺されてしまうのだが、わずかに生き残ったものたちが集結させられた。
 
 神の教えと、成すべき義務を叩き込まれた子供たちは、真の邪悪への強大な反撃の牙となった。
 戦うべき力は、元々持っていたものをさらに磨かれて、戦地に送り込まれる。
 まるで、呪われた存在を生み出したものに復讐するように、新しい“神の鉄鎚”は異端を粉砕した。
 
 <毒を持って毒を征す>
 
 呪われた生まれの者たちが、神の名と正義のために善行を行える。
 その大義名分は、荒んだ心を持った子供たちを狂信という枷で縛り、ためらいのない戦いをさせた。
 殉教者となれる恍惚に、異能の聖戦士は死地でも恐れなかった。
 
 半世紀で、“神の鉄鎚”は教会の恐るべき力になった。
 
 
「…指令、お帰りなさい!」
 
 金髪の愛らしい顔立ち少年が、笑顔で外套の女を出迎えた。
 
「ありがとう、ロト。
 
 アレクたちは?」
 
 少年の髪をなで、周囲を見回す外套の女。
 
「ゲブル教の追いたてをやってるよ。
 
 僕も行きたかったんだけど、留守番しろだってさ。
 馬鹿にしてるよね。
 僕だって強いのに…」
 
 不満そうな少年に、外套の女はため息をついた。
 
「討滅は遊びではないのよ。
 
 気を抜けば殺されてしまうの。
 貴方はまだ子供だわ。
 特に心の部分が、ね。
 
 それに、戦いを求めるのは聖職者のすることではないわ。
 私たちの出番は、少ないに越したことはないの。
 
 加えて、貴方は次代を担う大切な戦力よ。
 奥の手なんだから、出番が来るまでは待たなきゃね」
 
 そう言うと、少年は不満そうな顔で頷いた。
 
 周囲を見回し、誰もいないことを確認すると、女は外套のフードを脱いだ。
 月の光に照らされて、真っ白な髪が露になる。
 その瞳は血のように赤い。
 白兎を連想させる容貌…アルビノである。
 
 メラニンなどの色素がなく、白髪赤目に生まれつく、白子と呼ばれる色素欠乏症のことだ。
 紫外線に弱く肌が火ぶくれをおこすため、強い光は天敵となる。
 いつもこうやってフードを目深に被ることで、光から身を守る。
 しかし、外套には容姿を隠すためにも使われていた。
 
 赤い目は血を連想させ、同時に知識の無い輩が呪いのように忌み嫌う。
 事実、赤い目を持つ子供には攻撃的な異能を持つ者も多い。
 
 外套という被いは、偏見という刃から身を守る鎧でもあった。
 
 “神の鉄鎚”には現在7人の指令職がある。
 その一つ、異彩異能の輩を束ねる女傑。
 名はフェリス ラザハッドという。
 聖北にあって、殉教した聖女と同じ名を冠する聖戦士であった。
 
 外見は20歳ほど。
 
 アルビノになるものは、基本的に美しい容貌のものが多いが、彼女は抜きん出ていた。
 若々しいその姿を見たものは、白い魔女と評するか、あるいは雪の妖精のようだと言う。
 
 アラバスターのように白い肌。
 端整で、穏やかな美貌。
 柔らかな長い白髪が、流れるように夜風になびいていた。
 
 ほっそりとした体格である。
 たった一人で不死者たちを瞬殺したと言っても、彼女を知らない者は信じないだろう。
 
 少年にフェリスが微笑むと、その犬歯の部分に銀色の光が現れる。
 純銀の差し歯であった。
 
 よく見れば、聖印が刻まれていることに気づくだろう。
 
 それは彼女の背負った、呪われた十字架そのものであった。

 
 
 本編のヒロイン、尼さん戦士フェリスの登場です。
 性格はだんだん明らかになりますが、説教臭い性格をしています。
 
 Djinnさんの小説を読んでいる方は彼女がどんな種族か、もう分かったと思いますが、純粋な人間ではありません。
 
 アルビノで双剣使いなんて、こてこてですが、彼女の原形が生まれたのはなんとまだ世紀が変わる前だったり。
 私がカードワースを知った頃、雑誌付属のエディタで作ったNPCでした。
 その時には伊達眼鏡をかけていて、戦闘時には眼鏡を取ってスイッチが入り、薀蓄モードで眼鏡を直すインテリモードがありました。
 
 まだ出ていませんが、強力な決めスキルを所持しています。
 
 オールマイティで、秘蹟と剣術を両方使いこなします。
 彼女のセリフは、ほとんどが適当なんですが。
 
 私、仏教徒なので、聖書はあんまり読みません。←ある意味不心得者
 格好良いセリフ、募集中です。
 
 彼女の能力値は…
 
◇フェリス ラザハッド◇
 
・年代:若者(32歳)
・性別:♀
・勇将型(能力的には英雄型相当) 
・レベル7 
 
 器用度:5 敏捷度:6 知力:9 筋力:9 生命力:6 精神力:10
 平和性+1 勇猛性+3 慎重性+2 正直性+2

秀麗     高貴の出   厚き信仰
誠実     冷静沈着   無欲
献身的    秩序派    神経質
穏健     勤勉     謙虚
武骨     硬派     お人好し
 
 
 老化がゆっくりなので、身体能力は若者のままです。
 ばればれですが、彼女が何でこんなに優秀なのかはまた説明しますね。
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『黒い鎧の男』

 一人の男が酒を飲んでいた。
 
 湿気た木の生臭い香りがする、宿兼酒場。
 
 そのカウンターで、色気も無い三十路前の宿の主人に注がれた安酒を、ぐびりぐびりとやっている背の高い男。
 
 眼つきの鋭い男だった。
 一睨みで獅子でも怯みそうな眼光である。
 
 刃渡りだけで1mある大剣が、カウンターの彼の傍らに立てかけられていた。
 それを振るう腕は、程よく締まった強靭な筋肉の固まりだ。
 傷痕が多数あり、彼の戦歴を物語っている。
 
 腕ばかりでなく、筋骨隆々というわけではないが、野獣のしなやかさを連想させる身体つき。
 背丈は180cmを越える。
 そして、その体躯を覆う漆黒の革鎧。
 
 強面からか、側には誰も近寄ろうとしない。
 
 この宿は『冒険者の宿』と呼ばれる、何でも屋のたまり場である。
 そして、この宿で黒い鎧を着た剣士と言えばこの男。
 知らない者は少ない。
 
「…おい、ラング。
 
 あんまり昼から飲んでると、次の仕事に障るぞ?」
 
 宿の主人が不機嫌そうに言うと、男は外見通りの低い声で、ああそうだな、と生返事をした。
 
「…かといって、俺が出張る仕事もすぐにはねぇだろ。
 
 あの《牛退治》みたいなのが、頻繁に起きるわけもねぇ。
 ちったぁ、酒飲んでごろごろしたって、聖北の神様とやらだって勘弁してくれるさ」
 
 宿の主人はため息をつくと、八つ当たりするように手近な食器を取ってゴシゴシと磨き始める。
 
 ラング、と呼ばれた男は、木製のジョッキに残っていたエールを飲み干すと、銀貨を数枚カウンターにおいて席を立った。
 
「親父ぃ。
 そんな仏頂面じゃ、客が逃げるぜ。
 
 …河岸を変えて、もう少し飲んでくらぁ」
 
 男はそう言って、外見と口調からは想像できないような、滑らかな動作で宿の入り口に歩いていく。
 
 ドアを閉めて、男が去って行った後。
 宿の主人は大きなため息を吐いた。
 
「…お前みたいないかめしいのが、昼間っから管巻いて酒を飲んでると、客も寄り付かないんだよ。
 
 一人でミノタウロスを屠るような奴が、な」
 
 
 宿を出て、のんびりと歩いている黒い鎧の男。
 名をラング グリードという。
 
 性別は男で、職業は冒険者。
 
 粗野で、信仰心はからっきし。
 腕っ節はめっぽう強く、度胸もある。
 
 愛用の大剣は、鎧に合わせて黒くつやを消したもの。
 切れ味より、耐久力を重んじた半分鈍器のような代物だ。
 だが、よく手入れされている。
 柄に巻かれた革は汗と返り血を吸ったのか、どす黒い。
 剣の飾りや護拳の鍔は、やすりをかけたものではない磨耗で丸くなり、良く見れば細かい傷が無数にある。
 
 他の様々な装備の磨り減り方からも、熟練冒険者であることが予測できた。
 
 事実、ラングは冒険者の宿『希望の扉亭』で最高の冒険者だった。
 
 数日前にはミノタウロス…牛頭の怪力巨人…をたった一人で倒すという荒業をやってのけたほどだ。
 
 しかし、彼が倒したミノタウロスは、実は通算3匹目である。
 1匹目はまぐれだったが、2匹目からは実力で倒した。
 妖魔や魔物退治だけなら、百を越す討伐数を誇っていた。
 
 しかも、ラングはあまり長く仲間と組まないことで知られる冒険者だった。
 普通の冒険者が数人で成し遂げることも難しい依頼を、ラングは淡々とこなしてきた。
 
 一見柄が悪く、厳しい雰囲気を持つ、孤高の冒険者。
 その勇名は、冒険者たちの間に知れ渡っていた。
 
 だが、この男が運と腕っ節だけの男かというと、彼を知るものは皆首を横に振る。
 
 外見に似合わない堅実さ。
 冷静沈着かつ、常識に囚われない柔軟な思考。
 義理を重んじる誇り高さ。
 決して挫けない不屈の意志。
 そして憎めない人の好さ。
 
 付き合った者は、不思議とこの男に惹かれていくという。
 強面に似あわず、笑うと爽やかで子供っぽく、魅力的な顔になる。
 決して美形ではないが。
 
 総じて彼を知る者は《好漢》と彼を評した。

 
 
 最近、文章が上手く(元々駄文ですが)書けない、深刻なスランプ状態のY2つです。
 シナリオ製作も停滞して、申し訳ありません。
 
 リプレイも、新しいシナリオが形になるまでお休みします。
 そのうち復活すると想いますので…
 
 文章のリハビリがてら、新シリーズを書くことにします。
 
 粗野な黒ずくめ戦士と、白い尼さん聖戦士のお話。
 私がカードワースを始めて、初期の頃から考えていた小説です。
 
 タイトルの『灰色の嵐』というのは、主人公のラングが組むコンビにつけられる名前です。
 
 シグルトが格好好い英雄タイプだとすれば、ラングは渋い路線で行こうかと思っています。
 彼が英雄型なのは、シグルトのルーツが彼にあるからでして。
 あと、組む相棒がとんでもない設定の人物だからです。
 能力の調整で結局英雄型になってしまいました。
 知力の高い戦士を作りたかったからです。
 勇将型や豪傑型だとちょっと難しかったので。
 
 粗野でクールな鋼鉄の香りのする戦士のお話です。
 バイオレンスで、ちょっとエロス…かもしれません。
 中学生程度の描写のつもりです。
 
 まぁ、呆れずにお付き合い頂ければ幸いです。
 
 舞台は『鬼媛傳』の5、600年後くらい。
 シグルトたちが活躍する20年以上前のお話です。
 Djinnさんのリプレイと大体同じ世代でしょうか。
 ブレッゼンが冒険者やってる頃ですね。
 微妙に『風屋』や小説とクロスオーバーします。
 
 『鬼媛傳』もチョコチョコと書いてますので、そのうち…
 
 リプレイではちょっと出来ない、ばりばりの高レベルアクションで行こうと思っています。
 
 主人公、ラングのデータは…
 
◇ラング グリード◇
 
・年代:大人(25歳)
・性別:♂
・英雄型 
・レベル7
 
 器用度:5 敏捷度:5 知力:7 筋力:11 生命力:8 精神力:9
 好戦性+1 勇猛性+2 正直性+1

不心得者   誠実     冷静沈着
進取派    鈍感     無頓着
勤勉     地味     粗野
武骨     硬派     お人好し
 
 宿のエースで、実際にミノタウロスとガチンコバトルで勝てる実力です。
 スキルや、彼のトレードマーク、黒い鎧のデータは何れ…
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