Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

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CWPC3:フィリ

 その男は、近寄ってくる兵士を十字を象った美しい大剣で斬り倒した。
 たった一撃で、斬り伏せられた兵士は声も上げす絶命していた。
 
 病的なまでに白く血の気の無い顔立ちは中性的で美しく、退廃的な雰囲気を纏っている。
 口元に浮かべた笑みは、戦場では敵を恐怖させる不気味な迫力をかもし出していた。
 
 派手な刺繍をした、しかし全体的には質素な紺色の上着を着ている。
 それはどこか僧服に似た作りであった。
 首からさげたロザリオや持った剣からしても、敬虔な聖北教徒であることが見て取れる。
 
 他の兵士が簡素でも鎧姿なのに対し、随分と浮いた格好ではあったのだが…
 
 慈悲の笑みを浮かべて男が振るう剣は、一撃一撃が必殺であった。
 兜の上から頭を叩き割られ、また1人兵士が倒れる。
 
「芸のないことですね。
 
 罪深き略奪の輩は、煉獄の炎に焼かれるのがお似合いです。
 …修道院を襲うなど、許されることではありません。
 
 主の怒りを知りなさい…外道ども」
 
 首を刎ねられ、血を吹いて兵士が倒れ伏す。
 
「ひ、ひぃ…
 
 お、俺は上の命令でやっただけだっ!
 それに、俺はあんたたちの味方なんだぜ?
 あんたたちを雇ったのは、今回は俺たちマルディアンの方…ぐぎゃぁっ!」
 
 全てを語らせる前に、男は喋りだした兵士の頭蓋を割った。
 
「…ここには、光り輝く聖女様がおられたのです。
 
 その場所を汚した貴方たちは、死すら生ぬるい。
 悪魔のいる地獄がお似合いですよ」
 
 男の味方たちすら震え上がる迫力だった。
 一見優男に見える男は、修道院を襲ったマルディアンの兵20名ほどのうち半数をただ1人で斬り殺していた。
 
「や、やべぇよ…
 
 いくらなんでも、味方を…」
 
 優男の部下らしい男が、引きつった顔でおそるおそる声をかけた。
 
「…おかしいですね?
 
 ここを襲ったのは〈敵国ギマールの兵士〉だったはずです。
 私たちは悪辣な逆賊を退治して、神聖なる園を守った…
 
 私の殺したのは味方だと?
 無抵抗の修道士から聖印を奪い、修道女に乱暴を働いた下種どもが、仲間?
 貴方の目は腐っているのですか?
 
 …それとも、貴方もこの輩と同じ悪の手先だとでも言うのですか?」
 
 優男は剣を振るって、剣についた血をビシャリと払う。
 飛んできた血を浴び、優男に話しかけていた男は、ひぃ、となさけない声を上げた。
 
「…違うというなら、ほら。
 頑張って主の怨敵を屠りなさい。
 まだ少し残っていますよ。
 
 貴方にその大役をまかせましょう」
 
 返り血を拭いつつ、ニコニコと笑う優男にコクコクと頷くと、その男は走り去った。
 
「…えげつねぇな、ジョージ。
 
 ま、やる以上は徹底的にやるってのは俺も賛成なんだがな。
 全く貧乏くじだぜ、お前のお守りはよ」
 
 髭面のたくましい男が歩いてきた。
 手に持った剣は血に染まっている。
 
「…ナルグさん、いつも言っていますが、私の名はアレクセイです。
 
 聖名を呼ぶならゲオルグ。
 適当に呼ばないで下さいよ」
 
 拗ねたように口を尖らすと、優男は大剣を背負った。
 
「いいじゃねえか。
 ゲオルグってのは有名な竜退治の聖ジョージのことだろ?
 
 …呼びやすいしよっ」
 
 がはは、と笑う髭面。
 優男、アレクセイは大きな溜息を吐いた。
 
「ま、疲れた顔するのも、問答も後だ。
 
 まだギマールの敗残兵どもも、いるようだしな。
 バレねぇよう、しっかり〈敵〉は狩らねぇといけねぇ…」
 
 歯をむき出して、髭面は下品に笑った。
 
 アレクセイという優男と、ナルグというこの髭面の男は〈雪狼団〉という傭兵団に属す将兵である。 
 
 この度のラトリア征服において、勝者がマルディアン帝国になったのにはアレクセイたち〈雪狼団〉の活躍ゆえであった。
 “魔狼”の異名をとる隻眼の猛将ビュリカが率いる傭兵団〈雪狼〉の武勇はラダニールで知らぬ者はいない。
 
 戦争の多いラダニールで、彼ら傭兵は花形であった。
 
 〈雪狼団〉の団長ビュリカは、早くから傭兵として大成し、ラダニールの戦場を巡って走り回り、敗戦で生まれた元軍人の浪人や荒くれ者、戦災孤児を集めて数千からなる傭兵団を組織した。
 戦場で生き残り、磨かれ、屈強の精鋭となった戦の申し子たちは、ビュリカという王狼の元、戦いという狩りに酔いしれていた。
 
 ラダニールでは最強の傭兵団として知られ、ビュリカはその武勇と男ぶりから、〈ラダニール五雄〉の一人と呼ばれた。
 
 マルディアン帝国の若き剣聖、“天剣の将”レグジード。
 エルトリア王国の大将軍、“銀髪の猛虎”カーライル。
 ギマール共和国の元首、“静寂の暴君”ジュナス。
 ギマールの大将、“黒龍将”ガダウス。
 そして国無き傭兵団首領、“魔狼”ビュリカ。
 
 五雄以外にも名の知られた英雄たちはたくさんいる。
 ラダニールは群雄割拠の時代であった。
 
 ナルグは〈雪狼団〉の副団長で、実質ナンバー2だ。
 “銀刃の牙”と恐れられる屈強の剣豪である。
 
 アレクセイは、まだ10代後半という若さで小隊を任されている。
 ナルグが戦場で拾い、そして育てた秘蔵っ子であった。
 蛮勇の傭兵たちに在って、その剛勇は“裁断者”という二つ名とともに知られ始めていた。
 
「…で、お前のお姫様がこの修道院にいたってことだな?」
 
 ナルグは周囲を警戒しながらアレクセイに問う。
 
 アレクセイはラトリアの貴族の生まれながら、家の没落で身を男娼に落とし、その後に罪を犯して逃亡。
 戦場で彷徨っていたところをナルグに拾われたという壮絶な過去を持つ。
 
 今回のラトリア征伐で、貴族出身のアレクセイの土地勘は〈雪狼団〉に大きく貢献した。
 
 加えてアレクセイはエルナの親戚である。
 彼の母はエルナの母親と従姉妹同士で、アレクセイはエルナの婚約者の候補の1人だった。
 そして、幼少の折には遊んだ記憶もある。 
 
「…“私の”とは恐れ多いのですが。
 
 大切な方です。
 そう、私のマリア様なのです」
 
 熱に浮かれたように、アレクセイは拳を握り締めて天を仰いでいる。
 それを見てナルグは口端を引きつらせた。
 
「あいもかわらず、臭ぇこというな、お前。
 
 俺にはできねぇぜ、《私の…》、うげ、鳥肌立ってきやがった」
 
 ナルグの失礼な言い草も気にせず、アレクセイは自分の世界に浸っている。
 
「そう、あれは忘れもしない。
 
 私が6歳の頃…
 初めてあったあの方は、その白雪のような頬を紅く染めて微笑み、私をアレクと呼んで…」
 
 ナルグは本気で耳を塞ごうとして、しかし急に鋭い目をした。
 
「ふ、副だんちょぉおおおお!!!」
 
 叫んで走ってくる男がいた。
 ナルグたちの仲間である傭兵たちである。
 
「どうした?
 
 イエティにでも出くわしたような面しやがって…」
 
 至極冷静にナルグは聞く。
 アレクセイも押し黙った。
 
「そ、それが…
 
 先行していたマルディアンの野郎どもが、殺されてやがるんです。
 あと、殺されたらしい婆さんが1人。
 
 見てくれからいって、死体の兵士どもは寄せ集めみたいですが、5人もだ。
 
 かなりの使い手かもしれねぇ」
 
 アレクセイは即座に走り出した。
 それにナルグも続く。
 
「…お前の言うカーティン家のお姫様か?
 
 ギマールの連中に攫われたとしたら、痛いぜ。
 なにしろ、ラトリアの残党を束ねる総大将の娘だ。
 
 なんとか俺たちが確保しねぇとな」
 
 走りながらナルグが言うと、アレクセイは苛立ったように奥歯をぎりりと噛み締める。
 
「あの方を人質や政治の道具のように言う、ナルグさんの言葉には癪ですが…
 それはまた後で話しましょう。
 急がなければ…
 
 あの方を保護し守るのは、この私の役目。
 ギマールの悪漢などに指1本触れさせるものですかっ!!!」
 
 アレクセイは秀麗な顔を強張らせ、八重歯をむき出して疾走した。
 
 
 その頃…
 オルフとエルナは休息を終え、これからの対策を練っているところだった。
 
「俺はこのまま西に行って、ギーガー河を下ってイルファタルに出るつもりだ。
 
 イルファタルの港からなら、南にいけるし、そこまで追ってくる連中もいねぇだろうしな。
 こっからあの森を越えて一端ゼセルダ湖に出ちまえば、国境は無ぇ。
 
 河や湖の水賊に注意すれば、連邦を通って山脈超えもできる。
 河の道は、ラダニールを抜ける時に限ってはわりと楽だって話だぜ」
 
 オルフのいう連邦とは、アドルリア連邦と呼ばれる小国や都市国家の集まってできた連合国家群である。
 近年勢力を増しつつあるマルディアン帝国とギマール共和国に対し、警戒した諸国が集まって生まれた長細い国だ。
 ラダニールの北、、西の大半と南に欠けた月のような形で集まって出来ている。
 
 多くは自治をする小都市の集まりで、南…つまり西方諸国との交易や海に通じる道も、ほぼ連邦の領土に属していた。
 
「お姫さんは湖を北に行って、そのままエンセルデルの法王庁まで行けばいい。
 
 カーティンの家柄なら、あの国は無下にはしないだろうからな」
 
 オルフは簡単な地図を描いて説明する。
 各国の分布と簡単に河と湖を書き込んだものだが、エルナは感心したように頷いていた。
 
「…驚いたわ。
 
 バドリアは、普通の民が字を書けるの?
 それに随分正確な地理を知っているのね」
 
 場違いな質問であるが、もっともなことである。
 
 学問は、思想を産み争いの火種となるため、貴族たちは平民が学問を学ぶことを嫌うのだ。
 オルフの出身国バドリアも貴族主義の国だったのだが、オルフのような貧農の識字率は皆無といってよかった。
 
「…バドリアが負けた後、長い間戦争犯罪人扱いで掴まっててな。
 何年かギマールの捕虜収監所で強制労働させられていたんだが…
 
 政治犯って罪状で掴まってた相部屋の爺さんが、夜中にこっそり字や地理を教えてくれたんだよ。
 俺みたいな賎民出の阿呆にも、分け隔てなく接してくれた。
 好い人だったな…
 
 俺は落ちこぼれだったが、学問は面白かったから寝るのを惜しんで教えてもらった。
 よく寝不足で、爺さんと一緒に監視にどやされてたぜ」
 
 余談であるが、オルフが学んだ老人は“共和の父”と呼ばれる北方の革命家サギーニである。
 彼は若き頃、ギマール共和国樹立に貢献したが、軍事国家に変容するギマールを非難して政治犯として囚われ、オルフがその最期を看取ったのだ。
 
 オルフが戦場で生き残ってこれたのは、サギーニに学んだ学問のおかげでもある。
 
 ギマールと言えば、かつては学問と自由の国であった。
 
 南にあった帝国のかつての共和制から学び、この閉鎖的なラダニールに新しい文化の一石を投じたとも言われている。
 アドルリア連邦樹立の父ハースや、神学に革命をもたらしたガレグリオ枢機卿。
 クラウスの摂政“北の麗賢”エルデリーダの師である大賢者グリーデンも、軍事主義に変わる前のギマールの学徒であった。
 
「…ま、こんな話は置いておいてだ。
 
 お姫さん、あんたはどうするんだ?」
 
 話を戻したオルフ。
 エルナは強い意志を宿した瞳でじっとオルフを見返した。
 
「…私も一緒に南に行きたい」
 
 信じられないという顔で驚くオルフに、エルナは弱々しく微笑んで話を続ける。
 
「これから私の父は残ったラトリアの者たちをまとめ、第三王女セリニア殿下を奉じてラトリアの復旧活動を始めるでしょう。
 
 間違いなくマルディアンに、反乱分子として狙われることになるわ。
 そんな時、娘の私がこのラダニールに存在すれば、政治の道具手して狙われ、掴まれば父たちにも迷惑をかけることになるでしょう。
 
 法王庁にも、各国の影響は強いわ。
 ラトリアを滅ぼしたマルディアン出身の枢機卿もいる。
 
 このラダニールは私の安住の地足りえず、私という存在は争いの火種になりかねない。
 
 マーサは親戚の貴族を頼って、エンセルデルの法王庁に行くべきだと言っていたけれど…
 私は、ラトリアが滅んだ時にこのラダニールから出ようと考えていたの。
 でも結局、行くあても無くて迷っていた。
 
 …そんな時、貴方に遇ったわ。
 
 貴族育ちの私に、できることなんて少ないでしょう。
 けれど、私は利用されるだけの道具にも、親しかった人たちの荷物にもなりたくない。
 だから、その…
 
 オルフと一緒に、南に行くのは、ダメかしら?」
 
 腕を組んでオルフは考え込む。
 そして、吐き出すように低い声で答えた。
 
「…正直、俺も行くあてなんて無ぇ。
 戻る国も無いし、ギマールに戻ってもたぶん戦争三昧で終わっちまう。
 
 だから、とりあえず南に行くだけだ。
 
 どこで野たれて死ぬかもわからねぇ。
 この国を出るのだって、できるかあやしいところだ。
 
 …それでも俺についてくる気か?」
 
 エルナは強く頷いた。
 
「…貴方が許してくれるなら。
 
 それに、お互い何も無いなら、2人でならできることもあるかもしれないわ。
 その、逆に迷惑をかけることに、なるかも知れないけど」
 
 オルフは正直なエルナの言葉に苦笑いする。
 
 エルナとは、何れ別れると考えていた。
 しかし、長い間孤独だったオルフは、どこか妹に似ているエルナと別れることを寂しく思っていた。
 
「…《麦の穂は茎があって実る》か」
 
 頼るもの無くして物は存在できない。
 人も協力して生きるべきである、という意味の故郷の言葉。
 
「…おぉ、いい言葉。
 
 兄さん博識だねぇ」
 
 突然の声に、即座にオルフは剣を構えた。
 エルナも緊張したように、声のした方角を見る。
 
「待った待ったっ!
 
 敵じゃないっての。
 とりあえず名乗らせてよぅ…」
 
 そういって近くの茂みからひょっこりと現れたのは、驚いたことに子供の上半身だった。
 
 年の頃は12、3か。
 短いアッシュブロンドに、灰色の瞳。 
 背には弓を背負っているが、弦は張っていない
 腰に手斧を吊り、動きやすそうな服と革製の簡易防具を身につけている。
 
 子供は愛想笑いを浮かべつつ、慎重に近くの茂みから這い出してきた。
 
「ボクはフィリ。
 
 西方諸国…というか、ここからだと南になるのかな。
 あっちの方から仲間と旅してきてたんだけど、戦争に巻き込まれてはぐれちゃってね~
 
 この国での目的は果たしたんだけど、1人でほっぽリ出されて困ってたんだ。
 
 さっきなんか、血走った目をした兵隊どもが走り回ってて、慌ててここに隠れたんだけど…
 疲れて寝てたら、お兄さんたちが話をしててさ。
 
 そしたら、なんだが仲間になれそうな人たちみたいでしょ。
 しかも、南に行こうって話しじゃない。
 
 いや~、天の助けというか、運命だねこれって」
 
 馴れ馴れしくまくし立てる子供に、オルフとエルナはぽかんとした顔になった。
 
「この辺の地理は弱いけど、イルファタルから西方諸国に行くルートは知ってるよ。
 
 お兄さん強そうだし、もし協力してくれるならボクも手を貸す。
 突然な話だけど、西方諸国に着くまで仲間にならない?」
 
 待て、とオルフは落ち着こうとして子供の言葉を遮る。
 
「突然の話で、訳がわからん。
 
 フィリだっけか?
 坊主、お前…」
 
 途端、子供はぐいとオルフに近寄って指を突きつけた。
 
「お兄さん、レディに対して坊主は失礼だよ。
 
 ボクは女の子。
 ぴっちぴちの12歳だよ」
 
 よく見れば線の細さや微妙に腰の丸みから、この子供が女であろうと分かる。
 
「この格好は、世知辛い旅で、血の気の多い狼さんたちから身を守る処世術ってやつなんだよ。
 
 女の子ってだけで、鼻息の荒くなる変態さんもいるしね。
 いたいけな少女に乱暴するなんて、ほんと悪い人たちだよ。
 
 そういうわけで、ま、間違われるのは仕方ないんだけどね~」
 
 すっかり相手のペースに飲まれ、オルフとエルナは顔を見合わせた。
 やがて、エルナが恐る恐る話しかける。
 
「あのね、フィリちゃん。
 
 それで、あなたは私たちと一緒にイルファタルに向かいたい、ということなのよね?」
 
 エルナの問いに大きく頷くと、フィリと名乗ったボーイッシュな少女はニカリ、と笑った。
 
「贅沢を言えば、はぐれた仲間の1人と合流して帰れれば嬉しいけどね。
 
 そいつ…バッツて奴なんだけど、根性無いかわりに女の名前覚えるのと逃げるのは得意なんだ。
 アイツの力を借りれば、さらに逃げやすくなると思うよ。
 
 気難しい奴だけど、お姉さんがちょっと目を潤ませて「お願い」すれば、楽勝、楽勝。
 
 はぐれた時はラトリアの西の国境線にある森で落ち合うことになってるから、そこに向かえばきっと会えるよ。
 
 1人より2人、2人より3人、3人よりは4人、ってね。
 
 それに、さっきの様子からすると行く当ても職のあてもないんでしょ?
 
 ボクたちが来た西方諸国の、リューンていう交易都市にいけば、職の1つぐらいは何とかできると思うよ。
 このあたりより戦争が少なくて楽しいところだってことは、保障するし。
 
 ねっ、ねっ、手を組もうよ~」
 
 オルフとエルナは互いに肩をすくめると、頷きあって苦笑した。
 
 
 その後、オルフ、エルナ、フィリの3人は西に向けて出発した。
 始終賑やかに喋っているフィリは、旅なれた様子であった。
 
 話の内容は、このラダニールに来てから見た街や、出会った戦争についてが主である。
 
「…というわけで、南のエルトリア王国はいい国だったのよ~
 さすがは名君“雪原の獅子”が治めてるだけあるよね。
 
 知ってる?
 あの国って、平民出身でも強くて頭さえよければ軍学を学べる、修士館という学校があるんだって。
 最近、修士館出身であの国の王女様が、将軍職に推挙されるって言う話だよ。
 女性の仕官が認められているんだ。
 
 女性の権利が確立されてるなんて、進んでるよね~
 このあたりって、すごい女性差別する国が多いでしょ。
 ボクも子供で女だからって、随分酷い態度を取られてるんだよね」
 
 フィリの賑やかさに辟易しつつも、この少女の陽気さは随分2人の心を慰めていた。
 
 話によると、フィリはこの年で冒険者という職業なのだという。
 
「いや~、故郷が黒死病にやられてさぁ。
 街ごと燃やされちゃったんだ。
 
 ボクは父さんが町外れに住む狩人だったから、病気には罹らなかったんだけど、街を焼く兵士に怒った父さんはあっけなく殺されちゃってね。
 お母さんはボクが小さい頃に死んじゃったから、天涯孤独になっちゃったの。
 仕方なくリューンに流れていって、そこで子供でもなれる冒険者って職業を見つけて就職したというわけ。
 
 今回の旅は初仕事で、イルファタルまで相棒と荷物を届けるだけだったんだけど、荷物をスリにやられてこんなところまで追いかけて来たんだよ。
 そのスリが、荷物を渡す相手の敵対組織の連中で、何とかこの国のウェイデンの街で捕まえたんだけど、見事に戦争に巻き込まれちゃったんだ。
 
 ところで…お兄さんはギマール軍の兵装だから兵士として、美人のお姉さんはお坊さん?
 それにしてはちょっと服装が違うみたいだけど…」
 
 エルナの衣装は修道服ではあるが、刺繍などの細かい部分が違う。
 全体的にもかなり良質のものだ。
 
「私は…」
 
 自分のことを正直に話そうとするエルナを、慌ててオルフが止める。
 しかし、エルナは微笑んで首を横に振った。
 
「これから仲間になる人に、嘘はいけないわ、オルフ。
 
 …ごめんなさいね、彼に悪気はないの。
 私の出自は、下手に話すと危険を伴うから。
 
 あのね、フィリちゃん…
 エルネード マリア カーティンというのが私の本当の名前。
 ラトリア軍第一軍将軍、ワイルズ アントニヌス カーティンの娘よ。
 
 父はウェールハインの領主で、侯爵の名誉を戴いているの」
 
 フィリが驚きで目を見開いて硬直する。
 
「え、え~、えぇっ、えっ?!
 
 カ、カーティンって、もしかしてあの“白銀の勇将”ワイルズ将軍?
 ラトリア最強の英雄で有名な?」
 
 ワイルズ将軍といえば、国際的な英雄である。
 彼をラダニール十傑という枠に数える者もいるぐらいだ。
 高潔で民を大切にする気質は多くの支持者を得、人はワイルズを名君と評している。
 また貴族に伝わる古い剣術の使い手で、ある意味、カーティン侯爵家はワイルズの武勲と共に語られるほどだ。
 
「そ、それじゃあ、噂に聞いたワイルズ将軍の一人娘って、お姉さん?
 
 す、凄い大人物じゃないっ!!!」
 
 そんなことないわ、とエルナが微笑むが、フィリは興奮した様子だった。
 
「わ、わかった。
 
 絶対、秘密にする。
 ボク、約束は守るから。
 
 信頼してくれて話してくれたんだもん」
 
 フィリの言葉に、エルナは嬉しそうにその手を取る。
 照れくさそうに笑うフィリ。
 その横でオルフは安堵したように息を吐いた。

 
 
 能天気おしゃべり娘フィリの登場です。
 豪傑型なのに盗賊業も出来そうな能力。
 しかも腕っ節も強い。
 
 豪傑型でも必ず戦闘バカになるとは限らないです。
 
 フィリはマイペースを地でいくタイプです。
 どこか“風を纏う者”のラムーナに似てますが、ラムーナが周りを意識するのに対し、フィリは身勝手に飄々としている感じです。

 彼女のマシンガントークとおちゃらけぶりは、周囲をぽかんとさせる勢いがあります。
 しかし、この娘の凄いところはただのおしゃべり娘ではないことです。
 
 次回、彼女の活躍ぶりにて、その一端をお見せしますね。
 
 
 フィリのデータは以下の通り。 
 
◇フィランヌ レミ(フィリ)◇
 女性 子供 豪傑型

不心得者   誠実     冷静沈着
利己的    混沌派    好奇心旺盛
穏健     楽観的    遊び人
陽気     繊細     お人好し

器用度:9 敏捷度:5 知力:4
筋力:8 生命力:5 精神力:4

好戦性+1 社交性+1 勇猛性+1
慎重性+1 狡猾性+1 
 
 
 尚、今回最初に登場したアレクセイはらっこあらさんの作ってくれたキャラクターです。
 私にこういうキャラを渡すといじり倒すので…すみません。
 
 設定狂の蟲が騒いであんなのにしちゃいました。
 これからアレクセイは、度々登場するかと思います。
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CW:Y2つ流札講座 その肆

 更新速度をあげて、第四回目です。
 
 今回は最初の買物について。
 手頃なスキルを、お勧めのシナリオと共に紹介します。
 
 カードワースは現在最新版のVer1.28がオフィシャルファンサイトで公開されています。
 旧エンジンとも呼ばれる昔のバージョンには、PCそれぞれが作成時からお金を持っているシステムだったのですが、Ver1.28ではパーティの共有財産として4000SPが宿にあるのみになりました。
 新しく宿を作って始める場合、所持金は4000SPとなるわけです。
 
 4000SPといえば、そこそこに大金なのですが、計画性を持たずに買物するとあっという間になくなってしまいます。
 全て使い切ると不安ですし、いくらか手元に残るように買物してみましょう。
 
 
 買物に当たって、最も重要になるのが店シナリオ。
 良い品を扱っているシナリオはたくさんありますが、懐具合と作りたての冒険者たちに相応しい品があるものといったら…
 
 Y2つがお勧めするシナリオは以下の通り。
 
・『交易都市リューン』(groupAsk 齋藤 洋さん)
・『碧海の都アレトゥーザ』(Martさん)
・『焔紡ぎ』(Martさん)
・『風繰り峰』(Martさん)
・『希望の都フォーチュン=ベル』(Djinnさん)
・『西の吟遊詩人の店』(Djinnさん)
・『死霊術の館』(SIGさん)
・『武の街キラナン』(wweさん)
・『森林警備隊』(如月真問さん)※レンジャーの登竜門だが、現在サイトが閉鎖中でDL不可?
・『亡き者の伝え』(飛魚さん)
 
 専門的な職業技能を考えて、マニアックなシナリオも入れておきました。
 
 まず、これらのシナリオでスキルレベル1のスキルを買うと良いです。
 600SPで買えるので。
 お勧めの1レベルスキルを職業別に分けると…
 
・戦士系(格闘)
【掌破】『交易都市リューン』
 魔法物理攻撃。命中精度も優秀。
 実体の無い敵を攻撃する奥の手に。
 精神適性なので扱いに注意。
 
【水牛の猛襲】『碧海の都アレトゥーザ』
 タックルで敵の体勢を崩す。
 威力もまずまずなので、このスキルから渾身の一撃に繋ぐコンボで序盤から大活躍できる。
 
 キラナンの格闘系スキルは、好みで習得すると良いです。
 
 
・戦士系(剣士系)
【担ぎ颪】『焔紡ぎ』
 命中精度がちょっとよいですが、何より破壊力抜群。
 ゴブリンクラスを一撃で倒せる破壊力があります。
 
【岩崩し】『焔紡ぎ』
 威力より、防御ダウンがありがたいスキル。
 その次のラウンドや、後続との連携で大ダメージを狙えます。
 素早いならこのスキルで敵の行動をキャンセルして、一方的に攻撃することも。
 
【三閃擾し】『焔紡ぎ』
 筋力適性で行える独特のフェイントで、しかもダメージつき。
 威力の低さは渾身の一撃などと組み合わせて補うと良い。
 フェイントが苦手な武骨系戦士の撹乱スキルとしてお勧め。
 回避効果もあるので、足の遅いキャラクターに使わせるとザコ戦での負傷を抑えられる。
 
 侍タイプの戦士が居るなら、二刀流ならSueさんのシナリオ『花散里』の【二刀流壱式】(器用度適性なのでパワー系にはお勧めしません)もお勧め。
 …1レベルの侍スキルはあまり見ないので、今度倭刀系の低レベルスキル、自分で作りたいです。

  
・戦士系(斧使い)
【興ぎ颪】『焔紡ぎ』
 剣術の【担ぎ颪】に近い。
 こっちがよりパワフルで精度が低い。
 
【岩破り】『焔紡ぎ』
 剣術の【担ぎ颪】に近い。
 同上。
 
【三閃攪し】『焔紡ぎ』
 剣術の【三閃擾し】に近い。
 同上。 
 
 
・戦士系(軽戦士・ダンサー)
【連捷の蜂】『碧海の都アレトゥーザ』
 一応、私がデータ面で製作に関わったスキル。
 偉そうなことは言えないのですが…
 
 長く使える連続攻撃スキル。
 初期ではこれで暴れまわって、スキル交換を召喚獣で行い、どかどかたたみかけけると強い。
 調子に乗って使っているとすぐスキル回数が無くなり、スタミナ切れになるので御注意を。
 
 3レベル以上になると(召喚スペースの関係で)全体攻撃が使えるようになるので、ザコ戦からボス戦まで末永く使えます。
 
【愛欲の虜】『碧海の都アレトゥーザ』
 普段【魅了】のスキルとして使える撹乱タイプのスキル。
 このスキルのポイントは【暴露】できること。
 【暴露】は上手に使うとそれは便利。
 
 カードワースのPCは敏捷度が大の苦手。
 素早いPCは狙わないと作り難いかもしれません。
 
 
・戦士系(槍使い)
 該当スキルなし。
 
 戦士系のスキルはほとんどが3レベル以上です。
 序盤はアクションカードで頑張りましょう。
 
 
・盗賊系
【盗賊の眼】『交易都市リューン』
 鑑定のベストスキル。
 有名で私の説明など不要かも。
 鑑定が出来ることが最も重要だが、このスキルそのものを持つことでイベントが起きるシナリオが結構ある。
 盗賊になったらとりあえずこれを。
 
【影に隠れる】『交易都市リューン』
 絶対回避スキル…なのだが、Y2つは使うことがめったに無いスキル。
 使い方次第では便利。
 戦闘中はこれを使ってヒラヒラ攻撃を避けてると、盗賊っぽいかも。 
 
【道化の嘲笑】『碧海の都アレトゥーザ』
 低レベル時にこそ便利。
 たぶん、あんまり使われないスキル。
 しかし、上手に使うとそれはもう凶悪。
 お勧めは【眠りの雲】+パワー系戦士にこれ、というコンボ。
 防御系アクションカードが使い手に配布されるので、そっちを使う手も。
 混乱や恐慌状態にされて、攻撃が出来なくなった戦士を激昂させ、【渾身の一撃】で攻撃可能、なんて使い方も。
 眠ったPCを無傷で起こせることを知ってる人は少ないかも。
 効果時間も5ラウンドなので、気軽に使えるのがミソ。
 敵の魔法使いを怒らせたり、戦士がスキル配布アイテムと併用しても鬼。
 玄人好みのスキルかも。
 
【小細工】『碧海の都アレトゥーザ』
 効果は地味だが、味方にスキルを1枚配布するという凄く便利なスキル。
 カード交換はされないので、味方にアクションカードやスキルカードを使わせ、そのときに横で使うのが上手いやり方。
 使用ラウンド中は回避しやすくなり、抵抗、防御が20%増しになるので、体力の無い盗賊の生存率を高める。
 スキル配布アイテムが少ない頃は、このスキルで戦士や僧侶の手札をスキルに換えて使うもよし。
 あるいは特定キーコードを狙う戦闘で、手札交換と一緒に使い、狙ったスキルの配布を助けるもよし。
 
【神経衰弱】『希望の都フォーチュン=ベル』
 敵全ての手札交換をするスキル。
 実は敵を精神異常にしてから使うと絶大な効果がある。
 ただ、激昂状態などではこちらが手痛い反撃を食らうこともあるので、敵を混乱や恐慌あたりにして使うとよいかも。
 効果の短い全体混乱状態とコンボで使うとよい。
 無理して買う必要はないかもしれないが、トリックスター系の盗賊なら、使っても面白いかも。
 
【記憶の欠落】『希望の都フォーチュン=ベル』
 味方のカードを全交換する。
 こちらが混乱中はくれぐれも使わないことをお勧めするスキル。
 逆を言うと、スキルや強いアクションカードを仲間に使わせつつ、手札を一新できる。
 使いどころが難しいので、カードワースに慣れないうちは使わないほうがよいかも。
 
 
・野伏系
【応急手当】『森林警備隊』
 戦闘中使えないという厳しい条件はあるものの、初期から体力回復と毒や麻痺の治療が出来るのが大きい。
 回復量は低くて悲しいのだが…
 魔法が使えないシナリオで重宝するかも。
 応急手当のキーコードに対応したシナリオがあったような。
 美人の女の子PCが昏倒している時、説明文に萌えた人がいたりいなかったり…
 
【忍び歩き】『森林警備隊』
 キーコード萌えなスキルかも。
 でもその他の効果は妙に見劣りするので、無理に買わないほうがよいかも。
 
 Y2つの持ってる『森林警備隊』はこれを買うと違う品が配布されます。(泣)
  
【潜伏】『森林警備隊』
 【影に隠れる】と適性が違うだけで同じようなスキル。
 
【癒使の手先】『亡き者の伝え』
 薬師系といったほうがよいかも。
 戦闘中にも使え、キーコードも便利。
 弱い毒や麻痺も治療可能。
 器用で慎重な女性向。
 序盤の回復スキルとしてお勧め。
 
 
・魔術師系
【眠りの雲】『交易都市リューン』
 魔術師のベストセラースキル。
 持っているだけで、集団戦からフィールドまで戦略がぐっと広まる。
 魔術師にはまずこれを、という定番もの。
 【渾身の一撃】との併用は凶悪。
 
【魔法の矢】『交易都市リューン』
 ダメージ系のベストセラースキル。
 私としては威力がありすぎるような…
 ゴーレムとかゾンビとか、作られたタイプには一撃必殺っぽい威力。
 これ1枚で遠距離攻撃まででき、魔術師の存在を貴重にしている様子。
 魔法属性は物理攻撃の効かない敵に効果を持つので、これ1個で幽霊とまで戦える。
 
【呪縛解除】『交易都市リューン』
 とあるシナリオで重宝するが、無理して買う必要はないかも。
 呪縛と沈黙を解除できる。
 回復が呪縛のみではないことがポイント。
 
【惑心の幻聴】『碧海の都アレトゥーザ』
 強力な混乱スキル。
 混乱状態とカード交換+混乱カード配布1枚があるので、相手をほぼ混乱させられる。
 成功した直後行動力低下もあるので、相手をとにかく混乱させたい時は便利。
 面白いキーコードもあるが、対応シナリオが無いので不遇なスキルといえるかも。
 
 
・僧侶系
【癒身の法】『交易都市リューン』
 僧侶の代名詞ともいえる回復のベストセラースキル。
 このスキルを持たないと始まらないとさえ言われている。
 回復量が大きく、冒険者の命綱。
 まずこれを購入することが、生き残ることの近道かも。
 
【亡者退散】『交易都市リューン』
 不浄な敵は抵抗失敗と同時に消し去る、対アンデッドの代名詞。
 あまりに威力があるので、所持を躊躇う人もいるぐらい。
 ゾンビの群れもこれ一発で消え去る爽快なスキル。
 でも、不浄な存在以外には全く役に立たない。
 アンデッドのいるシナリオにはぜひ持っていくべき。
 実はウィスプのような非実体アンデッドの駆逐こそ、このスキルが役に立つ時かも。
 ウィスプには物理攻撃が効かないので。
 
【静心の法】『交易都市リューン』
 精神を正常化できるスキル。
 効果がシンプルなので買わなくても【葡萄酒】で間に合うかも。
 無理に買う必要は無いかと。
 
【聖別の法】『碧海の都アレトゥーザ』
 カードワースにとって、防御力強化は最強のドーピングである。
 【魔法の鎧】は5レベルスキルなので、初期の頃は手が出ないのだが…
 このスキルは初期から使える防御スキル。
 対象は1人だが、10ラウンド平均の効果時間。
 これを回復役や魔術師にかけて戦闘するだけで、生存率がぐっとあがる。
 最初の支援スキルとして購入し、中盤から【魔法の鎧】などに変えていくとよいだろう。
 
 
・吟遊詩人(歌い手)系
【祝福の歌】『西の吟遊詩人の店』
 戦闘時に使うと敵味方双方をちょこっとだけ回復する。
 ただ、少量の回復でも行動不能から立ち直れるのがカードワース。
 こちらのパーティが敵より昏倒が多いときや、敵が体力満タンであるときは使うとよい。
 実は人質がいるギミックバトルなどで、広範囲魔法にさらされてダメージを受けた者を回復するとかもできないことはない。
 でも、戦闘以外で使って味方全員を大量回復するのが本来の使い方。
 戦闘中は【癒身の法】等で回復し、それ以外ではこのスキルで回復すると効率的かも。
 
【笛吹きの歌】『希望の都フォーチュン=ベル』
 ランダム動物召喚のスキル。
 外れもあるが、実はお勧め。
 戦闘以外に使うと回復にも使えるので、吟遊詩人になって何を所持するか迷ったら買うとよい。
 これで動物を召喚しつつカード交換しているだけで、序盤の戦闘ではなかなかに活躍する。
 熊とか出てきた日には、敵を哀れとすら思うかも。
 
【子守唄】『希望の都フォーチュン=ベル』
 【眠りの雲】と同種。
 平和適性で、回復が得意なPCが成功率を上げられる面白いスキル。
 物理魔法属性なので、魔法、あるいは物理攻撃が無効の敵には効果が無い。
 …が、眠りが全属性なのでアンデッドもゴーレムも眠らせることが。
 これはバグ?それとも仕様?
 今回の記事書いてるときに気がつきました。
 

・精霊術師(精霊使い)系
【泉精召喚】『碧海の都アレトゥーザ』
 長く不遇だった精霊術師も、Martさんの精霊術への参入でだいぶ状況が変わってきました。
 
 このスキルは付与するタイプの防御支援スキル。
 効果は弱いが、【魔法の鎧】等とセットで使えるので、召喚のスペースに余裕があるなら使うとよい。
 防御力と抵抗力10%UPを三回。
 攻撃を受けなければ減らないので、保険にかけておくとよい。
 初期の頃は体力1点のダメージで生きるか死ぬか別れるので、案外重宝するかも。
 新バージョンではスキル絵がぐっと色っぽく…
 
【気精召喚】『風繰り嶺』
 召喚と同時に行動力が上がるというスキル。
 召喚したエアリアルはチマチマと攻撃してくれる。
 痛烈な攻撃力こそ無いけれど、遠距離攻撃はフィールドの見張りを攻撃する時重宝するかも。
 命中すると敵の行動をキャンセルするので、大胆で素早い行動順の早い精霊術師にお勧め。
 ダメージの小ささは、混乱状態+混乱カード1枚配布の撹乱効果がかなり強いので気にならない。 
 しかし、魔法物理属性なので非実体のウィスプとか、魔法の効かない連中には効果が無い。
 
【地子召喚】『風繰り嶺』
 同作者さんの『焔紡ぎ』ではある種族だとただでもらえる可能性が…
 しかしながら、『焔紡ぎ』で精霊術が買えるようになるのは何度も通った後。
 ここで買ってもよいかも。
 使用直後に回避力を高くしてくれるが、召喚の次のラウンドに発動して回避力を【精霊の盾】の単体版のように上げる。
 トリッキーなスキルだが、回避効果は大きいので術者の自衛用に。
 
【熱霊召喚】『風繰り嶺』
 術者の実力がものをいう成長スキル。
 召喚スペースに余裕があれば数も増え、レベルが上がれば威力も増す。
 攻撃力のあるスキルだが、加えて抵抗突破がしやすいのでダメージも大きくなるかも。
 炎が苦手な敵には強く、魔法属性なので炎が効けば(ウィスプは無理)実体の無い敵にも効果がある。
 遠距離攻撃は見張りを倒すのに役立つ。
 しかも、明かり。
 ランタンや松明がいらないかも。
 
・死霊術、異形系
 この手の異端タイプのPCはSIGさんの『死霊術の館』で買うとよいです。
 1レベルスキルを見繕って買ってみて下さい。 
 
 他にも、wweさんのサイトの『ヒトコト』のコーナーでDLできる専門的なスキルを買えるシナリオも面白いものがあるかも。
 
 
 所持金4000でY2つがスキルを買うなら…
 
・魔術師→【眠りの雲】(吟遊詩人が【子守唄】を持つなら【魔法の矢】)
・僧侶→【癒身の法】
・精霊術師→タイプによるが、攻撃なら【熱霊召喚】。防御なら【泉精召喚】。
・戦士→パワー系なら【三閃擾し】(【三閃攪し】)か【水牛の猛襲】で崩しを補強。
    スピード系なら【連捷の蜂】。
・盗賊→【盗賊の眼】(鑑定スキルがあるなら【小細工】)
・吟遊詩人→【笛吹きの歌】(魔法使いが【魔法の矢】なら【子守唄】)
・野伏&器用な万能タイプ→【癒使の手先】(予備の回復、職業の枠無しで使うにはこれがお勧め)
 
 こんな感じで一個ずつ1レベルスキルを買うと3600SPで1人1個が可能です。
 残りのお金は残すか、薬を買うとよいかも。
 
 ここで紹介したスキルは、職業による制限はありませんが、持ってるスキルで職業断定されるシナリオもあるので、職業の雰囲気にあったスキルを装備することをお勧めします。
 
 
・『風繰り嶺』では導入時に戦闘があるので、最初に他のスキルを買い揃えてから向かうと吉。
 初期の所持金は少ないですが、『亡き者の伝え』、Fuckin'S2002さんの『隠者の庵』、『風繰り嶺』の導入終了時に300SPずつ手に入ります。
 経験値が関わらないので、これらで小銭を稼ぎ、余裕が出来たら『希望の都フォーチュン=ベル』の1レベル推奨の依頼を2つクリアして600SPを稼ぐとよいです。
 その後に、『碧海の都アレトゥーザ』の護衛ミッションをクリアして400SP稼いでおけば1900SPほど稼げます。
 後は手頃なスキルやアイテムを買って補強し、SADAさんの『カルガランの灯火』をプレイして、2レベル以上でASKの『ゴブリンの洞窟』に挑めば、スキル配布アイテムも2個手に入り、後のシナリオで楽です。
 
 まあ、これは初期のシナリオ選択の一例ですが、参考まで。
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CWPC2:エルナ

 周囲に大勢の人の気配があり、甲冑や武器が擦れる金属音がせわしく響いてくる。
 人の気配のする方角から距離を取りつつ、オルフは足早に夜道を歩いていた。
 
(…マルディアンの兵士だな。
 
 この近くで、誰か偉いやつでも追ってるんだろう。
 
 たぶん、さっき炎上していた修道院の関係ってとこか。
 修道院には、偉い貴族の子女が居たりするからな)
 
 修道院を燃やしたのは、マルディアン帝国の兵士のようだ。
 帝国は北方ラダニール諸国の中で最大の軍事国家であり、近年は侵略による国土拡張でさらに領土を広めつつある。
 
 オルフの属していたギマール共和国も大国であり、ラダニールの覇権を争って、長い間マルディアンと睨み合いが続いている。
 ギマールとマルディアンが直接戦争に及んでいないのは、両国が互いに別の国と戦争中だからだ。
 
 ギマールはダズウェル王国という小国家と緊張状態にある。
 ダズウェルは、隣国エルトリア王国と戦争していたが、今はギマールを警戒して停戦中だった。
 
 マルディアンは、ラダニールで唯一の魔術師育成機関があるクラウス公国と戦争中であったが、クラウスの若き摂政にして“北の麗賢”と呼ばれる公女エルデリーダの登場で戦況は覆り、占領していた領土は全て奪還されている。
 
 停滞した状況を好転させるため、近年、とりあえず弱い国を滅ぼして敵国を牽制しようという理由でギマールとマルディアンは盛んに周辺の小国や自治都市の侵略を繰り返していた。
 
 そんな大国2つに挟まれたラトリアは、特別な産業もない小さな国だ。
 歴史こそ長いが、貴族による腐敗した政治のせいで、すでに黄昏の時代だった。
 加えて、度重なる周辺諸国との戦争で領土を削られ、残すは王都のみという有様である。
 まさにラトリアはその歴史を終えようとしていた。
  
 今回のように2つの国が1国を争奪する戦いでは、ライバル国の人気を落とすために略奪をする場合もある。
 非道な行為をはたらき、ライバルの国の仕業だと噂を流すのだ。
 自国の民の啓蒙と、大義名分をもっているのだということを兵士にすりこませるために汚れ役が生まれた。
 
 しかし、こういった仕事を率先して行う、野盗同然の部隊がいる。
 捕虜を奴隷として人身売買し、裕福な家や僧院を襲ってその蓄えを奪う。
 戦争を言い訳に略奪三昧を行い、それを楽しんでさえいる下種である。
 
 先ほどの修道院は、そういった者の暴虐にさらされたのだろう。
 
 ラダニール地方の人間は多くが聖北の徒であるが、異国人であれば異教徒ととこじつけもするし、統制の取れていない下級の将兵にとって、戦時のどさくさにまぎれての略奪は当たり前だった。
 加えてオルフが見た修道院は、おそらく女性がいたのだろう。
 
 下劣な下級の兵が集団で略奪者にかわり、身勝手な正義をかざして修道女に乱暴を働いたのだ。
 
 神に純潔を捧げた、世間知らずの美しい女たちがいると聞いただけで、好色そうに舌なめずりしていた者を、オルフは見たことがある。
 噂では、その男がある村の教会を襲い、修道女や村娘に狼藉をはたらいたという。
 
 その手の鬼畜が現れても、戦場では弱い者が虐げられるだけだ。
 
 燃える修道院と、近くで死んでいた裸の女性。
 略奪を受けて装飾の引き剥がされた壁や、ロザリオ1つ着けていない惨殺された修道士たち。
 
 湧き上がる不快感に眉をひそめ、オルフは足を速めた。
 
 
 しばらく行くと、人の気配や喧騒からだいぶ離れることが出来たようだった。
 オルフは近くの茂みに身を潜めると、大きく息を吐く。
 緊張した状態で走るのはなかなかに骨が折れた。
 
 そこで息を整え、また逃亡に移ろうと思案する。
 
 …不意に近くで人の気配がした。
 どこか争うような声も聞こえる。
 
 様子を探るため、オルフは茂みの間から声のした先を覗き見た。
 
 白いものが髪に混ざる上品そうな修道女風の老婆と、フードを目深に被った背格好から女らしい人物が兵士たちに囲まれていた。
 老婆は女を後ろに庇い、じりじりとこちらの茂みに後ずさっている。
 
(まずいな。
 
 このままだと、俺が隠れていることがばれる…)
 
 オルフは剣の柄に手をかけ、いつでも飛び出して反撃できるように構えを取った。
 
 一方、老婆は毅然と兵士たちを睨み、甲高い声で叫んでいる。
 しかし、兵士たちはニヤニヤと笑いながら距離をつめていた。
 
 兵士たちの態度が頭に来たのだろう。
 老婆が歩み出て兵士たちの歩を止める。
 
「…無礼者っ!
 
 この方をどなたと…」
 
 全てを言う前に、その老いた修道女は斬り伏せられた。
 老婆の細い身体は腹まで袈裟斬りにされ、大量の血潮が噴出し、力なく大地に倒れ伏す。
 
「マーサッ!」
 
 フードを被った女が、悲痛な声で叫んだ。
 
「…あ、あぁ、姫様。
 
 どうか、ど、うか、逃げ…て…」
 
 そう言って動かなくなった修道女を抱きかかえ、女は癒しの聖句を必死に紡ぐ。
 教会の聖職者が良く用いる癒しの秘蹟【癒身の法】である。
 
 だが、虚ろに目を見開いたまま、老いた修道女はもう動かなかった。
 
「おお、姫様だと。
 
 俺ら、もしかして大物を見つけたっぽいなっ!」
 
 修道女を斬り殺した剣の平で、肩をぽんぽんと叩きながら、兵士らしい男が得意そうに口の端を吊り上げた。
 装備は皮製の粗末な物。
 いかにも寄せ集めの兵士の1人、という感じだった。
 
 オルフと同じように徴兵された兵士であろうが…自分たちの立場を最大限に利用し、悪行も平気でするタイプの者たちのようだ。
 略奪を好み、殺人を楽しみ、女と見れば乱暴を働く。
 子供や老人を平気で殺す、戦乱が産んだ悪漢たちであった。
 
「あれだ、確かラトリア王家縁の五貴族の1つ、カーティン侯爵家の御令嬢。
 
 さっきの修道院って、カーティン家の隠居所の1つだったからな。
 噂じゃあ、侯爵の一人娘が花嫁修業中だったはずだぜ」
 
 もう1人の兵士が顎に手をやりながら、老修道女を抱いている女を見下ろした。
 その兵士は金属製の鎧を着ている。
 装備品から見て隊長格であろうか。
 
「ひゅうっ♪
 準王族のお姫様じゃねぇかっ!
 
 大手柄だぜ、俺たち」
 
 兵士の1人が興奮して下品に唾を飛ばす。
 
 女はそっと修道女の身体を地に横たえさせると、毅然と兵士たちを見返す。
 
「私が目的ならば、何故修道院を燃やし、人を殺すような狼藉を行ったですか。
 
 皆、優しくて好い人たちだったのに…」
 
 そう言って女は俯いた。
 泣いているのだろう。
 
「あはは、狼藉だってよ~
 
 お姫様は言葉が違うよなぁ」
 
 がはは、と笑い、剣を持った兵士は女に近寄ると被っていたフードを引き剥がした。
 
 美しいブロンドの柔らかな髪が、はらりとこぼれ出る。
 
 兵士は目を見張った。
 それは周囲の兵士たちも同様だった。
 
 北方人らしい白い肌。
 まだ涙に濡れる長い睫毛の先からのぞく、青く澄んだ瞳。
 悲しげに結ばれた艶やかな唇。
 
「…うひゃぁ。
 
 俺、こんな美人みたことないぜ…」
 
 兵士たちは、驚いて、すぐに好色そうな顔になる。
 
「…なぁ。
 
 貴族の娘には死体でも賞金が出るんだろ?」
 
 先ほど修道女を斬り殺した男が、周囲の兵士たちを見回してにやりと嗤う。
 
「ば~か。
 
 こんな上物、殺すより売った方が儲かるだろ?
 …もちろん、俺たちが楽しんだ後で、でもだ」
 
 にじり寄る男たちを、ブロンドの娘は悲しげに見つめていた。
 
 
(…何やってんだ、あの女はっ!)
 
 オルフは、忌々しそうに唇を噛んだ。
 あれでは女を逃がそうとした修道女が無駄死にである。
 
 苛々するオルフの心など届くはずも無く、女は跪き、目を閉じて冥福の祈りなどを口にしている。
 逃げも怯えもしない女の態度はたいしたものだが、それで改心する兵士たちではない。
 オルフは蹂躙されるであろう、娘の未来を思い、唇を噛んだ。
 
 オルフの脳裏に、熱にうなされながら、天国にいけるように祈っていた妹の姿が思い出された。
 食べる者も無く、いつも痩せていた妹は、信心深くいつも祈っていた。
 
(…あいつが生きていれば、あのぐらいの歳か)
 
 流行り病で死んでしまった妹も、この娘のように美しいブロンドだった。
 オルフの妹は神様が与えてくれた宝物だと、大切そうに髪を撫でながら頬のこけた顔で微笑んでいた。
 
 病に侵され、瞳から光の無くなっていく妹の手を、オルフはただ握ることしか出来なかった。
 妹が死に逝く時、オルフはまだ無力な子供でしかなかった。
 
 鉄臭い血の味を噛み締め、女の方を見る。 
 血走った目をして、女の服に手をかける兵士。
 
「…糞がっ!!!」
 
 オルフは飛び出して突進する。
 そして、迷わず剣を振るった。
 なまくら同然の剣は、女の服に手をかけていた兵士の肺と心臓に半ばめり込んでへし折れる。
 
「…こぉぼぼ、あ?」
 
 肺から血と一緒に空気が出て行く音。
 何が起きたか理解できずに、その兵士は倒れて動かなくなった。
 
「…なっ?
 
 てめ…ごばぁっ!」
 
 折れた剣を金属鎧を着た兵士の口に突っ込み、痙攣するその兵士を蹴り倒すと、剣をぶんどる。
 
(…残りは、3人!)
 
 そこに居た兵士たちは5人。
 奇襲で2人を倒し、前の剣よりは切れそうな得物を手に入れている。
 
(あと1人ぐらいは…!)
 
 担ぐような構えから振り下ろす重い一撃。
 オルフが戦場でとある剣士から学んだ【担ぎ颪】という技である。
 
 ビョウゥゥッ!!!
 
 空気も一緒に両断するような音…
 
 凄まじい斬撃に肩当から腹まで割られた兵士は、言葉も無く絶命した。
 
 骨に引っかかって抜けなくなった剣をあきらめ、オルフは襲い掛かってくる兵士を殴る。
 敵の反撃を受けて脇腹に走った激痛をこらえ、無造作に敵の剣を掴んで、その股間を蹴り上げた。
 少し切れたが、農業で鍛えられた彼の掌は血が滲む程度。
 
「ひ、ひぃぃぃ!!!」
 
 泡を吹いて昏倒する兵士から武器を奪って、最後の1人を睨む。
 4人を瞬く間に倒して返り血を浴び、髪を振り乱したオルフは、さながら食人鬼のように迫力があった。
 
 慌てふためく最後の兵士が、やけになったように剣を振り回す。
 オルフはゆっくりと剣を振り上げ、容赦なくその兵士の頭を叩き割った。
 
 
「…はぁ、ぐっ。
 
 くそ、一発もらっちまったか」
 
 脇腹を押さえ、傷の程度を調べる。
 
(…大丈夫だ。
 
 はらわたまでは、届いてねぇ)
 
 べったりと手についた血を、倒れている兵士の服で拭う。
 布を裂き、脇腹に当てて手で押さえた。
 そして、呆然としている娘を睨みつける。
 
「…この阿呆がっ!
 
 お前、婆さんの行為を無駄にするのかよっ!!」
 
 怒鳴りつけられた娘はビクリ、と震える。
 
「…ったく。
 
 ああ、もう、糞っ!
 これで俺も完全なお訪ね者じゃねぇかっ!!!」
 
 転がっていた兜を蹴り飛ばし、忌々しそうにオルフは唾を吐き捨てた。
 溜息を吐き、灰色の空を見上げる。
 
 かつて剣術の手ほどきをしてくれた、ある戦士の言葉を思い出す。
 よく「お前はお人好しだ」と言っていた。
 
「…《麦を踏んだら霜も踏め》だ…畜生めっ!」
 
 オルフは娘の手を掴むと、引きずるように場を後にしようとして、思い出したように立ち止まった。
 そして、自分が纏っていた襤褸を脱いで老婆に被せると、倒れた兵士から外套を剥ぎ取る。
 
「これで追い剥ぎかよ。
 
 もう、お袋に顔向けできねぇな…」
 
 苦々しい表情で呟き、先ほど受けた傷を押さえて呻く。
 女が近寄ってきてオルフの脇腹に軽く手を添えた。
 
「おい、何を…」
 
 眉をしかめたオルフを手で制し、女は澄んだ声で聖なる言葉を紡ぐ。
 同時に傷の痛みが、すっと引いていく。
 
 オルフは、ばつが悪くなって頭をかくと、一番ましそうな剣と携帯品を兵士の死体から奪う。
 そして黙ったまま女を引っ張って、その場を後にした。
 
 
 …どれほど歩いただろうか。
 
 半日近い間、オルフと女は黙々と歩いていた。
 大柄なオルフの足についてくる女の根性も、たいしたものである。
 
「…少し休むか」
 
 オルフはどっかりとその場に座り込んだ。
 額から汗がこぼれ落ちる。
 
 女もへたり込むように座り込む。
 一言も喋らなかったが、疲労はしているらしい。
 
「今時の貴族は山歩きもするのか?
 
 俺みたいに田舎育ちについてこれるんだから、たいしたもんだぜ」
 
 オルフが褒めると、女は首をかしげ、やがて弱々しく微笑んだ。
 
「修道院生活が長かったからだわ。
 
 10年も山中の修道院で過ごせば、このぐらいは出来るようになるはずよ」
 
 そんなもんか、とオルフが言うと、そんなものねと女が返す。
 
「…さっきはごめんなさい。
 助けてくれたのにお礼も言わないで。
 
 有難う。
 
 あと、マーサを弔ってくれたことも」
 
 女は深々と頭を下げた。
 
「ああ、いや、俺も強く言い過ぎたかもしれねぇ。
 傷も直してもらったしな。
 
 …あの婆さん、知り合いだよな?」
 
 女は頷く。
 
「私のお目付け役で、小さな頃からずっと一緒だったわ。
 
 修道院にも一緒に来てくれて、2人で祝福を受けて修道女になったの。
 私の、家族同然だった」
 
 女は少し寂しそうに、しかし毅然とした態度で話した。
 
「…もう少しでマーサの行為を無駄にしてしまうところだったわ。
 
 私があの兵士たちに乱暴されて売られたり殺されたりしたら、マーサの死を冒涜してしまうわよね。
 そうなっていたなら、確かに阿呆だわ…」
 
 無理に微笑んでいると分かる顔だった。
 
「俺は貴族って奴は、もっと我侭で身勝手な奴だと思ってたよ。
 あと、肝心なところで屁っぴり腰になって泣き出すような感じだな。
 
 …あんたは違った。
 度胸はたいしたもんだよ」
 
 オルフは女の気丈さに、心底感心していた。
 自分のような一介の兵士に対しても謙虚な態度で接する部分には、好感も覚えている。
 
「死んだ母の口癖だったの。
 
 人の上に立つ貴族は、人の何倍も責任が伴うのだと。
 
 我侭を言うだけなら、子供にも出来るわ。
 自制と節度をもって人を導くのが、本当の貴族なんだって。
 
 それに、貴族は生まれが偉いのではなく、己の血を貶めない行為こそが尊ばれるのだと父が言っていた。
 
 でも、私は普通の人よ。
 貴方と同じ、赤い血が流れているもの」
 
 はにかんで微笑むと、女はオルフに向き直る。
 ごく普通の口調だが、その仕草は洗練され優雅だった。
 
「まだ名乗っていなかったわね。
 
 私はエルネード。
 エルネード マリア カーティンです。
 
 勇敢な貴方の行いに、感謝を…」
 
 あらためて名乗り、女は頭を下げる。
 
 普通この地方で、姓にあたる家名を持つ者はそれなりの家柄を持っている。
 
 一介の農民出身であるオルフも、ラトリアの名家カーティンの名は知っていた。
 
 その先祖は、ラダニールをかつて治めていた統一帝国グロザルムがあった頃までさかのぼり、皇族から出たとされる貴族だ。
 ラトリアでも、王家と公爵家に次ぐ名門である。
 王族の血も入っているため、歴史の長いラトリアでは、カーティン家から王が輩出されたこともある。
 
 現カーティン侯爵は善政で領地を治める、ラトリアにあって一番穏健で聡明な貴族だと言われていた。
 他国にその名声が聞こえるほどである。
 
 加えてカーティン家は、ラダニールの聖北教会の総本山であるエンセルデルにも縁が深い、熱心な聖北教徒だった。
 
 女のセカンドネーム〈マリア〉は洗礼名である。
 ラダニールでは大抵、有名な聖人や聖女、天使や聖職者の名前をもらう。
 きちんとした洗礼を受けた、聖北教会の徒である証だった。 
 
「…俺はラインドの息子、オルフだ」
 
 オルフも名乗る。
 先に名乗る礼節を尽くした相手には、それに名乗って応えるのが北方の男の礼儀であった。
 
 女は小さく頷いた。
 
「オルフレン(オルフという)、ラインダー(ラインドの子)ね。
 
 その訛りはバドリア公国の人でしょう?
 オルフって、獅子という意味だったかしら…強そうな名前だわ」
 
 北方の平民はよく、「~の子」という名乗り方をする。
 西方の文化が聖北教会の伝道とともに入ってきたラダニールでは、西方の公用語が平準になりつつあるが、名前に関しては昔ながらということも多い。
 
「…正しくは狼や獅子みたいな強い〈獣〉ってような意味だな。
 バドリアじゃ、男は強くってのが普通だったからよ。
 
 でも、生まれは〈農耕賎民〉さ」
 
 オルフの故国バドリアは、大公が治める厳しい身分制度のある国だった。
 そして、彼は卑しいとされる最下級の貧農の出身である。
 
(バドリアは滅んじまったし、故郷は焼かれてもうねぇが…
 
 あんな国、滅んでも悲しむのはきっと偉くて幸せだった奴らだけだ。
 生き残った俺は、〈獣〉よか、野良犬みたいなもんだな)
 
 祖国を滅ぼしたギマール共和国は嫌いだったが、かつてオルフが育った故郷も、決して良い国ではなかったと思う。
 搾取されることに慣れ、磨り減っていく生活をしていたオルフにとって、そんな感慨しか湧かないのだ。
 
「あんたの名前、エルネードか。
 
 長くて呼びにくいな」
 
 オルフの故郷では、長い名前は略される。
 いちいち憶え難い名前を呼んでいたのでは、仕事でのコミニュケーションで呼び合うとき不便なのだ。
 
「そうね。
 
 それにこの名前を名乗るのは、きっと危険でしょうし…
 エルナでいいわ。
 
 母はそう呼んでくれていたの」
 
 娘、エルナは風で乱れた美しいブロンドを手ですくと、柔らかな微笑を浮かべた。 

 
 
 
 回復役エルナの登場です。
 
 美人で献身的、しかも無欲+謙虚で勤勉というスーパーお姫様。
 彼女がこういう性格なのは両親の教育の賜物です。
 
 貴族に生まれながら、修道院で禁欲的で質素な暮らしをしていたので、清貧ということに慣れています。
 穏やかで柔らかな雰囲気を持っている、根っからの聖母タイプ。
 
 当然ですがパーティで最も人徳があります。
 
 オルフとの出会いは衝撃的ですが、2人は同じラダニールの出身者として特別な親しさを持っています。
 オルフはエルナに、幼少で死んでしまった妹の面影を重ね、エルナはオルフの中に貧しさと寒さに負けない雄大な北方人の誇りを見て敬う…そんな関係になります。
 
 エルナは、『風屋』に登場予定の【祈りのクロス】というスキル配布アイテムと【癒身の法】を使いこなす、敬虔な聖北教徒です。
 しかし、貴族としての強い責任感も教育されており、ただの無垢なお嬢様とはちょっと違います。
 気丈で芯の強さを兼ね備え、それが高飛車にはならないという…
 でも保守的で意外に頑固だったりします。
 現実を謙虚に認める聡明なリアリストでありながら、夢や希望も忘れず理想を追う強い信念を忘れない聖職者でもある、実にできたお姫様です。
 高貴さに加えて、他者に安らぎを与える雰囲気を持っています。
 
 当然、こんな性格なのでもてます。
 外に出た途端、惚れられまくりです。
 
 こんな美人に一目惚れしないオルフはある意味、スーパー鈍(ドン)なのですが…
 
 エルナの方はオルフに対して、強い信頼の情を示します。
 まあ、恋愛に関しては無菌培養の少女時代を過ごしたので、恋愛にはピンと来ないタイプかと思います。
 
 “風を纏う者”のレベッカが悪女、ラムーナが明朗ときたので、楚々とした女性のイメージにしてあります。
 私の描く女性は皆、強い意志を持っていることが多いのですが。
 
 できれば媚びない清楚さというのを表現してみたいです。
 ただ、特徴だけで「清楚」ではなく、彼女の生き方や意思が清らかで穏やかであるように表現できたらなぁ、と思います。
 
 
 今回、さらにラダニール諸国を紹介した感じですが、エルナの故郷ラトリアはラダニールで最も古い国でした。
 王政君主体制の典型的な封建主義国家です。
 末期がんのように腐敗した貴族政治の中で、新しい国によって滅ぼされる国。
 その中で、古き時代の良き志を次代に引き継ぐのがエルナです。
 
 「貴族とは、血と歴史に恥じない行いを成してこそ貴族である」
 
 エルナは、そんな生き方を志すタイプですね。
 
 王族の姫様を出しても良かったのですが、何というか、それだとお約束過ぎるので、侯爵令嬢にしました。
 
 ラトリアは小国です。
 国土は最大の時で岩手県の三分の一ぐらい。
 
 北方ラダニールは日本の国土と朝鮮半島を足したぐらいの大きさで、その5分の1をゼセルダという湖と、河川が占めています。
 寒冷な気候で雪が多く、やや高地で西方からは最短距離を踏破して1月以上、普通は数ヶ月かかる遠方にあります。
 海に面した国はなく、かつて統一帝国グロザルムによって統治されていた、独特の文化を持った小国の乱れ立つ場所、という感じでしょうか。
 
 暦とか民族とか、細かい設定があります。
 
 オルフの名前もその1つ。
 でも、昔は姓なんて普通ではなかったはずので、オルフのような名乗り方はそんなにおかしくないと思うのですが。
 
 北方ということで、ノルマン人(北方人)を強く意識していますが、細かい部分はかなり違います。
 シグルトはラダニールの出身ではありませんが、キーレより北の小国家の出身ですね。
 ラダニールはさらに北にあります。
 
 ちょっとだけ設定公開してみたり。
 
 
 オルフが言ってる《麦を踏んだら霜を踏め》は、冬の麦踏んで強くし、ついでに霜の害も忘れずに対策を一緒にやれ…速く言えば「乗りかかった船」や「毒食わば皿まで」と同じで、やりかけたことはアフターとフォローまでこなすという諺です。
 オリジナルなんですが、ちょっと苦しいかなぁ。
 
 次回はラダニールからの脱出作戦です。
 
 エルナのデータは…
 
◇エルネード マリア カーティン(エルナ)◇
 女性 若者 標準型

秀麗     高貴の出   都会育ち
厚き信仰   誠実     無欲
献身的    秩序派    保守派
穏健     勤勉     謙虚
繊細     お人好し   愛に生きる
 
器用度:6 敏捷度:6 知力:7
筋力:4 生命力:4 精神力:10

平和性+3 社交性+1 勇猛性+1
慎重性+3 正直性+1 
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CW:Y2つ流札講座 その参

 久しぶりに更新する、このコーナー。
 皆さん、カードワース楽しんでますか?
 
 今回は上手なアクションカードの使い方を紹介します。
 
 スキルカードのように使用回数の制限があると、使い渋ってしまうこともありますが、アクションカードは持ち数制限がありません。
 戦闘中しか使えませんが、上手に使うと戦況を一転させられます。
 
 種類をあげると…
 
【攻撃】
 適性:筋力+勇猛性
 属性:武器+回避
 成功率修正:±0
 効果:レベル比ダメージ2(全属性)

【渾身の一撃】
 適性:筋力+好戦性
 属性:武器+回避
 成功率修正:-2
 効果:レベル比ダメージ4(全属性)

【会心の一撃】
 適性:器用度+勇猛性
 属性:武器+回避
 成功率修正:+2
 効果:レベル比ダメージ3(全属性)

【フェイント】
 適性:器用度+狡猾性
 属性:武器+回避
 成功率修正:+2
 効果:混乱カード配布(精神属性)

【防御】
 適性:精神力+慎重性
 抵抗力修正:+5
 防御力修正:+5

【見切り】
 適性:敏捷度+慎重性
 回避力修正:+5
 
【混乱】
 適性:?(正直だと選びやすい傾向になる)
 効果:選んでいる最中、ほぼ無防備で他のカードが選べない。
 
 以上の7種類があります。
 
 それぞれの使い方を説明しますね。
 
 
【攻撃】
 最も配布率が多くなると思われるアクションカード。
 直接ダメージを与えるシンプルなカードです。
 このカードをいかに生かすかが、戦闘で上手に戦えるポイントになります。
 このカード、能力値が6程度の性格修正の全く無い者なら、レベル1で5点ほどのダメージを期待できます。
 ゴブリン程度なら3回ほどでKOできる威力ですね。
 実は、このアクションカードを上手に使う一番のコツは適性です。
 できれば緑玉ぐらいの適性(適性についてはこのコーナーの「その弐」を参考のこと)があるとよいです。
 威力もさることながら、命中精度が重要です。
 緑玉以上だと、面白いように当たります。
 勇将型のように筋力や勇猛性が高いとばしばしあたるので、〈バット〉や〈ラット〉のように素早い敵にも使うことができます。
 適性の合計(能力値+性格の合計)が9もあれば、ダメージ7が期待できるので、1レベルでも2回でゴブリンをKOできます。
 特に、低レベルの頃、スキルを買うお金が無い頃は、戦士はこのカードだけでもやっていけます。
 レベルが上がっても威力が増えるので、最後まで使えます。
 何よりカードを使うと手札が循環するので、アクションカードは積極的に使っていきましょう。
 ただ、適性が低いと当たらないので、普通以下の適性なら素早い敵には使わないほうがよいかもしれません。
 同程度の実力の相手に、普通で五分の精度で命中します。
 かわされ易いので注意が必要でしょう。
 【眠りの雲】や【蜘蛛の糸】、敵が【混乱カード】を選択中ならほぼ確実に命中しますから、適性の低い者はチャンスを作って使うとよいでしょうね。
 
 
【渾身の一撃】
 戦士なら、ゴブリンを一発KOできる威力がある一撃です。
 命中精度がとても低いので、扱うときは注意が必要でしょう。
 このカード、生かせば、戦士なら3レベル前後まではスキルなしでもやっていけます。
 そのぐらい威力があり、活用したいアクションカードです。
 命中精度の悪さも、適性が高いと五分ぐらいの命中精度にできます。
 パワーのある、この適性が白玉の強敵がいるなら、逆に命中精度が高い状態ですごい一発を当てられるので、敵の手札が分かるときは要注意です。
 レベル1の頃は、ボス敵の【渾身の一撃】でKOさせられることもよくあります。
 逆を言うと、強い戦士が用いれば、ザコを次々と屠れる一発です。
 このアクションカード、【眠りの雲】や【蜘蛛の糸】、【フェイント】等で眠らせたり混乱させて当てることが上手な使い方です。
 普通の適性だと、まず当たらないので、相手の体勢を崩して止めや大きく体力を削る時に使っていくとよいです。
 ただ、適性が低いと威力も落ちます。
 眠った状態のように、ダメージを受けると戻ってしまう場合は、戦士系の適性がよい者が使うと確実な大ダメージを与えられます。
 緑玉以上の適性なら、ザコ程度には普通に命中するため、戦士がザコより格上と感じたら遠慮せずに使ってもわりと命中します。
 反面、普通の適性以下だと避けられるのがあたりまえなので、苦手な者は使わず、カードの交換をしたほうが無難でしょう。
 
【会心の一撃】
 命中精度が高いのが特徴です。
 配布率の少ないカードなので一見貴重で使いたくなってしまいますが、得意でない者にとってはお邪魔なアクションカードになりうる可能性もあります。
 カードワースのアクションカードでダメージを与えるものは、適性とレベルで顕著に命中精度と威力が変わります。
 【会心の一撃】は中途半端にちょっと強く、器用度という毛色の違う適性なので、不器用な戦士が無理に使うと1ラウンドが無駄になりかねません。
 手札に緑玉の【攻撃】と半影玉の【会心の一撃】があるなら、迷わず【攻撃】を使うべきです。
 反面、得意ならば大いに活用すべきです。
 ♀PCなどは器用なので、しばしばこのカードが得意になります。
 命中精度が高く、威力もそこそこあるので、素早い敵などに割り当てると活躍できます。
 ダメージ系アクションカードはシビアですが、「適性第一」です。
 得意なことが何より重要なので、普通の適性なら一工夫しない限りは「繋ぎ程度」の行動に考えておくと良いでしょう。
 まあ、器用な者にフェイントさせて混乱したところを集中砲火する、といった使い方をすれば、スキルを温存する手段としても活用できます。
  
【フェイント】
 優秀な盗賊はほぼ確実に得意になるカードです。
 成功すると敵に混乱カードを配布するのですが、得意でないものが使っても失敗することが多いので、同じレベルの適性なら【フェイント】より【攻撃】を使ったほうが早道かもしれません。
 ただ、素早い敵には盗賊タイプの器用なPCが【フェイント】で相手の体勢を崩し、戦士系の【渾身の一撃】や混乱時の集中砲火で倒すコンビネーションで使うと、意外に便利です。
 このカードで配布される【混乱】カードは、正直者ほど有効です。
 猪突猛進系の敵や僧侶系の敵にはなかなかに使えます。
 逆に狡賢い敵(知力+好戦性)は混乱カードを選び難いので、力押しのほうが良いかもしれません。(命中精度そのものは回避属性なので適性次第で成功します。スキルカード配布の阻害には使えるでしょう)
 巨大でタフなモンスターなら、【フェイント】の集中砲火で崩し、ダメージの集中砲火…という使い方もできます。
 カードワースでは戦闘の決着があんまり長引かないのが普通です。(多人数相手や、ギミックのガチンコバトルは別ですよ…)
 フェイントは効果がでるのは次のラウンドですから、速攻を狙う時にもお邪魔カードになります。
 苦手なら使わないほうが無難でしょう。
 手札交換をし、使えるカードを循環させたほうがよいです。
 なお、ザコ(特にコボルト)にフェイントの集中放火を喰らってしまった場合、次の手札は【混乱】一色という恐ろしい状態になります。
 あえて手札を交換せずに、アイテムカードを用いて手札の循環を停滞させ、【混乱】するタイミングを遅らせたり、凌ぎきって戦闘を終わらせる、という戦い方もあります。
 ゾンビなど精神のない連中には効かないので御注意を。
  
 【攻撃】、【渾身の一撃】、【会心の一撃】、【フェイント】は実体の無い幽霊のような敵には効果がありません。 
 
【防御】
 確実にダメージを減少させられる、実はとても使えるカードです。
 このカードは暴露状態の敵が攻撃をしてくる際、これで防ぐという使い方が便利です。
 ギミックバトルで集中砲火をされる者や、ダメージへの警戒手段として活用していくとよいでしょう。
 このカードの特徴は、使う時には適性が関係ないことです。
 特に召喚獣を使う場合、回復系召喚獣に行動させて、自身は【防御】で現状維持する…といった形で使うと、生存率がぐっとアップします。
 あるいは回復スキルが手札にある場合、【防御】して回復役が倒れないようにするのも上手な使い方です。
 敵が非実体で攻撃手段が無い場合、的になって【防御】で凌ぐ…という高度な使い方もあります。(パーティの総合的な攻撃されやすい者順を知っており、読みと勘が必要になりますが…)
 盗賊などは体力が弱いので、ザコ戦で攻撃を分散させる的として、【防御】で倒れないようにする、という戦い方もあります。
 【眠りの雲】や、全体攻撃、強力なスキルに耐えたいなら、【防御】は極めて有効です。
 敵が必中攻撃をしてくる場合、このカードのみが対抗手段となります。
 シンプルですが、重要なカードです。
 カードワースの戦闘AIは体力的に弱いものを攻撃する傾向があります。
 弱い者ほど、【防御】は有効な生存手段です。
 回復手段を備え、かつ負傷や重傷状態で「囮」となって【防御】という戦略もあります。
 防御用の召喚獣【シルフィード】や【魔法の鎧】の防御効果などと併用すれば、よほどの攻撃にも耐えられるでしょう。
 【防御】は是非活用すべきです。
 
 
【見切り】
 【防御】ほどではありませんが使い方次第では便利なカードです。
 抵抗系の魔法や必中攻撃には効果がありませんが、ザコの攻撃を凌ぐには最適です。
 敵を暴露状態にして、コンボで使うとか、【精霊の盾】や【軽練気】の回避効果と併用して確実性を増すと、ほとんどの攻撃を避けられるでしょう。
 【防御】同様の防御手段として使えますが、使える状況が回避属性の対抗手段に限られるので、役に立たないなら手札交換をすべきでしょう。
 まあ盗賊などは、下手に苦手なアクションカードを使って攻撃するより、【見切り】を使いつつ的の分散に貢献したほうが活躍できるかもしれませんよ。
 
 
【混乱】
 アクションカード唯一のペナルティカード。
 選んだとたんにほぼ無抵抗になってしまい、次のラウンドまでそれが続くので、恐ろしいカードです。
 手札にきたら、率先してカード交換して捨てるべきですが、フェイントを沢山受けているのなら、無理に交換すると【混乱】カードばかりになってしまいます。
 敵を呪縛やっ睡眠状態にしている場合、自身が【混乱】ばかり持っているなら、あえて混乱カードの大量配布を1回して、1回混乱してしまうことを選ぶのも手です。
 〈混乱〉(緑色のムンクの叫びマークのアイコン)という状態異常のときは、【混乱】カードしか配布されません。
 こちらが〈混乱〉状態なら、手札の交換はかえって危険です。
 アイテムカードを使うと手札の停滞が可能になるので、全く効果の無い鎧やあるいは使用回数の無い武器などを使用して手札を循環させず、凌ぐという方法もあります。
 敵を〈混乱〉状態のして手札を交換させると、相手の手札をアイテム以外は【混乱】カード一色に出来たりします。
 技能配布系のアイテムで、混乱カードだけの配布にならないこともありますが、相手の状況や自分の状況を、上手に制御すれば、ある程度手札を操作できるでしょう。
 
 
 アクションカードは精神系の状態異常の影響を顕著に受けます。
 
 〈勇猛〉(炎マークのアイコン)なら、ダメージ系のアクションカードと勇猛性や好戦性のスキルが来易くなります。
 どうやらダメージ系以外のアクションカードの配布は制限される様子ですから、わき目も振らず攻撃したいときは勇猛状態になるとよいでしょう。
 回復系のスキルとは相性が悪いみたいですし、スキルカードよりアクションカードが配布される可能性もあるので、使う場合は気をつけないといけません。
 【フォウ】などの精神異常を治す効果も常に正常化しようと発動してしまうので、場所と状況を見極める必要があります。
 
 〈激昂〉(青筋ギョロ目の白っぽいアイコン)なら、配布される手札が【渾身の一撃】のみになります。
 上手に利用すると凄まじいコンボが出来ます。
 【眠りの雲】と併用すると「処刑台コンボ」と化すでしょう。
 〈激昂〉状態を操る【道化の嘲笑】というスキルが『碧海の都アレトゥーザ』の盗賊術にあります。(私もこのスキルの製作にかかわりました)
 あえてスキルの方が怖い敵を〈激昂〉にしたり、相手を動けなくして戦士を〈激昂〉させる戦略というものも面白いかもしれませんよ。
 
 〈恐慌〉(目に涙のアイコン)なら、【防御】と【見切り】のみが配布されるようになります。
 あえて〈恐慌〉になって、防御専念するという方法もあります。
 攻撃できるアイテムと併用して、防御しつつヒット&ウェイで戦うという方法は、スキルカードが戦闘に使い難い盗賊などでは、意外に使えたりします。
 自身を〈恐慌〉にするスキルなどはあまり見かけませんが。
 
 精神異常を持続効果の短い効果の上書きし、時間切れで治すという裏技もあります。
 
 〈混乱〉は上記の【混乱】に述べた通り。
 
 
 上手くアクションカード使って、ピンチを乗り切るスリルを是非味わってくださいね。
 
 では、今回はこのあたりで。
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CWPC1:オルフ

 北方の戦場で男は戦っていた。
 
 周囲では絶えず剣戟の音が響き、むせ返るような血と鉄の臭いが満ちている。
 
 駆け寄ってくる粗末な鎧の兵士を斬り伏せ、刃こぼれだらけの剣の柄でもう1人の敵を薙ぐ。
 返り血の粘りつくような不快感に慣れたのは、いつのことだっただろうか?
 
 男は眉をひそめ、肺に溜まった血の香りのする濁った空気を吐き出すと、再び剣を振るった…
 
 
「…朝、か」
 
 空が白んで、目蓋に鋭い朝日の光が突き刺さってくる。
 額に滲んだ汗を拭い、水袋からきな臭くなった水を一口啜ると、男は立ち上がった。
 
 がっしりとした体格の大柄な男である。
 
 厳つい顔だちに鋭い眼光。
 髪は伸びるにまかせ、まるで獅子の鬣のようである。
 角ばった顎には無精髭が針のように生えていた。
 手の甲と頬には霜焼けの痕…寒冷な北方人の証である。
 
 腰にはやや大きな、古びた剣を下げている…古道具屋でも二束三文にもならない数打の安物だった。
 服装といえば、みすぼらしいつぎはぎだらけの外套…というよりは襤褸だ。
 皮製の胸当てを着けているが、傷が多く、斑に染み付いた血の跡が汚らしい。
 
 …傭兵なら武具には金をかけるから、こんな貧乏臭い装備などしていない。
 詳しい者なら、男の掌にあるまめのつぶれてかたくなった痕が、農民が持つ手にできるものだと分かるだろう。
 
 男は兵役中の農民、といったところだった。
 …元農民といった方が正しい。
 祖国は2年も前に、敵国に滅ぼされてしまった。
 耕すべき畑は、実質作物を作っても搾取されるだけで、彼の物とは言い難かったが。
 
 1年間、敗戦国の元兵士として強制労働をさせられ、恩赦とは名ばかりの厄介払いで兵士として再び借り出され、そして自分の属していた隊は敗北した。
 
 男の知っている戦争は、いつも負け戦だった。
 
 男は北方にあった小さな国の、国の中でしか威張れない貴族にこき使われる貧農の次男として生まれ、13歳で無理やり兵士にさせられた。
 彼が初めての殺人をして、死に掛けて…なんとか生き残った後も、負け戦を繰り返した男の亡き故国は、大国に蹂躙されてあっけなく滅んだ。
 
 諸国の乱立する男の住む地方は小競り合いが多く、小さな国家は戦争で淘汰される。
 男のように、祖国を失った者も多い。
 
 生き残れる者は少数だった。
 
 多くの兵士は、栄養の行き届かない身体で慣れない武器を振るって、ただ死んでいく。
 自分が何故戦っているのかと考え込めば頭を割られ、悲観すればその胸を貫かれる。
 悩む余裕も無い者は、悪運が強い者だけが生き残り、生き残った者も新しい戦いや虜囚としての苛酷な環境で次々と死んでいく。
 追い討ちをかけるように、北方の冬は弱者にとりわけて厳しかった。
 だが、生き残った者の心にも虚しさがあるばかりだ。
 なぜなら、死ぬのが延びたに過ぎないのだから。
 
 帰る国を失った男のような敗残兵のできることは、ただあても無くさまようだけだった。
 
 手持ちといえば、わずかな装備だけだ。
 懐には銀貨1枚すら無い。
 これでは一晩の宿すら泊まれない。
 
 ここ数日は雪解け水を啜り、野草を生のまま齧る日々。
 農民時代、食べれるものなら何でも食べた経験から、食せる類の野草は知り尽くしている。
 貧しかった故に知恵を得て生き残れたことも、果たして幸せと言えるのか分からない。
 
 男はゆらりゆらりと歩きながら、今までの人生を振り返ると唇を噛み締めた。
 
「…また残っちまったか」
 
 自嘲的に呟く。
 
 強制労働から解放された男が、次に送られた戦場はラトリアという小国であった。
 
 彼の祖国を破ったギマール共和国が、ライバルとされるマルディアン帝国とラトリアの領土を巡って争っていた。
 男はギマールの歩兵として、恩赦を得られる代わりに最前線に立たされ、ラトリア軍との戦いに参加していた。
 しかし、たいした力の無いラトリア王国軍を破った後、疲弊したギマール共和国軍の隙をついてマルディアン帝国軍が、ラトリアの王都を陥落させていた。
 ギマール共和国軍は侵略兵として追われ、男の部隊は軍に真っ先に見捨てられた。
 
 おそらく、男を含めた恩赦と名ばかりの兵士たちは、死んだものとされるのだろう。
 戻ってもまた戦わされるかもしれない。
 不幸中の幸いか、敵国は拠点確保に夢中で敗残兵狩りは穴がある。
 戦場からそれほど離れていない場所で寝こけていても、見つからないぐらいなのだ。
 
 男はふと灰色の空を見上げる。
 
 自分が徴兵された時、泣いてすがった母を思い出した。
 風の噂に、男の村が今まで彼の属していたギマール共和国軍によって皆殺しにされたと聞いている。
 
 皺だらけの手、まめのつぶれて硬くなった掌で撫でてくれた父。
 男より要領が良く、ひょうきんだった兄。
 2人は徴兵されて、戦場で死んだ。
 
 美しい髪が自慢だった妹は、ろくな食事が取れず、流行り病であっけなく死んでしまった。
 
 ただ1人の肉親である母も、重税と過労で痩せていた。
 きっと、殺されてしまったのだろう。
 あるいは村が滅ぼされる前に、死んでしまったのかもしれない。
 
 群雄割拠する北方ラダニール諸国。
 その底辺にいるものは、搾り取られ、こき使われ、磨り減ることに慣れてしまっている。
 男もまた、そんな人間の1人だった。
 
「…でも、俺はまだ生きている」
 
 北方の冷たい風でずれた襤褸を、ぐい、と直し、また歩き出す。
 
 灰色の空からわずかに刺す日差しの下を、男…オルフは目的も無く歩いていった。

 
 
 しばらくお休みだったリプレイですが、後にシグルトの親友となり、同じ北方出身の冒険者として肩を並べる英傑となる“嵐を砕く者”のリーダーとなるオルフたちのリプレイを始めます。
 “風を纏う者”とのクロスのため、“嵐を砕く者”の成長の後に第一パーティの復活に行こうと思います。
 
 今回登場したオルフは、製作が止まっている『剣の英雄』の舞台となる北方ラダニール地方出身の戦士です。
 舞台設定の紹介や、モチベーションアップのために、性懲りも無く内容を増やしていますが、ぼちぼちと更新していく予定です。
 
 同時に、オルフはフォーチュン=ベルのスキルや『焔紡ぎ』の剣術紹介をやりたいと考えています。
 最初から『焔紡ぎ』の【担ぎ颪】を習得しているという設定です。
 『焔紡ぎ』のワディムですが、時代の設定から、彼は登場しません。
 しかしながら、そのスキルを紹介していければ、とは思っています。
 
 また、現在拡張中の『風屋』のアイテムなどもこっそり登場します。
 今回は一切の特殊型無しですが、かなり優秀なパーティです。
 顔ぶれも特殊ですし。
 パーティの顔ぶれは、だんだん紹介していきます。
 
 さて、今回重苦しい雰囲気で登場したオルフですが、北方の貧農出身という設定で、何度か作り直して使っているPCです。
 彼等は私のお気に入りで、“嵐を砕く者”も、“ストームブレイカーズ”という昔のパーティ名からつけました。
 PCの情報は細かく違いますが、初期の頃は4人パーティで始めた、かなり内容の濃い連中でした。
 オルフはそのリーダーで、粗野な好漢という感じです。
 “風を纏う者”のメンバーでは出ませんでしたが、粗野口調、好きなのですよ。
 シグルトのようなハンサムではありませんが、ある意味シグルトより渋くて格好良いかもしれません。
 
 能力も完璧な戦士タイプで、バランスも優れています。
 通常の型でも、優秀なPCは十分に作成できます。
 
 オルフは職人型の地味な路線で、渋く行きたいなぁと思います。
 楽しんでいただけたら幸いです。
 
 
◇オルフレン ラインダー(オルフ)◇
 男性 若者 勇将型

下賎の出   田舎育ち   貧乏
誠実     無欲     進取派
鈍感     楽観的    勤勉
地味     謙虚     粗野
武骨     硬派     お人好し
 
器用度:3 敏捷度:4 知力:4
筋力:11 生命力:9 精神力:7

好戦性+1 勇猛性+2 大胆性+1 正直性+1 
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