Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

『アルフリーデ』

 奇異の目に晒されながら、シグルトは王宮の廊下を歩いていた。
 
 本来、王宮に立ち入りを許される貴族の男は、正装として外套を纏うのが常だ。
 雪の多い北方では防寒具であり、同時に暗殺の刃を防ぐための防具にもなる。
 とくにシグヴォルフ王国では建国王の代から、外套を成人した貴族のシンボルとして身に着ける風習がある。
  
 だがシグルトの外套は、先ほど悪漢に絡まれていた貴族の娘にあげてしまった。
 所有していた外套の中では一番高価なものだったが、シグルトは母にあつらえて貰った外套をもう一着持っている。
 愛用して色がくすんでいたが、貴族の男として成人した15歳の時に母に送られたそれを、シグルトは誇らしくいつも纏っていた。
 
 今日着てきた外套は、嫌っている義兄のお古であり、外套のくすんだ色を気にして妹が五月蠅く言うので、仕方なく身に着けていた物だ。
 義兄がシグルトの愛用する外套をけなし、「くれてやる」と置いていったものだが、やや派手な柄のそれは着心地が悪かった。
 
 先ほどの娘に与えたことは、脱ぐ口実として十分なものだった。
 この国では男尊女卑の傾向があるが、婦女子を護るべき者として気遣うことが美徳とされている。
 貴族の男にとって、若い女性に誠意を尽くすのは嗜みであった。
 加えて、シグルトは女子供を護ることにとりわけ気を配る若者だ。
 
 シグルトは私財に対する執着心も希薄である。
 困っている者には、それが本当に必要だと判断した時は喜んで財を施す。
 妹には、〈お人好し〉とよく言われる。
 
 そんなシグルトの面倒見の良さは、妹を守り、母を護ってきた責任感から培われた。
 優しく、怒りよりも慈しみをもって養育してくれた母のおかげでもある。
 
 外套そのものを譲ったことでは、シグルトは後悔していなかった。
 それに、嫌いな義兄からの貰い物を粗末にせず貴族の娘のために使ったとなれば、ことに礼節に五月蠅い義兄も文句は言わないだろう。
  
 ただ、シグルトは外套を脱ぐ口実が欲しかったわけでもない。
 
 誰かに自分の都合や理由を押しつけることを、シグルトは恥としていた。
 自分がされて不快なことを相手にするのは、大切な者とその名誉を守るために状況極まった時だけと決めている。
 
 聡明で清廉な母親に育てられたシグルトは、高潔な若者だった。
 傲慢と気高さを区別でき、見栄と矜持を取り違えないことも、シグルトの魅力の1つである。
 
 シグルトは誇り高い男なのだ。
 名誉のためには命をかけられる北方の戦士であり、家族や国のために戦うことを厭わない。
 だからこそ、何を誇りとするか明確に理解し、行動することを自らに課していた。
 
(流石にこの格好で式典に出ると、シグルーンを悲しませるな…
 
 あの男にも少なからず皮肉を言われることになりそうだ)
 
 外套を手放したことは後悔していないが、妹に悲しい思いをさせるかもしれない可能性は、シグルトを暗澹とした気分にさせた。
 特に、愛しい者の名誉を至上と考えるシグルトにとって妹の泣き顔は、棍棒で殴打されるより痛い。
 外套を譲ってくれた嫌味な義兄にも、小言を言われることになるだろう。

 だがシグルトは、己が苦境にあるのは全て己が至らぬ故だと考える男である。
 現状に囚われて悩むより、後を如何にするかで悩むシグルトを、多くの者は潔いと評価する。
 
 すでにシグルトの心には、これから如何にするかという考えしかなかった。
 人目を避けながらこれからのことを思案する。
 いっそ、屋敷に戻って外套を取ってくるか、と考えていると…
 
「ふふふ、式典に参加する者が儀礼用の外套も纏わないなんて、一体どうしたの?」
 
 頭の上から柔らかな女の声がした。
 
 考え込んでいて、気配を感じ取ることすら忘れていたらしい。
 居住まいを正すと、シグルトは声のした上方を見やった。
 
 シグルトの立つ庭を見下ろすように突き出た二階のベランダから、白い女が見下ろしていた。
 
 夜の闇の中でも尚際だって輝く真っ白な髪と肌。
 白兎のように赤い瞳がじっとシグルトを見下ろしている。
 
 違和感を感じてもう一度目をこらし、シグルトはその女性が人間でないことを知った。
 
 白い髪から突き出た尖った長い耳。
 
「…エルフ?」
 
 王宮の中で出逢うはずもない種族を目の当たりにし、余程のことでも動じないシグルトも目を見開いた。
 
 エルフとは、妖精を祖とする亜人である。
 本来は森や人里離れた場所に住む者たちで、とりわけシグルトの故国であるシグヴォルフでは複雑な扱いを受ける種族だ。
 
 シグヴォルフの王族は、先祖にエルフの上位種であるハイエルフの血を引いていると言われている。
 建国王が〈白エルフ〉と呼ばれたハイエルフを祖母に頂く、混血児だったのだという。
 
 しかし国教が聖北教会であり、それもとりわけ異端排斥を唱える保守派が台頭する現在のシグヴォルフでは、神の信仰を理解しないものとしてエルフは異端とされる。
 教会によって植え付けられたイメージから生まれる偏見と、そこから生まれる迫害。 
 
 公式では、貴い王族はエルフの血筋ではない、ということになっていた。
 王家に向かう教会からの敵意を躱すためである。
 
 北方に於いて聖北教会は大きな勢力があり、しばしば為政者が宗教的な正義を理由に戦争を仕掛けるからだ。
 攻める理由を与えないように、聖北の教えを受け入れてからのシグヴォルフは、亜人に対して理解のない国に変わってしまった。
 今のシグヴォルフには亜人の類がいない。
 迫害を嫌い、でエルフやドワーフのような亜人たちは、対応が穏やかな隣国のスウェインやイルファタルに住むのが普通である。
 
 シグルトが 感じた違和感は、王宮の中で市街でもまったく見られないエルフを目にしたためであった。
 
 シグルトはこの国では珍しく、亜人に対して偏見や畏怖を持たない人間だった。
 かつてエルフとの混血であるハーフエルフの女性に会って、それを素直に受け入れることも出来た。
 隣国から旅をしてきたエルフを、皆が近寄らぬ中、道案内したこともある。   

 すぐに表情を引き締めると、シグルトは不躾でない程度にエルフの格好を観察した。
 
 人間の着る、しかもかなり上質な服や装飾品を身に着けている。
 着ている服は王侯貴族が身に着ける、純白の正絹製。
 黄金と白銀の腕輪や指輪、首飾りが、けばけばしく無い程度に身を飾っている。
 
 物腰は優雅で、先ほどの口調には訛り一つ無い。
 
 違和感を感じて周囲を見渡しこの場所がどこであるのかに気付くと、シグルトは冷汗が背筋を伝うのを感じた。
 
「…失礼。
 
 ここはもしや離宮では?」
 
 問いかけると、エルフの女性は悪戯っぽい笑みを浮かべて大げさに頷いて見せた。
 
「申しわけない、すぐに失礼する。
 
 考え事をしていたので、迷い込んでしまった」
 
 シグルトが女性の名も聞かず踵を返そうとする。
 
 王宮の東にある離宮は禁忌の場所とされ、王族でも出入りが制限されるのだ。
 王家の墓所と、建国王の遺体が安置される神聖な場所である。
 シグルトのような下級貴族が無闇に踏み入れば、下手をすれば極刑である。
 
「そんなに焦らなくて大丈夫よ、お間抜けさん。
 
 お祭ですもの。
 見張りの衛視も羽目を外していたんでしょうね。
 彼を責めたくはないから、貴方も見逃してあげる。
 
 そうね、いざという場合に備えて、少し手を打っておきましょうか。
 
 貴方の名前を教えてくれさえすれば、私が招いた客人にしてあげるわ。
 そうすれば、貴方に手を出せる者はいなくなる。
 
 さあ、名乗りなさい。
 女性に問われて名乗らない殿方などいないでしょう?」
 
 下段にいるため、闇に滲んだシグルトの顔を確認しようと目を細めたエルフが促す。
 
「度重なる失礼、陳謝する。
 あと、貴女の温情に最大の感謝を。
 
 俺はシグルト。
 国王陛下の忠実なる騎士、アルフレトの息子。
 
 式典に参加するために出仕している」
 
 即座に身を折り、一礼するシグルト。
 
 一瞬はっとしたエルフは、やがて楽しそうに笑い声を上げた。

「くすくす、離宮に迷い込んで、しかも私の耳を見てそんなに冷静でいられるなんて。
 
 しかも、アルフレトの息子でシグルト…
 貴方はオルトリンデの息子でもある、あのシグルトなのね?」
 
 そう言って、エルフはふわりと二階から飛び降りた。
 柔らかな風が吹き、その華奢な身体がゆっくりと下がって来た。
 
(…精霊術っ!
 
 このシグヴォルフの王宮で、精霊術を使うエルフ、だと?)
 
 シグルトには、風の精霊たちの息吹がはっきりと感じ取れた。
 精霊の力を用いることは、亜人である以上に聖北教会から忌み嫌われている。
 
「建国記念のこの日に、此処で私たちが出逢ったのは運命の悪戯かしら。
 
 もしくは、太祖様の血が貴方を誘ったのだわ。
 私と同じ、オルテンシア姫の直系である貴方の血が…」
 
 エルフはシグルトに歩み寄ると、愛おしそうに手を伸ばしシグルトの髪を撫でた。
 
「その髪、その瞳…
 シグヴァイス様の肖像画にそっくり。
 
 でも、オルトリンデの子供ですもの…私と同じく必然なのでしょうね」
 
 微笑むエルフの手を、シグルトは払うことが出来なかった。
 近くで見たその女性の顔は、昔会ったある女性によく似ていたからだ。
 
「私の名はアルフリーデ。
 
 よろしくね、シグルト」
 
 彼女の名の聞き、シグルトは即座に膝を折った。
 名にアルフを冠する意味を知らない者は、この国には一人もいない。
 
「王族の方とは知らず…御無礼をお許し下さい」
 
 畏まるシグルトの頭の上で、アルフリーデと名乗った白いエルフは涼やかに笑った。
 
「うふふ…いいのよ。
 
 現国王の姉とはいえ、公式にはいないことになっているもの。
 こんな耳でなければ、今夜貴方と王宮で踊れたかも知れないのに、残念だわ」
 
 流麗な仕草で自身の白い耳を撫でつつ、アルフリーデは艶然と微笑んでいた。
 
 
 シグヴォルフの王族には、とある因習があった。
 
 近親の不義による忌み子や、重い病を持った子供。
 呪いを受けて隔離しなければならない子供や、双子故に王家に禍根を残す可能性がある子供など…
 そういった特別な子供を離宮で引き取り、特別な使命を与えて育てるのである。
 
 特に、エルフの血を引く王家の中には希に先祖返りでエルフやハーフエルフが生まれる。
 所謂〈取り替え子〉である。
 
 だが、公ではエルフの血を引いていないことになっている王家である。
 結果として、生まれた〈取り替え子〉のことは全て隠蔽される。
 
 そして、出生を秘匿された子供はこの離宮に引き取られ、王家の墓を守りながら過ごす。
 アルフリーデは、そうした王家の墓守である。
 
 アルフリーデがシグルトのことを知っていたのには、この王家の成り立ちが深く関わっている。
 
 シグヴォルフの建国王は、オルテンシア…ハイエルフの血を引くハーフエルフの子供だ。
 そして、建国王にはその片腕として活躍した弟がいた。
 
 建国王とその弟は、協力して当時悪政を強いていた前王朝を打倒し、この国を建国した。
 兄は王に、弟は宰相となり公を名乗る。
 そして兄弟は、自分の血筋を伝えるために、母と同じ性である女児には、母親に因んだ名を付けることとなった。
 兄の係累…王家の女児は、エルフを意味する〈アルフ〉を名に冠した。
 弟の係累…公家の女児は、母であるオルテンシアの愛称である〈オルト〉を名に冠した。
 
 王家同様に、公家でも〈取り替え子〉が生まれることがあった。
 そして、その子供は王族同様に王家の墓守となる宿めである。
 
 シグヴォルフの王家と公家に生まれる〈取り替え子〉は、女児が圧倒的に多い。
 女児は女性が女らしく育成するのが役目とされており、両家の女児はいざ〈取り替え子〉が生まれた時に備えてこの離宮のことを教えられる。
 そして墓を護るエルフやハーフエルフたちに秘密裏に会って、様々なことを学ぶのが習わしだった。

 シグルトの母親であるオルトリンデは、建国王の弟から連なる公家の直系で、公家の名を継ぐ最後の女児だ。
 それ故にアルフリーデと面識があった。
 
 オルトリンデは公家が取り潰された後に、その宿命を娘には継がさないと、アルフリーデと相談した上で決めていた。
 
 シグルトの妹シグルーンは血筋的には公家の直系であるが、公家が取り潰された後に生まれたのでその義務を持たない。
 名前がオルトを冠していないことが何よりの証だ。
 
 王家の墓守は常に2人おり、新しい墓守が決まると前任の墓守は任を解かれて国を去る。
 アルフリーデは、現国王の3歳年上の姉として生を受けるが、〈取り替え子〉のエルフとして生まれたためにすぐに墓守として離宮に預けられた。
 
 その墓守の仕事とは、王族の墓所を護るのが1つ。
 王家の影の歴史を伝える語り部としての役目が1つ。
 そして、王家に古の知識を教えアドバイスする長老のような役目があった。
 
 オルトリンデは、アルフリーデとの面識によって様々な伝承を学んでおり、シグルトが古今の物語に詳しいのはそうした母親の影響が強い。
 
 アルフリーデはもう一人のハーフエルフのオルトグナーと共に、当代として王家の墓所を守っていた。
 ただ、オルトグナーは貧血を起こしやすく、現在の墓守としての仕事はほとんどをアルフリーデがこなしていた。
 
 先祖返りで生まれた〈取り替え子〉たちは、時に天才的な知性や能力を持っていたが、同時に身体的な欠陥を持つ者が多かった。
 オルトグナーは酷い貧血症があり、アルフリーデは色素欠乏症…アルビノである。
 アルフリーデに墓守の仕事を譲ったアルフヨルデは、その直後にずっと患っていた心臓病で亡くなっていた。
 
 王家と公家は、遺産を分散させないために近親婚を繰り返してきた。
 公家は、王族の血筋を濃くするためのスペアであり、〈取り替え子〉たちは、そういった歪んだ婚姻の落とし子たちである。
 
 近親婚は、遺伝的な欠陥を多数招くこともあるが、全く逆の場合もある。
 時にとてつもない天才が生まれることがあるのだ。
 シグルトの優れた能力は、その歪んだ恩恵があった故のかもしれない。

 
「…殿下は俺のことを御存知なのですか?」
 
 シグルトは王族の詳しい背景は知らなかった。
 せいぜい知っているのは、噂程度である。
 
 シグルトのことをよく知っている様子のアルフリーデに、素朴な疑問が浮かび尋ねてみる。
 
「貴方のお母様とはとても親しいのよ。
 
 オルトリンデの家がワルト領の公爵家だったことは、知っているわよね?
 彼の公家は、王族と最も近しい親類関係にあったのよ。
 取り潰されるまでは、なんだけど。
 
 王家と公家の女は、この離宮と墓所のことを幼いうちから知らなければならないの。
 私は基本的にここから離れることが出来ない身の上だから、やって来た同世代である貴方のお母さんが数少ない友達の一人だった。
 
 オルトリンデの御両親である公爵夫妻が心中という形で亡くなられて、公家が取り潰されてからは会っていないけれども、手紙のやりとりは続けていたわ。
 貴方やシグルーンのことは、その手紙で教えて貰っていたの。
 
 それに、貴方のことはあるお方からもよく頼まれているわ。
 力になってあげるように、ってね」
 
 白い髪を弄りながら、アルフリーデは微笑んでそう言った。
 
「貴方とは何れ会ってお話しするつもりだったけれど、手間が省けたわ。
 
 私は貴方に力を貸す責務を持っているのよ。
 そして、貴方に力を貸して貰いたいこともあるわ。
 
 私たち…この離宮に住む者は、この国の深い部分に関わっているの。
 だから、力ある者に力を貸し与え、そして力を貸して貰う。
 そうやって、国を支えてきたのよ。
 
 私が力を貸さなくても、貴方が自分だけで身を立てられる男の子だということは、噂で聞いて知ってるけれど…
 もし困ったことがあたら、私を頼りなさい。
 
 決して悪いようにはしないから」

 40を少し超えた国王の姉であるのだからシグルトの母親よりも年上のはずだが、エルフとしての不死性故か、実際の年齢を感じさせない。 
 背の高いシグルトからすれば、かなり小さく感じられるエルフの姫君は、反面で大人びた雰囲気ももっていた。
 
 紅玉のように赤い瞳が、跪いたシグルトを見据えている。
 その視線には、年を経た者だけが持つ余裕が宿り、力強く煌めいていた。
 
 シグルトは、アルフリーデの心遣いに感謝し一礼すると場を後にしようと立ち上がった。
 
「…姉上~!」
 
 その時、煌びやかな衣装に身を包んだ一人の男がやって来た。
 男の頭に乗った冠に気付いたシグルトは、即座にまた膝を折る。

 冠の男は、この国の国王その人であった。
 
「シグソール…どうしてこのような場所に?
 
 貴方は式典の主役でしょうに」
 
 呆れたようにアルフリーデが溜息を吐く。
 
「いや、何。
 堅苦しい式典には肩が凝るので、休憩がてら顔を見に来たのですよ。
 
 私にとって、姉上と話している時が一番心が安らぐのでね」
 
 そう言ってこの国の国王シグソールは、幼い子供のように無邪気な笑みを浮かべた。
 しかし、アルフリーデの傍に控えていたシグルトに気付くと、にわかに眉根を寄せる。
 
「…この離宮に何故人が?
 しかも男ではないかっ!
 
 姉上、これはどういう…」
 
 鋭い口調になった国王を、アルフリーデは黙りなさいとばかりに鋭い目で睨み返した。
 国王は、それだけで萎縮したように肩をすくめる。
 
「この若者はワルトの公家縁の者。
 そのことに関わる話をしていたの。
 
 だから、離宮を侵した罪はないわ。
 つまらぬことを詮索すれば、貴方でも許しませんからね。
 
 これは墓守であるこのアルフリーデの名で許可したこと。
 判ったわね、シグソール?」
 
 完全に国王を尻に敷いた様子である。
 
「わ、判りました。
 
 それで、お話は終わられたのですが?」
 
 叱られた子供のように、国王は上目遣いで姉を見やった。
 
「もう少し話す必要もあるけれど、今宵は祭の最中。
 後日改めて、ということにしましょう。
 
 シグルト。
 王宮に出仕した時は、必ず私の元に寄るのよ。
 その許可を与えた証として、これを預けておくわ」
 
 そう言ってアルフリーデは、自分の付けていた指輪をシグルトに手渡した。
 シグヴォルフ王国の国章である狼を、正三角形と二重の円が囲んだ不思議な紋章が描かれている。
 
「この指輪の紋章を見せれば、王宮にも離宮にもすぐに入れるはずよ。
 
 今度は、ぜひ貴方の妹も連れていらっしゃい。
 話さなければならないことが、沢山あるわ」
 
 シグルトは強く頷き、国王とアルフリーデに一礼すると、今度こそ場を去ろうとする。
 
「待ちなさい。
 
 仮にも王宮に出仕する貴族が、外套を着ていないのはみっともないわ。
 少し待っていて」
 
 そう言うと、アルフリーデの身体がふわりと浮かび上がった。
 そして、二階に戻っていく。
 
 取り残されたシグルトと国王は、はたと顔を見合わせた。
 すぐにシグルトは膝を折り、臣下の礼を取る。
 
「初めてお目にかかります、国王陛下。
 
 俺は、陛下の忠実なる僕アルフレトの息子でシグルトと申します。
 御無礼をお許し下さい」
 
 シグルトの言葉に、国王はなるほどと頷いた。
 
「お前がアルフレトとオルトリンデの息子なのだな。
 姉上が何故離宮への立ち入りを許したのか、得心がいったよ。
 
 形式の上では、もうお前の母上は公家の身分にないけれど、昔は私や姉上とよく遊んだものだ。
 
 お前の父君は、私の一番の騎士で、共に戦場を駆けた戦友でもある。
 彼の不自由な足は、私を護って負った名誉の傷だ。
 
 両親に恥じないように励むのだよ」
 
 そう言って国王は穏やかにシグルトの肩に手を置く。
 しかし、その直後異様な力でシグルトの肩が圧迫された。
 
 驚いたシグルトが国王の顔を見ると、やや引きつった表情で、国王はシグルトを見下ろしていた。
 
「でも、離宮に出入りが可能になったからと言って、不埒なことは考えないように。
 
 姉上はあんなに可憐だから、変な気持ちが起こるかも知れないけど、それは許されないことだ。
 もし姉上に何か粗相をしたら、私は決して許さないからね。
 
 …判ったね?」
 
 シグルトは国王に頷きつつ、内心呆れていた。
 きっと国王は、姉への依存性が高い重度のシスターコンプレックスなのだろう。
 
 現国王は神経質でやや気分屋である、と聞いてはいたが、妙に納得したシグルトである。
 
 もちろんシグルトは、出逢ったばかりのアルフリーデに邪な感情など抱いていない。
 
 シグルトは恋愛に対してとても消極的だった。
 加えて同世代の若者たちとは違い、性欲そのものが希薄なのだ。
 
 シグルトのこういった性格は、妾として囲われていた母の姿を見てきたから、だとも言える。
 これには理由があり、シグルトの父親は母を深く愛していた。
 だが、仮初めでも囲われ者の子供として育った数年の間に、シグルトは愛する女性には誠実であろうと心に決めていた。
 
 シグヴォルフでは多重婚が認められている。
 現国王の后は2人いるし、有力な貴族は妾を囲うことも多い。
 そのかわり生まれた子供には、正妻と妾に限らず私生児まで、その養育と生来に責任を持つことが父親の務めであった。
 
 シグルトは、生涯の妻は一人だと決めている。
 それは、妾として苦労した母親を知っているからであり、同時に子供が被る迫害をその身で体験しているからだ。

 子供にとって、父親として恥じない男となれるように。
 妻にとって、夫として恥じない男になれるように。
 シグルトは生来を見据えて自身を磨いている。
 
 生々しい話だが、厳しい北方で男が担うのは家長としての責任なのである。
 一家を背負って立てる男になることは、何より重んじられていたことだ。
 だからこそ、財産と家族を守れるように、戦士としての強さを持つことも美徳とされている。
 
 北方は全ての国が倫理性を重んじた法治国家ではなく、未だに戦争で略奪を推奨する民族や、辺境地では野盗が闊歩していた。
 野や森は生活に密接に関わるが、時には凶悪な野獣や魔物が徘徊している。
 
 シグルトは子供の頃に、狼に襲われてそれを殺していた。
 その時に死した狼を見下ろしながら、敗者の無惨な姿を目に焼き付けていたのだ。
 
 自分が敗者になるのは仕方がない。
 だが、守れなかった家族が同じように屍なるのは耐えられない。
 
 シグルトは、家族を守れる男になれるよう、強くなることを誓っていた。
 
 そして、自分の実力で守られる家族が限られているとも考えていた。
 かつて正妻のいた父は母を日陰に置かなければならず、母は父を愛していたからこそその境遇を甘んじて受け入れていたのだ。
 
 自分の妻と子供には、決してそんな思いをさせたくないと、シグルトは思っている。
 
 素朴でもいい、優しい妻が一人と愛らしい子供たちに囲まれて穏やかに過ごせれば、それに勝る幸せはない。
 シグルトは、そんな小さな夢を胸に抱いていた。
 
 それに今のシグルトには、女性にうつつを抜かしている余裕はない。
 自分はまだ若輩でもっと強くならねば、と考えているからだ。
 妻を娶るには、まだ時期尚早だとも思う。
 
 話題となったアルフリーデは母よりも年上である。
 失礼で口には出せないが、小母のような親近感を感じていた。
 
 アルフリーデは、幼少の頃に出逢ったハーフエルフの女性によく似ているのだ。
 シグルトの先祖だというその女性は、この国の建国王の母オルテンシアその人である。
 
 オルテンシアに会ったのは、幼少の頃にただ一度だけであるが、シグルトと同じ青黒い髪と瞳をした彼女には、言いようのない懐かしさを感じたものだ。
 同時に抱いた親近感を、アルフリーデにも感じたのだろう。
 そんなふうに、シグルトは考えていた。
 だから、恋愛感情の一片すら覚えていないと言い切れる。
 
 もっとも、シグルトは生まれてこの方、恋愛感情など欠片も持ったことがないのだが。
 
 この国の下層の民は性には大らかで、シグルトよりも数歳若いものでも結婚したり男女の関係を持つ者は多数いる。
 シグルトの親友であるワイスなどは、13の時に女性と関係を持ったという話だ。
 16歳で女っ気一つ無いシグルトなどは、「それだけ顔が良いのに、もったいない」と同年代の友からよく言われた。
 
 親友のワイスが気を利かせて、知り合いの娼婦を抱けと勧めてくれたこともあるが、シグルトは入らぬ世話だと突っぱねていた。
 
「恐れ多くも、陛下の姉君にそのような気持ちを持つはずありましょうか。
 
 それに、俺は若輩の身。
 騎士の身分にすら無く、帯剣の許可も持たぬ様です。
 女性に心を捧げるには、分不相応。
 
 このシグルト、身命にかけて殿下に邪な気などもっておりません。
 
 我が誇りである父と母の、その名誉にかけてお誓い致します」
 
 きっぱりと宣言したシグルトの言葉に、国王も子供っぽい嫉妬心を持ったことを恥じたのだろう。
 頷いて、肩に置いた手を放してくれた。
 
 その時、風を纏ってアルフリーデが二階から降りてきた。 
 
「…待たせたわね。
 
 さあ、これをお持ちなさい」
 
 現れたアルフリーデは、銀糸を上品に用いた外套を持っていた。
 絹で作られたそれは、下品なけばけばしさは無く、しかしよく見ればかなり高価な代物だと判るものだった。
 肩口には右肩に正三角形と剣、左肩に二重円と玉、背には弓を象った白い紋章が描かれている。
 
「あ、姉上っ!
 
 それは恐れ多くも、シグヴァイス宰相の遺品ではありませんか。
 我らが王家に伝わる金糸紋の外套と対になる、銀糸紋の外套。
 
 いくらこの者がシグヴァイスの血筋とはいえ、国宝とも言えるそれを与えるなど…」
 
 驚きで目を見張った国王を一睨みで黙らせると、アルフリーデはシグルトに歩み寄った。
 
「これを渡すことは、シグルト誕生の日からオルテンシア姫に定められていたこと。
 
 国王であっても、太祖様とシグヴァイス様のお母上である、最初の墓守の名をもってなされたことに異を唱えることは許されないわ。
 これを渡すことは、このアルフリーデ当代の使命であり、神聖な行い。
 
 まさか、これほど言っても止めるつもりは無いでしょうね、シグソール?」
 
 もう一度横目で睨まれて、国王はぱくぱくと口をわなめかせると、渋々頷いた。
 
「…受け取れません、殿下。
 
 俺のような下級貴族の…」
 
 流石にシグルトも、その外套の重要性を知り躊躇した。
 
 金糸紋の外套とは、国王が戴冠式と特別な行事にのみ纏うとされる国宝である。
 銀糸紋の外套は金糸紋の外套の対の品で、暗殺された建国王の弟で初代宰相であるシグヴァイスの持ち物だったとされる秘宝なのだ。
 
 男爵家の次男で、しかも騎士の叙勲すらしていないシグルトが軽々しく纏えば、家門断絶になりかねない。
 
「…まあ、そうでしょうね。
 流石に今すぐこれを纏いなさい、とも言えないわ。
 
 ただ、これは今日からシグルトの持ち物であり、このアルフリーデが預かっておきます。
 貴方が国に名を残す男となった時は、国王からこれを貴方に贈り、ワルト公家の名を継いで貰うつもりよ」

 衝撃的な宣言に、シグルトも国王も目を見開いた。

 ワルト領公爵になれ、とアルフリーデは言った。
 一介の下級貴族、しかも次男で家督を継ぐことも許されない身で、兄や父よりも上の爵位を与えるというのだ。
 
 アルフリーデの言う公家は、かつてシグヴォルフ王国の門閥貴族でその最高峰にあり、王家の親族として認められていた名門中の名門だ。
 
「殿下、俺如きが公家を継ぐなど…あってはならぬことです」
  
 シグルトがややかすれた声でようやく言葉にすると、アルフリーデはその先を言わせず、鋭い口調で話し出した。
  
「そもそも、公家は聖北教会がこの国に入る前からあった王家の分身とも言える家柄。
 断絶されてしまったけれど、これは許されることではないのよ。
 
 弟の代でそのようなことになってしまったのは、痛恨の極みだわ。
 元に戻すことが私の責務であり、同時に贖罪なのよ」
 
 大きくなった話に、シグルトは言葉を失っていた。

 焦った様子で国王が顔を上げる。
 
「あ、姉上っ!
 断絶した公家の再興など、とんでもないことですっ!
 
 …聖北教会と戦争を起こすおつもりですか?!
 
 公家の断絶は、国教である聖北教会とこの国の法律によって遂行されたこと。
 
 国教として深く根付いている、聖北教会とことを構えるなど以ての外です。
 そんなことをすれば、周辺の聖北教徒である全ての国家を敵に回すことに…」
 
 国王をもう一度睨むと、アルフリーダは溜息を吐いた。
 
「国王である貴方がそんなふうに弱腰だから、今のような司教の台頭を許すのよ。
 何も全ての教会勢力と争え、とは言っていないわ。
 
 でも、現在のこの国における保守的で狂信的なまでの政策は我慢ならない。
 特に公家断絶を決定した、司教派の連中のやり方にはね。
 
 かつて聖職であった私たち墓守は、今や隠れ隠される扱いで、ハイエルフの血筋であることすら伏せねばならない始末。
 加えて、亜人種に対する迫害や、女性に対する不当な差別。
 宗教権力による横暴と、正義の名で堂々と行われる強奪同様の搾取。
 
 証拠が無いけれど、公家の公爵夫妻は聖北との意見対立から自殺に見せかけて殺されたのではないかとさえ、考えられるわ。
 貴方だって、公家の断絶が聖北教会の独断で行われた暴挙であることは、知っているでしょう?
 少なくとも、私の知る公爵夫妻は自殺など決してせず、最後まで貴族の責務を全うする気概を持っていた。
 
 教会側の暴挙を裏付ける話もあるわ。
 
 当時美しいと評判だったシグルトのお母様であるオルトリンデは、裏で現司教の愛人契約を持ちかけられていたの。
 よりによって公家の一人娘を、声高に「神職に捧げよ」と言ったそうよ。
 同じように言われて司教の元に行かされた娘たちは、言葉にすることも憚られる扱いを受けていたの。
 
 それを知っていた公爵夫妻は、きっぱり断ってかわりに多額の寄付をしたのだけど、司教はもの難癖を付けて譲らなかったそうよ。
 そうして、教会と公家が対立していたのよ。
 公爵夫人が嘆いて、私たちに相談に来たことがあるわ。
 
 あのスケベ司教がどんなことをしてきたか、国王である貴方が一番知っているでしょう?
 聞けば、あの悪法である〈初夜権〉を教会の名で発しようとしたことさえあるじゃない…聖職者が聞いて呆れるわ」

 〈初夜権〉…〈処女権〉とも呼ばれるものがある。
 
 これは、領主や聖職者が結婚前の花嫁の貞操に税をかける制度である。
 年頃の女性は大切な労働力であり、宝とされる。
 花嫁を貰い受ける夫は、一定の税あるいは寄付を、領主や聖職者に支払う、というものだ。
 
 領主の主張では、領民は領主の所有物ということになっている。
 聖職者の主張では、人は神の所有物ということになっている。
 
 本来であれば、少しでも税金を捻出するために考えられた法であったが、この法律はやがて歪んだ解釈をされるようになった。
 税金が払えなければ、花嫁の貞操を領主や聖職者が召し上げる、というものである。
 
 さらに酷い事例では、花嫁の貞操そのものを税金として結婚の時に徴収する領主や聖職者もおり、良識的な者たちからは悪法として忌み嫌われていた。
 
 シグヴォルフでは〈初夜権〉を禁止しているが、貴族たちの不満や反乱を防ぐため、王が〈初夜権〉を推奨している国もある。
 極端な話では、一種のハーレム…王が子種を与えた花嫁を貰い下げて、王の子供を育てる制度の国さえあった。
 
 聖北が入ってくる前の宗教観では、性に関して大らかだった時代や文明もある。
 辺境の平民たちには現在でも夜ばいの風習があるし、庶民はそれほど処女性に頓着しないかった。
 だが〈処女性〉という価値観を生み、それを重んじて貞操観念を推奨する宗教の登場は、ある意味で男女の文化を洗練させたが、時には歪んで解釈して利用する輩も現れる。
 
 有力者が定めた法律には、後の者が眉を顰める奇天烈極まりないものも多い。
 
「教会の聖職者は、軒並みあの司教の息のかかった俗物が上層部を押さえ、異端審問の名で暴挙が為されて罪の無い者たちが苦しんでいるのよ。
 
 この前なんて、よりにもよってこの墓所を公開するように迫ってきたじゃない。
 私が手を打っておかなければ、この墓所はあのろくでなしどもに蹂躙されていたのよ。
 
 今では外向的にも、シグヴォルフは孤立しつつある。
 強硬的なこの国の教会勢力のせいで、自国の国教が毒されるのを警戒しているからよ。
 他国の穏健派の教会勢力には敬遠され、それを攻める理由に上げて息巻く国家も出始めているわ。
 
 このままでは大きな戦争が起きる。
 
 戦争は国家を疲弊させ、滅ぼしかねない恐ろしいものよ。
 ましてやあの過激な司教ならば、戦争ともなればいらぬ口を出してくることは間違いないでしょう。
 
 ここで国家の象徴の1つである公家を再興して力を合わせ、穏健派の教会勢力と結んで今の司教を排斥しなければ、国が滅んでしまう。
 内戦に近いことになるのは心苦しいけれど、放っておけば国を取り巻く状況が酷くなる一方だわ。
 
 私たち墓守は、国家が愚かな道を歩まないよう助言するために、太祖様の名で残された賢人組織。
 いざことを起こせば、他国に去った墓守たちが一斉に集ってこの国を護るでしょう。
 
 私は貴方の姉である前に、この墓所を守り、国を憂う者なのよ。
 もし貴方が国王の義務を怠り、あの司教の台頭をこれ以上許すのならば、今後私のことは姉と呼ばせません。
 
 いいわね、シグソール?」
 
 厳しいアルフリーデの言葉を受けて打ちひしがれる国王の横で、シグルトは母を襲った知られざる不幸を知り、奥歯を噛みしめていた。
 もしアルフリーデの話が本当ならば、母も祖父母も理不尽な不名誉を負わされたことになる。
 
 シグルトは、自分なりに公家のことを調べていた。
 
 本当に自殺するような祖父母ならば、母を悲しませた憎むべき存在だが、母は一度も祖父母を悪く言ったことがない。
 子供たちの前で弱みは見せなかったが、祖父母の悪口を聞く度、母が涙をこらえていたことが思い出された。
 
 調べた結果では、公爵夫妻は温厚な人物であり、特に公爵は人格者として名高かった。
 後に教会の名で貶められていたが、公爵の行った治世は名君と呼べるものであった。
 逆に、教会に吸収された旧公爵領では、かつての穏やかな雰囲気はなりを潜め、先ほど会ったグールデンのような司教の親族がやり放題であるらしいのだ。
 
 公爵夫妻の遺体は、真っ先に駆けつけた教会側が自殺と断定してその首を即座に切り落とした。
 自殺者は不具の身体にされ、地獄に落とされるのがこの国の法律だからである。
 
 王国側の遺体見聞は許されず、抗議した騎士の一人が教会側に破門されたと聞いている。
 その騎士が公家縁の者だったせいで、罪人の縁者は同罪とされ、結局教会の横柄な主張が通ったのだが。
 
 先ほど貴族の娘に絡んでいたグールデンもそうだが、司教の一族やその一派は教会権力を傘にやり放題で、嫌われている存在だ。
 王国の教会勢力では、司教派の横暴を嘆く聖職者も数多い。
 
 シグルトが洗礼を受けた教会などは、穏健派と呼ばれる対司教派たちの流刑地のような場所で、学に優れた賢人も数多い。
 その聖職者たちから、シグルトは様々なことを学んでいた。
 
 困ったことに、司教派が占める門閥貴族は王国の武闘派が揃っており、国家の軍隊における半数を支配している。
 国王が手を出せないことは、無理からぬことであろう。
 
 対司教派は平民と一部の貴族には多く、シグルトの父親アルフレトも対司教派に属していた。
 だが温厚で知性派が多い対司教派は正面切って戦うことを好しとせず、司教派の台頭を許しているのが現状だ。
 
 何れ父の元で司教派と争うことになるかもしれない、と漠然とした予感がある。 
 だが、己を修行中の身であると自覚するシグルトは、まだ時期尚早と即座に結論付けた。
 
「恐れながら殿下…
 
 今のお話はあまりに大きな話。
 騎士ですらない俺の及ぶところではありません。
 
 今の俺では殿下のお心に沿うことは出来ませんが、何れこの身が恥じないものとなった暁には、改めてお話を伺いたく存じます」
 
 素早く保身に入るシグルト。
 家族を巻き込まないようにするためだ。
 
 自身一人であれば、戦いに命を尽くすことも無謀に身を焦がすことも恐れないシグルトだが、苦労した母のために慎重であろうと心に決めていた。
 
 アルフリーデはシグルトのそう言った心中を解したのか、穏やかに微笑んでくれた。
 
「ごめんなさい。
 この話は時期尚早だったわね。
 此処まで話すつもりなんて、無かったのに。
 
 でも貴方が公家直系の長子であり、貴方のお母様と公爵夫妻の名誉を回復する義務があることは、覚えておいて頂戴。
 貴族として庶民の税でその糧を得、公家の血と名誉という宿命を背負っていることを忘れてはいけなわ。
 
 …話が長くなったわね。
 
 銀糸紋の外套は私が預かるけれど、変わりに別の外套を授けましょう。
 私と貴方の出逢いの記念として、受け取って頂戴。
 こっちは、王の姉としての命令よ。

 拒絶は許さないわ」
 
 そう言って、さっともう一つ外套を取り出すアルフリーデ。
 もともとそのつもりだったのだろう。
 
 そちらの外套は絹で出来たもので、銀糸による細かな刺繍が上品に施されていた。
 やや質素にも見える配色だが、目利きであれば上等な物だと判る品だ。
 
「これは、私が貴方と会った時に贈ろうと思っていた外套よ。
 
 貴方が生まれたとオルトリンデの手紙で知った時から少しずつ、この私が織った絹で作ったの。
 建国記念のこの良き日に渡せて、嬉しいわ」
 
 アルフリーデは銀糸紋の外套を国王に預けると、自らの手で頭を垂れたシグルトに外套を羽織らせてくれた。
 外套は量ったようにぴったりと、シグルトの長身を包み込む。
 
「恐悦です。
 
 有り難く賜ります、殿下」
 
 外套を失ったシグルトとしては、願ってもない品だ。
 こちらは、アルフリーデがシグルトのためだけに用意してくれたという品でもあるし、断る理由もなかった。
 丁寧に礼を尽くし、アルフリーデに深く頭を下げる。
 
 アルフリーデは頷いて、満足げに目を細めた。
 
「…妹を待たせています。
 
 この身が殿下の御尊顔を拝するのに相応しいものとなった時には、また改めて参ります。
 さらなる御無礼をお許し下さい。
 
 今宵はこれにて失礼致したしたいと思います」
 
 アルフリーデがシグルトの肩を軽く叩き、それを許す。
 
 シグルトは国王にも礼を尽くし許可を受けると、その場を去っていった。
 
「…ふふ、立派な青年になったのね。
 
 頼もしい限りだわ」
 
 上機嫌のアルフリーデ。
 その笑顔を見つめながら、国王シグソールは何故か苦虫を噛みつぶしたように、唇を噛みしめていた。

 
 
 新キャラクター登場です。
 これまで、それとなくリプレイでも匂わせていたのですが、このエルフのお姫様こそ、シグルトの庇護者となった、隠れた国の有力者でした。
 
 何となく判ると思いますが、好い方なんですけどマイペースで強引です。
 王様を見事に尻に敷いていたり。
 
 アルフリーデが言っているワルト領とは、公爵家が治める広大な領地のことで、この国の貴族は領地の名を姓のかわりに名乗ります。
 「ヒュッヘル領子爵、ランベルト」みたいな感じですね。
 
 シグルトは公家の直系の男子であり、断絶した公家を復興させて司教派の横暴を止める温厚派の旗印にしようと、アルフリーデは随分前から画策していました。
 
 友人の両親を自殺者という不名誉で処分し、勝手に歴史ある公爵家を断絶してしまった司教に対し、アルフリーデは凄まじい敵意を持っています。
 
 司教に身柄を接収されそうになっていたオルトリンデを匿い、思い人であるアルフレト(シグルトの父親)に愛人として囲わせるという奇策を考えたのも、アルフリーデだったりします。
 仮にも神職に差し出せという女性が、一番身分の低い男爵の愛人では、教会の権威が地に落ちますからね。
 不名誉を取り繕って、それで逆にオルトリンデは守られたのです。
 
 アルフリーデは、外見の愛らしさによらず、かなり権謀術数に長けた人物です。
 現在の王政でも、アルフリーデが影のブレインとしていることで、ちょっぴり情けない国王はその治世を優れた物にしています。
 外交政策の原案なんかも考えている、スーパーレディなんです。
 
 墓守は、オルテンシア姫が考えた制度で、本来は隠居した王族たちが後の王族に知恵を授けるために組織されたものでした。
 とくに、長い寿命を誇るエルフが王族に生まれた時はその寿命で知恵を蓄えて、王国を支えてきたわけです。
 墓守の力は非常に強く、国王を凌ぐ権力があります。
 国王の即位や、貴族の断絶と爵位の叙勲を考えるのも、本来は墓守の意見が第一で、司教のやったことは墓守の権力を侵害する行為だったわけです。
 
 本来、エルフの血が王族にはないと公式に発表させたのは墓守たちでした。
 無駄な争いが起きないように、また墓守が影に徹するように、その存在を隠蔽したのです。
 
 歴史ある王国は、こういった影の組織を内包してるのがけっこうあります。
 秘密結社なんか、まさにその類ですよね。
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シグルト外伝 『青黒い稲妻』 | コメント:3 | トラックバック:0 |

『グウェンドリン』

 女は少し歩いてはその場にたたずみ、艶めかしい溜息を吐いた。
 美女の蠱惑的な仕草に、通りかかった者は男女を問わず見惚れてしまう。
 
 雪のように白い頬を桜色に染め、初々しい仕草で歩くその娘はブリュンヒルデ。
 先ほどシグルトに助けられた絶世の美女である。
 
 ブリュンヒルデは、シグルトとの出逢いで感じた甘い痺れに酔っていた。
 男物の外套を大切そうに纏い、頬を赤らめている彼女は年頃の乙女らしい可憐さがある。
 普段、気丈で聡明と噂される伯爵令嬢のそれでは無い。
 
 そんなブリュンヒルデに、靴音を響かせて歩み寄るものがあった。
 
「探したぞ、ブリューネ」
 
 呼びかけにはっとしてそちらを見ると、はっとするような美しい人物が立っていた。
 背こそ高いが、よく見れば艶やかな赤い唇と女性特有の柔らかな曲線を備えた身体つき。
 男装の麗人、といった風貌である。
 
「え、あ?
 
 …グウェンダ?」
 
 いつもの彼女ならば絶対しない間抜けな対応。
 グウェンダと呼ばれた背の高い麗人は、肩をすくめて苦笑した。
 後ろで束ねたシルバーブロンドがさわり、と揺れる。
 
「悲しいものだな。
 
 2年ぶりに再開した友に対して、その反応はあまりに味気ないぞ?」
 
 がっかりしたように大げさな溜息をつく麗人。
 
 ブリュンヒルデは、自分の醜態を恥じたのか頬を赤らめ、一つ呼吸して、いつもの彼女に戻った。
 
「ごめんなさい…悪気は無かったのよ。
 ちょっと、さっきまでいろいろあったから。
 
 改めて…
 お久しぶりね、グウェンダ。
 シグヴォルフの貴族として、同時に共に修道院で祈った友として…
 
 スウェインのグウェンドリン殿。
 ようこそ、私の国へ。
 心から歓迎するわ」
 
 軽く夜服の裾を掴み、膝を軽く折って優雅に一礼する。
 そして2人は互いに手をとり、微笑み合った。
 
 麗人…名をグウェンドリンと言う。
 
 年はブリュンヒルデと同じ16歳で、隣国スウェインの子爵令嬢だ。
 
 しかし、今の姿と言えば、貴族の娘としては異様とも言えた。
 グウェンドリンの着ている礼服は、男性のそれである。
 背の高い彼女が着れば、並の男よりよほど似合っていたが、男女の区別がはっきりしている北方貴族の子女としてはありえないものだった。
 
「相も変わらず男装なのね、グウェンダ。
 
 貴女ならばドレスだって似合うでしょうに。
 まさか使節団として来ているのに、男装のままだなんて思わなかったわ。
 
 よく他の方が許可したわね」
 
 背の高い男装の麗人を見上げ、ブリュンヒルデは少し呆れた用に目を細めた。
 
「何、大したことではない。
 
〝使節団に加わる者が、浮かれた服装などしては国として恥になる。
 まして、自分は武門の生まれである。
 身を律する意味で、他の男性方と同じ服装にしたい〟

 と申し出た。
 
 すんなり受け入れられたぞ」
 
 そう言って、グウェンドリンは軽く片目を瞑って見せる。
 聞いたブリュンヒルデは、たまらず吹き出してた。
 
 
 ブリュンヒルデとグウェンドリンは、親友同士である。
 
 グウェンドリンの家は、隣国で代々軍事顧問や将帥を多く輩出した武門の家柄だ。
 実際グウェンドリンも、女だてらに剣を扱う。
 その腕前は、その辺のにわか騎士よりよほど強い。
 性格も男勝りで、幼少の頃は騎士になると言って憚らなかった。
 
 もっとも、彼女がいかに武の名門の生まれだとしても、封建的で男尊女卑のまかり通った北方貴族の中で、彼女の願いはかなわなかった。
 母親にそのお転婆ぶりを嘆かれていたグウェンドリンは、その当時に同じく学問にばかりのめりこんでいたブリュンヒルデと同様、花嫁修業の名目で同じ修道院に入れられてしまった。
 2人は3年の間共に過ごして互いの故国に戻り、それ以来の再会である。
 
 この2人は女傑だった。
 修道院で意気投合した2人は、同じような境遇の子女たちを瞬く間にまとめ上げ、そのリーダー的な存在となった。
 
 女だけの修道院。
 予想すれば、お淑やかな貴族の子女ばかり集まるかと思えば、その実とても姦しい場所だ。
 遊びたい盛りの少女たちが一堂に会すれば、賑やかになるのは当然である。
 
 教育係のシスターの目を盗み、その裏で彼女たちがやることは、まず勢力争いだ。
 
 貴族の子女、という者は概ね見栄っぱりである。
 誰がリーダーで、どのグループに属するかということが重要だった。
 
 その中でブリュンヒルデは、“緑玉の君”と謳われていた。
 エメラルド(緑玉)のようなブリュンヒルデの瞳から付いた名である。
 
 持ち前の教養とカリスマ性で他の娘たちを虜にしたブリュンヒルデは、修道院に入って数日で一大勢力のリーダーになってしまった。
 
 ブリュンヒルデ自身は、勢力争いなど興味もなかったが、露骨に彼女の美しさを嫉妬した他の勢力のリーダー格に絡まれ、酷い嫌がらせを受けたのだ。
 負けず嫌いのブリュンヒルデは、〈やるならば一切の容赦無し〉とばかりに相手のリーダーを徹底的に実力で打ち負かし、修道院の子女たちのトップになった。
 実質人気の上でナンバー2だったグウェンドリンとともに、ブリュンヒルデが行った数々の武勇伝は、今でも同期の娘たちの語りぐさである。
 
 ブリュンヒルデは所謂才媛だった。
 特にその知識は普通の娘のそれでは無い。
 医学から神学、文学、数学、歴史学…
 修めた知識は、国の賢者たちが顔負けのものであった。
 
 幼年に彼女の家庭教師をした者は、ブリュンヒルデの利発さを褒めて“賢き姫”と呼んでいたほどだ。
 
 ブリュンヒルデは自尊心の強い娘であったが、同時に大変な努力家で勉強家だった。
 その美しい瞳が勉強のし過ぎで濁るのではないかと、周りの者が心配したほどである。
 
 ブリュンヒルデが、努力をするのはわけがあった。
 
 彼女の母は継母である。
 実の母は、王族の血を引く侯爵家の令嬢だったが、ブリュンヒルデを生むと間もなく亡くなってしまった。
 
 父親は血の病を患っており、いつもは臥せっていることが多い。
 再婚した妻との間に子をなす精力は無かった。
 
 継母は政略の意味で再婚したため、父やブリュンヒルデへの愛情は薄い。
 生真面目な女性で、普段は家に籠もって趣味の刺繍に明け暮れている。
 熱心な聖北教徒で、男女の営みを忌み嫌っている様子もある。
 彼女は未だに乙女だと、使用人たちが噂する程だ。
 
 そのため兄弟姉妹には恵まれず、ブリュンヒルデは伯爵家の一人娘という立場である。
 病気がちな父や内向的な母の代わりに彼女が常に表舞台に立ち、百戦錬磨の貴族たちの中で渡り合う必要があった。
 
 他の者に軽んじられないように努力し、騙されないように賢くなった。
 
 責任感の強いブリュンヒルデは、自分の夫が必然的に伯爵となって彼女の家も継ぐのだと考えている。
 それは貴族の子女として生まれた者が持つ当然の価値観であり、幼少の頃から強く自覚していたことだ。
 だが、大切に守ってきたものを愚鈍な輩に渡すつもりはないし、努力して磨いてきた自身を委ねる相手に妥協するつもりは無かった。
 
 加えるなら、彼女は貴族の中では驚くほど新進的な考えを持ち、身分や財産よりも、才能や志ある者を夫にしたいと考えているのだ。
 
 戦争の多い北方では、武勇も重要であり、蛮勇でないなら強いことも必要である。
 小貴族から才能だけでのし上がった人物も数多い。
 卑屈なだけの貧農などは当然お断りだが、自分の努力を認めてくれる同様の努力家であれば、生まれなど二の次だと考えていた。
 
 そんな性格で立場のブリュンヒルデは、男勝りで努力家なグウェンドリンとは馬が合った。
 
 
 グウェンドリンの家は、隣国有数の武家である。
 その家紋は〈龍殺紋〉と呼ばれ、家の開祖は龍を殺した豪傑だったという。
 
 グウェンドリンは兄ばかり、しかも武人肌の家族に囲まれて育ったため、性格も口調も男のようだった。
 しかも、彼女の家では女性でも剣を学ぶのが当たり前だった。
 女でも泣くよりは戦えという家訓もある。
 
 末の、しかもただ一人の娘を目に入れても痛くないと思っていたグウェンドリンの父は、幼少の娘が求めるままに男のように育てたのだ。
 兄たちも、話の合わない他の貴族の子女にうつつを抜かすより、趣味の武術について話の合う妹を父同様に可愛がった。
 母親は嘆いたが、可愛いグウェンドリンに悪い虫が付かないと、父親も兄たちも楽観的になっていた。
 
 そんな折、〈女のくせに〉と馬鹿にした同年代の少年をグウェンドリンが持ち前の武芸で徹底的に打ち負かす事件が起きた。
 彼女の武勇を褒める夫と息子たちに嘆き、実家に帰ると泣き出す母をなだめるため、グウェンドリンは花嫁修業の名目で修道院入りを承知することになったのだ。
 
 グウェンドリンは、元々熱心な聖北教徒で信仰心も厚い。
 毎日の食事では祈りを欠かさないし、修道院の荘厳な雰囲気には憧れもあった。
 花嫁修行よりも己の信仰のために、グウェンドリンは修道院に入ったのだ。
 
 ブリュンヒルデとグウェンドリンに共通するのは、互いに貴族の子女としては異端的な考えを持っていたことと、自立心の強い努力家という部分。
 家を離れたそんなじゃじゃ馬2人が出逢えば、そこに生まれるのは対抗心、あるいは共感である。
 
 2人はライバルとして切磋琢磨し、親友として苦難に取り組んできた。
 修道院での修行期間を終え互いに離れてからも、2人の友情は色あせること無く、時折手紙をやりとりしながら交友を続けていたというわけだ。
 
 久しぶりに再会したグウェンドリンは、ますます凛々しい雰囲気を持つようになっていた。
 
 グウェンドリンは、元々武人のような中性的な口調と剣術の稽古でほどよく鍛えられた体格から、下手な男より余程雄々しかった。
 同世代の少女たちの中でも頭1つ高い長身と、美しい容貌。
 男っ気の無い修道院にいた頃は、グウェンドリンに男性を重ね見て恋をする少女たちも沢山いた。
 
 ブリュンヒルデも、もしグウェンドリンが男性だったら夫の候補に選んでいただろうな、とさえ考えている。
 しかし、彼女が女性で良かったとも考えていた。
 グウェンドリンの男らしいとさえ感じさせる性格は、姦しい貴族の子女には無い一種の清々しさを感じさせるからだ。
 
 同性でなければこれほど気安くはできず、男性的でなければ友としての魅力に欠けるというわけである。
 
(難儀なものよね。
 
 でも奇抜さがあるからこそ、それを魅力的だと感じるのも事実だわ)
 
 そんなことを考えて、くすりと笑ったブリュンヒルデに、グウェンドリンは首を傾げた。 
 
「よく見れば、お前の着ているものも男物の外套だな。
 
 なぜそのような物を着ている?」
 
 友人の問いに、ブリュンヒルデは意味深げな笑みを浮かべると、その手を取った。
 
「うふふ、素敵な出逢いがあったのよ。
 
 本当に物語のような素敵な話。
 聞きたいでしょう?」
 
 頬を染めて嬉しそうに微笑む友人に、グウェンドリンは面食らったように首を傾げた。

 
 
 大分この手のものを書いていませんでした。
 リプレイも停滞してすみません。
 ぼちぼち書いていきます。
 何とか月一ぐらいには更新したいと思っています。
 
 お待ちの方は気長にお願いしますね。
 
 さて、リプレイ2に登場したグウェンダが登場です。
 この当時、グウェンダは3レベルぐらい。
 小国ではまあまあの実力です。
 
 彼女がどうやってシグルトと出逢い、そして追いかけるほどになったのかは、またの機会に。
 
 次回は、もう一人シグルトと深く関わる女性が登場します。
 シグルトの血筋と、病んだ国の一面…
 
 ご期待、してくれると好いなぁ。
シグルト外伝 『青黒い稲妻』 | コメント:2 | トラックバック:0 |

CW風 英雄紹介 4回〈トリスタン〉

 第4回目は、らっこあらさんのリクエストで、まずトリスタンをば。
 
 トリスタンは、アーサー王伝説にも登場しますが…
 円卓の騎士に登場するトリスタンは、後に強い騎士としてアーサー王伝説に吸収されたっぽいです。本来は義父であるマルク(マーク)王に仕えていたわけですから、別の君主に使えていると辻褄が合いません。
 
 元ネタは諸説集まって出来たものなのでしょうが、おそらく一番有名なのは『トリスタンとイゾルテ』という悲恋の物語でしょう。
 
 ランスロットとグウィネヴィアに近い、使える君主の妻との悲恋なのですが、あちこちの物語の影響を受けているようです。
 トリスタンが君主の花嫁を得るために戦う所など、シグルドがブリュンヒルドを王に捧げるために獲得するくだりに何となくにています。
 ヨーロッパの物語を紡ぐ人たちは、この手の話が隙だったのでしょうね。
 
 トリスタンとイゾルテについて知りたい方は、洋画DVDに『トリスタン+イゾルテ』があるのでそちらを御覧になられるといいかもしれません。
 
 トリスタンはランスロットを彷彿とさせる無双の騎士、というイメージがあります。
 アーサー王伝説では、フィクス・トリシュトラムという名前です。
 
 強さよりも、イゾルテとの悲恋があまりに有名なのですが。
 
 
 アニメになった『天守物語』の主人公などもそうなのですが…
 好きな人がいるのに奥さん貰ってる…
 何というか、代用品のように貰われた奥さんたちがかわいそうな気がします。
 でも、英雄の話って、この手の結婚が多いのですよね…

 
 此処では、映画の『トリスタン+イゾルテ』のストーリーで紹介します。
 
 幼少の頃、敵国に攻められて両親を失ったトリスタンは、その戦いで片腕を失ったマークに養子として引き取られ、育ちます。
 成長したトリスタンは無双の戦士へと成長しますが、とある戦闘で毒の刃を受けて仮死状態になり、船に乗せて海に流されるという当時では最高クラスの葬儀(海の彼方の妖精境に送るような意味があると思うのですが…)をされ、敵国の浜辺でその国の王女であるイゾルテに助けられます。
 2人は恋に落ちますが、敵同士の恋であり、トリスタンは色々あって祖国に帰ります。
 
 義父である王の再婚のため、至高の女性を得るために、トリスタンは再度敵国に渡り、武術大会で優勝してイゾルテを獲得するのですが、顔を隠していて、しかもトリスタンには侍女の名で名乗っていたイゾルテに気付けなかったトリスタンは、獲得したイゾルテを義父であるマーク王に差し出すことを宣言してしまいます。
 
 互いのすれ違いに気付いた時は後の祭…
 故国に戻ったトリスタンは、義父とイゾルテが結婚した後も、隠れて逢瀬を重ねます。
 でも、王のお気に入りであるトリスタンを良く思わない輩によって、その不義の仲を暴露され、トリスタンは追放のみとなります。
 
 トリスタン自体は、イゾルテと、父と慕うマーク王への忠誠心から激しく葛藤していました。
 
 その後、敵国が攻め込んでくると、トリスタンは国のために必死に戦い、命を落とします。
 イゾルテに看取られて、トリスタンは静かに息を引き取るのですが…
 
 元になった『トリスタンとイゾルテ』では、トリスタンの死に際し、イゾルテもショックで死んでしまうようです。
 
 何というか、もの悲しい話ですが…
 
 
 トリスタンは、マーク王の配下で最強の騎士でした。
 ランスロットと同一視されることもあったようです。
 
  
◇トリスタン
 レベル9 英明型 大人
 
器用度:6 敏捷度:6 知力:7
筋力:10 生命力:7 精神力:6
 
好戦性+2 勇猛性+3 正直性+1
 
 映画版のトリスタンは策士的な一面も見せます。
 バランスタイプで表現してみました。
 
 話は全然違いますが、昔『ヴェイン・ドリーム』というPCゲームで、主人公の名前がトリストラムでしたが、モードレッドが出てるぐらいですから、トリスタンから名を付けたんだと思いますが…覚えている人いるかなぁ。
 私の世代が判りそうな感じですね。
CW風 英雄紹介 | コメント:4 | トラックバック:0 |

明けましておめでとう御座います!!!

 新年明けましておめでとう御座います。
 管理人のY2つです。
 
 最近、公私ともにごちゃごちゃしてて何だか時間が出来ません。
 が、ぼちぼちと水面下で活動していますので、シナリオとリプレイをお待ちの方、もう少しお待ち下さい。
 
 現在、カードワースのシナリオを中心に下準備をしています。
 
 新作で『微睡む刃金』という、ハイリスク店シナリオを作成しています。
 風屋に登場した鋼鐵シリーズを、ずばっと拡張して、面倒にしたものです。
 いろんなシナリオのアイテムやスキルを貢ぎ物にしてパワーアップするという、ディスカウントな内容になるかと。
  
 テストシナリオでは抜刀術を追加する準備をしています。
 システム原案は出来たので、もうすぐ実物をUPできると思います。
 既存のシステムとの互換性を考え、より独特な形にするつもりです。
 
 もう一個、水面下で活動しているものがありますが、こっちはそのうちに…
 
 
 最近スキルとアイテムの作りすぎで、ちょっと頭が煙吹いてます。
 二番煎じが増えてきて、納得いか~んとか、キーボードに八つ当たりしてしまいます。
 むう、新ジャンルを作らねば…
 
 
 今年も(というか、私的には新年は節分からなのですが)頑張っていきますので、よろしくお願い致します。
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