Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

『碧海の都アレトゥーザ』 海風と踊る娘

 そこは古びた演劇場の跡だった。
 苔生した石畳が、海から吹き付けてくる粘ついた風と燦々と降り注ぐ陽光を受け、白く光っている。
 
 少女は、しなやかに舞っていた。
 
 鞭のようにしならせた脚で、頭上から落ちてくる布で巻いた木片を蹴り上げる。
 手に持った木剣が手前に置かれた木偶人形を叩き、そのまま一転して肘で落ちてきた木片を叩き飛ばした。
 
 小麦色の肌は汗に濡れ、呼吸はやや乱れている。

「そこよっ!
 
 踏み込みを躊躇ってはだめっ!!」
 
 観客席に腰掛けた黒人の女が、鋭く指示を出す。
 
 少女は、木偶人形に向かって疾走した。
 
 汗を散らせて少女…ラムーナは踏み込んでから高く跳躍する。
 その身が、彼女の背丈程までふわりと浮き上がった。
 
 腰を曲げ空中で下半身を振り上げて高さを稼ぐと、木偶人形の頭部を踏みつけ、その反動を利用してさらに高く跳ぶ。
 胸を中心にくるりと反転、逆しまの状態から手に持った木剣でさらに木偶の頭部を殴った。

 くるりと蜻蛉を切って着地。 
 ラムーナは学んだ歩法と動きで、鋭い突きを放つ。
 跳ねるように木剣の先端が、背後にあった木偶の胸板をガリリ、と削った。
 嵐のように凄まじい連続攻撃が、木偶人形の形を歪めていく…
 
 南方大陸より伝わった闘いの舞踏がある。
 
 時には奴隷として連れて来られた南方の黒い肌の民は、戦いを禁じられていた故に、舞踊の中に練り込んで戦いの技術を秘匿し、それを後世に伝えた。
 やがて南方の情熱的で激しい動きを取り込んで生まれた闘いの舞踊は、力と速さに分かれ武芸として昇華する。
 
 苛烈で華麗なそれを〈闘舞術〉という。
  
 ラムーナが学んでいるのは【連捷の蜂(れんしょうのはち)】。
 
 蜂が連携して敵を突き刺すが如く、流れるような連続攻撃を行う戦士の舞踏だ。
 流麗でありながら、優れた使い手が使うなら攻撃が2倍にも3倍にもなる。
  
 〈闘舞術〉は、南方大陸から〈倣獣術〉とともに伝わった闘いの舞踏である。
 獣の猛々しい様を倣った、徒手空拳と武器を用いた武芸である〈倣獣術〉は、アレトゥーザの片隅にある訓練場で、南方大陸出身の元船乗りが教えている。
 より実戦的で対人戦闘に向いた〈倣獣術〉は、アレトゥーザ出身の船乗りや傭兵の中で好んで使われるようになっていた。
 
 正規兵や、聖海教会の保守派に属する僧兵の類からは野蛮な異端の技として、〈闘舞術〉も〈倣獣術〉も忌み嫌われている。
 だが、実戦を重んじる冒険者の中には、わざわざアレトゥーザを訪れて技の伝授を請う者もいた。
 
 元々は〈倣獣術〉を学ぶつもりだったラムーナだが、シグルトに普通の武芸を習うことは止めた方がよいと言われていた。
 
〝ラムーナには、柔軟で身軽さを生かせる技が向いている。
 無理に力業や戦意を剥き出しにした技を身に付けたりすれば、変な癖が出来て後の技の習得に障るかも知れない。
 
 それに身軽さを活かして籠手や身体を守る防具を身に着けないなら、徒手の技では身体を故障する恐れもある。
 特にラムーナは、戦士としての素養が今まで無かったのだから、むしろ小柄な体格と才能を最大限生かせる技術を新しく探してみた方が好いだろう〟
 
 己も剣を持つのには慣れてなかったというシグルトであるが、短期間のうちに剣術向きの身体を作り、若手の冒険者では一目置かれるほどである。
 実際戦闘では初心者同様で、奥の手の一つも持たないラムーナが、そこそこの戦士を相手取るほどの戦い方が出来るようになったのは、シグルトの助言に寄るところが大きい。
 
〝無理に複数の技を学ぶより、戦いに慣れるまでは一芸を磨いた方が迷わなくていい。
 
 だからこそ、最初に修得する必殺の技はよく考えて決めるんだぞ〟
 
 未だに大技の一つも修得しないまま、技を振るう戦士と互角に戦ってみせるシグルトの言葉は説得力があった。
 シグルトは着実に基礎訓練を繰り返し、地道に身体を作り、今後修得する技のために準備をしている。
 
 彼の戦術観や訓練法は画期的で、若手の冒険者の中には真似る者も何人かいたが、悪い結果に出たとは聞いていない。
 
 アレトゥーザの〈倣獣術〉を学んではどうかとレベッカに勧められたこともあったが、シグルトは苦笑して断っていた。
 技の習練に必要な経費を節約する目的もあったようだが、何より適当な気持ちで技を習得して技に溺れるようなことがないように、とのことだった。
 
 目的のためにとことんストイックになれるシグルトの姿は、ラムーナにとって理想的な戦士に見えたのである。
  
 
「―――ィァァアアアッッッ!!!」
 
 止めとばかりに放った回転斬りが、終に木偶人形の頭部を吹き飛ばした。
 
「…そこまで。
 
 十分よ、ラムーナちゃん」
 
 ラムーナが、次の技に備えて振り上げていた踵をゆっくりと地面に下ろす。
 
 張り詰めていた太腿と臀部の筋肉が緩んでいく感触。
 静かに息を吐くと優雅に踵を地面に置き、ラムーナは舞踏を踊り終えたことを告げるため軽く一礼した。
 
 元々舞踏として発展した闘舞術は、芸術として人を魅せる礼法や技術も内包している。
 師の前ではこの小さな作法でさえ、忘れれば大目玉だ。
 
 パチパチ…

 上機嫌で手を叩き、観客席に座っていた女性が立ち上がった。
 
 南海の太陽を受けて、黒曜石のように黒くその肌が輝いている。
 陽気に白い歯を見せて笑う様は、まるで自分のことを喜んでいるかのようだ。
 
 女性の名はアデイ。
 アレトゥーザに住む女性で、元は南にある大陸から渡って来た黒い肌の民である。
 
 アデイが闘いの舞踏を教えることは、あまり知られていない。
 腰を患い舞踏そのものをもう踊れないというアデイは、おおっぴらに技術を伝えようとはしなかった。
 
 アデイと同じ黒き肌の民である、訓練場の元船乗りの紹介でも無い限りは、その技術を学ぶことは難しい。
 
 黒き肌の民は、高い身体能力と屈強な身体を持っていた。
 しかし一部の心無い者は、黒い肌を悪魔のものとして忌み嫌った。
 外見の違いや文化の違いは、曲解されれば差別の種となる。
 南征のための口実と結びつけば、人の欲望と敵意を喰らって巨大な悪意が生まれる。
 
 奴隷同様の扱いを受ける黒き肌の民は、未だ多かった。
 比較的移民が多いこのアレトゥーザでも…いや、多数の民族が集まる場所だからこそ、露骨な差別が起きるのだ。
 
 都市に住む者は、総じて知性が高い傾向にある。
 人口の多さとともに、自然と他者とのコミュニケーションを取り、そうやって他人から知識を吸収するからだ。
 
 だが、それは他者に影響されやすいということでもある。
 差別という行為が大多数のものになった時、それは常識となって迫害を行うための口実となる。
 
 黒き肌の民は、そうやって行われる迫害をよく被っていた。
 それ故にアデイは、迫害されないよう目立つことを避けていたのだろう。
 
 アデイの黒い瞳は、どこかしか、いつも哀愁を湛えていた。
 
 ラムーナは、初めてアデイに出逢った時のことを思い出す。
 身動き一つせずにずっと南海を眺め、アデイは人目を避けるように一人ぽつんと大運河の桟橋に腰を下ろしていた。
 
 それは、かつて奴隷船から逃れた後、途方に暮れていた自分を思い出させるものだった。
 共感を覚えたラムーナは自然とアデイに近づき、その隣に腰を下ろしていた。
 
 しばらくはその格好で、一緒にただ碧い海原を眺めた。
 やがて目が合った時、何気なく話をしてすぐに仲良くなることが出来た。
 
 互いに遠く離れた地の出身で、同性同士。
 
 弾む会話の中で、ラムーナが舞踏の素養があることが判ると、アデイは子供のように目を輝かせた。
 嬉しそうに故郷の舞踏のことを話してくれるアデイ。
 
 ラムーナは、本格的な舞踏を知らなかった。
 
 彼女にとって舞踏は、日々の糧を得るために他人のそれを真似て適当にやっていたものだ。
 それに、ラムーナの知る舞踏は人の目を引くための、どこか卑屈に媚びたものでしかなかった。
  
 
 ラムーナは、東方にあるグルカという貧しい小国の出身である。
 
 他国に囲まれ、貿易の要所でもあるグルカは、絶えず戦火にまきこまれていた。
 
 グルカの民は驚異的な身体能力を持つ者が多く、男の多くが戦争に関わる戦闘民族である。
 そして、本質的に残虐で利己的だった。
 
 武勇で名を残したグルカ出身の傭兵や軍人は数多い。
 繰り返し戦争に関わった国柄故か、国民は奪われることに慣れ、多くの国民たちは心が病んでいた。
 
 国には厳しい身分制度があり、特に男尊女卑の傾向が強い。
 親の権力が強く、家長には逆らえない。
 
 そんなグルカの民の中でも、ラムーナの父親は酒癖が悪く、平気で女子供に暴力を振るい寄生虫のように子供たちの稼ぎにたかるろくでなしだった。
 ラムーナの母は蹂躙されることに慣れてしまった、消極的な女性だった。
 
 兄2人と姉が1人。
 自分の下に、大きな身体の末の弟。
 他にも兄弟姉妹はいたらしいが、死産であるか、口減らしのために名前をつけられることもなく捨てられて野犬の餌になったようだ。
 
 生活は貧しくて、虫の湧いたものや腐りかけたものでも、食べられればよい方だった。
 グルカの貧民層で、食中りで死ぬ子供は間引いて捨てられる子供よりもはるかに多い。
 
 後に判ったことだが、ラムーナは父の実の娘ではないらしい。
 父の話では、美しい容貌の母親が兵士に乱暴されてラムーナを身籠もったという。
 
 一番母親に似ていた美しい姉に比べ、ラムーナはやせっぽちで、度重なる父親の虐待で酷い猫背だった。
 歯が抜け替わるまでは乱杭歯で、周りからは醜い子供だと思われていたようだ。
 
 奴隷として売られるまでは、父親から受ける虐待を恐れていつも顔を伏せていたし、人前では父親に殴られた痕を隠すために面を被ったり、滑稽な表情を浮かべていた。
 愚か者の振りをするのも、身を守るための処世術だったのだ。
 ラムーナの行動がどこか道化じみて戯けているのは、そういった背景がある。
 おそらく、最近になって愛らしい母似の顔立ちになってきた彼女が故国に残っていたなら、春を売ることになっただろう。
 
 戦場で戦うことが出来ないとされた女は、生まれても疎まれた。
 
 ただでさえ出生に曰くのあったラムーナは殺されるはずだったが、姉が庇ってくれて命を長らえることが出来た。
 他の兄弟たちが間引かれて死んだのを知っていたラムーナの姉は、ラムーナが生まれるやいなや、すぐに匿ってくれたのだ。
 
 他の家族が冷たかったり乱暴だったのに対し、姉だけは可愛がってくれた。
 ラムーナの性格が歪まなかったのは、姉から受けた愛情の結果である。
 
 〈ラムーナ〉という名前は、西方に来て名乗るようになった名前だ。
 故郷の彼女は名前され与えられず、ただ〈搾り滓〉という意味の蔑称で呼ばれていた。
 
 父は、ラムーナが人としての名を名乗ることを許さなかった。
 優しい姉は、ラムーナに普通の名前をつけようとして、奥歯が折れる程殴られたことがある。
 
 母は父に従順で、ラムーナとは目を合わせようとしなかった。
 一番上の兄は威張ってばかりで、父親に似て暴力的だったが、煽てれば殴ったりはしなかったので、まだましだった。
 二番目の兄は姑息な上狡猾で、父親そっくりだった。
 弟は愚図で図体が大きかったが、とても貪欲で、よく兄弟の食べ物を奪っては父にぶたれていた。
 
 ラムーナの姉は近所でも評判の美しい娘だったが、子供のうちから父親に強制されて春を売っていた。
 そんな姉を助けるのために、ラムーナは客寄せのための舞踏を踊り、ひたすら人に媚びた笑いを浮かべる。 
 
 ひたすら卑屈に、愛想笑いを浮かべ地面ばかり見る毎日。
 酒に酔った父親が理不尽な暴力を振るえば、ひたすら謝罪の言葉を言って身体を丸くする。
 背中は痛みが残るけれど、腹を蹴られるよりは安全だ。
 そんな歪んだ姿勢を取り続けた代償がその猫背だ。 

 だが、要領がよかったラムーナはまだましだ。 
 親に蹴られて内蔵が破れ、死んだ子供の話など日常茶飯事だった。
 
 あるいは、子供が産めなくなった娘たちもいる。
 だが、売春させても子が出来ないから面倒がないと喜ぶ親さえいた。
 
 貧民の中には、物乞いをする時に同情を誘うため、親が子の手足を千切ることもある。
 その痛みで泣く声が五月蠅いと、喉を潰された幼なじみもいた。
 
 泣けなくなった子供に代わって大げさに親が騒ぎ立て、そうやって恵んで貰ったわずかな金はろくでなしのその親が酒代に変える。
 
 貧しさと荒んだ生活は、暴虐の免罪符になっていた。
 親が子を生きるための糧にする…
 
 ラムーナが育ったのは、そんな地獄だった。
 優しい姉が庇ってくれなければ、10日も生きられなかっただろう。
 
 皮肉にもラムーナの身体から父親の暴力によって出来た青痣が絶えたのは、奴隷として売られた後だった。
 足の爪を逃亡防止のために刺し貫かれたけれど、一日一食の食事が与えられ飢えることはなかった。
 故郷では日に一度でも、何か食べられれば幸運だったからだ。
 
 15才になるラムーナだが、この国の娘たちに比べれば頭半分以上背が低い。
 それは成長期に栄養不足だったことが最大の理由であろう。
 
 故郷では同世代のほとんどの子供たちが、虐待や病気より栄養失調と飢え、あるいは腐った物を食べたことで食中りを起こし、死んでいった。
 
 度重なる戦争と重税が重くのし掛かり、一冬越すごとに子供の数は減っていく。
 ラムーナが5歳の春を迎えた時、20人以上いた同世代の幼馴染みは半数に減っていた。
 無事に二桁の誕生日を迎えられたのは、ラムーナを含めたった3人だけである。
 
 病んだ国であった。
 その故国は数年前、強硬な隣国によって宣戦布告された。
 
 絶えない戦争で鍛えられたグルカの精兵は、その残忍さと驚異的な身体能力から善戦したが、敵国との国力差が致命的だった。
 グルカの骨のある男たちは皆殺しにされ、後には卑屈でろくでなしの父親のような人物たちしか残らなかった。
 ラムーナの長兄は国土防衛の戦いで戦死した。
 
 国が戦争に負けた後、国の環境はもっと酷くなった。
 殺されるか飢えて死んだ人間が腐った臭いと、飛び回る蝿の羽音が途切れたことはなかった。
 
 器量の良く春を売って糧を得ていた姉は、乱暴な兵士たちの慰み者にされた。
 その上に父親に労働を迫られ、過労から喀血して死んでしまった。
 
 ラムーナは男性が恐ろしかった。
 彼女の知る男たちは皆酒臭くて、女に暴力を奮うことを何とも思わない連中ばかり。
 数少ない例外は、文字を教えてくれたクレメント司祭と、姉の婚約者だった男ぐらいだ。
 
 だが、シグルトを初めて見た時、ラムーナが持つ男性への恐怖感は無くなっていた。
 ロマンを助けたシグルトから、ラムーナの大好きだった姉のような優しさを感じたのだ。
 
 仲間になってからただの一度さえ、シグルトはラムーナをぶたなかった。
 
 自他共に厳しい性格だったが、理不尽な暴力は決してしない。
 よくやれば優しい声で褒めてくれた。
 一番最初の依頼で、ラムーナがシグルトを庇った時、傷跡が残らないかとても心配してくれた。
 
 シグルトは、ラムーナの姉に何となく雰囲気が似ていた。
 
 底知れない不幸を経験してきた者が持つ哀愁と、不幸を噛みしめて尚も懸命に生きようとする強さを持っていること。
 だから、ラムーナは死んだ本当の兄よりもシグルトを慕っていた。
 
 レベッカは貪欲なので弟を思い出させたが、遙かに要領がよくて理不尽なことはしない。
 面倒見がよくて、ラムーナにはとても優しかった。
 頭が良くて、冒険者としては一番経験豊富だ。 
 
 少女のように美しい容貌をしたロマンは、ひねくれ者だった。
 だが真面目で落ち着いているし、彼が使う魔術はとても頼りになる。
 何かを聞けば大抵のことは知っているし、教えることと学ぶことには真摯な態度で好感が持てた。
 
 スピッキオは、優しくて大きい、という印象が強い。
 その秘蹟で何度も傷を癒して貰ったし、説教臭いけれどその話は面白い。
 宗教的な物語も、信仰抜きで聞く分にはとても楽しいものだった。

 ラムーナがいる場所は、今では地獄ではない。
 決して楽な仕事とは言えないが、日々の糧をちゃんと得られるし、何より理不尽な暴力を振るわれたりしなかった。
 
 仲間たちはラムーナを信頼し、ラムーナも心から仲間を信頼している。
 
 だから、ラムーナは何としても仲間に応えられる力が欲しかった。
 再び役立たずと断じられ、やっと得られた自分の居場所を失うのことがとても怖かった。 
 
 陽気な印象の強いラムーナだが、努力家であり謙虚だ。
 
 生まれた時から家族に尽くすことを教えられて育ち、献身的で優しい姉を見て成長した。
 彼女は孤独のつらさを知っており、愛し愛されることに傾向している。
 だからこそ、危ういほどに献身的でお人好しだった。
 
 誰よりも気を張って仲間のために尽くそうとする…
 ラムーナにとって、仲間たちは彼女の拠り所だったから。
 
 彼女の本質は、繊細で神経質だ。
 彼女が脳天気に見えるのは、生きるためにそうならざるを得なかったからである。

 そんなラムーナが、今までに出来ることはとても少なかった。
 役に立てない、という劣等感が彼女の中で燻っている。
 
(強くなって、絶対役に立つんだっ!!!)
 
 ラムーナの瞳には、強い決意が宿っていた。
 
 
「…凄いわ。
 
 躍動的で変則的なこの舞踏は、修得そのものは容易いけれど、上手に踊るのは難しいのよ。
 何より素晴らしい柔軟性と、繊細な表現力っ!
 
 ラムーナちゃんは、才能があるわ」
 
 舞踏を教える時とは打って変わって、手放しで褒める。
 アデイはラムーナの上達を、まるで自分のことのように喜んでいた。
  
「憶えておいてね。
 
 【連捷の蜂】はあらゆる動きに繋げる、その柔軟な動きこそが要なの。
 あるときは次の一撃に、あるときは必殺技の予備動作に、あるときは敵陣を切り払う。
 
 基本に組み、そして応用的にも使える優れた術よ」
 
 アデイは、丁寧にその動作を説明してくれた。

「ねえ、先生。
 
 これで私もみんなの役に立てるかな?」
 
 非力で体格の無いラムーナは、戦士として仲間の内にありながらずっとどんな風に自分が役に立てるか悩んできた。
 
 相手の急所を貫く鋭い一撃は得意な方だが、レベッカには劣るし、力技ではまったくシグルトに適わない。
 自分が役に立っているのか、ラムーナはいつも不安だった。
 
 この少女にとって、役立たずと断じられることはとても怖かった。
 仲間の役に立てないことがたまらなく恐ろしかった。
 かつてラムーナは、役立たずとして親に売られたのである。
 
 役に立ちたい、そして仲間たちの側にいたい…
 
 もしラムーナの本心を知ったら、シグルトたちは怒るか、笑い飛ばすか、抱きしめただろう。
 ラムーナが家族としての絆を仲間たちと育もうと必死に悩んでいるとき、その仲間たちは心の中でラムーナを大切なパーティの一員として認めていたのだから。
 
 まだわずかに幼さの残る少女を見つめ、アデイは柔らかに微笑んで頷いた。



 大分お待たせしました…リプレイの続きです。
 
 本当はパーティ集合まで書きたかったのですが、執筆スランプに陥った上、ラムーナの描写がだらだらと増えてしまい、1話にまとめることにしました。
 
 過去の不幸度ではリプレイでもトップクラス。
 ラムーナは、あの脳天気な雰囲気の裏で、もの凄く苦労をしています。
 
 誇張して描きましたが、実際に彼女のような境遇の子供は我々の世界にもいるようです。
 病んだ生活環境って、人の心をとことん歪ませます。
 
 私は親が子供を虐待することが荒らしの連中なんかよりも嫌いでして、加えていじめとか迫害とか本当に反吐が出そうになります。
 正義感からいっているのではなくて、生理的にダメです。
 話のモデルとなった、「親が子供の足を千切って、物乞いのネタをつくる」という話は、聞いた時にその親への殺意すら覚えたものです。
 嘘みたいな話ですが、世の中にはこういった鬼畜がいるわけです。
 その日、青い空もちょっぴり寂しく見えました。
 
 現代、医療技術が発達して食中りによる死亡件数は減りましたが、昔はかなり食中りで死んだ人がいるようです。
 衛生的な現代日本は幸せですね。
 虫の湧いたパンを食べるとか、酸っぱくなった残飯をあさるとか。
 少し野良が荒んでいる理由を考えてしまいます。
 
 ラムーナは、苦労した分強い娘です。
 人の気持ちが分かるし、悲しい時に優しくされることがどれほど救われることなのか知っています。
 実は女性陣、男性陣よりも好きだったりします。
 
 
 とまあ、重い話はこのあたりにしておいて、リプレイの実質データの方に話を変えましょう。
 
 今回ラムーナが修得した【連捷の蜂】は、アレトゥーザでも人気があるスキルのようです。
 知らない人もいるかもしれませんが、このスキルのギミックなんかは私が作ってまして、私がギミックスキルに目覚めたスキルでもあります。
 名前から細かいデータに至るまで、Martさんと何度もやりとりして、苦労して作りました。
 オフィシャルファンサイトのシナリオ集に収録されたアレトゥーザのものは、説明文に微妙な誤字が残っているので、ベクターの最新版をDLすることをお勧めします。
 ただ、ベクター版は称号やゴシップで変更が多く、一部のクロスオーバーに支障があるかもしれません。
 クロスオーバーでは、是非最新版に対応して欲しいなぁ、と思います。
 
 【連捷の蜂】は、「蝶のように舞い、蜂のように刺す」というイメージから、同シナリオの【幻惑の蝶】というスキルとセットで使うことを考えて作成しています。
 低レベル(1~2)では、全体攻撃まで発展できないのでスキル配布で使うのがベストです。
 これにより、手数の多さでどかどか攻撃できるので、その痛快さはくせになるでしょう。
 やり過ぎるとスタミナ切れ(スキル回数が0)を起こすんですけどね。
 このスキル、レベルが低い頃は、他のスキルを一切装備せずあえてこれ一枚でいくのも手です。
 【連捷の蜂】だけが循環するという、猛烈なラッシュが可能になります。
 
 実は【連捷の蜂】にはNPC用の別スキルがあったりします。
 私にとっては様々な意味で、愛着のあるスキルです。
 バランスでは【魔法の矢】や【眠りの雲】並に強い1レベルスキルなんですが、総合的な〈闘舞術〉関連は攻撃力がやや低め(能力強化系が多い)なので、このスキルで丁度いい感じになると思います。
 カードワースでは敏捷度が最も高くならない傾向がありますし。
 戦士系の舞踏家を目指すのでしたら、お勧めの一枚です。
 持たせるだけで、舞踏家の戦闘力が飛躍的に増しますよ。
 
 
 今回ラムーナは【舞踏家】の称号を取得しました。
 次回からの活躍が楽しみです。
 
 【連捷の蜂】(-600SP)
 
 
〈著作情報〉2008年03月11日現在

 『碧海の都アレトゥーザ』はMartさんのシナリオです。現時点ベクターで配布されています。
 シナリオの著作権は、Martさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer1.22です。
  
・Martさんサイト『esotismo.』 (閉鎖)
  
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。
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荒らし討伐の依頼

 優れた冒険者諸君に依頼致します。
 以下の悪質な「荒らしを討伐して下さる方を探しています。
 
 手段は魔術による呪い、疫病(ウイルス)による抹殺、暗殺といった非合法手段でも構いません。
 
 報酬は100SP、明確な効果を上げられた方にはボーナスを支給します。
 健全なブログを悩ます悪質な害獣駆逐に御協力下さい。


 …というわけで、今回から荒らしを徹底的に攻撃するために、ネタにします。
 要は討伐依頼になりそうな文章の元ネタを考えるために、討伐対象にしてしまうという…
 
 コメントでも同様の文章で、危険だと思われる荒らしのアドレス等を一文字修正で書き込んで書いて下さい。(こうしないと禁止に出来ないですので)
 情報のやりとりをしつつ、連中への文句や鬱憤を書き込んで頂いても結構です。
 
 連中は全く警告を聞かないので、どのように弄んでやっても好いと思います。
 嫌なら書き込まなければいいわけですからね。
 このブログでネタになるぐらいの貢献はして貰わないと割に合いませんので。
 
 ここに上がった悪質な連中にはもれなく私の呪詛が降りかかります。
 ♪…ウイルスに罹れ、ウイルスに罹れ、ウイルスに罹れ…♪
 
 ゴブリンやコボルとでもかわいそうだという貴方。
 この記事ではたまった鬱憤をぶちまけて結構ですので、思う存分文句を言ってやって下さい。
 


 以下悪質な宣伝にて注意!
 とりあえず第1弾で書いておきます。


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