Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

『ベーオウルフ』

 アルフリーデと別れたシグルドは、貰ったばかりの外套をなびかせて王宮の回廊を歩いていた。
 
 歴史あるシグヴォルフ王国の王城は広く、王宮の通路は迷路のように入り組んでいる。
 これは、攻められる場合を考えて城を造ったためだ。
 
 北方は土地が痩せており、シグルトの国も隣国との戦争が絶えない。
 多くの城砦は外見の華やかさより、戦争での利を考えて建てられている。
 
 それ故に、ちょっと油断しただけで迷ってしまうから困ったものだ。
 
 頼りない記憶から覚えている地理を探しつつ、先ほどアルフリーデに道を尋ねておけばよかったと、シグルトは内心溜息を吐いていた。
 
 それでも、後悔に囚われることをことさら女々しいと考える北方の男である。
 見苦しくない程度に周囲を見回しつつ、シグルトは歩みを早めようとした。

「ふん、こんなところで油を売っていたのか。
 
 妹を放って於いて、いい気なものだな」
 
 後ろから、敵意とともに突然かけられた低い声。
 シグルトは、その声の主が誰であるか理解し、苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。
 
「お役目御苦労なことだな、ベーオウルフ。
 
 俺には構わず職務を遂行してくれ」
 
 やや険のある口調で、シグルトは振り向き様に言い放った。
 
 鼻白んでシグルトを睨んでいるのは、絢爛な外套を纏った貴族風の男だった。
 腰に下げた剣は王賜の品で、この国の正統な騎士のみが佩刀を許される物である。
 
 派手な服装に似合わず、男は陰気な雰囲気を纏っていた。
 そこそこに整っているが、鋭い視線とへの字に結ばれた口が近寄り難い印象を与える。
 長身のシグルトよりやや低い程度の体格は、しなやかで野獣のようだ。
 
 男の名はベーオウルフという。
 北方ではシグルトとともに知らぬ者がいないと言われる、魔獣殺しの英雄と同じ名前。

 シグルトの異母兄である。
 
 シグルトとベーオウルフは、火花でも散りそうな様子で睨み合い、互いに顔も見たくないという様子で同時にそっぽを向いた。
 
 2人は兄弟ではあるが、昔から反りが合わず仲が悪い。
 余程のことでは敵意を見せず淡々としているシグルトも、この異母兄だけには敵意を剥き出しにしてしまう。
 
 というのも、わけがあった。
 
 ベーオウルフはシグルトの父親アルフレトの先妻の子供である。
 
 シグルトは十歳の時に父親に妹とともに貴族の子として認知して貰い、シグルトの母は正妻として迎えられた。
 その時ベーオウルフはシグルトたちと家族になることを拒み、こともあろうに可愛がっている妹の顔を鞭で打ったのだ。
 
 家族の女を侮辱された時、この国の男は命懸けで報復する習慣があった。
 特に身内の女性の顔を傷つけられるということは、「家族を守れない男」として、名誉に唾をかけられるに等しいことなのだ。
 
 激怒したシグルトはベーオウルフを殴りつけ、2人は互いの顔が端整とは言い難くなるまで殴り合った。
 それ以来、まさに犬猿の仲である。
 
 この異母兄が取るに足らない俗物ならば、シグルトは鼻にもかけなかっただろう。
 しかし、ベーオウルフは王国を代表する秀才であり、父の才能を受け継いだ剣の使い手だった。
 
 
 シグルトの父アルフレトは、十数年前に隣国との戦争で武勲を立てた英雄であり、その剣術は王国一と謳われていた。
 
 初めてアルフレトに会った者は、聞いた武勇と外見との格差に困惑する。
 普段のアルフレトは穏やかで、地味な雰囲気の優しそうな男性なのだ。
 やや野暮ったい格好をした貧乏貴族、という印象しか与えないのである。
 
 だが、槍の達人として有名なシグルトの師と並び、シグヴォルフではその武勇を知らぬ者はいない。
 男爵という低い身分でありながら騎士団長に抜擢され、多くの厳しい戦いを勝利へと導いてきた英雄だった。
 
 前回隣国との間に起こった戦争では、敵国の奇襲で危機に陥った友軍と国王を逃がすために、わずか20騎を率いて殿軍として残り、十倍以上の兵力を足止めした武勇譚は有名だ。
 王国中の詩人が今も詠っているほどである。
 その時に大きな傷を負い、杖無しでは歩けない上に利き腕も不自由だが、いざ剣を握ればその辺の雑兵数人には全くひけを取らない。
 
 そんな天才的な武勇の才能は、2人の男子にちゃんと引き継がれていたのだ。
 
 シグルトは元々平民として育ったせいか、王国では貴人の武器とされる剣は持たず、槍使いとしての道を選んだ。
 その武勇は、すでに国で指折りの実力である。
 槍の腕では師に次ぐか、国で三指に入ると言われていた。
 
 そして、ベーオウルフもまた父親の武勇を継いだ剣豪だった。
 15歳で成人すると同時に、史上最年少で騎士隊長にいまで上り詰め、10代最後の現在では、なんと王国の近衛騎士団で副団長を務めるほどになっている。
 王国の主宰する剣術大会では常に優勝候補で、この国でその武名を知らない者はいないだろう。
 
 王国の英雄の子である2人は、常に比較された。
 
 シグルトは王国一の美女と謳われ、零落したとはいえ王族の親戚だった母を持つ、公爵家の血筋である。
 母譲りの美貌と、清廉で勇敢な性格。
 平民として育った意外性を含め、幼少から武名に事欠かなかった。
 そのためか、平民や女性に人気がある。
 
 ベーオウルフはシグヴォルフで五指に入る名門に生まれた母を持ち、幼少から神童ともてはやされていた。
 12歳の頃には並の騎士を凌ぐ武勇を持っており、外見に似合わず詩歌や学問にも通じている。
 洗練された貴族としての自尊心と行動は、男爵家とは思わせないものだった。
 貴族の若者において、模範となる人物と評価されていた。
 
 2人の父親であるアルフレトは武名こそ王国に轟いているが、領地は狭く身分は一番下の男爵である。
 
 欲のないアルフレトは、戦争で手柄を立てたが、その報償として妻の名誉回復を願い出て、貧乏貴族のままだった。
 かつて愛人扱いだったシグルトの母が、今は正式な貴族の妻でいられるのはアルフレトのおかげである。
 
 先妻の息子であり、正妻の座をシグルトの母に奪われたと考えたベーオウルフは、面白くななかった。
 そして、ことあるごとにシグルトを敵視した。
 シグルトの母が、一端断絶にあったとはいえベーオウルフの母よりも名門の出であったことが、尚更彼の自尊心を傷つけていたこともある。
 
 そして、シグルトも母や妹を侮辱し嫌味ばかり言っていた異母兄が大嫌いだった。
 
 時が経ち、2人は成人して子供の頃ほどはいがみ合わなくなっていた。
 
 ベーオウルフは婦女子である妹や義母に対して、表面上は普通に接するようになっている。
 シグルトは、そんなベーオウルフに対して一触即発の態度は取らなくなっった。
 
 だが、未だにシグルトはベーオウルフを兄とは決して呼ばず、ベーオウルフの方は会う度に嫌味か小言を言う、そんな仲なのである。

 
「…ところで、その外套はどうした?
 
 そんな上等な品、シグルーンは言うに及ばず、お前も義母上も手が出せぬはずだが…
 まさか、盗んだのではあるまいな?
 
 お前のような、貴族のなんたるかも判らぬ若僧が粋がって良い品を身に着けても、滑稽なだけだぞ」
 
 ひとしきりぶつぶつと小言を言ったベーオウルフは、シグルトの纏っている外套に気付き、訝しがった。
 
「王家に縁の方から賜った品だ。
 
 それを盗品と結びつけるとは、その方の名誉を損なうぞ。
 詰まらぬ言葉は、命取りになる。
 
 代わりに、お前から押しつけられたあのけばけばしい外套は、今宵譲ってしまった。
 あれよりははるかに着心地が良い。
 
 丈もあっているしな」
 
 ベーオウルフより背が高いシグルトは、そのお下がりとして服を貰ってもややサイズが合わない。
 外套は何とか身に着けていたが、少し丈が短かったのだ。
 
 シグルトが皮肉で返すと、ベーオウルフは鼻で笑った。
 
「ふん、平民臭いお前が着れば、絹すら乞食の鼻を拭いた襤褸に変わるわ。
 
 お前のうすらでかい図体では、所詮は貴族の品など身分不相応だったということだ。
 せいぜい似合わぬものを着て浮かれているがいい」
 
 憎まれ口で返すベーオウルフ。
 
「そうしよう。
 
 ベーオウルフ(意味は熊や狼のような野獣を指す)のくせに、後で生まれた者に体格が劣るお前の物を着ては、心まで狭くなる。
 似合わぬものの方が、まだ着心地が好いさ」
 
 2人の間には、火花が散る雰囲気であった。
 
 シグルトがこのような口を利くのは、ベーオウルフに対してだけだ。
 特に、2人きりの時は互いに容赦なく毒を口にし合う仲である。
 
 決して相手の名誉を損なうような台詞は言わないシグルトだが、ベーオウルフに対してだけは例外だった。
 
「…ほざけ。
 
 私はお前のように、無駄飯食いではないのだ。
 お前も貴族の端くれなら、平民と槍で戯れているより、軍にでも入って国の役に立つことだな」
 
 ベーオウルフが捨て台詞を残して去ろうとする。
 しかし、シグルトは思い出したようにその背に向けて声をかけた。
 
「…先ほどオスヴァルト伯の御令嬢が、あのグールデンに絡まれていたぞ。
 
 婦女子が不快な思いをするのは、警護のもの全ての名誉に関わることのはず。
 俺に対して憎まれ口を吐く暇があるなら、少しは考慮しておけ」
 
 先ほどブリュンヒルデを助けた一件を思い出し、警告する。
 一端落ち着けば、シグルトもまた王国の戦士であった。
 
「…またあの男か。
 
 お前からの意見というのが癪だが…
 よかろう。
 
 今宵は奴がもう悪さを出来ぬよう、手は打っておく。
 
 万一あの男に絡まれる御婦人がいるようなら、東宮から先に避難するよう伝えておけ。
 あそこには、王宮警備における本部が置かれている。
 いかにあの馬鹿がくだらぬ威を誇っても、通用せぬだろう。
 
 これから警備の層は厚くする。
 
 まったくもってホフデン司教の一族どもは、貴族の面汚しだ。
 これだから、実力も無い名ばかりの成り上がりはいかんのだ…」
 
 ベーオウルフは、皮肉っぽい性格ではあるものの、実務では非常に優秀だった。
 公私はきちんと分けて仕事をする。
 その部分において、シグルトですら一目置いていた。
 
 いかに小国とはいえ、シグヴォルフの騎士団は、戦争の多い北方で数百年の歴史を守り続けた強国である。
 若者と言える年代でありながら、騎士団の次席まで上り詰めたベーオウルフは、極めて優秀な男なのだ。

「…しかし、ブリュンヒルデ殿に手を出すとは、身の程知らずにも程がある。
 グールデンの家門は、司教の手回しで無理矢理男爵家を名乗っているに過ぎないのだからな。
 
 血筋では、司教とその弟君しかまともな貴族ではない。
 そんな状況で、〈青い血〉(貴族の血筋であるということ)が流れていると吹聴する、その図々しさには呆れるばかりだ。
 
 オスヴァルト伯爵といえば、ロッテンベルク領の家柄。
 五貴族の三番目…今は二番目か。
 
 あの方のような貴族の婦人は、尊ばねばならん」
 
 独り言のようにベーオウルフは呟いた。
 
 五貴族とは、シグヴォルフ王国の貴族において筆頭とされる五つの名門である。
 伯爵家以上で、ワルト(ヴァイスシュピーゲル)領公爵家、グリュンガルテン領侯爵家、ロッテンベルク領伯爵家、シュヴァルツシュルフト領伯爵家、ブラオゼー領伯爵家があった。
 現在はワルト(ヴァイスシュピーゲル)領公爵家が断絶しているため、残った四家が門閥貴族の筆頭とされている。
 
 ベーオウルフの母フリーデリーケは、現シュヴァルツシュルフト領伯爵家当主フベルトゥスの姉だ。
 現在では男爵という地位にあるが、シグルトとベーオウルフの父アルフレトも、血筋ではブラオゼー領伯爵家の傍流にあたる。
 
 ベーオウルフはことさら血筋には五月蠅かった。
 そして、多くの貴族はより血筋を良いものにしようとする。
 一番簡単に血筋を高めるには、名門の血を引く者と婚姻を結ぶことである。
 
 今の時点で、残った名門四家で妙齢の娘は少なく、その中で一番血筋がよいのがシグルトが助けたブリュンヒルデであった。
 しかも、ブリュンヒルデはロッテンベルク領伯爵家の一人娘である。
 男性の権威が強いシグヴォルフでは、彼女と結婚すれば、自然と伯爵家の全てを受け継ぐことになるのだ。
 加えて、ブリュンヒルデは絶世の美女と謳われ、聡明と名高い才媛である。
 
 未婚の貴族の男たちは、すべからくブリュンヒルデの心を射止めようと狙っていた。
 そして女っ気がまるでないベーオウルフだが、彼ですらブリュンヒルデには一目置いている様子である。
 
「あそこまで、とは言わんが…
 
 シグルーンには、あの方を見習ってほしいものだ」
 
 そう言い残すと、ベーオウルフは外套を翻して去って行った。

「最後まで嫌味な奴だ…

 それにしても、ブリュンヒルデ殿か。
 俺には、普通の女性にしか見えなかったがな」
 
 外套をかけてやった時、頬を染めて礼を言った伯爵令嬢を思い出し、シグルトはベーオウルフとの舌戦で引きつった頬を少しだけ緩めた。

 
 
 この際大盤振る舞いです。
 書きためておいた小説を一気にUPしておきます。
 
 シグルトにとって最大の因縁、ベーオウルフ兄の登場です。
 複雑な家庭事情があるシグルトですが、はっきり言えることは、シグルトもベーオウルフも優れた才能を持っているということです。
 同時にどっちも勤勉で努力家、名誉を重んじるタイプです。
 
 べーオウルフは基準的には無双型相当ですが、それほど筋力が高いわけではありません。
 その代わり、シグルトよりも知力が高く、インテリです。
 バランスに優れ、総合力で敵を圧倒します。
 この当時、シグルトと同じく6レベル相当の実力がありました。
 
 彼は何れまた本編にも登場する予定です。
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シグルト外伝 『青黒い稲妻』 | コメント:0 | トラックバック:0 |

『狂気の輪は回り出す』

 時が止まったように、海は凪いでいる。
 
 対峙する2人の剣士。
 彼らは今、生死を賭した一撃を互いに備え、その決着をつけようとしていた。
 
 大剣を担ぎ、一刀両断にせんと睨み据えるのはアレクセイ。
 体勢低く、急所を貫かんと低く構えるのはグウェンダ。
 
 冷や汗の代わりに、互いに負った傷から熱い鮮血を滴らせ、眉間に皺を寄せて攻撃に集中する。
 
(…やべぇ、気当たりで酔いそうだぜ)
 
 高まる2人の闘気に、その行く末を見逃さないようにと、オルフは拳を握りしめた。
 ぬるりと掌を湿らせた汗が、心地悪い。
 
 ふわりと吹いた一陣の風に、2人はまだ動かない。
 
 アレクセイ側、オルフ側ともに、敵味方を問わず呼吸さえ忘れていた。
 それほどに目前の2人は張り詰めている。
 
 次の風が吹いた時、ついにアレクセイが動いた。
 弾けるように、グウェンダの腕にも筋が浮かぶ。

「―…止めてっっっ!!!」
 
 突然の叫びに、両者は得物を振るいきれなかった。
 
 ぶつかり合った刃が火花を散らし、グウェンダの剣はわずかに欠けて、破片を散らす。
 甲板にそれが刺さった時、アレクセイは驚きに歪んだ顔で、止めに入ったエルナを見つめた。
 
「…アレク、剣を納めて。
 
 グウェンダ、貴女も」
 
 ゆっくりと2人の間に入って立つと、両者の剣の上に白く綺麗な手をのせる。
 
 焦ったアレクセイは、思わず剣を動かしてしまう。
 エルナのたおやかな手が浅く切れ、小さく血の筋が大剣を伝わった。
 一滴、エルナの血潮がアレクセイの白い指先まで流れ、生々しい感触と錆びた匂いを感じさせた。
 
「あ、あぁっ…」
 
 一番傷つけたくない人物に血を流させたと気が付いた時、アレクセイの思考は白一色に染まる。
 腕が震えて支えきれず、そのまま大剣を落とすと、耳障りな金属音が周囲に木霊した。
 
「…私は大丈夫。
 だから、まずは争いを止めて。
 
 どちらが傷つくことも、私は望んでいないの。
 分かるでしょう?」
 
 諭すように、優しい声でエルナが再度促す。
 
 グウェンダはちらりとアレクセイを見つめると、その戦意が完全に喪失しているのを確認して、すぐに己の剣を引いた。
 
「…無茶をする。
 
 だが、貴女の優しさと勇気には最大の感謝を」
 
 すぐに懐から清潔な白布を取り出すと、エルナの手を覆う。
 たちまち赤く染まっていくそれを見て、アレクセイは悲鳴のような声を上げると、駆け出していた。
 
 即座にアレクセイの部下であるオレークが、落ちていた大剣をかっさらうと、その後を追った。
 潮が引くように、バイキングたちも撤退していく。
 
「…助かったのか?」
 
 オルフが情けなく息を吐き出した時、バイキングの長船は逃げるように離れていった。
 
 
「…傷つけた、私がっ!!」
 
 焦点の定まらぬ様子で瞳を泳がせ、アレクセイは唇をわななかせていた。
 
 困ったように部下のオレークが、その傍らにアレクセイの大剣を置く。
 エルナの血は綺麗に拭き取られていたが、それを見た途端にアレクセイは叫び声を上げた。
 指先に残った血の感触が、湧き起こる恐怖に変わる。
 
 アレクセイは穴でも空けそうな勢いで、己の頬を掻きむしった。
 赤い雫が長船の甲板に、ぽたりぽたりと滴り落ちる。
 
 アレクセイの自傷行為を深刻に見たオレークは、力自慢の相棒ゴルドバと一緒に押さえに掛かるが、アレクセイが腕を一降りした瞬間に2人で虚空を舞っていた。
 細身に見えるが、アレクセイの怪力はオーガすらねじ伏せる。
 
 慌ててバイキングたちも加勢するが、アレクセイが大人しくなるまでに5人のバイキングが海に転落し、7人が打撲で気を失うことになった。
 押さえられ、自傷行為を止めたアレクセイだったが、その目は死んだ魚のように濁って見える。
 
「そんな、そんな目で見ないで下さい…」
 
 エルナの哀しそうな瞳が思い出される。
 
 歯を鳴らして呟くアレクセイは、斬り込んだ時の威勢などまるで感じられない。
 子供のように振るえる姿は、誰かに救いを求めるように弱々しかった。

 
 バイキングの襲撃により一日後…
 燦々たる有様の〈白き疾風〉であった。
 
 だが、エルナの秘蹟で一命を取り留めた船長ガリズが、ベットから陣頭指揮を執り、少し遅れつつも船は南へと進んでいる。
 
 激しい戦いのストレスからコールは寝込んでしまい、何も出来なかったバッツは体裁が悪いのか船内に籠もって姿を見せない。
 目覚めた後のフィリは脳震盪のせいか不快を訴えて安静にしていたし、ニルダは危険が去ったことを確認すると、エルナと共に船員の治療にあたっていた。
 
 そんな中、1人オルフは甲板で無心に剣を振るっていた。
 
「…無茶をしても腕は上がらんぞ。
 
 がむしゃらになるより、まずは目的を定めることだ。
 自棄は身を滅ぼすものだからな」
 
 声に振り返れば、グウェンダがいた。
 その青ざめた表情でさえ、美しいと感じさせる美貌の女傑である。
 
 アレクセイに砕かれた鎖骨は、エルナの秘蹟でほぼ完治しているが、失血で船酔いが悪化したとの話だ。
 こうやって立っているのさえ苦痛なはずだが、それを感じさせない強さが言葉の中にあった。
 
「…だろうな。
 
 でも、身体を動かしてねぇと不安でよ」
 
 剣を下ろしたオルフは、大きく息を吐いた。
 手に持つ剣は、ヴァイキングの1人が船に落としていった、骨董品のような代物だ。
 
 アレクセイの攻撃を凌いだ際、オルフの得物は砕けてしまった。
 
 圧倒的な実力差である。
 今生きているのが奇跡だった。
 
「まったく、情けねぇ。
 
 あんな見た目ひょろい奴に、手も足もでなかったんだからよ。
 今でも思い出すだけで、震えてきやがる。
 
 酒飲むか、段平ぶん回して喝いれなきゃ、すぐに思い出して冷や汗をかいちまうんだ。
 戦場じゃ、何時野垂れ死んでも平気だと思ってたんだが、案外俺は臆病みてぇだよ」
 
 慣れない剣を振り続けて潰れた手の豆を撫でながら、オルフは暗い声で呟いた。
 
「死への恐怖と、強敵への恐怖は、似て非なるものだ。
 
 死は戦士の誰にも身近だから、そのうち慣れる。
 だが、実力差に絶望した時の恐怖は、寒々しいものだ。
 熟練の武人でも、素人のように肝が冷える。
 
 そうならないのは、鈍感なだけの愚物だけだ。
 だが、誰しも覚える恐怖なら、克服できる者もいる、ということ。
 
〝どんなことでも乗り越えられれば、次にはもう少し強くなっている…〟
 
 昔私に、そんな風に言ってくれた男がいたよ」
 
 間も無く日が沈もうとしている。
 茜色に染まったアッシュブロンドの髪を梳きながら、グウェンダは何かを懐かしむように口にした。
 
「…その男ってのは、シグルトっていう、あの男なのか?」
 
 オルフが何気なく尋ねると、グウェンダは嬉しそうに微笑んでしっかりと頷いた。

「相当惚れ込んでるんだな。
 
 あんたみたいな好い女に、そこまで想われてる野郎が、ちっと妬ましいぜ」
 
 照れる様子も無くシグルトへの好意を露わにするグウェンダに、御馳走様とばかり、オルフは戯けて肩をすくめた。
 するとグウェンダは口を引き結び、何かを耐えるように、夕日に染まった海に目をやる。

「お前の言う通り、心底惚れている。
 
 だからこそ、肝心な時にあいつの側で支えてやれなかった自分が悔しい。
 
 振り向いてくれなくてもいい。
 側に居て、何かしてやりたいんだ。
 
 …こういう女は、男にとって煩わしいだろうか?」

 振り向いたグウェンダは、年相応の恋する乙女だった。
 この娘もまた、不安を抱え悩んでいるのだ。
 
 オルフは、くよくよしていたことが馬鹿らしくなった。
 こんなにも強い剣士でさえ、恋心の前に苦悩して居るではないか。
 
「鬱陶しい…そうだな。
 ただ粘着質な女ってのは、そうかもしれねぇが…
 あんたほどの女になら、話は別だぜ。
 
 あの男にそこまで惚れてるんなら、とっつかまえて旦那にしちまいな。
 寂しい男は、捕まえてくれる女にくらっとくるもんだ。
 
 昔、俺が始めて戦場に出た時、初めて人を殺したことが怖くて震えていたらよ…
 戦で旦那を亡くしたって女が、慰めてくれたんだ。
 
 今は顔も思い出せねぇんだが、そん時はその女に心底惚れてたぜ。
 次の戦争に引っ張られてた間に、その女は他の男とくっついちまったけどよ。
 
 まだほんのガキだった頃の、こっ恥ずかしい初恋って奴だ。
 あんときゃ、何で逃げ出してでも女の側に居なかったのか、って悔やんだよ。
 大の男が、振られて半泣きだ。
 
 …そんだけ惚れるほど、支えて貰うってのは嬉しいんだよ。 
 
 人間ってやつぁ、時にはつるんで傷を舐め合うのも、必要なんじゃねぇか?
 
 御大層な叙事詩のとってつけた絵空事より、泥臭くても、腹に漲るような惚れ方すりゃいい。
 俺なら、追っかけて来たなんてその一言で、コロリだぜ」
 
 グウェンダは、そうかな、と頷くがすぐに首を横に振った。
 
「あの男の一途さ、頑固さを考えれば、その程度ではダメだな。
 それに、そんなに簡単に振り向く男なら、私の知る限りで24回は別の女になびいている。
 
 故国を旅立つ前、ちょっとした恋敵の動向も耳にしたし、な。
 
 前途多難だが、励むとしよう」
 
 日が沈む瞬間に微笑んだグウェンダは、とても魅力的に苦笑していた。

 
「実は、もう船がもたねぇんだ。
 
 場所的にはあんまり好ましくないんだが、キーレの北にある蛮族領にほど近い場所に、小さな入り江がある。
 そのまま南下すると蛮族領に突っ込むことになるから、船の修理に使う資材を北で集めて応急処置してから、入り江を出て南下するルートにするつもりだ。
 
 しかし、修理の間、困ったことに船員分の食料しか維持出来ねぇ。
 
 あんたたちには陸路を使って南下して貰いてぇ。
 少人数なら、蛮族の領土をばれずに移動できるはずだぜ。
 
 このあたりの連中は、何でか海には近づかねぇから、海沿いに行けば危険は少ないだろう」
 
 ガリズが申し訳なさそうに口にすると、早速コールがクレームをつけた。

「私たちに、あの蛮族の領土を南下しろと言うのですかっ!
 
 この少人数で、蛮族に遭遇したなら、一溜まりもありませんよ?!」
 
 そして、こういう時だけ意見を同じくする者がもう一人…

「冗談じゃないっ!
 
 リューンじゃ、〝キーレにいっちまえっ!〟ってのは死ねってことなんだぜ?
 蛮族の領土に行けってのは、それより悪い話じゃないかっ!
 俺たちを捨てるってことかっ!!」
 
 口から唾を飛ばすバッツに、ガリズは困った顔をした。
 
「あんたたちは、ましなんだぜ?
 
 俺たち船乗りは、船を捨てることが出来ねぇから、残るしかねぇ。
 はっきり言って、此処まで壊れた船を完全に直すには、いつまでかかるかわからねぇんだ。
 
 つまりは、蛮族がいつ来るかわからねぇ入り江で飯の心配しながらこそこそしねぇといけねぇんだよ。
 動くことが出来る悪運に感謝するんだな。
 
 船は、完璧な乗り物じゃねぇ。
 壊れりゃこの様さ。
 
 この程度のことに動じるなら、これから先は船に乗るのをやめるんだな」
 
 辛辣なガリズの返答に、コールもバッツも顔を赤らめて憤慨する。

「ま、命あっての物種だ。
 どっちにしろ、逃げられねぇ海の上よりも、俺は陸の方がいいぜ。
 
 俺は陸路を行く。
 エルナはどうする?」
 
 オルフはさっさと割り切って行動を決していた。
 
「私も陸路を行くわ。
 
 これ以上船の方々に迷惑をかけたくないもの…」
 
 自分が原因で船が襲撃されたと、エルナは心を痛めている。
 ここ数日献身的に船員の治療にあたった彼女を、もう責める者はいないのだが。

(こいつ、何だか危ういんだよな…
 責任感が強いのは良いことなんだが、そのために自分を犠牲にすることを平気でやりやがる。
 
 何かに尽くして、それで燃え尽きちまう、そんな奴だ)
 
 オルフは、数日エルナと過ごす内に、彼女をそんな風に評価している。
 
 だが、オルフは自己犠牲という行為が大嫌いだった。
 何かを活かすために犠牲を出すのは、生産性が無いからだ。
 
 貧しい生活をしてきたオルフは、いつも周囲から自己犠牲を強いられていた。
 他人の犠牲を食い物にし、のうのうと生きる奴がいるのに、だ。
 
 だからこそオルフは、何かの犠牲になることは止めたつもりだった。
 戦場では最低限生きるために、強奪や追い剥ぎじみたことをしたし、さすがに自分と々境遇の貧しい者たちから物を奪うようなことはしなかったが、死人から装備を奪うことに躊躇いは無くなっていた。
 今着ている服や装備品だって、ほとんどは奪った物だ。
 
 元来のお人好し気質から、完全な悪党にはなれないのだが。
 そんなオルフから見れば、自らをすぐに犠牲にするエルナは、危なっかしくもあり、同時に眩しく見えるのだ。

(俺はもう、そんな純粋に他人を気遣うことは出来ねぇからな…)
 
 どこか死んだ妹に似たエルナを、オルフは何とか守ってやりたいと思っている。
 
「それなら、一緒に行くか?
 
 逢った頃みてぇに、状況はひでぇがよ。
 ま、つるんでた方が、出来ることも多いだろ」
 
 オルフが提案すると、エルナは嬉しそうに頷いた。

「ならば、私も一緒に行こう。
 
 どうせ陸路の方が好かったと考えていたところだしな。
 問題は、私の追いかけている男がキーレを越えているかどうかだが…」
 
 グウェンダという強い味方が出来て、オルフは重苦しい気分が晴れる思いだった。
 この女がいれば、多少のことで蛮族に遅れを取ることは無いだろう。

「じゃあ、ボクも一緒に行くね。
 
 うわぁ~いっ!
 オルフってば幸せ者?
 
 これって、ちょっとしたハーレムだよね」
 
 アレクセイとの戦闘で負った傷はすっかり癒え、いつものノリでフィリが話に加わる。
 
「ほほ、どおれ…
 
 ちっと年寄りじゃが、わしも加えてもらおうかの。
 そこな臆病者どもは、こうやって寄りかかるところを作ってやらねば、意固地になってついてこれまい?」
 
 ニルダまでがオルフ一行に加わることを意思表示すると、しぶしぶコールとバッツも一緒に行く意思を示した。
 
「ふぅむ。
 行く者どもが決まった事じゃ。
 わしが一つ好い道を示してやろう。
 
 そこな強い娘御が探している男は、蛮族領には入らず、内陸を南に進んでおるようじゃ。
 あの者は、風に強い残り香を残すからの。
 まったくもって、かの大女神に見初められるとは…末恐ろしい若者じゃて」
 
 そこまで言うと、不意にニルダは悪戯でも思いついたかのように、ニタリと笑った。
 その視線はグウェンダに向いている。

「なんだ、御老体?
 
 私の顔におかしな所でも…」
 
 グウェンダが首を傾げると、ニルダは北を指差して、ほほ、と笑った。
 
「お前さんには強力な恋敵がいるよ。
 
 一人、二人…いや、三人以上。
 特に、もの凄い勢いで、お前と同じように彼の男を追いかけている者がおるようじゃな。 
 
 心当たりがあるじゃろう?」
 
 ニルダの指摘に、グウェンダのクールで秀麗な顔立ちが引きつった。

「…そうか、やはり国を出奔して追いかけて来たのだな、あの年増姫は。
 
 姉依存症(シスコン)の馬鹿王に囲われて、贅沢していればいいものを…」
 
 どこか怨嗟の籠もった様子で虚空を睨むグウェンダに、周囲の男たちは思わず数歩下がっていた。
 どうやら話題の〈年増姫〉という人物とは仇敵同士のような間柄らしい。

「婆さん、あんた何でも知ってる様子だな?
 
 それにしても、まだ追いかけている女がいるなんてよ。
 あのシグルトって野郎は、そんなにもてるのか?」
 
 オルフの問いに、ニルダは然りと頷いた。

「それこそ、人外に惚れ込まれる程の好い男じゃよ。
 
 もっとも、あの男に惚れた女は、生半な覚悟では破滅するじゃろうな。 
 あの男は、修羅の道を生きる宿命を持っておる。
 
 〈刃金〉の宿業…開闢者として彼の大女神に選ばれた者は、刃の道を歩かねばならん。
 弱ければ己の宿命によって、何れ破滅するか、大いなる一つに溶けて消え去る。
 それに抗って輝き、それ故に苦しむ試練の者よ。
 
 刃が宿す危うさと苛烈さを持ち、触れる者を魅了しながら傷つける。
 哀しい哉…彼の男を愛する女たちは右往左往し、男以上に苦労するはずじゃ。
 
 歴史上、英雄になる奴など、皆この類じゃがな。 
 
 本当に罪作りな男よの…」
 
 思えば、この老人はオルフたちとの出逢いすら知っている様子だった。
 謎めいた言い回しをするが、まるで未来が分かっているようだ。
 
「気になったんだけど…
 
 お婆ちゃん、シグルトって人のこと、何でそんなに詳しいの?」
 
 フィリの最もな口ぶりに、一同がはっとする。

「そりゃそうじゃよ。
 
 彼の男を南に誘ったのは、大いなる風とこのわしじゃからな」
 
 さらりと言ってのけるニルダ。
 
 グウェンダが目を剥いたが、したり顔で「聞かれなかったからの」と返している。

「…気にいらねぇな、婆さん。
 
 あいつみたいに疲れてやつれた野郎に、宿命とか、苦しみの道とかよ。
 俺は、婆さんの宗旨なんざ知らねぇが、それに野郎を巻き込んでいいもんじゃないぜ?
 
 あんたの所為で、グウェンダは惚れた男に逢い損なったんだ。
 そんな薄気味悪い企みは、胸くそ悪ぃ」
 
 オルフが眉間に皺を寄せ、非難の言葉を口にする。
 すると、ニルダは一瞬困ったような表情になる。
 
「宿業から、逃げられるものではないよ。
 わしはそれをいち早く教えたに過ぎん。
 
 元来、予知や予言の類は逃れられぬ運命を指して、心構えを与えるもの。
 わしが導かずとも、あの男は宿縁に導かれて歩んだじゃろう。
 あの男がその強さを持っておること、グウェンダは分かっておるはずじゃ。
 
 オルフや、お主は人として生まれたことを指差されてぼやく口かえ?
 
 …宿命を受け入れ、限られた時の中で、変えることの出来る運命を変革することが〈生きる〉ということじゃ。
 わしは誘い導いたが、強制はしておらんよ」
 
 ニルダの言葉に、オルフは二の句が告げず押し黙る。
 元よりそれほど論は立たない。
 
 老獪なニルダと論争したところで、勝てるはずもないのだ。
 
 だが、納得できるわけでもない。
 気分が悪くなり、オルフはそっぽを向いてどっかと床に腰を下ろした。

 グウェンダはニルダに近づくと、やや非難がましい視線を向けたが、一つ大きな溜息を吐いた後、平素のクールな彼女に戻った。
 
「ほほほ、代わりに教えてやろう。
 
 あの男の隣に、どのような形であれ、並ぶつもりならば…強くある事じゃ。
 そうでなければ、あの男を取り巻く宿業に食われるぞ。
 
 あの男を女として愛すれば、それはまず大半報われぬ。
 あれは、生涯妻と願った女を愛し、そしてその愛の証に尽くす男じゃ。
 
 わしが見た命運では、ただ一つの愛の為に、人外魔境に堕ちる宿命。
 死すらも超越して、愛の為に孤高となる刃の道を歩むのじゃ。
 
 果たして、それがお主に止められるかの?」
 
 そして、次にエルナを見た。
 
「…お前もまた、可哀想な娘よなぁ。
 己の心に気付いた時、そこには苦難と悲哀があるじゃろう。
 
 尽くす事じゃ。
 あるいは、何かが変わるかもしれんからの」
 
 ニルダは謎めいた言葉を残すと、不意に見たこともないような暗い瞳をして、眉間に皺を寄せた。
 そして、質問を許さずに去っていく。
 
「…??
 
 変なお婆ちゃん」
 
 フィリがニルダの後ろ姿を眺めながら、しきりに首を傾げていた。
 
 
 船室に入り一人になると、ニルダは大きく息を吐き出した。
 その表情には、深い悲しみと苦悩がある。
 
「…また40年。
 長いはずなのに、短かったの。
 
 この螺旋を訪れるのは、幾度目じゃろうか」
 
 ニルダは独り言を呟くが、不意に雰囲気ががらりと変わる。

「…もう、この年寄り言葉に随分慣れてしまったわね。
 この身体に生まれて、お婆ちゃんになって。
 真実を語らずに、変えようとすることはこんなにも難しいのだわ。
 
 ねぇ、シグルト…
 
 今度こそ、貴方は“開闢の刃金”の担い手を見つけられる?
 あるいは貴方が担い手になれるのかしら?
 
 私やあの娘の宿命を変えることが出来る?
 この、延々と続く茶番を、打ち砕いてくれるのかしら?」
 
 ニルダの声は、口調の変化と共に若い女のそれに変わっていた。
 そして寝室に備えられた鏡に映るニルダの姿は、ブロンドの美しい女であった。
 
「私と同じで、可哀想な女性(ひと)たち…
 すでに彼は魅入られているのに。
 
 彼はこのままなら、きっと今世でもあの娘のために堕ちるでしょう。
 その時、私はまた泣くのだわ。
 
 続く螺旋を、どこまで昇ったのでしょうね。
 繰り返すことには、もう飽き飽きしているけれど…
 
 私はまだ、夢を見ているわ」
 
 そこに立っていたのは老人ではなかった。
 ニルダは、完全に別の姿になっている…いや、戻ったのか。
 
「私が沢山のものを捨ててまで、変革を求めたのに。
 運命の輪は回り続け、物語は紡がれるのでしょう。
 
 貴方は、またあの娘を選ぶ?
 
 今度こそ逢わせないわ。
 だって、貴方は逢えば必ず選んでしまう。
 あの憎い女が残した、あの娘を。
 
 貴方を愛した全ての女性を顧みず、貴方はまた行くのだわ。
 
 そんなこと、今度こそさせるものですかっ!!」
 
 歯ぎしりをして鏡を睨むブロンドの美女。
 その目には、妄執と狂気じみた光が宿っていた。

 
 
 超久しぶりの更新です。
 いやぁ、最近は色々とやることがありまして…
 
 行事とか、生まれて初めて外国に行ったりとか。
 この間タイに行ってきました。
 …言語の壁は厚いです。
 食べたドリアン、ちょっと濃厚すぎました。
 
 ブログは、閉鎖だけはしまいと思ってますが、8月後半までは活動不能になりそうです。
 返事とかもほったらかしで申しわけありません。
 
 
 さて、すごくマイナーにリプレイ2の続きなどを。
 
 ますます謎が深まり、特にニルダお婆ちゃんが凄いことになってます。
 
 シグルト…なんでこいつはこんなにもてるンだぁっっっ!
 …まあ、そういう星に生まれついて居るだけなんですけどね。
 
 今回はアレクセイも凄いことに…
 紙一重の狂気は、人の持つ確かな一面でもあります。
 
 時に活動力でもあり、変革の兆しでもあり、歪めば破滅に繋がるもの。
 往々にして物語には狂気や妄執が見え隠れしています。
 
 いや~んと思わずにいてください。
 フィクションで、ドラマなので。
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