Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

リプレイ講座資料 魔術師の呪文詠唱

 私が書いているリプレイ用に用意した、魔術師の呪文集です。

 使うだけでもクロスになるのですが、あるルールを元に作った呪文なので、雰囲気もそこそこにでるでしょう。
 私がどんな風に使ってるかは、実際のリプレイを読んで頂ければ分かるかと。

 この資料を使う場合、以下のことに御注意下さい。

・これらの詠唱はY2つがリプレイに使うために考え、独断で用意したリプレイの副産物であり、シナリオ作者さんは関わってません。
 この記事を関連付けて、詠唱のことをシナリオの作者さんに尋ねるようなことは御勘弁を。
 尚、現在のリプレイでは、リプレイでスキルを初登場させた時、シナリオをあげてその著作権を書いておりますが、手に入れたスキルに関しては、その後の以下の様な著作情報に基づき使用しています。 

『このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。』(抜粋)

 あくまでも詠唱は関連記事として扱います。
 御了承をお願い致します。

・この資料にあげられた詠唱は、私の断りなく「カードワースのリプレイ」で使用することが出来ます。
 バリアントの類のリプレイであっても使用できます。

 ただ、私の著作権は放棄していませんので、「カードワースリプレイ以外で使用する場合(シナリオに使う等)」はこの記事にコメントとして御一報をお願い致します。(管理人への秘匿コメントでもかまいません)関係ない商用小説に無断で使う(まあ、絶対ないでしょうが)とかすると、完璧な著作侵害になるので、どう叩かれても私は知りません。←無責任

 リプレイにおいて詠唱内容の変更をして使用するのは構わないのですが、その詠唱の著作権は、詠唱を考えた作者さんに移行します。(亜流の詠唱とかどんどん考えてみて下さい)
 私に遠慮はいらないので、構わず改変なさって下さいね。

 ただし、各シナリオの著作権に関しては作者さんのものを最優先することが条件です。
 これはマナーなので、私の著作情報の書き方などを参考に、各リプレイの著作情報等で、各自補足をお願いします。

・詠唱をリプレイで使用した時、私の著作情報は書いても書かなくてもOKです。
 書いてあれば無難かもしれませんが、私は強硬に著作権を主張するより、共通の資産として使えることを望むので、「Y2つが作ったと言える範囲」なら、口出しするつもりはありません。

・詠唱に関しては、「すでにシナリオでスキルに設定している」場合もありますが、私はスキルそのものに設定のされていないモノを使っています。
 今後「すでにそのスキルの詠唱はある!」と申されましても、変える気は御座いません。
 逆に使えというわけでも御座いません。
 御了承下さい。

 以上です。


◇リプレイ講座より抜粋
 魔術師の呪文は、雰囲気を出すため、以下のルールで作成されています。 

・一人称は入れない。呪文を唱える魔術師と口こそが「我」であり、加えると呪文の純粋性が薄れるという理由。
・詩の様に語呂の響きにリズムをつける。
・古い中性的な言葉で世界に現象を命じるように、強い意志を印象付けるよう、考える。
・必ず発動用の短い命令句で締めくくる。(これは呪文の詠唱を短縮する時便利)
・呪文名は言霊が軽くなるので唱えない。(魔術師の名前が大切、というシナリオがあるように、呪文の名前を軽々しく唱えるのは、呪文の神秘性が軽くなる、という考えから)
・上位の呪文はモノにも依るが、詠唱を一行あるいはそれ以上増やして複雑にする。
・同じ単語や動詞は出来るだけ繰り返さない。(くどくなるから)
・繰り返す場合は、類義語を使うか活用形を変える。(同じ言語が重なると、二歩みたいな禁忌を犯すことに。言霊がオーバーヒートする、とか面白そう)
・理路整然とするほど、魔術らしい術理が垣間見えて、インテリの技能らしくなる。
・意味深げになるほど、作った術師の性格が出る。
・暗喩、回りくどい言葉を使うと、その呪文のおぞましさや危険性を表現できる。
・同じ活用形を連続で使えば、テンションが上がり威力が膨らんでいくイメージ。
・上位呪文は時に混沌とした詠唱に。それがかえって特異的な雰囲気を出す。
・術者、対象を意識した内容に。


◇実際の呪文資料
 各入手別に分けて書いてあります。
 今後、この情報は増えて行く可能性があります。

 (もし私に同種の詠唱を作ってほしい場合は、スキルと効果をお教え下さい。努力します)

 『交易都市リューン
・【眠りの雲】
 《眠りをもたらす白雲よ、抱いて沈め微睡(まどろ)みの底に》
 《眠れ!》

・【魔法の矢】
 《貫き徹す光の鏃、輝きを纏い疾く放たれよ》
 《穿て!》

・【蜘蛛の糸】
 《張り巡らすは白蜘(はくち)の楼閣(ろうかく)、呪詛が羅網(らもう)で絡み捕らえよ》
 《縛れ!》

・【呪縛解除】
 《犯されざる虚の領域よ、解放の鐘を響かせよ》
 《解(ほど)け!》

・【魔法防御】
 《魔性を凌ぐ忍びの帳(とばり)、侵せぬ境を打ち立てよ》
 《抗え!》

・【魔法の鎧】ちょっと改変
 《剣戟を退ける不可視の鎧》
 《纏え、鉄の如き護りの壁を》
 《防げ!》

・【賢者の瞳】
 《眼(まなこ)を開き、知恵よ指し示せ》
 《顕彰(けんしょう)あれ、曇り無き真実を》
 《見せよ!》

・【炎の玉】
 《熱の暴威、漲(みなぎ)り満ちる爆火(ばくか)の力よ》
 《熾(お)きの珠玉(しゅぎょく)、焔(ほむら)の卵よ、焚焼(ふんしょう)の叫びを上げ、炸裂の羽化を遂げよ》
 《灼き焦がせ!》

・【破魔の印】
 《歪める魔導は妨げず、理法の式は解き果てる》
 《霊気よ、妖気よ、魔の昂ぶりよ、回帰の故に空(から)と成し、無の静寂へと誘わん》
 《破れ!》


 リューン以外

 ASK
 『家宝の鎧』
・【氷柱の槍】
 《凍て付く霜の煌きよ、槍穂(やりほ)の如く盛(さか)り立て》
 《氷れ!》

『賢者の選択』
・【風の刃】
 《裂き散らし風は鳴く、血飛沫上げる刃の走りを》
 《断て!》

・【風刃乱舞】
 《嵐の覇王、迸(ほとばし)る刃の連なりよ》
 《凪(なぎ)無き死神の大風よ、四方を喰らい鉤爪を突き立てよ》
 《刈り払え!》


 『賢者の街キルノレ』
・【炎の竜巻】
 《侵されざる緋の領域よ、昇れ業火の螺旋の如く》
 《焔(ほむら)の護り手、風と共に駆け抜けよ》
 《焼き払え!》


 『碧海の都アレトゥーザ』
・【魔法の灯火】
 《光煌き、灯火の如く満ちよ》
 《照らせ!》

・【惑心の幻聴】
 《惑いよ偽りを唄え、魔が呟く虚構の声を》
 《囁け!》

・【幻癒の法】
 《真実の傷は偽りへと変じよ、悩乱の果てに癒されん》
 《治せ!》

・【操刃の舞】
 《舞い踊る白刃よ疾殺を歌え、荒れ狂う隼の飛翔の如く》
 《斬り裂け!》

・【砂の旋風】
 《砂塵が装束、猛る輪舞を踊れ妖霊》 
 《叫べ、竜鳴く風の暴虐を》
 《薙ぎ倒せ!》

・【雷鎖の呪縛】
 《雷霆紡ぐは捕縛の鎖、羅形(らけい)に奔(はし)るは痛苦の紫電》
 《狩人の叫びは、焼き焦がす牙を剥かん》
 《掴み蝕め!》

・【地の脈震】
 《山脈の祭壇、眠れる地祇(ちぎ)は怒りを叫ばん》
 《蹂躙の時来たり、冥府の底より這い出でよ》
 《震えよ!》

・【氷の飛礫】
 《悴(かじか)む静寂、凍え震える雪の勲(いさお)よ》
 《霜の水晶、雹の王者よ、極寒の響きを歌い、冷たき霧氷を弄(もてあそ)ばん》
 《吹き荒(すさ)べ!》

・【炎流焔舞】
 《飢えよ、流れる大気の喰らい手よ》
 《舐め尽すは焔(ほむら)の舌、貪るは灼熱の口》
 《晩餐の時は来たれり、避けざる業火が宴を舞い踊れ》
 《燃やし尽せ!》

・【牙兵創造】
 《猛々しき獣の心よ、顕現せよ》
 《振るうは迅(はや)き爪の剣(つるぎ)、纏うは重き鉄皮(てっぴ)の甲冑(よろい)》
 《守護する兵(つわもの)、骨を軋ませ湧き来たれ》
 《牙を剥け!》

・【凍れる悪意】
 《霜の果てに眠り逝く、冷たき忘却の名を持つ者よ》
 《極寒の底に蠢く君主よ、魔性の心で掴み取れ》
 《悪しきその手は、氷結へと誘わん》
 《奪い凍らせよ!》

・【呪詛の悪風】
 《不幸は風に乗る、衰退の時は来たれり》
 《悍(おぞ)ましき厄、患(わずら)う詛(のろ)いは障(さわ)りて侵(おか)す》
 《罹(かか)る者よ、害難を知らしめよ》
 《吹き苛(さいな)め!》 


 おまけアレトゥーザ 闘舞術
・【咒刻の剣】
 《刃の精霊、剣の主よ、斬り裂け、断ち斬れ、血潮を出だせ》
 《岩をも穿つ咒(のろ)いを刻め!》


◇著作情報(サイトは■をhttpに)
 『交易都市リューン』、『家宝の鎧』、『賢者の選択』はgroupAskの齋藤 洋さんのシナリオです。
 著作権はgroupAskの齋藤 洋さんにあります。
 サイト:■://www.ask.sakura.ne.jp/

 『賢者の街キルノレ』はNIFQさんのプライベートシナリオです。
 著作権はNIFQさんにあります。
 サイト:■://www5a.biglobe.ne.jp/~nifq/index.html

 『碧海の都アレトゥーザ』はMartさんのシナリオです。
 著作権はMartさんにあります。
 サイト:閉鎖されました。シナリオはベクターでDL出来ます。 
スポンサーサイト
CW:Y2つ風リプレイ講座 | コメント:7 | トラックバック:0 |

CW:Y2つ風リプレイ講座 第四回

 第四回は、下書きや文章の書き方、表現について講義致します。


◇まず下書きを書こう!
 データを取り終えたら、いよいよ下書きに入ります。

 データを見ながら、まず「導入部分」を考えます。

 シナリオの始めや、そのシナリオに至るまでのPCの行動をざっと書きまとめます。
 多少文章が変でも構いません。
 とりあえず描きたい情景を、片っぱしから書いて行きます。
 
 くどくなったら、清書する時に直せばいいので、上手に導入部分を考えます。

 シナリオからシナリオに至るまで、PCは宿に戻ったり、仕事場まで移動します。
 そういった描写を抜くと、「なんでそのシナリオに入ったのか」という理由が不明瞭になったり、PCたちがその仕事に向かう時のモチベーションなどが分からず、PCの行動を連想することが難しくなります。
 
 作者の頭の中だけでもきちんとした導入がされていないと、PCたちは、なかなか思う様に脳内補完してくれません。

 文章書く時のベーシック「起承転結」。
 その「起」こそ、導入部分なのです。

 実は、文章を読み切る時、最初のインパクトが「最後まで読む」動力になる方、多いんです。
 いくら内容が良くても、始まりで読む気を無くしてしまうと、読むのを止めてしまう方もいるかもしれません。
 あるいは、楽しんで読んでいただくためにも、最初の三行は、強く「読者を引き込む」つもりで描いてみましょう。

 
 導入には、前回の簡単な粗筋を上げて、「一つの物語としての流れ」をまとめるのも大切です。
 これは、たった一行でも構いません。

 テクニックの一つとして、いきなり物語の中盤から入り、後で回想する形もありますが、こういった変則的なテクニックは慣れてきてからした方がいいと思います。
 リプレイ記事がそれなりに溜ってこないと、PCの経験が物語に反映されませんから、いきなりこんなテクニックを使っても、読み手が付いてこれません。
 どうしてもやる場合は、後書き等で、補足記事を足しましょう。
 
 中盤の文章より、あらすじや導入部分に凝っておくことが、書き切ることへの原動力へとなります。
 無理にあらすじを入れる必要はありませんが、ざっと前回からの流れや、過去のエピソードとの関連性があると、ずっと読んでいる読者はニヤリとします。
 あるいは話が空いてしまった時、思い出せるでしょう。
 
 この技術はリプレイ同士のクロスオーバーでも重要になる手法です。
 他の方のパーティを語る際、その導入方法を磨いてないと、話に辻褄が合わなくなるのです。
 絶対ではありませんが、良く意識して描くようにして見て下さい。
 

◇自分が書きたいものではなく、自分が読みたい文章を書く
 どこかのシナリオライターさんが、口を大にして言ってた言葉です。
 
 リプレイは表現の場ですが、自分で読みたくもない内容のものを書いても、共感など呼べ様はずもありません。
 読み直して、「つまらん!」と思ったら、読者の一人はそう思う、ということなのです。
 
 最初に書きたいこと書くのはよいでしょうが、常に読者の視点で読み直して下さい。
 
 会心の出来だ~と思ってても、落ち着いて読み直すと、稚拙だったり矛盾してたりするものです。
 下書きの時は自由に書いて構いませんが、最終的に「自分が読みたい」内容を強く意識して下さい。


◇相応しい翻訳を目指す
 取ったデータを文章に直すことは、映画の翻訳をするようなものです。

 場面に相応しいセリフを考え、時に字幕よりも大胆に、声優さんの演じやすさを意識して翻訳する…
 小説風リプレイを書くつもりなら、同じように意識します。
 
 いわば頭の中のPCが声優さんです。
 ゲームの中のセリフを重視するよりも、貴方の頭の中のセリフを重視します。

 あるシナリオのリプレイの時、NPCが僧侶のいるパーティに向かって「お陀仏」という言葉を使い、強い違和感を感じたことがありました。
 教会勢力の元で、仏教用語の要素が濃いこの言葉を使っても、変じゃないかと。

 私はリプレイの文章の時、これを「天に召された」と変えました。
 つまりは、PCの状況にあった言語変換が大切になるのです。

 完璧な時代考証をしろというのではありません。

 特に印象的な言葉を、類義語の相応しいものに変えたり、脳内補完で加えられたPCのセリフに対してライブでNPCがどんな返答をするか考え、全体的な話の辻褄を合せるようにします。(逆も然り)

 迷ったら、パーティの構成やセリフを喋るPCの特徴と性格、描写の時には容貌や表情を思い浮かべて、そのPCが書き手の脳内で行った行動を書いてみて下さい。
 もし、PCの性格付けや設定がきちっとされている場合、ここでちゃんと動いてくれます。


◇辞書を活用しよう!
 インターネットでは、語句を辞書検索する便利な機能があります。
 言葉が妖しいと思ったら、とりあえず辞書で調べてみましょう。

 ボキャブラリーが不足して来た時は、類義語を検索して使うのも、表現力を増やすのに役立ちます。
 難しい字や、読み方が沢山ある文章には()に入れたり押して振り仮名をつけておきましょう。
 読者の中には、漢字に慣れてない言語圏の方や、物語で使う当て字が理解できない方いるかもしれません。
 特に当て字は、最初は必ず振り仮名をつけて読めるようにしましょう。

 長く良く使う単語(宿の名前や、パーティ名、組織名)は辞書登録しておくと便利です。
 やり方は使ってるワープロソフトにもよりますが、大抵はタスクバーにある言語バーの中のツールに含まれます。

 間違えやすい名前(私の場合スピッキオをスキッピオと間違える場合が良くあります)も辞書登録して、簡易ワード(スピッキオならふりがな「すぴ」とか)で入力する様にすると、執筆が大幅にはかどります。

 他には、時代考証やデータ検索するときに「Wikipedia」を使うのも良い方法です。
 こういった辞書は、絶対ではありませんが、素人が裏を取るには十分な情報源になります。

 リプレイ書きは、プロの仕事で書く必要はありません。
 アマチアの余裕と開き直りで、やりましょう。
 出版本と違い、いくらでも書きなおせますし。

 間違えた時は、落ち込まずに「あはは、まちがえちった」と開き直って直すのが大切。
 分からない時は、分かる人に聞けばよいです。
 
 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥と、良く申します。
 あやふやなのは、調べて裏を取りましょうね。
 
 私も大きな間違いをして直したことが数度あります。
 間違いを発見したなら、嬉々として直しましょう。


◇分かりやすく効果的な強調を行う
 私は文章を書く時に、呪文の詠唱は《》、PCやNPCの心の中の言葉は()、あだ名や二つ名は“”、アイテムやスキル、召喚獣カードの名称は【】、地名や書名は『』、その他は〈〉を使って強調します。
 セリフは「」、セリフ内のセリフは〝〟で囲み、精霊等の言葉は「」をさらに「」で囲むことで、テレパシーのような響きをイメージさせるようにします。
 
 文章は冒頭を一字あけます。
 セリフは冒頭を開けない代りに「を頭に持ってきます。

 文章が読みやすいように、2~3行を基本として一行開けますが、これはカードワースのメッセージ枠に近い形で読みやすくなります。
 だいたい切りのいいところで、一行あけます。
 読み直すとき、目的の文章を見つけやすいので、重宝しています。

 セリフの最後は「。」を使いません。ちょっとくどくなるからです。

 セリフの間に出来るだけPCの行動を描写します。

 セリフ同士がくっつくと、ラジオの様に、音声だけになって表現が薄くなるように感じるのです。
 最も、例外も若干あり、軽快な台詞のやり取りや、セリフの合間に行動が入る隙がないほど切迫した雰囲気を出す時には、あえて台詞の間を入れないこともあります。

 擬音は、柔らかいものは平仮名、硬い音や重い音は片仮名を使い、「ぁぃぅぇぉっ~―!」を間と語尾に入れて、強弱をつけます。

 PCの行動は、表情や手足の動き、仕草を書いて、その感情の揺れを表現します。
 手話のテレビとか身振りを少し意識して見ると、大いに参考になりますよ。

 自分なりの強調方法を身に着ければ、ぐっと厚みを増した文章が書けます。
 癖などは繰り返し使ってもいいでしょう。

 シグルトの苦笑、レベッカの突っ込み、ロマンの蘊蓄、ラムーナの相槌、スピッキオの説教など、良く使います。
 頷く、首を振る、拳を握り締める、歯ぎしりする、目を剥く、目を見開く…といった様子も、感情を表現する時に役立つでしょう。

 是非、意識して書いてみましょう。


◇戦闘の描写はスピーディに
 カードワースで、バトルシーンは燃えるシーンです。
 
 ここでは、あるテクニックを紹介します。
 これを知っていると、戦闘の表現が綺麗に流れるように書くことが出来ます。

 それは、「ダメージの蓄積を流れにして書く」こと。
 
 体力を減らす過程を描き、0にしたら止め。
 常にこの流れを意識して描くと、戦闘シーンがくっきりと描けるのです。

 一例をあげますね。

・まず以下の戦闘結果を文章にします。攻撃するものがジオという剣士の場合です。

 
1R目、ゴブリンに【攻撃】、体力ちょっと減らす。
2R目、ゴブリンに【会心の一撃】、外れ
3R目、ゴブリンに【渾身の一撃】、重傷状態に
4R目、ゴブリンが回復、負傷状態まで、【攻撃】少しダメージ
5R目、ゴブリンに、【居合斬り】、倒す
    その後、回復
7R目、ゴブリンに【攻撃】、止め
    (その後復活せず戦闘終了)

・Y2つの文章化

 ジオはゴブリンに斬りかかった。
 鋭い一撃が掠って、血煙りを吹く。

 さらに追撃するが、狙い澄ましたにもかかわらず、ゴブリンは寸でで攻撃を躱した。

 シオは、相手の反撃を許さず、さらに追い詰めようと踏み込んだ。
 その力任せの斬撃は、防いだゴブリンを吹き飛ばし、大きくよろめかせる。

 敵の魔術師は、回復の魔法で援護して来た。
 ふらふらする頭を振りながら、ゴブリンが奇声を上げ、向かってくる。
 
 ジオはこれでもかと突進して、剣でゴブリンの腹をえぐった。
 
 致命傷、と思いきや、またもや魔術師の回復である。
 立ち上がったゴブリンは、しぶとく立ち上がった。
 
 いらいらしながらジオは、今度こそゴブリンを葬るべく、剣を構えなおした。

 そして次の瞬間、ジオの鋭い斬撃はゴブリンの喉を抉っていた。


 箇条書きした結果が、結構化けるものでしょう?

 ポイントは、相手が行動不能となり、かつ起きてこなかった時を「息の根を止める」描写にしていることです。
 
 アクションカードは、ただ「武器による攻撃」とすると薄っぺらな表現になってしまいます。
 
 壁に吹っ飛ばすとか、肘でぶん殴るとか、体当たりして押し戻すとか、多彩な技の応酬に変えてしまえば、単純な箇条書きは詳細な戦闘描写へと化けているのです。

 戦闘描写では、剣がぶつかって火花や欠片を散らす様や、擦れた音や武具の破損と出来た歪みを意識し、その時に走った動揺やあるいは怒りの様な心情を上手に入れて描写することで、濃厚な描写に代わります。

 傷の出来方も気を付けますが、体力0にされたとしても「死んでしまった」ではなく、「ぐったりしている」とか「意識を失った」とか「昏倒した」と表現した方が、回復して復活した時の辻褄が合います。
 復活時も、立ち上がるとか、頭を振りながら向かっていくとか、「復活したばかり」の様子に拘ってみて下さい。

 出来るだけ多彩な表現を駆使して、殺陣をかっこいいものにしましょう。

 同じスキルを「連続」で使って相手を追い詰める場合は、ちゃんと回数を書くとよいです。

 回数を加えて、結果を書くと、一発目と二発目は違う印象をちゃんと与えられます。
 繰り返し攻撃する場合は、同じ行動をするくどさで、逆に強調するのも手法です。

 緩急をつけ、ぎざぎざ、あるいはカーブを描く様な抑揚をつけて描くことが、迫力のある戦闘を描くコツです。

 リアルに描きたいなら、血飛沫や内臓、脳漿、骨折音、不自然な身体のへこみなどで、「グロテスク」に書くことも手法です。
 やり過ぎるとスプラッター映画ですが、ほどほどに書けば、それらしい描写になります。


◇呪文の詠唱にも拘ってみる
 私は呪文の描写にも多少拘りがあります。

 秘蹟や精霊術は呼びかけたり、神に願う形で描きます。

 魔術師の呪文はとても凝っていて、以下の様なルールで作成しています。

・一人称は入れない。呪文を唱える魔術師と口こそが「我」であり、加えると呪文の純粋性が薄れるという理由。
・詩の様に語呂の響きにリズムをつける。
・古い中性的な言葉で世界に現象を命じるように、強い意志を印象付けるよう、考える。
・必ず発動用の短い命令句で締めくくる。(これは呪文の詠唱を短縮する時便利)
・呪文名は言霊が軽くなるので唱えない。(魔術師の名前が大切、というシナリオがあるように、呪文の名前を軽々しく唱えるのは、呪文の神秘性が軽くなる、という考えから)
・上位の呪文はモノにも依るが、詠唱を一行あるいはそれ以上増やして複雑にする。
・同じ単語や動詞は出来るだけ繰り返さない。(くどくなるから)
・繰り返す場合は、類義語を使うか活用形を変える。(同じ言語が重なると、二歩みたいな禁忌を犯すことに。言霊がオーバーヒートする、とか面白そう)
・理路整然とするほど、魔術らしい術理が垣間見えて、インテリの技能らしくなる。
・意味深げになるほど、作った術師の性格が出る。
・暗喩、回りくどい言葉を使うと、その呪文のおぞましさや危険性を表現できる。
・同じ活用形を連続で使えば、テンションが上がり威力が膨らんでいくイメージ。
・上位呪文は時に混沌とした詠唱に。それがかえって特異的な雰囲気を出す。
・術者、対象を意識した内容に。

 といったものです。
 まだあるかもですが、文章にするのは難しいです。

 何れどこかで、設定した限りの詠唱をざっと紹介しますね。

 例として二つほど上げときます。

・【眠りの雲】
 《眠りをもたらす白雲よ、抱いて沈め微睡(まどろ)みの底に》
 《眠れ!》

・【魔法の矢】
 《貫き徹す光の鏃、輝きを纏い疾く放たれよ》
 《穿て!》

 二行目を《…穿て!》とかにすると、呪文を短縮(省略)した表現になります。
 何度も詠唱を最初から書いてると、くどくなります。


◇疲れて表現が出来なくなったら、休むか書けるところを書く
 延々と文章を書いていると、ものすごく疲弊します。
 
 頭が真っ白になって、単調な文章しか書けなくなったなら、いったん休憩しましょう。
 書いてるとき、ふと別のシーンのよいアイデアが浮かんだら、そっちを先に書いて、後で文章合成するのも手。
 
 ついでにテキストデータが吹っ飛ばないよう、休む度に保存しましょう。

 パソコンのスペックの限界が来ると、たまにエラーメッセージが出てテキストが保存されなくなる場合があります。
 その時は中身をコピーして、新しく作ったテキストにペーストして保存し、PCを再起動させてメモリーとか確保すればまた保存可能になります。

 
◇分割して書き、文章合成するもあり
 何故か他のシーンが浮かんで書き始められない場合だってあります。
 スランプ状態の時は顕著に書けなくなります。
 書ける方法を模索するのもあり。
 
 そういう時は書けるシーンから書きましょう。
 後で文章合成しつつ、矛盾を無くしていけばOKです。

 基本で煮詰まったら、別の手段に出るのです。
 書いてるうちに書けなかったシーンを思い浮かべることもあるでしょう。


◇教材はいっぱいある
 描写の教材はいっぱいあります。
 マンガ雑誌や、テレビゲーム、小説など。
 
 絵や動画を文章にする練習をしておくと、非常にボキャブラリーが増えます。

 あと、歴史スペクタクル映画の、騎士や兵士の剣戟の音高くぶつかるシーンは、ものすごく描写の参考になります。

 お勧めはリドリー・スコットの『グラディエーター』、『キングダム・オブ・ヘブン』。
 メル・ギブソンの『ブレイブ・ハート』や『アポカリプト』。
 香港スターのカンフー映画や、トニー・ジャーのムエタイ映画。
 魔法の描写は魔法使い映画よりも、災害映画(竜巻や噴火、地震など)のほうがリアルかも。

 B級映画、『ゲド』や『ハリー・ポッター』といった魔法使い映画は、どこか光やらありえないエフェクトやらがあるので、メルヘン過ぎる表現も少なくありません。
 星がきらきらとか。
 
 リアリティにメルヘンを合わせると、描写が歪んでしまうかもしれません。
 リアルかメルヘンか統一性を意識し、注意して教材を選びましょう。

 私がゲームで強く影響を受けたのがPS2の『Shadow Hearts』のⅠ、Ⅱ。
 常識をぶっ壊しつつ、キャラクターの個性が激烈で、戦闘も熱い。
 笑いあり、涙あり、恋愛あり、お色気あり。
 グロテスクな内容と、アイテム一つ一つに渉る詳細で、イカした説明。
 私にとっては、鮮烈な印象がありました。
 こういうものが一つでもあると、技術力が革新します。

 よい教材との出会いを大切にしましょう。


◇モチベーションアップには音楽が一番!
 最近私は『Shadow Hearts II Original Soundtracks』の曲を聴きつつ執筆することが多いです。
 好みの曲は『ICARO AGAIN』、『Deep Meditation』、『Old Smudged Map』の3曲。
 特に『Deep Meditation』は瞑想シーンや回想シーンで、インスピレーションが湧く曲です。

 個人的には歌の無いBGMがお勧め。
 歌詞に思考をとられません。

 音楽は下がったモチベーションを奮い起す最良の手段です。
 書いてる時はPCの音源が空いてる場合も多いでしょう。
 是非、好きなCDから好みの曲を引っ張り出して、聞きながら執筆してみて下さい。
 
 切ない描写には切ない曲。
 熱い描写にはメタルとかロックとか。
 コメディシーンには明るい曲や、間抜けな曲。

 ただ、動画は止めときましょうね。
 そっちに夢中になって書けなくなります。


 また長くなりましたね。
 今回はこの辺りにしておきます。
CW:Y2つ風リプレイ講座 | コメント:4 | トラックバック:0 |

『闘技都市ヴァンドール』 “傷難の枝”

 グロアの元で剣術を修めたシグルトは、その足で有名な闘技都市ヴァンドールへと向かった。

 目的は、闘技都市で行われている試合に出場し、自身の戦闘力を試すためだ。
 シグルトは剣術を学んだばかりで、まだ技に慣れていないと感じたのである。
 
 技を学んだばかりの者は、実戦経験の少なさから、術理を生かし切れずに敗北することも多い。
 かといって仲間と組み手をするだけでは、どうしても緊張感が少なくなる。

 賞金があることで、より実戦に近い形で敵が本気になり、かつ殺し合いまでにはめったにならない闘技場の試合は、理想的な訓練の場なのである。
 試合ごとに誰と当たるか分からないことも、実戦の意外性に則したもので、非常にためになるのだ。

 シグルトは、ヴァンドールで最も底辺の草試合から始めることにした。
 剣術の初心者である自分には、そのぐらいの環境が丁度よいと踏んだのである。
 
 浅きより深きに入るが習いであるというのは、シグルトの好む言葉の一つだ。

 戦闘術を極めた者が出る、ヴァンドール最上級の試合は、驚天動地の技が飛び交う凄まじいものだ。
 多少強さを得たとはいえ、シグルトは故障持ちで、剣術は始めて半年にもならない。

 リューンではそこそこに名が知られていたが、都市が変われば事情はまるで違う。
 シグルトは、分相応を守ったのである。

 だが、シグルトは柵の無い場所の方が遠慮なく力を発揮出来るとも考えている。
 新しい出逢いがあり、優れた好敵手と巡り合い、自らを磨く高揚に久しく忘れていた感覚が甦った。

 シグルトは金銭目的の見世物試合自体を、好きにはなれない。
 しかし、違う技術を持つ者と渡り合い、一挙一動に緊張して技を競い合う雰囲気は嫌いではなかった。

 故郷で武術を学んでいた頃、祭りの出し物として試合を何度か行った。
 国中のつわものが集まって技比べをするその試合で、シグルトは負け知らずだったのである。

 試合では、師と家族の名誉のために決して負けられなかったが、今回の試合はその必要も無い。
 シグルトは初心に帰ったような清々しさで、戦闘前に感じる武者震いを懐かしむ余裕さえあった。


 その試合でもシグルトは強かった。
 
 若手のクラインという剣士を相手に、シグルトは道端で拾った木の棒だけで圧倒しているのである。
 武器が無いのはブレッゼンに預けてあるので仕方がない。
 
 棒きれ一本に押し負けそうな自分に憤慨したのか、クラインは大振りの一撃で勝負に出る。

 シグルトは流れるように敵の腕を打ち、相手が激昂して必殺技を放とうとした瞬間、修得した【影走り】で交叉をしかけ、打ち倒していた。

 シグルトの美貌と巧みな技を一目見ようと、試合は大変な盛り上がりだった。
 次の試合が手配され、休む間も無く試合に臨む。

 素早く動き回る盗賊肌の戦士が相手の時は、精霊トリアムールの力で動きを封じ、基本の技で連打して追い詰める。
 タフな傷の男を相手にする時は、相手に優る力技と防御を駆使して無傷で勝利する。

 技の慣熟には試合数も多くこなさなければならず、激しい闘いが続いた。 
 仕掛けるタイミングを測っていた時に攻められ、全身に打ち身を負った日もあるが、シグルトは結局一度も負けなかった。

 シグルトは戦いの中で、様々なことに気が付いた。
 まず、これからの戦いには防具も必要であること。

(盾では両手で剣を振りまわせなくなる。
 やはり籠手か。

 しかし、籠手単体を扱う店などあっただろうか?)

 シグルトは、実戦で腕を守ることがいかに大事かを感じていた。
 剣士は手を怪我すれば役立たずになる。
 
 それに、剣術は槍よりリーチが無い。
 敵に接近する分、手足に傷を負い易い武術なのだ。
 
 革手袋程度では、鍔が弾いた刃を受ければ大怪我に繋がるだろう。
 理想的なのは頑丈で軽量の籠手だが、良質のものはなかなか販売していない。

 重い鎧では、身体に障害のあるシグルトにとって悪影響しかないし、高価過ぎる。
 鎧の類は、良い剣の数倍の値段なのだ。

(彼の十字軍は、砂漠に鎧を着て臨み、多くの敗北者を出したという。
 重装備は移動にも差し支え、やかましくて隠密行動には向かない。

 ブレッゼン辺りの鎧ならば、音のしない工夫もされた上軽量で安心だが、流石に高価だからな。
 今の手持ちでは、心もとない)

 闘技都市であるヴァンドールでは、武具も素晴らしいものを販売している。
 しかし、どれも高価であった。

 それに、鎧は回避能力を妨げる。
 一人旅では邪魔になると踏んだ。

 時々、ごつい全身鎧をこれ見よがしに着た冒険者がいるが、それは愚かな行為である。

 鎧は手入れに大変な手間がかかり、すぐ錆びる。
 海風の吹く場所では、目も当てられない。
 拠点の一つを南海に置いているシグルトとしては、これも大切な選択要因であった。
 
 鎧は見た目も派手で、戦場に向かうならともかく、街中で着ていれば不審者にしか見えない。
 むさ苦しい印象を与えれば、依頼人を不快にさせてしまうだろう。

 鎧を着て窒息死した者もいる。
 旅人となることが多い、冒険者向けの装備ではないのである。

 冒険者たちが、手持ちの武器と簡易な荷物を持つ程度で、重い鎧を着ない者が多いのにはこういった背景があった。

 近年、そういった配慮の無い冒険者への苦情も増えていると聞く。
 ごろつき扱いされないよう、注意しなければならない。

(せめて全身鎧を着るなら、日よけの外套ぐらいは纏うべきだ。

 この夏の暑さだ…太陽の熱で蒸し焼きになってしまう)

 闘技都市ですれ違う鎧を着た闘士たちは、誰もが暑そうに汗を流している。
 シグルトは、防具の入手はもう少し先にしようと決めた。

 防具以外に、剣術の間合いや攻め方のコツも掴めた。

 槍と違い、斬ることが主となる剣術では、剣に遠心力を乗せる予備動作が分かりやすい。
 相手は防御をしやすいので、それを振り切って攻撃するタイミングや技の構成は考えなければならないだろう。
 
 反面、範囲の広い斬撃は、受けたり流したりする手段が無いと躱し難い。
 突きと斬撃を上手に使い分ければ、応用性が高く様々な状況に対応可能な武器である。

 こういった当たり前の術理を、もう一度最初から洗い直すのは、熟練の武術家にこそ必要だ。
 他の武術を学んだ時の癖が、術理の深淵を習得する時には妨げとなりかねない。

 剣と槍では、闘い方も違う。

 シグルトは「~を学んだから強い」とか「~の下地があるから習得が早い」という者ほど、初心を重んじるべきだと思っている。
 驕りと慣れは、感覚を鈍くするのだ。
 
 参考にし、他の知識を学ぶのも良いが、磨き方が雑では意味が無いと心を戒めていた。
 これこそが、シグルトを強くする要因である。 


 三日後、十分な試合結果に満足したシグルトは、都市を去ろうとして、試合の賞金がそれなりにあることに気が付いた。 
 試合で貰った金は、宿代か打ち身の薬代として使ったが、それでも銀貨七百枚もある。
 ちょっとした討伐依頼並の収入であった。

(これなら剣を取りに行く前に、酒の一本も買ってブレッゼンへの土産に出来そうだな。

 せっかくだ、彼の所に依ったら籠手のことも聞いてみるとしよう)

 元々金銭目的ではなく、技の慣熟を目的として出場した試合であったが、シグルトは10戦以上の試合を完勝し、ちょっとした伝説を残すことになる。

 三日だけ現れた謎の美形剣士が、草試合で全勝して場を荒らし、霞の様に姿をくらました…
 
 戦う時に使っていた棒きれと、北方訛り。
 玩具の様な枝で嵐の様な結果を出す…それはまるで神々の黄昏をもたらすという、北方の魔剣の様だった、と試合を見ていた詩人が語った。

 “傷難の枝”(レーヴァティン)。
 
 そんな呼び名の、美しい剣士が闘技都市にいたと…。



 シグルトの珍道中その一です。
 
 武術において慣熟訓練はとても大切です。
 どんなに強い技を習得しても、使い方がなってないなら宝の持ち腐れになります。

 『闘技都市ヴァンドール』は、ソロ戦闘の慣熟にはなかなかのシナリオです。
 こういう闘技会もののシナリオ、あることにはあるのですが、出てくるメンバーの顔触れが少なかったり、モンスターとの殺し合いであったり。

 このシナリオの試合は、殺し合う雰囲気はあまりないので使い易いのと、試合がソロなのが選んだきっかけでした。
 パーティモノの試合は、ロマンやスピッキオが出たがらないでしょうから。

 クロスオーバーも多いシナリオなので、いろいろ見て回ると面白いです。

 試合でジュニア級のチャンピオンになるまでお金を稼ぎつつ、医療室と闘技場を行ったり来たりしてめした。
 
・試合の賞金 +700SP


〈著作情報〉2009年06月26日現在

 『闘技都市ヴァンドール』はレイさんのシナリオです。現時点で下記サイトで配布され、ギルドにも登録されています。
 シナリオの著作権は、レイさんにあります。
  
・レイさんサイト『サイファーの謁見室.』
 アドレス: ■ttp://hiroshima.cool.ne.jp/cwincypher(■をhに)
 
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。
CW:リプレイR | コメント:12 | トラックバック:0 |

『碧海の都アレトゥーザ』 海風を震わす聖句

 南海の大都市アレトゥーザ。
 そこは、南海の聖海教会にとって中核となる場所だった。

 聖海教会とは、西方都市で主流となる聖北教会、東方帝国の主流である聖東教会と並び、救世主が〈新しき契約〉をせし唯一神を信仰する有力な門派である。
 
 聖海の特徴は、神々や精霊の聖人化や、在来宗教と宗教行事を多く取り込んだことであろう。
 聖北とは列聖された聖人が違うだけ、と考えるのが普通であり、親聖北派の僧侶も多い。
 
 最も、〈旧き契約〉と〈新しき契約〉に登場する唯一神信仰は、同一の神を信仰する宗教でありながら、抗争が絶えずに多くの宗派門派に分かれてしまった。
 排他的かつ保守的な性質は、分裂した後もれぞれの教会に色濃く受け継がれている。

 アレトゥーザの聖海教会にとって、南海の海洋都市を守護していた神であるミネルヴァやネプトゥヌスの教化こそが、その柱となるエピソードである。
 しかし、一部の精霊術師や賢者は、その矛盾を否定する。

 聖人として聖海に帰順したはずの神や精霊が、他の地方で昔ながらに信仰されていたり、精霊として顕現する事例が上がっているからだ。
 これを聖海の聖職者たちは、「聖海の教義こそ正しい」と言って取り合わない。
 
 信仰の真実とは何なのか…
 宗教や主旨の違う集団同士で、血で血を洗う闘争が行われ続けて来たにも関わらず、未だその答えは統一されていない。
 
 スピッキオは、そんな宗教の争いとは無縁の、豪商の三男として生まれた。 
 生まれつき立派な体格と辛抱強さを持っていた彼は、騎士にならないかという話もあったが、資産家の長男以外と言えばお決まりで、そのまま聖職者の道を目指すこととなった。

 純粋な聖職者は、基本的に結婚が認められていない。

 もちろん結婚を肯定し、妻帯した聖職者が存在するカルバチアの様な例外もある。
 当時の教会の風潮も大きく影響するのだ。

 だが、それは本流では無い。 
 子供が生まれるとしても、公式にこと認知するには面倒な手続きが必要だったり、私生児として扱われる場合も多かった。

 スピッキオは一生童貞のまま聖職者を続けることを誓った、生粋の信仰者である。 
 少年時代に修道宣言をし、五十歳を超えるまでは世俗から隔絶した修道院で、労働と祈り、そして清貧に勤しんで来た。

 本来なら、そのまま修道院で終わるはずの身であった。
 だが、教会内部での勢力争いによって追放されたのだ。
 
 自分には修道院の生活と信仰しか無いと思っていたスキッピオにとって、それは驚天動地の出来事だ。
 司祭の地位を得、教会すら与えられたが、それは修道宣言までして祈りの世界に入ったスピッキオにとって、還俗させられるのに等しい屈辱であった。
 
 修道院の外界に出ると、現代の教会のあり方にも深い疑念を抱いた。
 答えを求めるために、スキッピオは長い巡礼の旅に出たのである。

 しかし、その旅で示された答えは混沌としていた。
 沢山の答えがあり、そのどれもが誤りの様で、どれもに真実がある。
 
 巡礼の旅を終えて西方に戻ったスキッピオは、そこで信仰とは何ぞや、という根本的な疑念に行きつく。
 
 洗礼を受け、唯々諾々と上の聖職者が示した道を信じ、そして行って来た。
 それで良いのか、と思う様になったのだ。

 そんなスピッキオの祈りに、神は秘蹟という形で応えてくれる。
  
 …スピッキオは、分からなくなった。

 何故信仰を疑う者にすら、神は力を貸すのか。
 何故救われるべきであるはずの者が、これほど苦しんでいるのか。
 何故邪悪と言える者が跋扈し、神はそれを看過するのか。

 悩み抜いて流離い、スピッキオはリューンにやって来たのである。

 だが、ぼろぼろの巡礼僧姿で金も無いスピッキオに、同門の聖職者たちは冷たかった。
 雨の日に、軒下でも良いから宿を貸してくれ、と頼んだスピッキオは、同じ教えによって教化を受けたはずの寺男によって杖で打たれ、追い立てられた。

 そして彷徨った末に行き着いた聖北教会をスキッピオが見上げていると、その教会を預かっていた司祭が迎え入れてくれたのだ。

 スピッキオは、何故自分を受け入れられるのか訪ねた。
 どう見ても、聖海の教徒であると分かるのに、と。

 スピッキオの予測した答えは聖海の穏健派と同じく、「列聖された聖人の違いのみで、同じ神の子である」というものだった。
 それは外れた。

 その司祭の言葉は簡潔だった。

「それは、私の神が貴方を救えと言ったからです」

 微笑んで言った司祭の言葉に、スピッキオは大きな衝撃を受けた。

「神は一つだと言われて来たはず。
 そして、公正で絶対であると。

 我々聖職者はその神を求め願い、信仰して来た。
 だが、同じ歴史の神を信仰しながら、統一されることも無い我々が存在する矛盾。 

 なのに、〈貴方の神〉と申されるのかっ!」

 それは、思い悩んで来た負の感情の爆発であった。
 大罪の憤怒を抱き、スピッキオは身を震わせた。

 だが、司祭はまた微笑んで、教会の天井を見上げた。
 そこには天使たちに囲まれた天界の様子が描かれている。

「…見て下さい、師よ。
 この天井絵を描いた絵師は、この素晴らしい姿をいったい何処から知ったのでしょう?
 
 それは絵師の信仰心だと、私は思うのです。
 
 完全である故に、神はその一欠片である我々の心にも宿っている。
 私たちは良心と言う神の声を聞き、罪と言う神の叱りを受けている不完全なもの。

 だから思うのです…神は全能なるが故に、不完全な者の中では過ちを見定め、試すのだと。
 それは、それぞれ人々の信仰心の中におられる神の試練。

 全能なる神は、全能故に全てを見ておられる。
 だからこそ、私という不完全な窓を通して見える、私の神に祈るのです」

 司祭はそう言って、スピッキオを濁りの無い瞳で見つめた。

 スピッキオは、その言葉が天の光明に思え、そして司祭の瞳の中に神を見た気がした。
 迷いは嘘のように晴れていた。
 
(海の如き神の御心を、わしという一つの杯に汲むことは出来ぬ。

 だが、不完全であっても、確かに神の御心を汲むことが出来るのだ。
 不信こそ、汲まぬということ。

 わしは、汲むことを忘れていた愚か者よ)

 その時から、スピッキオは己の神に、心から祈れるようになったのである。


 スピッキオは新しい秘蹟を修めるため、アレトゥーザの教会で瞑想していた。
 
 秘蹟とは、神の与えし業であり恩寵である。
 その御業を起こすには、特別な才能が必要であった。
 
 神に愛されること。
 即ち、神の望む信仰を抱き、聖職者となることである。
 ちゃんとした聖職ではないものでも秘蹟は起こせるが、その多くは信仰心を礎にしていた。

 もう慣れてしまったが、本来秘蹟は起きるものであり、使うものではない。
 魔術やまじないと同等に扱うこと自体が不当なのだが、世界はそもそも不当なことの方が多いだろう。

 この程度のことに目くじらを立てる神では無い、そう割り切ってからは、気にならなくなった。

 謎の多い秘蹟であるが、分かる限りのものは、学問同様に学べば修められる。
 神への呪文…正しくは聖句を用いて祈り、その御業を願うのだ。

 スピッキオが望んだ秘蹟は【癒しの奇跡】と呼ばれるものだ。
 癒しの力で多くの者を救うとされるこの秘蹟は、聖海の秘法である。

 この秘蹟を起こせることは即ち、優れた僧侶であることの証でもあった。

 だが、スピッキオにそんな打算は無い。
 傷つく仲間たちを包んでやりたい…ただそれだけの理由で求めたのである。

 シグルトの守護聖人は、聖海生粋の癒し手である聖女オルデンヌであった。
 だからこそ、真先に使えるようになったのが癒しの秘蹟である。
 
 聖海教徒の多くは、癒しを求めてこの聖女に祈った。
 彼女は異端、異種族を問わず、命を削って癒しを続け、神に召されたという聖女だ。
 その行いから、聖海以外では列聖されていない。

 スピッキオには、どのような気持ちでオルデンヌが祈ったのか、何となく分かる気がした。
 彼女は、ただ癒したいと願ったのだろう。
 こんなにも弱い、罪深き人のために。

 また瞑想に入ろうと、スピッキオが目を閉じた時、世話になっているパオロという侍祭が駆け込んで来た。

「スピッキオ司祭はいらっしゃいますか!」

 ゆっくりと眼を開けたスピッキオは、司祭に何用かと尋ねた。

「船の衝突事故です。
 多数の死傷者が出て、今でもその命の灯火が消えんとしている者たちがおります。

 どうか貴方も、力をお貸し下さい」

 スピッキオは首を傾げた。
 
「この教会には、高名な司祭もおられるはず…

 わしなどで、力になれるのかね?」

 パオロ侍祭は、項垂れて首を振った。

「マルコ司祭を始め、主だったお方は他の都市の祭典に出かけられており、おらぬのです。

 一人でも、癒しの秘蹟を使える者を探している所です…」

 頭を垂れて同行を願うパオロ侍祭に、応えるように深く頷くと、スピッキオは立ち上がった。


 船着き場は地獄絵図であった。

 手足の折れ曲った者や、木片の突き刺さった者が、水揚げされた魚の様に並べられ、呻き声を上げている。
 中にはもう動かない者もおり、そういった者は端から邪魔にならない場所に積み上げられていった。

 話によれば、停泊所の取り合いで、両方の船の船長が意地を張り合ったらしい。
 結果、二つの船が衝突して大破し、飛び散った船の残骸が、荷物の積み込みに精を出していた水夫たちを直撃したのだ。

 怪我人は数十人、死亡者も二桁近い。

 スピッキオは、呻く水夫たちに歩み寄ると、静かに目を閉じ祈り始めた。

「《いと高き、天の御座(みくら)にまします、我らが主よ…祈りをお聞き届け下さい》

 《今召されようとしている罪の子に、慈悲をお与え下さい》

 《輝くその御業で、どうか御救い下さい》」

 朗々と、スピッキオの唱える聖句が、周囲に木霊していた。
 
 まだこの秘蹟を起こしたことはない。
 だが、スピッキオは「起きる」と確信していた。

「《主よ…癒し給え!》」

 天に両手をかざし、請う様に、強く強く祈るスピッキオ。

 刺すような太陽の光が、一瞬だけさらに強く輝いたかの様に見えた、その瞬間だった。

「おぉっ、皆の傷が癒えて行く…」

 パオロ侍祭が、感極まった様に呟く。

 …正に奇跡であった。 
 重い傷を負った者が、次々に目を覚まし、そして自分の傷が癒されたことに驚き始めたのである。

 倒れ伏していた者は、皆癒され意識を取り戻していた。

「主よ、そのお慈悲に感謝致します。

 そしてどうか、御元に旅立つ者をお導き下さい…」

 全ての怪我人が癒された時、スピッキオは柔らかな声で、感謝と鎮魂の祈りを捧げるのだった。


 
 スピッキオの秘蹟習得エピソード、いかがだったでしょうか。
 
 後書きが何故か消えてしまったので、もう一度書き直しました。
 ブログ書いてる時、いつも思うのですが、くれぐれも投稿前に、文章コピーしましょうね。

 スピッキオは、主役扱いのシグルトの存在に隠れてラムーナとともに日陰者っぽくなってましたが、今回彼の話を書き、いくらか彼の存在感を描けたのではないかと感じています。

 教会や秘蹟の描写は、どこかで詳細にやりたかったので今回出来て少し満足。

・【癒しの奇跡】-1400SP
 
 このスキル、まだ3レベルのスピッキオには二回しか使えませんが、全体回復という効果から十分実用に足ります。

 このスキル、戦闘でも役立つのですが、実際はフィールドでかなり重宝します。
 悪路や疲労で、パーティ一律で体力が下がった時、まとめて回復できるのは強みなのです。
 某シナリオで鉱石掘る時、ものすごく使えました。

 PCのレベル-2ぐらいのスキルから、配布率の関係からも実用に足るようになります。
 
 このスキルは固定回復15なので、あまりレベルや行動力の影響を受けません。
 適性がどれもダメな凡庸PCでもかなり役に立つスキルです。

 また15は、生命力4、精神力4、1レベルの凡夫(凡庸型や一般人の平均)推定体力である14を完治させるぐらいの威力です。
 
 回復役は、手札の配布率の関係から、体力回復のスキルを半数~三分の一ぐらい持つと、効果的に回復が行えます。
 単体大回復、全体小回復、単体複合回復、あたりをセットしておくと、高レベルではかなりしぶとく戦えるようになります。
 
 今後の中堅レベルで予想される激しい戦闘に備えて、今回の強化はかなり重要でした。
 現在の“風を纏う者”には、回復できるのがスピッキオしかいませんし。 

 レベルが上がればレベル比のスキルが有用ですが、逆に低レベルの時は固定効果が有難いですね。
 3~7レベル頃に、とてもお勧めのスキルです。
 

 〈著作情報〉2009年06月25日現在

 『碧海の都アレトゥーザ』はMartさんのシナリオです。現時点でベクターで配布されています。
 シナリオの著作権は、Martさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer1.22です。
  
・Martさんサイト『esotismo.』 (閉鎖)
  
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。
CW:リプレイR | コメント:9 | トラックバック:0 |

CW:Y2つ風リプレイ講座 第三回

 第三回はリプレイの企画書と、プレイデータの取り方についてお話します。
 
 これらは地味で面倒な作業ですが、やるのとやらないとでは、表現力や厚みに大きな差が出るものです。
 自分なりのスタイルを確立するためにも、大切なものだと思って行って下さい。

 少し長いですが、お許し下さいね。

 
◇今後の展開に関わる企画書
 企画書は、今後のPCの成長計画や、プレイしていくための順番、金銭とレベルアップ管理に関する計画書のことです。
 行き当たりばったりプレイには必要ない、と思われがちですが、箇条書きでも用意してあると、「書き続ける」ことに多大に影響します。
 
 それは何故か…
 リプレイを続ける上で、必ず訪れるスランプを経て、リプレイを再開しようとした時、流れを思い出すためのきっかけになるからです。

 計画書は、終えたシナリオから反省や今後の展開に関する抱負を書き込むチャートとしても使えます。
 日記であり、影の設定書であり、荒筋として再利用出来ます。
 
 私の企画書の一つ、“風を纏う者”に関するものは「ウインド1シナリオ計画」というタイトルで、頻繁に書き足しや修正を加えつつ使っています。
 雑なのであまりお見せしたくないのですが、ちょっとだけ抜粋しますね。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

・『第一歩』3200

・『希望の都フォーチュン=ベル』
 【ジュムデー秘本】-2000
 サブシナリオ×2 +600

・『エクレシア』
 【クルシス】-1000(800) 

・『碧海の都アレトゥーザ』
 サブシナリオ 潮干狩り+ラウラの料理
 
・『古城の老兵』導入
 
・『“風を駆る者たち”の噂』
 『デオタトの依頼』+400
 
・『碧海の都アレトゥーザ』朝日の見送りは大幅に内容変更。この話を合流後に持ってくる。

 
☆第一分岐。
 分かれる。
 レベッカとシグルト、ポートリオンまで仕事を探しに。
 ×ロマン、途中の猪退治からシュレックの元に留まる。

 『隠者の庵』+300

 『街道沿いの洞窟』+600 シグルト&レベッカ
 『ポートリオン』くろこしょうとフォレスアスと森黄を換金。+5600(この時点でフォレスアスは交換しなかったことに、3600の収入)
 
 噂を聞き、シグルトのソロシナリオ1
 シグルト、リューンに行くまでにペルージュへ用事。


 ラムーナとスピッキオがスキル習得中、片手間が開いたシグルトたちはそれぞれ仕事へ。
   
 シグルトはペルージュに旧版『風繰り嶺』+300-600 
 【気精召喚】習得→自己スキルに変換、通常のベクター版をプレイ
 
 
 旅先で死神に助けを求められる⇒『魂の色』+500(受け取らない、別で算出してストーリーを変化)

 
 ペルージュにて聖典教徒の恩師アフマドに会う。
 異端の疑いをかけられたアフマドの身元保証人になり、アフマドの治療を受ける。
 困っているペルージュの坊さんルイス。(アフマドを助けるとき手を貸してくれる)
 ルイスの恋人マティルダをアフマドが診る。
 シグルト、義に応え、盗賊をルイスと追う。
 ⇒サブシナリオへ


 レベッカは仕事⇒『Guillotine』+500

 途中で依頼人に裏切られる。
 崖下に転落。
 雨の中で過去の回想(両親の死)
 ⇒サブシナリオへ。
 
 レベッカの過去の夢。
 
 『Guillotine』(鬱系とのこと、書き方要注意)
 (レベッカ、自己満足して殺される女には、彼女を抱きしめて、彼女の心がもっとも救われる言葉)

「貴女のおかげで私は助かる。
 仲間の元に帰れるわ。
 
 だから助けてくれて有難う。
 貴女が代わりに死んでくれるから、私は代わりに生きられる。
 とても感謝しているわ。
 
 だから、必ず貴女のお墓を作ってあげる。
 貴女が、私を救ってくれた事実を刻んだお墓を。
 
 約束よ…」
 
  魔術師の言う平等にけちをつけ、平等を謳うには、先日死んだ少女の生きた時が平等でなかったことを鋭く示唆。
  平等とは、何かの主観があってその上に考えられることで、主観を持つものが特別な時点で絶対の平等などありはしないと言う。
  たじろく魔術師に、病で死ぬものや事故で死ぬものにも平等はあるか、と聞く。
  そして、もらえるもんはもらっとくわよと、お金をもらう。
  力を合わせることすらしなかった魔術師に、痛烈な言葉を残し、呆然とした魔術師をせせら笑い、「まあ、この箱庭を続けたいなら続ければいい」。
  
  最後にレベッカは助けてくれた女性の遺髪を綺麗な丘に埋め、約束どおりお墓を立てる。
 
 そして「私もまだまだ感傷的よねぇ」と森に消えていく。


・レベッカ、アレトゥーザに帰還
 
  
 この後合流。
 
 シグルト+200。
 レベッカ+500。
 共同で6200。
 
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ほんと適当で、わけ分からないですよね?
 これは、「自分でわかればいい」テキストです。
 
 リプレイに関するアイデアや、遊び方、表現したいこと、考えていた決め台詞、小さな設定などを書き込み、作っていくのです。
 
 決してそのままには使えませんが、人間は喉まで出かかった文章をなかなか書けません。
 頭にひらめいた時、メモっておいてこのテキストに足しながら、企画を練りつつリプレイを書きます。

 「+~」とか「-~」と書かれたのは、資金の運用です。増えたり減ったり。

 こういう「後ろ盾」となるものがあると、リプレイを書く時「こうだよな~、いやこうか?」と考えられて楽しんで書けます。
 人に見せないものですから、文章力なんて必要ないですし。

 恥ずかしいセリフとか、決めポーズとかざっと書いておけば、全体の流れを見つつ計画的にストーリー性の高いリプレイを書くことが出来るはず。

 云わば、攻略本のストーリーチャートです。

 作り方は簡単で、適当なフォルダの空欄を右クリックして「新規作成」の「テキスト ドキュメント」を選んで、新テキストを作り、出来たテキストのタイトルの名前変更して、そのテキストにざっと書き込むだけ。

 PCを作成した後に作っても構いませんが、企画書を作ってからパーティを作るのも、目的性のあるパーティを組めるので、それはそれでよいかもしれませんよ。

 書く時に、是非活用して下さい。
 

◇先行プレイをして流れを掴む

 私はリプレイを取る前に、ざっとそのシナリオをプレイして今後のリプレイに使えるか選別をします。
 
 シリアス路線のリプレイで、コメディものばかりリプレイすると滑稽になってしまいますし、キャラクターの表現が著しく固定されるシナリオや、役割分担が強制的なシナリオでは、PCのアイデンティティが破壊されることもあるからです。
 
 私はこれを「ざっとプレイ」または「先行プレイ」と呼んでいます。

 ネタばれよりも、リプレイの崩壊が恐ろしからやってる手段であり、最後までやる必要はありません。
 そのシナリオが、現行のパーティの雰囲気を損なわないか、確認するつもりでやります。
 
 これは、「他のパーティでやったことがある」場合は無理にしなくても大丈夫です。
 狂い系でもなければ、雰囲気が分かり、変なカードの配布や称号が付かないか確認出来ていれば十分でしょう。

 まずプレイする前に、シナリオの付属テキストを読んで傾向や、作者さんの意図を探りましょう。
 これは最初にやっておいて下さい。
 
 シナリオの選択画面からも、テキストは読むことが出来ます。

 
 「ざっとプレイ」をさせる専用パーティを作ってもいいですが、面倒なら「拡張」で「宿のコピー」を二つばかり作って、一つを「ざっとプレイ」用に使うと良いです。
 パーティを作ったばかりなら、切りのよい所でコピーを取りましょう。
 たまにデータが消えたり、バグで宿データが吹っ飛ぶ時があります。
 
 二つコピーするのは、一つはやり直し用、一つは先行用、元本はリプレイのライブ用にするためです。
 
 リプレイを続ける上で、トラブルを回避するための大切な保険にもなります。
 是非、宿のコピーは取りましょうね。


◇PCの特徴を抜き出す
 PCを作成して紹介記事を最初に作る時、特徴を一々書くのは非常に面倒で、誤植もありえます。
 こんな時は、宿にいる状態のPCを右クリックして、「編集」→「デザインを変更する」→Comment欄の特徴をコピー&ペーストすれば楽ちん。

 ついでに設定を書き足すとか、やってしまいましょう。

 私の場合、能力値の表記もするのですが…辞書登録機能を使ってあります。
 「能力セット」と打ち込むと「器用度: 敏捷度: 知力: 筋力: 生命力: 精神力: 」が出るようにしています。

 こういう短縮化は、作業の効率化に繋がりますので、暇な時やアイデアが浮かばない時にやっておきましょう。

 チーム名も良く使う(私は“”で囲ってあるチーム名をそのまま辞書登録してあります)ので、簡易ですぐ書けるように工夫しておきましょう。


◇Y2つなりのリプレイデータ抽出
 では、今回の本題に行きますね。
  
 私の場合、デスクトップに新規作成でテキストを作り、そこに書き取ったデータでリプレイを書きます。
 
 カードワースを立ち上げて、シナリオをプレイしつつ、戦闘結果や印象的なメッセージを適当にテキストに書き込んでいきます。
 これは箇条書きで良いので、PC、NPCたちの印象的な行動や、記事に出来そうな内容をざっと纏めます。
 あるいはその時に浮かんだ情景や、表現をメモしておくだけでも、後で文章が面白くなります。
 
 以下一例です。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

・戦闘結果
 ラムーナ ゴブリンに攻撃 外れ
 シグルト ゴブリンSに渾身 重傷まで削る
 ロマン  眠りの雲 ゴブリン二匹、ホブゴブリン一匹ダウン
 レベッカ 会心の一撃 眠ったゴブリンKO
 スキッピオ スキル準備アイテム

 シグルトがゴブリンの攻撃を受けダメージ小
 ラムーナゴブリンの攻撃回避
 レベッカホブゴブリンの攻撃で重傷
 あとは回避、一匹だけ回避行動

 ラムーナ ブブリンにフェイント成功
 シグルト 追撃で止め…ラムーナとの連携処理
 ロマン 魔法の矢 ゴブリンS撃沈
 レベッカ カード交換
 スピッキオ レベッカの回復

 他は眠ってるので、シグルトの渾身の一撃で斃す
 処刑風に、「首を断った」と「頭蓋を粉砕した」でまとめ
 
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 戦闘結果はもっと簡略化しても構いません。
 見せ場っぽい場所だけダイジェストでもいいのです。
 印象的な敵の攻撃や、ドラマティックな結果だけ抜き出せば良いでしょう。
 自分なりの記録の仕方を見つけて下さい。
 
 この時、長い文章は辞書登録機能を使うとすごく楽です。(OSがVistaの場合はセキュリティ関係で設定が面倒な場合もありますが)

 詳細にやり過ぎると大変な作業になります。
 長い戦闘は、押したり引いたりを大まかな文章にして、省略化して纏めます。
 
 特に5ラウンドを超えるような戦闘は、全部詳細に纏めても煩わしい文章になってしまいます。
 主要な部分を抜き出してまとめましょう。
 
 連続で外れたら「攻撃が掠りもしないことに、苛立ちを覚えた」とか。
 仲間の連携で攻撃がヒットしたら「~と~の攻撃が調和し、~を葬り去っていた」とか。

 慣れてくると簡単にこういう省略が出来る様になります

 アクションカードは、

・【攻撃】…武器や素手での通常攻撃。威力は小~中。
 牽制や、身体の各部分で殴りつけて相手を追い詰める、と言った描写にも使えます。

・【渾身の一撃】…力任せに粉砕するか、溜めた力で一気に屠る、あるいは追い詰める描写に。
 避けられた時も、「重い風音が過ぎ去った。~の凄まじい攻撃は間一髪で避けられる」というふうに無駄にせず文章化するもあり。
 敵に使われた時は、こっちがひやりとした情景を描くと良いですが、相手がパワータイプの時にこそ、表現を強調すると雰囲気が出ます。

・【会心の一撃】…狙いすませた、あるいは起死回生っぽく描くと盛り上がります。
 使うPCの実力を反映させて、得意な器用なPCの使うそれは、より激しい描写に。

・【フェイント】…成功しても2Rして効果が表れない場合は、スカ扱い。
 成功した場合は、体勢を崩した、撹乱した、気を引いた等で表現します。

・【見切り】…回避が成功した時のみ、「防御に専念していた~は…」と言うような表現にすればいいです。
 見切りを使いつつ攻撃されなかった場合は、ちょっとお間抜けになってしまいますよね?
 暴露と併用した場合は、暴露した人物との連携…という風に、印象的な描写に出来ます。

・【防御】…敵の攻撃や魔法を耐える描写に使えます。
 身を固めていることを強調して書くとよいでしょう。
 防御したのに攻撃されなかった場合は、「様子を見た」とかにするのもいいかも。
 【見切り】と同感覚で表現して下さい。

・【混乱】…選んじゃった時は、「敵の攻撃で体勢を崩した」とか「挑発に乗ってしまった」とか。
 上手くピンチを描き、さらに攻撃を食らった時は、敵の連携として描きましょう。
 味方のピンチもリプレイを盛り上げます。
 
・スキル…その効果にもよりますが、「とっておき」っぽい雰囲気を意識すると良いです。

 こんな表現をイメージの参考にするとよいでしょう。
 無論、絶対ではありません。
 それっぽければ、どんどん新しい表現方法を考えて下さいね。

 ボス戦以外は、戦闘結果だけでまとめてしまうのも手です。
 雑魚戦闘は、怪我した人物や、勝利に貢献したPCとカードを強調しておしまいっていう書き方でも十分ですよ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

・フィールド
 レベッカに宝箱を調べさせる、危険そうなので【盗賊の手】使用、成功。
 【宝石】入手。
 このあたりで喜ぶレベッカ、突っ込むスキッピオ一騒動入れる。

 間違えてラムーナで調べてしまったもう一個の宝箱…ラムーナが気付いたことにする。
 キャンセルしてレベッカで調査し直し。
 中からミミックが!戦闘開始。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 フィールド(戦闘以外)でもざっと結果を書き取ります。
 戦闘中と違って、セーブポイントで中断出来るので、楽な場合もあります。

 フィールドは普段のPCたちの素行がよくでる場所に出来ます。
 例えシナリオで描写が無くても、気が付いたことを足して下さい。
 味気無い討伐シナリオでも、PCの恐怖感や武者震い、戦闘前の戦術相談など、いろいろな描写が可能です。
 頭の中に浮かんだイメージを大切にして下さい。
 そして、浮かんだら楽しんでメモしましょう。
 
 こういった記録作業は地味で、リプレイをやる時一番きつい作業です。
 セーブしながら、長編の場合はじっくり、じっくり進めましょう。
 致命的なミスをしたら、F9でシナリオから逃げることも出来るので、慌てないで下さいね。

 疲れたら、休んで気晴らしして、また書き始めればいいです。
 
 この時、モチベーションが維持出来なくなる恐れがあります。
 単調な作業は、苦手な人を大いに疲弊させますから。

 乗り越えるには、「その時させたいPCの行動」を楽しんイメージし、「面倒」と言う気持ちを忘れてしまいましょう。
 楽しむ方法を探しつつ書くのが、書き切るコツです。

 結果の省略をする場合や脳内でメッセージが分かっている時は、無理に書き取る必要はありませんが、プレイ中に思い浮かべた感想や文章の骨となる部分をしっかり残しておくと、読者に共感を呼ぶものが書けるはずです。
 
 出来るだけ実際の結果に沿った内容に近づけることも、「リプレイ」です。
 内容が増えていても、結果にだけは辻褄を合わせましょう。
 
 失敗を恐れず、誤字脱字も、気づいたら直し、何でもネタにして笑い飛ばす図太さでやりましょうね。

 長いシナリオのリプレイを、直に文章にしようとしても、作業が増えるだけでお勧めしません。
 戦闘ものは特に顕著です。

 絶対に何かを忘れたり、支離滅裂な文章をまとめる手間に、記録を取った時より手間をかける羽目になります。
 …記憶力があって情景を覚えていたり、一発でまとめられる自信があるなら、それでもいいでしょうけど。
 
 シナリオそのものが短編の場合、分かりやすかったり、何度もプレイしているなら、直で書くことも可能です。
 その時は、簡単な戦闘結果だけでも大丈夫ですよ。

 リプレイ結果を元に、下書きし、読み直しながら文章を加筆修正して別テキストに纏めればいいです。

 リプレイをする上で、この「結果テキスト」には、リプレイを書こうとする時に、貴方のPCが考えするだろう行動も付け足しておきます。
 もしPCが矛盾した行動をしてしまったら、ここからが小説風リプレイの本領…脳内補完を発動します。


◇データを取りながら、脳内補完&それもメモする
 カードワースでは、セリフや行動に、どうしてもゲームとしての限界が出てきます。
 その時こそ、プレイヤーとしての作家根性を発揮します。
 
 それが脳内補完。
 
 頭の中で、「うちのPCはこんな行動するよね」と、結果までの過程を変更、追加してしまうのです。
 最終的に結果データが同じなら、脳内でリプレイは正当化出来、文章にすればそれがまかり通ります。
 
 私はこの手法で、堂々と内容を変えています。
 相応しくない行動の方が、違和感を与えます。
 あまりに似合わない行動をPCが取る場合、結果までの過程を文章で修正し補って、辻褄を合わせてしまうのです。

 そんなのリプレイじゃないじゃん、と言う方もいるでしょう。
 でも、大切なのは、貴方のPCがシナリオの中でどんな行動を取りたいのか、なのです。
 
 その「脳内のリプレイ結果」こそ、小説風リプレイの醍醐味であり、楽しみ方であるのです。
 同時にゲームでは不可能だった表現も、限定的に可能となるのです。

 私は、そういった楽しみに目覚めることが、長く続けるコツだと思います。

 思い浮かんだストーリーやセリフは、吹き出しの様に書き加えて、貴方なりのリプレイデータを書き出してみて下さい。
 それは世界でただ一つの、貴方だけのリプレイの原石なのです。


 「企画書」と「リプレイ結果」が揃ったなら、それを読み比べてリプレイの下書きを始めます。
 そのやり方は、次回以降で紹介しますね。


 最後にちょっとだけ。
 
 リプレイは、義務でも仕事でも宿題でもありません。
 自分のペースで始められ、書く時の〆切もありません。

 私は掃除は苦手、事務仕事は大嫌いというダメ人間ですが、その私が続けていられます。

 仕事やらスランプやらの障害はありますが、克服出来ます。
 なぜなら、楽しんで出来るからです。

 データ取りも、楽しみのためにやる伏線なんだと思ってやって見て下さい。
 
 苦労が実を結ぶ瞬間を夢見て、ニタニタしながらデータを集めると(一部に気味悪がられますが)気がつけば終わっています。

 
 是非、貴方だけのデータを抜き出して下さいね。
CW:Y2つ風リプレイ講座 | コメント:0 | トラックバック:0 |

『碧海の都アレトゥーザ』 空に焦がれる踊り子

 ラムーナは潮騒の音を聞きながら、砂浜で飛ぶように舞っていた。
 
 師である黒人の女性が、軽く振ってくる枝を、ひらりひらりと避ける。
 唐突に足を払われるが、片足の動きだけで姿勢を速やかに整える。
 
 足元が柔らかな砂地であるのに、その動きには完璧なバランスが具えられ、力強さは硬い地面の上で舞うそれに劣らない。

 これは、一枚歯の下駄で疾走する類と同じ、重心の掌握術である。
 違う部分と言えば、身体の柔軟性と平衡感覚を極限まで高めて、不安定な場所や格好でも体勢を立て直すことができるようになる、というこどだろうか。

 そういった技術を身につけさせるため、師であるアデイは、まず体躯の矯正から始めた。
 
 長い間虐待されて育ったラムーナは、あちこちに骨格の歪みがあり、栄養不足で背も低かった。
 こんな体格では、美しい舞も、激しい踊りも、行うことは出来ない。

 だから、念入りな準備運動を教えた。
 骨を真っ直ぐにするよう、その頭の上に物を乗せ、バランスの悪い塀の上を歩かせて鍛えた。
 呑み込みの早いラムーナは、すぐにそれらを出来るようになった。

 そして最初の闘舞術を学んだ頃、ラムーナの体格矯正に貢献したのが、シグルトだった。
 
 シグルトは自らも重い障害を持っていたが、それを感じさせず、綺麗に動くやり方を知ってた。
 ラムーナの骨格の歪みや、姿勢の悪さに関しても、直し方のアドバイスを与えたのだ。
 骨に好い食べ物から、準備体操の仕方、骨格を伸ばす懸垂の方法まで。

 生徒であるラムーナは、素直で勤勉な性格だった。
 シグルト程厳しく激しくではないが、目に見えない努力を重ねていた。
 
 今回の技を習得するに至っては、完全に体格を直し、綺麗な正中線を維持出来るようになった。

 正中線とは人体の急所が集中する中心であり、平衡感覚に影響を与える芯でもある。
 この部分を真っ直ぐ保つだけで、姿勢がとても奇麗になり、動作に切れが出てくるのだ。
 
 バランスが整えば、力の入り方だってまるで違う。
 華奢なラムーナの様な身体でも、頭蓋骨を粉砕するような蹴りや、自分の頭の位置を飛び越える様な跳躍が可能となる。
 
 レベッカが、ラムーナが自分の技で故障しないように、打撃部分に使う防具を作ってくれた。
 靴の爪先と踵、アキレス腱には、軽く硬い樫と緩衝材を付けた簡易のプロテクターを。
 肘や膝には、転倒時や敵への打撃時に、衝撃を逃してくれるパッドを。
 これらは戦闘に備えて装備する、軽量で携帯性に優れたものだ。
 
 ラムーナの戦い方は、素早い動きから踏み込んで行う肘や膝、蹴りによる打撃が中心で、剣は主に防御とフェイントに用いる。
 闘舞術と同じ南方大陸の武術には、倣獣術があるが、その動作には似通った部分が多分にあった。
 武器術ではなく体術として発展したので、闘舞術も倣獣術も、本来武器を持て無くても戦える技術を内包している。
 ラムーナの戦い方が、格闘的要素を持っているのは、そのためなのだ。

 そういった攻撃をする上で、より敵に接近する危険性が発生するために、今習っている様な回避術の習得は急務であった。

 長い矯正によって、ラムーナは蛹が蝶になるように、劇的な変化をその身に起こし始めていた。

 細かった腕と足は、安定した骨格としなやかな筋肉に包まれれ、スレンダーで綺麗な形に伸びた。
 猫背で歪んでいた腰骨と脊髄は真っ直ぐ延び、頭に十冊本を乗せたまま日常が過ごせるほどに安定している。
 発育不良で貧相だった肉付きは、舞踏に邪魔にならず美しさを損なわないギリギリの範囲で丸みを帯び、爽やかな色気を醸し出していた。

 様々な変化から、ラムーナは10㎝以上背が伸びたような印象を与えるほど、姿勢が綺麗になっていた。
 胸は性を感じさせる程度に膨らみ、年頃の少女らしい魅力を放っている。

 ラムーナは元々、卑屈な笑い方で歪んだ笑顔を作る癖があった。
 暖かい仲間の愛情に包まれ、今は自然に、柔らかく笑える様になっている。

 色気や美しさを武器に出来るレベッカの影響もあって、ちょっとだけ化粧も覚えた。

 陽気で、元から器量が良かったラムーナである。
 努力が実を結んだ時、文字通り彼女は変身した。

 彼女が踊ると、周囲はその存在感と美しさに圧倒される。

 優美さと明朗さの上に、苦労から少しだけ憂いを含む濡れた瞳。
 小麦色の肌は躍動的にしなり、飛び散る汗が陽光を浴びてキラキラと煌いていた。

 ラムーナ自身は、自分がそれほど美しくなったとは思っていない。
 だが、踊る彼女を見る者は、その華麗さに目を奪われる。

 不幸だった少女は、鎖や頸木から解き放たれた。
 空を舞う蝶の様に、遠く、高く舞い踊れるのだ。
 
「…素晴らしいわ。
 
 それが闘舞術の要、【幻惑の蝶】。
 【連捷の蜂】と一緒に使いこなせば、華麗な闘いの舞踏を踊れるでしょう」
 
 師であるアデイの言葉に、ラムーナの瞳が輝く。
 それだけで花が開く様に、周囲の空気が変わる。

 アデイは、この愛らしい弟子の成長を自分のことの様に喜んでいた。
 
「この舞踊は、ぬかるみや砂地でも自在に舞を踊る技。
 
 もし回避の姿勢を奪われても、次の瞬間には即座に体勢を整えることが出来るわ。
 束縛からも抜け出せる、回避術の極みよ。
 
 闘舞術は拘束を嫌う、解放の技。
 その根本は〈自由〉を体現する。
 
 女の子はね、筋骨隆々である必要はないわ。
 タフネスが無くても、敵の攻撃は躱せばいいの。
 
 〝蝶のように舞い、蜂のように刺す〟
 
 優雅で素敵な踊りでしょう?」
 
 ラムーナが嬉しそうに頷く。

 この少女は気が付いているだろうか?
 自分の笑顔が、こんなにも美しいことを。

「私はこの踊りが好き。
 まるであの空の向こうに、飛んでいけそうな気がするの。

 蝶々って、とても儚い虫さんだけど…凄く一生懸命生きているわ。
 私はあんな風に、綺麗で軽やかでいたい。

 そして何時か、本当にあの空を翔べる様な舞踏を踊ってみたい…」

 かつて自由に焦がれた少女は、今はどこまでも続く空の様に成りたいと願っていた。
 そこには彼女が抱く、本当の自由があるように思えるのだ。

 少女は、夕日に染まりつつある果てしない南海の水平線と、求めて止まない空を見上げた。
 その情景は、自由という空に焦がれた、ラムーナの心に燃える情熱の炎の様に…
 
 赤く、紅く、幻想的であった。



 ラムーナのショートエピソードです。
 彼女の成長と、華麗な姿が表現出来たでしょうか。
 
 今回習得した【幻惑の蝶】は、高い回避効果を発揮するスキルで、面白い性質を備えています。
 
 闘舞術の基礎である【連捷の蜂】とは、最終的なコンボを目的としたものですが、それを可能にするには達人級の実力(頑張って7レベルを目指しましょう)が必要です。
 
 このスキルは、召喚獣そのものが持つ回避力+2と、召喚獣発動による+5の回避効果によって、驚異的な回避力を得ることが出来ます。
 使い方次第では+3の回避召喚獣を付与する【練軽気】よりも、攻撃を躱しやすくなるのです。
 
 敵の攻撃と召喚獣発動による二重の効果で、召喚獣の消費が激しいですが…
 消耗の激しさも重要なポイントになっています。
 使いきって時間を稼ぎ、その間にスキルを整えて、召喚獣と交代で攻撃に転じ反撃する、戦いの流れを掌握する力があるのです。
 このスキルは、呪縛を解除する効果もあるので、呪縛攻撃にも対抗手段として使うことが出来ます。

 さらに、召喚獣が発動することで、常に回避効果が掛け直されるため、何らかの攻撃で回避を低下させられても、自分の行動で回避力を高い水準に戻すことができるのです。
 素早いことが前提のPCが使えば、敵に回避低下を食らった次の行動で、敵の反撃を受ける前に回避の立て直しが出来る、というわけです。
 地形に関するイベント戦闘で、毎ラウンド回避力を下げるものがあったとしましょう…
 このスキルは、このペナルティを、自分の行動以降、ラウンド終了まで無しにしてくれるのです。
 むしろボーナス付き。

 また、毎ラウンド召喚獣が発動するので、い「いつか効果切れ」します。
 召喚獣は残ってると次が準備できないので、自動的に消滅することは、先述の見通しに大きく関わってきます。ただの回避力召喚獣は「攻撃されて消えるまで」の効果時間ですから、何時切れるか予測できないんですね。
 その点、こっちは「少なくともこの辺りまでに終わる」と言う予測が出来ます。
 
 あと、連続攻撃を受けて召喚獣の方が全て消えてしまったとしても、次のラウンドまで付与されたもう一つの回避効果が残るので、回避力は即座に低下しません。 
 蝶に攻撃してもひらひらと手応えが無いように、避けまくってくれます。

 まさに玄人好みの防御スキルです。扱いにテクニックと勘も要しますので奥も深いですし。
 
 このスキルは、攻撃スキルを用意するまでの繋ぎとして、生存用に使いこなすのがコツ。
 フィールドで用意していれば、イベントによる攻撃の回避にも使えるので、「反射神経で避けた」様な描写にも繋がります。
 ただ、低レベルのうちは、技能以外の攻撃手段が無いと手持無沙汰になることもあります。
 武器カードなどを持って補うのも良いでしょう。

 私は効果も好きですが、なによりビジュアルが気に入ってて持たせます。
 ひらひら~は、軽戦士のスタンダードですからね。
 高レベルに達したら、是非「蝶の様に舞い、蜂の様に刺す」をお試し下さい。

 邪魔っけなスキルだと思って止めちゃうのも考えものです…このスキルの上位スキル、交換スタイルのクロスで、いつか何かで出しますからね!(ものはすでに出来ています)

 
 今回の買い物は以下の通り。

 【幻惑の蝶】-1000SP


〈著作情報〉2009年06月23日現在

 『碧海の都アレトゥーザ』はMartさんのシナリオです。現時点でベクターで配布されています。
 シナリオの著作権は、Martさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer1.22です。
  
・Martさんサイト『esotismo.』 (閉鎖)
  
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。
CW:リプレイR | コメント:6 | トラックバック:0 |

『希望の都フォーチュン=ベル』 錬金術の扉

 希望の都フォーチュン=ベル。
 その一角に、ひっそりと小さな工房がある。

 セラヴィという工房の主は年を経た魔女であり、聖北の影響が少ないフォーチュン=ベルで、悠々自適に過ごしていた。
 この魔女は変幻自在の魔力を持ち、時に妙齢の女性に姿を変えて人を化かすこともある。
 しかし、彼女が西方で有数の賢者であり魔法使いであることも確かだった。

 仲間と別れたロマンは、そんなセラヴィを向学心から尋ね、工房の留守を預かる条件でしばらく住まわせてもらうことになった。
 
 彼が訪ねた時、その金色の瞳を見たセラヴィは大変驚き、そして彼を気に入ったかの様だ。
 ロマンが都に住いる間は、ちょくちょく工房に招いていた。
 
 セラヴィの話では、ロマンの持つ相貌が、左右の瞳が違う色の〈金銀妖眼〉よりも珍しい神秘の相であるという。
 先天的に高い魔力を持つ者が、その魔力を体内で昇華しきれず、瞳の色素にその色が溢れているから、らしい。
 何万人に一人と言う天才的な魔力を持ち、同時に見たものを決して忘れない記憶力と、あらゆる真実を見抜く観察力を併せ持つという。

 ロマンは、そんな評価を「ナンセンス」とばかりに笑い飛ばしていた。
 しかし、工房を自由に使わせてもらえる上に、セラヴィの膨大な蔵書を読む機会も与えられたので、甘えることにしたのである。

 自身でもいくつか薬も調合して見せるロマンは、食費などをその技術を使って稼ぎ、埋め合わせて生活している。
 その腕は折り紙つきで、彼の薬があまりによく利くので、貴族が買いに来るほどだ。
 
 ロマンが工房『象牙の杯』にいるようになってから、その客層はがらりと変わっている。
 
 まず、ロマンの目が覚めるような美しさを見に来る若い娘たち。
 そして、彼の賢者としての見識に惹かれて訪ねて来る智者や魔術師。
 その調合の技能を頼ってくる貴族たちである。

 ロマンは材料さえあれば、最高の薬である【エリクサー】も調合出来る。
 彼が得意とする【若返りの秘薬】は同じ値段でも効果が高く、貴族たちの御夫人に大人気だ。
 
 ただ、ロマンが来て一週間ほどで、あまりに工房が繁盛するため、目的の読書が出来ずに彼は不満顔だった。
 
 今日も、難しいとされる【智慧の果実】を合成して、貴族の夫人に渡していた。

「…はいどうぞ。
 教会勢力が〈堕落の木の実〉といって嫌う物だから、あまり聖北教圏で見せたり自慢しないで下さいね。
 
 お代は何時もの様に、為替でセラヴィ師に渡して下さい。
 では、僕は用事があるので…」

 用件を済ますと、味もそっ気も無く待合室にいる次の客を呼ぶ。

(まったく…。
 気軽に本が読めるっていうから引き受けたのに、これじゃ雑用じゃないか!

 シグルトが修行から戻ったら、僕も一緒に移動しよう。
 錬金術関係はほとんど読ませてもらったし、ね。

 でも、【賢者の石】を作る方法は流石に分からないね。
 【エリクサー】を生み出し、鉛や銅を黄金に変える石なんて眉唾っぽいけど、錬金術最大の目的であるそれが存在するなら、僕も見てみたい。
 それがあるとしたら、物理法則をひっくり返すからね。

 今の僕では、黄金の化合物や鉱石から金を抽出するのが精いっぱいだからなぁ…
 
 ま、元々純粋な黄金は、出来る化合物の絶対数が少ないし、あんまり意味無いよね。
 化合物を戻すのも容易だし、うん、行為そのものがちょっと無駄かな。
 そこまでして化合物作って戻すのって、お金かかるだけの道楽にしかならないし。

 昔の、詐欺師もどきの錬金術師やったように、金が入ってるように見えない合金から金を取り出して、〝賢者の石の精製〟に成功した~とか。
 この手の技術は知的探求心と好奇心の満足を除けば、まず人を騙すぐらいしか使い道が無いよ)

 半ば魔術的な要素を含む錬金術。

 しかしロマンは、魔術的な分野よりも科学的な術理を重んじていた。
 何でも神秘性に頼るのは、分からない部分が多過ぎて気持ち悪いのだ。

 魔術や秘蹟がまかり通る今の世の中において、ロマンは魔術の徒であるよりあくまで知識の担い手であろうとする、変わり者だった。
 
 天才と謳われながら、実際には努力勤勉をとても大切にする秀才肌であり、祈るよりも求め磨くことが美徳だと信じている。
 だから、信仰や宗教の必要性は認めても、自身の考えや生き方を拘束するそれらに依存するつもりはまるで無い。
 
 人は禁断の果実を食べて知恵と羞恥心を覚え、堕落して嘘を吐き、楽園を追放されたという。
 だが、神の箱庭に押し込められていた人間は、果たしてその生に何の意味があったのか。

 親への反逆は、独立への一歩である。
 ロマンには、それを愚かだとする神学者の考えは分からない。

 本来親は、子の独立を願うものだ。
 それが、自分の支配から外れるとしても、子供の成長を願わない親がいるだろうか?
 そうやって子は身を切りながら、新しい世界を切り開いていくのだから。
 
 だから思うのだ…〈神はわざと人に独立するきっかけを与えたのだはないか〉、と。
 そして、親に反逆する歪み…世界に挑戦する力こそが〈魔〉であり〈魔法〉なのだ、と。

(あ~あ、これじゃどっかの異端神学者だね。
 まあ、見えない部分を論議するのは、連中に任せておけばいいや。

 僕が欲しいのは、理路整然とした真実と事実だけだ)

 詰まらなそうに鼻を鳴らし、ロマンは残った仕事に没頭し始めた。 



 ロマンのショートストーリーです。
 旧版にはなかったエピソードですが、こんな事を考えながらフォーチュン=ベルで「練って」ました。

 ロマンは、名前に似合わず現実主義者です。
 信仰心など欠片もありません。

 彼の考え方は「信仰?もってても構わないけど、押し付けないでね」です。
 
 私は宗教関係の仕事やってるので、いつも思うのですが、自身の信がないものは信仰ではありません。依存しちゃ信仰じゃないと思うのです。
 声を大にして「強制してはいけないよ」と言いたい所ですが、信教は自由なので、この話はこの辺で。(ゲームの中の話です。現実の宗教云々の話は、論外、ということで)

 今回ロマンは、ガラクタ同然に道具袋に入ってた薬類を練っていいものに変えました。
 以下が結果です。

・ 【聖別の葡萄酒+】=消費【葡萄酒】×1 解毒剤×1
・ 【知恵の果実+】=消費【解毒剤】×1 【魔法薬】×1
・ 【若返りの秘薬+】= 消費【聖別の葡萄酒】×1 【魔法薬】×1
・ 【治癒の軟膏+】×2=消費【傷薬】×4

 全部高品質ですが、実はそうなると使用するには便利でも、練れなくなるという欠点があります。
 後にさらに錬るなら、わざと材料用に低品質を合成するのが大切です。
 傷薬が余っていたら、【治癒の軟膏+】に変えておくと、使い勝手がいいですよ。

 売るとそこそこの値段なので、換金法としても使えます。
 今回は資金に余裕があるので、売らずに実用本位で作成してみました。
 道具袋の整頓もできるので、是非試してみて下さいね。

 私思うのですが、【若返りの秘薬】(+無含めて)、本当に貴族の御夫人が買い漁りそうですよね。
 シナリオに使えそうなネタです。
 某シナリオのジ・レ侯爵夫人のように、若くて美しい御夫人には必要ないのでしょうが。


 金の化合物に関する矛盾を指摘されてしまいました。
 直してはおきましたが、これで矛盾は少し解決したでしょうかね。
 
 黄金って、自然物の中で特に化合し難かったの忘れてました。
 
 ただ、金の合金は多いみたいです。
 どっかの小説で、金を混ぜた金属から黄金を取り出して詐欺をやった錬金術師の話があったような。
 ちょっと技術がいりますが、詐欺師にとっては量ではなく「黄金が生まれたような」印象をパトロンに与えることが重要だったので、今度は矛盾が無いはず…

 私も物書きとして精進が足りませんねぇ。 


 〈著作情報〉2009年06月22日現在

 『希望の都フォーチュン=ベル』はDjinnさんのシナリオです。現時点Djinnさんのサイトで配布されています。 
 シナリオの著作権は、Djinnさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer 1.06です。
  
・Djinnさんサイト『水底のオアシス』 (○ttp://djinn.xrea.jp)←○をhに。  
  
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。
CW:リプレイR | コメント:7 | トラックバック:0 |

『碧海の都アレトゥーザ』 鼠たちの囁き

 路地裏を歩く女がいる。
 
 最近新調した服は、革を使ったもので身体のラインをしっかりと強調していた。
 胸元も大胆に開いており、扇情的な色香に溢れている。
 
 だらけた面倒臭そうな表情。
 だらしのない緩んだ口元。
 
 怠惰な雰囲気が、見ているだけで感じ取れる。
 
 だが足音は全くしない。
 滑るように、羽根でも生えているかのように、ふわふわした歩み。
 
 まるで彼女の周囲だけ、音が消えているような違和感。
 
 緊張感を見せずにこんなことが出来るのは、熟練の盗賊だけである。
 
 
 女…レベッカは路地裏のすえた臭いをよく知っている。
 
(…昔は私もこんな路地裏にいた、ただの〈鼠〉だったわね)
 
 立ち止まったレベッカは、路地の隙間から見える本通りを眺めた。
 一台の馬車が駆け抜けていく。
 
 レベッカはそれを見てかすかに眉をひそめた。
 彼女にとって一番最初の記憶は馬車だったからだ。
 
 
 男が倒れている。
 女が倒れている。
 
 男は紫色になった舌をベロリと口からはみ出させ、血の泡を吹いている。
 女は綺麗な顔半分と血に染まった部分で、紅い縞模様だ。
 
 少女はじっと2人を見つめている。
 
 雨が降っていた。
 
 男の上に横転した馬車が乗っている。
 女の頭は半分が異様にへこんでいる。
 
 少女の顔に、ぬるりとした何かが張り付いていた。
 人間の脳漿だ。
 
 倒れている2人は少女の両親だった。
 
 たぶん、父親は優しくて頭を撫でてくれたと思う。
 たぶん、母親は美人でよく笑う人だったと思う。
 
 でもそこにあったのは2人分の死体と天涯孤独になった少女だけ。 
 冷たい雨が、少女の顔についた母親の部品を洗い流してくれた。
 
 後で知ったのは乗った馬車が横転して夫婦が死に、1人の年端もいかない少女が後に残されたという、おせっかいな婦人が同情して泣きそうな、ありふれた話。
 
 数日後、遺産を親戚に搾り取られた少女は、下町の孤児院に預けられた。
 
 
 そこは地獄だった。
 
 鞭を持った神経質そうな男と、でっぷりと太ったにわかシスターがいた。
 
 孤児院の子供たちは飢えてぎらぎらしていた。
 食べ物を巡って争う子供たち。
 喧嘩して食器を使って殴りあい、何人か死んだ。
 
 喧嘩の首謀者は神経質そうな男に、鞭で散々ぶたれて泣いていた。
 
 愚かな奴ら…私ならもっと確実にしっかり食べられる、と少女は思った。
 
 太ったシスターが大喰らいなのは知っていた。
 その食べ物をちょろまかすだけ。

 年下の、身体が大きな子供が一人、レベッカを姉のように慕ってくれた。
 少女は兄弟がいなかったので、その子供にだけは目を掛けてあげた。

 「姉ちゃん、姉ちゃん」と慕われることは、その地獄で唯一、心が温まる瞬間だった。
 
 だからその少年には、狡猾に生きる方法を教えてあげた。
 2人で強力して、悪さをしたこともある。
 
 悪事を知らなければ、出来なければ、そこは生き残るにも困難な場所だった。
 
 時々孤児院の子供たちは数が減った。
 それは一瞬で、すぐに新しい孤児が連れてこられたが。
 
 神経質そうな男と太ったシスターは、子供が減る度に銀貨を数えていた。
 
「あの生意気な餓鬼はどうしたの?」
 
「今頃、変態親父に嬲られてるさ」
 
「あのぼ~っとした娘は?」
 
「今頃、お人形さんみたいに貴族のボンボンの玩具になってるさ」
 
「昨日の綺麗な娘は?」
 
「今頃、怪しい黒服の奴らに生贄にされているさ」
 
 そうして神経質そうな男と太ったシスターは、儲かった、とほくそ笑んでいる。
 
 少女は顔に泥を塗って、馬鹿な振りをして、来客がある時姿をくらましていれば大丈夫だと知っていた。
 弟分には、同じように逃げる方法を教えてあげた。
 
 足を折った乞食の爺さんにパンをあげたら教えてくれた方法だった。
 
 この馬鹿どもは売れないと、神経質そうな男と太ったシスターは嘆いたが、少女にはこんな阿呆どもに得をさせるつもりはなかった。
 
 2人が酔っ払ったり出かけた隙に、銀貨をちょろまかして貯めてある。
 気付かれないよう、少しずつだ。
 もう少しで千枚になる。
 少女はお金を使えばいろんなことが出来ると、大人たちを盗み見て知っていた。
 
 そうしたらこんな地獄、とっととおさらばする気だった。
 出来れば弟分を連れて、だ。
 1人より2人の方がきっと生きて行くのにも楽しいと、信じていた。
 
 そして、銀貨が九百九十九枚貯まった時、孤児院が火事になった。
 
 目の前で、太ったシスターが喉を絞められて殺されていた。
 
 神経質そうな男と、頭を布で巻いている男が戦っていた。
 
 神経質そうな男は、脇腹から血を流している。
 頭を布で巻いている男は、片腕が無くて血を流している。
 
 さっき、神経質そうな男が子供を盾にして、不意を突かれて、頭を布で巻いている男は神経質そうな男に剣で腕を切られた。
 頭を布で巻いている男は、きっとお人好しだろう。

 盾にされたのは、あの弟分だった。
 逃げてくれた様で、少しほっとした。
 
 少女はわざと、神経質そうな男が自分をまた盾にするように、怯えた振りをして近づいて行く。
 案の定、神経質そうな男が少女を抱き上げて剣を突きつけた。
 少女は神経質そうな男の首に抱きついて、その首の後ろの少し上に錆びた長い釘を思いっきり突き刺した。
 
 神経質そうな男が、前に生意気な子供を殺した方法をその通りやっただけ。
 
 神経質そうな男は倒れ、びくびくと痙攣していた。
 この時少女は初めて人を殺したのである。
  
 少女は頭を布で巻いている男に近づくと、お礼に私を助けなさい、と言った。

 男はびっくりしたように眼を見張り、そして次の瞬間楽しそうに笑い出した。
 
 後で名乗り合う。
 少女はレベッカ、頭を布で巻いている男はユベールという名前だった。
 
 
「…昔を思い出すほど、年を食ったのかしらねぇ」
 
 レベッカは「ぼやくのがすでに拙いわねぇ」と思いながらまた歩き出した。
 
 前に、この都市の知り合いに聞いておいた目印を探す。
 
 見るとその盗賊は、また立ち番をしていた。
 
「精が出るわね、鎧の置物みたいにさ」
 
 レベッカが声をかけると盗賊は肩をすくめる。
 
「仕方ないさ。

 それに、鹿みたいに角突きするよか、遥かに楽だぜ…」
 
 盗賊…ファビオは、相棒に合図するとレベッカを連れて歩いて行く。
 
 行き先は前とは違う。
 そこは廃教会だった。
 
「あらま…
 
 最近は随分と信心深いわね~」
 
 ファビオは言うな、と肩をすくめた。
 
「前の巣は、ロネって〈蝿〉が馬鹿やってばれた。
 
 〈蝿〉は残飯か糞に群がってればいいのによ」
 
 〈蝿〉とはちんぴらの隠語だ。
 
「〈蝿〉っていや、最近気障な〈羊飼い〉の小僧が〈蝿〉と〈ハイエナ〉を飼い始めて、お前んとこの〈虎〉のことを嗅ぎまわってるぜ。
 
 『蒼の洞窟』の可愛らしい〈お魚〉を食っちまおうって腹みたいだがな。
 
 ま、今回のはサービスしとくぜ、レベッカ」
 
 〈羊飼い〉は聖職者、特に聖北教会や聖海教会などの僧職を意味する。
 〈ハイエナ〉は傭兵やならず者のことだ。
 〈虎〉は戦士でも腕の立つものに使う。
 
 〈お魚〉というのは、ファビオが作った急ごしらえの造語だろう。
 
 抽象的だったり、幅広い意味の言葉を飾って言う時は仕掛けがある。
 水に関係ある言葉、可愛らしい〈お魚〉、つまりはシグルトがよく会いに行く件の精霊術師だろう。
 
「ちんぴらっていや、最近気障な僧職の小僧がちんぴらと傭兵を雇って、お前んとこの戦士(シグルト)のことを嗅ぎまわってるぜ。
 
 『蒼の洞窟』の可愛らしい精霊術師をやっちまおうってことが、目的みたいだ」
 
 ファビオがレベッカに伝えた言葉の意味は、この様なものである。
 
「ありがとう、ファビオ。
 
 お礼と言っちゃなんだけど…
 最近あんたんとこ、随分〈鮫〉に食い荒らされてるわよね?
 
 他の海で馬鹿な〈雑魚〉どもが、次にロアンの港で食事をするって息巻いてたわ。
 たぶんあと二、三日後みたい。
 
 どう、あんたの腹の足しにはなりそう?」
 
 レベッカの言葉にファビオが目を丸くし、続いてニヤリと笑う。
 
「ありがてぇ…
 
 今度一杯奢るぜ、レベッカ。
 ボスが探してたネタなんだ」
 
 貸し借り無しでいいわよ、とレベッカがファビオの肩を叩く。
 
「最近なんか〈鮫〉によく関わってね~
 
 フォーチュン=ベルでも〈鮫〉釣りするはめになったわ。
 あんたんとこのよりは、綺麗な海の連中みたいだったけどね」
 
 〈鮫〉は海賊を意味する隠語である。
 
 隠語と関係ある言葉で、会話をまとめるのがスマートなやり方だ。
 
 レベッカはロアンという港を二、三日後に海賊が襲おうとしていることをファビオに伝え、最近フォーチュン=ベルでやった海賊退治のことを話題にしたのだ。
 ちなみに「あんたんとこのより綺麗な海の連中」とは、「あんたのところの海賊よりは道理をわきまえていた」という意味だ。
 
 最近アレトゥーザ近郊を悩ます海賊の非道ぶり、は有名だった。
 
「まったくだぜ…
 
 最近ボスの機嫌が悪くてよ。
 〈鮫〉の中にすごい獰猛な奴がいるみたいで、陸まで上がって来て喰いやがる」
 
 陸に勢力を伸ばした海賊に悩まされていることを、ファビオはぼやいていた。
 
「ま、がんばんなさいな。
 
 応援ぐらいはしてあげるわよ?」
 
 そういうレベッカに、ファビオは、それじゃ腹はふくれねぇんだよ、と毒づいた。
 
「おっと、いけねぇ…お仕事、お仕事、っと。
 
 今日はどんな用事だレベッカ?」
 
 回り道をして本題に入る。
 盗賊にとっては何時ものことだ。
 
「あんたんとこ、〈鼠〉に芸を仕込んでくれるんでしょ?
 
 昔の勘を取り戻したくなってさ…
 
 昔、得意だったちょっとした小技と〈蛇〉の芸を鍛えたいのよ。
 〈大蛇〉が踊るような凄い奴、ね。
 
 しばらく厄介になりたいんだけど、いいかしら?」
 
 ファビオが目を丸くする。
 
「〈蛇〉の芸って、お前…」
 
 言い難そうにするファビオにレベッカは、いいのよ、と言って続けた。
 
「確かに私は〈蛇〉の芸は嫌いよ。
 
 でもあんた、知ってたわよね?
 私が〈雌蟷螂(めすかまきり)〉に仕込まれてたこと」
 
 〈雌蟷螂〉という言葉に、ファビオが心底嫌そうに眉をひそめた。
 
「…ああ。
 
 そんなことがあったって聞いた時は、お前に相応しくねぇ仕事をやらせた、事に関わった連中を全員絞めたくなったぜ。
 …ユベールの親父や、お前の腕に対する侮辱でしかねぇ」
 
 お前みたいな最高の鼠をよ、とファビオはむっつりと黙り込んだ。
 
「別にいいのよ。 
 ファビオは私が過去に何やってたって、蔑んだ目では見ないからね。
 
 〈雌蟷螂〉の仕事は一番やりがいの無い仕事だったからねぇ。
 
 上で尻振ってる雄をさっくり殺しちゃえばいいんだけど、汗臭いしさぁ…」
 
 さらに嫌そうな顔をするファビオに、ごめんごめんと謝りつつ、レベッカが頭を掻く。
 
 〈雌蟷螂〉というのは、性行為の最中に男を殺す暗殺者のことである。

 蟷螂の雌は交尾のあとに雄を食べてしまうことから、こう呼ばれている。
 暗殺のやり方の中でも、最も汚れた方法として忌み嫌われていた。
 
 〈蛇〉は暗殺者や刺客を意味し、例えば〈毒蛇〉が毒薬を使う暗殺者、〈大蛇〉が絞殺を専門とする暗殺者のことだ。
 執念深く獲物を狙う様からこう言われている。
 
 レベッカは本来穏健派の盗賊で、得意分野は盗みだったが、今までに殺した人間もたくさんいる。
 
「私が最初に獲物を食ったのは8つの時よ。
 
 ま、今更綺麗な娘っ子ぶる気は無いけどね。
 
 今まで必要無いからその芸から離れてただけよ。
 これからは〈蛇〉に戻ることがあってもいいと思ってる。
 
 綺麗な奴が汚れるより、アタシみたいなのが代わってやった方がいいでしょ。
 効率もいいし、さ」
 
 遠い目をして、優しげな笑みを浮かべるレベッカ。
 
「〈猫〉で頭張ってた頃と同じ目をするんだな…」
 
 ファビオは懐かしそうに呟いた。
 
 リューンでファビオを助けた時も、この女盗賊は仲間や後輩たちをとても大切にしていた。
 
「残忍なくせに、身内には甘いんだよな、お前」
 
 ファビオの苦笑に、悪い?と返すレベッカ。
 
「いいや。
 
 俺はそういうところ、嫌いじゃないぜ。
 お前の男になるのは勘弁してほしいけどな」
 
 失礼ね~、とファビオの脇腹に拳を入れてくるレベッカをなだめながら、ファビオは地下にある訓練場にレベッカを連れて行った。
 
 
 レベッカは近くに置いた鉢の中に入った銀貨を、少し離れた場所にある籠に投げ入れていた。
 ひたすらそれを繰り返している。
 
 だがよく見れば、レベッカが投げる度に、銀貨を挟むその指が変わっていることに気がつくだろう。
 
 親指と人差し指、親指と中指、親指と薬指、親指と小指、人差し指と中指、人差し指と薬指、人差し指と小指、中指と薬指、中指と小指、薬指と小指で1セット。
 
 今度は格好を変えながら行っていく。
 時には座って、時には片手で壁に寄りかかって、時には食事をしながら、時にはワインを瓶ままラッパ飲みしながら。
 
 朝からそれだけを行っている。
 
 銀貨はすべて籠に入っていた。
 
「…やってるな」
 
 ファビオが若い男を連れて訓練場に入ってくる。
 野暮用があるからと留守をしていたようだ。
 
「まったく、生徒をほったらかしてどこ行ってたの…
 
 ファビオって女に興味がなさそうって思ってたけど、そこのはあんたの新しい恋人かしら?」
 
 馬鹿言え、俺は男色の気はねぇぜ、と口を尖らすファビオ。
 
 側にいた軽そうな男は、レベッカの投擲を見ていたが、「上手ぇな」と呟いた。
 
「…その若いのは何よ?」
 
 レベッカはまた銀貨を投げる。
 
「憶えてないのか?
 
 まあ、お前が…」
 
 ファビオが言おうとした言葉を制して、レベッカは薄っすらと笑う。
 
「分かるわよ。
 
 “風を駆る者達”のユーグ、でしょ?」
 
 そして、後ろの男にウインクをしてみせる。
 
「…いい腕だ。
 
 〈盗賊の腕一本は命の半分〉ってわけだ」
 
 ユーグと呼ばれた男はニヤリと笑う。
 それはレベッカとユーグにとって、特別な意味を持つ言葉だった。
 
 レベッカが最後の銀貨を放り投げる。
 それが綺麗に籠に入った。
 
「ひゅぅっ♪
 
 百発百中か?」
 
 ユーグが言うとレベッカは左右に首を振った。
 
「百枚中三枚が裏になっちゃったわ。
 
 まだまだよねぇ…」
 
 ファビオが籠を見て唸る。
 
 籠の中で綺麗に重なっている銀貨の中に、裏向きに伏せられたものが確かに三枚あった。
 こんな結果を出せる者は、盗賊ギルドでも数人しかいない。
 
「ファビオが惚れ込むわけだな…
 
 確かに噂通りだ」
 
 レベッカはしばらくユーグを見ていたが、なるほどねぇと頷く。
 
「…思い出したわ。
 
 ファビオが連れて来たのは、そっちでかぁ」
 
 レベッカはふう、と息を吐くとユーグに椅子を勧める。
 
 近くのテーブルの上にあったワインの栓を、ナイフで器用に抜くと、グラスに注いでユーグの前に置く。
 
「…お父ちゃんの葬式以来ね、ユーグ坊や。
 
 今まで思い出せなかったのは、それだけなまってたって証拠だわ」
 
 記憶術は、重要な盗賊の能力である。
 自嘲的な笑みを浮かべ、レベッカはくいっとワインを一口呷ると、目を細めてグラスを回し弄び始める。
 
「親父が泣くぜ、レベッカさんよ。
 
 俺より目をかけられてた、あんたがそれじゃあな…」
 
 ユーグもワインを呷り、この季節なら冷えたエールの方が美味いな、と言う。
 
 2人は、初めて会った日を思い出していた。
 
 
 過去、ユベールという盗賊がいた。
 
 盗賊の中の盗賊と讃えられた人物で、リューンの盗賊ギルドで幹部をしていた男だ。
 
 しかし彼は組織の島で悪さをしていた男を粛清しようとして失敗し、その時に盗賊の商売道具とも言うべき利き腕を失ってしまう。
 ユベールの配下は不幸を嘆き、彼のライバルはお祭りのように喜んだ。
 
 だがユベールは、気落ちした風でもなかった。
 ギルドから去っていく彼の傍らには、8歳ぐらいの小汚い女の子がついていた。
 彼曰く、命の恩人だ、とのことだった。
 
 ユベールは何を思ったのか、家族と離れてその女の子を引き取ると、リューン郊外の小さな家に引っ越した。
 
 誰もが腕を失っておかしくなったんだと言ったが、一月後に様子を見に行ったギルドの盗賊は目を見張った。
 
 現れた愛らしい容貌の少女が、お茶を入れてくれたのだ。
 
 ユベールはその時、その盗賊にこう言ったという。
 
「俺は半分死人さ。
 
 あの時受けた毒のせいでそんなに生きられんし、周りには醜態を晒しているようにしか見えないかもしれん。
 
 だが俺はこのレベッカっていう宝石の原石を手に入れたのさ。
 今の俺には後継者を残すことしか出来ないが、全てを譲れる最高の逸材を見つけられた。
 
 腕一本と数年の命でも、このお宝に換えたと思えば安いかもしれんな…」
 
 それから2年後に、ユベールは静かに息を引き取った。
 看取ったのはその少女である。
 
 葬儀の席で、泣きもせず葬儀に参列していた黒い喪服の少女。
 
 そしてその少女をじっと見ている少年がいた。
 ユベールの忘れ形見ユーグである。
 
 周囲の盗賊仲間はその少女を見て、陰口を囁いた。
 ユベールに育てられた盗賊たちなどは、泣きもしないレベッカに「恩知らず」と口汚く罵った。
 
 だが、ユーグはその時に薄ら寒い笑みを浮かべて盗賊たちに言い返したレベッカをはっきりと憶えている。
 
「あんたたちは三流ね。
 
 お父ちゃんはいつでも冷静沈着にっ、て言わなかった?
 こんなところで私が泣き喚いたら、お父ちゃんが化けて出るわよ。
 
 私は笑って送ってあげたわ。
 それが私の手向け方よ…」
 
 侮辱されて怒り、叩こうとした大人の盗賊を足を引っ掛けて見事に転倒させると、レベッカはユーグの元に来てその頬を両手で優しく包んだ。
 
「…お父ちゃんはあんたに、盗賊にはなってほしくないってさ。
 
 でもお父ちゃんの子供だもんね、分からないよね。
 あんたの人生はあんたで決めるんだよ、ユーグ坊や」
 
 ユーグの周りのものはレベッカが父親を奪ったのだと教えて来た。
 だが、ユーグはこの日レベッカに言われたことを忘れなかった。
 そしてレベッカを憎む気は起こらなかった。
 
 
 レベッカがユベールを葬った後のこと。
 
 元々ユベール最後の弟子という肩書きしか持っていなかったレベッカは、ギルドの使い走りをしながら、スリをして糊口をしのいでいた。
 
 少し成長して初潮が来ると、その容貌の美しさを見込んだ暗殺部門の幹部が、色香で男をたらし込み殺す〈雌蟷螂〉としてレベッカを引き取って鍛え、レベッカは暗殺者として数年を過ごす。
 
 その幹部は目的のためには手段を選ばない卑劣な男で、魅力的な容貌の盗賊の弱みを握って、自分の情婦にしたり、〈雌蟷螂〉や〈女郎蜘蛛〉(娼婦の肩書きを持つ暗殺者で、〈雌蟷螂〉が場所を問わないのに対し、娼館や決まったねぐらに誘い込んで暗殺を行う)といった身体を武器にする女の暗殺者を、多数手下に持っていた。
 
 まだ年齢が若く、後ろ盾の無かったレベッカは、それをつけ込まれて〈雌蟷螂〉をやることになったのだ。
 レベッカはその男の下で10人以上殺したが、結局その上司はある日あっけなく首を絞められて殺された。

 実はその上司を殺した男が、レベッカが〈雌蟷螂〉になる代わりに〈女郎蜘蛛〉から足を洗わせたスリ時代の仲間であり、親友の兄の盗賊だったのだが。
 
 問題の多かった上司の死には何も感じなかったが、レベッカは身の振り方を悩んだものである。
 
 レベッカの扱いに困った盗賊ギルドは、最初にやっていたスリの部門にレベッカを送るが、その時、あまりに鮮やかなレベッカの腕と統率力にギルドのメンバーたちは驚嘆した。
 そしてユベールは正しかったと口々に言い、レベッカはあと10年もすれば上級幹部だろうと噂されるようになった。
 十代で下級幹部であるスリの親となり、“猫の女王”という別名でその名を知らしめたことは、多くの盗賊の間で語り草である。
 
 しかし、かつてレベッカの師であるユベールと対立していた老年の幹部が、彼女の台頭を恐れてスリの部門を縮小したのである。
 盗賊同士では、疑心暗鬼でこの手の牽制がよく行われた。
 
 レベッカはそれを期にギルドを抜けて、冒険者になったのである。
 
 レベッカの実力を知る者たちは、彼女の腕を惜しんだ。
 なにしろ二十歳前に、下級幹部に抜擢される程の才媛である。
 
 レベッカ自身は気楽になったと、落ち込んだ様子もなかったのだが。
 そして、それからは自堕落に過ごすようになった。
 
 やがて、また組織の内部が入れ替わり、レベッカの実力を知る者は、彼女を何度も組織に誘ったが面倒だからと引き受けなかった。
 
「組織に属してると、細かい掟やら派閥やらと、しがらみの中で生きなきゃいけないから胃が痛くなるのよねぇ。
 せっかく面倒な手続き無しで、ギルドから出れたんだし。
 
 慕ってくれる若いのがいるのは嬉しいんだけど、看板として担がれて矢面に立たされるのは勘弁願いたいわ」
 
 後年、酒を飲んだ席でレベッカがそうぼやいていたと、ある盗賊は語る。
 
 レベッカ弱みは後ろ盾になるビッグネームがいない、ということだった。
 そういう自分が台頭して面に出れば、真っ先に潰されることをレベッカはよく心得ていた。
 
 だが、スリの時代に面倒を見た後輩や、彼女自体が作ったコネクションはかなりのもので、彼女を慕う者や親しい盗賊も今だ多い。
 
 アレトゥーザのファビオもその1人である。
 
 
「それにしても、あのユーグ坊やが、ねぇ。
 
 今は有名な盗賊だって話じゃない。
 願わくば、敵同士にならないようにって思うわぁ」
 
 レベッカがワインを飲みながら、うんうんと頷いている。
 ほんのりと頬が赤い。
 
「…その坊やっての、やめてくれねぇか?
 
 あんたとだって大して変わらないはずだぜ」
 
 ユーグは気に食わない、という顔でワインを飲み干す。
 
「そうね、そんなガタイで坊やも無いか。
 
 大きくなったもんよねぇ」
 
 そう言って、レベッカは手の上でグラスを弄んでいた。

 完全に格下に扱われているようで、ユーグは不愉快になって来る。
 
 最初からこの女は、ユーグを子供扱いだった。
 盗賊らしく、やり返さねばなるまい。
 
「…ケッ、年くってあんたがババァになったんじゃねぇのか?」
 
 吐く様に一本取ろうとしたユーグは、次の瞬間首に綱を巻かれ吊り上げられていた。
 
「…ッッッ!!!」
 
 その顔の横には、ぞっとする暗い目で自分を見ているレベッカがいた。
 ユーグは素早く綱を短剣で切る。
 
「…女に年の話をするもんじゃないわよぉ」
 
 とろんとした様子で、レベッカはすでに座りワインを飲んでいる。
 先ほどの殺意に満ちた目ではもうない。
 
「…だ、だからって、絞めるか、普通っ!」
 
 酔いが醒めて冷汗を流しつつ、ユーグは悪態をつく。
 
「どうやら、俺が教えなくてもすぐ昔のお前に戻りそうだな…」
 
 ファビオがやれやれと肩をすくめている。

「って、おま、こらファビオ!
 
 涼しげに、殺されそうになった俺を無視すんじゃねぇ!!」
 
 激昂するユーグに、ファビオが切れた綱を指差していった。
 
「よく見ろ。 
 この綱は練習用だ。
 
 本物ならもう喋れねぇし、喉の痕もそんなじゃ、すまねぇぜ?」
 
 アレトゥーザの盗賊ギルドには【絞殺の綱】という暗殺芸が存在する。 
 ユーグも得意とするそれは、敵の背後に回りこんで首を絞め、声を上げることも出来ないままに絞め殺す技である。

 絞殺は古くからある暗殺の技で、絞殺紐(ギャロット)と呼ばれる革の紐を使う。
 実際には、【絞殺の綱】の綱は特殊な鋼糸を仕込んで強度を増し、ユーグが切って抜け出したような防御が出来ないようにしてある。

 加えて、両端に滑らなくするために鮫の皮が編みこまれ、輪を作って絞めると仕込んだ鋼糸がむき出しになり、発声器官を強烈に圧迫して、綱を外しても少しの間声を上げられなくなる。
 そして、技そのものも、乱戦において締め上げた対象を盾にし、身を守るところまで考えた実にえげつない技であった。
 
 絞殺術は大蛇が獲物を絞め殺すのに姿が似ている。
 袋をかぶせて黙らせる方法もあり、これは〈飲込み〉や〈丸飲み〉などとも呼ばれる。
 ゆえに絞殺を得意とする盗賊は〈大蛇〉と呼ばれるのだ。
 
 ユーグは落ちていた綱を摘み上げて、なるほど、と言った。
 
 それは綿で作ったもので、強く締めると普通はすぐ切れてしまう。
 
 首に頑丈な皮と金属の防具を巻いた練習相手が動き回り、それを捕らえて綿の綱を首に巻き絞めて切るのが【絞殺の綱】の訓練法の1つなのである。
 おそらく、ユーグが短剣を使わなくても勝手に切れただろう。
 
「練習用にしちゃ、一瞬身体が浮いたぜ、畜生…」
 
 ユーグが喉を擦りながら言うと、レベッカは艶然と微笑んだ。
 
「お父ちゃんは、それで人を絞め落せたそうよ。
 
 あんたも“錦蛇(パイソン)”ユベールの息子なんだがら、精進しなきゃね」
 
 ユーグの父親は【絞殺の綱】を得意としていたらしい。
 
 絞殺術は窒息させることを目的にしているように見えるが、実際は脳に行く血流を止めて絞め落し、意識を奪ってから窒息させるのが理想的な形だ。
 さらに優れた使い手は、相手を落す前に頚骨をはずすか砕いて殺すことも出来たと言われている。
 
 芸が巧みなら、ユーグも落ちていたかもしれないわけだ。
 
「ユベールの親父が現役だった頃にゃ、綱一本でいろんな技が出来たらしいからな。
 
 だから〈大蛇〉の中でも派手な“錦蛇”なんて呼ばれてたそうだ。
 もっとも、あの親父は『百芸百名』って話だからよ。
 
 その異名もあだ名の1つに過ぎなかったんだろうぜ…」
 
 ファビオがしみじみと言う。
 
 ユーグは面白くも無い顔である。
 
「まぁ、間違ってもガリーナっていう、あんたの意中の可愛い娘に、へまやって呪われないようにねぇ…」
 
 レベッカはワインの栓を手に取ると、素早く銀貨の入った籠に向けて投げる。
 その一擲は迷い込んできた一匹の蝿を打ち落とし、栓は籠の中に落ちた。
 
「…あんた、酔ってないだろ?」
 
 ユーグはこの女に試されたと知って、ぶすっとした顔で言った。
 
「今更気が付いたの?
 
 まだまだ坊やねぇ…」
 
 顔色を操作して自在に表情を作るのも、盗賊の変装術の一つである。
 この女は〈狐〉(詐欺師)にもなれるだろう。
 
 ユーグは、レベッカとの再会を少し後悔した。
 
「…ところで、ユーグ。
 
 あなた、情報を手に入れるとかの理由でたくさん女の子口説いてるみたいねぇ。
 フォーチュン=ベルの『幸福の鐘亭』のママとかさ」
 
 ユーグは、レベッカとの再会を激しく後悔した。
 
「は、ははは、何言ってるんだ、お、俺はガリーナ一筋…」
 
 別の意味での冷汗をかきつつ、ユーグは、レベッカとの再会をとてつもなく後悔していた。
 
「あら、本当に?
 
 じゃ、あんたが仲間からちょろまかしたお金を、賭博ですったとかいう噂もあるんだけどぉ…」
 
 ユーグは目の前の女が悪魔のように思えて来た。
 
「し、しらねぇぞ、俺は。
 
 証拠があるとでも言うのかよ!!!」
 
 横でファビオが、この女の地獄耳は情報屋泣かせだぜぇ、とか言っている。
 
「別に証拠なんて無いわよ。
 
 でも一回、あんたの仲間を連れて賭博場に行ってみない?
 行ってないなら、〈旦那、毎度!〉なんて声はかけられないでしょうから、大丈夫よね?」
 
 ユーグは顔が引きつりつつあった。
 
「再会を祝して、河岸を代えて飲むとしましょうか。
 
 もちろんユーグの、お・ご・り・でっ♪」
 
 硬直しているユーグの肩を、ファビオが軽く叩く。
 
「…うわばみで高い酒が好きだから、財布の中身にゃ気をつけてな」
 
 まったく、怖い女だ、とファビオが肩をすくめると、ユーグは恨めしそうにファビオを眺めつつ、レベッカに襟首を掴まれて引きづられて行くのだった。



 レベッカのソロストーリーです。
 内容的にほとんど変わってないので、旧リプレイを加筆修正しただけのものとなりました。

 時期が夏になり、ピカレスクとのクロスを少々入れた程度でしょうか。
 
 現行でリプレイRはかなり進行速度が速まっています。
 資金的に余裕があるので、技能修得が楽ちんなんです。

 レベッカがかなりパワーアップすることになりました。
 

 ユーグとの再会がなされ、レベッカの過去の一面が分かる内容になっています。
 レベッカは、腕が鈍る前の最盛期には5レベルクラスのベテラン盗賊でした。
 絞殺術は師匠譲りで、得意分野です。

 
 このリプレイでは、盗賊の隠語がたくさん出てきましたよね?
 旧リプレイに加えて、補足していくつか紹介します。


・鼠…盗賊全般を指すが、情報屋と言う意味もある
・虎…戦士や武人、特に腕利きを指す
・烏…かっぱらい、特にストリートチルドレンの類
・猫…スリ
・蛇…暗殺者のことで、執念深いことが理由…ジャンル別に呼び方が違う
・鮫…海賊
・蟻…騎士や兵士、軍隊を表し、蟻塚は砦や城を意味する。大軍を意味する場合も
・犬…密偵のことで、組織に属した仇を意味する場合もある
・狐…詐欺師 、山師のこと
・狸…商人、金貸しといった腹黒い連中
・豹…軽戦士(俊敏な戦い方をする戦士)
・梟…見張りや監視役
・鸚鵡…魔法使い(呪文を唱える者たち全般)
・狼…野盗、山賊
・小鳥…獲物や弱者を意味する
・羊…聖北教会を主とした信者のこと
・羊飼い…聖北等の教会聖職者
・牧童…修道士のこと
・ハイエナ…傭兵や食いつめ浪人、山賊の一歩手前
・蝿…ちんぴら、弱者たかってくる腐った連中
・ダニ、蚊、蛭…血を吸う者はヒモや寄生虫じみたろくでなしのこと
・蛆虫…状況が一転した時、倒れた者から搾取する者、嫌悪感を含めた言葉
     反面、そういった者たちが、処理できないことを鎮静させる自浄作用を意味する場合もある
・山羊…場合により淫祀邪教の徒を意味し、羊と対にして使う、牧神パンがルーツ
・獅子…武術肌か恐ろしい権力者のこと
・鯱…海軍、あるいは公認海賊といった、海の危険人物あるいは組織
・耳…情報屋、情報組織
・目…監視、調査
・雌~/女~…女を武器にする者、差別や蔑視の意味合いで使われることも多い

 もちろん使われ方が全く違う場合もあります。
 素人向けの簡易版であり、情報戦ともなれば、暗号を加えてより複雑に表現します。


 レベッカが習得したスキルは以下の通り

 【小細工】-600SP
 【絞殺の綱】-1000SP

 どちらも私がアレトゥーザの製作に関わった時に、データ作成に関わったスキルです。
 特に【絞殺の綱】はかなり便利で汎用性が高いので、お勧め。


〈著作情報〉2009年06月21日現在

 『碧海の都アレトゥーザ』はMartさんのシナリオです。現時点でベクターで配布されています。
 シナリオの著作権は、Martさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer1.22です。
  
・Martさんサイト『esotismo.』 (閉鎖)
  
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。
CW:リプレイR | コメント:4 | トラックバック:0 |

CW:Y2つ風リプレイ講座 第二回

 第二回目は、PC作成の方法についてお話します。

 「え~、分かってるよ!」と言う方…
 私がここで抗議するのは、「人物設定」の仕方の方なので、実際の作成法に関しては「札講座」の方を参考になさって下さいね。

◇まずは名前!
 リプレイ用のPCを作成する時、最も大切なものの一つが「名前」です。
 
 カードワースでは全角7文字で名前を書けます。
 濁点抜きで半角あるいは英数で14文字。

 此処に書き込む名前は、あんまり長いと字数オーバーになってしまうので、大体全角で2~5文字の「よく呼ぶ愛称」にするとよいでしょう。
 呼び合う時に、例えば「アレクサンドロス!」なんて長い名前で毎回呼んでると舌を噛んでしまいます。
 長い名前を持つ場合、愛称で呼ばれるのが普通だと思って下さい。(字数制限というシステムの限界から、そう設定しておいた方が無難です)

 名前に関しては、私のリプレイRのように、「姓を持たないPC」でも問題ありません。

 本来、中世世界で姓を名乗れたのは中流階級以上が多く、姓代わりに「~の息子」とか「~に連なる」とか「~の末裔」とかで名乗ってた場合も多いです。
 北欧のサガに出てくる「~ソン」もこの類だったはずです。
 リプレイ2のオルフは「ラインドの息子」と言う意味で「ラインダー」という姓の様なものを持っていますが、これは姓というよりありがちな名前を区別するために「即興の名乗り上げ」をした感じになります。
 世界は広く、こういう大らかな名乗り方もありなのです。
 ある意味、PCの背景を演出する一味にもなります。

 リプレイRのシグルトに関しては、貴族出身ですが、姓と言う概念が無い国に育ったので、「~領男爵子息」みたいな区別のされ方をしていたという設定です。
 ありふれた性別にするより、文化的な表現になっていることがお分かりになるでしょうか?

 私の場合、出身地を意識した名前にも拘っています。
 
 リプレイRのPCたちに関しては、シグルトは北欧マイナー系(ドイツ系ならジークフリート、原典ではシグルドかシグルズです)で、レベッカは西部出身(英語系)、ロマンはリューン近郊(フランス系)、ラムーナはオリジナル、スキッピオは南海風(イタリア系)となっているわけです。
 リプレイの演出で、発音をわざと間違えてニックネームが生まれるといった表現も、雰囲気をリアルにするので面白いですよ。

 似通った系統(例えば英語系で統一するとか)にすると、各PCの個性を殺しかねません。
 譬えるなら「同じブランドの鞄が並んでいる」ような雰囲気になってしまうのです。

 逆に、フーレイさんの「ある野良魔導士見習いの書斎」の「六珠」の様に、名前の傾向が揃うことでパーティ名のきっかけになる、というのもありですね。

 ヨーロッパ系の名前の決め方は「欧羅巴人名録」(■ttp://www.worldsys.org/europe/)が非常に参考になります。(■はhに)
 聖職者関係でしたら、ミドルネームを洗礼名にして、既存の聖人から貰うのもいいかもしれません。

 名前次第でかなりの表現が出来るわけです。
 
 PCの肉親や同郷出身者に関しても、こういったことを踏まえて統一性を意識して設定すると、リアルに表現が出来ます。

 「名は体を表す」とも申しますが、一番重要な設定であるので、これぐらいは拘ってしまいましょう。

 最初リプレイする時、力んで名前を付けたことで、いくらか進んだ時に違和感を覚える方もいるかもしれません。

 特にオリジナルネーム(~フィ、エル~、ヴァ~、のようなインパクトのある音を使って自作する名前)は、やり過ぎるとメルヘンティックになり過ぎてリアリティに欠ける可能性もあります。
 私の場合に限定して申せば、名前に関しては、編成が入り混じって混沌としてた方がリアルではないかとも思ってます。
 オリジナルネームに、ほどほどにリアルな名前を入れることで、より両方を際立たせるのもテクニック。

 小技として、名前の呼び間違いから生まれる物語もありでしょう。
 例えば当ブログの三周年記念シナリオのコードネーム「さかな」とか。(笑)

 こういった間違いや連想からストーリーを構成していくと、案外文章が厚みを増します。
 通り一辺の表現しか出来ずスランプになった時、こういった小さなことが状況を打開してくれる場合もありますよ。


◇PCの生きる世界と時代考証
 PCをよりくっきりと表現したい時、大きな武器となるのが時代考証です。
 そのPCはどのような時代のどんな環境で、何を食べ、何を好み、何を嫌うのか。
 そういったものをきちっと使うことで、PCたちはよりリアルにリプレイの中に動いてくれるでしょう。

 私の場合、「銃は御法度」、「14世紀の中世的時代を意識」、「じゃがいもとトマトはもっての外」、「泥臭さ、鉄臭さ、埃っぽさ大いに好し」…
 といったことを意識して書いています。
 案外中世っぽくなるもんです。

 こういう背景世界をないがしろにすると、PCたちは通り一辺の背景に溶け込んでしまい、生き生きとしてきません。


◇共感とギャップこそPCを際立たせる!
 まず共感は、リプレイを書く上でとても大切なことです。
 PCの人生や背景に共感をもって下さった読者さんは、そのPCを意識し、好きになったり嫌いになったりします。
 その感情こそが、リプレイを読んでくれる原動力となり、感想をコメントして頂くきっかけになります。

 「うん、あるある」とか「ここはそうだよなぁ」とか。

 読者さんにそう思って頂ける様に、また書く作者そのものがそういった共感を持てるように描くのです。
 自分で共感を覚えない文章は、好きで書き続けるというモチベーションを害します。
 
 描けないと嘆くより、「まずは意識して描こうとしてみる」ことが一番大切です。
 出来る出来ないは別として、「始めてみなければ出来ない」わけですし。
 自分なりに、自身の共感と読者さんの共感を意識して、PCを設定し描いてみて下さい。
 意外な反響があるかもしれませんよ。

 そして、共感と正反対の技法がギャップです。
 「ありえない~」とか「意外だ!」という印象を上手く読者に感じさせること。
 これはキャラクターを立たせるのにとても役立つ方法です。

 ほめ千切っておいて急に失敗させ、強い印象を与えるとか。
 信じられない行動をして、度肝を抜くとか。

 共感もギャップも、PCを「色濃い」人物にする大切なテクニックなのです。
 緩急落差をしっかりつけて、「中途半端」な表現にならないよう気を付けます。
 
 逆に存在感が無くて薄っぺらなPCは、「地味」なキャラクターの表現法として便利です。
 共感もギャップも抱けないようにわざと演出して、そのPCを名脇役にしてしまうのです。

 目立つPC、地味なPC。
 その差分こそが表現に厚みを与えます。


 こういったことを意識してPCの設定を考えてみると、きっとそのPCは水を得た魚の様に自分で動いて、書き手にインスピレーションを与えてくれるでしょう。
 上手くPCを設定し、個性を作ってあげて下さいね。
CW:Y2つ風リプレイ講座 | コメント:4 | トラックバック:0 |

CW:Y2つ風リプレイ講座 第一回

 リプレイ目的で始めた当ブログも3周年。

 最初は友人に合わせるように何となく書き始めたのですが、今では読んで下さる方も増え、「影響を受けてリプレイを始める」と言って下さる方までいらっしゃいます。
 一応、リプレイ部門ではそれなりに知られたブログになったみたいで、いつの間にかcw-portに載ってたりしてます。(リプレイの大先輩銀狐(Ras)さんとか有名どころの上にうちのブログが…50音でもアルファベットでも最後の方だと思うのですが…恐縮)
 
 まぁ、それなりのリプレイ書きになれ慣れて来た、と言うことなのかもしれません。
 なので、役に立つかは分かりませんが、この新しいカテゴリーで私なりにリプレイの書き方やコツをお教えします。
 
 リプレイの書き方で質問等ありましたらお答えしますので、この記事に遠慮なくコメントして下さいね。


◇リプレイ記事を書くのに必要なもの(アドレス情報の「■」は「h」に直して下さいね)
 
 まず最初に用意するのは、何といってもカードワース本体とシナリオです。
 それらは、ベクターやオフィシャルファンサイト(■ttp://www.ask.sakura.ne.jp/)でダウンロードできます。
 カードワースを詳しく知りたい方は、cw-port(■ttp://www27.atwiki.jp/cw-port/pages/1.html)で情報検索してみるのもよろしいでしょう。
 題材がなければリプレイは書けませんので悪しからず。

 そして次に必要なのが発表する場所です。
 私の場合はFC2のブログを使っています。
 
 他にもよいブログはたくさんありますが、Yahoo! JAPANだけはお勧めしません。(始めた当時、最初はYahoo! だったのですが、コメント字数制限があるわ、記事の字数制限があるわ…すぐに解約しました)
 Yahoo! JAPANはこの間の二月初頭にブリーフケースの有料化に踏み切り、多くの方がウェブ上のデータを失ったようです。私の直感的に、このままいけばあまり先行きが思わしくないと思います。
 
 出来れば文字制限が無く、容量もしっかり確保出来、使い方が分かりやすく簡単な、機能の多いブログを扱うプロバイダを探しましょう。
 
 ブログの機能はそれぞれのブログに依りますが、編集画面から文章を書き込めることと、カテゴリー分けさえ覚えれば、後は容易です。

 ブログとは、日記形式の簡易サイトのようなもの。
 
 型が出来ているので、サイトに小説を書きこむより楽ちん。
 リプレイも、記録と言う日記に近い形なので相性が好いのです。

 FC2には小説部門もあるのですが、あっちはページやら字数制限やら面倒なので、私はブログで書き続けています。
 
 無料ブログは宣伝情報が入ったりしますが、そこは広い心で我慢するか、有料にしてカットするとよいでしょう。
 宣伝が少ない形式のブログが、煩わしくなくて良いですよ。
 
 ブログ等の発表の場を用意したら、いよいよカードワースを立ち上げます。


◇まずは主人公作り
 最初にしなければならないことは、主人公であるPCたちを作ることです。
 伏線の多いPCの場合は、計画的に設定して作らないと、後で破綻します。
 初めてこういうことを始める方は、かえって設定にこだわらない方が楽な場合もあります。
 ただ、細かく設定したキャラクターは生き生きとして来るので、無理の無い範囲で設定しておくとよいでしょう。

 設定を公開してしまうと後に引けなくなるので、作者内部での設定程度にしてスタートすると楽かもしれません。
 
 上手くPCが出来ない人は、カードワースそのものをざっとプレイして、遊び方や世界観に慣れておくのも良いでしょう。
 慣れると、個性的なPCを能力調整しつつ作れるようになります。
 
 いきなり分からないシステムに右往左往しながら、格好いいPCを描こうとしても難しいです。
 システムに慣れるため、カードワースを始めたばかりの方は3~5レベルまでPCを育てて、システムに慣れて下さい。
 同時に、その過程でリプレイに使えそうなシナリオを吟味してみるのもいいかもしれません。

 PCの作成が出来たら、そのPC得意な技術に応じて性格や性質を与えるのですが、隠蔽要素が多いカードワースでは、作りたてのPCの実力を推し量るのも一苦労。

 私の場合、「バイナリエディタ」で能力値を見て、どんな適性があるか確認します。

 これはリプレイの方針にもよるので、やらなくても一向に構わないのですが、PCの能力傾向ぐらいは知っておくと好いかもしれません。
 私の描くリプレイの描写は、徹底的にそのPCのデータを知り、その上で肉付けして存在感を強める手法をとっています。
 分かる限りの数値的データからそのPCをイメージすることも、後にPCの行動を描写する時に、大いに役立ちます。

 もちろん、隠蔽要素が多いカードワースのこと。
 「見るのは反則」という主義の方もいるでしょう。
 その場合は、行き当たりばったりプレイもいいと思います。
 
 ただ、キャラクターの設定は薄いものにならざるを得ないので(詳細に何が得意かは分からなくなるので)、それが如実に反映したリプレイになることは覚悟して下さい。

 PCの能力データをバイナリエディタで覗く方法は、当ブログのカテゴリ「CWD(カードワースダッシュ)」の『カードワースダッシュ 続報?』という記事を参考にして見て下さい。少し知識が必要ですので、自分で検索して調べる下準備も必要です。

 
 PCを作成したら、4000SPの所持金をパーティに分配して、初期装備を買います。
 その過程で、PCの紹介記事を検討するとよいでしょう。

 初期スキルやカードワースのシステムで悩んだ場合は、当ブログの「CW:Y2つ流札講座」カテゴリの記事を参考にして頂くと良いかもしれません。一応つたない戦術講座の様なものもあります。

 無理に詳細なキャラクター設定を、いきなり紹介記事で描く必要は、まったくありません。
 ただ登場して「こんな奴が参入」でもいいのです。

 設定は必要ですが、全てを書こうとすれば、後に書くことが無くなってしまいます。
 時に、出し惜しみもよいものです。

 まずは始めること。
 それが第一歩です。
 
 
 リプレイを続ける時、最も大切になるのは「書き続けるモチベーション」や「ノリ」です。
 それが無いと書きかけで飽きてしまい、ブログ閉鎖にもなりかねません。

 私がモチベーションを維持するために最も使う方法は、お気に入りの曲や、そのPCをイメージするテーマソングを聞くことです。

 クールな人物を描く時にはVaLSeさんの「looked-up」とかRiiさんの「geasa」とか素材としてDLしたMIDI聞くのも手ですね。
 切なさや激しさに応じて、そのキャラクターを音楽のイメージでがりがり描くわけです。
 集中力とは正直で、「物語」は無から生み出すより「連想」から生み出す方がしっかりしたイメージが起きるはずです。
 
 どうせPCを描くのでしたら、毛穴の一つ、靴の染みまでイメージして書いてみましょう。
 ひたすらくどく説明しようとするだけで、いつの間にかそのPCの説明に必要な素材はそろっています。
 あとは、適度にくど過ぎるところを削ってまとめれば、紹介記事は書けてしまうのです。

 PC紹介の記事を書く時、他のゲームの攻略本や説明書にあるプロフィールは、書き方の好い手本となります。
 あるいはマンガ雑誌の登場人物紹介なんかですね。
 
 より濃い紹介記事を書くのでしたら、設定テキストを作って、年齢や年代、性格などをまとめておくといいでしょう。
 出身地なんかも好い伏線になります。


 まず最初なのでこの辺りで一旦終えますが、最後にすごく大切なことを書いておきます。

 日記が自己の記録で他人にあまり見せないものであるように、リプレイで最高の読者は、「自分」です。
 読み手が誰か分からず、またコメントを貰えないからと言って諦めないで下さい。
 (実際私のブログの活動が軌道に乗るのは、数か月かかりました)
 書いたという行為、始めたという事実に誇りを持って、自分に讃辞を送ってあげて下さい。
 自身の励ましこそが、自分をすぐに奮い立たせてくれる特効薬です。

 「自己満足」こそ、リプレイの醍醐味であり、必要な図太さです。
 それさえあれば、私の様なずぼら人間ですら3年も続けられるわけですから。

 そして、書いた文章の「つたなさ」まで愛して下さい。
 好きであることは、「最高のモチベーション」です。

 他の方の評価は二の次にして、ノビノビと楽しんで始めましょうね。

 
 では、また次回を生温い期待で待ってて下さい!
CW:Y2つ風リプレイ講座 | コメント:0 | トラックバック:1 |

『古城の老兵』 【影走り】開眼

 数日後、シグルトは一人で辺境の荒野にやって来た。
 腰に武器は無く、護身用に一本の長い杖を携えていた。
 
 愛剣であるアロンダイトは、ブレッゼンに鉱石2つと葡萄酒1瓶で預けて来たのだ。
 再び訪ねる頃には、鍛え直して貰う約束である。

 周囲はもう薄暗くなっていた。
 だが、お目当ての人物は昼間に会えない。

「俺の進むべき剣の道が、見つかるといいがな」

 シグルトはそう言って立ち止まり、廃棄された古城を見上げる。

 遥か昔に攻め落とされたその城は、寒々しい姿を晒したまま、夕闇に佇んでいた。


 シグルトが古城に辿り着いた時、すでに周囲は夜の闇に包まれていた。

 手頃な松明を見つけ火を灯すと、目的の部屋に向かう。 
 そこはかつてこの城の王座があった、謁見の間である。

 焼け焦げたタペストリーが無残に掛かったまま、細工を毟り取られた玉座がポツンとあるだけの広い部屋。
 そこにその老人は静かに立っていた。

「…ほう、この間の若いのか。

 シグルト、だったな。
 この儂に何か用かね?」

 シグルトは頷くと、銀貨の入った袋を老人の足下に投げる。

「貴方に剣を学びに来た。

 伏して請う、剣の使い手よ」

 静かにシグルトは片膝をつき、頭を下げて三度床を拳で叩いた。
 それは、シグルトの故郷での師弟の礼だ。

「ほう、古い礼をよく知っている。

 三形の槍使いのものだな。
 あの槍術は絶えて久しいはずだが。

 儂は槍を教えられぬぞ。
 過去に学んだ技を捨て、それでもお前は剣を取るのか?」

 老人が問う。
 
 シグルトは、持っていた杖を槍に見立て、一振りすると目の前で圧し折った。
 槍使いの自分を捨てる、という意思表示である。

 古来より武術とは、中途半端に習得すれば技術が濁るとされた。
 故に、師弟の間では絶対の上下関係を結んで、忠実に技を学ぶのである。

 ある不器用な弟子は、師が旅立つに際し一芸を学んでそれを極め、誰よりも師に認められたという。
 
〝知るも良し、学ぶも良し。
 されど極めんとすれば、他に染まるなかれ。
 一芸を修めるは、多芸に浮つくより優る。
 
 驕るならば達せず、鍛えずば欠けるが武。

 最強は技にあらず、使う者なり〟

 シグルトの学んだ、かつての師の言葉である。
 
 純粋に一つの技術に没頭してこそ、純粋な技の極みに達する。
 それを鍛え抜いた人が使って、初めて最強に至るのだ、という教えであった。

 シグルトは、槍を捨て剣士として生きることを誓ったのである。
 
 老人は細い眼を見開き、そして深く頷く。

「…よかろう。
 そこまでの決意あるものに、多言は無用。
 
 儂は下らぬチャンバラ遊びはせぬ。
 実戦にこそ答えはあるじゃろう。
 
 今夜から、始めるぞ」

 ギラリと睨んだ老人…グロアに対し、シグルトは師を敬う様に、黙ってもう一度頭を下げる。

 その夜から始まった鍛錬は過酷を極めた。


 二日目の夜。
 
 上半身裸で岩を背負い、シグルトはひたすら膝の屈伸運動をしている。
 月光に反射し、汗が光っていた。
 
 グロアは請われるままに、厳しい指導を行う。
 
(…大したものだな。
 
 儂がこの国の兵士にこの訓練法をさせた時は、今の半分の回数で泣き喚くか岩に敷かれてのびてしまうか、だったが)
 
 無表情のままだが、グロアはシグルトの意志の力に驚嘆していた。
 
(この男には甘えがない。
 
 昨夜の鍛錬の疲労も取れていまいに…)
 
 黙々と屈伸するシグルトの首筋やこめかみに、血管が浮いている。
 足が、腕が小刻みに震え、食いしばった唇が切れて血が滲む。
 夜風に、シグルトの身体から立ち上る蒸気が溶けていく。
 
 だが、シグルトの目は静かな光を湛えていた。
 それは満月の様に清浄で、夜半の闇の様に深淵である。
 
 グロアは、この男のような目をするものを幾人か知っていた。

 歴戦の傭兵、達人と呼ばれた武芸者…
 修羅場と絶望を経験し、そしてどん底から這い上がってきた戦士たちが持つそれは、グロアが何年も戦場を駆けて手に入れたものだ。
 
 岩を持つシグルトの腕。
 
 何時もは手首を守るために巻いている布があるが、邪魔だからと今は外している。
 そこに見えるのは、引き攣れた痛々しい傷痕だ。
 
 肉が抉れ、膿んだのだろう。
 ケロイド状の傷痕は、おそらく縄の痕。
 
「…止めよ。
 
 今夜はここまでだ」
 
 その声にシグルトは慎重に岩を地面に下ろすと、黙って立ち上がった。
 背中は背負っていた岩の凹凸で擦れて、小さな傷が出来ている。
 
 荒い息を吐きがらも、シグルトはへたりこんで休んだりはしない。
 
(ふん…、へばったら喝をいれてやるつもりだったが、この男には不要か)
 
 最初に、グロアは自分が教える訓練の仕方はかなり厳しいものだと告げた。
 シグルトはそれで強くなれるのか一度尋ね、それからは一切質問も口答えもしない。
 
 シグルトの持つものは、諦観という境地である。
 あらゆる現実を受け入れ、そこを進んでいく意志と覚悟。
 
 それは敗北、嘆き、不条理などの辛い経験を味わい、砂を齧るような思いをしてやっと至る。
 
(この若さで、こんな目が出来る奴がおるとはな…)
 
 グロアは、優れた資質とそれを腐らせない勤勉さ、そして鋼鉄のような意志を持っているシグルトを教えるにつけ、錆び付いていた導き手としての好奇心が湧き起こるのを

感じていた。
 そして、わずかに湧き起こる嫉妬の情。
 老いて忘れていたその感情に、滑稽よと厳つい頬を少しだけ緩めた。
 
(惜しむべきは、幼少の時に出逢わなかったことよ。
 
 いや、もしこやつの心が出来る前に出会っておれば、慢心に支配されておったかも知れんな。
 今は我が手に来たせっかくの玉、磨くのみよ…)
 
 老いて鈍っていただろう戦士としての高ぶりを感じ、グロアはシグルトを興味深げに見つめていた。
 
 
 心地よい春の日の光が差し込む、巨木の下。  
 シグルトは吹き抜ける微風を感じながら、柔らかな草の上に腰をおろし、飽きることも無く故郷の街を見下ろしていた。
 
「シグルト…」
 
 横からそっとかけられた声に、思わず頬が緩む。
 
 金色の柔らかな巻き毛が、春の風になびいている。
 北方の民らしい雪花石膏(アラバスター)の様な白い肌。
 形のよい細い眉の下で、少し切れ長のエメラルドのように神秘的な眼差しが、優しげな光をシグルトに届けている。
 紅を注す必要のない薔薇色の唇も、微笑の形に緩んでいた。
 
「ブリュンヒルデ…」
 
 万感の思いを込めて、シグルトはその娘の名前を呼んだ。
 そして、すぐに寂しげな眼差しになる。
 
「これは、夢か。
 
 未練だな…」
 
 いつもの苦笑をしながら、シグルトは娘に手を伸ばし、自分の方に抱き寄せた。
 何度も梳いた甘い髪の匂いも、その華奢な身体の柔らかさも、まだ忘れてはいなかった。
 
「…ええ、夢よシグルト。
 
 だから、目を覚まして」
 
 からかう様に耳元で囁く娘に、シグルトは「ああ」と頷く。
 
「でも、まだ目覚めたくない…」
 
 そっと愛しい女を抱きしめて、シグルトは目を閉じた。
 

 シグルトが目覚めた時、既に朝焼けの光が、崩れた壁の隙間から差し込んでいた。
 
 しっかりと握りしめられていた手をそっと開く。
 そこには、小さな金色の指輪が一つ。

「俺の手は全てを零し、半生を尽くした技もその象徴とともに折り捨てた。

 そのはずなのに、何故君のことを諦められないのだろうな。
 女々しいと分かっているのに、君の声を、そして姿を思い出す。

 君はすでに、他の男のものなのに…」

 美しく優れた力を持つシグルトに、好意的な女性は数多い。
 だが、シグルトはどうしても他の女性に己の愛を捧げることは出来なかった。

 シグルトと別れた恋人が婚約した時、友として歩んだある女騎士は真っ直ぐな愛を告白し、涙を飲んで祝福してくれた。
 シグルトと恋人が破局して傷心のまま国を去ろうとした時、ある姫君は全てを捨てて愛してくれると言ってくれた。

 彼女たちは、傷ついたシグルトが甘えて愛を囁けば、また喜んで愛してくれるのかもしれない。
 だが、シグルトはそれが出来ない。

 男としての矜持もある。
 愛情への誠意もある。

 だが一番の理由は、かつての恋人に対するほどの情熱を抱けないからだ。
 それほどまでに、シグルトはその女性を愛していた。

 シグルトは指輪を乗せた手をじっと見つめる。
 そこには、過去しかない。
 なのに、指輪の描く輪の中に迷い込んだように、想いは延々と断ち切れない。

「…例え未練だと憎まれても構わない。
 俺はまだ君を愛している。

 俺の想いは止まったままだが、それでも前に進むだけだ。
 この矛盾した輪の中でも、俺は君を想う限り幸せだと思う。

 どうか君を夢見ることだけは、許してくれ。 
 君の幸せを祈る、俺の我儘を…」

 再び指輪を握り締め、シグルトはしばし黙祷していた。


 昼間のグロアは何も教えてくれなかった。
 この滅び去った国に転がった骸のために、墓を作るためだ。
 
 だから、シグルトは黙って穴を掘った。
 何かを黙々と続けている間、シグルトの心は救われるのだ。

 城に横たわった骸を葬るのは、師の仕事。
 だから、屍に触れないし、運ぶこともしない。

 ただ「自己鍛錬のために掘っているだけで、穴の後は知らない」と伝えた。
 グロアはそれを聞いて苦笑する。
 何故なら、穴は一つ一つが丁度墓穴ほどであるからだ。

「ならば、穴は儂が使わせてもらおう」

 そして、墓造りは続くのだった。


 夜になれば石を担いだ。
 3日目には重さが2倍。

 血管が弾けるようだ。
 頭痛と疲労を感じ、目の奥が赤く、白く、ぼやけて霞む。

 昼間の穴掘りで磨り潰した手の血豆は、5日目には血を流すことすら忘れて、硬く固まった。

 夜の闇が、染み込むようにシグルトの中に入ってくる。
 夢の恋人に焦がれるように、暗闇はシグルトの絶望と安寧の場所である。
 
 闇を怯えるべきでなく、影はただ追ってくるものだと理解した。
 自身の影は、いつの間にか追い抜けることに気が付いた。
 出来るはずの無いことが、いつの間にか可能だった。
 そうして、すでに影はシグルトの味方だった。

 グロアが的を空に放った。
 そして、シグルトに向かって雨霰と砂利をぶつけ様とする。

 シグルトは疲労困ぱいの中で、ごく自然に影に身を沈める。
 訓練用の木剣は的を粉砕し、砂利はただばらばらと落ちて行く。
 その歩みは、影を振り切る様に速く、影の様に実体が無くなっていた。

「これぞ我が剣術における秘宝【影走り】。
 儂が傭兵時代に編み出し、後にこの国の高弟に伝えた。
 
 完全回避と絶対命中。
 独り、戦いで生きようとする者が、当然の答えとして導くそれを形としたものだ。

 流れは〈影〉という戦闘技法に依った技でもある。
 〈影〉の基本は回避と生存。
 その中でもこの技は、その中核を成すものだ。

 7日でこの剣の真髄を悟り、使いこなすか。
 末恐ろしい男よな…」

 グロアの言う〈影〉の秘奥には、縮地術と呼ばれる類の技がある。 
 初速から即座に最高速に達し、一瞬で相手の間合いを侵略する移動術。

 【影走り】は、そういった移動術で、場の流れを支配する技である。

 全ての攻撃を避け、放つ技は回避不可能という恐るべきものだ。
 使い手は、反射神経と動体視力も極め、場の流れを掌握する必要があった。
 一瞬で全ての攻撃を見切り、確実に一人の死に体を攻撃するのである。

 それを実行に移すには、鍛え抜かれた瞬発力が必要なのだ。
 石担ぎは、その瞬発力の軸となる足を鍛える方法だった。

 全てがなされた時、敵はその攻撃を見切れず、一瞬で間合いを侵食されて刃に倒れる。
 魔法の様にも見えるが、技巧の極みこそが可能とする、攻防一体の神速剣である。
 
「…かつて俺は、同じような縮地術の槍術を一番得意としていた。

 過去と言う影、因縁という柵(しがらみ)は、拭えぬものかも知れないな」

 苦笑したシグルトに、グロアは言う。

「捨てても離れぬ、それが影だ。
 過去も己の影よ、拭うことなど出来はせぬ。

 身も心も、その影と共に走るがいい。
 捨てず、背負って生きるのだ。
 
 理解出来た時、お前の一撃は音よりも速くなるだろう」

 後にシグルトはこの技を磨き続け、さらなる高みに達する。
 “風鎧う刃金”と呼ばれ、交叉法を基本とする攻防一体の剣術を開眼し、剣士としての名を知らしめるのだ。
 
 だがそれは、ずっと先の話である。



 冒険者たちの余暇第一弾、シグルトの剣士としての真の出発を描いたお話です。
 旧リプレイにものを大幅に加筆修正しました。

 この話は、シグルトが『風鎧う刃金の技』で教える多くの剣j技の根底に関わるものです。
 シグルトが販売してるスキルを見て、「ありゃ、これあっちに何か似てる」と感じた方もいるかと思います。実は、シグルトが『古城の老兵』の技を元に至ったスキル、というネタがかなりあるのです。
 私が技能制作の根本に〈複合性〉を強く意識したのは、『古城の老兵』のスキルが元でした。
 
 より完成された技とは、バランスがよくて隙が無い技だろうと考え、様々なスキルを作って来ましたが、【影走り】という技には、基本的で奥義でもある全てが詰まっていたのです。
 私がこのシナリオの作者であるSIGさんを、技能制作の師と慕うのも、この技が出発点だったからかもしれません。
 
 私がこの『古城の老兵』を凄いと思うのは、技能のラインナップの豊富さもあるのですが、革新的だと思ったからです。
 このシナリオが発表された当時、リューンスキルのバランスが重視され、「絶対必中で絶対回避」というスキルは「バランス崩壊」と取られかねないものでした。
 ですが、実際に使用してみると「必中系スキルの重要性」を身にしみて感じたものです。
 バランス云々といいながら、回避力を増した高レベルNPCが出てきたり、絶対敗北をさせるシナリオが沢山あったのに、このスキルはそこで光明となるものだったからです。
 同時に5レベルと言う、冒険者では脂の乗ったレベルを対象としたのはニクイ仕様です。

 技能を作成するとき、あまりに保守的になってしまうと良いアイデアも生まれません。
 
 私は大変なへそ曲がりでして、絶対敗北するシナリオや技能所持を前提とするシナリオはやりたがりません。
 制限ではなく、可能性の追求が面白いものを作ると考えているからです。
 だからこそ、大胆に作ることを気づかせてくれた『古城の老兵』は、私のベストコレクションです。

 もし剣術スキルの手本を学びたいなら、私はあえてリューンスキルではなく、こちらを推します。

 シグルトを作った時、最初のスキルはこのシナリオのものだと決めてたほどです。
 リプレイRではちょっとルートが変わってしまいましたが、やっぱり剣士として原点になるシナリオになりました。
  
 自由度も高く、悪人ルートでグロアを殺害し、剣を強奪することも出来たりします。

 SIGさんのシナリオは、ベクター登録されていて、釣りそこないが無いシナリオとしてユーザーとしては有り難い限り。
 今後もいくつかリプレイしたいと思います。


 今回『古城の老兵』では1400SP払って【影走り】を入手しました。
 
 話題にはほとんど出てきませんでしたが、『魔剣工房』にも立ち寄っています。
 手持ちの金鉱石二つ売って1000SP捻出しつつ、アロンダイトを打ち直して貰ってます。
 おまけで【バロの眼鏡】を入手しました。

 
〈著作情報〉2009年06月18日現在

 『古城の老兵』はSIGさんのシナリオです。現時点でオフィシャルファンサイトのギルドに登録されており、ベクターで配布されています。
 シナリオの著作権は、SIGさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer1.15です。

 『魔剣工房』はDjinnさんのシナリオです。現時点Djinnさんのサイトで配布されています。 
 シナリオの著作権は、Djinnさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer 1.07です。
  
・Djinnさんサイト『水底のオアシス』 (○ttp://djinn.xrea.jp)←○をhに。
  
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。 
CW:リプレイR | コメント:5 | トラックバック:0 |

『希望の都フォーチュン=ベル』 商船護衛

 風を纏う者たちは、海路でフォーチュン=ベルへと向かっていた。 
 彼の都で贔屓にしている『幸福の鐘亭』の名前で、シグルトたちに商船護衛の依頼があったのだ。

 最近西方諸国近海では、海賊による強奪が後を絶たない。
 近年の商業活発化から新しい海路による交易が盛んになった分、海賊たちも自分たちの狩り場を増やし、勢力を伸ばしているのだ。

 仲間たちが心地良さそうに潮風を楽しんでいる中、初めて商船に乗るというシグルトとロマンは、それぞれの理由で緊張気味である。
 
 海の無い北方の丘育ち(内陸出身者のこと)で、リューンへも陸路でやって来たシグルトは、海上を走る船舶に長期間乗ったことが無い。
 船酔いにこそならなかったが、逃げ場のない船の上で、しかも揺れる船の上での護衛という初めての任務に、頭を悩ませている。

「何時もより酷い仏頂面ね。

 貴方らしくないわ、シグルト」

 レベッカが軽く肩を叩くと、シグルトは大きな溜息を吐いた。

「そうも言ってられんさ。

 船という乗物は、兎角襲撃し易いものなんだ。
 海上故助けを求められない上に、逃げ場も無い。

 護衛を預かる以上、対策を考えねばならんが…正直お手上げだ。
 
 こんな危険な乗り物で、大量の物資を送るとは…いくら早いとはいえ理解出来んよ」

 シグルトらしくない不満に、レベッカが苦笑する。

 このリーダーは、今までも愚痴一つ無く的確な戦術を立案し、特に護衛戦では大きな結果を残していたからである。
 例え困難なことであっても、最大の結果を出そうとする男なのだ。

「何がそんなに不満なのよ?

 海の上を風で走ってるから、敵が乗り込んでこない限り平気じゃない」

 レベッカの言葉に、シグルトは楽観的過ぎるとばかりに、首を横に振った。

「乗り込む目的がある海賊は、狙ってやって来るさ。
 マストと言う旗印まであるしな。
 
 それに船というものは、防水のために油や塗料を塗り込んだ木材で出来ている。
 これほど火災に弱い乗り物など他に無いぞ。
 火災が起こったら、この海の真ん中で飛び込むしかない。

 仮に敵が強奪目的の海賊だったとして、燃やされる心配が無いとしよう…
 このバランスの悪い船上では、重い武具はつけられないし、得物を海に落とせば紛失確実だ。

 装備を聞けば、この商船は速度向上による軽量化のため構造も脆く、しかも戦闘用に必要な弩砲の類も無い。
 海戦用の投石機を用意しろとは言わんが、せめて矢窓に弩(いしゆみ)数機は欲しい。

 これを、海上装備もろくに無い俺たち5人だけで護衛しろと言うんだからな。
 
 俺たちは魔法以外に遠距離攻撃手段が無いんだ。
 一方的に敵の矢玉を受けることになるぞ。

 この船は中古船で、前の船を売って購入したものだ。
 武装はあらかた売ってしまったというんだから、呆れてものが言えない。 

 加え、お前やラムーナが乗ってることに対して、風当たりも強いだろう?
 迷信深い船乗りは女の乗務員を乗せることを、ことさら嫌う。
 船員の協力も、あてに出来ない。

 それに俺は、海上戦の経験など皆無だぞ。
 船員にも海戦の経験がまるで無いらしい。
 水夫たちは、海賊のいない入り江の巡航船の出だというし、今回の航海は初めての外海だという。

 こんな急の仕事でなければ、海戦の知識と近海の潮の流れを調べておきたいところだ。

 俺の知っている戦術は、ガレー船用の古典的なもので、しかももっと大規模な武装船同士の戦闘を基準にしたものだからな。
 近代帆船による戦闘など、皆目見当がつかん。
 
 緊張するなと言う方が無理だな。 
 …悪条件極まりと言うことだ。

 この数日海が時化ていないということが、数少ない救いだよ」

 そんな悪条件の中で、初めて乗る船に対し的確に観察して対策を講じようとしているシグルトに、レベッカは頭の下がる思いだった。
 実際、シグルトは船で余っている板を使って簡易の楯を作成している。
 射撃に対して、楯は最も効率の良い防御手段なのだ。

「とにかく火が最も怖い。

 火は風を受けて、上に向かって燃え広がって行くんだ。
 周りが水で囲まれているとはいえ、俺たちが乗っている部分は燃えやすい場所に浮かんでいて、海風という煽りまである。
 
 船のコックに聞いたんだが、火災予防のために、船が動いている時は火を使わないぐらい気をつけているらしい。
 あまりに不用心なので火災予防用の装備を増やすように具申したところ、〝護衛が余計な事を言うな〟と言いだす始末だ。
 
 武装に関しても、俺が作る楯にすら文句をつけるんだからな。
 守って貰う気があるのか、疑問だよ。
 
 こんなずさんな状態で護衛を雇うぐらいなら、中古の砲を一台備える方がよほどましだぞ。
 
 世話になっている『幸福の鐘亭」を通した頼みでなければ、と…愚痴ばかりこぼれるよ。
 
 この船の護衛は、今後受けるべきだはない。
 フォーチュン=ベルに到着したら、知り合いに情報を流しておこう。
 
 少なくとも、責任者があの分からず屋な馬鹿船長の間は、な」

 珍しいシグルトの愚痴である。
 
 シグルトの立てる戦術は、神経質とさえ思える堅実なものであるが、今まであてが外れたことはほとんど無い。
 結成して半年前後のパーティが、無類の強さを誇っているのは、シグルトの的確な戦術故なのだ。
 
 スピッキオが、気持は分かるとなだめた。

「まぁ、称賛を受けてばかりのお主も、時に人間と言うことじゃな。

 こんなに憤慨するとは思ってもみなかったぞ」

 スキッピオが場を慰めるかのように少しからかうと、シグルトは歯痒そうに唇を歪めた。

「対策が立てられないということは、万が一に死地に陥るということだ。

 何かを護るということは、護り切ってこそ意味がある。
 勝敗で言うなら、護れないことが敗北するということなんだ。

 俺は、共に戦うお前たちの命だって預かっている。
 皆に少しでも勝算のある戦い方をさせるのが、戦士でありパーティの長を任された俺の仕事だ。

 思う様に出来ないのは、悔しいな…」
 
 リーダであるシグルトがそんな風に悩んでいる最中、ロマンは船乗りたちの態度の悪さに閉口していた。
 
 兎角、船乗りは迷信深く、ヒエラルキーや掟に煩い。
 女子供を一段下に見るし、体格的に肉体労働に向かない者は軽視される。

 女顔のロマンに至っては、衆道好みの船員に絡まれる始末。
 その船員は、シグルトが叩きのめしてくれたのだが。

 甲板に強かに叩きつけられたその船員は船長に泣きつき、船員たちと“風を纏う者”との間で一触即発の状態になった。
 シグルトに装備の悪さを指摘され面白くなかった船長は、掟を持ちだしてシグルトを海に放り込むと凄んだ。
  
 だがそこでスピッキオがその船長を叱りつけたのである。

 海に関わる仕事の者は、聖北教会より聖海教会の信者が多い。
 その司祭の一喝は船員にも動揺を与え、船長の暴挙に船の中から反対意見が出たのである。

(…迷信深いのが好いのか悪いのか分からないよね。

 話がまとまったから、よかったけどさ)

 結局、スピッキオの一声で事態は一応収拾した。
 
 敵も出来たが、仲間を守ったシグルトに対して好意的な船員も多かった。
 
 レベッカが船の料理長を持っていた砂糖で懐柔していたことも働き、話は大きくならなかったのである。
 船での食事は、質が悪いと船員の反乱が起こるほどだ。
 こういう時、どこを抑えればいいか知っていたレベッカの作戦勝ちでもあった。


 躓きはあったものの、数日の船旅は瞬く間に過ぎて行った。

 海賊たちはまったく現れない。
 このまま何事も無く目的地に着くかもしれない…誰もがそう思っていた矢先である。

「…伝令!

 後方より海賊のものらしき小型船船影2つ!」

 気が弛み切っていた反動から、俄かに騒ぎ出す船員たち。
 戦闘装備の無いこの船では、無駄なことである。

「慌てるなっ!

 敵の射撃に備えて、俺が作っておいた盾を用意しろ。
 足りないなら、遮蔽物になるものの後ろに隠れるんだ。
 その時、頭は遮蔽物より一つ分は下げるんだぞ。
 矢は、弧を描いて上から降って来る。
 
 乗り込んでこようとした敵は、盾で体当たりして海に落せ。 
 各自身を低く、敵船の突撃に備えるんだ。

 長物(長い柄武器)を持っている者は、敵が船に乗り込もうとした時に海に払い落せ。
 掛け板を転がすのでもいい。
 
 万一敵が火を使って来たなら、消火を最優先するんだぞ。
 火が燃え広がったら終わりだ。

 皆、肝を据えろっ!」

 シグルトが一喝して混乱を収拾する。
 的確な指示に、船員たちは慌てて対応を始めた。

 その間にも船足の速い海賊船は、見る間に近づいてくる。

「スピッキオ、俺たちに加護の秘蹟を頼む。 
 ロマンは眠りの術で敵を眠らせ、後方から援護してくれ。
 レベッカとラムーナは、倒せる奴から対応しろ。
 術で寝た奴を海に落とすだけでもかまわん。

 スピッキオ、ロマン…妖精の術を掛けてやるからこっちに来い!」

 片端から檄を飛ばし、精霊術で準備をするシグルト。
 その横でスピッキオが【聖別の法】を使い、仲間たちに防御の加護を施していく。

 敵が矢を構えていることを確認したシグルトは、船の一つに向けて手をかざした。

「《トリアムール、マストのロープを切れ。

  あっちの船だっ!》」

 シグルトの精霊術で、風の精霊トリアムールが一隻の海賊船を足止めする。
 メインマストから帆を落とされた船が、速度を失い停止した。

 友軍を止められた反撃にと、もう一つの船が矢を浴びせて来た。
 しかし、楯による遮蔽で守りを固めていた商船の船員たちは、掠り傷程度の被害しか出ない。
 
「ぬぅ、危なかったわい」

 加護の術と妖精の護りによって、敵船から放たれた固定弩(バリスタ)の直撃を免れたスピッキオは、冷汗をかきながら血の滲む傷口を抑えた。
 巨大な太矢を受けた楯は粉微塵である。
 
 スキッピオの傷が取るに足らないものと確認したシグルトは、ほっとしたように頷くと、敵が乗り込もうとする場所へと走って行った。
 シグルトの頬も、破片で浅く傷ついている。
 楯を用意していなければ、死者が出ていただろう。

 船同士が接舷することで衝撃が走り、シグルトは剣を甲板に突き立てて踏み留まった。
 見れば、すでに海賊の何人かが乗り込んでいる。

 スピッキオが杖で真先に飛び込んで来た指揮官らしき海賊を殴りつけ、トリアムールの風が近寄る海賊たちを打ちのめす。
 シグルトは、もう一人の指揮官らしき盗賊と切り結んだ。

 一方ロマンは2人の海賊に囲まれて牽制され、船の揺れに足を取られて転倒してしまう。
 
 敵の攻撃を防御しながら、ラムーナがそっちに駆けて援護に行った。

 敵の反撃でシグルトも掠り傷を負うが、スピッキオが掛けた術で差しさわりは無い。
 ロマンも、転倒したところを狙われるが、妖精の加護が働いて、避けた拍子に腰を打った程度である。

「…ハァァっ!」

 ラムーナが、シグルトの前にいた指揮官を回し蹴りで吹き飛ばした。
 蜂の一撃の様に鋭いそれは、ラムーナの必殺技【連捷の蜂】である。

 作られた一瞬に、シグルトはトリアムールの力を準備する。
 
 シグルトは戦いに、習得した精霊術を存分に生かしていた。
 この術は、使うと勢いを増すことが出来るのだ。
 それによって加速された斬撃は、鋭く強烈なものになる。

 一方、指揮官を退けられて怒り狂った海賊が、ラムーナに襲いかかった。
 敵の体当たりでラムーナは押し戻されるが、体勢をすぐに立て直し牽制する。

「…押し返すぞっ!」
 
 シグルトが一声で士気を鼓舞し、スピッキオに絡んでいた幹部に立ち向かっていく。

 ラムーナに吹き飛ばされた指揮官がよろけながら立ち上がるが、もう一人の指揮官がラムーナの追撃とシグルトの剣で打ち倒されのを見て、憤激を新たにしていた。

「ああ、もうっ!

 なんてタフな連中なのよっ!!」

 苛々したレベッカが、疾走しながら海賊一体の気を引きつつ不満を口にしていた。

「《…眠れっ!》」

 ここでロマンが【眠りの雲】を唱え、3人の海賊が倒れる。

 船の揺れによってすぐ目を覚まし、立ち向かってくる幹部2人は実に往生際が悪かった。
 麻薬でも吸っているのだろうか、鼻血を吹き腕が折れているにもかかわらず、暴れるように反撃して来るのだ。

 戦いは長期戦にもつれ込んだが、乱戦ともなれば指揮能力の高いシグルトのいる“風を纏う者”のほうが圧倒的に強かった。
 シグルトが的確に指示を出しつつ、ロマンが眠れせた海賊をレベッカとスピッキオが海に落としていく。

 一方バランスの悪い船上は、平衡感覚に優れたラムーナの独壇場だった。
 闘舞術【連捷の蜂】による猛烈なラッシュで切り合う端から海賊を海に叩き落とし、終いにはなかなか倒れなかった幹部2人も海の藻屑となる。
 
 最後の海賊を、華麗な飛び蹴りで海に蹴落としたラムーナは、ふわりと船の縁に着地していた。

 “風を纏う者”は軽傷を負う者もいたが、治癒の秘跡無しで海賊を撃退することが出来た。
 見れば、先ほどマストを落としたもう一隻が、慌てて去っていくところだった。

 商船の船員たちは、“風を纏う者”の勝利に歓声を上げ、海賊たちの残した渡し板を海に落とし、船上で気絶した海賊たちを拘束する。

「どうにか勝ったな」

 仲間に怪我人が出たことに対し、シグルトは不満顔だった。
 だが、仲間の健闘を褒めることは忘れない。

 結果としてこの襲撃は、“風を纏う者”の実力を証明するきっかけとなった。
 船員には軽傷者が数人出ただけで済み、船の損傷も簡単な修繕で十分なレベルである。
 
 この襲撃を機会に横暴だった船長は、無能の烙印を押されて船倉に放りこまれ、副船長をしていた若い男が船の指揮を執ることになった。

 解任された船長は反乱を起こして今の地位に就いた男であり、今までの悪行が祟って擁護してくれる者は誰もいない。
 彼は船長として一番大切な公平さを欠き、取り巻きばかり大切にしたからだ。

 船乗りは地上よりも迷信的だが、同時に民主的で結果を大切にするコミュニティを形成しているのである。

 
 それから数日は平穏であった。

 中継地である小さな港を経由し、商船は順調にフォーチュン=ベルに向かっていた。
 海鳥の声を聞きながら、“風を纏う者”も充実した航海を続けている。

 新しい船長はシグルトの意見に従い、雨水を溜める防火水槽とその中に虫が涌かなくするための薬草を船に常備することに決めた。
 いくつか弓を買い求め、捕鯨用の中古品を改造した固定弩も、後々購入する予定らしい。

 中継地で海賊と一緒に下ろされた前の船長はかなりの小金を貯め込んでおり、それを使えば装備の充実は一通り出来そうだという話だ。
 
 シグルトは「俺も船上での戦闘はこの間のが初めてだったんだがな」と言いつつ、求めらえて基本的な戦術を船員たちに手ほどきしていた。
 彼が基本とした戦術は、南海で数百年前に勃発したアレトゥーザとフォルトゥーナの戦役を参考としている。

 当時の戦闘は、船に積んだ石を投石器(カタパルト)で投げ合う乱暴なものであった。
 海戦では、船同士が接近して戦うのは最後の手段だ。

 相手の装備を奪うことを目的としていた戦い方もあり、有限の矢玉で敵戦力を削いで突入し、矢玉を補給しつつ次を攻めるのである。
 遠距離攻撃による初撃が重要であり、それを防御する手段が肝要だとシグルトは教えていた。
 
 敵の矢に対して絶大な効果を発揮した楯は、もう少し改良が加えられて、船員全員分が用意されている。

 舞う様に海賊を叩きのめしたラムーナは、船員たちに幸運の女神の様に持て囃される様になっていた。
 お調子者のラムーナはそれが嬉しいのか、得意のダンスを毎日披露して、今やすっかり人気者である。

 船旅は娯楽が少ないため、ラムーナの芸は好評だった。

 一方、船員を賭け事に引っかけ、レベッカは小金代わりにこの海域の貴重な情報を入手していた。
 同時に夜に飲むための酒も、しっかり調達している。

 ロマンは、文盲の船員に文字を教えてくれと請われて、すっかり教師である。
 その厳しい指導も、彼の美しい顔見たさに集まる船員たちのおかげで大盛況だった。

 スキッピオの方は布教に励んでいた。
 新たに聖海の洗礼を受けたいという者が3人ほど出て、スキッピオは彼らの洗礼名を考えることに夢中になっている。

 前半の船旅に比べて、“風を纏う者”には、旅を楽しむ余裕が生まれていた。


 そして、後一日で目的地と言うところまで来た時である。
 
 見張りの甲高い声が、甲板を震わせた。

「後方より、大型船接近!」

 一同に緊張が走り、シグルトがすぐに警戒を命令して、新船長の元に駆けつけた。
 
「こちらの方が小さいはずだ…振り切れんのか?!」

 船長の言葉に、青ざめた操舵士は首を横に振る。

「無理です…信じられない速度で追って来ます。

 逆風でこの速度。
 とても普通の船とは…」

 シグルトが大型船の帆を見上げ、困ったように息を吐く。

「あれはいくらなんでも船足が速過ぎる。
 逆風なのに順風満帆の如し…十中八九風を起こす術を使っているな。
 
 あの規模の船を高速移動させる風だと…ロマン、勢いが付いてるから今更風や帆をどうにかしても止めるのは無理か?」
 
 常ならぬ力で走って来る大型船は、とてもではないが止められそうにないと、即座に計算したロマンも請け負う。
 自重のある船は、走り出すとすぐに止まれないのだ。

「風を操る海賊船だって?

 もしかして“蒼き疾風”のジャドか」

 新船長は絶望的な表情で、噂に聞いていたというその名を口にした。

「マジ?
 厄介な奴ね…
 
 この近郊じゃ一番知られてる奴らじゃない」

 レベッカが名前に反応する。
 情報に通じたレベッカは、すでに航路に出没する海賊の構成を全て知っていた。
 
 船という乗物は兎角金がかかる。
 食糧、水、修理費用の資材…
 必ずそれらを補給するために、最寄りの港を持つのだ。

 加えて海賊は、船の形状や海賊団の気質にあった航路…縄張りを持っている。
 一回の出港で確実に略奪を成功させ、消耗品を補給するための資金や資材そのものを奪うためだ。

 必然、良く寄る補給場所やその航路から、情報が割れてくる。

 “蒼き疾風”とは、海賊団の首魁の名前であり、海賊団そのものの名前でもある。
 今通っている海域では、最強の誉れ高き海賊であった。

 彼らが有名なのは、強さもあるが、その略奪の巧みさにあるのだ。
 
 まず、船足の速さで逃げ切れた船は無い。
 海賊団を構成するメンバーは猛者揃いで知られていた。
 彼らが海賊退治のために出向したフォーチュン=ベルの軍船を沈めたという話もあるほどだ。

 略奪は根こそぎではなく、また商売を始められる程度には物資を残す。
 そうすることで、次の獲物として戻って来る可能性があるからだ。
 これは「小魚は釣っても海に戻す」という、海賊なりのリサイクルなのだ。 

 さらには、無力な女子供や老人は殺さず、無意味な殺戮もしない。
 義賊に近い矜持を持っていると聞いている。
 仲間想いで部下を大切にする首魁ジャドは、同系列の海賊が敗れた場合、面子を潰されたとして報復に出ることも多いという。

 所謂、義侠心の強い海賊であり、生き残って彼らの名を広めた者が多いのである。

 この海賊団が優れた実力で成功を続けたからこそ、広まった話であった。

 商船の一同が苦い雰囲気にある中、まだ距離もあると言うのに敵船から大声が聞こえて来た。

「ハァ~ハァッハッ!!

 この間は、よくもうちの子分を可愛がってくれやがったな。

 久しぶりに骨のある獲物のようだぜ。
 今ぁそのツラ見に行ってやるから、小便ちびりながら待っていなっ!!」

 それは、大型船の船先に立った逞しい白髪の男である。
 顔の傷痕が、その男を一層凶悪に見せていた。
 
 脇に2人の部下を従え、威風堂々と立つ姿に、商船の船員たちは一気に士気を失った様だ。

「うわ、人相書通りだわ。

 最悪ね」

 レベッカが眉をしかめて相手を観察している。

 その横でシグルトは、今可能な対応策を検討し、知恵袋であるロマンに質問をした。

「…ロマン、あの船を風の精霊術で揺すってやるには、どの辺を狙えばいい?」

 シグルトの意図に気付き、ロマンは苦笑しながら計算する。

「無茶言うね…

 そうだね、やっぱりメインマストの帆に大きな大きな横風かな?
 この速度だと、下から吹き上げるように30度ぐらい。

 梃の原理と、向かってくるための力でぐらっと揺らせるよ。
 まあ、あの船体の場合は一回が限度だと思うけど、シグルトの精霊術ならあの高さでも大丈夫だよね。
 
 あそこに昇ってる見張りの、一人分下、マストを繋いでいるフックみたいのがあるところに、刺す様に横風をぶつければ…」

 ロマンの言葉に頷き、シグルトは準備を始めた。
 仲間に支援を求めつつ、妖精の術をロマンとスキッピオに施す。
 
「攻撃した後に、射撃で応酬があるぞ。
 
 皆楯か、厚めの遮蔽物の後ろに隠れてるんだ」

 スピッキオが仲間たちに護りの術を掛け、終えてもらったシグルトは、トリアムールを召喚しその身に宿す。

「…どうぉした?

 怖気付きやがったか、腰抜けどもっ!!」

 首魁である白髪の海賊が、恫喝するように大声を上げる。
 シグルトは、敵が好奇心から船に乗りだしてこちらを見ようとした瞬間、絶妙なタイミングでトリアムールの起こした突風を敵船の帆に叩きつけた。

 揺れは小さかったが、身を乗り出していた者たちにとっては堪らない。
 特に船に慣れた海賊たちは、「ありえない揺れ」に対しとても無防備だった。

 数人の海賊が悲鳴を上げながら海に落ちて行く。

「おぅわっ!
 糞、小賢しい真似しやがってっ!!

 野郎ども、衝角(ラム)で突撃しろっ!
 あの細っこいどてっ腹に、風穴開けてやれ!!」

 物騒なことを言っている海賊の首魁。
 シグルトは新船長に命じる。

「あの速度だ、完全には避け切れない。
 船首を曲げて直撃しないように、衝撃を流せ。
 
 相手はまっすぐ向かって来ることが分かってるんだ。
 何とか出来る!」

 新船長はシグルトの言葉に肝を据えたらしく、間一髪のタイミングで舵を切った。

 敵船の舳先を間一髪で躱し、船の横腹が擦れ合う。
 摩擦による焦げ臭い臭いと凄まじい衝撃に、周囲全ての者の頭が揺さぶられた。

「…敵が撃ってくるぞ!

 楯構え~」

 シグルトの号令と同時に、敵が矢を放ってくる。

「…畜生っ!

 掠ったわ」

 持っていた即席の楯が貫かれ、レベッカとシグルトは軽傷を負っていた。
 反撃にレベッカが、拾った弓で海賊の一人を射落とす。

 商船側の被害は少ない。

「この女ぁ…

 サザーラード、アザレア、行くぜっ!!」
 
 接舷の瞬間、あろうことか首魁と幹部2人が、商船に飛び移って来た。

「はぁっ~はっはっ!
 見参つかまつったぜっ!!

 俺の名はジャド・ヴァイスマン。
 人呼んで、“蒼き疾風”のジャドよっ!!!」

 白髪の首魁は口端を歪めて大笑しながら、商船のマストをクッション代わりに船に着地した。
 駆け寄るとともに、シグルトが名乗り返す。

「俺は冒険者“風を纏う者”のシグルト。

 此処からは剣で応えようっ!」

 互いに交叉して一合。
 得物同士が火花を散らした。

 シグルトの苛烈な挨拶に、ジャドは感極まった様に身体を震わせる。

「~~~けぇっ!!!

 面白そうな奴が出て来たじゃねぇかっ!
 こうでなくっちゃ、楽しめねぇ。

 踏み潰せ、野郎どもっ!!!」

 ジャドの号令に、一緒にやって来た幹部たちが頷いて応じた。
 

 ラムーナが速攻で鋭いフェイントを放ち、ジャドを撹乱するが、効いた様子は無い。

 その横でシグルトが追従する様に、トリアムールの突風で周囲を薙ぐと、剣でジャドの頬を切り裂く。
 反撃に拳で頬を殴られるが、身をひねって体勢を立て直す。
 両者は睨み合い、次の一撃に備えた。

 魔術師であると警戒され、ロマンがサザーラードと呼ばれた幹部に斬りかかられるが、術のおかげで衣服を切り裂かれた程度である。
 何とか魔導書を掲げつつ、呪文を用意し反撃を狙った。

 一方、最後に商船に飛び込んできたアザレアという魔術師風の女海賊は、トリアムールの起こす風に邪魔されていた。
 
「ほう、俺たちの突撃を止めるなんて、やるじゃねぇか。

 アザレア、キツイのを見舞ってやんなっ!!」

 女海賊が呼応するように呪文を唱えると、ロマンとラムーナがふらふらとよろめいた。

「眠りの術だ、注意しろっ!」

 耐えきったシグルトは、ジャドを殴り返す。

「くぅ、効くぜシグルトとやら。

 軍船の兵士にも、お前みたいな骨のある奴は、なかなかいねぇ」
 
 殴られた頬を撫でながら、嬉しそうにジャドが笑う。
 
 トリアムールの風が、今度は背後から迫ろうとしたサザーラードを吹き飛ばしていた。
 風の精霊術に翻弄された敵は、思う様に攻撃が出来ないようで苛ついた様子である。

 体勢を直したサザーラードの鋭い応酬でスキッピオが襲われるが、シグルトによって施されていた術が発動し、攻撃がすり抜ける。

「小賢しいわ、この野郎がっ!」

 停滞した戦いに憤慨したのか、ジャドが飛び上がって回転しながら炎を纏い、斬り込んで来た。
 フォーチュン=ベルの英雄が得意としていた剣技、【獅吼斬】である。

 直撃はしなかったが、爆風でロマンが吹き飛び気を失う。
 彼を追撃から庇うように、シグルトがアロンダイトで切り返し、敵を牽制した。

 スキッピオがその一瞬に駆け寄り、癒しでロマンの息を吹き返す。
 その近くで、眠りの術から立ち直ったラムーナがサザーラードに大振りの攻撃を放った。
 互いに切り結び攻撃は外れるが、ラムーナは近くにいたジャドの肘に弾き飛ばされ、口を切った。

「お嬢ちゃん、おいたはいけねぇ」

 にっと笑うジャドの前に、シグルトが庇うように割り込む。
 傷ついても連携して補い合う“風を纏う者”のコンビネーションは、隙が無い。

「《…穿てっ!》」

 ロマンが【魔法の矢】でアザレアを狙い、脇腹を穿たれたアザレアがよろめく。

 スキッピオがラムーナを癒し、戦いは膠着する。
 
 攻撃しようとしたジャドは、レベッカに邪魔をされて大振りの一撃を放つが、レベッカは手に入れたばかりの指輪を用いて姿を消した。

「ぬぁ、何処行きやがった?」

 ジャドがレベッカを探す隙に、他の仲間たちがシグルトに従って陣を組む。

「…調子に乗るんじゃないよ、私たちを誰だと思ってるんだいっ!!」

 アザレアが反撃とばかりに撹乱の呪文で応酬し、“風を纏う者”は体勢を崩されてピンチに陥った。
 
「《…穿てっ!!》」
 
 必死に2発目の【魔法の矢】で、アザレアにし返すロマンだが、そのまま転倒してしまう。

「疾風怒涛…喰らえ【燕速剣】!!!」

 呪文で連携が崩れたところに、サザーラードが飛燕の如き絶妙の剣を振るう。
 “風を纏う者”は吹き飛ばされるが、ラムーナが【連捷の蜂】の追撃で、サザーラードを蹴り飛ばしていた。

「よっしゃ、うおおぉっ!!!」

 勢いづいたジャドがどいつから止めを…と襲いかかろうとした一瞬である。

 腰溜めから薙ぐように放たれたシグルトの凄まじい一閃が、ジャドの脇腹を切り裂いていた。
 硬い確かなて手ごたえは骨に達したやもしれない。

 これぞ、最近習得したばかりの剣技【刹那の閃き】である。

「な、なんだ、とぉっ…!?」 

 衝撃で吹き飛ばされたジャドは、近くにあった木箱を派手に破壊して動かなくなる。

「…ジャドっ!

 ウソでしょ?」

 首魁の轟沈によって、アザレアが動揺し隙が出来る。
 チャンスを突いてラムーナが【連捷の蜂】で蹴りつけ、脇を駆け抜けたシグルトが嵐の様にサザーラードを斬りつける。

「な、なんて鋭い技だ…」

 今まで冷静で顔色一つ変えなかったサザーラードは、シグルトの猛攻に押されて踏鞴を踏む。
 その躊躇が勝敗を分けた。

「イィィッッヤァァァアアアッ!!!」

 ラムーナが突進するようにアザレアの延髄に肘を叩き込み、吹き飛ばした。
 白眼を剥いたアザレアはもう動かない。 
 
 ロマンが何度も執拗に【眠りの雲】を唱え、遂にサザーラードをでよろめかせたところを、ラムーナの奇麗な蹴りが襲った。
 ふらつきつつも、次のラムーナの大技を辛くも避けたサザーラードだったが、そこにシグルトが踏み込む。

「行け、トリアムールっ!!」

 不可避の突風に吹き飛ばされて、サザーラードは海に転落していった。

「…今畜生っ!」

 見ればもう目が覚めたジャドが、気を失ったアザレアを抱きかかえると、大型船に垂らされたロープに飛び移っていた。

 ジャドは後ろに跳ぶことで、シグルトの一閃の威力を殺したのだろう。
 シグルトが感じた斬る手ごたえは、ジャドが防御に使った鯨骨製の柄であった。
 
 無残に柄が砕けた大剣を抱え、火を噴く様な目で商船を睨むジャド。

 その下でサザーラードも、鼻血を拭いながら泳いで海賊船に取り付き、部下に落として貰ったロープにしがみ付く。

「…雑魚を釣るつもりが、鯱を怒らせちまったぜ。

 おう野郎ども。
 生きてる奴ぁ、海から引き上げてやれ。

 “風を纏う者”のシグルトだったな?
 今回は俺らの負けにしてやらぁ。
 
 けどよ、次にこの海域を通るときゃ、覚悟しやがれっ!!!」

 捨て台詞を残して、ジャドたち海賊は気持好いほどあっさりと逃げて行った。
 撤退も疾風の如し、である。

「ぜぇ、はぁ。

 なんつう逃げ足の速さ…」
 
 敵の牽制で動きまわっていたレベッカが、荒い息を整えようとしていた。

「…この程度の被害なら、航行に問題は無さそうだ。

 よし、負傷者を手当てしつつ、航路を戻そう」

 今回、逆転劇のきっかけを作ったシグルトは、船員たちを助けながら矢継ぎ早に命令を出す。

 船員たちは、強大な海賊を追い返した“風を纏う者”を、神でも崇めるように見つめ、嬉々としてその命令に従うのだった。


 そして次の日。
 フォーチュン=ベルに到着した“風を纏う者”は、『幸福の鐘亭』に立ち寄り、報酬を受け取ることが出来た。
 
 無理な仕事を頼んだことに宿の女主人であるメイフィールドが、すまなそうに酒を奢ってくれた。
 
「女将さん。

 今度からは、依頼主を選んだほうがいい」

 自分たちを頼ってくれるのは嬉しいが、人によっては仕事を受けないのが冒険者だと、シグルトは強い口調で釘を刺した。

「依頼主の元船長さんは、うちの常連だったんです。

 一番の冒険者を紹介しろというので、有名な貴方たちの名前を出して、紹介状を書くと言ったんですが…
 次の朝使いを寄こして銀貨二百枚を置いていき、勝手に契約したぞって。

 貴方たち“風を纏う者”を雇うなら、いくらなんでもこのお金では無理だと言ったんですが、まさか受けて下さるなんて。 
 しかも、新しい船長さんは貴方たちのことをとても評価していらっしゃいました。
 
 私も“蒼き疾風”のジャドの噂ぐらい知っています。
 
 …本当に銀貨五百枚でよろしいんですか?」

 二回も海賊を退け、この海域で最強の海賊を追い払った“風を纏う者”に、新船長や船員たちはいたく感動した様子で、報酬をかなり増やしてくれた。
 しかし、船に被害をだしたからと、全部は受け取らなかったのだ。

「こちらが誠意を見せなければ、依頼人に誠意を求めることは出来ないだろう。

 臭い話かもしれんが、〈実績〉と〈信用〉こそ資産になるうるからな」

 これは、“風を纏う者”が属す『小さき希望亭』の基本方針である。
 無法者扱いされる冒険者だからこそ、他人の数倍誠意を見せるのが大切だと、宿の主ギュスターヴは言う。

 こういった真摯な姿と、名のある海賊を退けたことで、“風を纏う者”の名は鰻昇りだった。
 
 だが、シグルトの表情は暗いままだ。
 生還は喜ぶべきだが、妥協を覚えれば仕事が雑になるからと、自己評価は何時も辛い。

「とりあえず、今日はもう休もう。

 慣れない船旅で、疲れたよ」

 早々にシグルトは部屋に籠ってしまった。


 部屋に入ると、シグルトは大きく息を吐き、ベットに倒れ伏す。
 
(無茶な技を使い過ぎたな。

 この【刹那の閃き】は、威力も鋭さも優れているが、今の俺の身体ではそう連発出来ない)

 バランスの悪い船の上で緊張しながら戦ったシグルトの身体は、思わぬダメージを受けていた。
 踵の腱が上手く動かないのに、シグルトは無茶をして踏ん張り技を連発したのだ。
 
 だが、そうしなければ“風を纏う者”の中に死者が出ていた。
 だから後悔は無い。

 先日から微熱が続き、軽い吐き気を覚えている。
 その不調は、完全の習得していない技を、無理やり使用した代償であった。

(急を要したとはいえ、身体が整わない状態で技を使うなど自殺行為だな。

 今後は気をつけねば)

 呼吸を整え、身体をもみほぐしていると、ラムーナが部屋に入って来た。
 心配そうな顔である。

「大丈夫?

 顔色が悪いよ、シグルト」

 この娘は勘が鋭い。
 シグルトの異変に、真先に気が付いたのだろう。

 安心させようと苦笑し、シグルトは何時もの様に苦笑して見せた。

「少し無茶な技を使ったからな。
 何、陸で休めばそのうち回復する。

 ラムーナも、ああいう派手な技を使った後は、筋を整えておけよ」

 シグルトの忠告に、素直に頷くラムーナ。

「そう言えば、随分姿勢が直ったな。 
 パーティを組んだ頃は酷い猫背だったが。

 お前の師匠は、姿勢が技の根であることをちゃんと知ってるらしい。
 まだ右肩に歪みがあるから、それは真っ直ぐな塀にでもぶら下がって伸ばしておけ。
 あれは、腕力の良い鍛錬にもなる。

 お前ぐらいの年なら、姿勢はすぐ直せるさ」

 シグルトの強さは、こういった生理学も基本としている。

 そもそも武人は医術に明るいべきなのだ。
 怪我を自分で治せるし、体の壊し方を知るために治す方法を知るのだ。

 身体の動きをコントロールすることもまた然りである。

「シグルトって姿勢は綺麗だけど、技が強過ぎて間接痛めてるよね?

 無茶しちゃだめだよ」

 手に水桶を用意し、手際よく湿布を作ってくれる。
 同じ戦士だからこそ、シグルトの身体について一番分かってくれるのもラムーナだった。

「…ああ。
 こうやって休むのも、たまにはいいな。

 流石にここ数か月、張り詰めてばかりだったからな」

 そんな事を話しながら、シグルトはふと今後の行動を考えていた。


 次の日、ゆっくり休んだ“風を纏う者”は『幸福の鐘亭』で朝食を採っていた。

「皆、聞いてくれ。

 俺たちはここ数日働き通しだった。
 だから、少し休日を兼ねて別行動を取らないか?

 俺は武器をブレッゼンに預けて、しばらく剣術修行をしたいと思ってる。

 この間手に入れた剣術書の技だが、使ってみて違和感があったからな。
 独学では限界もあるのだろう。
 少し専門家の意見を聞いて、今後に使っていけるか検討したい。

 昨日レベッカとも話したんだが、今のところは財政的余裕も少しはありそうだし、な」

 シグルトの提案に、レベッカが続ける。

「いったん解散すれば、それを理由に仕事を断れるでしょ?
 仲間で揃ってると頼られちゃうからね。

 シグルトの言う様に、互いの技術強化すべきだと思うし。

 私もアレトゥーザの馴染みに頼んで、昔使ってた技の勘を取り戻したいと思ってる。
 どうかしら?」

 ラムーナが頷く。

「私、攻撃以外に防御の技が学びたい。
 大技を使うと、どうしても隙が出来てしまうから。

 もしここで別れるなら、レベッカと一緒にアレトゥーザに行って、アデイ先生を訪ねようと思う」

 スキッピオがそれならば、と同行を申し出た。

「わしも、仲間全てに及ぶ回復の術を学ぶべきじゃと思っておる。
 あれだけの戦いが続いて思ったんじゃが…何時も生傷が絶えんからの。

 アレトゥーザは西方の聖海教会で秘蹟を学ぶには、一番良い場所じゃ。

 レベッカたちと一緒に行くかの」

 最後にロマンが自分の意見を述べた。

「僕は、特に今学びたい技術は無いかな。
 
 そういうことなら、このフォーチュン=ベルで、少し薬学の勉強をしているよ。
 手持ちの薬を調合すればもっといいものが出来るし、預かってもいい?」

 一同の意見がまとまり、シグルトたちは一月後にアレトゥーザで再会する約束をして、解散することになった。

「そうね。
 当座の資金として、皆に銀貨二千枚ずつ渡すわ。

 シグルトにはブレッゼンへの手土産の葡萄酒一本と代金代わりに、金鉱石を2つ。

 ロマンには薬類を全部預けておくわ。

 残りは皆アレトゥーザ行きだから、一応一緒でもいいわよね?」

 “風を纏う者”は一月後の再会を約束すると、解散してそれぞれの目的地へと旅立つのだった。 


 
 勢いがあるうちにと書き始めた『商船護衛』、いかがだったでしょうか。

 海戦らしい壮絶なバトルをイメージして書いたのですが、文章能力低下してます。
 最近の異常気象のせいかなぁ。

 旧リプレイでは、終りのとこちょこっとで、ジャドやアザレアといった魅力的な海賊を描き切れませんでした。
 今回はその反省も踏まえて、かなり目立って頂きました。

 旧版ではラムーナの独り相撲だったのですが、今回は前半戦がラムーナ、後半戦がシグルトの活躍で、かなり楽しい結果になりました。
 敵側の見せ場も、ほぼその通りです。
 「まさかこのタイミングで【燕速剣】?!」とか、喚きながら戦闘結果を書き取っていました。

 シグルトの逆転劇も、アロンダイトがレベルアップした直後に女海賊の撹乱攻撃喰らって、止めとばかりに【燕速剣】。
 混乱から立ち直った瞬間に【刹那の閃き】という絶妙なタイミングで、逆て~ん、とばかり。
 ジャドがその一発で沈んで、ラムーナの追撃で女海賊も撃沈。
 
 止めがラムーナとシグルトの連携という綺麗な決着となり大満足でした。
 こんなきれいな戦闘結果、珍しいかも。

 このシナリオ、射撃戦から入ると敵の数が減ります。
 幹部がいると傷薬が煩わしいので、苦戦する場合は防御を固めて射撃魔法でつつくのが吉。

 眠りのキーコードでは、敵が目覚めた時に復活されて勝負が長引くので、多少怪我しても射撃戦から入るのがお勧めです。
 防御召喚獣もちゃんと効果があるので平気です。

 シグルトの戦闘知識ですが、これはある漫画を参考にしています。
 船同士がぶつかり合うと、互いに被害甚大なので、実際は射撃や示威行為で降伏させて乗り込むのが一番安全だったんでしょう。
 射撃による戦闘は、近代の海賊の戦い方でもかわりません。
 今はロケットランチャー持ってるとか。
 
 中世では矢玉が尽きるとカタパルトで、汚物や死体まで投げ合ったとか。
 いくら物資がないからといって、なんともはや。

 海上では略奪で物資補給するしかありません。
 海賊浪漫と言う人もいますが、丘の幻想で、実際は徹底的に残酷だったみたいです。
 海賊旗の骸骨は、「降服か、しからずんば骸になれ」って意味で、敵が降伏しないと赤旗掲げて虐殺ってパターンも多かったとか。

 同時に、海賊は近代兵器の申し子でもあります。
 強くないと生き残れませんし、歴史上ほとんどの海賊は非業の死をとげています。

 刹那的で太く短い生き方が、海賊に対して魅力を感じさせるのかもしれませんね。


 今回は500SPのみ。
 次回からいよいよパーティの強化に入ります。


〈著作情報〉2009年06月17日現在

 『希望の都フォーチュン=ベル』はDjinnさんのシナリオです。現時点Djinnさんのサイトで配布されています。 
 シナリオの著作権は、Djinnさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer 1.06です。
  
・Djinnさんサイト『水底のオアシス』 (○ttp://djinn.xrea.jp)←○をhに。  
  
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。

CW:リプレイR | コメント:2 | トラックバック:0 |

『解放祭パランティア』

 カルバチアからリューンに帰還した“風を纏う者”は、拠点である『小さき希望亭』で久しぶりにゆったりとした一日を過ごしていた。

 仲間たちがくつろぎながら眺める横で、訪ねて来た冒険者に、シグルトが戦い方の指導をしていた。
 面倒見の良い、彼らしい光景である。
 
 その冒険者とは他の宿出身の女性で、ディーサという。
 まだパーティを組む前で、心得を教えてほしいとシグルトを頼って来たのだ。
 
 シグルトたち“風を纏う者”は今やちょっとした成功者である。

 宿の親父も、彼らの隆盛に気を良くして、他のパーティにはくどいほど言う小言を一言も言わない。
 むしろ、先輩冒険者として頼りになりつつあることを喜び、初心冒険者の教導を任せようと言い出すほどだ。

 親父の期待に、一番応えようとしたのはシグルトである。
 放浪してボロボロだった彼を拾ってくれたこの宿に対し、シグルトは恩義と義務感の様なものを抱いていた。

 面倒見の良いシグルトは後輩受けも好かったが、剣術の指導に関しては後輩泣かせで有名にもなっている。
 普段優しく紳士的なシグルトは、戦闘指導において全く容赦しなかった。
 
 舐めた気持で冒険者になろうという者は、シグルトの厳しい洗礼で半数以上が辞めて行ったほどである。
 
 だが、宿の親父はシグルトの指導法をとても支持しており、先輩冒険者たちもシグルトの指導の上手さに納得している。
 彼の指導は厳しいものの、決して後輩を軽んじたものではなく、身になることばかりだからだ。

 シグルトの指導を受け、冒険者を続けることを選んだ者は口を揃えて、シグルトへの感謝を口にする。
 そして彼の指導が原因で冒険者を辞めた者の幾人かも、現実を知ったから止めたのだと彼を評価していた。

 剣の稽古では、鼻血を吹いたり青あざだらけになる後輩たちであるが、その後の戦い方はがらりと変わる。
 最初の冒険で死ぬものも多いのだが、シグルトの教導を受けた後輩パーティは概ね最初の依頼を成功させ、全員が生還するのだ。

 戦闘経験が皆無だというディーサに、シグルトは護身術を叩き込んでいた。

「…女の冒険者が気をつけなければいけないのは、髪の毛だ。
 実戦でこれほど掴みやすい部分は無い。
 
 髪の毛は掴まれると痛いし、屈辱感から逆上したり、混乱する場合も多いんだ。

 だが、上手く使えば敵を倒すきっかけにもなることを覚えておくといい。

 髪の毛は頭の近く、すなわち身体の高い部分にある。
 それを掴んだ腕は、必然的に掴まれた者の頭より高い部分に固定されるんだ。

 ここで、髪を掴んだ相手の腕を逆手で巻くように固定する。
 相手の腕は、髪を掴むことで〝髪に引っ張られる力〟が働いているから、片手でその肘を極めることで力が少なくても腕を封じられるだろう。
 
 その上で、腕を上げたままがら空きになった脇の下に、身体を捩るように肘先から体当たりし、極めた腕わ絡め込む様に押してやる。
 脇の下は鍛え難いから、かなりの痛みを与えられるし、相手は慌てて髪を放そうとするだろう。

 その離れようとする力に、押す力を加えてやれば、相手を転倒させることだって出来る。

 弱点になる場所は、狙わせて相手を絡め取る餌にすること。
 そのくらいの強かさがあって、初めて怪物や悪党の相手が出来るようになる」

 シグルトの講義に、場に居合わせた他の冒険者も興味深そうに耳を傾けていた。

「力任せの相手には、脱力して身を任せると一瞬だが動きを封じられる。
 
 人の身体は動いてる時の方が、軽くなるんだ。
 例は悪いが、死体や気絶した人間を持つのと同じ原理だ。
 動こうとする者は、逆らうことで返って相手に力を与えてしまう。

 相手がオーガの様な怪力ならば別だが、成人男子程度の体格であれば、この戦術はなかなか役立つはずだ。

 あと、耳や鼻といったでっぱた部分を掴んで体重をかけてやるだけで、相手は悲鳴を上げて離れようとする。
 女性にこんな事を言うのは失礼だろうが、案外身体は重いものなんだ」

 丁寧に状況を説明しながら、シグルトは体重をかける場合の姿勢を実演する。

「こういった動作は、休憩時間にでも反復して、咄嗟に使えるようにしておけ。

 身体は積み立てた行いに正直だ。
 裏切られないように、磨いておくんだぞ」
 
 最後にそう締めくくると、シグルトは軽くディーサの肩を叩き、頑張れと励ました。
 
 頬を赤らめ、嬉しそうな顔で宿を出て行くディーサを見送ると、シグルトはカウンターに座って水を一杯頼む。

 シグルトは、昼間であれば付き合いでもほとんど酒を飲まない。
 飲むならば、かなり強いのに、である。
  
 仲間には強制しないが、小さな摂生を繰り返せば息災が保たれるのだとシグルトは言う。

 それは、ばれないように気を使いつつ、自身の故障を隠しているためでもある。
 足の腱が切られ、思うように動けないシグルトは、徹底した身体操作によって、高い戦闘力を発揮出来た。
 
 必要ならば敵の身体を杖代わりとし、不自由な身体の脱力すら力に変える。
 世の中にある無駄なものは、使わず無駄にしているだけ、というのが彼の持論だ。
 
「相変わらず見事な指導だな。

 あの娘が指導料を宿に払ってくれたから、向こう3日は宿代はチャラだ。
 お前たちみたいにツケ無しで優秀な奴ばかりだと、俺も楽なんだがな…」
 
 親父が苦笑しながら、ややぬるい水を出す。
 冷えは案外身体を疲れさせるから、普段は生ぬるい水で十分だとシグルトが言うからだ。
 そうやって不快な環境に慣れておくことで、冒険中に野外生活が長くても、シグルトは特別我慢強かった。
 
 泥水、生水を煮沸して腹を壊さないようにすれば、どうしても温くなる。
 革袋に入れた水は、革臭い上に体温や陽光のせいで閉口するほど不味いものだ。

 自身のモチベーションを維持するためにも、苦境になれることは大切である。
 
 シグルトのこういった実践的さ姿を見習う後輩も多く、そういった若手は軒並み良い結果を出していた。

 宿の親父としては、目論見以上の成果が得られ、頬の緩みを抑えられない。
 定例で冒険者の宿の主人たちが集まる会合があるのだが、“風を纏う者”の活躍ぶりは、良く話題に出て羨ましがられるのだ。

 冒険者家業は信用第一だ。
 口コミや実績こそが、良い宿を経営する上で重要になる。

 リーダーシップの強いシグルトは、カリスマ性とその美貌、そして武骨ではあるものの誠実で人の好い性格から、それを慕う後輩が非常に多い。
 彼の先輩にあたる人物たちは、決して増長しないシグルトの姿勢を高く評価しているし、実力は御墨付きだと言っている。
 同輩では中心人物としてまとめ役的な立場になっている。
 気難しい新人や、古参の偏屈者でも、シグルトが間に入ると話がまとまる。

 もう少し実績を積めば、間違いなく『小さき希望亭』一番の看板冒険者になると、誰もが認めていた。
 
 手放しに評価されながらも、シグルトは難しい顔で「俺の様な新参者が、そこまで評価されるのは大げさだ」とやや謙虚である。
 先輩の顔を立て、同輩、後輩にもチャンスを回す義理堅さで周りには応え、嫉妬や嫌がらせには堂々としている。
 
(完全無欠って言や大袈裟かも知れないが、シグルトに関してはそう評価しても皆納得するだろう。

 本人は首振って、〝俺は欠点だらけだ〟とでも応えるんだろうがな…)

 最近の親父は、シグルトを見本に理想的な冒険者を語るようになっていた。
 
 他の宿から「仁義云々がなければ席を移してほしい」との話も多い。
 親父としては手放す気などさらさらないが、義理堅いシグルトにそういった心配は無用だ。
 
 他の宿で難解な仕事があれば、“風を纏う者”に話が来るようにもなった。
 シグルトは、他の冒険者との衝突を避けるために、断るか信頼出来る冒険者に仕事を回してトラブルを避けている。

 仕事のバッティングを避けるために、出張を繰り返して、他の都市でも活躍しているらしい。
 それが、結果的に“風を纏う者”の名声を高めることになっていた。
 
 他に“風を纏う者”でもう一つ話題となっているのが、レベッカのことだ。

 冒険者歴がそこそこにあったにも関わらず、レベッカは怠惰で仲間も作らずに腐ってばかりいた。
 だが“風を纏う者”に所属するようになってから、水を得た魚の様に結果を出している。

 本来レベッカは、盗賊ギルドから再三スカウトが来るほどの凄腕だ。
 最近までは腐って飲んだくれてしたので腕はかなり落ちていたが、彼女がかつて盗賊ギルドで下層の幹部職に就いていたことは、同業者では周知の事実である。
 その頃世話になったという者が多数おり、若手の盗賊で元スリやギルド出身の盗賊たちは、彼女には頭が上がらないという者も多かった。

 シグルトが腹黒くなれない部分をレベッカがサポートするため、5人というメンバーで驚異的な結果を出すことに繋がっている。

 “風を纏う者”の実績と言えば、初心冒険者が何人も死ぬというオーガ…話では年を経た狡猾で恐ろしい上位種を…相手にその討伐を成功させてしまった。
 
 それにシグルトは、伝説的な工匠に認められて、その武具の所持を許された。
 彼のブレッゼンから魔剣所有の試練を許された冒険者は、数えるほどしかいない。

(…嬉しい限りだが、成長が早過ぎだ。

 シグルトはまだ十代、レベッカだって二十の半ばだぜ。
 変な失敗して躓かなければいいんだが)

 時折そんな心配もするが、“風を纏う者”なら大丈夫だろうと信頼もしていた。


「…お前たち、仕事も落ち着いて、懐にも余裕が出来て来たんだろ?

 どうだ?
 明日はリューンでも最大規模の慈善市が開かれる。
 
 技能書や武具だって掘り出し物があるから、羽を伸ばしに出かけてみてはどうだ?」

 “風を纏う者”が、夕食のシチューを啜っていると、親父がそんな話を持ちかけて来た。

「あら、もう『パランティア』の時期が来たのね?」

 リューンでの生活が長いレベッカは、したり顔で頷いた。

「レベッカ、『パランティア』ってなぁに?」

 事情を知らないラムーナが小首を傾げ尋ねる。
 清貧な生活に慣れているラムーナは、そもそも買い物という行為そのものに疎いのだ。

「このリューンで、年に一度開かれる商人たちの祝祭よ。

 『中つ国の伝説』に登場する7つの魔石パランティーアから名を貰ったていう、大きな慈善市が開かれるの。
 遠見の石として伝わるパランティーアは、多くの地を見通し、互いが繋がっていて連絡を取り合うことが出来るという話。
 
 この祝祭では旅商たちが一堂に集って、様々な商品を網羅するからこの名で呼ばれるらしいわ。
 まあ、単純に解放…叩き売りやるって話みたいだけどね。
 
 そこから出た儲けから、慈善金がでるわけ。
 孤児院や教会に寄付されるお金だから、貴族や教会からも庇護を受けて、税金無しで商売が出来るのよ。

 捻出される慈善金が税金代わりなんだけど、商業ギルドや都市に納める税金が免除された上で、売上からお金を出すことになってるからリスクは少ないわ。
 特に露店を生業にする旅商にとっては、大きなチャンスになるのよ。

 お祭りまで金儲けするなんて、商人たちはがめついわよねぇ」

 レベッカの説明に、「お前には負けるわい」とスピッキオが突っ込む。
 
「うるさいわねぇ。

 私のちゃんとした管理があるからこそ、あんたたちは無駄遣いしないで毎日の美味しい食事にありつけるんじゃない。
 お金で全てが賄えるとは言わないけど、出来ることだって多いんだから。

 おっと、話を戻すわね。

 『解放祭』なんて呼ばれてるこのお祭りでは、最近便乗して教会のバザーも開かれるみたいね。
 一日で回り切るのはとても無理よ。

 商品の当たり外れはあるけど賑やかなイベントだから、一生に一度ぐらいは見に行っておくべきだわ」

 レベッカの説明に、ラムーナは好奇心で目を輝かせた。
 この辺り、やはり年相応の少女である。

「行くなら僕も付き合うよ。
 パランティアは、四海の珍品が集まるんだ。

 それはつまり、四海の英智も集まるってこと。
 賢者としての知的好奇心からも、是非行くべきだと主張するね」

 ロマンも乗り気である。
 
 シグルトは、偉ぶっているが子供らしいロマンの態度に頬を緩めた。

「ふむ。
 
 わしも元は商家の生まれじゃからの。
 見聞のために、一度見てみたいと思っておった。
 
 加えて、バザーも開かれるというなら、それに応えるのも大切じゃて」

 反対意見が無かったので、シグルトが「決定だな」と話をまとめる。

「いいわねぇ。

 せっかくだし、商人どもと久しぶりにやり合ってみようかしら?」

 自身の商魂を刺激され、レベッカがにやりと笑う。

「…大概にしておけよレベッカ。

 お前に破産させられた悪徳商人が、うちの宿の悪い噂を流した時は迷惑したんだからな」

 親父の突っ込みに「分かってるわよ~」と、レベッカは小さく舌を出した。
 
 
 次の日…
 
 あちこちで露店が開かれ、客寄せのために雇われた旅芸人たちが、自慢の芸を披露していた。

 火吹き芸人の吐く焦げた油の臭気に並行しつつ、6人の冒険者が買い物を楽しんでいた。
 “風を纏う者”とともにリューンで名が知れつつある冒険者パーティ“風を駆る者達”である。

 多くの人が集まり大した喧噪だが、商人たちの声はそれを越えて響き、露天市場を飛び交っていた。

 武具を買う者、書物を抱える者、大きな袋を引き摺りながら歩いている者。
 ここに訪れた誰もが、何かしらお気に入りの品物を見つけて購入しているようだ。
 
「いつ来ても、凄い人だかりね」

 南方大陸出身者としての黒い艶やかな美貌を陽光に晒しながら、魔術師ガリーナが「私はこういうの苦手なのよ」といった顔で、腰に手をあてながら1人ごちた。
 南方の黒き民であるガリーナは、奇異の目で肌を見られるのが嫌なのか、こういった賑やかな場所はあまり好かない。

「へへ、俺は好きだぜ。
 
 昔は結構稼がせてもらったしよぉ」

 ユーグが眼を細めて、にやりとする。
 細身の狡猾なこの盗賊は、惚れたガリーナに好い所を見せたくて仕方無いらしい。

「ふ~ん、ユーグってここでお店出したことがあるの?」

 冒険者としては場違いな可憐な少女エイリィが、何とも純朴そうな質問をしていた。
 こういう態度が子供っぽいと言われては拗ねている、背伸びしたいお年頃である。

「ふん、どうせぼったくりの店をやっていたか、スリでもしておったんじゃろ。

 このコソ泥が、まともな理由で此処に来ておるわけがないわ」

 ドワーフの戦士であるオーベが、図太い樽の様な身体を揺すりながら、嘲るように言った。

「…フン」

 途端、面白くなさそうにそっぽを向くユーグ。

「図星じゃな」

 してやったり、とオーベが嘲笑した。
 
 ユーグはますます不機嫌になって、終いには芸人に絡み出した。
 その横で彼らを宥めるのは、仲裁役が板についているレイモンである。

「あなたも何とか言って下さい、ニコロ。

 まったく、困ったものです」

 ストレスから、元々の厳しい顔にさらに皺を増やし、レイモンは疲れたように項垂れた。

「あはは…ま、いいんじゃないかな。

 せっかくのお祭りなんだし」

 頼り無げな返答をしつつ、ニコロは半ば商品の方に気を取られている。 

 リューンで年に一度開かれるという慈善市『解放祭パランティア』。
 
 “風を駆る者達”はこの大規模な市を訪れていた。
 
 会場は大きく3つに分かれていて、それぞれ武具区・道具区・書物区に分かれている。
 どの地区も世界中の様々な地域から人々が訪れていて、時にとても貴重な品や奇妙な品が置かれているという。
 
「さぁ、行くわよ」

 ガリーナが無理矢理ユーグの手を引いて書物区へ向かう。
 どうやら荷物持ちをさせるつもりらしいが…手を繋がれたユーグは心持幸せそうだ。
 
「では、ワシらも行くとしようかの」
 
 オーベが呆れたように先導し、残りの4人もそれぞれに目当ての地区へ向かって散っていった。


 一方やや遅く『小さき希望亭』を出立した“風を纏う者”は、賑わう市を前に圧倒されていた。

「凄いな…
 俺の故国でも年に一度、建国記念の祭りがあったが、ここまで賑やかじゃなかった。
 
 西方の要衝たるリューンの祭りとは、こうも規模が大きいのか」

 国家級の大きさを誇る大都市だからこそ、この規模なのでである。
 
 シグルトの故国は、歴史こそあるが小国だった。
 首都の大きさを、西方でも最大級の交易都市であるリューンと比べるのは酷であろう。

「ま、こんだけ騒がしいと全部は廻れないでしょ?

 そうね、取りあえず今日は、安売りしてるところを中心に見て行きましょうか」

 この祭りに参加した経験を持つレベッカの提案に、一同は茫然としながら頷いた。

 
 最初に行ったのは、道具区である。
 
 ちょうどタイムサービスを行い大きく値段が下がっていたところを、レベッカがさらに値切って珍しい道具を買い漁る。

「クリスにお土産を買って行かなきゃいけないからね。

 あの娘が喜びそうなお装飾品って、他の区画では売ってないわ」

 レベッカの言葉に、ロマンが首を傾げる。

「…クリスって、そんな人知り合いにいたっけ?」

 するとラムーナがにこにこしながら、とんでもないことを答えた。

「駄目だよぅ。

 クリスティアーヌさんのことでしょ。
 そんなことだと、また女装されられちゃうよ」

 頭を疑問符でいっぱいにしながら、「なんで僕の女装と関係が…」とロマンが憤る。
 その頭に、シグルトがポンと手を置いた。

「俺たちの間では〈宿の娘さん〉で通ってる、彼女のことだ。
 長い名前だから、覚えてる連中の方が少ないんだ。

 うちの宿の親父さんの、〈ギュスターヴ・オジエ〉という名前を、知らない奴が多いしな」

 ロマンとスピッキオが同時に目を丸くした。

「ありがちな名前だから、名乗らないのよね親父さん。

 渋くて好いじゃないっていうと、結構照れるのよ」

 品物を物色しながら、レベッカが補足する。
 
「うちの宿の正式名称は〈オジエの小さき希望亭〉なんだ。
 看板が摩耗して、字が読み取れなくなってるが、リューンじゃ老舗の宿らしい。

 この機会だし、2人とも覚えておけよ」

 このリーダーはすでに知っていたらしい。
 判明した新事実に、ロマンが興奮気味に頷く。

「宿の組合じゃ、“寂寥の荒野”オジエって有名なのよ。
 結構強かったって噂の、元冒険者だしね。

 二つ名を言うと包丁持って暴れるらしいから、2人とも本人に言っちゃだめよ」

 何故、とロマンが聞く。

 レベッカは髪を掻き上げて自身の額を剥き出しにすると、そこを指さして厳しい顔をして見せた。
 
 途端納得したようにロマンもスピッキオも深く頷く。
 2人とも笑いをこらえるのに必死な様子だ。

「親父さんの頭、淋しいもんね~」

 ラムーナが止めを刺し、一行は皆吹き出していた。

 笑いながら賑やかに買い物を進めていると、不意にシグルトが厳しい目をし、近くにいた少年の手をがっしりと掴む。

「な、何すんだよっ!」

 威圧するように睨む少年。
 シグルトの握力によって痺れたのか、その手から小さな宝石が零れ落ちた。

「…っ!!!」

 明らかに盗品と分かるそれを見て、近くの露店の店主が怒りを露にして向かって来た。

「こいつ、この神聖な慈善市で盗みを働くなんて許されないぞ。

 官憲に突き出してやるっ!!」

 激昂する店主を前に、シグルトが空いた手で止めろと制する。

「祭りで子供をしょっ引いたなんて話になったら、店の名が落ちるぞ。

 それに、盗賊ギルドの縄張りでこういったことをした者は、確か〈人形遊び〉だったな?」

 シグルトが問うと、レベッカが頷く。

「昔ながらで野蛮なんだけどね。

 ま、子供で初犯なら〈生木鳴き〉か〈石臼〉かしら。
 流石にばっさりは無いと思うけど、今の〈猫〉や〈烏〉の掟は分からないわ」

 隠語で話す2人に、少年も店主もきょとんとしている。

「…〈人形遊び〉は手足を引っ張って千切る私刑のこと。

 〈生木鳴き〉は音を立てて圧し折るやつで、〈石臼〉は石で叩き潰すって意味よ。
 二度とスリやかっぱらいなんて、出来なくなるってこと」

 レベッカが凄んでみせると、少年の顔が蒼白になった。
 こういうことは初めてやったのだろう。

「坊や、教えといてあげるわ。

 ここ数年こういう慈善市では、こわ~い盗賊ギルドが関わってるのよ。
 出来るだけ、盗んだ追っかけたって荒事が起こらないように、大商人が裏でお金を納めて犯罪防止を頼んでおくのよ。
 毒は毒をもって…ってやつね。
 
 頼まれた盗賊ギルドは、面子をかけて見張ってるわ。

 もしお金を納めたのに盗みが起これば、商人からクレームが来るし、ギルドの顔は丸潰れよ。
 そうなった時は、見せしめになるぐらい残酷な罰を与えるってわけ」

 商品を取られた商人は、そういったことまで知らなかったのだろう。
 何もそこまでしなくても、という顔だ。

 レベッカはそこで片目を閉じると、少年が盗んだ宝石を商人に返す。

「この子は、〈品物を見ていた〉だけ。
 貴方は子供の素行に〈勘違いした〉だけ。

 品物は戻ったんだし、とりあえずそれで納めない?」

 レベッカの言葉に、しばらく考えた商人は頷くと露店に戻っていった。

 残された少年は、事情が分からぬまま震えたままだ。
 
 シグルトは少年の肩に手を置くと、屈んで目線を合わせた。

「お前、親はいるのか?」

 尋ねるシグルトに、少年は震えながら首を横に振った。
 目尻には涙が溜まって見える。

「お前一人なら食べていくぐらいの子供にも出来る仕事が、この都市にはたくさんある。
 
 なのに、盗みを働かなければいけないほど切羽詰まっていたのか?」

 シグルトがまたゆっくりと問うと、少年は遂に泣きはじめ、幼い妹が腹を空かせているのだと言った。
 少年の両親は、最近のたちの悪い風邪で無くなり、貧乏な少年の家では家財を売りさばいて凌いでいたらしい。
 そうした私財もついに尽き、盗みに及んだという。

「…馬鹿ねぇ。
 例え盗みが成功しても、盗品は故買屋の知り合いがいなと足がつくのよ。

 すぐに捕まって、さっき言ったような怖い目に合う。
 坊やに妹がいるなら、その娘も人買いに売られてしまうわ。
 その先は、坊やも妹ちゃんも生地獄。

 盗みは、これっきりにしなさいな」

 そう言うレベッカの眼は、どこか優しかった。

「これから盗みを二度としないと誓うなら、お前と妹のことは俺が何とかしてやろう。

 誓えるか?」

 シグルトが厳しい顔で少年に問う。
 その誠実さが伝わったのか、少年は強く頷いた。

「よし。
 では、お前は妹を連れて、ここから南にある聖北教会のクレメント司祭を訪ねるんだ。

 職人ギルドに知り合いがいるから、お前の年でも出来る丁稚奉公を世話してやる。
 後で、郊外の『小さき希望亭』を訪ねて、“風を纏う者”のシグルト…俺を訪ねろ。
 俺がいない時は、その宿の主人に話を通して奥から、その人から話を聞け。
 
 器用なその手には、芸を付けて役立てるんだ。
 そうすれば、食いっぱぐれることはないからな。

 辛いかもしれんが、お前たちの住んでいた家や土地があったら処分して、それを妹が働けるまでの養育と食費にあてるといい。
 
 レベッカ、この子たちの家財処理で、交渉を頼んでもいいか?」

 仕方ないわね、とレベッカは快く請け負った。
 その背景には、もちろん子供に同情したというのもあるが、上手く交渉すればコネクションを作れるからだ。
 
 孤児に仕事を斡旋したり、その私財を処分することに関わると、少ないながらマージンが貰える。
 レベッカはそういった裏事情に詳しかった。

 そして人徳のあるシグルトは細かく地味な仕事を大切にしているために、様々な人脈を持っている。
 彼の一声で信用してくれる者も多い。

 シグルトとレベッカは、まだ冒険者になるには早い子供や戦災孤児に関わった場合、互いの得意分野を生かして孤児院への紹介や仕事の斡旋を行い、お金や人脈を作る手段を確立していたのだ。
 荒事の多い冒険者は、ヤクザ紛いの犯罪組織とも渡り合うため、元々この仕事とは相性が良かったとも言える。
 
 儲けた金のほとんどは、世話になっているクレメント司祭への謝礼や、コネクションの維持のために使っていた。

 お金そのものは全くと言っていいほど手元に残らないが、人脈と人材を作り出し、それが結果的に都市活動における“風を纏う者”の助けとなるのだ。
 世話をした子供たちから集めた情報を盗賊ギルドに売ったり、探しものをする時に手伝って貰ったりと、後に得られるちょっとした利益が得られるのである。

 シグルトたち“風を纏う者”が短期間で有名になったのは、こういった背景もあった。

 元は人の好いシグルトが、冒険中に出会った困った子供たちに何とか生きる道をつけてやりたいと考えて始めたことだが…
 結果的には、様々な恩恵を得ることになった。

 最初は渋っていたレベッカも、今では過去の仲間や盗賊ギルドにも関わらせて、大々的に手伝っている。
 特に情報力の強化(仕事の斡旋先から、各組織の情報を仕入れ易い)に役立つと、盗賊ギルドから多少の無茶を認めてもらえるほどになっていた。

 半年立たずにこのシステムを確立したシグルトとレベッカが名を売ったのも、当然と言えよう。

 少年はシグルトたちに何度も礼を言うと、嬉しそうに去って行った。

「…すまないなレベッカ。

 リューンに戻ってから、この手の雑用ばかりだ」

 少年が見えなくなってから、シグルトは申し訳無さそうにレベッカに詫びる。

「いいって~。
 実際、この副業のおかげで盗賊ギルドの上納金は、向こう数年ただで良いってことになったわ。

 それに、この仕事って泣く奴がいないから、私の繊細な心が痛まないのよ。
 後輩にも新しく出来たつてで小遣稼ぎを紹介出来るようになったし、表向きほとんど慈善事業だから、教会や慈善団体にかなり好感持たれてるし。

 チンピラ扱いだった冒険者も、今んところうちの宿限定だけど、扱いが変わって来たしね。

 最初、相談された時には呆れたけどさ。
 こう話が膨らんで思ったんだけど、シグルトって結構商才あると思うわ」

 現在この方法で救った孤児や浮浪児は十数人いる。
 規模はまだまだ小さいが、レベッカは確かな手応えを感じていた。
 
(私の子供ん時は、こんな方法なんて考えもしなかった。

 シグルトがいつも言ってるけど、やっぱ子供は笑ってないとね…)

 レベッカは幼少期、孤児院にいたことがある。
 その頃の生活はどん底で、思い出すのも嫌だ。
 
 そんなせいか、感情的と笑われることもあるが、同じような立場の子供には少し同情してしまう。

(そういやヴァルの奴、あの〈人売り市〉が潰れてから音沙汰が無いわね。

 元気でやってるのかしら…)

 孤児院時代、鼻垂れでいつもレベッカの後を付いて来た弟分を思い出し、レベッカは懐かしそうに眼を細めた。
 

 ニコロは風を感じて立ち止まった。
 
 ふと見ると老婆が立っている。
 この暑い日差しの中で、目深くローブを被って、だ。

「…風の声が聞こえるかい、お若いの。

 お主、精霊術師だね?」
 
 皺枯れた声。
 だが、聞く者を捉える不思議な力があるように感じられる。
 何より、ローブの下からニコロを射る眼光が、猛禽のように鋭かった。

 まるで蛇に睨まれた蛙のように、ニコロはぴくりとも動けない。

「強くなるために、力が必要なんだね。

 ならば、一つ導いてあげるとしよう」
 
 老婆は声も出せず固まっているニコロに、書物を差し出した。

「…【風刃の纏い】じゃ。
 
 ちょいと悪戯好きの小娘がおったんでの。
 ワシが閉じ込めて芸を仕込んでやったんじゃ…」

 ニコロは吸い寄せられるように書物を手に取った。
 そして、幾分焦ったように銀貨の詰まった袋を老婆に手渡す。

「ほほ、殊勝じゃの。
 銀や金は力がある。
 同時に〝借りぬ〟という志も好い。

 お主は、良き術師となるじゃろう。

 風は気紛れ。
 しかし万里を駆ける翼ともなろう。
 
 若き精霊術師よ、力の使い方を誤らぬことじゃ…良いな」

 ニコロが釣られるように頷く。
 老婆はにやりと笑った。

「お主、波乱万丈の人生を歩みそうじゃな。
 近い将来、大きな敵と相対するじゃろう。

 やがて失い、そして得る。
 慟哭を知って、人は生まれ変わのじゃ。
 
 水は風を通さず、刃金は風を切る。
 されど、共に歩むならば道となり、未来へと続くものよ。
 
 一人歩まず、共に立ち向かうがよかろう。
 強き風を纏えるのは、お主だけでは無い。

 風とは語り部、そして謳う者。
 出逢いを紡ぎ、お主を導く。
 
 しかと覚えておくことじゃ…」

 予言めいた言葉を告げ、老婆は皺ばかりの頬を歪め背を震わせて、楽しそうに笑った。

 ニコロは感じていた。
 この老婆が、ただの人間では無いことを。 

 その時、ニコロを見つけたエイリィが、遠くから声をかけて来た。

「ねぇ、見て!レイモンに買ってもらったの」

 エイリィが、首に下げた青い宝石を掲げながら走り寄ってくる。
 ニコロはすぐに行くと手振りで伝え、再び老婆の方へ向き直った。

 しかし、そこには既に老婆の姿は無い。
 
 ただ銀色に輝く羽根が一枚、ふわりと風に舞っていた。


 仲間たちから離れると、この祭りに関わる盗賊ギルドの幹部を捕まえ、レベッカは先ほどの騒動の後始末をしていた。
 見ぬ振りなどすれば、ギルドの面子を潰してしまうからである。

 案の定、盗みのあった場にも〈梟〉(見張り)がいた。
 少年が馬を離れたところで捕まえて尋問し、商品はそっと返す算段だったのだろう。

 不機嫌そうな顔をしていたその〈梟〉は、関わったのがレベッカだと分かると、途端に態度を改めた。
 奇しくも、昔盗賊ギルドで面倒を見てやった後輩の友人だったからだ。

 〈梟〉に案内されて幹部の所に行く。
 祭りの中央で情報を売りながら、場の盗賊を統括していたその男は、レベッカを見ると人懐っこい笑みを浮かべて彼女を迎えた。

「いよう、レベッカ!

 会えて嬉しいぜっ!!」

 抱きつこうとしたその男をひょいと躱し、指先で向こうに追いやると、レベッカは断りも無く彼の座っていた椅子に腰かけた。

「相も変わらず女と見たら抱きつくのね、ギスラン。

 あんたが今の〈ボス猫〉?」

 ギスランと呼ばれた男は、首を横に振って否定し、自分もそそくさともう一つ椅子を出して座った。
 同時に眼も座る。

「俺は〈耳〉(情報担当)関係さ。

 此処の統括は“赤髪”さんな。
 で、この地区は俺担当ってわけ。
 一応あの人の直参だからな。

 フィッテの野郎がいる方じゃなくて良かったぜ、レベッカ。
 あの糞真面目は、面子気にし過ぎるからよぉ…」

 恩着せがましいギスランの言葉に、レベッカがにやりと返す。
 
「じゃ、“赤髪”の奴に直で話を持ってくわ。

 そうすりゃ、その生意気な口も叩けなくなるでしょ?」

 強気には強気で切り返すのが、盗賊同士の交渉で大切なことである。

 レベッカは話をつけるために敬意は払うが、相手を選ぶ。
 中には調子付いて、様々な要求をしてくる輩がいるからだ。

 因縁をつけてたかってくるちんぴらを、盗賊用語では〈蝿〉と言うが、その手の連中に弱い所をみせれば餌食である。

「…かぁ~、やっぱ“猫の女王”には勝てねぇか。

 足抜けしたとは言え、未だにギルドの連中は半数があんたに頭あがんねぇからな。
 あんたに言うこと聞かすなら、“黒豹”の姐御でも担がにゃむりだわ」

 ギスランは「止め止め」とばかりに姿勢を直し、始末書代わりの羊皮紙にサインを求めて来た。
 綺麗に処理されたので、お咎め無しを上告するための内容が書かれている。
 レベッカが来る前から結果を予想して用意していたのだろう。

 羊皮紙に、一筆書きで王冠を被った猫の顔を描く。
 艶っぽい唇と睫毛も忘れない。
 “猫の女王”…レベッカがギルド時代から許されている、本来は幹部以上しか持てないシンボルサインである。

 シンボルサインは日本でいう花押のようなものだ。
 面子を大切にする盗賊は、要職であったり名が売れてくれば、こういったシンボルサインを作る。
 これは、手先の器用さを表すのと同時に、示威行為のための手段になるのだ。

 敵対組織に喧嘩を売ったり、誰かに話を通す場合、自分を端的に表せる。
 同時にこういったシンボルサインを汚す行為は、最大級の侮辱とされている。

 レベッカは現在盗賊ギルドの構成員ではないが、現在でも名誉幹部的な扱いを受けている。
 だからこそ、幹部時代から使える〈特権〉があり、これもその一つだ。

 就いていた幹部職はスリの頭…重役ではなかったのだが、当時の同輩たちは多くがもっと上の幹部職に就いたので、その連中と同格とみなされているのである。

 シンボルサインがまかり通ること、それこそがレベッカの影響力の強さなのだ。
 地道な下積みと、たくさん売った貸しや持ったコネクションがなければ、これほどの効果は持たない。

「流石だな。
 こんな精緻なサインを、ほとんど一瞬で描いちまうんだから。

 だけどよ…
 あんたが調子付いてるって、面白くねぇ顔してる連中もいるんだぜ。
 特に、ちょっと前まであんたが腐ってたのを喜んでた、ロドリグとか。

 気ぃつけな」

 意外そうにレベッカはギスランの方を見た。
 盗賊でも情報部門を司る〈耳〉は、情報を決して安売りしない。
 たとえ身内であっても。

 こういう情報が来た時、まずは意図的に流している、と疑うのが普通である。

「あ~、信じなくても構わないけどな。

 気になるなら、自分で裏取れよ。
 “赤髪”さんあたりなら、安くしてくれるぜ」

 そこはのらりくらりとしているギスランである。

 ロドリグは、レベッカの先輩である女盗賊“黒豹”エイダとライバルだった男だ。

「…抜ける時、少し虐めてやったからねぇ。

 でも、まだ根に持ってるなんて、相変わらず小さい男だわ」

 ロドリグは独占欲の強い男で、レベッカの部下だった小悪党を一人身代りにして殺してしまった。
 レベッカはギルドを抜ける際、嫌がらせでロドリグがちょろまかしていた小金のことをばらし、復讐している。

 ロドリグは上級幹部への昇進を目前にして幹部職を解かれ、ギルドの掟で利き腕の親指を切られてしまった。
 今までの功績から、一盗賊としてギルドに残ることは出来たが、盗賊としての出世は絶望的になったのである。

 酒浸りになったロドリグは、今でも顔を合わせれば食ってかかって来る。
 
 レベッカがギルドに戻らないのは、こういった盗賊同士のいがみ合いに辟易していたからだ。
 嫌な話を聞いたことで、レベッカは渋い顔のままギスランと別れた。

(…っち。

 ケチがついたわね)

 詰まらなそうに歩きながら仲間を探していたレベッカは、不意に自分を見る鋭い視線に気付き、出来るだけ何気なく振り返った。

 少し離れた場所から、黒髪の男がじっとレベッカを見つめている。
 腰に剣を下げ一見剣士風だが、感情を感じさせない泰然とした雰囲気を持っていた。
 どこか、シグルトに気配が似ている様に思えた。

 レベッカは、その男の視線が自分に向いているのだともう一度確認し、大胆にもまっすぐ向かっていった。
 男にもう少しで手が届きそうな距離まで近づくと、レベッカは腰に手を当てて不機嫌そうに鼻息を一つ吐く。

 威嚇するようなレベッカの仕草に、男は少しだけ眉をひそめた。

「誰だか知らないけど、私に何か用?

 そうでなければ、女性をじっと睨むのは不躾ではないかしら」

 少し強い口調でレベッカが問うと、男は少しおいて静かに頷いた。

「それにおいては詫びよう。

 俺はイサークという、旅の剣士だ。
 昨今珍しい、人助けというものを見たのでな…
 
 如何なる理由で助けたか知りたいと思った」

 訥々と低い声で名乗り、理由を告げる。
 
 レベッカは、訝しげに眉をひそめた。
 人助けとは、先ほどの少年のことだろう。
 
 確かにあのような状況では見て見ぬ振りをする者も多いが、慈善市という環境ではお節介する連中も多いはずだ。
 じっと観察されるほどのことでは無いと思う。

「この市には、聖北の坊さんも沢山来てるわ。
 私たち冒険者が子供一人にお節介したところで、じっと見つめられる理由にはならないわよ。

 それとも、あんたの周囲にはそんな連中がいないほどささくれてたわけ?」

 きつく問い返すレベッカに、男は首を振って「そういう意味ではない」と告げた。

「俺が珍しいと思ったのは、あの少年の道をきちんと示したことだ。

 同情で人助けをする連中は多いが、ほとんどは自己の心を満たすためにやる独善的なもの。
 しかし君とあの男は、〈関わったことの責務〉を果たした。
 これは中々出来るものではない。

 もし君たちが、あの少年にお説教だけして盗みを止めるように注意したとしても、あの少年の貧困は解決しなかっただろう。
 そして、再び盗みをするか、あるいはもっと重い罪を犯したかも知れん。

 何故他人のためにそこまでする?
 それが知りたいのだ」

 生真面目な男の口調に、レベッカは内心苦笑した。

「他人、ねぇ。

 そうね、他人を援けるってのが独善的だってのは賛成だわ。
 でも、それを言えば何だって独善よ。
 人は結局自分のために何かをする。

 要は気分の問題。

 うちのリーダーも言ってるけどね。
 〈子供は笑ってる方が好い〉と思うわ。

 ああいう子供は大人の奥が過去において来た、かつて幼く拙くて途方に暮れ、救ってほしかったことがある自分。
 人を見る時、多くは相手の中にある自分を見るわ。
 俗っぽい私みたいな人間は、特にね。
 
 私が助けてほしいなんて少女してた時は、待ってても誰も救ってくれなかった。
 救いを求めて足掻いてる連中には、あんたたちで勝手にやれって言うことも出来るけどさ。
 私は私の時にしてほしかったことを、自分でやって自己満足したのよ。

 うちのリーダーがお人好しで、尻拭いしたのもちょっとあるかな?
 
 人はそういう個人的な理由があってこそ、親身になって動けるのよ。
 私の場合無駄を出さないように、やる以上は利益を作るけどね。
 
 一番得して、一番敵を作ってなくて、大団円なら最高かなって思うわ。
 好い気分も利益の一つ…それが私の信条なのよ」

 そこまで一気に言って、レベッカは肩をすくめた。

「貧困はあの子のせいではない…
 そう言って救ってあげるのも、有りかもしれない。

 でも、私はただ貧困のせいにしたくないのよ。
 責任転嫁してて得があればいいけど、言い訳で腹は膨れないし、ね。
 〈私〉だって得るものは無い…あの子の中に見える〈過去の私〉も含めて。

 あの子にとって一番大切だったのは、〈妹と一緒に救われること〉。
 私は関わる以上それを満たし、一緒に自分を満たそうとしただけよ。

 必要なことを自然に行った…運命任せじゃなく、必然だったってわけ」

 これはレベッカの本心でもあった。
 
 彼女は利己的であるが、同時にお人好しである。
 だからこそ、両方を満足させる道を探し実行する。

 聞いていた男は、何かを考えるように唸る。
 
「…なるほど、〈多くを満足させる独善〉か。

 流され捨てる者は多くを得られないが、難しくともそれを実行する者は多くを得る。
 これは武道にも通じることだ。

 為になった。
 貴女に感謝を」

 男は一礼すると、そのまま去って行った。
 その足取りは心なしか軽い。

「何だったのかしらね。

 まぁ、いいか」

 さっさといなくなった男には目もくれず、レベッカはまた仲間を探しはじめた。


 夕刻となり、うっすらと空が赤い。
 楽しい祭りは間もなく終わろうとしている。

 『パランティア』を堪能した“風を駆る者達”は、集合して帰途についていた。

「くっくっく、ちょろいもんだぜぇ」

 ユーグのにんまりとした顔を見ながら、ガリーナが溜め息をついた。

「あんた、ホントにそういうところは抜け目がないわねぇ。
 こっちは気に入った本が見つからなくって落ち込んでいるのに」

 お眼鏡に合う魔術書を見つけられず、ガリーナは落胆していた。
 そんな姿に、オーベが呆れた様子でたしなめる。

「ガリーナよ、お主は拘り過ぎじゃ。

 つまらん形式なぞ無視すれば、良いものも沢山あったじゃろうに」

 その言葉に少し憤慨した様子で、ガリーナは靴音高く言い返した。

「…そういうオーベだって、良い斧が無い、とかぶつぶつ言ってたでしょ」

 むう、と唸りオーベの眉間に皺が寄る。

「あるにはあったんじゃが、とても冒険で使いこなせるものでは無かったわい。
 
 あれは、死刑執行人が使う類の物じゃから、携帯性が最悪じゃ。
 なんであんな物が売っとるんじゃい」

 思い出したようにオーベも肩を落としていた。

「ま、おけらの漁師の様な面すんなって。
 資金がたっぷり増えたんだからな。

 俺に感謝しろよ。
 銀貨二千枚だぜ、二・千・枚!

 欲しいものを手に入れた上に、物々交換だけでこれだけ稼いだんだ。
 もっと感謝してもらわなくっちゃな」

 さっきから威張ってばかりのユーグに、ガリーナが「そうよねぇ」と頷く。

「…癪だけど、確かにユーグの功績は大きいわね…」

 肩で二度目の溜め息を吐くガリーナ。

「そう言えば噂で聞いたんだけど、“風を纏う者”もこの祭りに参加してたみたいだね」

 ニコロが手に入れたばかりの技術書を読みながら、なんとはなしに呟いた。

「道具区で起きた問題を調停したようですね。

 最近彼らの名をあちこちで耳にしますが、私たちもうかうかしてられませんよ」

 レイモンが気遣わしげに補足する。

「…リーダーのシグルトって人、教会の人たちからも凄い評価されてるみたい。

 この間も冒険者孤児を一人、施設に入れる仲介人になったって」

 冒険者孤児とは、冒険者の親を持っていた孤児のことだ。
 死と隣り合わせの冒険者は、事故や怪物との戦いで、ベテランでも命を落とすことがある。
 
 冒険者をする者は脛に傷を持つ者も多く、片親だけという場合もざらだ。
 そんな親が死んでしまえば、子供はその先を生きて行くことが難しくなる。

 教会育ちのエイリィは、そういった子供たちを救う手助けをしているシグルトたちに好印象を持ち始めていた。

「ああ、あれな。

 もしかしたら、冒険者の新し副業が出来るかもってんで、宿の親父どもが話題にしてるぜ。
 孤児を拾って来て里親見つけたり、孤児院へ食料配達とかの安い仕事をしてやって、パトロンの貴族や教会から金貰う仕事だ。

 施しすると市民受けがいいってんで、市民権が強いリューンじゃ、貴族院や市会議員の連中には馬鹿みたいに金出す奴もいるそうだ。
 金回りがいいから、駆け出し冒険者が食いっぱぐれないですむかもって、嘘みてぇな話だが。

 始めたのはシグルトたちで、小さい話だったんだが、宿同士でコネ作ってでかいことになって来たらしい。
 冒険者の子供相手にした託児所なんかも、これに関わって、冒険者のギルドからも援助するとかしないとかで騒いでるみたいだな」

 孤児院にパトロンをつけ、育った子供は人材として派遣する。
 言葉にするのはた易いが、実際に活動すると夢物語のような話である。

「なんともまぁ、格好付けた話ねぇ。

 そういう偽善ぶった事や、貴族を毛嫌いしてる連中、冒険者に多いのよ。
 シグルトって奴、絡まれて刺されたりしないのかしら?」

 辛辣なガリーナの言葉に、「そうでもねぇんだよ」とユーグが首を振る。

「実際にシグルトどもがパトロンにしようって連中は、子供を戦争で亡くした貴婦人や戦争未亡人、孫子のいなくなって寂しがってる裕福な老人とからしい。
 名誉目的で名を宣伝しろってパトロンは、性格確認した上で話を蹴ることもあるとか聞いたぜ。

 だからこそ話が成立すると〈そのパトロンは人格者〉なんてブランドがついて、乗り気な奴が増えるって寸法だ。
 たぶん、こんな小賢しいことするのはレベッカだろう。

 あいつは昔盗賊ギルドに所属してたんだが、その時分に、スリやかっぱらいの組織で〈危険と恨みは少なく、利益は多く〉って妙な仕組みを作って、いまだに信奉者がいるからな。
 あいつが好んで使った割引(財布をスリ取って少しだけ盗んで返す)や恩着せ(スリ取っておいて拾ったと称し礼をせしめる方法)は、今でも穏健派の盗賊たちに主流になってるやり方だ。

 職業変えて、〈狐〉(詐欺師)にでもなりゃいいのによう」

 ユーグの言葉には、少しの嫉妬と同じ盗賊としての誇らしさと入り混じったような、複雑な気持ちが見え隠れしていた。
 
 
 一方、噂になっているとは露知らず、夕方まで“風を纏う者”は存分に買い物を楽しんだ。
 安く買った品物を上手に売ったり交換したりしてレベッカがかなりの利益を出し、ちょっとした土産を持ち帰ったほどである。

 宿に帰って、シグルトがクリスティアーヌ(宿の娘)に土産のお洒落な髪飾りを渡すと、舞いあがった彼女はお礼にツケで貰ったという貴重な技術書をくれた。
 結果的に一千枚以上の銀貨と、非常に優れた魔法の指輪も入手し、レベッカは上機嫌だ。

「【姿隠しの指輪】が手に入るなんてね。

 盗賊の隠形術代わりにも使える、掘り出し物だわ」

 【シャイ・リング】と呼ばれるその指輪は、【妖精の外套】に代表される自身の透明化を可能とする品である。
 集中していなければ効果は持続しないが、姿を隠していれば攻撃を受けることも無い。
 
 金銭的な貢献が多かったレベッカは、今回一番の品物であるそれを貰うことが出来た。

 そしてスピッキオは、手に入れた技術書と交換である剣士から、心に関する不思議な力を授けられたと言っていた。

「そやつは、不思議な雰囲気の黒い髪の男でな。

 わしはシグルトに、手に入れた剣術書をやろうと思ったのじゃが、どうしてもと頼まれて気軽に譲ってやったのじゃ。
 祭りの界隈で再会した古い友人に、若い頃に貸した金の代わりと言ってもらった物じゃが、聖職のわしにはあまり意味の無かったものじゃからの。

 男は他にも、わしの知り合いに為になることを聞いたと言って、わしの肩に触れていきおった。
 そうしたら、不思議な力が流れ込んで来ての。
 
 祈りに随分と役立ちそうな感覚を得られたわい」

 それは心と身体を縛られなくなるという特殊な感覚である。
 【「無」の法】というそれは、修行する戦士や術師が理想とする不可視の力で、人に譲り渡すことも出来る神秘の技だ。

 一方、単独行動時に一番稼いだシグルトも、宿の娘から貰った技術書の一つである剣術書を貰えることになった。
 
「参考になる文献だが、この本にある技を使うには少し工夫がいるな。

 使えるかどうか、よく読ませてもらおう」

 勤勉なシグルトは早速読みはじめ、その研究に没頭している。
 その技が披露されることを、皆楽しみにしていた。

 祭りで高揚した気分を夜気で冷ましながら、“風を纏う者”は満足気な夜を過ごすのだった。



一年以上経ってからのリプレイ更新になってしまいました。
 このシナリオは、私も片割れとして制作に関わったシナリオで、旧版の頃はMartさんのリプレイで扱われたのでやらないつもりでした。
 しかし、Martさんのリプレイが読めなくなった後、彼のリプレイの軌跡を私のリプレイに反映させる意味で、使わせて頂く形となっています。
 
 Martさんが書かれた文章を思い出しつつ、私なりに内容を合わせて“風を駆る者達”を描かせて頂きました。
 なんだか懐かしく感じる自分に戸惑いつつ、昔を思い出してしまいました。
 もう3年も経つんですね、リプレイを始めて。

 Martさんには、一応はリプレイの終了時にY2つなりに“風を駆る者達”とのクロスをしていく旨は伝えてありますが、今回は文章の一部を抜粋に近い形で使わせて頂いたので、その著作権は後ほど補っておきますね。

 今回は古いシナリオを知ってる方なら思わずにやりとする人物が出てきたり、シグルトとレベッカの暗躍(?)が判明したりと、びっくりな内容だと思います。

 さて本題。
 この作品、私も制作に関わっていたので、裏事情がよく分かっています。
 ニルヴァーナ時代、まだVer1.28エンジンではなくバランスも大雑把だった記憶があります。
 そんな中でスキルやアイテムのイベントを考えたことを思い出し、思わずにやけたり、恥ずかしい気持ちになったりしました。
 
 私がデータに主に関わったスキルは【風刃の纏い】と【刹那の閃き】、あと【還魂の法】の命名とかです。

 今思うと【風刃の纏い】は「威力つえ~」と思います。
 ただ、このスキル、攻撃を受けるとガスガス召喚獣が減るので、敵が多い時は最後まで使い切ることはほとんど無い、という特徴があります。
 攻防一体という概念を与えたかなりの自信作でした(スキル絵なんかはDjinnさん担当です)が、現在のバランスで考えるともう少し調整するべきだったかなとも思っています。こういう後悔が、次のスキルに生きるんですけどね。
 そして【刹那の閃き】。
 スキルリロードによる連撃は、アレトゥーザの【連捷の蜂】に受け継がれています。
 これらのスキルは、私のギミックスキルの原点とも言えるものであり、技術的な閃きの原点でもあるのです。
 どっちも使い易いので、気に入っていました。

 わらしべイベント(【逆刺の十字架】を持ってると始められる交換イベント)の原案を出したのも私ですが、やってみると懐かしい~
 コメディな表現がとても上手なDjinnさんが編集して下さったので、そこかしこにたたよう遊び心が素晴らしいです。
 私には、こんな凝った演出できませんからね。
 
 アイテムで買っても役立たないもの出そうとか、使い古しの地図出してコレクター魂揺さぶろうとか、しょうもないことにこだわっていたような気がします。
 でも、こういうお遊びが楽しいバザーシナリオです。

 せっかくこのシナリオの話ですし、ちょっとだけ攻略法をば。

 このシナリオは強力なものとして【目玉商品】と【掘り出し物】があります。
 【目玉商品】は早いうちに行かないと売り切れてしまう上、安売り時には買えません。
 そのかわり一級で強力ですけどね。
 【掘り出し物】は、ある程度シナリオが進んでから出現するちょっと強力なアイテムです。
 【ミカエル】何かがその類。
 
 お金を増やしたい場合は、安売り時(道具区→書物区→武具区の順に廻る)に手頃な物を買っていくことです。
 道具区は買い占めてOKです。全部大きなお金に変えられます。
 書物は600SP(安売りで300SP)のスキルは完全な外れ。
 【シャイ・リング】が欲しくなければ、ここでは【還魂の法】だけ買っておけば、交換した物を利益+50SPで売ることが出来ます。
 それ以外は無理に買う必要はありません。
 武具は【ミカエル】と【白銀の麗刀】が後で高く売れます。このアイテムは某シナリオで貴族(詳しくはマルコキエルさんのブログ『まるこきえるずかてどらる』にうちのブログのリングから飛んでみて、配布シナリオを遊んでみてください)にすごい値段で買ってもらえるので取っておくのも好いでしょう。
 それ以外はあんまり。(でももう一つの剣は高く売れるかもしれませんよ)

 【目玉商品】は強力ですがお金儲けは半ばあきらめなければならなくなります。
 道具区以外は真先に駆けつけると、買えますよ。

 私のやった今回のリプレイによるパターンは以下の通り。 

道具区(安売り中)
【逆刺の十字架】購入-150SP
【ナブラの竪琴】購入-250SP
【巨大な赤石】購入-250SP
【盗賊王の地図】購入-50SP
【金鉱石】購入-100SP
【抗魔の髪飾り】購入-100SP
【魔法薬】購入-250SP

待合室
【盗賊王の地図】を売る+100SP(50SPの儲け)

武具区(安売り中)
【ミカエル】購入-1300SP
【白銀の麗刀】購入-1000SP

書物区(安売り中)
【聖絶対退魔光】-1500SP
【還魂の法】-700SP

待合室
【巨大な赤石】→【金鉱石】
【還魂の法】→【寡黙の戦士】
【ナブラの竪琴】を売る+2000SP(1750SPの儲け)
【聖絶対退魔光】→【シャイ・リング】
【逆刺の十字架】→最終的に【「無」の法】

宿
【抗魔の髪飾り】→【刹那の閃き】&【高潔の光】

【沈黙の戦士】売却+750SP(50SPの儲け)
【ミカエル】売却+2500SP(1200SPの儲け)
【白銀の麗刀】売却+1600SP(600SPの儲け)

【刹那の閃き】→シグルト
【シャイ・リング】→レベッカ
【「無」の法】→スピッキオ

現在の所持金11218SP(ジャジャ~ン♪)


 お金は増えつつ、そこそこの品を手に入れてパワーアップしてます。

 【金鉱石】をポートリオンで売れば、もう3000SPぐらい稼げるでしょう。
 【魔法薬】は貯めておいて、フォーチュン=ベルで練って換金するも吉。
 無理に売らなくとも、様々なアイテムは、高レベルならマルコキエルさんのシナリオで売りさばくのも手です。

 今回はパーティのお人好し根性&レベル的に無理だったのでこのような形に捌きましたが。


 さて、今回、もう一個凄いネタばらしがありました。
 『小さき希望亭』の親父と娘の名前です。
 
 これは実際のフランス人の名前から選んだもので、違和感のないものだと思っています。
 娘さんは名前クリスティアーヌが長いので、娘さんかクリスと呼ばれる感じ。
 宿の親父ギュスターヴは質実剛健な感じにしてあります。
 オジエというのは、音か「親父」に近くて覚えやすそう、ということで選びました。
 今後、クロスオーバーで是非参考になさって頂ければと思います。
 
 一年ぶりに書くと大分忘れたところがあって、いかんなぁと思います。
 今後もう少し早めにUPできるように、頑張ってはみますが、いろんな企画が押してるので、やはりマイペースになるかと。


 今回は圭さん、Martさん、Djinnさんのシナリオとのクロスオーバー表現がありますが、それらは各シナリオ作者さんに著作権があります。

〈著作情報〉2009年06月11日現在

 『解放祭パランティア』はチーム・ニルヴァーナのシナリオです。現時点Djinnさんのサイトで配布されています。 
 シナリオの著作権は、チーム・ニルヴァーナ(Djinnさん&Y2つ)にあります。
 このリプレイの時のバージョンはVerVer 1.00です。
  
・Djinnさんサイト『水底のオアシス』 (○ttp://djinn.xrea.jp)←○をhに。

 今回のリプレイではMartさんがかつて連載されていたリプレイ『風を駆る者達』のリプレイ記事『解放祭パランティア』から、文章の一部を抜粋、改編(文章を繋ぐ関係で、かなり追加変更した文章もあります)して当リプレイとつじつま合わせをしつつ掲載させて頂きました。
 完全コピーではなく、Y2つなりに頂いた許可の範囲でリプレイに加えさせて頂きましたが、不具合あれば御連絡下さい。
 『風を駆る者達』のリプレイはMartさんに著作権があります。
  
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。

CW:リプレイR | コメント:3 | トラックバック:0 |

Y字の交差路三周年!

 いつもいつも、当ブログを見て下さって有難う御座います。

 気がつけばもう三周年…
 昨年はほとんど記念活動が出来なかったので、今回は一つアイテムシナリオを作りました。
 皆さんへの、感謝の気持ちです。
 
 私のシナリオは例に漏れずバグが無かったためしがないので、暫くはバグ取りをしつつの公開となりますが、そんなにややこしいシナリオではありませんので、気軽に覗いてやって下さい。

 三周年の記念事業としては、他にも『剣士の求めVer2』や『邪なる僕』といったシナリオの発表で行っていますが、今日のこの日のために用意した『ささやかな宝』は、三周年のために用意したものです。
 
 マニアックなアイテムや、初心冒険者向けにちょっとしたプレゼントもあります。
 役立てて頂ければ幸いです。


2009/06/01 Ver0.90公開、Ver0.90´更新。
2009/06/03 Ver0.91、【銀細工の簪】バグ修正。 
2009/06/04 Ver0.92  【漢褌】、【護身の鉄扇】バグ修正。【閃きの角灯】威力調整。
2009/06/09 Ver0.93 バグ修正、口紅系属性変更、解説テキストに補足事項等。

 件のシナリオ『ささやかな宝』は 以下でDLして下さい。

 (Y字の交差路別院
お話 | コメント:17 | トラックバック:0 |

邪神官用店シナリオ『邪なる僕』開設!

 最近、全然シナリオを作ってなかったので、ここで一発敵役のNPC用に使えそうなシナリオを作ってみました。
 どう見ても悪人専用です。

 内容は邪神官用の店シナリオで、リソースとしての意味合いが強いシナリオです。
 スキルのシステムも単純で、適応は容易でしょう。
 
 一応リューンの神聖魔法に対抗したような内容にはしてあるのですが。
 
 テストを終了し、正式版として公開致します。
 インポートに関する規約も付けました。
 (詳しくはシナリオ付属テキスト、『#著作情報』を御読み下さい)

 インポート報告は、この記事にして頂いて結構です。
 
 感想、バグ報告、お待ちしております。
 (この記事にコメントをお願い致します)

 
2009/05/16 Ver0.91。バグ修正とスキル二つ追加。
         氷羽さん、バグ報告有難う御座います。 

2009/05/16 Ver0.92。バグ修正&誤字修正。
         氷羽さん、バグ報告有難う御座います。
         新スキルの方、致命的バグが起こらないように修正してみました。
         今度はちゃんとカードによる自爆っぽいかたちにしてあるので、
         敗北イベンの静止はおきないかと。


2009/05/17 Ver0.92´。
         この日12時36分前に数分間DLできたVer0.92は改変不良で、
         バグを内包しています。交換時にマシントラブル等でUPが遅れました。
         お許し下さい。ダッシュがついてるバージョンが最新版です。
         ついていない方は、御迷惑をおかけしますが再DLをお願い致します。


2009/05/17 Ver0.93。解説文修正。Lohengrinさん、御報告有難う御座います。

2009/05/18 Ver0.94。スキル【悪食の蟲】変更。バグ修正。
         氷羽さん、バグ報告等有難う御座います。


2009/05/19 Ver0.95。バグ、システム修正。
         氷羽さん、フーレイさん、御報告有難う御座います。
         スキル、アイテムのバグ修正はありません。


2009/06/04 Ver1.00。災禍教徒と_災禍教徒に対応。
         テスト版終了につき正式版としてギルドに公開。


 件のシナリオ『邪なる僕』は以下でDLして下さい。

 (Y字の交差路別院

自作シナリオ | コメント:15 | トラックバック:0 |

PC3:ゾーヤ

 カードワースダッシュリプレイ・ピカレスクは、悪人PCを題材にしたカードワースリプレイです。
 
 年齢制限を設けるほどの内容ではありませんが、気味の悪い表現や、悪人的行動の描写で不快になる方がいらっしゃるかもしれません。
 このリプレイを読まれて、気分が悪くなっても、Y2つは責任が持てませんので、よろしくお願い致します。

 それを踏まえた上で、自己責任で続きを御読み下さい。(ぺこり)

 今回はかなりマッドで猟奇的なので、重ねて申し上げますが、責任はとれません。
 悪しからず、御了承下さい。






PC3:ゾーヤ…の続きを読む
CWD:リプレイ ピカレスク | コメント:7 | トラックバック:0 |
| HOME |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。