CWPC1:オルフ

2007.02.13(12:10)

 北方の戦場で男は戦っていた。
 
 周囲では絶えず剣戟の音が響き、むせ返るような血と鉄の臭いが満ちている。
 
 駆け寄ってくる粗末な鎧の兵士を斬り伏せ、刃こぼれだらけの剣の柄でもう1人の敵を薙ぐ。
 返り血の粘りつくような不快感に慣れたのは、いつのことだっただろうか?
 
 男は眉をひそめ、肺に溜まった血の香りのする濁った空気を吐き出すと、再び剣を振るった…
 
 
「…朝、か」
 
 空が白んで、目蓋に鋭い朝日の光が突き刺さってくる。
 額に滲んだ汗を拭い、水袋からきな臭くなった水を一口啜ると、男は立ち上がった。
 
 がっしりとした体格の大柄な男である。
 
 厳つい顔だちに鋭い眼光。
 髪は伸びるにまかせ、まるで獅子の鬣のようである。
 角ばった顎には無精髭が針のように生えていた。
 手の甲と頬には霜焼けの痕…寒冷な北方人の証である。
 
 腰にはやや大きな、古びた剣を下げている…古道具屋でも二束三文にもならない数打の安物だった。
 服装といえば、みすぼらしいつぎはぎだらけの外套…というよりは襤褸だ。
 皮製の胸当てを着けているが、傷が多く、斑に染み付いた血の跡が汚らしい。
 
 …傭兵なら武具には金をかけるから、こんな貧乏臭い装備などしていない。
 詳しい者なら、男の掌にあるまめのつぶれてかたくなった痕が、農民が持つ手にできるものだと分かるだろう。
 
 男は兵役中の農民、といったところだった。
 …元農民といった方が正しい。
 祖国は2年も前に、敵国に滅ぼされてしまった。
 耕すべき畑は、実質作物を作っても搾取されるだけで、彼の物とは言い難かったが。
 
 1年間、敗戦国の元兵士として強制労働をさせられ、恩赦とは名ばかりの厄介払いで兵士として再び借り出され、そして自分の属していた隊は敗北した。
 
 男の知っている戦争は、いつも負け戦だった。
 
 男は北方にあった小さな国の、国の中でしか威張れない貴族にこき使われる貧農の次男として生まれ、13歳で無理やり兵士にさせられた。
 彼が初めての殺人をして、死に掛けて…なんとか生き残った後も、負け戦を繰り返した男の亡き故国は、大国に蹂躙されてあっけなく滅んだ。
 
 諸国の乱立する男の住む地方は小競り合いが多く、小さな国家は戦争で淘汰される。
 男のように、祖国を失った者も多い。
 
 生き残れる者は少数だった。
 
 多くの兵士は、栄養の行き届かない身体で慣れない武器を振るって、ただ死んでいく。
 自分が何故戦っているのかと考え込めば頭を割られ、悲観すればその胸を貫かれる。
 悩む余裕も無い者は、悪運が強い者だけが生き残り、生き残った者も新しい戦いや虜囚としての苛酷な環境で次々と死んでいく。
 追い討ちをかけるように、北方の冬は弱者にとりわけて厳しかった。
 だが、生き残った者の心にも虚しさがあるばかりだ。
 なぜなら、死ぬのが延びたに過ぎないのだから。
 
 帰る国を失った男のような敗残兵のできることは、ただあても無くさまようだけだった。
 
 手持ちといえば、わずかな装備だけだ。
 懐には銀貨1枚すら無い。
 これでは一晩の宿すら泊まれない。
 
 ここ数日は雪解け水を啜り、野草を生のまま齧る日々。
 農民時代、食べれるものなら何でも食べた経験から、食せる類の野草は知り尽くしている。
 貧しかった故に知恵を得て生き残れたことも、果たして幸せと言えるのか分からない。
 
 男はゆらりゆらりと歩きながら、今までの人生を振り返ると唇を噛み締めた。
 
「…また残っちまったか」
 
 自嘲的に呟く。
 
 強制労働から解放された男が、次に送られた戦場はラトリアという小国であった。
 
 彼の祖国を破ったギマール共和国が、ライバルとされるマルディアン帝国とラトリアの領土を巡って争っていた。
 男はギマールの歩兵として、恩赦を得られる代わりに最前線に立たされ、ラトリア軍との戦いに参加していた。
 しかし、たいした力の無いラトリア王国軍を破った後、疲弊したギマール共和国軍の隙をついてマルディアン帝国軍が、ラトリアの王都を陥落させていた。
 ギマール共和国軍は侵略兵として追われ、男の部隊は軍に真っ先に見捨てられた。
 
 おそらく、男を含めた恩赦と名ばかりの兵士たちは、死んだものとされるのだろう。
 戻ってもまた戦わされるかもしれない。
 不幸中の幸いか、敵国は拠点確保に夢中で敗残兵狩りは穴がある。
 戦場からそれほど離れていない場所で寝こけていても、見つからないぐらいなのだ。
 
 男はふと灰色の空を見上げる。
 
 自分が徴兵された時、泣いてすがった母を思い出した。
 風の噂に、男の村が今まで彼の属していたギマール共和国軍によって皆殺しにされたと聞いている。
 
 皺だらけの手、まめのつぶれて硬くなった掌で撫でてくれた父。
 男より要領が良く、ひょうきんだった兄。
 2人は徴兵されて、戦場で死んだ。
 
 美しい髪が自慢だった妹は、ろくな食事が取れず、流行り病であっけなく死んでしまった。
 
 ただ1人の肉親である母も、重税と過労で痩せていた。
 きっと、殺されてしまったのだろう。
 あるいは村が滅ぼされる前に、死んでしまったのかもしれない。
 
 群雄割拠する北方ラダニール諸国。
 その底辺にいるものは、搾り取られ、こき使われ、磨り減ることに慣れてしまっている。
 男もまた、そんな人間の1人だった。
 
「…でも、俺はまだ生きている」
 
 北方の冷たい風でずれた襤褸を、ぐい、と直し、また歩き出す。
 
 灰色の空からわずかに刺す日差しの下を、男…オルフは目的も無く歩いていった。

 
 
 しばらくお休みだったリプレイですが、後にシグルトの親友となり、同じ北方出身の冒険者として肩を並べる英傑となる“嵐を砕く者”のリーダーとなるオルフたちのリプレイを始めます。
 “風を纏う者”とのクロスのため、“嵐を砕く者”の成長の後に第一パーティの復活に行こうと思います。
 
 今回登場したオルフは、製作が止まっている『剣の英雄』の舞台となる北方ラダニール地方出身の戦士です。
 舞台設定の紹介や、モチベーションアップのために、性懲りも無く内容を増やしていますが、ぼちぼちと更新していく予定です。
 
 同時に、オルフはフォーチュン=ベルのスキルや『焔紡ぎ』の剣術紹介をやりたいと考えています。
 最初から『焔紡ぎ』の【担ぎ颪】を習得しているという設定です。
 『焔紡ぎ』のワディムですが、時代の設定から、彼は登場しません。
 しかしながら、そのスキルを紹介していければ、とは思っています。
 
 また、現在拡張中の『風屋』のアイテムなどもこっそり登場します。
 今回は一切の特殊型無しですが、かなり優秀なパーティです。
 顔ぶれも特殊ですし。
 パーティの顔ぶれは、だんだん紹介していきます。
 
 さて、今回重苦しい雰囲気で登場したオルフですが、北方の貧農出身という設定で、何度か作り直して使っているPCです。
 彼等は私のお気に入りで、“嵐を砕く者”も、“ストームブレイカーズ”という昔のパーティ名からつけました。
 PCの情報は細かく違いますが、初期の頃は4人パーティで始めた、かなり内容の濃い連中でした。
 オルフはそのリーダーで、粗野な好漢という感じです。
 “風を纏う者”のメンバーでは出ませんでしたが、粗野口調、好きなのですよ。
 シグルトのようなハンサムではありませんが、ある意味シグルトより渋くて格好良いかもしれません。
 
 能力も完璧な戦士タイプで、バランスも優れています。
 通常の型でも、優秀なPCは十分に作成できます。
 
 オルフは職人型の地味な路線で、渋く行きたいなぁと思います。
 楽しんでいただけたら幸いです。
 
 
◇オルフレン ラインダー(オルフ)◇
 男性 若者 勇将型

下賎の出   田舎育ち   貧乏
誠実     無欲     進取派
鈍感     楽観的    勤勉
地味     謙虚     粗野
武骨     硬派     お人好し
 
器用度:3 敏捷度:4 知力:4
筋力:11 生命力:9 精神力:7

好戦性+1 勇猛性+2 大胆性+1 正直性+1 
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コメント
こんばんはm(__)m

オルフさん・・・やべー!!かっこよすぎる!!としか、表現のしようがありません。まさに、いぶし銀!
地味だけど、凄くカッコイイ人です!!
Y2つさんが、生み出される男達は、本当にカッコイイです!!
それにしても、悲しい人生を送ってきた人ですね・・・
彼の残りの人生が、波乱にとんでいても幸福である事を祈ります。
また、胸が躍る冒険譚、お待ちしてますね♪
※プレッシャーになってしまったら申し訳ありませんm(__)m

【2007/02/20 00:00】 | らっこあら #mQop/nM. | [edit]
 いらっしゃいませ~
 
 オルフは霜焼けの痕が渋い、武骨な北方の戦士のイメージです。
 
 髪はざんばらで厳つい顔で、すごむと子供が泣き出しそうな強面で…
 でもお人好しで不器用に、精一杯生きようとする、漢くさい兄貴(スキンヘッドでマッチョなアレじゃないですが)です。
 
 主人公は必ず美形…というのは面白くないので、私、この手のいぶし銀キャラも好きです。
 
 オルフの未来は多分、波乱万丈です。
 死にそうにもなるでしょうし。
 
 彼はまだ旅立ったばかりで、幸せを考える余裕もありません。
 彼がどうやってリューンに行くのか。
 そしてどんな困難に出会うのか。
 
 それはまだ私にも分かりません。
【2007/02/20 18:14】 | Y2つ #TIXpuh1. | [edit]
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