CWPC3:フィリ

2007.02.24(02:36)

 その男は、近寄ってくる兵士を十字を象った美しい大剣で斬り倒した。
 たった一撃で、斬り伏せられた兵士は声も上げす絶命していた。
 
 病的なまでに白く血の気の無い顔立ちは中性的で美しく、退廃的な雰囲気を纏っている。
 口元に浮かべた笑みは、戦場では敵を恐怖させる不気味な迫力をかもし出していた。
 
 派手な刺繍をした、しかし全体的には質素な紺色の上着を着ている。
 それはどこか僧服に似た作りであった。
 首からさげたロザリオや持った剣からしても、敬虔な聖北教徒であることが見て取れる。
 
 他の兵士が簡素でも鎧姿なのに対し、随分と浮いた格好ではあったのだが…
 
 慈悲の笑みを浮かべて男が振るう剣は、一撃一撃が必殺であった。
 兜の上から頭を叩き割られ、また1人兵士が倒れる。
 
「芸のないことですね。
 
 罪深き略奪の輩は、煉獄の炎に焼かれるのがお似合いです。
 …修道院を襲うなど、許されることではありません。
 
 主の怒りを知りなさい…外道ども」
 
 首を刎ねられ、血を吹いて兵士が倒れ伏す。
 
「ひ、ひぃ…
 
 お、俺は上の命令でやっただけだっ!
 それに、俺はあんたたちの味方なんだぜ?
 あんたたちを雇ったのは、今回は俺たちマルディアンの方…ぐぎゃぁっ!」
 
 全てを語らせる前に、男は喋りだした兵士の頭蓋を割った。
 
「…ここには、光り輝く聖女様がおられたのです。
 
 その場所を汚した貴方たちは、死すら生ぬるい。
 悪魔のいる地獄がお似合いですよ」
 
 男の味方たちすら震え上がる迫力だった。
 一見優男に見える男は、修道院を襲ったマルディアンの兵20名ほどのうち半数をただ1人で斬り殺していた。
 
「や、やべぇよ…
 
 いくらなんでも、味方を…」
 
 優男の部下らしい男が、引きつった顔でおそるおそる声をかけた。
 
「…おかしいですね?
 
 ここを襲ったのは〈敵国ギマールの兵士〉だったはずです。
 私たちは悪辣な逆賊を退治して、神聖なる園を守った…
 
 私の殺したのは味方だと?
 無抵抗の修道士から聖印を奪い、修道女に乱暴を働いた下種どもが、仲間?
 貴方の目は腐っているのですか?
 
 …それとも、貴方もこの輩と同じ悪の手先だとでも言うのですか?」
 
 優男は剣を振るって、剣についた血をビシャリと払う。
 飛んできた血を浴び、優男に話しかけていた男は、ひぃ、となさけない声を上げた。
 
「…違うというなら、ほら。
 頑張って主の怨敵を屠りなさい。
 まだ少し残っていますよ。
 
 貴方にその大役をまかせましょう」
 
 返り血を拭いつつ、ニコニコと笑う優男にコクコクと頷くと、その男は走り去った。
 
「…えげつねぇな、ジョージ。
 
 ま、やる以上は徹底的にやるってのは俺も賛成なんだがな。
 全く貧乏くじだぜ、お前のお守りはよ」
 
 髭面のたくましい男が歩いてきた。
 手に持った剣は血に染まっている。
 
「…ナルグさん、いつも言っていますが、私の名はアレクセイです。
 
 聖名を呼ぶならゲオルグ。
 適当に呼ばないで下さいよ」
 
 拗ねたように口を尖らすと、優男は大剣を背負った。
 
「いいじゃねえか。
 ゲオルグってのは有名な竜退治の聖ジョージのことだろ?
 
 …呼びやすいしよっ」
 
 がはは、と笑う髭面。
 優男、アレクセイは大きな溜息を吐いた。
 
「ま、疲れた顔するのも、問答も後だ。
 
 まだギマールの敗残兵どもも、いるようだしな。
 バレねぇよう、しっかり〈敵〉は狩らねぇといけねぇ…」
 
 歯をむき出して、髭面は下品に笑った。
 
 アレクセイという優男と、ナルグというこの髭面の男は〈雪狼団〉という傭兵団に属す将兵である。 
 
 この度のラトリア征服において、勝者がマルディアン帝国になったのにはアレクセイたち〈雪狼団〉の活躍ゆえであった。
 “魔狼”の異名をとる隻眼の猛将ビュリカが率いる傭兵団〈雪狼〉の武勇はラダニールで知らぬ者はいない。
 
 戦争の多いラダニールで、彼ら傭兵は花形であった。
 
 〈雪狼団〉の団長ビュリカは、早くから傭兵として大成し、ラダニールの戦場を巡って走り回り、敗戦で生まれた元軍人の浪人や荒くれ者、戦災孤児を集めて数千からなる傭兵団を組織した。
 戦場で生き残り、磨かれ、屈強の精鋭となった戦の申し子たちは、ビュリカという王狼の元、戦いという狩りに酔いしれていた。
 
 ラダニールでは最強の傭兵団として知られ、ビュリカはその武勇と男ぶりから、〈ラダニール五雄〉の一人と呼ばれた。
 
 マルディアン帝国の若き剣聖、“天剣の将”レグジード。
 エルトリア王国の大将軍、“銀髪の猛虎”カーライル。
 ギマール共和国の元首、“静寂の暴君”ジュナス。
 ギマールの大将、“黒龍将”ガダウス。
 そして国無き傭兵団首領、“魔狼”ビュリカ。
 
 五雄以外にも名の知られた英雄たちはたくさんいる。
 ラダニールは群雄割拠の時代であった。
 
 ナルグは〈雪狼団〉の副団長で、実質ナンバー2だ。
 “銀刃の牙”と恐れられる屈強の剣豪である。
 
 アレクセイは、まだ10代後半という若さで小隊を任されている。
 ナルグが戦場で拾い、そして育てた秘蔵っ子であった。
 蛮勇の傭兵たちに在って、その剛勇は“裁断者”という二つ名とともに知られ始めていた。
 
「…で、お前のお姫様がこの修道院にいたってことだな?」
 
 ナルグは周囲を警戒しながらアレクセイに問う。
 
 アレクセイはラトリアの貴族の生まれながら、家の没落で身を男娼に落とし、その後に罪を犯して逃亡。
 戦場で彷徨っていたところをナルグに拾われたという壮絶な過去を持つ。
 
 今回のラトリア征伐で、貴族出身のアレクセイの土地勘は〈雪狼団〉に大きく貢献した。
 
 加えてアレクセイはエルナの親戚である。
 彼の母はエルナの母親と従姉妹同士で、アレクセイはエルナの婚約者の候補の1人だった。
 そして、幼少の折には遊んだ記憶もある。 
 
「…“私の”とは恐れ多いのですが。
 
 大切な方です。
 そう、私のマリア様なのです」
 
 熱に浮かれたように、アレクセイは拳を握り締めて天を仰いでいる。
 それを見てナルグは口端を引きつらせた。
 
「あいもかわらず、臭ぇこというな、お前。
 
 俺にはできねぇぜ、《私の…》、うげ、鳥肌立ってきやがった」
 
 ナルグの失礼な言い草も気にせず、アレクセイは自分の世界に浸っている。
 
「そう、あれは忘れもしない。
 
 私が6歳の頃…
 初めてあったあの方は、その白雪のような頬を紅く染めて微笑み、私をアレクと呼んで…」
 
 ナルグは本気で耳を塞ごうとして、しかし急に鋭い目をした。
 
「ふ、副だんちょぉおおおお!!!」
 
 叫んで走ってくる男がいた。
 ナルグたちの仲間である傭兵たちである。
 
「どうした?
 
 イエティにでも出くわしたような面しやがって…」
 
 至極冷静にナルグは聞く。
 アレクセイも押し黙った。
 
「そ、それが…
 
 先行していたマルディアンの野郎どもが、殺されてやがるんです。
 あと、殺されたらしい婆さんが1人。
 
 見てくれからいって、死体の兵士どもは寄せ集めみたいですが、5人もだ。
 
 かなりの使い手かもしれねぇ」
 
 アレクセイは即座に走り出した。
 それにナルグも続く。
 
「…お前の言うカーティン家のお姫様か?
 
 ギマールの連中に攫われたとしたら、痛いぜ。
 なにしろ、ラトリアの残党を束ねる総大将の娘だ。
 
 なんとか俺たちが確保しねぇとな」
 
 走りながらナルグが言うと、アレクセイは苛立ったように奥歯をぎりりと噛み締める。
 
「あの方を人質や政治の道具のように言う、ナルグさんの言葉には癪ですが…
 それはまた後で話しましょう。
 急がなければ…
 
 あの方を保護し守るのは、この私の役目。
 ギマールの悪漢などに指1本触れさせるものですかっ!!!」
 
 アレクセイは秀麗な顔を強張らせ、八重歯をむき出して疾走した。
 
 
 その頃…
 オルフとエルナは休息を終え、これからの対策を練っているところだった。
 
「俺はこのまま西に行って、ギーガー河を下ってイルファタルに出るつもりだ。
 
 イルファタルの港からなら、南にいけるし、そこまで追ってくる連中もいねぇだろうしな。
 こっからあの森を越えて一端ゼセルダ湖に出ちまえば、国境は無ぇ。
 
 河や湖の水賊に注意すれば、連邦を通って山脈超えもできる。
 河の道は、ラダニールを抜ける時に限ってはわりと楽だって話だぜ」
 
 オルフのいう連邦とは、アドルリア連邦と呼ばれる小国や都市国家の集まってできた連合国家群である。
 近年勢力を増しつつあるマルディアン帝国とギマール共和国に対し、警戒した諸国が集まって生まれた長細い国だ。
 ラダニールの北、、西の大半と南に欠けた月のような形で集まって出来ている。
 
 多くは自治をする小都市の集まりで、南…つまり西方諸国との交易や海に通じる道も、ほぼ連邦の領土に属していた。
 
「お姫さんは湖を北に行って、そのままエンセルデルの法王庁まで行けばいい。
 
 カーティンの家柄なら、あの国は無下にはしないだろうからな」
 
 オルフは簡単な地図を描いて説明する。
 各国の分布と簡単に河と湖を書き込んだものだが、エルナは感心したように頷いていた。
 
「…驚いたわ。
 
 バドリアは、普通の民が字を書けるの?
 それに随分正確な地理を知っているのね」
 
 場違いな質問であるが、もっともなことである。
 
 学問は、思想を産み争いの火種となるため、貴族たちは平民が学問を学ぶことを嫌うのだ。
 オルフの出身国バドリアも貴族主義の国だったのだが、オルフのような貧農の識字率は皆無といってよかった。
 
「…バドリアが負けた後、長い間戦争犯罪人扱いで掴まっててな。
 何年かギマールの捕虜収監所で強制労働させられていたんだが…
 
 政治犯って罪状で掴まってた相部屋の爺さんが、夜中にこっそり字や地理を教えてくれたんだよ。
 俺みたいな賎民出の阿呆にも、分け隔てなく接してくれた。
 好い人だったな…
 
 俺は落ちこぼれだったが、学問は面白かったから寝るのを惜しんで教えてもらった。
 よく寝不足で、爺さんと一緒に監視にどやされてたぜ」
 
 余談であるが、オルフが学んだ老人は“共和の父”と呼ばれる北方の革命家サギーニである。
 彼は若き頃、ギマール共和国樹立に貢献したが、軍事国家に変容するギマールを非難して政治犯として囚われ、オルフがその最期を看取ったのだ。
 
 オルフが戦場で生き残ってこれたのは、サギーニに学んだ学問のおかげでもある。
 
 ギマールと言えば、かつては学問と自由の国であった。
 
 南にあった帝国のかつての共和制から学び、この閉鎖的なラダニールに新しい文化の一石を投じたとも言われている。
 アドルリア連邦樹立の父ハースや、神学に革命をもたらしたガレグリオ枢機卿。
 クラウスの摂政“北の麗賢”エルデリーダの師である大賢者グリーデンも、軍事主義に変わる前のギマールの学徒であった。
 
「…ま、こんな話は置いておいてだ。
 
 お姫さん、あんたはどうするんだ?」
 
 話を戻したオルフ。
 エルナは強い意志を宿した瞳でじっとオルフを見返した。
 
「…私も一緒に南に行きたい」
 
 信じられないという顔で驚くオルフに、エルナは弱々しく微笑んで話を続ける。
 
「これから私の父は残ったラトリアの者たちをまとめ、第三王女セリニア殿下を奉じてラトリアの復旧活動を始めるでしょう。
 
 間違いなくマルディアンに、反乱分子として狙われることになるわ。
 そんな時、娘の私がこのラダニールに存在すれば、政治の道具手して狙われ、掴まれば父たちにも迷惑をかけることになるでしょう。
 
 法王庁にも、各国の影響は強いわ。
 ラトリアを滅ぼしたマルディアン出身の枢機卿もいる。
 
 このラダニールは私の安住の地足りえず、私という存在は争いの火種になりかねない。
 
 マーサは親戚の貴族を頼って、エンセルデルの法王庁に行くべきだと言っていたけれど…
 私は、ラトリアが滅んだ時にこのラダニールから出ようと考えていたの。
 でも結局、行くあても無くて迷っていた。
 
 …そんな時、貴方に遇ったわ。
 
 貴族育ちの私に、できることなんて少ないでしょう。
 けれど、私は利用されるだけの道具にも、親しかった人たちの荷物にもなりたくない。
 だから、その…
 
 オルフと一緒に、南に行くのは、ダメかしら?」
 
 腕を組んでオルフは考え込む。
 そして、吐き出すように低い声で答えた。
 
「…正直、俺も行くあてなんて無ぇ。
 戻る国も無いし、ギマールに戻ってもたぶん戦争三昧で終わっちまう。
 
 だから、とりあえず南に行くだけだ。
 
 どこで野たれて死ぬかもわからねぇ。
 この国を出るのだって、できるかあやしいところだ。
 
 …それでも俺についてくる気か?」
 
 エルナは強く頷いた。
 
「…貴方が許してくれるなら。
 
 それに、お互い何も無いなら、2人でならできることもあるかもしれないわ。
 その、逆に迷惑をかけることに、なるかも知れないけど」
 
 オルフは正直なエルナの言葉に苦笑いする。
 
 エルナとは、何れ別れると考えていた。
 しかし、長い間孤独だったオルフは、どこか妹に似ているエルナと別れることを寂しく思っていた。
 
「…《麦の穂は茎があって実る》か」
 
 頼るもの無くして物は存在できない。
 人も協力して生きるべきである、という意味の故郷の言葉。
 
「…おぉ、いい言葉。
 
 兄さん博識だねぇ」
 
 突然の声に、即座にオルフは剣を構えた。
 エルナも緊張したように、声のした方角を見る。
 
「待った待ったっ!
 
 敵じゃないっての。
 とりあえず名乗らせてよぅ…」
 
 そういって近くの茂みからひょっこりと現れたのは、驚いたことに子供の上半身だった。
 
 年の頃は12、3か。
 短いアッシュブロンドに、灰色の瞳。 
 背には弓を背負っているが、弦は張っていない
 腰に手斧を吊り、動きやすそうな服と革製の簡易防具を身につけている。
 
 子供は愛想笑いを浮かべつつ、慎重に近くの茂みから這い出してきた。
 
「ボクはフィリ。
 
 西方諸国…というか、ここからだと南になるのかな。
 あっちの方から仲間と旅してきてたんだけど、戦争に巻き込まれてはぐれちゃってね~
 
 この国での目的は果たしたんだけど、1人でほっぽリ出されて困ってたんだ。
 
 さっきなんか、血走った目をした兵隊どもが走り回ってて、慌ててここに隠れたんだけど…
 疲れて寝てたら、お兄さんたちが話をしててさ。
 
 そしたら、なんだが仲間になれそうな人たちみたいでしょ。
 しかも、南に行こうって話しじゃない。
 
 いや~、天の助けというか、運命だねこれって」
 
 馴れ馴れしくまくし立てる子供に、オルフとエルナはぽかんとした顔になった。
 
「この辺の地理は弱いけど、イルファタルから西方諸国に行くルートは知ってるよ。
 
 お兄さん強そうだし、もし協力してくれるならボクも手を貸す。
 突然な話だけど、西方諸国に着くまで仲間にならない?」
 
 待て、とオルフは落ち着こうとして子供の言葉を遮る。
 
「突然の話で、訳がわからん。
 
 フィリだっけか?
 坊主、お前…」
 
 途端、子供はぐいとオルフに近寄って指を突きつけた。
 
「お兄さん、レディに対して坊主は失礼だよ。
 
 ボクは女の子。
 ぴっちぴちの12歳だよ」
 
 よく見れば線の細さや微妙に腰の丸みから、この子供が女であろうと分かる。
 
「この格好は、世知辛い旅で、血の気の多い狼さんたちから身を守る処世術ってやつなんだよ。
 
 女の子ってだけで、鼻息の荒くなる変態さんもいるしね。
 いたいけな少女に乱暴するなんて、ほんと悪い人たちだよ。
 
 そういうわけで、ま、間違われるのは仕方ないんだけどね~」
 
 すっかり相手のペースに飲まれ、オルフとエルナは顔を見合わせた。
 やがて、エルナが恐る恐る話しかける。
 
「あのね、フィリちゃん。
 
 それで、あなたは私たちと一緒にイルファタルに向かいたい、ということなのよね?」
 
 エルナの問いに大きく頷くと、フィリと名乗ったボーイッシュな少女はニカリ、と笑った。
 
「贅沢を言えば、はぐれた仲間の1人と合流して帰れれば嬉しいけどね。
 
 そいつ…バッツて奴なんだけど、根性無いかわりに女の名前覚えるのと逃げるのは得意なんだ。
 アイツの力を借りれば、さらに逃げやすくなると思うよ。
 
 気難しい奴だけど、お姉さんがちょっと目を潤ませて「お願い」すれば、楽勝、楽勝。
 
 はぐれた時はラトリアの西の国境線にある森で落ち合うことになってるから、そこに向かえばきっと会えるよ。
 
 1人より2人、2人より3人、3人よりは4人、ってね。
 
 それに、さっきの様子からすると行く当ても職のあてもないんでしょ?
 
 ボクたちが来た西方諸国の、リューンていう交易都市にいけば、職の1つぐらいは何とかできると思うよ。
 このあたりより戦争が少なくて楽しいところだってことは、保障するし。
 
 ねっ、ねっ、手を組もうよ~」
 
 オルフとエルナは互いに肩をすくめると、頷きあって苦笑した。
 
 
 その後、オルフ、エルナ、フィリの3人は西に向けて出発した。
 始終賑やかに喋っているフィリは、旅なれた様子であった。
 
 話の内容は、このラダニールに来てから見た街や、出会った戦争についてが主である。
 
「…というわけで、南のエルトリア王国はいい国だったのよ~
 さすがは名君“雪原の獅子”が治めてるだけあるよね。
 
 知ってる?
 あの国って、平民出身でも強くて頭さえよければ軍学を学べる、修士館という学校があるんだって。
 最近、修士館出身であの国の王女様が、将軍職に推挙されるって言う話だよ。
 女性の仕官が認められているんだ。
 
 女性の権利が確立されてるなんて、進んでるよね~
 このあたりって、すごい女性差別する国が多いでしょ。
 ボクも子供で女だからって、随分酷い態度を取られてるんだよね」
 
 フィリの賑やかさに辟易しつつも、この少女の陽気さは随分2人の心を慰めていた。
 
 話によると、フィリはこの年で冒険者という職業なのだという。
 
「いや~、故郷が黒死病にやられてさぁ。
 街ごと燃やされちゃったんだ。
 
 ボクは父さんが町外れに住む狩人だったから、病気には罹らなかったんだけど、街を焼く兵士に怒った父さんはあっけなく殺されちゃってね。
 お母さんはボクが小さい頃に死んじゃったから、天涯孤独になっちゃったの。
 仕方なくリューンに流れていって、そこで子供でもなれる冒険者って職業を見つけて就職したというわけ。
 
 今回の旅は初仕事で、イルファタルまで相棒と荷物を届けるだけだったんだけど、荷物をスリにやられてこんなところまで追いかけて来たんだよ。
 そのスリが、荷物を渡す相手の敵対組織の連中で、何とかこの国のウェイデンの街で捕まえたんだけど、見事に戦争に巻き込まれちゃったんだ。
 
 ところで…お兄さんはギマール軍の兵装だから兵士として、美人のお姉さんはお坊さん?
 それにしてはちょっと服装が違うみたいだけど…」
 
 エルナの衣装は修道服ではあるが、刺繍などの細かい部分が違う。
 全体的にもかなり良質のものだ。
 
「私は…」
 
 自分のことを正直に話そうとするエルナを、慌ててオルフが止める。
 しかし、エルナは微笑んで首を横に振った。
 
「これから仲間になる人に、嘘はいけないわ、オルフ。
 
 …ごめんなさいね、彼に悪気はないの。
 私の出自は、下手に話すと危険を伴うから。
 
 あのね、フィリちゃん…
 エルネード マリア カーティンというのが私の本当の名前。
 ラトリア軍第一軍将軍、ワイルズ アントニヌス カーティンの娘よ。
 
 父はウェールハインの領主で、侯爵の名誉を戴いているの」
 
 フィリが驚きで目を見開いて硬直する。
 
「え、え~、えぇっ、えっ?!
 
 カ、カーティンって、もしかしてあの“白銀の勇将”ワイルズ将軍?
 ラトリア最強の英雄で有名な?」
 
 ワイルズ将軍といえば、国際的な英雄である。
 彼をラダニール十傑という枠に数える者もいるぐらいだ。
 高潔で民を大切にする気質は多くの支持者を得、人はワイルズを名君と評している。
 また貴族に伝わる古い剣術の使い手で、ある意味、カーティン侯爵家はワイルズの武勲と共に語られるほどだ。
 
「そ、それじゃあ、噂に聞いたワイルズ将軍の一人娘って、お姉さん?
 
 す、凄い大人物じゃないっ!!!」
 
 そんなことないわ、とエルナが微笑むが、フィリは興奮した様子だった。
 
「わ、わかった。
 
 絶対、秘密にする。
 ボク、約束は守るから。
 
 信頼してくれて話してくれたんだもん」
 
 フィリの言葉に、エルナは嬉しそうにその手を取る。
 照れくさそうに笑うフィリ。
 その横でオルフは安堵したように息を吐いた。

 
 
 能天気おしゃべり娘フィリの登場です。
 豪傑型なのに盗賊業も出来そうな能力。
 しかも腕っ節も強い。
 
 豪傑型でも必ず戦闘バカになるとは限らないです。
 
 フィリはマイペースを地でいくタイプです。
 どこか“風を纏う者”のラムーナに似てますが、ラムーナが周りを意識するのに対し、フィリは身勝手に飄々としている感じです。

 彼女のマシンガントークとおちゃらけぶりは、周囲をぽかんとさせる勢いがあります。
 しかし、この娘の凄いところはただのおしゃべり娘ではないことです。
 
 次回、彼女の活躍ぶりにて、その一端をお見せしますね。
 
 
 フィリのデータは以下の通り。 
 
◇フィランヌ レミ(フィリ)◇
 女性 子供 豪傑型

不心得者   誠実     冷静沈着
利己的    混沌派    好奇心旺盛
穏健     楽観的    遊び人
陽気     繊細     お人好し

器用度:9 敏捷度:5 知力:4
筋力:8 生命力:5 精神力:4

好戦性+1 社交性+1 勇猛性+1
慎重性+1 狡猾性+1 
 
 
 尚、今回最初に登場したアレクセイはらっこあらさんの作ってくれたキャラクターです。
 私にこういうキャラを渡すといじり倒すので…すみません。
 
 設定狂の蟲が騒いであんなのにしちゃいました。
 これからアレクセイは、度々登場するかと思います。
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コメント
おはようございますm(__)m
アレクセイ、私のイメージしていた通り・・・いえ、イメージしていた以上に、凄い人になっていて、とても嬉しいです(^^)
※嬉しすぎて、なんと書けば良いのかわかりません。申し訳ありませんm(__)m

フィリさん、なんだか一緒にいて楽しそうな人ですね♪
私も、話好きですので、気が合いそうです。
どんなパーティにも、フィリさんのようなタイプのメンバーがいると、和みますし、危ない冒険や場面でも頑張ろう!という気力がわいてきます。
能力的にも、なくてはならない存在だと思うのですが、マシンガントークな部分などは、辛い冒険や戦の時代の中で、とても癒しになってくれる気がします♪

また、ナルグさんの描写もとても、素敵でアレクセイを「ジョージ」と呼ぶ辺りが、素敵です。
一見いい加減な感じがしますが、台詞や行動にやる事はきちんとやるという、プロ意識がにじみ出ていて渋いです。
国の設定や、英雄の設定などとても、楽しく読ませていただきました。
どんどん目が離せなくなる、「嵐を砕く者」。とても、楽しみです(プレッシャーになってしまいましたら申し訳ありませんm(__)m)
黒死病って、ペストのことですよね??
ペストの流行を知らしめる(?)絵で真っ黒な骸骨が、ラッパ(笛?)を吹いて、住民を先導している、絵を見たことがあるのですが、あれには本当に恐怖を感じました。
健康というのは、とても大事です。

いつも、楽しいリプレイをありがとうございますm(__)m
【2007/02/24 08:03】 | らっこあら #mQop/nM. | [edit]
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