Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

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CWPC2:レベッカ

 シグルトが宿帳にサインしていると、再び宿の扉のベルがからん、と鳴った。
 
「ん?…ああ、レベッカか」
 
 入ってきたのは茶色の髪をした背の高い女だった。
 
 歳は20代半ばに達しているだろう。
 聖北教会の禁欲的な坊主が見たら卒倒しそうなぐらい、肌を露出している扇情的な美女である。

 彼女が纏った、革でできているその服は胸元が大胆に開き、下半身を覆う革のスカートからはみっちりとした肉が覗いている。
 それでいて腰のくびれは8の字を連想させる見事なしまりだ。
 さぞかし好色な男にとっての眼の保養になるだろう。
 
 しかし親父は知っている。
 この女が身体をわざと見せて、相手の油断や感情のざわめきを起こして隙をつくり、それを利用する毒婦のような狡猾さをもっていることを。
 
「たっだいま~。親父さん、冷たいエールね~」

 艶っぽく紅い唇から出た第一声はなんとも甘い声だった。
 
「ちょっとまってくれ、また新しいのが来たんで宿帳に書いてもらってるんだ」

 親父はそういうと再びシグルトのほうに注意を向けた。
 
「あら、新入りさん?」

 そういってシグルトの顔を覗き込んだ女の顔がすぐににんまりとなる。
 
「あら~、好い男じゃない!
 
 私はレベッカっていうの。
 あなたは…シグルト?
 カッコいい名前ね~」
 
 宿帳で名前を確認した女は、馴れ馴れしく近寄るとシグルトの腕や首に触れようと、身を乗り出して行く。
 純朴な少年ならのぼせて倒れそうな状況だっが、シグルトは鬱陶しそうに身体を離した。
 
「男の誰もがそういうのを望むとは思わないことだ。
 
 あと、冷たいエールが飲みたいぐらいなら、こういう暑っ苦しいことはすべきじゃないな」
 
 隙のない、そして辛らつなシグルトの言葉であった。
 きょとんとしたレベッカを見て親父が吹き出した。

「はははっ!振られたなぁ、レベッカ」
 
 親父に笑われた女…レベッカは、傷ついたように大げさにうなだれると、シグルトから一つはなれた席に座ってだらしなくカウンターにもたれかかった。
 
 シグルトは何もなかったように、再び宿帳に書き込みを始める。
 
「親父さ~ん。
 海よりも深く傷ついたわ。
 私の心を美味しいお酒で満たして~」
 
 カウンターに空いた節穴をいじりながら、それほどこたえた風でもなく、レベッカは甘えた声で親父に酒を催促した。
 伏目がちに行うその仕草は実に扇情的だが、シグルトはまるで興味がないように、黙々と書き込みを続けている。
 
 よく見れば、レベッカは薄目で油断なくシグルトを観察している。
 口元には、わずかに笑み。
 
 本当に傷ついているのではなく、すべてこの女の演技である。
 
 親父はやれやれといった感じで陶器製のジョッキによく冷えたエールを注ぎ、その顔の前に置いた。
 レベッカは実に幸せそう顔でそれをぐい、とあおった。
 
「んん~、この一杯が私の幸せっ!」

 井戸で冷やされた程よい口当たりと、喉に絡む泡の痺れに満足げな声をあげて、彼女は二口目も楽しんだ。
 
 
「…これでいいか?」
 
 シグルトが差し出した宿帳を確認した親父は頷くと、シグルトの前にもストンとエールのジョッキを置く。
 
「俺の奢りだ…
 
 小さき希望亭にようこそ!」
 
 置かれたジョッキを不思議そうに見ていたシグルトは、やがてかすかに笑うと、ああ、と言ってエールをあおった。
 
 ふいにかちゃん、と側で音がする。
 
「新人シグルトにカンパ~イ!」
 
 いつの間にか気配もなくシグルトの近くによった女が、ジョッキを合わせて鳴らした音だった。
 
「…盗賊だな、あんた」

 シグルトは、エールを飲みながらぼそりと言った。
 
 盗賊…
 冒険者にとって陰であり、犯罪や裏の社会に通じていて仲間をサポートする職業である。
 冒険者が半ばごろつき扱いされる理由には、彼らの存在もあるからだ。
 ちょっと転じれば犯罪者そのものであり、泥棒…賊と呼ばれる行為も平気で行う連中である。
 冒険者のなかでも最も胡散臭い連中だと言われる。
 
 しかし、優秀な盗賊は冒険者に必須である。
 時に犯罪すれすれの危険な仕事をしたときに、彼らの知識やコネクションは大いに役立つし、犯罪組織の膨大な情報を引き出すときも彼らは活躍する。
 罠の解除や進入に必要になる解錠の業に、敵の背後を突く隠密の業。
 それらはまさに一つの技術体系である。
 
 レベッカはシグルトの言葉にあいまいな笑みで返した。
 
 
「うん、そうだ。
 レベッカ、お前こいつと組んだらどうだ?」
 
 唐突に親父が言い出すと、レベッカは気だるげに首を横に振った。
 そして、演技をかなぐり捨てた冷徹な彼女の素顔を見せる。
 だらしのない頭の緩んだ女の顔ではなく、鋭さを感じさせるほどの冷笑。
 
「この手の戦士っぽい男は掃いて捨てるほど転がってるわ。
 私が組みたいのはむしろ魔術師や僧侶ね。
 
 連中はすごく貴重だし」

 先ほどの甘えたものとは打って変わった、きびきびとした口調だった。
 これが本来の彼女である。
 
 シグルトは媚を売っても効果がなく、どうやらレベッカの本質を見抜いている。
 それに気がついたレベッカは、無駄なことは止めた。
 
 宿の親父はこういうレベッカの本質もよく知っている。
 派手な衣装も、扇情的な態度もすべて演技だ。
 
 怠惰ではあるが、この女は本来、地味で効率のよさを重視する。
 その仮面の下は、剃刀のように鋭利な刃である。
 
 レベッカは卑屈な態度をとることに慣れてしまったが、本心からしたいとは思わない。
 だから、その素顔をあらわにした。
 クールで利己的な彼女のもう一つの顔だ。
 
 親父はしらけた雰囲気をつくろうように皿を一つ取ると、磨きはじめる。
 
「…だが優秀な戦士は必要だろう。
 お前、こいつを見て判らなかったのか?」
 
 親父の言葉をレベッカはふん、と鼻で笑った。
 
「体格や筋肉がよくたって、剣の一本も下げてないお坊っちゃんはお断りね。
 素手で熊を殴り殺せるというなら話は別だけど。
 
 …まあ、親父さんの言いたいことは分かるわよ。
 この美形君が只者でないことぐらい、雰囲気で感じるわ。
 
 でも、私は見えるものと、自分で信用できるものから判断して選ぶわ。
 不気味すぎて、ごめんこうむるわよ」
 
 先ほどの仕返しとばかりに、シグルトにも聞こえる声で辛らつな評価を下すレベッカ。
 
 親父の手が止まる。
 
「そこが悪いんだお前は。
 
 お前は、慎重すぎる。
 そんなんじゃ、いつまでたっても相棒なんて見つからんぞ。
 
 そうやっていつまでも組まずにやってりゃ、他の連中にすぐ引き離されるぞレベッカ。
 お前は才能だけなら天才だ。
 若い頃にその技術を使って仕事をやってれば、今頃は一財産作れたかもしれなかったってのに。
 
 なのに、今はどうだ?
 
 あれだけ俊敏で優秀だったお前も、色気と脂肪ばかり付いてやがる。
 随分なまったんじゃないか、お前の腕も。
 そのうち脂肪が垂れて、皺が増えれば男も寄り付かなくなる。
 そうなればお前は腐っていくだけだ。
 
 怠け癖と食わず嫌いが極まれば用なしになるのがこの商売だ。
 せめて今月の飲み代を払えるぐらいには、仕事ができるようになるんだな…
 
 どうだ?
 とりあえず組んでみれば、仕事の範囲が増やせるぞ?」
 
 親父の言葉に、うっと言葉を詰まらせるレベッカ。
 
(脂肪が垂れて腐るですって?!
 くっそ~、気にしてることいいやがって…このハゲ茶瓶が。
 
 それにしても、ほんとツケのことになるとうるさい爺ね)
 
 親父が知ったら怒り狂いそうなことを考えつつ、レベッカはさっきから黙っているシグルトを眺めた。
 
 かつてレベッカは、若手冒険者の中でも一級の盗賊として知られていた。
 そのことが、逆に彼女につりあう仲間の結成を困難にしてしまっていたのだ。
 加えてレベッカは、仲間の選択において容赦がなかった。
 実力、性格、各役割をこなすスキル…
 それらが欠けた者には見向きもしなかった。
 そして、生き残るために慎重で臆病な盗賊としての当然の選択だと、レベッカは自負していた。
 
 レベッカにはそれだけ我侭な主張を通すだけの実力があった。
 しかし、そんな彼女に応えられる実力者は現れず、レベッカは力を埋もれさせたまま、半ば腐っていたといっていい。
 
 今では自棄酒に不摂生がたたり、随分身体がなまったと自身でも分かっている。
 一見肉感的な肢体も、脂肪が増えた結果である。
 
 そんな状態になった現在、彼女の心はもう動かなかった。
 
 退廃が心を満たしていた。
 その泥のような環境に埋もれたまま、のたれ死んでもいいとも思うほどに、レベッカの心は荒廃していた。
 
 実力云々など、もうどうでもいいのだ。
 様々なことをあきらめてしまったレベッカは、もう新しく仲間とパーティを組む気にはなれない。
  
 苦虫を噛み潰したように、ふてくされていると、その横でシグルトは最後のエールをぐっと飲み干した。
 そして、流れるような動作でレベッカを見返す。
 その深い色の双眸が、レベッカの両目にぴたりと視線を合わせた。
 
(…うはぁ。
 
 このミステリアスな眼で見つめられたら、小娘ならイチコロねぇ)
 
 胸を震わすようなその視線すら、余裕の表情で笑みさえ浮かべて見つめ返す。
 
 レベッカは恋愛や男女のときめきなどというもの関しては、冷め切っていた。
 男を見つめるとき、色恋は交渉のための武器でしかない。
 
 泰然と見詰め合うことしばし、シグルトのほうがかすかに表情を変える。
 口の端を吊り上げて、笑ったのだ。
 どこか困ったように傾いた秀麗な眉。
 それは、〈苦笑〉というのがもっともしっくりとくる表情だった。
 
「…魔術師なら心当たりがある。
 加えるなら、その魔術師は俺の仲間だ。
 
 あんたが盗賊なら話は早い。
 その条件なら、しばらく組んでみる気になるか?」
 
 突然の誘いに、レベッカは珍しく本当に唖然とした顔になった。
 
「…びっくりね。
 
 冷たくしたら何でいきなり態度が変わるのかしら?
 そういう女が好みなの?」
 
 取りつくうように、レベッカは足を組み替えながら、できるだけ落ち着いた声で聞く。
 
 シグルトは首を横に振った。
 
「あんたが必要だと思ったから誘っただけだ。
 
 俺を評価した時の判断力と慎重さが、俺が求めていた仲間の条件に一致したからな。
 少なくとも、俺の仲間になる奴は、幾人かは慎重な奴がいい。
 それが盗賊なら、臆病なぐらいが理想だな。
 
 俺は鈍感だし、向こう見ずなところがある。
 それで失敗もしたし、補うべきところだと感じている。
 判断の基準は、俺にないものを持っているあんたがいれば、自分の実力を発揮した戦いができると、直感的に思ったからだ。
 多少だが経験上の教訓からも考えてみて、それがベストだと感じるしな…」
 
 シンプルでストレートな解答だった。
 飾った言葉も世辞もなく、見栄や外聞を一切出さず、理由のみを淡々と述べる。
 
 素人の新人冒険者が出す解答ではない。
 
 客観的に物事を見る視点と、自身の恥部を隠さず冷徹に見据える自省の心。
 加えて、そういったものをもとに直感的に判断するほどに磨かれた経験。 
 
 こんな男は初めてだった。
 
 レベッカはこの若者に対して、くすぶっていた好奇心が沸き起こるのを感じていた…

 
 
 というわけでリターン第2話のレベッカの紹介です
 
 英明型の盗賊で(彼女もインチキ)ものすごく優秀な盗賊です。
 狡猾+器用度が最大の白玉適性という天才ぶり。
 
 リプレイでも人気キャラでしたし、実は陰のヒロインは彼女だったり。
 彼女のプロフェッショナルぶりは、リターンでも冴えまくっていると思います。
 
 
 レベッカはリューン出身です。
 幼い頃に両親が乗っていた馬車の横転で死亡し、孤児院に預けられましたが、その孤児院は実は人身売買を行っていた酷いところでした。
 レベッカはその孤児院を始末に来たリューンの盗賊ギルドの幹部に助けられます。
 と申しますか、レベッカがユベールを助けて、助けさせたというほうが正しいのですが。
 その男こそ、“錦蛇”と呼ばれた大盗賊ユベールです。
 Martさんのリプレイに登場したユーグの父親になります。
 
 レベッカは片腕を失って引退したユベールに引き取られて育てられました。
 
 レベッカのしたたかさと驚異的な手先の器用さを知ったユベールは、のめりこむように、盗賊としての基本技術を叩き込みます。
 実の息子にはできなかった、手に入れた才能をひたすら磨き上げる喜び。
 襲撃のときに負った怪我から発祥した病気で、ユベールは亡くなりますが、彼は最高の後継者を残すことになります。
 
 そうして、再びレベッカは10歳でまた天涯孤独になり、ギルドの下で猫(スリの隠語)をして糊口をしのいできました。
 
 13歳になったころ、彼女の容貌の美しさに注目した盗賊ギルドの幹部が、色仕掛けで男を篭絡する術を教え、同時に盗賊としての専門的な教育をうけたレベッカは、年下の猫を統率する職に就き、それを8年ほど続けました。
 その後、ある不名誉な職に就きます。
 
 ところが、ギルドの勢力交代で彼女の職は他の連中に奪われ、レベッカはそれを機会にギルドからはなれて冒険者になります。
 
 その頃の実力は本当に優秀で、なまる前のレベッカは、数々の伝説とともに後輩の盗賊たちに畏敬の目で見られていました。
 2レベルまで下がっていますが、レベッカが若く、最高潮の頃は5レベルぐらいありました。
 
 アレトゥーザのファビオとも知己で、ファビオはレベッカの数少ない理解者だったといえます。
 意外にも面倒見がよかったせいで、後輩の盗賊(スリが多い)たちには慕われていました。

 レベッカは、その才能だけは盗賊ギルドでも並ぶものがいないほどの天才でした。
 冒険者になった後、美しく、実力もある彼女は他から望まれることも多かったのですが、パーティを組まずに宿でだべることが多かったようです。
 彼女はある意味、仲間に対して理想がとても高かったのです。
 まぁ、彼女に並ぶにはよっぽどの実力がなければ難しいのですが、加えてレベッカは精神面や技術面でも理想が高かったわけで、結局仲間はできませんでした。
 
 お金に困って、適当な男を捕まえて貢がせたり、飲み屋でアルバイトをしたりといろんな経験をつんできましたが、どんなことも長続きせずに宿に戻ってきては、お金がなくなるとまた適当なことをして糊口をしのぐということを繰り返していました。
 
 性格は怠惰ですが、ものすごく狡猾です。
 
 目的のために結構えげつない手段も選べる側面を持っています。
 本来の彼女は質素で地味な服装を好みます。
 色っぽい服装はいわば盗賊としての仮面です。
 気分屋でだらけたような中に、冷徹で剃刀のような一面を隠し持っています。
 ただ、子供を殺すとか、貧乏人から奪うような非道まではせず、お人好しな部分も備えた、実に混沌とした性格です。
 
 彼女がギルドをやめた理由は、後輩の女の子をかばって、不名誉な職業に就き、その後に上司が死んでその職業を続ける必要がなくなったからです。
 利己的で不実な顔を持ちながら、仲間や親しいもののためには汚れることも辞さないお人好しです。
 
 その職業とは、色仕掛けで男を殺す暗殺者でした。
 そういう職業経験からか、レベッカは恋愛面でどこかが壊れてしまっています。
 
 でも、シグルトや仲間との出会いは、冷め切ったレベッカの心を徐々に溶かしていきます。
 

◇レベッカ◇
 女性 大人 英明型

秀麗     下賎の出   都会育ち
貧乏     不心得者   不実
冷静沈着   貪欲     利己的
混沌派    進取派    神経質
好奇心旺盛  穏健     楽観的
遊び人    陽気     地味
繊細     軟派     お人好し
 
器用度:12 敏捷度:8 知力:8
筋力:5 生命力:4 精神力:5
 
好戦性+1 社交性+2 臆病性+2 慎重性+2 狡猾性+3
 
 知力も高く、参謀となることもあります。
 驚異的に素早くはありませんが、それなりに優秀な身のこなし。
 性格面でも盗賊としては一級です。
 
 加えて【会心の一撃】もそこそこに強いという、盗賊に生まれついたようなキャラクターです。
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