Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

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『碧海の都アレトゥーザ』 潮風を背に

アレトゥーザを旅立つ朝。
 
 黎明の清らかな輝きが空を染め、“風を纏う者”を送り出してくれた。
 清々しい潮風が、纏うべき未来の風を暗示しているようだ。
 
 昨日の充実した時間を思い出し、それぞれこの都市に再来を誓いながら歩み出すシグルトたち。
 
 …なぜかその中で、レベッカだけが不機嫌である。
 
 昨日の夜は上機嫌に酒をのみ、昼に知り合いに高級店で奢らせた、今が旬だというムール貝を南の特産品のオリーブオイルでソテーしたものや、熟した果物の甘み…その味を自慢げに語っていたのに、である。
 
「何じゃ、レベッカ。
 
 この爽やかな朝に、何をむくれておる?」
 
 スピッキオが細い目を瞬かせ、怪訝そうに聞く。
 
 レベッカは、ぎぎぎ、と音がしそうなぐらい不穏な首の動きでスピッキオを睨んだ。
 
「…このモウロクジジイが、誰のせいだと思ってるのよ!」
 
 そういうとレベッカは銀貨が入った袋をじゃらりと鳴らした。
 
「勝手に銀貨六百枚も使って…あんたボケたんじゃないの!
 
 今私たちの手元にあるお金って、銀貨二百枚ちょっとよ、に・ひゃ・く・ま・い!!!
 
 こんなじゃ、リューンに着く前に素寒貧よ~」
 
 そういって地団駄を踏むレベッカ。
 
「すかんぴんよ~♪」
 
 ラムーナが、楽しそう~と言ってまねをする。
 顔を引きつらせ、レベッカは肩を落とした。
 
「ああ、もう!
 
 フォーチュン=ベルでのロマンといい、この間の金メッキといい、あんたたちはなんて計画性のない金の使い方をするのよ…
 
 いい?
 私たち冒険者はね、旅でどかすかお金を使うの!
 
 通行税に宿代、食費に旅装費…
 
 なのに、今あるお金はちょっと高い宿に一回泊れるかどうかよ!
 あんたたちが勝手に大金を使っても、皺寄せは皆に来るのよ!
 
 それが、このジジイったら〝新しい秘蹟を伝授してもらったから寄進した〟ですって?
 宿に預けて置いたお金を、何だと思ってるのよっ!
 
 私たちを野垂れ死にさせる気?
 
 私が交渉して苦労して必死に節約してきたお金なのよ、もうっ!」
 
 ものすごい剣幕である。
 
 シグルトは、仕事を探しつつ野宿しながら旅かな、と苦笑している。
 だが、先程さらりとスピッキオに、お金を使うときは仲間に相談すべきだったな、と釘を刺したのはさすがであった。
 
 野宿♪、野宿♪~と陽気にラムーナは踊っている。

「はあ、昔のことを今になって持ち出すなんて。
 ちゃんと僕は買ったものを役立ててるよ。
 
 これだから大人って…」
 
 大げさなロマンのため息が入る。
 
「お前は強欲すぎるんじゃ、レベッカ。
 
 その気になれば人間、その身一つで生きていけるわい。
 金銭なぞ、こだわるからいかんのじゃ。
 
 わしが居った修道院では…」
 
 スピッキオが、修道院名物の清貧を謳い始める。
 そのまま説教を始めそうなスピッキオの様子に、レベッカは眉を吊り上げると声を荒げた。
 
「このジジイ…そういうのは自分だけにしなさいってのっ!
 
 あんたのありがたい神様が、祈れば聖書みたいにマナ(食べ物)でも降らしてくれるわけ?
 お金がなきゃ、仕事をやるのにも食べることにも支障が出るものなのよ。
 あんたの着てる服一つだって、ただじゃできないんだからねっ!
 その金メッキ買った時点で、もう懐がやばくなったって言ったでしょうっ!!
  
 だいたい修道士って、普通修道宣言して階級とかないはずでしょ?
 それなのにちゃっかり司祭様やってるじゃない!
 
 物欲を捨てたのなら、名誉欲も捨てなさいよ!!!」
 
 意外に宗教事情に詳しいレベッカであった。
 
 実際のところ、スピッキオの立場はかなり特殊と言えた。
 元修道士で、スピッキオのような僧職の階級についている在野の司祭は極めてまれなのだ。
 
 本来、修道士は修道宣言をし、俗世間からは離れるものだ。
 
 地位や欲を嫌って修道士として生活する者は、僧侶としての実権や地位を疎む人間が多い。
 それに、司祭は本来一つの教会や、大きな教会の中核を担う役職である。
 旅に出ていること事体、極めて異例なのだ。
 
 修道士出身の司祭も、もちろんいるが、そういう連中はほとんどが「修道院で修行してきた」という何かしらの〈箔〉を付けたいだけの俗物だ。
 
 …実は、スピッキオが僧職についているのにはかなり政治的な理由があった。
 
 この年寄り、かつては修道院でも古株で、前の院長に次ぐほどの人物だったのだ。
 しかし、修道院に新しく入ってきた院長は学僧(神学や学問を重んじる僧侶)タイプの人間で、その修道院を学僧の養成所として改革しようとしていたのである。
 
 そして頭が固いスピッキオを追い出すために、とある司教を通じてスピッキオを階級のある僧職にして、修道院に「いられなく」したのだ。

 スピッキオの属した修道院は、スピッキオを推薦した司教の援助を受けており、しかもその司教はどうしようもなく善人であった。
 スピッキオを追い出そうと画策した新しい院長が、スピッキオの徳を褒め称え、修道院に埋もれさせるには惜しいと話を持ちかけ、その善人の司教は使命感と期待からスピッキオを司祭に推薦したのである。
 自分に期待してくれるその司教の好意を無下にもできず、そのまま用意された教会に収まるはずだったスピッキオであるが、新院長の思惑通りになるのを嫌い、布教巡礼の旅をしたいと申し出て教会を出た。。
 名目上は修行を終え、司祭の任に就いてから、身を清めるために巡礼に旅立ったことになっている。
 
 事実、スピッキオはアレトゥーザから程近い町にある聖海教会に、司祭としての席を持っていた。
 教会にはもう1人やや若い司祭が居り、助祭が2人、他にも侍祭や尼僧が複数在籍する比較的大きな教会だ。
 その気になれば、いつでもその教会を自由にできるだけの権限を、その教会が属する教区の司教から与えられている。
    
 最初はスピッキオも、司祭職を返上しようかとも思っていた。
 しかし、この地位だからこそ救い導ける者もいることを、クレメント司祭に出会って教えられ、今のままなのである。
 それに僧職を辞めて還俗したところで、おそらく自分を追い出した新院長の思惑通りになってしまう。
 頑固で無欲なスピッキオが、還俗して聖職から離れることを期待していたふしがあるのだ。
 
「むう…」
 
 自分でも充分、今の矛盾した立場を理解しているだけに、スピッキオはどう説明したものかと唸ってしまった。
 
 不意に僧院にいたときの癖で自分の頭を撫で、生えた髪の感触にさらに渋い顔になった。
 修道士時代はそのシンボルともいえる剃髪(トンスラ)にしていた頭は、旅の間にすっかり髪が生えてしまっていた。
 
 鬼の首でもとったような顔で、どうよ、というレベッカ。
 
 しかしここでシグルトが間に入る。
 
「レベッカ…この爺さんが名誉欲に染まったただの俗物だと、本当にそう思うのか?」
 
 シグルトの言葉は至極シンプルだった。
 このリーダーは、ごちゃごちゃした前置きは無視して、本題や本質からすっぱり入る人間である。
 
 レベッカも熱くなって、言い過ぎたな、と思ったのか…いつものクールな彼女に戻っていた。
 きっと熱くなれるぐらいはこの連中に親しみを感じてるんだろう、と自己を分析しつつ結局は、しかたないわねぇ、とリーダーを立てるのだった。
 
「さて、行こう。
 
 金がないなら仕事を探しながら、な。
 レベッカ、その手の情報集めは任せたぞ。
 
 その手の匂いを嗅ぎ付けるなら、お前が一番優秀だからな」
 
 苦労性のシグルトは、いつもの苦笑。
 
 私は犬じゃないっての、とすねた顔を見せつつ、レベッカはさっさと歩き出した。
 
 シグルトは一度だけアレトゥーザの門を振り返ると、そこで出会ったたくさんの人々と風景との再会を心から願うのだった…

 
 
 連続で、一気に公開です。
 これでアレトゥーザ編の第一部終了、と言う感じでしょうか。
 
 ちょっと長かったアレトゥーザ編いかがだったでしょうか。
 何か生活描写を必死に書いていた気もしますが、多少の間違いはファンタジーということで、大目に見てください。
 
 今回の金銭云々のお話、アレトゥーザに来たときにレベッカが祈り云々考えていた伏線に繋がっています。
 
 修道院の話は実際のカソリック修道院をモデルにアレンジしたお話ですが、「そんなわけあるか~」と突っ込みたい方は是非真実を教えてくださいね。
 内容変更するかもです。ミーハーなので。
 
 ちなみにアレトゥーザでスピッキオが習得したスキルは【聖別の法】です。
 【魔法の鎧】があればいらないじゃん、という方、カラメルシロップです。
 低レベルの時こそ、このスキルはめちゃくちゃ重宝します。
 このスキルを体力的に薄いPCにかけることで生存率ががくっと変わります。
 特に体力のない回復役が最初につぶれて泣く方は是非使ってみてください。回復役がつぶれないと回復が間に合うようになり、連鎖的に全滅するパターンがかなり減ります。
 戦闘中にも手札に配布されやすいので、敵に奇襲を受けても使うことができます。
 何を隠そう、前に冥王の爺さんの魔法を喰らったとき、瀕死になったもののPCを生き残らせた逸品です。これ使って【防御】して何とか、でしたが。
 
 
 ざっと書きましたが、今回の金銭移動をば。
 
【聖別の法】(-600SP)
 
◇現在の所持金 238SP◇(チ~ン♪)
 
 
〈著作情報〉2007年09月03日現在

 『碧海の都アレトゥーザ』はMartさんのシナリオです。現時点でMartさんのサイトで配布されています。
 シナリオの著作権は、Martさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer1.22です。
  
・Martさんサイト『esotismo.』
 アドレス(http://sky.geocities.jp/mart_windowl/)
 
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。
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