Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

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『“風を駆る者たち”の噂』

 現在シグルトたち“風を纏う者”はアレトゥーザに近い林道にいた。
 途中の町から急遽護衛を、ということで銀貨三百枚で雇われたのである。
 雇用主はデオタトという商人だ。
 
 最初、シグルトたちは、あんたたちを探している商人がいる、と聞き誰だろうと尋ねてみた。
 それはリューンで、仕事の場としてアレトゥーザのことを勧めてくれたデオタトだったのだが、彼は呼ばれてきたというシグルトたちを見て、「あちゃあ…」と額を押さえた。
 
 どうやら手違いがあった、とのことだ。
 しかし、結局必要だからと、急遽シグルトたちは雇われて護衛となったのである。
 
「儲けたわね~」
 
 レベッカは、久しぶりにまともな依頼にありついたことに御機嫌である。
 ついでに商人であるデオタトと、旅で手に入れた雑多な品物をトレードして携帯食や調味料などを手に入れていた。
 
「姐さん、商人の素質があるぜ…」
 
 レベッカの交渉術に参った参った、と笑いながらデオタトも御機嫌である。
 前に立ち寄った村で近隣を荒らす猪狩りを頼まれ、報酬代わりにもらったものの中に、珍しい植物の種があったのだが、それが随分貴重なものだったと、デオタトは言うのだ。
  
 冒険者たちが銀貨のみしか報酬にしないなら、それは都市近郊でしか活躍できない連中である。
 西方でも森に隔絶されたひっそりとした村の依頼では、銀貨より物品で報酬をもらうことも多いのだ。
 
 それを旅費や更なる物品に交換し、シグルトたちは少ない貴重な銀貨を節約してきた。
 道具袋も着実に重くなっている。 
 

「“風を駆る者たち”?」
 
 シグルトはその名を聞いて驚いたような顔をした。
 
 デオタトが最初に依頼するつもりだったのはシグルトたちではなく、“風を駆る者たち”という冒険者グループだというのだ。
 
「ああ、リューンでよく聞いた人たちだよね」
 
 ロマンが頷いて言った。
 
 “風を駆る者たち”は、“風を纏う者”と同じく、新進気鋭の冒険者パーティである。
 レベッカの知っている限りでは、シグルトたちの少し先輩にあたる冒険者たちで、冒険者の宿『風の旅路亭』を中心に活躍する6人構成のグループらしい。
 
「中にドワーフがいるから、新しい冒険者グループの中では結構知名度が高いのよ」
 
 大地の妖精族と呼ばれるドワーフは頑固で屈強な亜人である。
 本来細工や鍛冶を生業とすることが多い彼らは、人間と時折交易を持つことがあるし、彼らの作る品物はどれも優れたものだという。
 
 ただ、土地や仕事に強い執着を持つドワーフが冒険者となることはあまりない。
 戦士としてはとても頼りになるが、気難しい彼らを仲間にすることは困難でもある。
 
 エルフやホビットといったものを含め、亜人は数も少なく、めったに見かけることはないが、旅をする冒険者は一般人よりは出会う確率が高い。
 中には、亜人のはぐれ者が冒険者となることもよくあることだ。
 特に、人間やエルフの両サイドから迫害されがちな両種族の混血、ハーフエルフなどは、絶対数が少ないにもかかわらず冒険者になることが多い。
 実力で評価される、冒険者という職業とは相性が好いからだ。
 
 そんな話をしながら、シグルトは何故手違いが起きたかをデオタトに訪ねた。
 
 デオタトが伝言を頼み間違えてシグルトたちに声をかけた人物は、シグルトたち“風を纏う者”とよく似たグループ名の“風を駆る者たち”を勘違いしたのだろう、との話である。
 
「確かに似ておるの…」
 
 スピッキオがふうむ、と唸った。
 
「まあ、今回は得したんだし、いいじゃない」
 
 それにあの街にはいなかったんだから、依頼は他の冒険者が受けなきゃいけなかったでしょ、とレベッカは続けた。
 
「マルスから、噂は聞いている。
 優秀なパーティらしいな。
 
 リューンの新しい冒険者パーティでは、十指に入るほど期待されている、という話だ」
 
 歩きながら、シグルトが話す。
 
「なかなかバランスも良いらしいわよ。
 
 若い一応リーダー格って奴が精霊術師で、そこそこに剣も使える万能選手。
 参謀格の坊さんとドワーフの戦士。
 盗賊に魔術師もいるから、大抵の仕事が出来るわね。
 魔術師は南方大陸の民らしいわよ。
 もう一人女の子がいるらしいんだけど、秘蹟の才能があるってくらいしか聞いてないわ。
 
 リーダーの精霊術師がアレトゥーザ出身とかで、私たちと同じリューンやアレトゥーザ、フォーチュン=ベルを中心に仕事をしてるって話よ。
 ライバルになるかもね」
 
 レベッカは、この手の情報収集に余念無い。
 冒険者は、数少ない仕事を競って奪い合うことが多いのだ。
 時に手を取り合って協力することもあるが、対立すれば戦いになることもある。
 
「“風を駆る者たち”か、どこかで遇うかもしれないな…」
 
 シグルトは“風を駆る者たち”という冒険者の名前に、不思議な縁(えにし)を感じていた。
 
 
 アレトゥーザに着くと、デオタトは約束より多い銀貨四百枚を“風を纏う者”に渡すと、上機嫌で去って行った。
 
 レベッカは、盗賊の出ないルートを割り出し、早く確実な行程でデオタトをアレトゥーザに届けたのだ。
 予定より半日早い到着と、道中何事もなかったことに、デオタトは大変満足していた。
 
 優れた護衛とは、何事もなく確実に護衛対象を守ることが何より大切である。
 “風を纏う者”のメンバーは、5人とも温厚で、慎重か誠実のどちらかだ。
 余程追いつめられないと、危険な行動にはでないし、好戦的でも無い。
 結果として、護衛の依頼はまったく揉めずにすべて完遂している。
 
 護衛の仕事はデオタトのもので実に5つ目だが、結成して半年もたたないパーティが、これほど揉めること無く依頼を達成することはまず無い。
 冒険者にとって比較的多い護衛の仕事は、依頼人の小さな怪我や危険手当などで揉めることが多く、難しい仕事なのだ。
 
 レベッカは、危険手当を要求するが、危険の無い慎重なルートを選ぶ。
 危険手当を目当てに危険なルートを選ぶ好戦的な冒険者もいるが、そういった冒険者は、依頼人に悪印象を与え、結果として次の仕事が得られなくなる。
 逆にきちんとした危険手当のある契約を結びつつ、それはあくまでも保険として、安全な仕事をして見せることは、依頼人の信頼を得るのだ。
 
 一つは万が一の準備ができる慎重さ。
 もう一つは依頼人を確実に守ろうとする誠実さ。
 その二つを徹底することで、優れた仕事が出来ることを、依頼人に強く印象付けるのだ。
 
 ある意味、デオタトは幸運だったとも言える。
 “風を纏う者”を名指しで依頼しようという商人も、少しずつ現れていたからだ。
 
 “風を纏う者”は、報酬も法外な値段には決してしない。
 レベッカは、実力を安売りはしなかったが、先を見越した誠実な価格で仕事を請け負い、適度にサービスをして信頼を得る方法を得意としていた。
 彼女曰く、〝目先の儲けしか考えない奴は、損をする〟そうである。
 
 実際、“風を纏う者”は、ここ数日仕事に恵まれ、危機的な財政難をなんとか凌ぐことができた。
 物々交換が多かったので、手元の銀貨は増えなかったが、それが減ることは避けられたのである。
 
 
 なんとかパーティの財政を、銀貨六百枚以上に戻したレベッカは、アレトゥーザの拠点『悠久の風亭』で銀貨の枚数を確認しながら一息ついていた。
 
 ロマンとスピッキオには、固く買い物禁止を言い渡してある。
 他の2人、シグルトやラムーナは、無駄遣いとは縁遠いタイプだ。
 特にシグルトは、レベッカにとって協力的なリーダーだった。
 彼が誰よりも禁欲的にことをするので、最近は仲間の中で倹約を重んじ、それに慣れつつある。
 
「なんとか銀貨千枚ぐらいはキープしておきたいわ。
 
 適当な仕事を見つけて、もう一踏ん張りしましょうか」
 
 いったん解散していた“風を纏う者”は、『悠久の風亭』に集結し、夕食を食べながらこれからのことを相談していた。
 
 宿の女将ラウラと仲良くなったレベッカは、アレトゥーザに出入りする商人と交渉して、格安で調味料や宿に必要な資材を買い付ける仕事をし、代わりに数日の宿代を確保する、という芸当をやってのけた。
 普通なら大金がかかる高級油や良質の塩、最上品質の小麦粉に、珍しい産物。
 レベッカはそれらを、ほぼ原価…市場の四分の一程度で仕入れることができる。
 
 結果として、高級素材の料理で客足が増えたことに満足したラウラは、これからもそういった交渉を受け持つことを条件に、向こう一月の宿代を半額、しかもツケにしてくれた。
 “風を纏う者”が海風に震えながら野宿をしないで済むのは、レベッカのおかげだった。
 
 レベッカは怠け者だ。
 しかし、快適な怠け方や遊び方をするために、その仕事ぶりはとても優秀だった。
 
「………」
 
 上機嫌なレベッカに対し、何故か何時もの様に陽気な雰囲気では無く、ラムーナはそわそわした様子だ。
 
「…どうしたラムーナ?
 
 さっきから何か言いたそうだが、話せないことか?」
 
 シグルトが幾分穏やかな声で話しかける。
 このリーダーは一見朴念仁だが、仲間への気配りは的確だし、懐が広い。
 仲間が迷う時は、その決断を助けるために橋渡しをしていた。
 
 実際、幾分慎重なレベッカやロマンが迷った時や、仲間同士で意見が対立した時は、シグルトの意見がいつも鶴の一声であった。
 シグルトは、仲間の意見をすべてを考慮した上で決断し決定する。
 彼の決定は常に妥当であり、文句を言う者はいなかった。
 
 それに、シグルトは我欲というものがまるで無い男だ。
 無欲、というのとはちょっと違うが、仲間を優先する意識が強く、辛抱強さと禁欲においては超人的だった。
 道中は一切間食をせず、水や食料は毒見ならば率先してやり、節約する場合は自身がもっとも我慢する。
 水は、仲間に余裕を与えるために、自分の体力を維持できる最低線で節約し、ペースを誤った仲間に与えるほどだ。
 
 普段からリーダーとしての責務を果たし、その公正で誠実な判断力と、私情を極限まで抑えるストイックな態度。
 利己的なレベッカや、理屈っぽいロマン、老練で正義感の強いスピッキオが独りよがりにならず、シグルトの決定を無条件で信用するのは、シグルトが信頼できるリーダーだからだ。
 
 理想が高過ぎて仲間をつくらなかったレベッカが、〈最高のリーダー〉と臆面もなく言うくらいなのだ。
 能力的にも優秀だが、何より優れているのは統率力と決断力だと、レベッカは評価している。
 
 かといって、誇りや自主性の無い男かというと、そうではなかった。
 付き合ってきた“風を纏う者”のメンバーは理解しているが、シグルトは一見は冷静に見えて、実は義理堅く、意外にも情熱的だ。
 仲間を侮辱する言葉には毅然と抗議して相手をたしなめるし、悩むことなく自身の考えをまとめ、即座に意見の一つとして提示する。
 卑屈な部分はまるでなく、シンプルではっきりしている彼の考えは、大概そつが無く適正だった。
 一度決めた目的には全力で取り組み、自分の役割はしっかりこなす。
 そして、“風を纏う者”の誰よりも仲間を信頼し大切にしていた。
 
 これだけのリーダーである。
 さらには、それが作ったものでも演技でもない自然体なのだ。
 
 “風を纏う者”が属する冒険者の宿『小さき希望亭』の主人も、シグルトは宿で最も理想的かつ模範的なリーダーだと評価している。
 
〝あいつの何が凄いって、あれだけの完全無欠ぶりを普通に似合ってるって感じさせる雰囲気だな。
 ああいうのをカリスマって言うのか?
 
 嫌味にすら感じさせないんだから、よく考えるとそこが化物じみてる。
 もし領主や王様だったとしても、何の不思議もない。
 
 むしろ、何で冒険者をしているのか、と考えてしまうくらいだ…〟
 
 シグルトについて、宿の主人が評した一説である。
 
 こんなシグルトを、ラムーナも心から慕っていた。
 だから、シグルトに促されると、自然と迷っていた言葉が出る。
 
「あのね、別に今でなくてもいいんだけど…
 
 実はこの都市である人と知り合いになったの。
 その人は、南の方から伝わったっていう闘いのダンスを知ってる人で、私ってもともと踊りとか得意だから。
 
 機会を見てその人から、その闘いのダンスを習ったなら、もっと戦う時役に立てるかなって…」
 
 遠慮がちに切り出したラムーナに、レベッカはしばし沈黙すると、息を吐くように尋ねた。
 
「ラムーナが習いたい技って、どのぐらいの授業料がいるわけ?
 
 さすがに仲良くなったからって、無料ってわけにはいかないんでしょ?」
 
 レベッカの問いに、ラムーナは小さく頷き返した。
 
「…銀貨六百枚。
 
 一番基本的な技だって聞いてるけど、素早さに自信があるなら確実に強くなれるって言ってたよ」
 
 レベッカは思案するような仕種をし、そして少し困ったようにシグルトを見た。
 そんな彼女に、信頼するリーダーは強く頷いて見せる。
 
「分かったわ。
 
 今までラムーナって、こういう我侭はまるで無かったし、ね。
 ちょうど手元にはそのぐらいのお金があるし、ラムーナには早速その技を習ってもらいましょう」
 
 レベッカの言葉に、ロマンとスピッキオが意外そうな顔をする。
 
「…分かってるわよ。
 
 いつもお金に煩い私が、ぎりぎりの状態でお金出すのが変なんでしょう?
 
 勘違いしないでほしいんだけど、私は節約するように言ってただけよ。
 それが必要なら、お金を惜しむつもりはないわ」
 
 驚いて目を丸くしているラムーナに、レベッカはぴったり銀貨六百枚を手渡した。
 
「ロマンとスピッキオには文句言わせないわよ。
 
 あんたたちの方が、無駄遣いしてるしね。
 それに、私たちのリーダーは賛成してるみたいだし」
 
 シグルトがレベッカに相槌を打つ。
 
「ラムーナは、本来その身体能力を最大限生かせる戦い方をすべきだ。
 残念だが、俺が教えられる技術にそれは少ない。
 彼女は膂力を重んじた技よりも、急所を狙ったり、素早く動いて敵を翻弄する技の方が優れているからな。
 
 元からダンスが得意だったというラムーナだ。 
 舞踊は、戦いの技術を秘匿したまま後世に伝えるために、武術を練りこんだものが数多くある。
 剣術に近しい剣舞を見たことがあるが、ある種の効率性すら感じさせられたものだ。
 
 普段、戦闘の指揮を執っている俺としては、ラムーナの戦闘力を高めるならむしろ有難い。
 
 強いて問題を挙げるとすれば、ラムーナが技を習う間、俺たちはどうするかだが…」
 
 レベッカが肩をすくめた。
 戦力を高めることは、シグルトにも必要なのである。
 
 シグルトは、冒険者になってから剣を学びだしたという。
 彼は豊富な戦闘経験を持ち、かつ専門家に師事して戦術を学んでいる様子だが、剣は素人だった。
 
 先輩の冒険者が、シグルトは槍か竿状武器(ポールウェポン)を使っていたのではないかと言っていたが、それが得意なのかと聞くと微妙に言葉を濁すのだ。
 はっきりものを言うシグルトには珍しいことである。
 
 シグルトの戦い方は、正式な剣術というよりは、膂力と戦術を生かした総合的な戦闘力によるものだ。
 磨きぬい技の類は習得していない。
 
 むしろ、先輩の使い古しの剣を使うシグルトが、剣術の素人にもかかわらずパーティの先頭で戦えることが驚きだった。
 ある時シグルトがぽつりと洩らしたのだが、〝本当に強くなるなら、基礎から身体を作り、最初から技を磨くべきだ〟と彼は考えているらしい。
 
 シグルトの鍛錬法は常軌を逸している。
 シグルトが、それぞれの指一本で床がへこむほど腕立て伏せをする鍛錬は誰も真似できないと言うし、片手倒立や剣先に水が満たされたいくつもの水桶を下げたまま一時間以上動かずにいる訓練、一回の鍛錬で石畳が粉砕するまで踏み込みを繰り返す反復動作などは、見る者を唖然とさせる。
 そうやって鍛えられた瞬発力は、レベッカなど及びもつかないほどだ。
 
 加えてシグルトは、動作の邪魔にならないよう筋肉の密度のみを高めるために、宿にいるときは食事にも気をつけている。
 宿に戻ってきた冒険者が自堕落になりがちなのに対し、シグルトは仕事の成功による宴会などには無理のない範囲で付き合うが、その次の日からシグルトは鍛練する。
 しかも、彼が鍛錬していた場所だけが雨に降られたあとのように汗で濡れるほど、厳しい鍛錬を続けているのだ。
 
 自身も、体格から変える訓練で技を習得する盗賊のレベッカである。
 シグルトの行う鍛練法が、緻密な解剖学に基づくものだと何となく気が付いていた。
 無茶な鍛錬は身体組織を破壊する。
 シグルトはそうならないギリギリで、行っているのだ。 
 
 シグルトは、一から剣に適合した体格を作ろうとしているのだろう。
 無理に単純な技を習得するより、まず身体を完成させることから考えている、というわけだ。
 
 言うは易し、行うは難しである。
 
 一度習得した何かを完全に捨て、身体を作り直すことがどれほど難しいか。
 シグルトをよく知る者は、彼が〈才能を与えられた天才〉ではなく、〈磨き研ぎ澄ました秀才〉であると理解している。
 
 レベッカとしては、シグルトが必殺の技を得たなら、どれほど強くなるのか早く見てみたい気もする。
 
「ま、戦闘の専門家であるシグルトが言うんだからね。
 
 ラムーナが鍛練中、一月は宿が自由に使えるし、私は出来る仕事を単独なり、残ったメンバーでするつもりなんだけど、他の皆はどうするの?」
 
 気持ちを話題に戻し、レベッカが聞くと、仲間たちは皆考え始める。
 
「ふむ。
 
 わしはアレトゥーザに残って、教会にでも通っておるわい。
 
 アレトゥーザには様々な人間が出入りする。
 若いラムーナ一人残すのも、気が引けるでな」
 
 商人の子だったスピッキオは、かつてラムーナを虜にしていた奴隷商人が現れることを危惧していた。
 シグルトもレベッカもそのことに思い至り、それが良いと頷いた。
 
「それなら、僕も残るよ。
 
 実は調べたい書物があるんだ。
 この辺りの歴史や地理、周辺都市との関係をもう少し詳しく調べておきたいし。
 
 リューンは、僕やレベッカはホームグラウンドだけど、知らないアレトゥーザのことは地元で学ぶのが一番だからね。
 
 それに、南方の言葉の詳細な辞書が、この都市の賢者の塔にあったんだ。
 実際に南と交易のあるアレトゥーザ出身の賢者が書いたものだから、実践的で参考になると思う。
 
 図書室の本って、主要な本は持ち出し禁止だから、塔に通う以外方法は無いし。
 
 どうせアレトゥーザは、南における拠点にするんだし、いろいろ調べておけば役に立つと思う」
 
 ロマンの言葉に、レベッカはそうねぇ、と頷いた。
 
「まあ、3人も残るなら、宿のツケの保障にもなるわよね。
 
 じゃあ、シグルトと私で出稼ぎってことでいいかしら?
 さすがに懐が寂しいしね。
 
 浜が近いし、3人そろってれば、暇な時にでも前みたいに食材探しで食費を稼げると思うわ。
 後で、ラウラさんに頼んでおくわね」
 
 すまなそうに項垂れるラムーナ。
 
「ラムーナ。
 
 これは投資なんだから、強くならないと承知しないんだからね」
 
 レベッカが片目をつぶって、人差し指でラムーナを優しく小突く。
 
「…うんっ!」
 
 ラムーナはいつものような笑みを浮かべて、大きく頷いた。
 

 
 
 Martさんのシナリオ、『碧海の都アレトゥーザ』。
 その中の『デオタトの依頼』を元にしたお話です。
 
 このサブシナリオ、本来はアレトゥーザ~リューン間の護衛なんですが、この話では逆になってます。
 本来の依頼はすでに今回登場した“風を駆る者たち”が行っている、という旧リプレイそのままの設定を使いました。
 
 護衛という仕事、CWの場合、襲われる前提が多いんですが、実は依頼人を危険にさらさないことが大切なんですね。
 危険手当を稼ぐために、危険なルートを通るなど、急ぐ場合でも無い限りはもっての外。
 襲われることが本来はペナルティなんです。
 ですから、改訂版の最新版アレトゥーザの『デオタトの依頼』の選択肢は、納得がいくものなんです。
 
 最近、冒険者の仕事ぶりによって、よい噂や悪い噂はつくべきかなぁ、とも考えます。
 悪名高い冒険者は、本来は損をするのではないかと。
 口コミって、この手の職業では大切でしょうから。
 
 この話で、シグルトたちがどのように依頼人の心を掴んでいるか、書いてますが、誠実な仕事にはそれなりのアドバンテージがあるでしょう。
 よく仕事を頼む依頼人なら、「あいつらなら安心だな」と思うでしょうし。
 
 仕事がない、と嘆く冒険者に、レベッカなら「目先の欲に走ったんじゃない?」と返すかもしれません。
 その辺がレベッカの「大人」で「熟練」した部分です。
 
 
 さて、今回、いよいよ“風を駆る者たち”について詳しい情報が出てきました。
 “風を駆る者たち”は、うちのブログの常連さんならおそらく知っている、Martさんの旧ブログで連載していたリプレイです。
 うちのリプレイの原点とも言えるものです。
 
 現在多忙なMartさんですが、一度は“風を駆る者たち”のリプレイをうちでお預かりしていましたし、“風を纏う者”の旧リプレイとは、強くクロスオーバーしていました。
 公開中止になっているので、リターン版では初めての人にも分かるように紹介しながら、絡ませていきたいと思っています。
 
 
 ええと、それから、加筆修正版の今回、S2002さんの『隠者の庵』はプレイしませんでした。
 何故かといえば、旧版の“風を纏う者”はこのシナリオで買い物せず、物をもらってるだけなんですね。
 それではなんだか変だな、とも感じていたので、ばっさりカットすることにしました。このシナリオ、リプレイする方も多いかもしれませんし。
 『隠者の庵』はキーコードや技術において、CWの歴史に残る最上級の傑作ですが、スキル絵がASK調の16色が多くて、買い渋ってしまった所があるんです。
 アレトゥーザのスキルは枠付きの256色ですが、そろえることにも少しこだわってしまうようです、私。
 
 その代わりと言ってはなんですが、シグルトとレベッカのソロプレイをこれから数回に分けて書く予定です。
 シグルトに関しては、ちょっとした計画もありますので、ちょっぴり御期待下さいね。
 
 
 さて、今回のお財布事情ですが…
 
◇シナリオ
・『碧海の都アレトゥーザ』(Martさん)
 デオタトの依頼(+400SP)
 ラムーナ修行中(-600SP)
 
◇現在の所持金 38SP◇(…大ピンチ?)
 
 
〈著作情報〉2007年09月09日現在

 『碧海の都アレトゥーザ』はMartさんのシナリオです。現時点でMartさんのサイトで配布されています。
 シナリオの著作権は、Martさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer1.22です。
 
 また、登場した冒険者“風を駆る者たち”は、かつてMartさんがブログで連載していたリプレイに登場したパーティです。
 今回のリプレイでは、そのリプレイを元にMartさんが作り直した連れ込みのプライベートシナリオのデータを参考にさせて頂いています。
 これらの登場人物及び設定の著作権も、当然Martさんにあります。
  
・Martさんサイト『esotismo.』
 アドレス(http://sky.geocities.jp/mart_windowl/)
 
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。
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