『風纏いて疾る男』 後編

2007.09.19(04:18)

 シグルトは疾っていた。
 
 細工師を襲った盗賊たちは、度々この逃走ルートを使うのだろう。
 駆ける速度もかなり速い。
 
 だが、シグルトは足に障害があるにもかかわらず、徐々に距離を詰めていく。
 
 山岳修行者が、一本歯の下駄で疾走する技術があるが、シグルトの疾走はそれの応用に近い。
 重心を前に傾け、リズムをつけて、次に足を置く場所を選びながら軽快に進む。
 
 武術に長け、肉体のコントールに優れるシグルトは、身体に負担をかけずに動くことを常に心掛けていた。
 
 それに、シグルトの育った国は標高が高い山地である。
 幼少の頃は足場の悪い山や森が遊び場で、武術の修業時代は崖を駆け登って足腰を鍛えた。
 
 意図して鍛え、要領を覚えたシグルトと盗賊では、実力に大きな開きがあったのだろう。
 四半時近い追跡で、シグルトは盗賊のすぐ背後まで迫っていた。
 
「な、何て野郎だっ!
 
 この俺たちに追いつくなんて…」
 
 急な坂道を越えると緩やかな丘陵になっていた。
 
 息を切らし、逃走していた盗賊たちは驚愕の表情でシグルトを見ている。
 ぜぇぜぇと荒い呼吸の盗賊たちに比べ、シグルトの呼吸は軽く走った程度の乱れだ。
 
「…さぁ、盗んだ物を返せ」
 
 へたり込んだ盗賊たちを見下ろし、シグルトが強い言葉を放つ。
 
「…ふん、仕方ねぇな。
 
 まあ、ここまで他の奴は追ってこれねぇだろ」
 
 盗賊たちのリーダー格らしい男が腰に下げていた剣を抜き放つと、周りの者たちもそれに従って自分の得物を構える。
 
「しつこい野郎だぜ…
 こんな場所まで追いかけてくるなんて、な。
 
 ま、足が速いのは分かったがよ。
 お前、この人数に勝つつもりか?
 
 …死ぬぜっ!」
 
 盗賊のリーダーが凄むが、シグルトは涼しい表情だ。
 すでに彼の呼吸は完全に落ち着いている。
 
「欲を出し過ぎたな。
 
 そんな荷物を持った格好で、速く走ることは出来んぞ。
 逃がすつもりも無い。
 
 俺の注意を引いて、後ろの…隠れている奴に俺を襲わせるつもりか?
 
 お前らの人数は把握しているぞ」
 
 シグルトは、奪われていた機制を取り戻すかの様に、剣を鞘払う。
 
 改心の策を見破られ、盗賊のリーダーが焦りの表情を見せる。
 
「…くそぅ、仕方ねぇ。
 
 てめぇら…囲んで殺るぞ。
 この優男野郎、ぶち倒してねぐらに帰るぜっ!」
 
 その声に呼応して、さっとシグルトを囲む盗賊たち。
 
(…この地形で、周りを包囲とは、な)
 
 シグルトは呆れたように眉をしかめた。
 狭い足場での包囲は、よほど地形に慣れた者しかしてはならないのだ。
 むしろ挟み込むように2人で包囲し、その背後にさらに1人ずつ配置して逃げ道を塞ぐ方が合理的だ。
 1人の人間を一度に包囲するとき、5人で囲むなど、槍のように長い得物で横との距離を取れる状況で行うべきだ。
 振り回すことを主とする剣では、隣同士で邪魔になってしまう。
 足場が悪く道幅の無い坂道では、愚策となることもしばしばだ。
 
「ぬぅぅおぉりゃぁぁぁっ!!!」
 
 一人が襲い掛かってくるが、その攻撃をひらりと避けたシグルトは素早くその足を払う。
 よろめいた盗賊は勢いを落とせず、その男は反対側にいた男に突進し、互いにバランスを崩す。
 
 シグルトは刃の半ばを握り、上段に構える【王冠】の構えだ。
 そのまま前に低く踏み込んで、柄で一人の鳩尾を抉るように突き上げる。
 
 交差した時、一斉に襲い掛かってきた敵の剣が背を掠め、じわりと痛みが走るが、シグルトは構わずに一転、剣の平でもう一人の鼻の少し上を殴打した。
 
 敵を吹き飛ばした勢いで向きを変え、絡まってもがいている2人の盗賊に向かう。 
 起き上がろうと焦る2人を、一人は踏みつけ、最後の一人は柄頭で延髄を強打して気絶させる。
 
(…背中の傷が、少し深いか)
 
 じくじくと痛む背の傷。
 だがその痛みをおくびにも出さず、シグルトは最後に残った盗賊のリーダーと対峙した。
 
 シグルトの腕にはさらに小さな裂傷。
 先程目の前の盗賊につけられたものだ。
 
「く、糞っ!!!」
 
 盗賊は構えを低く取り、牽制するように小刻みに剣を繰り出してくる。
 シグルトは敵が一撃放つ度にそれを払い、腕を、足を剣の平で殴打して弱らせていく。
 
「ぬぅうあぁぁぁっっっ!!!」
 
 盗賊がやけになって突っ込んで来た瞬間、シグルトは交差の瞬間にその眉間を剣の鍔で殴り、気絶させていた。
 
(…っ、はぁ。
 
 さすがに…5人相手では、厳しかったな)
 
 大きく一度息を吐き、呼吸を整えるシグルト。
 すぐに背の傷を、持っていた清潔な布で覆うと、帯を外しそれで縛って応急処置を済ませる。
 
 シグルトは、普段から常に帯を2本巻いていた。
 一本は細く、普通の帯に隠れてしまう物。
 これは戦いのさなか服が緩まないようにするためであり、あるいはこのように使うためだ。
 
 傷の手当てをしながら、シグルトはまだ油断ない様子で周囲を見回した。
 
 一人が多人数を相手にする場合、リーダー格を先に倒し、敵の戦意を挫くという戦い方がある。
 シグルトはそうせずに、そのリーダー格が他の盗賊たちとほぼ同格の実力と見るや、他の敵から倒してリーダーを追い詰める戦い方に切り替えた。
 
 実力が近しい敵の場合、無理にリーダーを倒しても、敵を激昂させて逆効果になる場合がある。
 リーダーを先に倒すのが効果的なのは、敵たちが戦術や実力でそのリーダーに依存していないと効果が薄い。
 真剣勝負とは、そういった駆け引きを制し、心理戦で負けないことも必要だ。
 
 今回はシグルト単独で、仲間のバックアップは無かった。
 盗賊たちを追撃でまとめて疲労させていなければ、シグルトでも危なかっただろう。
 実際手傷も負っている。
 
 しかし、シグルトの修業時代に兄弟弟子と行った、槍を模した長い棍で殴り合う鍛練の方がよほど厳しかった。
 その訓練は痛みに慣れ、怪我をした状態でも冷静に戦うために行う。
 
 形式化した武術は大概が寸止めや防具を用いるが、それでは強い一撃を受けた後に、負傷に気を取られてたたみ掛けられてしまう。
 身体で痛みを知り、実戦の緊張感に慣れるその鍛錬は、シグルトの武術の師が、元々は戦場で鍛えたことの名残である。
 
 先程背に傷を受けた時、シグルトは背筋に力を込めて受けた。
 常人ならば大怪我をしていただろうが、まんべんなく鍛えられたシグルトの強靭な筋肉は、多少の攻撃には耐えられる。
 
 野蛮とも言える戦い方である。
 だが、実戦とは殺し合いであり、荒っぽいものなのだ。
 
 シグルトは武器を剣に変えたばかりで、身体には障害がある。
 だから、より油断なく張りつめた戦い方をする。
 ちょっとした気の緩みで、命は簡単に奪われてしまうのだから。
 
 自身の手当を終えたシグルトは、気絶した盗賊たちを縛り上げていく。
 道具は盗賊たちの帯と服。
 髪の長い盗賊を選んで、その髪をひと房切ると、それを使って後ろ手に拘束した状態で盗賊たちの親指と小指も縛る。
 こうすれば力が入らず、逃げられることは無い。
 欝血しない程度にきつく、使う髪は切れないように常に数本。
 
 シグルトが苦戦したのは、殺さずに捕まえるためでもあった。
 
 善意でそうしたのでは無い。
 
 官憲に引き渡された後の盗賊の末路は、大概悲惨なものだ。
 だが、犯罪者が処罰されれば、その恐怖が犯罪を抑制する。
 それに生きた犯罪者は、助かるために他の仲間のことやその手口を話すだろう。
 
 実際に倒すべき対象が定まれば、軍隊というものは大抵迅速だ。
 盗賊のアジトが分かっていれば、動く兵士たちもいるはずだ。
 そのすべてがいなくなるわけではないが、少しは盗賊の被害が減るかもしれない。
 
 シグルトが4人目を縛り終えた時、ふと気配の動きに振り向くと、先ほど倒したはずの盗賊のリーダーがいない。
 
(あの殴打を受けて、動いたのか?
 
 いや、まだ身体が痺れてそれほど動けないはずだ)
 
 倒れていた位置から逃げられるルート、隠れられる場所の予測を始める。
 
(む…北か?
 それとも、東側の崖か?
 
 どちらを探す?)
 
 シグルトが思案している時、不意に柔らかな風が吹いた。
 撫でるように暖かい、不思議な風だ。
 
「「…こっちだよ」」
 
 心に直接触れるような、不思議な風。
 シグルトは、次の瞬間には決断し、風が導く方に走った。
 
 
「な、何でっ!!!」
 
 北側に生えている枯れた木の後ろに隠れていた盗賊は、何の迷いもなく走ってくるシグルトを認めてその身をさらしてしまう。
 
「逃がしはしないっ!」
 
 鋭い声で盗賊を恫喝し、距離を詰める。
 盗賊はなおも逃げようと、シグルトに背を向けた。
 
 シュバッ!!!
 
 その瞬間、不思議な突風が吹いた。
 脇腹を裂かれて盗賊は転倒し、地面に額を強打すると動かなくなった。
 
 盗賊のすぐ近くで草木を巻き上げながら、ひゅるひゅると風が渦巻いている。
 その珍妙な旋風に、シグルトは首を傾げた。
 どう見ても自然の風では無い。
 
「…ほほ、恵まれた男じゃて。
 
 風の方から力を貸すとは、の」
 
 盗賊が隠れていた木の後ろから、ぬっとその老婆は現れた。
 薄汚れた襤褸を纏い、しかし眼光だけは底知れぬ何かを秘めている。
 
「…あの時の婆さんか?」
 
 シグルトは相手の姿を認め、肩の力を抜いた。
 
 かつて国を追われ何をすべきか分からずに彷徨っていた頃、イルファタルという国で、シグルトはこの老婆に逢っている。
 老婆はシグルトの未来を予言し、西方に向かうことを促した。
 
「久しぶりじゃの、オルテンシアの末裔よ。
 
 かれこれ数か月になる…また逢ったの」
 
 老婆の言葉に、シグルトは頷き返した。
 
「貴女は、あの時から俺のことを知っていたようだな。
 
 俺は名乗る必要があるか?」
 
 老婆はいらぬ、と首をゆっくり横に振った。
 
「お主のことは、小さい時よりよく知っておる。
 
 金床に登って玉鋼(ぎょくこう)の女神に祝福され、天地の霊母(あめつちのはは)に頭(こうべ)を撫でられて空に手を伸ばした、その時からの。
 生まれながらに選ばれる英雄…それを我らは、愛おしみ、あるいは憎むものじゃ」
 
 謎めいた老婆の言葉。
 
 シグルトは、生まれて這い這いが出来るようになった頃、国の伝統である儀式をさせられたことがある。
 周囲に生活用品を置き、最初に子供が手に取った物を育て方の参考にするのだ。
 手に取った物に関わる職業に就く、と信じられていたからである。
 
 だが、シグルトは品物の数合わせで置かれていた、窓際の陰にあった金床に上り、窓から天に向けて手を伸ばしたのである。
 その不思議な行為に、周囲の者はこの子供が特別な人物になると語り合ったという。
 
 今の老婆の言葉は、そのことを指すのだろう。
 
「ほほ、それにお主の名前の由来も知っておる。
 
 北方一の鍛冶師に祝福された、幸運な者であることもな」
 
 シグルトは呆れたような顔になった。
 そこまで詳しく知られていると知り、怒るより感心しさえしている。
 
 シグルトの父親アルフレトは、国で最強と呼ばれた剣豪であった。
 そして持っていた剣は、王より賜った名剣である。
 【ティゲル(虎)】と名付けられた、美しい縞の波紋のあるその剣を打ったのは、北方でも名の知られるドワーフの鍛冶師マクラホンだ。
 
 シグルトが生まれた日、薄汚れた旅のドワーフがシグルトの生家を訪れた。
 一晩の宿を、と望んだのである。
 
 この珍客を、家中の誰もが反対する中、シグルトの母オルトリンデだけは迎え入れて持て成す様に言った。
 当時は家の主人であったオルトリンデの命で、ドワーフは食事と酒を振舞われた。
 
 シグルトを身籠っていたオルトリンデは、身重のまま食事を作り、ドワーフと話す間に産気づいて、シグルトを出産した。
 駆け付けた父アルフレトは、その時焦る家人を叱咤し、子の出産に立ち会ったドワーフが誰なのか知って、大変驚いた。
 彼こそ、アルフレトの愛剣を打った名工マクラホンであったからだ。
 
 アルフレトは古今の英雄譚が好きで、長子にも北方の英雄の名を贈っている。
 彼は鍛冶師に関係がある名前、ということで、幼小に鍛冶屋に育てられたという竜殺しの英雄、シグルトの名を貰ったのである。
 
 アルフレトはマクラホンに礼として、国にいる間使ってもらえるようにと、小さな鍛冶場と小屋を提供した。
 その鍛冶場にしばらく留まって数々の剣を打ったマクラホンは、誰にも見せなかった鍛冶場をシグルトだけには見せ、シグルトも鉄を打つい音が響く間は上機嫌で眠ったという。
 
 マクラホンは、儀式で金床に乗った姿を見て、シグルトが鉄の守護者とも呼ばれる女神ダナに祝福を受けたと、すぐに理解した。
 そして後にシグルトが槍の道を志すと、一本の見事な槍を作って彼に贈っている。
 かつてシグルトが9歳で狼を殺した勇気と罪を覚えておけと、マクラホンは厳つい顔で微笑み、狼を模した【ヴォルフ】という青黒いその槍を残してまた旅立ったのである。
 
 マクラホンは剣しか打たない鍛冶師だったが、唯一シグルトにだけはその槍を送っている。
 彼の打った刀剣は“獣の銘”と呼ばれ、現在でも北方の剣士たちには垂涎の品だ。
 
 シグルトの、この由縁を知る者はあまりいない。
 彼は自分から話す方ではないし、鍛冶師マクラホンは謎めいた人物で、その武具が業物という以外は、居場所も性格も分からないと言われているのだ。
 
「お主は、玉鋼の女神ダナ、天地の霊母イルマタルと契約した神仙、大精霊術師オルテンシアが末裔よ。
 
 その出生は、ダナが祝福し、イルマタルが言祝いだ。
 そう、神々が英雄となることを期待したものじゃった。
 お前の魂は、磨いた鉄のように輝いておる。
 
 神と精霊に愛された、選ばれし男、というわけじゃ」
 
 老婆はゆっくりとシグルトに近づいてくる。
 
「そして、名を残すであろう英雄のお主とともに、自らの名を歴史に刻むことこそが、お前を見染めた精霊や神々の望み。
 名を高めることは、霊格を高め、より偉大な存在になれるからの。
 
 だが、同時にお主の力強き魂を奪わんとする者もおる。
 黄昏の後にも狂って魂を刈る戦乙女や、魂を喰らう悪神、死神どもじゃ。
 
 お主が地を這う痛苦と悲しみを味わったのは、そういた悪神の一柱、悪辣なる魂喰い“貪り”に影の一部を食われた故。
 同時に、“貪り”を屠った神仙“神狩りの灰”に出会い、不老の呪いを浴びた英雄“不折の刃”に命を救われ、諭されたお主。
 
 その英雄性を、どれだけの神や悪魔…〈超越者〉が注目しておるのか、今のお主は分かるまいの。
 
 お主の道は、茨の道よ。
 
 傲慢なる聖北は、お主を助けることはなかった。
 だが、お主を憐れみ、力を貸す神々もおる。
 
 ゆめ、忘れるな。
 
 お主は、常に精霊と古き神々に祝福され、狙われておる」
 
 言い聞かせるような言葉だった。
 そして、ねっとりとした妄執と、渇望する悲願の成就。
 
 老婆の眼光から感じるそれらに、シグルトは冷たい汗が脇の下を伝わるのを感じていた。
 だが、取り乱す様子もなかった。
 
 シグルトが動じない性格なのは、一つにとんでもない存在に関わってきたからである。
 
 かつてシグルトは、建国王の母とされる神仙に志を学び、その命を恐ろしい死神に狙われたり、死神すら殺す神仙に助けられた。
 そして、シグルトが尊敬するとある英雄は、死にかけたシグルトを救い、生きる意味を教えてくれた。
 
 そんな超常の存在と数多く邂逅すれば、肝も太くなる。
 
「…と、まあ、脅してみれば大して動ぜぬか。
 
 重畳、重畳。
 この程度の建前…
 有頂天になる馬鹿や、言葉の重みに狂う弱者など、このワシが見染める筈もない。
 
 その泰然こそ、そしてあの若造の〈新しさ〉。
 お主らは、やはり面白い」
 
 くく、と老婆は笑い、やがてシグルトの目の前に立った。
 
「ワシはポダルゲ。
 神話に詳しきお主ならば、何者か分かろうな?
 
 今日は、再会と冒険者になったお主を祝い、贈り物をしよう」
 
 ポダルゲ、と名乗った老婆は、すっとしわがれた手でシグルトを指差した。
 
「旋風の娘が、お主を見染めたようじゃ。
 
 精霊の方から力を与えて貰えるお主は、果報者よ」
 
 シグルトの周囲を、先ほどと同じ柔らかな風が包んでいく。
 
「風を纏い、戦う憑精の術。
 【飄纏う勇姿(つむじまとうゆうし)】と呼ばれる精霊降ろしよ。
 
 先程、そこな賊の居場所を教え、倒した旋風の娘。
 随分とお主を気に入っておるようじゃ」
 
 ポダルゲの声を肯定するかのように、風はシグルトの周囲を強く吹いた。
 
「その娘は名無しじゃ。
 
 名の無い精霊は、主と決めた者から名付けられることを好む。
 助けられたのじゃから、その礼と思って、名を考えるのだ」
 
 意地悪そうな笑みを浮かべたポダルゲ。
 急かす様に、旋風が舞う。
 
「…ふう。
 
 状況が理解できないが、とにかくこの恩人に名を贈れば良いんだな?」
 
 シグルトは手をかざし、風に触れるような仕種をした。
 
 かつてシグルトに、精霊のことを教えてくれた老婆がいた。
 その老婆は、シグルトに精霊術師の素質があると言っている。
 
 シグルトには精霊を見ることは出来なかったが、その息吹や存在を感じ取る能力があった。
 そして、精霊たちはポダルゲの言うように、多くがシグルトに対して好意的だった。
 
 特に風の精霊は、シグルトにとって親しく感じられる精霊である。
 
 北方の冷たい風の精霊も、シグルトの周囲を吹く時は優しかった。
 傷つき彷徨って西方に流れて来た時、支えてくれた微風があった。
 アレトゥーザを訪れた時、南洋の海風はいつも歓迎してくれた。
 
 シグルトは自身に精霊術師の資質があることを、あまり言わず、また表に出すこともなかった。
 彼の故国は厳しい聖北教会の教えが浸透する国で、精霊信仰は教会によって禁じられていたからだ。
 自身の才能を開花させることなく、シグルトはずっとその力を隠してきた。
 
 だが、シグルトはいつでも精霊の存在を疑わず、そして受け入れていた。
 見えず、言葉が交わせずとも、そこにあるものを信じ受け入れられるシグルト。
 そんな彼に、精霊たちはいつも優しかったのだ。
 
「俺には精霊の姿を見る力は無い。
 だが、お前の導きは感じていた。
 
 先程は助かった。
 とても感謝している。
 
 俺はあまりこういうことは得意では無いんだが…
 恩人が望むならば、考えてみよう。
 
 そう…俺には見えない娘だから、〈トリアムール〉ではどうだ?
 
 偉大なる獅子王に仕えたロンファールには、妖精の恋人がいた。
 彼女はとても美しく、賢く、ロンファールにしか見えなかった。
 
 ロンファールの栄光は、この見えない恋人と共にあったという。
 
 お前が美しく、そして偉大な風であるように。
 
 〈トリアムール〉の名を贈ろう」
 
 旋風は喜びを現す様に、空に向かって吹き昇った。
 そして寄り添うように、シグルトを優しく風が取り巻く。
 
「ほっほ。
 
 精霊が契約で求める名に、〈トリアムール〉…〈愛を全うする〉とは、なぁ。
 まるで求婚のように、甘い囁きじゃの。
 
 旋風の娘は、すっかり虜になってしまったぞ」
 
 シグルトは、分からないという風に首を傾げた。
 
「…契約?
 
 名を贈れと言ったから、思いついたものを言っただけだが?」
 
 ポダルゲは、肩を震わせて噴き出した。
 
「精霊が名をくれ、というのは、親や相方になってくれという意味なのじゃ。
 
 それは、その精霊を名で支配する力を得る、ということ。
 つまりは、契約が成立したということじゃ。
 
 お主の贈った名を受け取ったその精霊は、偉大なる西風の娘。
 纏うことを許されるお主は、間違いなく勇者よのう」
 
 貴方の側を離れないわ、という風に旋風がシグルトに纏わりついて、その髪を撫でていた。
 
 困ったように、シグルトは風で乱れた髪を直しながら溜息を吐いた。

 
「…ポダルゲ、か。
 
 西風ゼピュロスの妻で、ハルピュイアイ(ハルピュイアの複数形)三姉妹、あるいは四姉妹の一人と聞いている。
 今伝わっている神話ではハルピュイアが醜い魔物にされてしまっているが、本来ハルピュイアは有翼の風の神かその眷属だ。
 
 貴女はつまり、その風の神たるポダルゲということだな?」
 
 ほほほ、と笑いながら、老婆は頷く。
 
「貴女がいるなら、この『風繰り嶺』の様子も理解できる。
 
 花一輪、咲いていないわけだ」
 
 散々笑われたシグルトは、ここで反撃に出た。
 ポダルゲは、不機嫌そうな顔になり、そっぽを向く。
 
 ポダルゲの夫、西風ゼピュロス、あるいはゼファーと呼ばれた風神は好色で有名である。
 その愛妾の一人には花の女神であるフローラもいて、ポダルゲとは仲が悪い、というわけだ。
 
 伝説では、ハルピュイアは花一つ咲かない毒の沼地に出現するとある。
 あるいは荒れ地や岩場の荒々しい風を象徴するのが、彼女たちだ。
 
 シグルトの聞いた話では、ポダルゲが植物の女神の筆頭のフローラを嫌ってのことだという。
 
「ふん、罰当たりな奴じゃ。
 
 神との邂逅に物怖じもせず、さっそくにも笑われたことの仕返しをするなど…
 儂の知る神にならば、殺されておるぞ」
 
 たしなめるポダルゲに、気をつけよう、とシグルトは苦笑して返した。
 
「しかし、〈ポダルゲ(足の速い女)〉という名に恥じない移動力だな。
 
 ここから貴方と逢ったイルファタルまで、数か月かかる距離だ。
 風の精霊術には、そんな術もあるのか?」
 
 シグルトの質問に、ポダルゲは頷く。
 
「知らぬだけで、すべての者は大気に触れておる。
 風とはその大気の流れじゃ。
 
 なれば、風を掌握した者は誰よりも早く、誰よりも見事に動ける。
 武芸の達人ともなれば、最後に行き着くのは、武具を振う時に風の抵抗をいかに少なくするかを考えよう。
 
 あるいは空を飛ぶ術。
 竜巻はかつて神々の乗り物であった。
 
 お主の纏うべき旋風の娘も、お主の不自由な足や身体を支えてくれるじゃろう」
 
 ポダルゲの言葉に呼応するかのように、シグルトの周囲の風がふわりと動いた。
 

「…そろそろ俺はペルージュに戻る。
 
 旅の道具もすべて置いてきてしまったからな。
 血は止まったようだが、しっかり傷の手当てもしたいし、転がっている盗賊どものことも、官憲に知らせる必要があるな。
 
 …トリアムール、本当に俺についてくる気か?」
 
 シグルトが風に向けて問うと、その旋風はシグルトの周囲をくるくると回った。
 今更何を、と怒っている様子である。
 
「往生際の悪い奴じゃ。
 
 風の目からは、何処におっても逃れられぬと知れ」
 
 ポダルゲの言葉に、シグルトは苦笑して頷いた。
 
「ならば、よろしく頼むとしよう。
 
 これから力を借りるぞ、トリアムール」
 
 旋風トリアムールは、まかせて頂戴、とばかりに強く吹いた。
 
「ではな、ポダルゲ。
 
 といっても、風が吹く処、貴女はどこかで見ているのだろうが」
 
 ポダルゲは、ただ皺だらけの顔を少しほころばせて、風に吹かれていた。
 
 シグルトは彼女を一瞥すると、ペルージュへ続く坂道を下り始める。
 去って行くシグルトの背中を見つめ、ポダルゲはしわがれた声でぼそりと呟く。
 
「…儂の娘を、よろしくな…」
 
 その言葉はすぐに空に融け、後には荒々しい風だけが吹いていた。
 
 
 ペルージュに戻ったシグルトは、取り戻した装飾品を細工師に返し、役人に盗賊たちがどこで縛られているかを伝えた。
 役人たちは、門番を害されたことを重く見たのか、意外にもすぐに動いてくれ、盗賊たちはすぐに捕縛される。
 
 シグルトは背の傷をアフマドに診てもらい、数日をクリストフの教会で過ごしていた。
 その間に、ペルージュの役人から盗賊を捕まえた報酬として、銀貨三百枚を貰うことができた。
 
 一方、クリストフは聖母のカメオをレノールに贈ることができ、レノールはとても感激したそうだ。
 アフマドの見立てだとレノールの耳は、彼の考案する治療法ならば完全に治るまではいかないものの、難聴程度にまでは回復できるだろうとのことで、補聴器を付ければ人並の聴覚が得られるかもしれないとのことである。
 
 シグルトは背中の傷が塞がると安心したように、アフマドのその後をクリストフに任せて旅立つことにした。
 
「またペルージュに来ることがあったら、寄ろう。
 
 元気でな、アフマド」
 
 不精髭の生えた顎を撫でながら、お前もな、とアフマドが薄く笑う。
 
「いつでも此処に寄ってください」
 
 クリストフの言葉に頷き、シグルトは一緒に見送ってくれるレノールを見た。
 彼女の胸元には、真新しい聖母のカメオが輝いている。
 
 シグルトは、レノールに「治療、頑張れ」と手話で伝えると、ペルージュを後にする。
 彼に寄り添う旋風トリアムールが、柔らかな微風を起こして街道の草木を優しく撫でて行った。

 
 
 長編になりました、シグルトのソロストーリー、如何だったでしょうか?
 といっても、シグルト、もうちょっとだけ一人で頑張るのですが。
 
 今回Martさんの『風繰り嶺』を題材にしましたが、じつはこのストーリーを書くにあたり、悩みっぱなしでした。
 
 なぜかというと、この話を書くことを企画した頃、Martさんが『宗教都市ペルージュ』に『風繰り嶺』を取り込むということで『風繰り嶺』は一時公開中止になっていたんです。
 そこで、当初は【気精召喚】にするつもりだったスキルを取りやめ、風屋で発表する精霊術として【飄纏う勇姿】というスキルを作りました。
 そのまま、『風繰り嶺』のリプレイは止めてオリジナルストーリーだけで行こうと考えていたんです。
 でも、また『風繰り嶺』が公開されたので、じゃあ、と今回のような話になりました。
 
 【飄纏う勇姿】は、『風繰り嶺』の【気精召喚】と大変よく似ていますが、より戦士向きにカスタムされたスキルです。
 イメージでは【気精召喚】がエアリアルを召喚して、彼女が独立して敵を攻撃するようなイメージで、【飄纏う勇姿】は精霊が変化した旋風を纏い、術者を中心に風の攻撃が発動する感じです。
 行動力アップがあるので、勢いに乗っているような感じがあります。
 記事の最後にスクリーンショットを載せておきますので、よかったら見て下さいね。
 
 
 シグルトの精霊術師としての一面を開花させるお話でしたが、同時に大量の伏線が出てきてます。
 そのうち明らかになりますので、頭の隅にでも置いて流して下さい。
 
 ポダルゲに関しては、それなりに伝説を調べて、それを反映させた内容にしてあります。
 同時に、Martさんの考えていた設定と食い違うところも多いかと。
 でも、まあ、リプレイの世界に合せたということでお許し下さい。
 
 それからトリアムールですが、彼女はたくさんいるポダルゲとゼファーの娘ということで、奔放な西風と、嵐のポダルゲの娘ということで、旋風の精霊ということにしました。
 そのうち彼女の姿や性格がどんな感じかも書きたいなぁと思っています。
 

 今回のクリストフとレノールの物語は、最初『風繰り嶺』を私がプレイした時、僧侶のプレゼントの話はこんなかな?と思ったものをベースにしています。
 実は、『宗教都市ペルージュ』の方の話だと、年配の司教がスケベ心で、愛人契約のために用意したプレゼントを取り戻す話だったので、それも微笑ましいと思っていたのですが。
 シグルトらしいストーリーで、ということで、こんな内容にしました。
 皆さんのイメージではどんな感じでしたか?
  
 
 ええと、今回の動向ですが…
 
・アフマド救出(-1000SP)
・『風繰り嶺』Martさん(報酬+300SP)
 シグルト、オリジナルスキル【飄纏う勇姿】習得(アフマド救ったボーナスということで)
 
 お金は-700SPです。
 
 
 〈著作情報〉2007年09月19日現在

 『宗教都市ペルージュ』はMartさんのシナリオです。未公開であり、作者のMartさんは引退されているので、未完のシナリオです。
 シナリオの著作権は、Martさんにあります。
 ペルージュの名は、Martさんのシナリオ『銀斧のジハード』にも登場します。
 これらの設定から、私が聞き及んでいたものをリプレイ用にアレンジ致しましたが、著作権はMartさんにあります。
 
 『風繰り嶺』はMartさんのシナリオです。現時点でMartさんのサイトで配布されています。閉鎖したサイトですので、DLはお早めに。
 シナリオの著作権は、Martさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはver.1.05です。
  
・Martさんサイト『esotismo.』(閉鎖済み)
 アドレス(http://sky.geocities.jp/mart_windowl/)
 
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。
 
 
  【飄纏う勇姿】スクリーンショット

 
 スキル【飄纏う勇姿】には蜥蜴さんと八雲蒼司さんの画像を合成、改変して使用しています。内包する召喚獣も同様です。
 
【蜥蜴さん】
 HP:匣屋(現在[2007/09/19]閉鎖中)
 URL:http://www.geocities.jp/haco_ya
 
【八雲蒼司さん】
 HP:蒼の雲海
 URL:http://cloud.nce.buttobi.net/
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コメント
お久しぶりです。
いつもながらの重厚な文章、
いつ拝見しても圧倒されますね。
そして驚くほどのハイペースな執筆速度。
遅筆の私は、素直に羨ましかったりします(笑)。

今回のお話で、シグルトの大人物ぶりが、
また少し明らかになった訳ですが。
幼少からの「自らを鍛える」に優れた環境も、
その一因になっていたようですね。
「知識は持つものに出会えなければ学べない」という、
本編内で登場した話を採りあげても、
シグルトを導いた面々の「濃さ」は特筆ものですよね。

ですが、何故これほど師に恵まれたのでしょう?
シグルトは出生から神々に祝福された存在だから、
優れた師すらも神仙の手によって導かれたのか。
はたまた、シグルトの向上心と知に対する公正さが、
優れた師を惹き付けて止まなかったのか。

…恐らくは、その両方なのでしょうね。
絡み合って互いにその力を増幅しあい、
運命を大きく動かす奔流になったのでしょう。

人たる身の上では、自らの天命はまず知り得ぬだろう。
だが、研鑽は人の手によってしか為し得ない。
自らのもつ資質を、どこまで磨き上げる事ができるか。
英雄と凡人の差は、きっとここなのでしょうね。

凡人中の凡人な私には、
凄まじく耳が痛い話です、はい(汗)。
【2007/09/21 00:02】 | エルク #RpwNgvbs | [edit]
 いらっしゃいませ、エルクさん。
 
 今回はどんな概要にするか考えていたので、すんなりと書くことができました。
 私の場合、遅筆のときはとことん遅筆ですし。
 
 シグルトは、さまざまな存在が、〈狙って〉大人物に仕立てようとしている様子があります。
 
 ギリシアの神々(特にゼウス)などは、戦争による人間の間引きや、自身の権力の安定のために英雄を選んだり、生み出す手助け(強引な場合もあり)をします。
 私のリプレイの世界観で、神から精霊に格下げになった神々の多くは、聖北を含む異教を敵視しており、昔のような神としての権威を取り戻すために、涙ぐましい努力と暗躍をしています。
 シグルトは、そんな中で期待されている英雄候補なのです。
 
 彼が選らばれたのはまず血筋で、ハイエルフの血を引く上、国一番の剣豪と絶世の美女の娘、ということで、強さと美貌を生まれる前から期待されていたわけです。
 それに、シグルトの両親は優れた師でもありました。
 シグルトの誠実で義に厚く勇敢な性格は父譲り、聡明で勤勉かつ素直な性格は母譲りで、それが正しく伝わるよう、シグルトを見守る存在たちは期待していたはずです。多くの英雄は、性格の破綻で身を持ち崩しますから。
 
 シグルトに関わった神は、まず一番手は、ケルトの大地母神ダナ(ダヌ)、そしてフィンランドの開闢の女神イルマタル。
 女神様って、大抵美形好き、美少年大好きですし。
 
 続いて、ポダルゲも、陰で見守りながら、場合によっては借りを作って利用できないか、と静観しています。
 最も、ポダルゲはシグルトに特別優れた精霊術師の才は無いと見抜いており、本命は別にいます。(私の中ではそういう設定です)
 他にも暗躍しつつ、シグルトを自分の関わる勇者に仕立てようという神や精霊はいるかもしれません。
 
 シグルトの出生は、両親の出会いからして仕組まれていたのかもしれません。
 偶然を演出し、運命を操るのは、多神教の神が好むことです。
 
 ですが、ここでシグルトの先祖のオルテンシア姫が動き、陰ながらダナとイルマタルにちょっかいを出さぬように釘を刺しています。(ダナもイルマタルも、オルテンシア姫と契約している上位精霊です。シグルトにちょっかいを出したのは、オルテンシア姫の血筋と才能を期待しているからでもあります)
 
 オルテンシア姫は、自分の子孫であり、自分の子供そっくりの容貌を持つシグルトが、かつて自分の息子たちがそうであったのと同じく、神々や精霊、世界の運命に振り回される定めにあることをいち早く見抜き、自分の腹心をシグルトの側に教師として付けます。
 多神教の多くの神々の身勝手な性格や、その力を教え込まれたシグルトは、抵抗なく神々に対峙できる心を養いました。
 
 その後、シグルトは向上心から自身も師を求めて学び、師となった者は、シグルトの才能とその人間性に惹かれて力を貸します。
 地盤は様々な者たちが整えていましたから、シグルトが学ぶ幸運を得ることは、比較的たやすかったわけです。
 
 シグルトには、状況を受け入れる素直さと、自身で運命を切り開き努力する意思、さらには誘惑に負けない禁欲の心、信念を曲げない志をもっており、それでさらに成長できたわけです。
 
 軽々しく流されたわけでは無いのですが、状況を精一杯利用したんですね。
 
 シグルトは、最高の能力を持つわけではありません。
 せいぜい、人より幾段優れる程度。
 でも、それを磨き、上手に扱うよう高めたシグルトは、英雄的な総合力を得るに至りました。
 
 シグルトの英雄性は、英雄型の能力値では無く、英雄型としての〈らしさ〉なんですね。
 
 第一話のシグルトの能力値を見ればわかるのですが、シグルトは最強ではありません。
 ですが、自身が最上位でないために、持前の向上心で高みに向かう方向性をシグルトは持っています。
 シグルトは、凡人の弱さを知っていて、強くなろうと足掻く秀才です。
 
 期待と評価が英雄扱いなのに、その実、普通の人間としての一面があることが、シグルトの魅力であり、その人間性を強調したいという意味で用意した各種設定だったりするのですが。
 
 凡人って、凄いのですよ、実は。
 
 英雄って、英雄であるのでは無く、凡人から英雄になるものです。
 神々の期待だの、選ばれた運命だのをただ享受するのは、二流であり、私はその上で最後に足掻ける者こそ、理不尽を変えられるだけの変革者=英雄何だと思います。
 
 シグルトの美貌だの、才能だの、生まれだのは、シグルトの本質では無く、おまけだと私は思ってます。
 おまけを強調すると、本質が光るので、つい大げさに書いてしまうのですが。
【2007/09/21 19:55】 | Y2つ #TIXpuh1. | [edit]
今晩は。

 リプレイ拝読。少しずつシグルトさんの素顔が明らかになって来ましたね。
 英雄の資質や条件はこれまでユーザの間でも論争がありましたが、やはり個人的には『素質・努力・天機』が揃ってはじめて成り立つものの様に思えます。シグルトさんの場合は最初に『神々の思惑』があったのだろうとは思いますが。

 …それにしても、自分の都合だけでシグルトさんを振り回すカミサマ達にも困ったものですね(笑)。実生活でも時折見掛けますが、相手を利用するだけの自称『友人』と言う手合いには常々うんざりさせられますので。
 閑話休題。聖北神に代表される世界宗教の神様と古代の多神教の神様達との関わりについても、Y2つ様がどの様に描写されるのか興味があります。何処かで折り合えるのか、それとも互いに潰し合うだけなのか…。案外、シグルトさんがその鍵を握って居るのかも知れませんね。

それでは。
【2007/09/22 00:56】 | 樹音 #EDSLkfi6 | [edit]
〉樹音さん
 だいぶレスが遅れてしまいました。
 申し訳ありません。
 
 “風を纏う者”のリプレイは、皆理不尽や不幸を背負った仲間たちの物語です。
 それに立ち向かう、彼らの姿の表現もテーマの一つと言えます。
 
 私は、利己的で身勝手な神々や、人間たちと対峙しながら、与えられた才能を最大限発揮して、道を切り開いていく冒険者の姿をいつも夢想しています。
 
 シグルトたちもまた〈利己的〉なのですが、私はかれらのそれは格好良いものであってほしいと考えます。
 同時に、それが不快な理不尽を切り払う〈刃金〉であってほしいと考えるのです。
 
 相手を利用するだけ利用する存在。
 私はそういった存在には頭にくることもあるのですが(私も一個の人間ですからねぇ)、それも人間のありようの一つなのかな、とも思うのです。
 かといって、やり過ぎはそれなりの報いを覚悟すべきでしょうがね。
 私の場合は、自分を利用された場合でも、そういう行いをする人間を貪欲に観察し、その人間性を考えてしまうのです。困った性格です。
 
 聖北神や聖海の神様と、多神教の神々の水面下の抗争や関わり合いは、リプレイの世界観を紹介しつつ、表現していきたいと考えています。
 そして、それに関わる人間や、邪な存在。
 スケールが大きすぎて、表現できるか不安でもありますが。
 
 シグルトも、ちょっと特別な普通の人間です。
 彼が変わっていくとしても、その本質は人間的だと思います。
 
 うまく言えませんが、がんばってみますね。
【2007/10/04 00:09】 | Y2つ #TIXpuh1. | [edit]
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