『魔剣工房』 アロンダイト

2008.05.20(12:21)

 『山の洞窟』で、オークを討伐した“風を纏う者”一行は、依頼のあった村で報酬を受け取ると、その村に一つだけある宿で豪勢な夕食にありついた。
 村の依頼を完遂したことに感謝した宿の主人は、その日の宿と夕食を無料で提供してくれたのだ。
 
「あのオークのせいで、随分一般客が減ってしまったんだが…
 あんたたちのおかげで、また客が戻って来そうだ。
 感謝してるよ。
 
 田舎の宿だから大したことは出来ないが、今日は存分にやってくれ」
 
 宿の主人は上機嫌で、上等の葡萄酒を惜しげもなく振る舞ってくれる。
 
 オークとの激闘で動き回り、空きっ腹を抱えていた一行は、しばらくものも言わずに思う存分暖かい食事を頬張った。
 
 食事が一段落付くと、一行は食後の談笑をしながら、今後のことについて話し合うことになる。

 
「今後のことって言えば、シグルトの剣よね。
 
 うちの主戦力が得物に難ありじゃ、困りものよ」
 
 レベッカがそう切り出すと、シグルトが気まずそうに頭を掻いた。
  
「すまん。
 
 俺の技量が足りないばかりに、皆には迷惑をかけるな…」
 
 シグルトが申し訳なさそうに言うと、仕方ないよ、とロマンが首を振ってくれる。
 
「おぬしは常人離れした膂力を持っておる。
 オークの身体を縦割りにするほどじゃ。
 並の剣ではそれに耐えられまい。
 
 それに、剣の手入れをまめにしておったのはわしらも知っておるからの。
 
 ましてや、今回は儂らを助けるためじゃったろうが。
 気に病むことではないぞ」
 
 スピッキオが、ほっほ、と苦笑する。
 その横でラムーナも、うんうんと頷いていた。

「私だって、シグルトを責めてるわけじゃないのよ。
 実際、罠が発動した状態であのままじゃ全滅だったんだから。
 シグルトの判断は正しかったわ。
 
 私が言いたいのは、現状をどうするかということよ。
 
 戦士にとって、武器は商売道具じゃない。
 それがオークからぶんどった粗悪品じゃ、今後が不安でしょ?」
 
 パーティで一番の現実主義者であるレベッカは、ことに装備に関して厳しい考えの持ち主だった。
 その慎重さが“風を纏う者”を支え長らえてもいるのだが。
 
「確かにそうだが…困ったな。
 
 ここにはお古をくれそうな先輩はいないし、とりあえず前回のような討伐ものでなければしばらくはオークの蛮刀でも何とかなると思うんだが…」
 
 パーティの資金を気遣って遠慮するシグルト。
 それ以上言うな、とレベッカが制した。
 
「リーダーのあんたが、しみったれたこと言わないっ!
 
 シグルトの豪腕は私たちにとって絶対必要よ。
 貴方の力に見合う武器は必須だと思うの。
 
 その腕力に耐えられない武器じゃ、今回みたいにいつ折れるか分からないし、無駄になるわ。
 いつも今回みたいに、仕事が終わる間際に武器が壊れるとは限らないしね。
 
 そこで、よ…
 今の私たちはかなり資金もあることだし、この際、銘工の剣というやつを奮発して買ってみない?」
 
 そういうとレベッカはフォーチュン=ベルに住んでいるという、噂の銘工について語りだした。
 
 
「…ブレッゼンっ!?
 
 もしかして“神の槌”か!!!」
 
 レベッカが語った銘工の名に、シグルトが目を丸くした。
 
「…?
 
 何、シグルト…知ってるの?」
 
 誰も知るまい、と自慢げに話していたレベッカは鼻白んだ。
 
「…俺の住んでいた地方では有名人だ。
 一部の好事家では、その傑作に城を代金にしたという話もある。
 
 “神の槌”ブレッゼンの〈魔剣〉か、ドワーフの銘匠“生み出すもの”マクラホンの〈獣の銘〉。
 武具の、中でも刀剣では、故郷でこの2つが不動の銘だった。
 
 俺が生まれた国では、まともな剣は騎士か優れた戦士しか持てないという仕来りがあったんだが…
 ブレッゼンの銘を持てるということは、その中でも別格扱いされたものだ」
 
 シグルトが冒険者になるまで剣を持たなかったのも、故郷の習慣からだった。
 彼の故郷では、刀剣は神聖なものとして珍重されていた。
 
 そして半世紀も経たないうちに、シグルトの故郷を含め北方に名を知らしめた銘工といえば、件のブレッゼンがいるのだという。
 
 “神の槌”と呼ばれるこの人物は、古に存在した伝説の武具を再生出来るという噂だ。
 彼の作った武具、特に刀剣は〈魔剣〉と称され、その威力と不可思議な力ゆえに、天井知らずの値段で取引されていた。
 
「ブレッゼンは気難しい人物で、貴族から身を隠すためにどこかに工房を変えたと聞いていたが…」
 
 シグルトの話を聞いていたレベッカは、その件の銘工がこのフォーチュン=ベルにいるらしいのよ、と続けた。
 
「シグルトの言う通り、ブレッゼンはもの凄い気難しい人物だって話だわ。
 今では、自分の造った武具を認めた人にしか売らないらしいのよ。
 
 でも、〈魔剣〉以外に普通の武具は作って卸してるみたい。
 無銘の形で出回った業物が、ちょっとした話題になることもあるそうよ。
 
 本物の〈魔剣〉は、市場でも銀貨で万の桁、って世界だから、魔力付きには手が出ないけれど…
 ダメで元々、一度覗いてみましょうよ。
 運がよければ、そこそこの業物が手にはいるかもしれないわ。
 
 それに私の勘だと、シグルトってその手の職人に気に入られそうなタイプなのよね~」
 
 レベッカの言葉を聞いて苦笑しながらも、シグルトは頷く。
 
「武具に関係無く、偉大な銘工なら俺も会ってみたい。
 
 武器をどう振るうべきか、それを語ってくれるかもしれないしな」
 
 決まりね、とレベッカが手を打った。
 
 
 数日後、“風を纏う者”一行は、フォーチュン=ベル郊外へと来ていた。
 
 『ヘフェスト』と呼ばれるブレッゼンの工房は、フォーチュン=ベルの郊外にひっそりと在った。
 
 とりあえずは、と「武具の修理、販売承ります」と書かれた販売所の方に顔を出す。
 呼び鈴をならすと、陽気そうな婦人が出てきて対応してくれた。
 
「いらっしゃいませ!

 初めてのお客さんね」
 
 サンディと名乗った人の好さそうなその婦人は、ニコニコと微笑んで一行を迎え入れるとお茶を出し、もてなしてくれた。
 
「ここの噂を耳にしてやって来たんです。
 
 活動拠点はリューンなんですが、フォーチュン=ベルには仕事でよく来ます。
 
 今回は仕事で武器を破損してしまったので、修理か購入を、と思ったのですが…」
 
 シグルトが事情を正直に話す。
 サンディは相槌を打ちながら聞いていたが、それなら、と工房の方を指差した。
 
 工房からは、離れていても休むこと無く鋼を打つ甲高い音が響いてくる。
 
「シグルトさんっておっしゃったわね。
 
 あなたなら主人も武器を打ってくれると思うわ。
 腰の剣、折れてしまったっていうけれど、とても大切に手入れをしていたのがわかるもの…」
 
 この工房では武器の修繕もしてくれると聞き、シグルトはオークの剣は処分して愛用していた剣を持って来た。
 砕けた刃は袋に収めてあるが、磨かれた柄を見れば、どれだけ大切に使われていたか分かるとサンディは言う。
 
「…主人が〈魔剣〉を与える人を選ぶのは、〈魔剣〉にも意思があるからなの。
 
 〈魔剣〉は、使い手に応じて邪剣にも、聖剣にもなりうるわ。
 意思を持つ故に使い手を支配することさえあるのよ。
 愚か者が使えば…剣を振るうはずが、剣に振り回されるような羽目になるというわけ。
 
 優れた〈魔剣〉には、それがあるだけで運命を変革する力を発揮するわ。
 だからこそ、主人は使い手の資質を見極めて〈魔剣〉を託すの。 

 私の勘だと、貴方は剣の方から求められる素質がある…
 きっと、貴方は〈業物〉と称されるような武具を持ったこともあるでしょう?
 匠に対する礼節をわきまえているもの」

 サンディの洞察に、シグルトは内心かなり驚いていた。
 
 かつてシグルトは、世界に一本しかないという特別な槍を所持していたことがある。
 ドワーフの鍛冶師マクラホンの銘を刻んだ、漆黒の槍だ。
 当時シグルトの技量は、その槍を扱うのに相応しいものだった。
 
 だが現在は、身体中に故障を抱え頻繁に武器を破損する始末だ。 
 サンディの言う素質など自分にはあり得ない。
 そう、シグルトは思っていた。

 シグルトの心を知ってか知らずか、サンディはそれ以上は追求しなかった。
 
 他の方はここでお茶でも飲んでゆっくりなさってね、とサンディは手作りの茶菓子を用意してくれる。

「なんなら、待つ間、商品でも見せましょうか?」
 
 そのように、親しげに話してくれた。
 
 仲間たちがサンディの言葉に甘え、くつろぎ始める。
 ロマンやラムーナなどは、好奇心に目を輝かせて武具を観察し始めた。
 
 シグルトはサンディに一礼すると、販売所を後にして工房に向かった。
 
 
 絶え間無く鉄を打つ音が響いている。
 音が大きくなるにつれ、胸が自然と高鳴った。
 
 剣士にとって、優れた刀工とは医者のような存在である。
 武器は使う度に摩耗し、消耗していく。
 それを直すことが出来るのは、専門の技術を持った刀工だけなのだ。
 
 良い刀工に巡り会えば、優れた剣が使える。
 それは、剣士が最大の技量を発揮するために無くてはならないことだ。
 
 優れた剣は、優れた刀工しか直すことが出来ない。
 銘剣の類とは、研ぎ手が達人であって最高の切れ味を取り戻す。
 
 逆に愚鈍な刀工が扱った刀剣は、どんな銘剣の類でもなまくらと化すのである。
 
 シグルトは、めったに自身の剣を他人に扱わせなかった。
 彼の目に適う刀工がいなかったからだ。
 
 幼少の頃、シグルトは鍛冶師のところに通っていたことがある。
 その鍛冶師は最高レベルの刀工であり、武具の手入れはその鍛冶師から学んだ。
 
 その鍛冶師…マクラホンが作った〈獣の銘〉と呼ばれる刀剣は有名だ。
 シグルトの国においては、剣を志す者にとってあこがれの銘柄だった。
 
 優れた武具を見ていたので、自分の目が厳し過ぎるのだという自覚はあった。
 だからシグルトは、あえて今まで優れた剣を使わなかったのだ。
 
 金銭的な余裕ももちろん理由の一つだった。
 だが、本当の理由は別である。
 
 己の腕を磨き、武器の性能に甘えないために。
 そして、思う存分力を込めて振るえるだけの剣が無かったためだ。
 
 妥協を許さないシグルトの鍛錬から繰り出される技は、武具に多大な負担をかける。
 武器そのものが、技によって生まれる力に耐えられない。

 優れた才能が凡庸な剣を壊してしまうことは、剣士の世界では時折あることだ。 
 シグルトが本気で技を放っていたならば、今までの剣では数回の使用で使い物にならなくなったはずだ。
 
 今回の剣の破損も、同様だ。
 堅牢な扉を穿つほどの刺突は、頑強だった剣を粉微塵にしてしまった。
 
 初めて振るった剣はロマンを守るために、悪漢の重い得物を止めてへし折れた。
 最初の依頼で振るった剣は、敵の骨に食い込んでやはり折れた。
 
 仲間には話していないが、本当は自身の力と武器の折り合いが取れず、故障だらけの身体の負担にさえなっている。
 
 そんな状況だからこそ、シグルトは伝説的な名を持つブレッゼンに期待していた。
 彼になら、せめて力一杯振るえる剣を作ってもらえるのではないか、と。
 
 高望みはしていなかった。
 シグルトが第一に望むのは、武器の耐久力である。
 
 そのような妥協したことを言えば、匠の誇りを傷つけることも分かっている。
 匠の武器とは、全てを備えているものだ。
 
 伝説の刀工から剣を買うことが難しいだろう、とも感じていた。
 ブレッゼンの作る魔法の武具は、一番安い物でも銀貨五千枚を下らないで売られている。
 
 この間まで金に困っていた仲間たちに、剣一本で大きな負担をかけるわけにはいかない。
 
(まずは、砕けたこの剣が修理出来るのか尋ねてみよう)
 
 しみったれたことを考えているな、と苦笑したシグルトは、足を速めて工房の扉の前に立つ。
  
 数回ノックしてみたが、聞こえるのは鉄を打つ音ばかり。
 
〝主人は仕事に集中していると、周りのことが見えなくなるわ。

 ノックして返事がなければ、遠慮無く入って待っていてね…〟
 
 サンディが事前に言ってくれた言葉に従い、シグルトは工房の扉を遠慮がちに開けた。
 
 
 そこはむっとする熱気のこもった空間だった。
 
 シグルトが一歩足を踏み入れると、今まで鳴り響いていた金槌の音が不意に止む。
 
「…何者じゃ?
 
 わしはここに入ることを許しておらんぞ」
 
 厳つい、見るからに頑固そうな老人であった。
 不躾にシグルトを見ると、事情を察したのか、ふんと吐息を吐く。
 
「サンディめ、また勝手なことをしおって…
 
 貴様はそこの腰掛に座っておれ。
 今は手が離せん」
 
 そう言うと、老人はシグルトがそこにいないかのように、また作業を再開した。
 
 シグルトは黙って老人の言葉に従い、その作業を静かに眺めていた。
 
 かまどの炎によってぼさぼさにちぢれた灰色の髪と、立派な髭。
 眼光鋭い瞳が、太い眉の下で一心に赤く熱せられた鋼を睨み、武骨で逞しい腕がハンマーを振り下ろす。
 
 火花を散らして響く金属の声。
 
 シグルトは、子供の頃に見た鍛冶の風景を思い出していた。
 
 外で皆で騒ぐ子供たちと違い、シグルトはこうやって鍛冶屋や細工師の作業を眺めるのが好きだった。
 そこには匠と材料との会話があり、何かが形作られていく様は魔法のようだと思ったものだ。
 
 鉄の溶ける匂いと、空気に混じる水分が熱せられる独特の音。
 吸い込むとむせ返るような熱い空気は、シグルトの頭をぼんやりとさせる。
 
 …どれくらい時間がたっただろうか。
 老人はやっとこではさんだ赤く焼けた鉄塊を、慎重に水につける。
 
 ジュッゥゥゥゥウ!!! 
 
 直後、もうもうと蒸気が立ち上った。
 老人は取り出したそれをじっと窓にかざして見つめ、その後一心に磨き始める。
 
 また地味な作業が続く。
 リズミカルな、砥石と鉄のこすれる音が繰り返される。
 
 やがて老人の手がようやく止まった。
 
 老人は手に持ったそれを見つめ、一つ頷くと石でできた台の上に同じように置かれた他と一緒にそっと並べる。
 それはまるで、子供をベッドに寝かせようとする父親のようであった。
 
「…待たせたな。
 
 最近の若い者にしては、辛抱というものを知っておるようだ」
 
 そう言って自身の肩を叩きながら、ぎろりとシグルトを見た匠は、隙の無い足取りで側にやって来た。
 
 かつて戦士だったのだろう。
 老人の鋼鉄のような腕には、火傷や作業でついたものとは明らかに違う刀傷や鏃を引き抜いた痕があった。
 
(優れた作り手であるということは、優れた使い手でもある、ということか…)
 
 そんなことを思いつつ、シグルトは名を名乗り、ここにやって来た理由を簡単に告げた。
 
 老人は黙って聞いていたが、その武骨な腕をぐいと前に突き出した。
 
「…砕けた剣を見せてみろ」
 
 低く恫喝するような声であった。
 子供がいれば泣き出してしまっただろう。
 
 シグルトは、鞘に入ったままの剣と袋に入った破片を差し出した。
 
 老人はそれを受け取ると、砕けた破片や剣の全体を丁寧に調べていく。
 いや、調べるというよりはいたわっているかのような手つきであった。
 
「…こやつを産んだ親は未熟者よ。
 そして貴様の前に振るっていた主も未熟だった。
 
 だが貴様は、己の未熟を知って振るったのだろう?
 欠片の一つまで、繰り返し研ぎ磨いてある。
 最後に可愛がってくれる奴に出逢えたのは、幸せというものよ。
 
 得物には領分がある。
 こやつも、己が領分を超えた故に砕けただけだ。
 
 だが、鋼がちゃんと教えてくれるわ。 
 本望だったと。
 
 完全に精が死んでいるが、実に見事な壊れっぷりよ。
 これでは、直すなど無粋というもの。
 鋼に戻し、生まれ変わらせてやるのが一番だ。
 
 形あるものには、何れ終焉が訪れる。
 主の技で結果を出し、死んでいくのは武器の冥利。
 
 満足して役目を終えた、果報者だ」
 
 その剣を静かに石の台に乗せると、老人は幾分優しげな目でシグルトを見た。
 
「お前は未熟だが、武器に愛されている。
 武器を愛でるということも知っているな…
 
 だから、お前にも鋼の声が聞こえるだろう?」
 
 シグルトは黙って頷いた。
 
 剣が砕ける瞬間、シグルトは握っていた剣の悲鳴と、同時に主を守りきったという誇らしげな音を聞いたのだ。
 
 戦い続ける間、剣はシグルトに武骨な歌と頼もしい重さでいつも応えてくれた。
 握り締めるたびに呼び覚まされる勇気と力。
 だからこそ、恐れることも無く剣を振るい続けられた。
 
 そう語ると、老人はシグルトの肩に手を置いた。
 
「…この中から選べ、シグルトとやら。
 
 ここに並んだ鉄の子供らは、お前と同じ未熟なやつらよ。
 
 しかし、貴様が腕を磨くうちに、その精が高まっていく。
 そして、お前と共に強くなるだろう。
 時が来たら、それをわしが磨き、鍛え直してやる。
 
 お前が鋼の声を聞き取れる限り、わしも応えてやろう」
 
 老人は、節くだった太い指で石の台を指差した。
 そこには、この刀工が作り上げた数々の刀剣が並んでいる。
 
 シグルトは、先ほどまで老人が打っていた両刃の長剣を迷わず掴んでいた。
 
「かつて不倫の不名誉を負って、王国を去った最強の騎士ランスロット。
 理不尽の中で、王への忠義と王妃への愛に生きた武骨な心の英傑よ。
 
 これはその騎士の武における伴侶。
 銘はアロンダイトという。
 
 後にはキアレンツァ、アルタキアラ(オートクレール)と呼ばれ、無双の切れ味は騎士の誉れと謳われた。
 伝説の英雄ローランの友、騎士オリヴィエもこの剣を振るって武勇を轟かせたという。
 
 これは、その剣を摸して打ったものだ。
  
 お前が来た時に鍛えておったのは、必然だったな…」
 
 にやり、と老人…“神の槌”と呼ばれる匠ブレッゼンは、不敵な笑みを浮かべた。
 
 握った武骨で黒い鉄の塊。
 
 シグルトは、その産声と歓喜の声を確かに感じていた。
 愛おしげにその剣を撫でる。
 
「アロンダイト。
 お前の主となるために励むことを誓おう。
 
 そして生涯の友になれるように願う、幾久しく…」
 
 そっと刃に口付ける。
 古い古い、剣士と剣が交わす契りの儀式だ。
 
 コォォォン…
 
 震えるように啼き、その黒い刃は新しい主の誓いを受け入れるのだった。

 
 
 Djinnさんの『魔剣工房』です。
 大半は旧リプレイのコピーですが、加筆も結構しています。
 
 シグルトといえば【グラム】かなぁ、とも思ったのですが、『魔剣工房』のグラムは形が曲刀だったのと、地味な戦い方をするシグルトにはあってるかな、と思って【アロンダイト】を選びました。
 【アロンダイト】が、オリヴィエの使っていた剣【オートクレール】である、という説を知ったのは最近でして、前は別物だと思ってました。
 ランスロットの剣は、ガスティガ=フォッリとも呼ばれるそうです。
 ただ、中世の騎士伝説は諸説在って真実の程は分かりません。
 
 2番目好きの私としては、アロンダイトの渋さはたまりません。
 それに、ガウェインの弟を斬り殺したという呪われた部分は、作りたてのアロンダイトには無いものですから、オリジナルより愛着が持てたりします。
 
 このシナリオにはいつもお世話になってます。
 製作で武器のアイデアを出したりしたので(このシナリオの【神鳴る大斧】は私がそれっぽいエピソードを考えてでっちあげたものです)思い出深いです。
 
 ブレッゼンの職人気質が少しでも表現出来てればいいなぁ、と思います。
 
 今回は、魔剣との最初の邂逅ということで話を終えましたが、次回までもう少し話が続きます。
 精算は次回にまとめて表記します。
 ちょっとだけ新しい物語がありますし。
 
 
 なお、リプレイクロスオーバーの申し出があったのですが、今回はブレッゼンとのファーストコンタクト、ということであえてしませんでした。
 登場人物と話題が増えてしまうと、ブレッゼンとシグルトの「漢」ちっくなツーショットシーンがまとまらない気がしまして。
 
 『魔剣工房』でのクロスは、第二の来訪以降にするかと思います。
 忘れずにおきますので、悪しからず。


〈著作情報〉2008年05月20日現在

 『魔剣工房』はDjinnさんのシナリオです。現時点Djinnさんのサイトで配布されています。 
 シナリオの著作権は、Djinnさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer 1.07です。
  
・Djinnさんサイト『水底のオアシス』 (○ttp://djinn.xrea.jp)←○をhに。
  
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。
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コメント
こんにちわ、今回もわくわくしながら読ませていただきました。
アロンダイト=オートクレールの話には本気でびっくりしとります、思わずロマンを感じました。
次回もわくわくしながら待ってます。

ところで、Y2つさんの作ったスキル、アイテムをいくつかこちらのリプレイで使わせていただきたいのですがよろしいでしょうか?(具体的には抜刀術と氷の精霊術ですね)

抜刀術をオセロに、精霊術をリーナに扱わせる予定です。
【2008/05/20 18:30】 | 閑古鳥 #4cco6nV. | [edit]
 今日は。
 アロンダイトって、ランスロットが行方を眩ませてからどうなったか分からないんですよね。
 銘剣だったにも関わらず、不名誉な使い方をしたとあって、メジャーからは一歩引いた剣ですし。
 でも、一度も欠けなかったことから、エクスカリバーと同等の妖精の武具だという推測が立つようです。
 ランスロット自体も、妖精に育てられたという話があるみたいですし。
 
 私のシナリオのアイテムやスキルは、御存分にお使い下さい。
 スキル絵などをスクリーンショットした時は、文中(最後にちょこっと)~というシナリオのテキストの著作情報を参考…程度に書いておくとトラブルにならないと思います。
 
 リーナ、女王様(【氷結の君主】)への道のりは遠いでしょうが、シナリオ2つ合わせると氷雪の精霊術の種類はまあまあの数ありますからね。
 一応は雪の精霊術と氷の精霊術の系統があり、両方合わせて氷結の精霊術となっています。
 
 氷系が、氷柱、霜、戦乙女。
 まだ出ていませんが冬将軍と冬婆(カリアッハ・ヴェーラ)という上位精霊がいます。
 冬将軍は雪の女王に使え、氷の結界にによる絶対防御を司る武人タイプの精霊です。
 冬婆は雪の女王と王座を廻って争うダーク系の精霊です。浸食吸収系のかなりエグイ能力を持っていますが、雪の女王と契約した者を敵視して契約してくれません。
 
 雪関係は他の精霊で、名前に「雪」が入っています。
 女王様は両方のトップ。
 
 他に雪娘の精霊術なんかも設定であるのですが…そのうち作ります。
 そちらの設定もあるでしょうから、これらは参考程度に。
 
 抜刀術もテンションが回復したら作成して、増やしますね。
 
 リプレイ、頑張って下さいね。
【2008/05/20 19:47】 | Y2つ #TIXpuh1. | [edit]
スキルの使用許可、快く承諾していただき、本当に感謝しています、早速書き始めてます。

リーナについて少し補足が。
前回に書き忘れてしまったのですが、リーナは氷、雪双方の精霊術を扱うという設定です、最終的な目標は女王様ですが、その前にお姫様が出るかもしれません。

すみません、なんだか自分の事ばかり書いてしまいました

従兄さんのご冥福をお祈りいたします。
癌は本当に怖いですよね・・・。
【2008/05/21 16:31】 | 閑古鳥 #XbwYJe4A | [edit]
 こんにちは。フーレイです。色々魔剣を作ってくれるブレッセンさんの作業風景が頭に浮かび、暫く眺めている気分に浸りました。剣についてのこだわりも……。いいなぁ、こういう会話!あこがれます。

そしてシオンの社会見学というネタが浮かびました。
人間修行中のシオンがあちこち出向いて勉強します。

 質問ですが精霊術で冬婆さんを召還できるものを考えていらっしゃるそうですが……霜のじっちゃんのように狡猾なPC向きなのでしょうか?霜爺さんと冬婆さんで寒いコンボとかできたら楽しいなぁ、と思っているのですが……。教えていただけると嬉しいことです。
【2008/05/22 19:35】 | フーレイ #xcUAJt3E | [edit]
〉閑古鳥さん
 早速リプレイが追加されましたね。
 スキルを使って頂けて嬉しいです。
 お姫様も、かなり高レベルなスキルですから先は長いですが…応援してます。
 
 従兄のことは残念ですが、いつも冥福を祈っています。
 私、メタボなので食生活には気をつけないと…
 頑張って6㎏ダイエットしたんですけどね。
 
 
〉フーレイさん
 ブレッゼンの話は、今日書いた中にも出てきます。
 こういう匠の顔もあるということで…
 
 社会見学するシオン…いろんなものに困惑してそうですね。
 
 ええと、冬婆は狡猾タイプの最高峰になると思います。
 じっちゃんの上位っぽい感じで、婆の方が強かった、という口ですが…別口で裏技なんかも考えていたり。
 そもそも氷の精霊術の中でも、爺婆は嫌われ者なので、コンボが出来るほど連携しないような気がしてます。
 
 冬婆は吸収と毒属性で攻撃し、周囲を枯らせていく死の冬を象徴した精霊です。
 薄気味悪い老婆の姿で、吹雪の中で気味の悪い嘲笑をして敵の心を恐怖で凍えさせたり、じわじわ体力を吸収して術者に還元(全体攻撃です)したり。
 Martさんに描いていただいた画像があるので、すでにスキル絵の一部は完成していたりします。
 
 雪の女王でも霊験と憑精術を考えていますが、冬婆とは併用できなくなるので、上位精霊の力を求める場合は、どちらかを選択することになるでしょう。
 女王様は、冬将軍と冬婆以外全ての眷属(他の氷雪の精霊)を召喚できる上位召喚術なんかもちょっとだけ考えてみたりしてます。
【2008/05/23 12:39】 | Y2つ #TIXpuh1. | [edit]
リプレイのリメイク、というのもまた楽しいですね。Djinnちゃんです。
前回も楽しませて頂きましたが、今回も良かったです。

いつになく饒舌で、嬉しそうなブレッゼンが微笑ましいです。
彼は僕の中で不可侵というか、ちょっと一人歩きし始めている部分があり、
色々な人に親しんで貰えているので、作者として本望ですたい。
僕がブレッゼンでもシグルトは気に入っただろうと思うので、
ブレッゼンがシグルトに好意的なのが、手を打ちたくなるほど嬉しかったです。
れべかねーさんが言うように、彼は頑固者に好かれるタイプですよね。
ブレッゼンは終いに、後継者にしたいとか言い出しそう。

前回の武器壊れが今回の複線になっているのがびっくりしました。
読み進めていく内に、なーるほど、という感じで……
もしかして、僕が鈍いだけでしょうかΣr(‘Д‘n)
ブレッゼンの「貴様が訪れる時これを鍛えていたのは”必然”であったか」
という旨のセリフは、うおお、と燃え上がりました。カッコイイ!
あとサンディかわいい。(´ρ`*)ほへぇ~

次回はなんと、オーガ戦!?
凄く楽しみです。早く読もうっと。(((*´д`))ワクワクブルブル
【2008/05/25 15:35】 | Djinn #I9hX1OkI | [edit]
〉Djinnさん
 こっちへの返信が最後になってしまいました。
 
 『魔剣工房』はクロスオーバーしまくってます。
 彼は、Y2つ基準で永遠の名工って感じです。
 近いうちに龍使いさんのPC用に武器を作りますので、作り手としてクロス刺せていただきますけど、よろしくお願いします。
 良かったら、テストでシグルトの使ってる籠手類も使ってやって下さい。カードの下に『魔剣工房(Djinn)』と入ってると、レアリティが違います。
 
 ケルト系の最終魔剣を持ってると、さらにパワーアップ(威力は微々たる感じで、魔力と精度を調整したやつで)するクロスとかもやりたいですが、いずれ必ず…
 
 ブレッゼンには、リプレイ2のオルフにも武器をお願いします。たぶんアンサラーかレーヴァティンあたりですが。
 
 これからもお世話になりますね~
【2008/05/27 18:32】 | Y2つ #TIXpuh1. | [edit]
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