『“風を駆る者たち”の噂』

2006.06.20(00:16)

 現在シグルトたち“風を纏う者”はアレトゥーザに近い林道にいた。
 途中の町から急遽護衛を、ということで銀貨三百枚で雇われたのである。
 雇用主はデオタトという商人だ。
 
 最初、シグルトたちは、あんたたちを探している商人がいる、と聞き誰だろうと尋ねてみた。
 それはリューンで、仕事の場としてアレトゥーザのことを勧めてくれたデオタトだったのだが、彼は呼ばれてきたというシグルトたちを見て、「あちゃあ…」と額を押さえた。
 
 どうやら頼んだ相手が間違ったとのことである。
 しかし、護衛は必要だからと、急遽シグルトたちは雇われて護衛となったのである。
 
「もうけたわね~」
 
 レベッカはまともな依頼にありついたことに御機嫌である。
 ついでに商人であるデオタトと、旅で手に入れた雑多な品物をトレードして携帯食や調味料などを手に入れていた。
 
「姐さん、商人の素質があるぜ…」
 
 レベッカの交渉術に参った参った、と笑いながらデオタトも御機嫌である。
 前に立ち寄った村で近隣を荒らす猪狩りを頼まれ、報酬代わりにもらったものの中に、珍しい植物の種があったのだが、それが随分貴重なものだったと、デオタトは言うのだ。
  
 冒険者たちが銀貨のみしか報酬にしないなら、それは都市近郊でしか活躍できない連中である。
 西方でも森に隔絶されたひっそりとした村の依頼では、銀貨より物品で報酬をもらうことも多いのだ。
 
 それを旅費や更なる物品に交換し、シグルトたちは少ない貴重な銀貨を節約してきた。
 道具袋も着実に重くなっている。 
 

「“風を駆る者たち”?」
 
 シグルトはその名を聞いて驚いたような顔をした。
 
 デオタトが最初に依頼するつもりだったのはシグルトたちではなく、“風を駆る者たち”という冒険者グループだというのだ。
 
「ああ、シュレックさんのいってた人たちだよね」
 
 ロマンが頷いて言った。
 
 シュレックとは、猪狩りを頼まれた村のはずれに住むという不気味な容貌の隠者である。
 ロマンはシュレックの著書を読んだことがあり、彼をとても尊敬していた。
 
 そこがシュレックの庵だと知ったロマンは、是非にと立ち寄って随分長くその隠者と話し込んでいた。
 お土産に杖と巻物をもらってきて御機嫌であったし、また行きたいと言っている。
 
 そしてその隠者の庵でも“風を駆る者たち”の名を聞いていたのである。
 “風を駆る者たち”は村人の依頼でシュレックと知り合ったという。
 
 レベッカの知っている限りでは、“風を駆る者たち”はシグルトたちの少し先輩にあたる冒険者たちで、冒険者の宿『風の旅路亭』を中心に活躍する6人構成のグループらしい。
 
「中にドワーフがいるから、新しい冒険者グループの中では結構知名度が高いのよ」
 
 大地の妖精族と呼ばれるドワーフは頑固で屈強な亜人である。
 本来細工や鍛冶を生業とすることが多い彼らは、人間と時折交易を持つことがあるし、彼らの作る品物はどれも優れたものだという。
 
 ただ、土地や仕事に強い執着を持つドワーフが冒険者となることはあまりない。
 戦士としてはとても頼りになるが、気難しい彼らを仲間にすることは困難でもある。
 
 エルフやハーフリングといったものを含め、亜人は数も少なく、めったに見かけることはないが、旅をする冒険者は一般人よりは出会う確率が高い。
 
 デオタトが伝言を頼み間違えてシグルトたちに声をかけた人物は、シグルトたち“風を纏う者”とよく似たグループ名の“風を駆る者たち”を勘違いしたのだろう、との話である。
 
「確かに似ておるの…」
 
 スピッキオがふうむ、とうなった。
 
「まあ、今回は得したんだし、いいじゃない」
 
 それにあの街にはいなかったんだから依頼は他の冒険者が受けなきゃいけなかったでしょ、とレベッカは続けた。
 
「“風を駆る者たち”か、どこかで遇うかもしれないな…」
 
 シグルトは“風を駆る者たち”という冒険者の名前に、不思議な縁(えにし)を感じていた。

 
 
 二話分まとめてのリプレイです。
 
 一つ目はカードワースユーザーならほとんどが知っているS2002さんの傑作店シナリオ『隠者の庵』。
 二つ目はMartさんの『碧海の都アレトゥーザ』の盗賊退治のサブシナリオです。
 
 実はMartさんのリプレイとクロスオーバーしましょう、ということを計画中です。
 そのため、依頼内容が重ならないように内容の導入を別物に変えてあったりします。
 
 これから時折“風を駆る者たち”の名前が登場することになると思いますが、Martさんのリプレイも楽しいので是非読んでくださいね。
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