Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

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『碧海の都アレトゥーザ』 朝陽の見送り

 唸りを上げて通り過ぎる妖魔の一撃を避けて、シグルトは一体の頭を粉砕した。
 愛剣のアロンダイトは、今の状態では鉄の塊に近いほとんど斬れないなまくらである。
 銘匠が使い手を試すために作ったそれは重く扱い難いが、それを持ちながらも、シグルトは壊れないことを信頼し、凄まじい奮戦である。
 
 ラムーナが一体の頚骨を蹴り砕き、背後に放った刺突で敵の肺腑を貫いた。
 
 レベッカは何時の間にか取り出した紐のようなもので、一体の巨体の妖魔の背後に回ってその首を絞める。
 
「…っ!!!!」
 
 助けを呼ぶように手を伸ばす妖魔。
 駆け寄ってくる妖魔の仲間の攻撃をその巨体…ホブゴブリンを盾にかわす。
 
 一体の妖魔の攻撃がその巨体を抉り、ホブゴブリンが声にならない悲鳴を上げた。
 
「はい、スピッキオ!」
 
 レベッカは綱を外してスピッキオめがけてその巨体を蹴り飛ばす。
 ブゥン、と振られたスピッキオの渾身の一撃がホブゴブリンの肝臓を粉砕し、血泡を吹いた妖魔がべしゃり、と倒れ伏す。
 
「ば、馬鹿もん!」
 
 怒鳴るスピッキオにウインクして、レベッカは疾走する。
 
 シグルトが妖魔のボスと剣を交えている。
 
(…さすがダークエルフ。
 
 シグルトが押されているわ)
 
 ロマンの呪縛の魔法がまったく効果無い。
 邪な力を持つとされるダークエルフには魔法が極めて効き難いのだ。
 
 焦れたロマンは直接攻撃の魔法で体力を削る作戦に出る。
 
「…おのれ、下等な人間めが!!!
 
 《舞い踊る白刃よ疾殺を歌えっ、荒れ狂う隼の飛翔の如く!》
 
 《…斬り裂けぃ!!!》」
 
 ダークエルフの唱えた呪文【操刃の舞】。
 
 落ちていた妖魔の剣が突然浮き上がると、ものすごい勢いで旋回しながら飛翔し、シグルトたちの間を薙ぎ払った。
 
「ぐうぅ!!」
 
 体格の無いロマンとラムーナを庇って、シグルトが身体を使って剣の勢いを弱める。
 
「…この口うるさい黒兎野郎が!!」
 
 肩を裂かれたレベッカが激昂したように怒鳴って襲い掛かり、構えたダークエルフの前で突然カクン、と横に曲がった。
 
「何!?」
 
 迫真の演技からの見事なフェイントである。
 横の防御がおろそかになったダークエルフがラムーナに逆手を斬られ、後退する。
 
「はぁぁっ!!!」
 
 ラムーナの反対側からまた襲い掛かるレベッカ。
 
「その手は食わん!」
 
 ダークエルフがフェイントを予想して構え攻撃してくるが、レベッカは紙一重ですり抜けて敵の膝頭を短剣で裂く。
 
「ば~か。
 
 そんな芸の無いことするかっての」
 
 盗賊の闘いの本分は力そのものではない。
 撹乱で崩し、鋭く急所を狙い、卑怯が上等なのだ。
 
 出血によろめくダークエルフに、スピッキオの癒しを受けてシグルトが襲い掛かる。
 
「くぅ、わらわらと蟻の様に…」
 
 すでに、ダークエルフの配下である下級妖魔は一掃されている。
 
「最初はあんたたちの方が多かったのに、ねぇ…」
 
 嘲笑するレベッカ。
 だが、倒れないダークエルフのしぶとさも驚異的である。
 
(しゃあない。
 
 今回は大盤振る舞いしてやるか)
 
 レベッカは小石を拾うと、ダークエルフのこめかみをかすめるように投擲した。
 わずかに気がそれるその瞬間…
 
「…がぁぁっ!!!」
 
 シグルトがダークエルフの視界から消失し、その一撃で敵の肋骨を砕く。
 血を吐きながら後退するダークエルフ。
 
 ぷつん…
 
 何時の間にかレベッカがダークエルフの髪の毛を持って、ラムーナの後ろで洞窟の壁に寄りかかっている。
 毛を抜かれたことに動揺したダークエルフは、驚いた顔のままシグルトの【影走り】の餌食となった。
 
「…私、こういう【小細工】は得意なのよ♪」
 
 陽気な表情…しかし目は冷徹に敵の首魁の屍を見下ろしながら、レベッカは手に持った黒い髪の毛を、ふぅっと吹き散らした。
 
 
 闘いに勝利し、少し増えた報酬の銀貨七百枚を得たというのに、“風を纏う者”の表情は暗い。
 
「…ああいった集団を相手にするには、もうすこし攻撃力のある広範囲魔法がほしいね」
 
 ロマンが裂けたよう服の修繕痕を気にしつつ、ぼそりと言った。
 
「うむ。
 
 それに味方全てに及ぶ守りか癒しの技がほしいの。
 わしが神のお力を与えられるのは、一度に1人が限度じゃ」
 
 スピッキオがどうしたものか、と顎をさすっている。
 
「俺の奥の手は、レベッカがチャンスを作ってくれてようやく使えた。
 
 今の俺では2回使うのが限度だ」
 
 一同はシグルトの必殺剣の凄まじさに感服していたのだが、同時にその貴重な技術の使用回数が少ないことに唸る。
 シグルトの秘剣はまず避けられることは無いというとんでもない一撃ではあるが、技の使用で負担がかかる身体の筋や神経が持たないのだという。
 
「私の技は誰かを狙うのには適していないから…」
 
 今回も雑魚相手にはすごい奮戦を見せたラムーナだったが、ダークエルフとの戦いの時にはかなり息があがっていた。
 ラムーナの【連捷の蜂】は驚異的な連携を可能とするが、連携のしやすさに調子に乗るとスタミナ切れを起こすことになる。
 
「私も今回は技術強化して臨んだつもりだったけど、私たち盗賊ってそもそも戦闘は苦手なほうなのよねぇ。
 
 力のぶつかり合いを正面からされると弱いわ。
 ま、次の課題ね戦力強化は」
 
 今回の戦闘で一番活躍したレベッカであったが、長期戦になったダークエルフとの戦闘の反省点にため息混じりだ。
 
「うむ、実はあのときのように皆で怪我をしたときに役立つ秘蹟がある。
 
 ちと高くなるが都合がつけば学んでおきたいと思うのだが…」
 
 スピッキオがちらりとレベッカを見る。
 
 どうしようか、とレベッカがシグルトを確認すると頷いている。
 
「そうね、たしか聖海の秘蹟って聖北ではあまり見かけないすごいのがあるとは聞いているわ。
 
 これからの戦いのためだし。
 
 でも高いって言うくらいだから今回もらった報酬の二倍くらいは取られそうね…」
 
 スピッキオが、おぬしの金勘定は海中の魚より速いの、と苦笑し、秘蹟習得に必要な寄進料に対するレベッカの見立てが正しいことを感心する。
  
「聖海が誇る秘蹟【癒しの奇跡】。
 
 聖海には分派もたくさんあっての。
 治癒に関係するなら、聖女と謳われたオルデンヌや、列聖されなかったもののアクリシオスやサルマンディらの優れた高僧も出ておる。
 
 優れた癒し手も多かったのじゃよ」
 
 スピッキオは、自分の属す教会の話を嬉しそうに話す。
 
 げぇ~やめてよ、というレベッカを捕まえてお説教をはじめていた。
 意外なことにロマンも歴史の勉強になると、その会話に参加している。
 
 取り残されたシグルトとラムーナは目を合わせると、互いに肩をすくめて笑いあった。
 
 シグルトはここ数日でさらに美しく精神的な成長も見せつつあるラムーナを眩しそうに見つめる。
 
 男尊女卑の風潮が濃いこの時代にあって、シグルトは女性の活躍を支持する少数派である。
 彼の周囲には活発で美しい何かを持った女性が多い。
 
 ラムーナが何かを得て進もうとするなら、仲間として力になりたい、と願っている。
 
 シグルトは親しい人のために何かしたいと思う。
 それは献身ではない彼の信念だ。
 
 身を挺するだけではなく、共に強くなり、親しい人が理不尽に泣かないように、自分自身が理不尽に負けないように。
 
 恋人、故郷…
 大切なそれらを失って懊悩したことのあるシグルトだからこそ、大切な存在を護りともに力を振るい歩みたいと願う。
 
 シグルトはふと数日前に出あった若者を思い出す。
 
 『蒼の洞窟』の精霊術師レナータが悪漢に襲われたとき、共に戦ったニコロというその精霊使いとは、その後レナータの誕生祝をするためにアレトゥーザの『悠久の風』で親しく話す機会に恵まれた。
 最も、普段から寡黙なシグルトと、やや人見知りをしそうなその青年との会話は決して弾んでいた、ともいえないだろう。
 だが、シグルトを見ながらニコロは、「精霊が見えるのか」と尋ねてきた。
 
 シグルトはそういうことはないな、といいつつ、ただそういうものがいると肌で感じるような気はする、とも答えた。
 精霊とは違うが、シグルトの妹も不思議な感覚があって、幽霊や人に見えない何かを見ることが出来た。
 
 シグルトの故郷では人ならぬそういう感覚を、《アルヴの加護》と呼んでいた。
 アルヴとは妖精や妖魔を全て含んだ不思議な力を持つものの総称であり、意訳すると《妖(あやかし)》といったところか。
 実はシグルトの母もまた《アルヴの加護》を持っていた。
 母がこっそり教えてくれたのだが、シグルトの故郷の建国王シグヴォルフの母はハーフエルフ(エルフとの混血)だったそうだ。
 
 その血にシグヴォルフの母と同じそれを持つ貴族の末裔であるシグルトの母。
 
 シグルトの母は信心深い人物だったが、目に見え聞こえ感じるものを否定してはいけないと教えてくれた。
 だから、道具や自然が出す息吹や声を疑わずに受け入れたとニコロに語った。
 
 それを横で聞いていたレナータは、やっぱり、と頷いた。
 レナータの話ではシグルトには精霊使いとしての資質もあるらしい。
 特別すぐれたものともいえないらしいが、シグルトとの共通の何かを見つけたせいか、レナータは少し嬉しそうだった。
 
 一部の人間から異端と蔑まれるレナータ。
 
 シグルトは彼女のためにも何かをしてあげたいと願う。
 そして、その剣を振るうのにためらうつもりはなかった。
 
 
 スピッキオは聖海教会で無事【癒しの奇跡】を習得し終えていた。
 
 特別賢く記憶力があるわけではなかったが、スピッキオは勤勉さとたゆまぬ反復で経典や歴史、神学を修めてきた。
 同じ司祭としての気安さもあってか、秘蹟の伝授をしてくれたマルコという司祭との時間は充実したものだった。
 
 スピッキオはそのマルコ司祭と同じ穏健派と呼ばれる考えである。
 ともに学んだ師や、尊敬する高僧、目標とする聖者たちの話、信仰への心得。
 
 きっと秘蹟の習得に割いた時間より、今の聖海についてや互いの熱い信仰を語り合う時間の方が長かった。
 
 スピッキオが大変満足して、秘蹟の伝授だけではなくまた語り合いたいとの願いを伝えると、マルコ司祭も是非に、と互いに固い握手をして別れた。
 
 
 朝陽の昇る美しい輝く朝。
 
 “風を纏う者”たちはまたアレトゥーザを後にする。
 
 シグルトは安らぐ場所とレナータという大切なものがある。
 レベッカには気安いファビオという友がいて落ち着く巣がある。
 ロマンには学ぶべき知識と不思議がひしめいて見える。
 ラムーナには陽気な太陽と踊りの師が待っててくれる
 スピッキオには信仰を磨きあえる同士と祈りを捧げる教会がある。
 
 『碧海の都』の眩しい太陽は、今日も彼らを愛おしげに送り出してくれるのだ。

 
 
 今回はさらっとした内容です。
 ちょっと前回、前々回で無茶をして脳が焦げてる気分ですが、なんとかUPできました。
 
 今回さりげなく分かるシグルトの血筋。
 実はエルフの血を引いてたんですね。
 美形なのも頷けるでしょう?←理屈っぽい
 
 《アルヴの加護》を持つという設定はかなり最初からありました。
 
 でもシグルトで一番表現したいのは、力持つものの真の望み、です。
 彼は才能や能力に溢れ、性格もすごく清廉で格好良いです。
 でも彼は、そんなものは回りの評価であり二の次、自分自身が磨いて得たものや小さな幸せこそとても大切にします。
 
 彼が願い、愛し、護ろうとするもの。
 
 彼は名誉を重んじますが高慢ではありません。
 硬派ですがお人好しです。
 武骨ですが誠実です。
 鈍感ですが勤勉です。
 
 シグルトがストイックで高潔なのは、彼の願うものがシンプルで欲が綺麗なのだからだと思います。
 彼を美形にしたのはこっちを強調したかったためでしょうね。
 
 とまぁ、こういう作者の愛は、クーラーの設定が5度だったときよりも寒いと感じさせてしまうかもしれないので、このあたりにして、長かったアレトゥーザ編の経緯など。
 
  
・【小細工】(-600SP レベッカ)
・【絞殺の綱】(-1000SP レベッカ)
 
『ダークエルフ討伐』+700SP
 
・【癒しの奇跡】(-1400SP スピッキオ)
 
 実はこれだけ。
 
◇現在の所持金 831SP◇(チ~ン♪)
 
・レベッカの叫び
「また銀貨千枚、きってるじゃないの~!!!」
 
 貧乏、御愁傷様(ち~ん†)

 
 ええと前回のクイズの答え。
 
「すまねぇ、かみさんに浮気がばれてよ。
 
 どうしたらいいかな?」
 
※答えは、
「まずい、知り合いの盗賊にこの密談が知られてる。
 
 対応はどうすべきか?」
 
 「かみさん」は伴侶、つまり身近な存在を表します。
 「浮気」は後ろ暗いこと、つまり密談のことです。
 あとはほぼそのままです。
 
「まずいな、よし、まずは俺たちのところに呼んで2人でしっかり説得しようぜ」
 
※答えは
「しくじりやがって、しかたない、とにかくばれてて来るんだから協力して誘きよせて捕まえてから、交渉に当たるぞ」
 
 まずいな、はかなり切羽詰った叱責です。
 「まずは俺たちのところ呼んで」は前の会話でばれてることを前提にしており、誘き寄せ、「しっかり」が捕まえるの意味、「説得」は賄賂や殺人を含めた交渉で、何とかしなきゃいけない切迫感があります。
 
「もしダメだったら?」
 
※答え
「しくじったらどうしよう?」
 
 ほぼそのまんまですね。
 ただ、これは全てを行ってもダメだったときをあらわします。 
 
「そん時ゃ、必死にやって納得させるんだよ」
 
※答え
「絶対殺すぞ、死人に口無しだ」
 
 「そん時ゃ」は盗賊が別の案を使用というのは最後の手段。
 「必死にやって」で失敗無く殺さなきゃいけないこと、「納得させる」はしてもらうではないですよね?つまり、こっちの主張を押し付ける…行動を終えてしまうこと。
 殺して解決、という意味です。
 
 隠語はお約束やルールを前もってある程度決めておきますので、仕草やいる場所、状況がとても影響します。
 私の問題の出し方が悪すぎるので、間違えても気にしないでくださいね。
 
 では次回でお会いしましょう。
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この記事のコメント

こんばんはm(__)m

シグルトさんって、根っからの英雄気質ですね♪マジで、カッコイイです。
黒兎野郎とダークエルフを罵倒する、レベッカさんも素敵です。エルフは、長い耳なので兎とかけているわけですね。
盗賊は、主戦力ではありませんが、強敵と戦うときに必要不可欠な存在ですね。なんとなく、パーティの後見人的イメージが付きます。

渾身の一撃でホブゴブを沈めたスピッキオさんも良いですね♪

クイズは、難しかったですが楽しかったですよ(^^)
機会があれば、また挑戦したいです。

それでは、失礼しますね。
2006-07-04 Tue 17:52 | URL | らっこあら #mQop/nM.[ 編集]
 今晩は。
 
 シグルトは格好良いのですが、むしろ期待されすぎたり、嫉妬されたりして苦労する奴で、本当は人一倍努力してる苦労人です。
 
 ダークエルフ、エルフは耳が長いので兎。
 ドワーフは穴掘ってるので土竜です。
 ハーフリング(ホビット)は鼬。
 
 盗賊は後見人というか裏方っぽいですよね。
 汚れ役ともいえますし。
 
 スピッキオは平和性の関係で実は【渾身の一撃】は普通です。むしろ普通に【攻撃】使ってたほうが強いかも…
 
 好評そうならまたやってもいいですね、クイズ。
 
 また来てくださいね~
2006-07-05 Wed 21:43 | URL | Y2つ #TIXpuh1.[ 編集]

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