『冒険者の余暇』 その参

2006.07.13(13:05)

 “風を纏う者”はフォーチュン=ベルの『魔剣工房』にいた。
 
 ここ数日、一行はさまざまな行動を取っていた。
 
 リューンに戻ってからは、スピッキオが【祝福】という秘蹟をクレメント司祭(ラムーナの保護者の司祭)から学ぶ間、リューン郊外の若草通りに開かれた、リーンホースという町から出張してきた魔道具のバザーに出かけたが、結局3本ほどリーンホースの特産品である安売りしていた葡萄酒を買って終わってしまった。
 バザーの会場で出会った、ラファーガとアナベルという若手冒険者を2人ともなって宿に連れて来たりもしたが。
 
 その後、フォーチュン=ベルに向かった一行は、サンチョの馬車探し騒動のとき、オーガとの戦闘でだいぶ使い込んだというシグルトの剣を『魔剣工房』に持ち込んだ。
 バザーのときの葡萄酒を手土産に仕事を頼むと、ブレッゼンは二つ返事で剣の打ち直しを承諾してくれた。
 
 
「ふふふ、随分と使い込んだものよな、シグルト。
 
 しかもこの肌の輝き…ちゃんと教えたように磨いておらねばこうはならん。
 お前は剣の精を鍛えるのが上手いようだな」
 
 手渡した葡萄酒をぐいと飲み干したブレッゼンは、格安の銀貨千枚で仕事をすぐに始めてくれると請け負った。
 
「さっき貴族の使い風の男が来ていたが?」
 
 シグルトが聞くと、ブレッゼンはとたんに嫌そうな顔をした。
 
「銀貨十万枚出すから、類まれな魔剣を売ってくれと言ってきたので、お前に渡したのと同じように剣を使うように言ったら、〝完成品をよこせ〟とほざきよった。
 
 頭に来たから出してやったわ。
 巨人の使っていた重さ大人2人分のでかい魔剣をな。
 
 あの召使い、持てずにつぶれそうになって半泣きで逃げて行ったわ。
 
 いい気味よな」
 
 確かにあの召使いは、出て行くときは妙なへっぴり腰だった。
 重すぎる剣を持てずに腰でも痛めたのだろう。
 
 シグルトは、あんまり無茶するなよ、と言って苦笑した。
 
「一週間後に来るがよい。
 
 並みの上質な剣ほどに生まれ変わったアロンダイトを渡してやる。
 期日を遅らすなよ…こやつ、おぬしとは離れた途端、鳴きおる。
 
 こんなに剣に気に入られる奴も珍しいわ」
 
 
 武器がなければ仕事にならない、ということで、シグルトたちは別れて行動することになった。
 
 ロマンが、有名な魔術の都トレアドールに行ってみたいというので、仲間たちは一緒に行くという。
 
「レベッカ、もう銀貨千四百枚ほど都合はつくか?」
 
 シグルトが無理は言えんが、とレベッカを見る。
 
「そうか、フォーチュン=ベルはあの爺さんの古城までそんなに離れてないんだっけ。
 
 何か習いたい技でもあるの?」
 
 それにシグルトが頷く。
 
「これから先、通常の武具の通じない魔物と戦うこともあるかもしれん。
 早いうちに、対策が取れる技を身につけられれば、と思ってな。
 
 リューンの【居合斬り】や、この都の剣術の道場で学べる剣も捨てがたいんだが、心惹かれる技が1つある。
 ちょうど学ぶ時間が出来そうだから、可能ならと思ったんだが」
 
 シグルトが自分からこんなことを言うことはめったにない。
 
 それに、次に技をと考えているラムーナは、アレトゥーザに行かねば技が学べない。
 この娘は我侭など言わず喜んでシグルトが剣を学ぶことに賛成するだろう。
 
 レベッカは頷いた。
 
「リーダーが勤勉なのはありがたいわ。
 
 皆もいいわよね?」
 
 一同反対するものはいない。
 レベッカは仲間の確認を取り頷いた。
 
「そのかわり、今度アレトゥーザに行ったらラムーナが最優先よ。
 
 ところで…シグルトはまた古城に数週間籠もるの?」
 
 レベッカが聞くとシグルトは否定する。
 
「今度習う技は、力も大切だが魔法に近い。
 
 素質や素養も必要らしくて、学び取れるものはすぐに習得できるが、無理なら何年もかかるそうだ。
 習得できないようなら、習わないで戻ってくるよ」
 
 かなり特殊な技のようね、とレベッカは首をかしげた。
 
 
 シグルトは風を感じていた。
 逆巻くそれは、荒々しいがシグルトには頼もしい防具であり、刃である。
 共にある風は、まるで喜んでいる様子だった。
 
 手に持ったものはただの木の棒であるが、風の纏わりでその輪郭がぼやけている。
 シグルトは剣代わりの棒を、スウ…と目前の石材の向けて振るった。
 
 ヒュゥォオオオオ!!!!!
 
 石材は2つに断たれ、石の粉を巻き上げるように風が吹いた。
 
(…ありがとう、風の友よ)
 
 シグルトが頬を撫でる風に告げると、一層風が嬉しそうに踊った。
 
「…ふふ、まさか半日で習得するとは思わなかったぞ。
 
 かつてこの国で信仰されていた風の精霊。
 その力を刃に纏って邪霊すら寸断する【縮影閃】。
 
 その技を習得しようとしたとき、気まぐれな風の精を捕まえるのに、儂も随分かかったものだが…
 
 お前に精霊使いの資質があったとはな。
 これほどお前の性に合った技もあるまい。
 
 少し妬ましくもあるな」
 
 そう言いつつ、グロアは厳つい顔に薄く笑みを浮かべている。
 
「グロア、捕まえるんじゃない。
 
 理解して一緒に疾れば精霊は応えてくれる」
 
 グロアは、風が応えてくれること自体がお前の才能だよ、と苦笑いする。
 
「その技は霊体にも効果があるが、血肉を持つ敵には壮絶とも言うべき効果がある。
 技を用いた達人が、翼竜を一撃で屠ったことを見たことがあるが、風に血を巻き上げられて地に伏した怪物を見て戦慄したものよ。
 
 お前がその域に及ばんと願うなら、弛まず磨くのだぞ」
 
 シグルトはしっかりと頷いた。
 
 
 シグルトがフォーチュン=ベルの冒険者の宿に着くと、仲間たちが待っていた。
 
「皆、トレアドールに行ったのではなかったのか?」
 
 シグルトが尋ねると、レベッカが肩をすくめる。
 
「ロマンがあの都市の図書館にこもってたぐらいで、私たちには場違いだったわよ。
 
 スピッキオにもあの都市の杖術を学んだら、って言ったんだけど、細かくて性に合わないってさ。
 仕方ないから、私は酒場で一杯やってたし、ラムーナとスピッキオは見物に出歩いて、それで終わり。
 
 ただ、ブレッゼンの爺様が好きそうな珍しい酒があったから、買ってきたけどね」
 
 レベッカが取り出した酒を見て、とシグルトが感心したように目を見開いた。
 
 
 磨きぬかれたシグルトの愛剣は、窓から入る日差しを浴びてキラキラと輝いていた。
 
「むう、これがあの黒い鉄の塊か?」
 
 スピッキオがうなる。
 
「フフフ、【アロンダイト】が急かすから一日早く仕上がってな。
 
 念入りに磨いておいた。
 かつてある王にこの剣と同じく円卓の騎士の剣を打ったことがあったが、同じ気分じゃ」
 
 ブレッゼンが満足そうに髭をなでている。
 
「…もしかして、祖国エルトリアを外敵から守り抜いたという武王、ギルバウスⅡ世の【ガラティン】か?」
 
 ブレッゼンが、よく知っているなと頷く。
 
 【ガラティン】は【アロンダイト】と並ぶ、騎士王アーサーが円卓の騎士の剣である。
 時間帯次第で強さが変わる魔力をその身に宿し、時には最強と呼ばれた騎士ランスロットを凌ぐこともあったという、騎士ガウェインの愛剣である。
 
「かの武王はわが友の剣の弟子でな。
 武人らしい気概を持った方だった。
 
 当時、多くの貴族がわしの作る武具を求めてやってきたが、皆横柄な態度で小物1つ作る気にはならなんだ…
 
 しかしかの王は、戦乱を治めるためにと、一介の職人のわしに膝を折り頭を垂れた。
 武は民と国のために振るうと誓い、見事その通り素晴らしき国になされた。
 
 今では【ガラティン】は、若くして実力で将軍の地位を得た姫君が継いだと聞く。
 
 あの剣は善き国を作る道を切り開くために使われているのだ。
 これこそ、職人の冥利に尽きると言うものよ」
 
 ブレッゼンはレベッカからもらったトレアドールの【蒸留酒】を飲んだ後のせいか、とても機嫌がよく珍しく饒舌である。
 
「シグルトよ。
 かの武王のように英雄になれとは言わん。
 
 だが、わしが見込んで【アロンダイト】を授けたこと、努々(ゆめゆめ)忘れるな。
 剣は戦いの道具ではあるが…剣士の友であり、心であり、魂なのだ」
 
 シグルトは愛剣の柄を撫で、しっかりと頷いた。
 
 【アロンダイト】は澄んだ輝きでシグルトに応え、祝福するように風が吹いた。

 
 
 最近長いのが多かったので、あっさりとした『冒険者の余暇』です。
 
 シグルトがパワーアップしました。
 ちょっぴりですが。
 
 シグルトのスキルは5レベルばっかなので、二回ずつしか使えません。
 まさに奥の手です。
 
 SIGさんの『古城の老兵』には某PCゲームのネタっぽいスキルがあるのですが、買えません。(泣)
 【縮影閃】、社交性属性なので、本当は勇猛性適性の【風王結界】がほしかったのですが。
 まあ、何はともあれ、シグルトもようやく風の関わったスキルを持てました。
 このスキル、風の精霊が関わる滅びた国の技なので、かなり気に入っています。
 効果も大きくてしかも、非実体ズンバラリンです。
 固定が大きく当たりやすいので、人間や妖魔相手だとリーサルウェポンと化すことも。
 肉体固定ダメージ+20って、血肉のあるやつには鬼です。
 レベル比4(渾身の一撃並)のダメージに加えて、ですからねぇ。
 
 資金不足だったので、亜留志さんの『魔道具バザー』でこっそり補給しました。
 魔剣を打ち直す資金ぐらいはなんとかなりました。
 このシナリオ、Djinnさんとの合作『開放祭パランティア』のきっかけでした。
 バグがあるのが残念ですし、売ってるものも高いですが、連れ込みPCの能力値データが何気に好感の持てるものでした。(しっかり連れ込んで後輩冒険者にしちゃいました)
 お勧めは【サーベル】と安い【葡萄酒】。
 兄貴ファンは必見のシナリオです。
  
 お酒を買った、Boyさんの『魔術の都トレアドール』、サイトの閉鎖で今じゃ手に入らないですね。
 いいシナリオなので、リバイバルしてほしいです。
 
 そしてDjinnさんの『魔剣工房』です。
 【アロンダイト】パワーアップしました。
 でてきた「エルトリア云々」はいつか絶対作ろうと考えているシナリオ『剣の英雄』の設定を使いました。
 その前にどうしてもやりたいことがあるのですが、そっちまでやるモチベーションが…
 ごめんね、Djinnさん。(土下座)
 その分、今回ブレッゼン思いっきりクロスしときました。
 王様の剣の師匠…今そちらでリプレイされてるパーティのあの人です。
 
 今回、細かい金銭の出費ががたくさんあります。
 以下の通りです。
 
 
『交易都市リューン』
 
・【祝福】習得(-1400SP スピッキオ) 
 

『魔道具バザー』(このシナリオバグがあります。いくら葡萄酒を買ってもお金が減りません。仕方ないので差額140SPは宿の保管庫にとりあえず貯めました)
  
・思わぬ追加報酬 +1000SP 
・【葡萄酒】×3 -240SP
・消費【葡萄酒】×1、+100SP
 
・連れ込みNPC【ラファーガ】、【アナベル】
 
 
『魔剣工房』
 
・消費【葡萄酒】×1(ブレッゼンへのお土産)
・アロンダイト 第二段階へ -1000SP
 
 
『魔術の都トレアドール』(ギルドではリンク切れで手に入らないレアなシナリオ。今回ブレッゼンにお土産がほしくてお酒だけ買いました)
 
・【蒸留酒】 -200SP
 
 
『古城の老兵』
 
・【縮影閃】習得(-1400SP シグルト)
 
 
『魔剣工房』
 
・消費【蒸留酒】×1(ブレッゼンへのお土産)レアセリフあり。
・【アロンダイト】第二段階 回収
 
 
◇現在の所持金 1391SP◇(チ~ン♪)
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コメント
こんにちは。
シグルトさんパワーアップですね。アロンダイトも第二段階に達したのでズバッと敵を切り裂いてしまいそうです。

それにしても、ブレッゼンさんの台詞が良いです。ああいうタイプの職人さんってゲームに滅多に登場しないので、凄く好きでス。お酒は13種類まで揃えたのですが、それ以上はいまだ入手できてません。
「剣は戦いの道具ではあるが…剣士の友であり、心であり、魂なのだ」 この台詞はもう最高です。剣を粗末にする奴は剣で泣くんです。愛情をかけた分だけ剣も応えてくれるんです。剣は剣士の生き様です。(暴走して申し訳ありません土下座)


縮影閃>
肉体がある敵には必殺の一撃ですね!イメージ的に痛くないのに大量に出血する感じがします。「あれ?なんでこんなに血が!?」みたいな感じです。(効果音も良いですよね!)

PCゲーム>
私は、パソコンのゲームは三国志シリーズ(といっても、1と8)とブラックジャックとマインスイーパーとCWしかやった事がないので、わからないです。

祝福>
地味な技ですが、効果は絶大ですね♪格上の敵やドーピングには最適です。敵に使われると厄介です(;^^)



風っていいですよね・・・

それでは、失礼いたします。
【2006/07/13 14:12】 | らっこあら #mQop/nM. | [edit]
 こんにちは、らっこあらさん。
 
>アロンダイト
 早く魔力がほしいです。
 頑張りまず~
 
>ブレッゼン
 彼には感情移入しまくってます。
 お酒はサイト閉鎖で手に入らないものが多くなってきました。
 今度Djinnさんに、お酒の数を増やすように頼みましょうかね~
 
>縮影閃
 密かに出血大サービスコンボをやりたいと狙っています。
 ラムーナに頑張ってもらわないと。
 【咒刻の剣】や【海虎の牙撃】とセットで使うと鬼です。
 
>某PCゲーム
 アニメにもなりました。
 PS2移植とか。
 「エクスカ…」←当局の手入れで差し止め
 
>祝福
 ドーピングの王様ですね。
 
 風はいいです。
 特に涼しい風はこのじき最高です。
 
 暑い~
 
 また来てくださいね~
【2006/07/15 10:06】 | Y2つ #TIXpuh1. | [edit]
今頃ここかよ!というご意見は読まずに食べますDjinnちゃんです。

ガラティンの今の持ち主は次回作への布石でしょうか?
なんだか(((*´д`))ワクワクブルブル ですね!
期待してまっす!

シグルトの風への適性を表す台詞などが熱いです。
師匠に逆に教えてあげるシーンなんかは
西洋的な師弟関係というのか、爽やかな感じですね。

スローペースですがしっかり読んでいきたいと思っています。
追いつくまでに時間が掛かると思いますが、ご容赦下さいね!
【2006/09/27 17:39】 | Djinn #I9hX1OkI | [edit]
 いらっしゃい、Djinnさん。
 
 そうです。
 ガラティンは現在例のシナリオに登場予定の“剣麗姫”アナステアの持ち物です。
 騎士の能力、チャージが可能という設定です。
 このシナリオでは乗馬シーンを考えていますので。
 
 このシナリオ、今の状況で書けるのか不安ですが、『風屋』でスキル作りのノウハウをだいぶ思い出したので…
 実はリプレイ中にも登場人物の名前をこっそり出しています。
 
 6人目の紹介が終わったら、いよいよ鉱石探しと、後半に向けての出来事で、【アロンダイト】を魔剣化しますね。
 多分、すごい長丁場になるかと。
 
 書くのが遅いですが、近いうちに新しい話をUPしたいです。
【2006/09/30 12:27】 | Y2つ #TIXpuh1. | [edit]
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