Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

『埋もれた神殿』

「親父さん、この張り紙は何?」
 
 レベッカが一枚の張り紙を持ってくる。
 
「おお、それか」
 
 親父はいつものように皿を磨いている。
 
「なんとなく目に付いたのよ。
 
 今までに見たことが無いような依頼だしね」
 
 レベッカは、張り紙の内容を読み返して、遺跡かぁ、と呟く。
 
「なんでも、リューンの郊外に古代文明の神殿が見つかったって話だ」
 
 親父は思い出すように手を止め、今度はジョッキを磨きだす。
 
「ふぅん、古代の神殿かぁ。
 
 結構面白そうだね」
 
 ロマンが興味津々といった感じで顔を出す。
 
「何でも、発見したのは考古学会研究員のマハド男爵と言う男らしいな」
 
 それを聞いたロマンが、ええ~あの陰険チョビヒゲ?と嫌そうな顔をする。
 
「なんじゃ、ロマン。
 
 おぬし、そのチョビヒゲ男爵とやらを知っておるのか」
 
 何気にひどいことを言いつつ、スピッキオが言う。
 
「知ってるも何も…
 
 リューンの大学じゃものすごい有名人だよ。
 
 …陰険、嫌味、高飛車、肥満、チョビヒゲで結婚したくない賢者もどきの筆頭。
 貴族の中では性格が悪すぎて誰も相手にしてくれないから、考古学始めたとか何とか。
 
 昔はそれなりの役職に就いていたらしいんだけど、今じゃ贅肉とプライドだけの下級貴族だってもっぱらの噂だね」
 
 ふ~ん、と興味なさそうにレベッカが息を吐いた。
 
「考古学に手をつけたのはいいけど、大して成果もあげてないみたいだしね」
 
 ロマンの言葉に、レベッカはもう一度張り紙を見る。
 
「でも、一応は今回遺跡を見つけたみたいじゃない?」
 
 レベッカの言葉を受けてロマンが、ほんとかな、と首をかしげた。
 
「でも発掘品が報酬なんて、めちゃくちゃだよ。
 
 考古学者は普通、そういうものこそ大切にするはずなのに…」
 
 一行はう~んと唸る。
 
「ケチで有名な男爵だからな。
 
 金を出すのが嫌なんだろう」
 
 けちでも、度が過ぎてるよね、とロマンが肩をすくめる。
 
「ま、考古学的に価値が無いんだろう。
 
 冒険者の報酬になるぐらいの物なんじゃないのか?」
 
 親父はテーブルを磨きながら、受けるのか?と聞いた。
 
「まあ、何か価値のあるものがあったら嬉しいけど、穴掘りはね~」
 
 レベッカがさっきから黙ったままのシグルトに目を向ける。
 シグルトは愛剣アロンダイトを磨いていた。
 
「…たまにはこういう殺伐としてない依頼もいいかも知れんな。
 
 仕事としてではなく、古代の遺跡っていうものを真っ先に発掘する場所に居合わすのは、それだけでも価値がありそうだ」
 
 意外なシグルトの言葉に、レベッカがあら、と微笑む。
 
「シグルトって、あんまりこういうのに興味が無いかと思っていたけど、違うのね?」
 
 シグルトは趣味とか娯楽とかを感じさせないストイックな雰囲気がある。
 
 レベッカと酒を飲むときもたしなむ程度だし、普段は黙々と武具や道具の整備をし、部屋の掃除や整頓をしている。
 日課として腕立て伏せや膝の屈伸などの運動と、剣の鍛錬は欠かさないが、シグルトの趣味かと聞くと違うそうである。
 
「いつでも旅立てるように準備だけはしておかんとな…」
 
 そういうシグルトが好むものと言えば、アレトゥーザの『蒼の洞窟』に行くぐらいだが、面倒見が良いこのリーダーは普段は仲間に合わせてくれることが多く、我侭と言うものはまったく感じさせないのだ。
 
「…遺跡にはいろいろな息吹がある。
 
 土の匂い、風の香り…
 古いもののそれは、悪くない」
 
 穏やかで優しげな笑みを浮かべる今のシグルトは、とても穏やかに見える。
 
「じゃ、受ける?
 
 力仕事はあんたに任せちゃうけど」
 
 断言したレベッカに、苦笑しながら頷くシグルト。
 
「私もお手伝いするねっ!」
 
 ラムーナがシグルトの首にしがみつく。
 
 彼女に恋愛感情はまったく無いだろう。
 ラムーナは仲間の誰にでも、このようにスキンシップを取る。
 …シグルトにスキンシップをすると、側にいた若い男や女が嫉妬して険悪な雰囲気を発することがあるのだが。
 
 まだその子供っぽい性格は残っているが、ラムーナは出会った頃とは別人のようだ。
 
 とても美しくなった。
 
 茶色がかった柔らかそうな黒い髪は、手入れがされてゆるく波打っている。
 くりくりとした褐色の瞳は愛嬌があって可愛らしいが、睫毛が長く彫りの深い顔立ちは端整で美しい。
 
 なにより、そのプロポーションは素晴らしい。
 胸はまだ発展途上、と言えるが、その腰のくびれはどうやったらそうなれるか聞きたいぐらいだとレベッカがぼやくほど。
 食欲旺盛にもかかわらず、贅肉が見当たらない。
 まるで、顔の輪郭とウエストだけ子供のまま成長したような感じである。
 背が伸びたが、小さな顔と華奢な体格、ウエストの細さ、足のしなやかな長さで八頭身を超えていそうだ。
 姿勢も綺麗で、お化粧をするようになって手入れをしている小麦色の肌が健康的に照り輝いている。
 
 レベッカはラムーナに、仲間以外には抱きついちゃダメよ、と注意している。
 もう、異性の劣情を誘うくらいにラムーナは魅力的な娘なのだ。
 
「じゃあ親父さん、その張りを紙処分しておいてくれ。
 
 まあ、こんな仕事だから報酬は期待はしないようにしておこう」
 
 一行は準備をすると、依頼書に書かれた場所に向かった。
 
 
 件の発掘現場に着く。
 
「…なにこれ?
 
 ただの荒地じゃないか?」
 
 ロマンが辺りを見回すが、本当に何も無い荒涼とした大地が広がっているだけである。
 
「…これから掘るんだから、当たり前だろうが」
 
 チョビヒゲの太った男がやってきて、嘗め回すように一行を見る。
 
(…でた、陰険チョビヒゲ!)
 
 ロマンは嫌そうな顔でシグルトたちの後ろに下がった。
 
「…誰かと思えば、天才児ロマン君ではないか。
 
 くっくっく…
 天才と呼ばれた君が最近大学にめっきり来ないという話を聞いていたが、まさか冒険者になっていたとはね」
 
 忍び笑いをもらすとその男は一行を確認する。
 
「…ほんとうに穴掘りができるのか?
 
 ロマン君は子供。
 そこのだらけた女に、商売女のような小娘、体格だけはある坊主のジジイ。
 
 力仕事が出来そうなのは、そこの男ぐらいではないか」
 
 あきれたように肩を落とすチョビヒゲ。
 
「俺はシグルト。
 冒険者パーティ“風を纏う者”の代表者をやっています。
 
 …失礼、初めてお目にかかるので確認しますが、貴方が依頼人のマハド男爵ですか?」
 
 チョビヒゲは胸をそらせて見下したようにシグルトを見ようとする。
 身長がまったく足りないので無理だったが。
 
「見て分からんのか?」
 
 いかにも下賎の者を相手にしている、という感じの物言いである。
 
(…ちゃんと聞けよ、陰険チョビヒゲ!
 
 シグルトはちゃんと〝初めてお目にかかるので確認しますが〟って言ってるのに)
 
 ロマンが心の中で毒づく。
 そして、誠実なリーダーの行動に、こんな馬鹿に付き合って丁寧な挨拶をしなくてもいいのに、と思う。
 
「まあ、いい。
 
 すぐに他の冒険者と合流しろ。
 詳しい説明はそいつらから受けるんだ」
 
 名乗り返すことすらせず、チョビヒゲ…マハド男爵はシグルトに命じる。
 
「俺たち以外の冒険者がいるのですか?」
 
 シグルトが尋ねるとマハド男爵は、馬鹿にしたようにため息をついた。
 
「当たり前だ、見て分からんのか?
 
 いくら体力だけが自慢の冒険者といえど、1グループでここを掘り起こすつもりか?」
 
 完全にシグルトが聞いた言葉を取り違えている。
 シグルトは〝俺たち以外の冒険者〟のことを聞いたのであって、発掘員全てを言ったわけではない。
 
(…つまり、ちゃんとした発掘要員や助手とかいないんだね。
 
 ま、この陰険の手伝いなんて誰でも嫌がるだろうけど)
 
 一行のあきれた視線など気にも留めず、マハド男爵は、分かったらさっさと合流しろ、と言い残して近くの小屋に入っていった。
 
「…せめてどんな連中が来ているか、教えてほしかったんだがな」
 
 シグルトがそういって仲間と他の冒険者グループを探そうと思ったときである。
 彼らと同じ5人組の冒険者らしき集団がこっちに向かってやってきた。
 
「お前たちも、この依頼を受けたパーティか?」
 
 筋肉質の逞しい戦士風の男が話しかけてきた。
 
「ああ。
 
 俺たちは“風を纏う者”。
 リューン郊外の『小さき希望亭』を拠点に活動している冒険者だ」
 
 シグルドがそういうと、戦士風の男の後ろにいた白髪で鎧姿の女が、どこかで聞いたような、と首をかしげる。
 
「ああ、今売りだし中の冒険者パーティだな。
 噂は聞いた事があるよ。
 
 リューンでも風に関わる名前の冒険者パーティは多いが、ここ半年ぐらいで次々と依頼を成功させてる2組のグループがあるって話だ。
 あんたたちは5人組のほうだな?」
 
 それで白髪の女は思い出したように頷いた。
 
「俺はオイリクス。
 
 冒険者パーティ“ファインダーズ”の代表をやっている。
 『山猫の鈴亭』という宿が本拠地だ。
 お前たちの宿からは少し離れているな」
 
 手を差し伸べてくるオイリクスという戦士風の男。
 ごつい手で、顔にも腕にも古い刀傷や矢傷が多い歴戦の戦士、という感じだった。
 
「シグルトだ。
 
 よろしくな」
 
 2人のリーダーががっしり握手を交わす。
 
「私はキリスよ、よろしく」
 
 さっきの白髪の女性が名乗って握手を求めてくる。
 
「俺はザック…げ、レベッカの姐御!」
 
 後ろにいた派手な衣装の男が、レベッカを見て顔を引きつらせる。
 
「お久しぶりね、ザック。
 
 今頃気が付くなんて、御挨拶じゃない。
 下町で一緒に仕事してた頃のことなんて、忘れちゃったのかしら?」
 
 人間がこんなに一度に汗を流すものなのか、というくらい冷汗をたらしつつ、ザックと呼ばれた派手な男は首を横に振って否定している。
 
「い、嫌だな、姐御…
 
 俺が姐御を忘れるはずないぜぇ。
 わはははは…」
 
 知り合いなのか、というオイリクス。
 
「俺の世代で、リューンで仕事をやった《猫》は知らない奴はいないはずさ。
 
 凄腕だったし、面倒見も良かったし、随分世話になったよ、あはは…」
 
 どこか乾いた笑みを浮かべ、ザックは額の汗をぬぐった。
 
「まぁ、いいでしょ。
 
 私はレベッカよ。
 見ての通り、このパーティの盗賊やってるわ。
 
 なんだかザックが紹介してくれたみたいだけどね」
 
 レベッカがそういうと、南方の移民風の男がのっそりとやってきた。
 年の頃が見分け難いが、50歳以上だろう。
 
「私はジェザと申します。
 
 1年ぶりですねロマン君。
 君にこんなところで会えるとは…」
 
 柔和な笑みを浮かべたジェザという男は、スピッキオに並ぶ細い目をより細めてロマンを見る。
 
「お久しぶり、ジェザ先生。
 
 先生の冒険者家業が忙しくて、先生が開いた古代の遺品に関する講義がなくなったのは、リューンの大学でも大きな損失だよ」
 
 ロマンも微笑んでいる。
 
「なんだ、こっちも知り合いか?」
 
 オイリクスが言うと、彼は私の生徒だったのですよ、とジェザが説明する。
 
「もっとも、生徒の中で一番優秀だった彼は、数回私の講義を受けただけで、全ての講義を受けた生徒の倍のことを学んでくれたのですが。
 
 彼は講師泣かせの優秀な生徒でしたよ。
 いや、生意気な教授たちが彼に言い負かされることを拝見したことがありましたが、胸のすく思いでした。
 
 また君と古代の歴史について語り合いたいものですね」
 
 ロマンが是非、と頷く。
 
「先生はあの大学でも尊敬できる数少ない講師の1人だったんだ。
 
 あ、ごめんね。
 僕はロマン。
 このパーティの魔術師をやってるんだ」
 
 オイリクスたちが目を丸くする。
 ありありと、この子供が、と顔に書いてある。
 
「彼は真の天才ですよ。
 
 知識の広さ、知性のキレ…その英邁(えいまい…才知の優れること)ぶりは大学の名物でしたからね」
 
 ジェザの説明に“ファインダーズ”のメンバーが驚いている。
 
「御挨拶が遅くなりまして、申し訳ありません。
 
 わたくしはアールレーンと申します。
 よろしくお願いします」
 
 ブロンドに青い瞳の美しい女性が頭を下げた。
 とても上品な物腰である。
 
「ふむ、その服、聖北教会の修道女殿のようじゃな。
 
 わしはスピッキオ。
 聖海教会の司祭の聖務を与かっておるが、まあ、見ての通りの爺じゃ」
 
 アールレーンと名乗った美女が、司祭さま!と目を輝かせる。
 
「聖北と聖海は言わば同じ教えを基にする近しい間の教会同士。
 
 是非、司祭さまと信仰について語りたく存じます」
 
 スピッキオは鷹揚に頷いた。
 
「信仰の研鑽こそはわしの務め。
 
 喜んでお話しよう」
 
 そういってこの2人は宗教者独特の雰囲気で話し始める。
 スピッキオがかつて自分も修道士であったことを話すと、アールレーンも嬉しそうに自分の身の上話を始める。
 まるで、孫とその祖父のような和気藹々とした雰囲気だ。
 
「私はラムーナだよ。
 
 よろしくね~」
 
 最後にラムーナが微笑んで名乗る。
 
「お前たちとは上手くやれそうだ。
 
 仕事が一緒になったのも何かの《縁》さ、よろしく頼む」
 
 オイリクスの言葉にシグルトが頷いた。
 
「《縁》か、東の方の哲学の考え方だね」
 
 ロマンが好い言葉だよね、という。
 
 そんな感じで交友を深めていたときである。
 
「おいっ、いつまでも雑談しているんじゃない!」
 
 小屋の窓からマハドが顔を出して怒鳴った。

「ふぅ…。
 
 うるさい依頼人だが、客は客だ。
 仕事の説明をするぞ」
 
 オイリクスはそういって、今回の仕事について説明を始めた。
 
 
「…要はここを掘って、出てきたものは自分たちのもの、といういわけか」
 
 説明を聞いたシグルトのシンプルな答えに、まあそうだ、とオイリクスが頷く。
 
「俺達は少し離れた場所で発掘をすることになる。
 
 そしてそこで掘り出したものは自分達のパーティのものとなる。
 まぁ、競争になるな。
 
 まぁ、競争といっても別に争うワケじゃないから、上手くやっていこう」
 
 そういうオイリクスにシグルトも頷く。
 
「あと、重要なことがひとつある」
 
 気がついたようにオイリクスが付け足した。
 
「この土地にはところどころに罠がしかけられているらしい。
 
 今回俺達冒険者に依頼したのも、それが原因らしいな。
 まぁ、殺傷力は低いから、死ぬ事はなさそうだが、注意するにこしたことはない」
 
 シグルトが、気をつけるよ、と言うとオイリクスが厳つい顔に笑顔を浮かべて、シグルトの肩を叩いた。
 
「飯と寝る場所は一緒だからな。
 発掘期間は3日ってところだ。
 
 時間が出来たとき…夜にでも話そう」
 
 シグルトがそれに応える様にオイリクスの胸を軽く拳で叩き頷く。 
 
「説明は終わったか?」 
 
 小屋からマハド男爵が出てきた。
 
 シグルトがマハド男爵の問いに頷くと、男爵は高慢な鼻息を一つ吐いた。
 
「ふんっ。
 
 じゃあ、早速発掘を開始するぞ。
 ワシはお前達を監督する
 
 …掘る場所はそこだ」

 そう言ってマハド男爵はぞんざいに近くを指差した。
 
 頷いたシグルトはオイリクスから穴を掘るための金鋤(シャベル)を受け取った。
 
 
 シグルトは道具を地面につきたてようとして動きを止めた。
 かすかな、しかも場違いな精霊の息吹を感じたのだ。
 
 土地を運ぶ手伝いをしようと言って側に来ていたラムーナが首をかしげる。
 
「どうしたの、シグルト?」
 
 シグルトは黙って自分の感じたところを掘ってみた。
 かちん、と何か固いものに当たる感触。
 
 掘り起こしてみると、それは不思議な形の小さな短剣だった。
 刃が薄っすらと熱を持っている。
 
「うわぁ~凄い!
 
 それって探してる宝物でしょ?」
 
 声に引かれてジェザがやってきた。
 
「おっ、それは【閃投刃】ですな。
 
 魔法の投擲武器です。
 投げつけると敵全てを薙ぎ払って戻ってくる武器です。
 
 威力はまあ、小さい分のそれしかありませんが」
 
 なるほど、とシグルトが頷く。
 
「資料では4本で一つの武器だそうですが、はて?」
 
 どこかに埋まっているのかもな、とシグルトはラムーナにそれを渡した。
 
 しばらく掘っていくシグルト。
 
「ねぇ、シグルト、どうしてさっきすぐに見つけたの?」
 
 ラムーナは、シグルトがそこにあの短剣が埋まっていたのを知っていたかのように掘り起こしたことを、不思議だという。
 
「なんとなくだ。
 
 勘ってやつだな」
 
 時折、お宝探し~、と元気なラムーナと掘るのを交代する。
 
 そうしてその日が瞬く間に過ぎていった。
 
「今日の分は掘り終えた感じだな。
 
 そろそろキャンプに戻ろう」
 
 オイリクスの掛け声に、一同は道具を回収し、キャンプに張ったテントに引き上げていった。
 
 
 夜、焚き火を囲んで食事をする。
 
「ふぅ、疲れたな…」
 
 オイリクスが肩の筋肉をもみながら言う。
 
「穴掘りもそうだけど、精神的にも疲れたわね」
 
 レベッカは仲間のために飲み物を用意するなどしている。
 
「まったくだぜ。

 あんなにひでぇ客、見た事ないぜ」
 
 ザックがレベッカに相槌を打つ。
 マハド男爵は何かと嫌味を言ってやる気を削ぐ。
 
「まぁ、そういうな。
 
 ここに価値のあるものが埋まっている事は確かなんだからな」
 
 ロマンが、それにしてもとぼやく。
 ことあるごとにロマンはマハド男爵に嫌味を言われたらしい。
 
「神の使徒たる、このわたくしにあのような振舞いをしたのですから、きっと報いを受けますわ。
 
 それにスピッキオ司祭を〝うすらデカイだけの爺〟などと…彼は地獄行き決定です」
 
 アールレーンがかなり過激なことを言っている。
 
「ま、まぁ、アールレーンの言う事は少し差っ引いて聞いてくれ」
 
 オイリクスが少しあきれたように言った。
 
「それがいいみたいだね」
 
 ロマンが頷くと、なんて子なの、とすねたアールレーンがそっぽを向く。
 
 一同が和やかに笑った。
 
「私、こういうの、好き…」
 
 シグルトの横で柔らかに笑いながら、ラムーナが言う。
 
 そうだな、とシグルトも頷く。
 
「さて、明日も体力と精神力を使う。
 
 そろそろ休むか」

 オイリクスの声に一同は賛成し、寝床を準備し始めた。
 
 
 夜中のこと、シグルトはふと気配を感じて起きる。
 
 見るとラムーナがテントを出て行こうとしていた。
 どうしたのか、と思い、ふと胸騒ぎを感じて後を追う。
 
 ラムーナは外の荒地に座り、じっと闇を見ながらさめざめと涙を流していた。
 
「ラムーナ…どうした?」
 
 シグルトはそういって彼女の横に座る。
 
「…うん、家族のことを思い出していたの」
 
 そういうとラムーナは、いつもの陽気な調子とは全く違う、暗い声で話し始めた。
 
 
「私の本当の名前は、レガラっていうの。
 私たちの国の言葉では、《残り物》とか《絞りかす》って意味。
 他には《使ったら最後》って意味もあるの。
 
 生まれたときには未熟児で、お父さんもお母さんも私を殺そうとしたんだって。
 
 だけど私のお姉ちゃんが、私を助けてくれたの。
 殺されそうな私を隠して、庇って、お父さんたちを説得してくれたの。
 お姉ちゃんはいつも私を助けてくれたんだ。
 
 いつもお姉ちゃんは、優しくて綺麗で好い匂いがしたの…
 
 私の国はとても貧しくて、兵隊さんが偉い国。
 そして商人さんが偉い国だった。
 
 私たちは貧しくて、兵隊さんが税でたくさん食べ物やお金を取っていくから、困って親が子供を売るのは当たり前なの。
 子供は育ててもらった恩を返すために、親に尽くすように育てられるの。
 
 だから、親の役に立てない子供は売られちゃう。
 
 価値が無くて売れない子供は足を切られて、同情を誘うようにして物乞いをするの。
 足を切るのはお父さんやお母さん。
 それでも役に立てないと、崖から突き落とされて殺されちゃう」
 
 壮絶な話を淡々とするラムーナ。
 
「私も足を切られそうになったんだ。
 私は背が低くて痩せてたから、売れなかったんだって。
  
 そのときもお姉ちゃんが助けてくれた。
 お姉ちゃんは、私に歌と踊りを教えてくれたの。
 
 お姉ちゃんが仕事をするとき、お客さんを呼ぶために目立つ必要があったから、私一生懸命覚えたわ。
 
 私のお姉ちゃんは春を売るのが仕事だった。
 一晩、お金持ちの商人さんや兵隊さんと一緒にすごしてお金をもらうの。
 でも、お姉ちゃんは仕事の後、いつも悲しそうだった。
 
 そしていつも私に言ってた。
 〝貴女だけは私のようになっちゃだめよ〟って。
 
 お姉ちゃん以外にも私には兄弟がいたけど、お兄ちゃんのうち1人は威張ってばかりだった。
 もう1人のお兄ちゃんは凄く意地悪だった。
 末の弟は身体が大きくて、たくさん食べた。
 
 私の国では女の人は男の人の言うことを絶対聞かなきゃいけないの。
 だから私はお姉ちゃんとお母さんと一緒に仕事をして、お金を稼いで、そのお金をお父さんがお酒に変えたり兵隊さんに渡すの。
 
 今から思うと悲しい生活をしてたと思う。
 でもそれが普通だと、何も感じずに、ああそうなんだって思うの。
 
 でも私は運がよくて言葉が分かるようになったから、なんとなく私の国が悲しい国なんだって分かったんだ。
 
 西からクレメント先生がやってきて、教会で言葉を教えてくれたの。
 お姉ちゃんは西の言葉が分からないからって、言葉を知りたがってたから、私一生懸命覚えたわ。
 
 それで私、字を書けたし、読めたし、数も分かった。
 だから、うそつきのお客さんはすぐに見抜いたし、おふれの張り紙だって読めたんだよ。
 
 私が踊って、優しいお金持ちのお客さんを呼んで、たくさんお金を稼いで…
 あるとき、お姉ちゃんを身請けしたいっていう商人さんがあらわれたの。
 
 私にも贈り物をくれて、お姉ちゃんのことを働かせないようにって、何日分ものお金をくれた。
 お姉ちゃんもその人と一緒のときは嬉しそうだった。
 
 だけど、戦争が始まって、お姉ちゃんを身請けしてくれるって人は殺されちゃった…
 お姉ちゃん、そのとき隠れて泣いてた…」
 
 あのくりくりと愛らしい瞳は、今は硝子玉のように感情を感じさせない。
 
「そして、一番上のお兄ちゃんが兵隊さんになって、すぐ死んじゃった。
 
 お金持ちの商人さんが来なくなって、けちで乱暴な兵隊さんの相手をしてたらお姉ちゃん、病気になっちゃった。
 すぐ上のお兄ちゃんは泥棒して兵隊さんに殺されちゃった。
 下の弟も流行り病で死んじゃった。
 
 お母さんは、病気のお姉ちゃんに無理させようとしたお父さんを止めて殴られて、動けなくなって、すぐに死んじゃった。
 
 お姉ちゃんはお父さんに無理やり仕事をさせられて、次の日血を吐いて…」
 
 つうっとラムーナの頬を涙が伝う。
 
「そのときのお姉ちゃんは、凄く痩せてた。
 そして、お昼頃に死んじゃった…
 
 もうお酒の飲みすぎで、1人でお金を作れないお父さんは、私を売ったの。
 
 商人さんに私を売るとき、お父さんが言ってた。
 
 〝お前は俺の子供じゃない。死んだ淫売があの糞忌々しい兵隊に犯されて出来た子供だ〟って。
 
 だから私はレガラ。
 使ったら最後の《搾りかす》なんだって…」
 
 話し終えたラムーナはうつむく。
 
「そのあと、私は船に乗せられてあちこち連れまわされたんだ。
 
 だけど私は痩せてて、背が小さくて。
 それにちょうど目の上に物貰いができてたから、醜いって買い手が無くて。
 
 だから買い手がつくまで逃げないようにって、足の指に穴をあけられて、船の底にいたの。
 
 だけど途中で凄く船が揺れて、沈んじゃって、私は手枷がゆるかったから外れて、流されないように浮いてた板にしがみついたのは憶えてるけど…
 足が痛くて、苦しくて気を失って。
 
 流れ着いた私を、親切な漁師のおじいさんが助けてくれたの。
 浜で気を失ってたんだって。
 
 おじいさん、御飯をくれて優しくして…
 でも自分も貧乏で御飯が無くて、自分の食べる分をくれるから、私お礼を言って出てきちゃった。
 
 そうして行くあても無くて、歩いてたら、ロマンが怖い人たちに絡まれてて。
 本当はああいうところで、助けに入ると殺されちゃうから、助けちゃ行けないって言われてたんだけど、私はもう《搾りかす》でいらないから、死んでもいいかなって、助けようとして…
 
 えへへ、足が痛くて滑って失敗しちゃった」
 
 そしてラムーナはシグルトを見上げる。
 
「でもね、シグルトがいたの。
 
 ロマンを助けて、〝頑張ったな〟って笑ってた。
 …お姉ちゃんみたいに優しい顔をしていたの。
 
 そのときね、そのときに…シグルトと、家族になりたいなって思ったの」
 
 涙に濡れた少女の瞳は、少し怯えるようにシグルトを見つめている。
 シグルトは柔らかに微笑んで、その頭に手を乗せた。
 
「…じゃあ、もう大丈夫だな。
 
 俺とラムーナは《パーティ》ていう家族だからな」
 
 シグルトがそう言うと、ラムーナはしがみついて涙を流した。
 優しくその背を撫でてやる。
 
「…その中にはもちろん私もいるわよね~?」
 
 シグルトがため息をつく。
 
「隠れて聞くのは盗賊の本分だろうが、素人が一緒だと気配が筒抜けだぞ」
 
 その言葉に従って、隠れて無いよ~とロマン、うむ出る機会を失ってな…とスピッキオが出てきた。
 
「…みんな…」
 
 涙でぼやけるラムーナを、レベッカが優しく抱きしめる。
 
「私は、あんたの姉ちゃんほど好い人じゃないけどさ。
 
 あんたは私の可愛い妹よ。
 私の両腕にかけても、ラムーナは私の大切な家族よ」
 
 レベッカは盗賊が何よりも大切にする両手にかけて誓い、ラムーナの頭を撫でながらその瞳をじっと見る。
 冷酷な彼女とは思えないほどの優しい眼差しだった。
 
「私はね、抜け殻だったのよ、あんたたちと出会うまではね。
 
 汚れた仕事も、悪いこともたくさんやってきたけど、いっつも満たされてなかった。
 あげくは酒と美味しいもの食べて逃げて、だらけていただけ。
 
 だけど、今はあんたたちと楽しくやってる。
 私は苦い味の泥を何度も啜ってきたけど、今あんたたちと日向の匂いをいっぱい浴びてる。
 この冷酷非情な盗賊の私をこんな気持ちにさせたんだから、責任取りなさい。
 
 あんたたちがどう思ってても、みんなこのレベッカ姐さんの大切な身内なんだからね。
 
 でも、ラムーナは中でも特別。
 
 同じ女だもの。
 
 お姉ちゃんになれるのは私だけなんだからね」
 
 そう言ってまたラムーナを抱きしめる。
 だらけたいつものレベッカではなかった。
 ラムーナをしっかりと抱擁している姿は、まるで生まれた聖人を抱いている慈母のように美しい。
 
「うん、血はつながってないけど絆のある家族だよね。
 
 血よりも濃い絆ってあると思う。
 大人の残した言葉にしては、好い言葉だよ」
 
 ロマンがそういって素直に微笑む。
 
「わしはお前たちとの出会いを神に感謝しておる。
 
 わしが目の当たりにしてきたいかなる奇跡も、この尊い《出会い》という奇跡には及ぶまい。
 共に歩もう、家族という聖域を作りながら」
 
 そういって十字を切ったスピッキオはとても優しい顔をして、細い目をさらに細めた。
 
「俺は“風を纏う者”という家族として集えたことを誇りに思う。
 
 たとえ果てる場所が違っても、誰かが先に逝くとしても、俺の命が無くなるとしても。
 俺は忘れずに、この心にお前たちの存在を刻んでおく。
 おまえたちを、掛買いの無い名誉に思う。
 
 集えたことを、ともに歩めることをお前たちに感謝する。
 
 ラムーナ、ありがとう…俺を家族と思ってくれて」
 
 シグルトがラムーナの手をしっかりと握り締めた。
 レベッカが、ロマンが、スピッキオが、その手に自分の手を重ねてみせた。
 
「ここに絆の風を纏って誓おう。
 
 俺たちは“風を纏う者”。
 
 冒険者のパーティという、掛替えのない家族だ」
 
 空が白んでくる。
 まもなく日が昇ろうとしている。
 
 でもラムーナは涙で潤んだ瞳を喜びで満ち溢れさせ、大きく頷いて、輝くお日様のように、にっこりと笑った。 
 

 朝になった。 
 
「おはようございます」
 
 ジェザが顔を拭く手を止めて朝の挨拶をした。
 
「おはよう、先生」
 
 ロマンが挨拶を返す。
 
「疲れは取れたか?」
 
 オイリクスがシグルトたちに声をかけた。
 
 シグルトたちは少し眠そうな雰囲気である。
 顔に生気がみなぎっているのだが。
 
「…眠そうだが、問題はなさそうだな。
 
 あの依頼人に、まぁ、体力が資本なところを見せてやらないとな」
 
 キリスがやってきて、食事の準備が出来たことを告げる。
 
「ごめんなさいね。
 
 明日は私たちがやるわ」
 
 レベッカがそういうとキリスは、気にしないでいいのよ、と微笑んだ。
 
「冷めないうちに、食っちまおうぜ~」
 
 火の番をしているザックが、人数分食器に食べ物をより分けながら、仲間たちに声をかけている。
 
 “風を纏う者”と“ファインダーズ”の面々は、各々食器を受け取ると朝食を取る。
 
「豆のスープね。
 
 作ったのはザックかしら?」
 
 レベッカがスープを啜りながら尋ねる。
 
「さすが姐御。
 
 やっぱり分かるか?」
 
 ザックが得意そうに胸を張った。
 
「うん、この塩味と隠し味、私が教えたやつでしょう?」
 
 御名答~、といってザックが指を鳴らす。
 
「冒険者やってて、一番助かったのがこの技術だ。
 
 組み始めた頃は作った飯が不味くてよ。
 姐御に教え込まれた飯を作って振舞ったら、受けるの何の。
 
 不味い飯は食うな、っていう姐御の言葉は俺の座右の銘だぜ」
 
 相変わらず調子いいわね~二枚舌が、とレベッカが薄く笑う。
 
「なるほどな…
 
 だとしたら俺も感謝しなくちゃならんな。
 飯が美味いのは大切なことだ」
 
 “ファインダーズ”の面々は、まったくだ、と頷いている。
 
 一行は食事を終えると準備をし、マハド男爵のいる小屋の前に集合する。
 
「お前達、ちゃんと起きてるか?」
 
 定時に少し遅れてマハド男爵が小屋から出てきた。
 
「大丈夫ですよ」
 
 ジェザが柔和な顔で返答する。
 
「じゃあ、早速今日の予定の個所を掘るぞ。
 
 ぐずぐずするな」
 
 遅れてきたくせに、とロマンが聞こえないようにぼそりと呟く。
 ザックが、へ~い、と力ない返事をした。
 
「掘る場所はそこだ」
 
 そう言ってマハド男爵はぞんざいに近くを指差した。 
 そこには神殿の屋根らしきものが見えている。
 
 見ればそれほど大きな神殿ではないようだ。

「掘ったって実感が少しは沸くな~」
 
 ザックが金鋤の柄で肩をぽんぽん叩きながら言う。
 
「じゃあ、始めるか」
 
 オイリクスの掛け声で一同は作業を再開した。
 
 
 張り切ったラムーナが一生懸命掘っている。
 
「あ、何かあったよ~」
 
 シグルトが近づいてみると、それは昨日見つけた【閃投刃】という小さな短剣にそっくりだった。
 
「おっ、2つ目ですな」
 
 何時の間にかやって来たジェザが言う。
 
「この分だと、残りの2つもここにありそうですな」
 
 シグルトが残り2つがどんなものか知ってるのか、と言うと、これでも古代の遺品研究が専門ですからな、とジェザが微笑む。
 
「炎と氷は既に見つけられましたからな、残りは闇と聖でしょう。
 
 闇は敵を中毒状態にするそうです。
 聖は不浄なる存在に強力な打撃を与えるという話ですな」
 
 ロマン君も詳しいですぞ、と目を細めるジェザ。
 
「じゃ、頑張って残り全部探そうよ~」
 
 ラムーナの声に、頑張るかとシグルトが道具を手に取る。
 
「こちらも負けてられませんな。
 
 頑張ると致しましょう」
 
 ジェザは、ほほ、と笑って去って行った。
 
 シグルトが作業をしていると、妙なものを掘り起こした。
 
「…何だ?」
 
 首をかしげているシグルトのところにラムーナが駆け寄ってきた。
 
「…しっぽ?」
 
 2人が首をかしげていると、そこを通りかかったザックが、おお~!と声を上げた。
 
「それは【ねずみしっぽ】じゃないか!」
 
 ラムーナが、知ってるの、と小首をかしげる。
 
「ああ。
 
 なんでも幸運のお守りだとか、強大な力を持てるだとか、いろいろ言われてるぜ」
 
 シグルトがそれを摘み上げる。
 ちょっと大きな鼠の尻尾にしか見えない。
 
「詳しいことは知らね~けどな。
 
 まぁ、持ってくトコ持ってけば、かなりの値がつくって話だ。
 もうけたじゃねぇか」
 
 そうだといいがな、とシグルトがラムーナに【ねずみしっぽ】を渡す。
 
「なんにせよ、あんた等ついてるな。 
 
 俺達も頑張るとするか。
 じゃあな」
 
 ザックはマハド男爵がこっちを睨んでいるので、仕事に戻った。
 
 シグルトたちも穴掘りを再開する。
 
「…ん?」
 
 シグルトがまた何かを見つける。
 
「うわ~、綺麗な石。
 
 なんだろう?」
 
 ラムーナもシグルトの周りを駆け回りながら観察している。
 
「あっ、碧曜石ね」
 
 シグルトたちに水袋を届けに来たキリスが言った。
 
「もしかして、魔法の武具を作るときなんかに使うやつか?」
 
 キリスが頷く。
 
「ほら、鉱石って単体でも結構綺麗じゃない?
 
 それだけでも結構価値があるんじゃないかしら?」
 
 シグルトは髭面の銘匠を思い出して頬を緩めた。
 
「ブレッゼンの爺さんに、好い土産が出来たな」
 
 キリスが驚く。
 
「ブレッゼンって、あの有名な“神の槌”でしょ?
 
 知り合いなの?!」
 
 ああ、と言ったシグルトは作業場の近くに大切に置かれている剣を見た。
 
「…すごいわね、あのブレッゼンに武具を作ってもらえるなんて。
 
 前に美術商にブレッゼン銘の短剣を見せてもらったことがあるけど、銀貨七万枚の価値だったわ」
 
 シグルトたち冒険者にはまったく縁が無い金額である。
 
「その話を聞いたら、爺さんが悲しむかも知れんな…」
 
 眉をひそめるシグルトに、そういう人なのとキリスが尋ねる。
 シグルトが頷いた。
 
「そう。
 
 ま、雑談はここまでにしておきましょう。
 依頼人が睨んでるし。
 
 だいぶ掘ったし、後半分ぐらいだと思うから、頑張ってね」
 
 そういうとキリスは去って行った。
 
 シグルトとラムーナは日陰に置かれて冷たい水を美味しくいただくと、また作業を開始した。
 
 “ファインダーズが”罠を引き当てて騒いだりもしたが、シグルトたちは何事もなく作業を終える。

「今日はここまでにして、キャンプに戻ろう」
 
 シグルトの声に一同がほっとしたように集まってきた。
 

 夜…
 
「うぁ~、今日は疲れちまったぜ」
 
 ザックが寝転がって文句を言っている。
 
「今日は随分いいものを掘り起こしたんだって?」
 
 オイリクスがどっかとシグルトの横に腰を下ろす。
 
「ああ。
 
 あんたんとこの仲間にいろいろ教えてもらったよ」
 
 シグルトが微笑むと、オイリクスがため息をついて肩を落とした。
 
「俺たちは散々だ。
 
 初日は、最初の発見だって喜んでみればただの骨だったし、今日は罠にかかってけが人が出る始末だ。
 …あんたんとこの爺さん、凄いな。
 
 あの依頼人が高い薬を売りつけようとした前で、一発で俺たちの傷を治してくれたよ。
 あのチョビヒゲが引きつる顔を見れたのが、今日の一番の収穫だったな」
 
 オイリクスの横にキリスが座る。
 
「ホント、あの依頼人には嫌になるわ」
 
 ロマンが、嫁に行きたくないナンバーワン、と冗談めかして言うと女性人が大きく頷いた。

「まぁ、そう言うな。
 
 予定では明日で発掘は終了だ」
 
 オイリクスが頑張ろう、と声をかけている。
 
「今日も沢山掘ったからな~」
 
 ザックが首をこきこき鳴らしながらやってくる。
 
「そうだ。
 キリス、ザック。
 
 アレをやってくれ」
 
 それを聞くとキリスとザックは、顔を見合わせてニヤリと笑い、テントに向かっていく。
 
「…ん?」
 
 シグルトが首を傾げるとオイリクスが足を伸ばしながら似合わないウインクをした。
 
「キリスとザックの特技でな。
 
 まぁ、多少は疲れが取れるさ」

 そうしている間に、キリスは変わった形の竪琴を、ザックは琵琶(リュート)と鼓楽器(パーカッション)がセットになったような楽器を持ってきた。
 
「なるほど、演奏会というわけか」
 
 シグルトが焚き火に薪をくべながら微笑む。
 
「ま、大して上手くは無いがな」
 
 オイリクスの言葉に、あっひでぇ、とザックが抗議の声を上げる。
 
「冗談だよ。
 
 さっ、やってくれ」
 
 オイリクスが言うと、2人はそれぞれの楽器をひき始めた。
 
「上手いものだな」
 
 また腰を下ろしたシグルトは、一つ頷く。
 
「ああ。疲れた時や行き詰まった時、これにどれだけ助けられたことか。
 
 それだけじゃない。
 ジェザさんにもアールレーンにも、俺は沢山助けられている。
 良い仲間を持ったよ」
 
 酒の入ったカップを持ってきたアールレーンが、改めて言われると照れますね、と頬を赤らめているが酔っているせいだけではないだろう。
 
「まぁ、そう照れるな。
 
 こんなこと滅多に言わないんだからな」
 
 シグルトは目を細めてその様子を眺めていたが、気がついたようにラムーナを呼ぶ。
 
「せっかく音楽があるんだ。
 
 自慢のダンスを見せてやれよ」
 
 その声に、ラムーナが、ぱぁっと笑顔になって駆けていく。
 そして音楽に合わせて、即興の見事なダンスを踊りだす。
 
 ロマンやレベッカも手拍子を打ち始める。
 
「…ものすごく上手いな」
 
 “ファインダーズ”のほかの面々は、すっかりそれに魅せられてぽかんとしている。
 
「ああ、専門家だからな」
 
 昨日の涙などまったく無いように、ラムーナは楽しそうに踊っていた。
 
「…いいパーティだな」
 
 シグルトがラムーナに手を振りながら、素直に“ファインダーズ”を賞賛する。
 
「ありがとう。
 
 お前達もな」
 
 はにかんで返すオイリクス。
 2人はしばらく、音楽とダンスに時を忘れていた。
 
「なあ、オイリクス。
 
 あんたは何故冒険者になったんだ?」
 
 シグルトが唐突に聞く。
 
「俺か?
 唐突な質問だな。

 …そうだな。
 
 俺はもともと傭兵をやっていたんだ。
 傭兵同士のつながりってのはあるけど、やっぱり最終的には個人の生きる力がものをいう世界だ。
 
 冒険をやったのは、ほんの小さなきっかけだ。
 もう憶えていないよ。
 
 だが、そのとき組んだ仲間との絆のようなものに強く惹かれてな。
 傭兵時代には得られなかったものだ。
 
 で、それ以来、同じ仲間とずっと一緒にやってきてるってわけだ」
 
 なるほどな、とシグルトは首肯した。
 
「そういうシグルトは、どうして冒険者をしているんだ?」
 
 オイリクスが尋ねると、シグルトは空を見上げる。
 星が瞬いて美しい。
 
「…最初は仕事なら何でも良かった。
 食っていければいいと、選んだ仕事だったよ。
 
 だが、今は家族がいるからだ。
 パーティっていうか大切な家族ができたから、この仕事を続けていきたいと思ってる」
 
 とても大切そうに、シグルトは《家族》と口にする。
 
「スピッキオは信心深く俺たちを護ってくれる親父。
 レベッカは抜け目の無い頼りになる姉貴。
 ラムーナは踊りの上手い愛らしい妹。
 ロマンは頑張り屋の賢い弟。
 
 皆、俺の自慢の《家族》だよ。
 
 あんたの言う仲間の絆に似てるな」
 
 そうか、とオイリクスは微笑む。
 
「家族か…」
 
 シグルトは目を閉じて知り合ってからの冒険を思い出す。
 
「ああ。
 
 俺がここにこうしていられるのも、全てあいつらのおかげだからな。
 
 何度も死線を一緒に乗り切ってきた。
 くじけそうなときに支えあってきた。
 
 仲間って言葉もいいが、俺にとってあいつらは大切な身内で、家族だよ。
 
 だから俺はあいつらと一緒に、冒険者をやってるんだ」

 オイリクスが優しそうな顔で大きく頷いた。
 
「…お互い、いいパーティに恵まれたな」

 焚き火の弾ける暖かな輝きを見つめながら、シグルトとオイリクスは、乾杯する。
 
「“ファインダーズ”という素晴らしい仲間に!」
「“風を纏う者”という素晴らしい家族に!」
 
 カップの打ち合う涼しげな音。
 
 2つの素晴らしいパーティの夜は更けていくのだった。
 

 朝になった。
 
「おはよう」
 
 キリスがキャンプセットを整理しながら言う。
 
「おはよう~」
 
 ラムーナは元気に挨拶をしている。
 
「疲れは取れたか?」
 
 オイリクスが髭を剃りながら言う。
 
「ああ」
 
 シグルトは道具の整備をしていた。
 
「しっかり頼むぞ。
 
 まぁ、今日で最後だ。
 お互い頑張ろう」
 
 2人は腕の甲をを軽くぶつけ合って挨拶した。
 
「食事の用意が出来たわよ~」
 
 冷めないうちに食おう、と2人も集まりだした仲間の下に急いだ。
 
 
「あら、これは美味しいわね」
 
 キリスが目を丸くする。
 
 その日の朝食は鍋の底で練った粉を薄く焼いたパンだ。
 間に香草や肉などの具をソースと一緒に挟んで食べる。
 
「とっておきのチーズがあったからね」
 
 はさまれたチーズの甘い香りに、食が進む。
 
「はぁ、やっぱ姐御は料理が上手いな~」
 
 ザックがそういいながらパクパクと食べていく。
 
「肉は干し肉を戻した者だから、少し味気ないけどね。
 
 本当は焼いた肉を使うと美味しいんだけど、携帯食で作れる食事って限られてるからさ」
 
 ほんのり効いた香草の香りがチーズとよく合う。
 
「いや、あの材料でこれだけのものが作れるんだからたいしたものだ。
 
 ザック、暇なときに習っておけ。
 これは美味い」
 
 皆御機嫌である。
 
 そこに、マハド男爵が小屋から出てきた。

「お前達、ちゃんと起きてるか?」
 
 横柄なマハド男爵の態度に、食事を邪魔された一同は不機嫌な顔である。
 
「起きてますよ、見てのとおり食事中です」
 
 オイリクスが答える。
 
「じゃあ、早速今日の予定の個所を掘るぞ。
 
 これで最後だ。
 ぐずぐずするな。
 
 食事など終わりにしろ!」
 
 そこでレベッカがすっと立ち上がった。
 
「まだ予定時間じゃありませんわ。
 
 男爵閣下ともあろう方が、まさか朝食の時間を縮めるような無粋で愚かなことはしないと思いますが…」
 
 むっとした男爵にレベッカは艶然と微笑む。
 
「朝食で身体を養うのは勤労の素。
 
 寛大な男爵閣下、お分かりいただけますわよね?」
 
 かなりの迫力である。
 怯んだマハド男爵は、さっさとするんだぞ、と言い残して小屋に引っ込んでしまった。
 
「…けっ、肥満野郎が。
 
 薄汚いチョビヒゲ見せるんじゃないわよ、飯が不味くなるじゃない」
 
 ラムーナと何故かザックが震えていた。
 
「あの男爵、泣くぞ、絶対泣かされるぞ…」
 
 ザックが似合わない十字など切っている。
 
「なんだ、ザック。
 
 お前レベッカのことが怖いのか?」
 
 オイリクスが聞くと、ザックは黙って頷く。
 
「姐御の飯を邪魔するってことは、俺たち姐御を知ってる連中にとっては〝弓を構えた兵隊に挑むより馬鹿〟って言われてたんだ。
 
 とても面倒見の好い人なんだが、本気で怒ると相手が貴族でも破滅させるって武勇譚があるんだぜ。
 
 飯と酒をこよなく愛するひとだからな。
 前にあの男爵みたいな無粋なまねをしたギルドの幹部が、姐御に弱みをばらされて左遷されたのは有名な伝説さ」

 そんなこともあったわね、とレベッカはけろりとして食後の薬湯を啜っている。
 ザックは、褒めてるんですぜ、と腰が低い。
 
「む、ザックのやつも泣かされた口か?」
 
 オイリクスの問いに、さあ、とシグルトは肩をすくめた。
 
 
 食事を終えた“風を纏う者”と“ファインダーズ”の面々は現場に集合する。
 神殿は扉の部分まで見えている。
 
「もう少しふんばれるというものですな」
 
 ジェザの言葉に一同が頷く。

「じゃあ、始めるか」
 
 オイリクスの言葉に頷いて、一行は穴掘りを再開した。
 
 
「…なにかあるな」
 
 シグルトはズシリと重い一本の斧を掘り起こした。
 なかなかの値打ち物のようである。
 
「困ったな、俺たちの中で斧を使うやつはいないし…」
 
 それはどうやら魔力も宿っている様子だ。
 シグルトはそれを荷物袋にしまう。
 
(また後で、しっかり調べてみよう)
 
 そしてシグルトはまた穴掘りを再開する。
 
「何かあった~?」
 
 ラムーナが土を置いてから戻ってくる。
 
「ああ実は…」
 
 シグルトの持つ金鋤がまた何かを捕らえる。
 
「…なんだか大当たりだな。
 
 ラムーナ、手伝ってくれ」
 
 掘り起こしてみると、それは例の【閃投刃】という短剣である。
 
「すご~い、シグルトって宝探しの天才だね!」
 
 シグルトは苦笑して【閃投刃】をラムーナに渡す。
 
「これで三つ、あと一つだな」
 
 そういって土を起こしたシグルトは、なにやらおかしな像を掘り起こす。
 
「なんだ、こりゃ?」
 
 なんとも間抜けな格好の像である。
 
 そこにアールレーンが通りかかった。
 
「あら、それは古代の神をかたどったものです。
 
 大して価値はないでしょうが、酒代ぐらいにはなるかもしれませんよ」
 
 そうか、といってシグルトはラムーナに像を渡す。
 ラムーナが像とにらめっこをしてすぐに吹き出した。
 
「これって、変な顔~」
 
 シグルトは微笑みながら自身に付いた土埃を払う。
 
「今度は私が掘るね!」
 
 ラムーナは元気に駆けて来る。
 シグルトは金鋤をラムーナに渡すと青い空を眺めて、一休止した。
 
「こ~こ~ほ~れ~♪
 
 ザックザック~♪
 
 石ころポイッ!、土はエイッ!
 
 今日も楽しく穴を掘る~♪」
 
 妙な自作の歌を歌いながら、ラムーナが一生懸命掘っている。
 
「そ~れ、あっ!」
 
 ラムーナが何か見つけた様子である。
 
「どうした?」
 
 シグルトが聞くと、ラムーナは得意そうに金色の石を取り出した。
 
「これは、例の鉱石の一種みたいだな」
 
 お宝、お宝と飛び跳ねて喜んでいるラムーナ。
 だが、唐突にへたり込んだ。
 
「あはは~、ちょっと疲れちゃったかな」
 
 張り切りすぎたかもな、と言ってシグルトとラムーナはしばし休息を取る。
 
「うお~!!!」
 
 遠くで“ファインダーズ”の面々が罠を発動させたようだ。
 
 慌ててスピッキオとアールレーンが走っていく。
 マハド男爵が大声で怒鳴っていた。
 
 
 その後、穴掘りは順調に進み…
 
「…やったね~」
 
 ラムーナがニコニコしている。
 
「…そうね」
 
 キリスが汗を拭きながら微笑んだ。
 
「…こうしてみると、苦労した甲斐があったな」
 
 神殿の扉を前に、一行は感無量、という表情だ。
 
「おおっ、やったぞ!
 
 これでワシも学会に名が売れる!
 もうビーンズなんかにでかい顔はさせるものか!!」
 
 大声で叫んでいるマハド男爵の声に、一同気分を害したような顔になる。
 
「…水をさす奴もいるがな」
 
 オイリクスの言葉に、シグルトも頷いてため息をつく。
 
「さ、さっそく中を拝見するぞ!!」

 そう言うとマハド男爵は神殿に駆け寄って行った。 

「ま、待て!
 
 罠がしかけられてるかも知れない」
 
 オイリクスが慌てて追いかける。
 
「ふんっ!
 
 埋もれた神殿に罠などあるものか」
 
 そう言うマハド男爵に、レベッカが冷たい目で言う。
 
「なるほど。
 
 じゃ、これで私たちの依頼は終わりってことで、構いませんよね?」
 
 その言葉に、ふん、とマハド男爵は鼻息で応えた。
 
「ああ、構わんとも。
 
 とっとと帰るがいい、体力馬鹿どもが!!!」
 
 そういうとマハド男爵は神殿に駆けていく。
 太っている身体からは想像できない早さである。
 
「お、おいレベッカ…」
 
 オイリクスが、まずいだろ、と言う。
 
「おお~!
 
 ワシの神殿~!」
 
 マハド男爵はオイリクスの制止も聞かず、神殿の前まで行ってしまった。
 
「さ、帰りましょうよ。
 
 あのチョビヒゲに付き合うのはもううんざりだわ」
 
 レベッカの手には何時の間にかマハド男爵と交した契約書が握られている。
 
「ふふふ、今朝のうちに神殿が掘れたら仕事が終わりになるように手を打っておいたのよ。
 
 はい、“ファインダーズ”の分」
 
 目を丸くして受け取るオイリクス。
 
 その後ろで、マハド男爵が神殿の扉に触れた。
 
「「神聖なる神殿を犯すものは誰だ…!!」」
 
 そこにいる全員の頭に、直接声が響いた。
 
「な、なんだ!?」
 
 マハド男爵がうろたえた様子で周囲を見ている。
 
「あ~、やっぱりあったか。
 
 なんとなくこうなるような気がしていたのよねぇ」
 
 レベッカがのんびりとした口調で言った。
 
「「信徒たる証を示せ…!!!」」
 
 また声がする。
 
「…なっ!
 
 ワシはマハド男爵だぞ!」
 
 律儀に応えてしまうチョビヒゲ男。
 
「ば、ばかっ!」
 
 キリスが止めようとするがもう遅い。
 
「「…汝らを侵入者とみなす!!!」」
 
 ザックがへたり込む。
 
「ああ…やっちまった!」
 
 突然地面が振動を始めた。
 
「な、なんだ!
 
 なんなんだ!?」
 
 驚くマハド男爵の前で一行が掘り起こした土が蠢き、何かの形を作り始めていた。
 そして、大量の土砂が完全な形になったとき、そこには土の巨人が現れていた。
 
「で、でかいっ!」
 
 オイリクスが目を見張った。
 
「10mはありそうですな…」
 
 あっさりとした口調でジェザが言った。
 
「なに落ちついてるのよっ!
 
 逃げるわよ!」
 
 キリスが真っ青な顔で怒鳴る!
 
「ふ、ふざけるなっ!
 
 ワシの神殿はどうなる!」
 
 マハド男爵が慌てて怒鳴り返す。
 
「…無視だ、無視!」
 
 ザックも逃げ出している。
 みるみる土の巨人が近づいて来た。
 

「ひっ、ひぃ!
 
 お前等、ワシを守れ!!」
 
 そこでレベッカが、マハド男爵に今までの仕事を終えたことを証明する契約書を突き出す。
 
「残念だけど、それは出来ないわ。
 
 私たちの仕事は穴掘りで、しかも終わってるし。
 もし助けてほしいのなら、この契約書にサインかシール(封印)を下さる?」
 
 ちゃっかり熱した封蝋とマハド男爵の印まで持ち出して来て、敵と戦ったら五百枚ずつ銀貨を払うという契約書を2枚用意している。
 
「な、そんなことできるか!」
 
 マハド男爵が言うと、じゃあ、お好きな形でぺしゃんこになってくださいな、と告げて去ろうとするレベッカ。
 
「わ、分かった!
 
 押す、印を押すから助けてくれ~」
 
 契約書を引っつかむと、慌ててレベッカの指差す部分に印を押す。
 
「ん、じゃ、シグルト…
 
 ちょっとこの人担いでくれる」
 
 シグルトがマハド男爵を回収し、一同は全速力でその場から離れる。
 
「レベッカ…
 
 お前、こうなること知ってたな?」
 
 オイリクスが聞くと、まぁね、と頷く。
 
「ロマンがあの扉に書いてあった文字を読んでくれたのよ。
 
 信徒の証を示さないと、命は無いとか書かれてたけど、私たちの仕事はあくまでも穴掘りだから、あの男爵に伝える義務は無いし。
 ま、あんたたちや、うちのがやりそうになったら止めるつもりだったから…」
 
 苦い顔をしてザックが聞く。
 
「だが、姐御…
 
 あんな化け物、どうすんだよ!」
 
 それにレベッカが巨人の足を指差す。
 見ると動きが鈍い。
 
「一度掘り起こした土だから、あんたたちの道具を踏んだところなんて、ほら…」
 
 みれば金鋤を踏んだ部分が、ぼろぼろと崩れている。
 
「今なら、総出でかかれば勝てるでしょう?」
 
 オイリクスは開いた口がふさがらない、という様子だ。
 
「はい、護衛の依頼で男爵から追加報酬に銀貨五百枚むしりとっておいたから。
 
 あんたたち、あんまり今回はもうからなかったんでしょ?
 足しになさいな」
 
 ザックに、先ほどマハド男爵の印を押した契約書をぽんと渡す。
 
「用意がよすぎるぜ…やっぱ、姐御はすげぇ」
 
 レベッカはマハド男爵を離れた場所に置いてきたシグルトに簡潔に事情を伝える。
 
「ラムーナ!
 
 土人形退治よ。
 こいつで崩して、皆でたこ殴り、と行きましょう!!!」
 
 ラムーナに金鋤を渡す。
 がってん承知さ~とラムーナが妙な敬礼をした。
 
 レベッカの言葉に頷いた一同は武器を構え、土の巨人を迎え撃った。
 
 
「とりゃぁぁ!!!」
 
 ラムーナが気合一閃、巨人の左足をスコップで崩す。
 
 一斉に攻撃すると、見る間に土が当たりに散っていく。
 ロマンの魔法が、右足の踏みつけを封じていた。
 
 ラムーナがもう片方の足を崩し、戻ってきた勢いで止めとばかりに左足を蹴り砕いた。
 
 その間に“ファインダーズ”が協力して右足を完全に破壊する。
 
 どしゃ、と足を失った巨人が胴の部分まで落ちてくる。
 
「次は腕だ!」
 
 ぶんぶん振り回される腕を避けつつ、シグルトが叫ぶ。
 
 連携攻撃で腕も見る間に粉砕されていく。
 
「やるな、お前たち!」
 
 オイリクスたちの言葉に、あんたたちもな、と返すシグルト。
 
 みればラムーナが踊るように遠心力をつけ、スコップで腕を粉砕していた。
 同体もその一撃で崩壊していく。
 
「…あの娘、すごいな」
 
 オイリクスが唖然とした。
 
「ああ、頼りになる」
 
 そういうシグルトの前で、土が崩れて拡散した。
 
「ああ、神殿が埋まる!
 
 止めろ、止めるんだ~!!」
 
 後ろでマハド男爵が叫んでいるが、2つのパーティは見事に無視した。
 
「最後は頭か!」
 
 シグルトとオイリクスは頷きあい、互いの得物を構えて走り出した。
 
 土に混じった石の破片で傷つきながらも、アールレーンの癒しを受けながら、ラムーナが敵の防御に穴を開ける。
 
 一同が削る土の巨人の体。
 
 しかし、土の巨人は最後の抵抗とばかりに、凄まじい叫び声をあげる。
 その攻撃で皆が吹き飛んだ。
 
「うぁ、耳が…
 
 なんて声、出すんだよコイツ!」
 
 ロマンが耳を押さえながらよろめく。
 レベッカが朦朧とした様子で、額を押さえている。
 
「皆、ふんばれぃ」
 
 スピッキオが一同全てに癒しの秘蹟を与える。
 
 キィヤァァァァァァ!!!!!!
 
「っぁぁぁ!!!」
 
 叫びに耐えながら、一同、最後の力を振り絞る。
 
 ジェザの魔法が、キリスの剣が敵を切り裂いていく。
 
 そして、最後の部分も粉砕された。
 
 一同、満身創痍で、地にへたりこむ。
 
「ふぅ…
 
 なんとか倒したな」
 
 シグルトの横にオイリクスが座る。
 
「ああ」
 
 シグルトは頷くだけだ。
 
「ああぁ…ワシの神殿…」
 
 一同が労わり合う中、マハド男爵が完全に埋まってしまった神殿を呆然と眺めている
 
「なんだ、あのおっさん。
 
 まだやってんのか」
 
 ザックがあきれたように言った。
 
「…………」
 
 するとと、マハドはジロリと一行を睨んだ。

「お前等、ワシの神殿になにをしてくれたんだ!
 
 また掘り直しではないか!!」
 
 一同の表情が固まる。
 
「掘り直し…」
 
 アールレーンが冷汗を流していた。
 
「ワシの一日は、お前等の何ヶ月分の価値があると思っているんだ!」
 
 マハド男爵は拳を震わせている。
 
「ほら、お前等、さっさとやり直さないか!」
 
 そこにレベッカがすたすたとやってきた。
 
「穴掘りの仕事は終了しています。
 
 報酬も頂いてます。
 私たちにその義務はありませんよ、男爵」
 
 自分より背の低い男爵を見下ろしながら、ニッとレベッカは微笑んでいる。
 逆光ではっきりしないが、怖い顔だ。
 
「な、なん…」
 
 青筋をこめかみに浮かべ、何か言おうとするマハド男爵。
 そこにレベッカはさっきの契約書を数枚取り出す。
 
「あと、土人形退治の報酬はまた後日、この証文を持ったものが一枚につき銀貨五百枚受け取ることになってます。
 
 あ、そうそう、私たちはもう穴掘りの仕事はしませんよ。
 仕事をしてほしいなら、何か埋めといてくださいな。
 
 ま、私はもう受ける気はしませんけど」
 
 ぺたり、とマハド男爵が膝をつく。
 不意に強風が吹き、彼の髪の毛が数本抜け舞い上がりながら、土砂に埋まった神殿の上を飛んでいった。
 
 背中が煤けて見えるマハド男爵を放ったまま、颯爽と風に乱れた髪をかき上げレベッカが戻ってきた。
 
「ふん、下種には相応しい結末よね」
 
 “ファインダーズ”の面々が呆然としていた。
 
「あはは、また姐御の伝説が出来たな…」
 
 ザックが頬を引きつらせている。
 
「そういや、姐御。
 
 さっきあの泥人形が倒れたときに、こんなもの拾ったんだが…」
 
 ザックが短剣のようなものを取り出す。
 それは最後の【閃投刃】であった。
 
「ありゃりゃ、そっちが回収しちゃったか。
 
 ね、それを私たちが持ってる銀貨五百枚の証文と交換しない?
 …せっかくだから全部そろえたいじゃない」
 
 お宝が少なかった“ファインダーズ”は喜んでそれに応じた。
 
 【閃投刃】は集めるとなんと溶けるように1つの武器へと姿を換えた。
 
「なるほど、こういう仕掛けでしたか」
 
 ジェザが物珍しげに見ている。
 
「危なっかしいわね。
 
 ま、こんなの投げて仲間を巻き込んだら嫌だから、袋の底にしまっときましょう」
 
 レベッカがそういうと、“風を纏う者”の面々はそれぞれ頷いた。
 
「ところで、今回お前たちが掘り起こした一番のお宝は何だったんだ?」
 
 オイリクスがなんとなくだろう、そう聞いた。
 
 そうねぇ、と考えるレベッカの横で、ラムーナがにっこりと目を細めて微笑みながら言った。
 
「…家族の絆だよ!!!」
 
 シグルトが、そうだな、とラムーナの髪を撫でる。
 レベッカが、一番凄いのを忘れてたわね~、と頭をかいた。
 ロマンが、お姉ちゃんなんだからしっかりしないとね、と肩をすくめる。
 スピッキオが、お前には金銭よりも大切な宝について教えねば、とすでに説教口調だ。
 
 勘弁してよ~、と逃げ腰の凄腕盗賊を見つめながら、“風を纏う者”は皆楽しそうに笑い声を上げた。

 
 
 ポニーIさんの『埋もれた神殿』です。
 昔あったシナコンなるもので受賞した傑作ですが、今はサイトが閉鎖されて手に入りません。
 なんでそのシナリオをやったかというと、鉱石ほしさからでした。
 取りこぼしても買えるので。
 
 ところが掘ってみれば、最初の骨以外(何が手に入るかは大体知ってました)全部掘り出しました。
 インチキしてませんし、シグルトとラムーナで休み休みやったんですよ。
 シグルトが魔法使いのように宝を引き当てる様を見せたかったです。
 
 今回ラムーナの過去が明らかになります。
 彼女が新しい名前にこだわっていたのは、親に売られてしまった時点でその名前の意味も失っていたからです。
 
 いつもほのぼのなラムーナですが、実はとても繊細です。
 仲間や人の動向に敏感で、穏便になるように動きます。
 健気な娘なのですよ。
 彼女が愛されることを切に願います。
 
 今回シグルトたちは自分たちのパーティを《家族》と考えるようになります。
 “風を纏う者”の特徴は仲良しであることです。
 それこそが連携を可能にしているわけでして。
 
 でも“ファインダーズ”能力的にはシグルトたちと同格ぐらいです。
 凄い。
 
 ザックがレベッカを姐御と呼んでいましたが、ザックのデータを見るとすりをしたことがあるのと年代が若者でレベッカよりレベルが1つ下だったので、そんな風に表現しちゃいました。
 
 マハド男爵と最後の結末はシナリオではぜんぜん違います。
 でも、この嫌味男爵に一泡吹かせたくて、過剰な描写をやってみました。
 このシナリオをやったことがある方で、溜飲が下がった方がいたらニヤリ、です。
 
 今回、儲かりました…
 以下にデータを載せますが。
 ただ、このシナリオが出来た当時のバランスがどんなものだったか、アイテムを見るとよくわかります。
 
 武器系アイテムが強すぎて使えません、特に斧。
 この斧、クロスオーバーでちょっと使うかもしれません。
 【真・閃投刃】は封印武器です。
 戦闘が楽しくなくなるので、宿の倉庫行きになりました。
 名目は、仲間を巻き込む恐れがあるから、です。
 …プレミアは売れないんですよ、はあ。
 
 
・【ねずみしっぽ】
・【碧曜石】
・【強金斧】
・【ハニワ】
・【金鉱石】
・【シャベル】
・【真・閃投刃】
 
売却【ねずみしっぽ】(+1250SP)
売却【ハニワ】(+10SP)
 
 
◇現在の所持金 2651SP◇(チ~ン♪)
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この記事のコメント

こんにちはm(__)m
ラムーナさんの過去が・・・読んでて泣いてしまいました。私は滅多に泣かなくて、10代に入ってから泣いたのは愛犬の死と祖母の死と私が名前をつけたフェレットの死(注 フェンリルではありません。)の3回だけでしたが、4回目を迎えてしました。
お姉さんが、亡くなったあたりは涙でモニターが霞んでしまうほど、泣きました。
ラムーナさんの過去の話以外でも、ファインダーズの素晴らしさや「家族の絆」など見所が沢山あるリプレイをありがとうございます。

それにしても、シグルトさんはストイックですね!そこが、またカッコイイです。レベッカ姐さんは今回も盗賊らしくて、読んでいて爽快でした♪
ロマン君は、真の天才ですね。天才でも嫌味なところが少なくて、好感が持てる天才です。スピッキオさんは、いぶし銀ですね!比較的地味なイメージですが、パーティの癒し手であり、最年長なので、頼もしいです。

ふと、思ったのですが、シグルトさんは兄になってほしい感じがして、レベッカさんは姉になってほしい感じで、スピッキオさんは父になってほしい感じで、ロマン君は弟になってほしい感じで、ラムーナさんは妹になってほしい感じです。
思わず家族にしたいくらい魅力的な風を纏う者はこれからも目が離せないです!


コンビネーション>
海虎の牙撃+じゅ(漢字が表示されませんのでお許しください)刻の剣は強いというより、怖い威力です。そのあと、獅子心剣を決めたら、大変な事になりました!
呪縛→海虎の牙撃→じゅ刻の剣→獅子心剣の順番に当てると・・・
PCゲーム>
ガンダム系列だったりしますか?
(エクスカ・・・とアロンダイトが出てきたアニメをガンダムSEED DESTINYしか知らないです。)
もうちょっとテレビを真剣に見ます。

それでは、長々と申し訳ありません。
失礼いたしますm(__)m
2006-07-15 Sat 17:45 | URL | らっこあら #mQop/nM.[ 編集]
 いらっしゃいませ。
 
 ラムーナのエピソードですが、現代でも貧しい紛争地などで似たようなことが起きているそうです。
 
 “風を纏う者”は家族のようなパーティで仲が良いのが特徴です。
 でも皆、心に傷を持ち居場所を追われたり探していたりする連中なんです。
 《纏う》がチーム名にあるのは、暖かな家庭をイメージしているのもあるんです。
 ラムーナ、ファンが増えるといいんですが。
 
>シグルトがストイック
 シグルトは無欲ではありません。
 目的のためにとことんストイックになれるタイプです。
 かといって執着しすぎることもありません。
 だから貪欲でもないです。
 鈍感で硬派で武骨なので、自分は不器用な生き方しか出来ないと知っています。
 だからこそ自己を磨く努力家。
 でも、シグルトの鈍感ぶりはもうすでに発揮されています。
 ニコロ君かわいそう…
 
 シグルト、優しいけど鈍感なので意図せず周囲に嫉妬や勘違いを発生させます。
 だいたいその後始末はレベッカ姐さんがフォローするのですが。
 
 レベッカ姐さん、最近昔のキレモノ盗賊に戻りつつあります。
 レベル4ですからね。
 
>ロマンは真の天才
 ロマンは才能を努力で磨いたタイプ。
 彼の持論では「才能も磨かなきゃガラクタだよ」。
 努力せずに才能云々ばかり言うと、ロマンにきつい嫌味を言われるでしょう。
 でもロマン、頑張る人には素直な感想を漏らします。
 謙虚なところはあります。
 
 シグルトはお兄ちゃん属性全開です。
 ブラコンの妹がいて、それはもうべったりついて歩いてましたから。
 シグルトは親しいものをとても大切にしますから、妹の面倒を見て育ったため、その面倒見の好さがリーダーになっても現れてます。
 実はシグルト、何を隠そう一番の趣味は「子供と遊ぶこと」。
 時々ふらりといなくなったときは、孤児院で子供とレスリングしたり肩車して、まったりしています。
 遺跡や景色の鑑賞も好きです。
 あまりに欲の無い趣味なので、趣味と思われないのですが。
 
>コンビネーション
 咒は呪うとかまじなうという字の旧字です。
 このコンボは出血大サービスです。
 ダメージ1.5倍ですからねぇ。
 逆転用の一発芸ですね。
 
>某PCゲーム
 カードワースのシナリオに同じ名前の古い連作があります。
 たぶんアニメはもう終わってるかも。
 
 まあ、無理に知る必要も無いような…
 
 
 またお訪ねくださいね~
2006-07-16 Sun 12:27 | URL | Y2つ #TIXpuh1.[ 編集]
 こんばんは。Martです。
 何かブログ上でコメントを各回数が減ってしまってます。申し訳ありません。いつも楽しく読んでいます。
 家族、っていう雰囲気を持ったパーティっていいですよね。ウチの連中は家族というよりは同じフラットの仲間同士、といった感じがあるので時々こちらのパーティを羨ましく思うこともあります。
 ラムーナの境遇、私も海外で何度か(ここまで大変な例はさすがにないですが)、似たような方々と話をしたことがりついその時のことを思い出してしまいました。ラムーナには頑張って欲しいです。
 埋もれた神殿は随分前にプレイした記憶がありますが、それ以来、プレイしていないので詳細を思い出せません。でも真・閃投刃は手に入れることができたと思います。しばらく使ってみて強すぎたのでお蔵入りさせたような…。でも雰囲気はとても楽しいシナリオだったような気がしますね。
 私が結構勝手に色々書いているのでご迷惑をおかけしていますが、予定のイベントまで後少し。よろしくお願いします。それでは失礼しますね~。
2006-07-16 Sun 20:55 | URL | mart #WkyY9OVg[ 編集]
 いらっしゃいませ~
 
 ラムーナは愛らしいひょうきん者を目指していますが、うちのパーティでは一番不幸だったかも。
 まあ、シグルトとレベッカも不幸でしたが、この娘の場合、血の繋がった家族は所在不明の父親ぐらいです。
 
 今ラムーナは幸せの絶頂です。
 パーティという家族を得たわkですし。
 張り切ると思いますよ。
 
 このシナリオ、めちゃくちゃアイテムが強力です。
 私は最近使いませんが、鉱石がほしかったので。
 
 でも穴掘り、楽しかったです。
 
 今回私がかなり遅れてますが頑張りますね~
 また暇なときにでも着てくださいね。
2006-07-22 Sat 14:49 | URL | Y2つ #TIXpuh1.[ 編集]
今回は本当の意味で良作リプレイだと思います。

リプレイって変に忠実さに固着して、
味を殺してしまいがちになるものですが、
これくらい世界観を密に絡めて、設定をどんどん加え、
一つの作品にすると言うのが、本当でしょう。
とっても良かったです。

それぞれのキャラクターが活き活きしてきましたね。
特にラムーナは設定が深いだけに癖が強く、
表現法が難しいキャラクターだと思いますが、
今回で一気に、そして自然に馴染んだ様に思います。
本当にお疲れさまでした。楽しく読めました。

その点、簡単なのはロマンですね(笑)
彼のキャラクターは本当に特ですよ!
可愛らしい彼が一言ポツリとトゲを刺すだけで、
読者に強烈な印象を残すことが出来るんですから。
本当に素敵な設定だと思います。見事ですねっ。

”家族の絆”というちょっと照れくさい言葉が、
素直に感動できる本作は傑作だと思います。
らっこあらさんじゃないですが、僕もちょっと泣きそうでしたよ!
2006-09-27 Wed 18:35 | URL | Djinn #I9hX1OkI[ 編集]
 ラムーナは天然系であることが持ち味です。
 普通の踊り子キャラって、蓮っ葉で色気ムンムンが多いですが、彼女の場合は可愛い系で性格も優しいタイプにして見ました。
 でも、実は感受性が豊かです。
 繊細で小器用なところがあります。
 
 ロマンは今流行りの男性版ツンデレかも。
 謙虚な性格ですが、反面容赦の無いヒネクレ者。
 彼が毒を吐くシーンは、理不尽でない論理的な毒を吐くよう注意しています。
 
 シグルトたちはまさに家族です。
 そのノリがもう少し上手く表現できたらと思うのですが。
 
 また来てくださいね~
2006-09-30 Sat 12:35 | URL | Y2つ #TIXpuh1.[ 編集]

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