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PC1:シグルト

2017.11.14(15:19) 404

 冒険者の宿『小さき希望亭』。
 
 リューンの郊外に位置し、ちょっと髪の生え際が危ない頑固親父が経営する冒険者の宿である。
 
 宿の親父がいつものように食器を磨いていると、宿のドアにつけられた鈴がからん、と鳴った。
 
「いらっしゃい…宿をお探しかい?」
 
 さらりと聞いた親父を無表情に見つめた客は、年の頃17、8になる青年だった。
 
 眼光鋭く端整な顔立ち。
 やや痩せ過ぎにも思える体躯は、筋骨隆々ではないものの、服の合間からしなやかな逞しさを覗かせている。
 背丈は180cmを優に超えるが、この背丈の男にしては顔は小さ目で又下も長く、大男という印象は与えなかった。 
 やつれていなければ、リューンの街娘に騒がれそうな美丈夫である。
 
 どこか暗い雰囲気を放っていた。
 陰がある、とでも言おうか。
 その神秘的な青黒い瞳は、夜の淵のようにどこまでも深い。
 
 北方の出身であろうか、肌は黒い髪と瞳とは対照的にとても白く、その辺りの普通の町娘よりは、はるかに滑らかで美しい。
 
(こいつは、あいつが騒ぎそうだな…)
 
 ミーハーな自分の娘を思い出し、心の中でぼやく親父。
 そのどこか荒んだ空ろな雰囲気さえ、その男をさらに魅力的にしていた。
 
「ここが冒険者の宿、か…」
 
 青年は静かに息を吐いた。
 深い呼吸…何かを耐えるような、噛み締めるような吐息だった。
 
「小さき希望亭っていうんだ。看板にあっただろう?」
 
 親父が眉間に皺を寄せて言うと、青年は黙って軽く頷いて見せた。
 
「俺はシグルト。冒険者になろうと思っている」
 
 …偉大な龍殺しの英雄と同じ名前を持つ青年は、簡素にその名を名乗った。
 
 
「ああ、新人ってやつか…」
 
 親父は若干あきれたようにつぶやく。
 
 この手の若手冒険者見習いは後をたたずやってくる。
 一年も続けられずにほとんどが宿を去っていくのだが。
 
 親父は大げさに手を広げると、やれやれというように首をすくめた。
 
「おまえさん、なんでこんな世知辛い商売やろうと思ったんだい?
 甘くないぞ、冒険者って家業は」
 
 親父はいつもこの手の輩に、一応は同じ言葉をかける。
 適当な気持ちで失敗すれば死ぬ職業であり、失敗した冒険者が出れば宿の名も落ちる。
 まずは新人の意気込みを確認する…簡単な試験のようなものだった。
 
 青年は緊張した様子もなく、カウンターの椅子にゆっくりと腰を下ろす。
 何かを思うように、上を向き目を閉じてしばしの沈黙。
 やがて、目を開けると人事のように話し出した。
 
「…故郷でいろいろあって流れてきた。
 特に行く宛もないが、無駄にこの身を捨てることは、ある女への借りがあるからできない。
 
 正直、どんな仕事でもよかったんだけどな。
 
 坊主になるほど敬虔じゃないし、書庫で埃と巻物に埋もれる柄でもない。
 今俺にあるのは、多少は他人より褒められたことのあるこの腕っ節ぐらいだ。
 金も、家も…何もない。
 
 ただ、この身ひとつでできると聞いたから、やってみようと思った。
 そう…穀潰しになりたくなければ、傭兵か冒険者しかなかっただけだ。
 
 だが、傭兵は戦争屋で、ただの人殺しだろう。
 金を取ってまで、ひたすら戦争や殺しっていうのも気がめいるから、他にも選択肢のありそうな冒険者にした。
 
 …そんなものだな、理由なんて」
 
 淡々と語ったシグルトという青年は、安酒のラベルに視線を向け、またむっつりと黙り込んだ。
 
 親父は話の節々から、このシグルトという若者が只者ではないと感じ始めていた。
 
(…なんなんだこいつは?
 
 こんな若造のくせに、えらく達観してる。
 
 それにこの眼。
 相当な地獄を見なきゃ、こんな眼にはならねぇぞ。
 
 武器も持ってねぇのにこの雰囲気はどうだ。
 熟練の戦士の落ち着きじゃねぇか。
 
 見たことないぞ、こんな奴は…)
 
 難しい顔をして聞いている親父に、シグルトと名乗った若者は涼やかな双眸を向けた。
 
 親父の胸が好奇心に高鳴る。
 
 珍しいこと。
 それは冒険者にあって、生き残る悪運そのものになる。
 
 よく揶揄されるのだ。
 一流の冒険者は〈変わり者〉だと。
 
 内心ニヤリとした。
 
 この男が持つ、変な先入観や憧れで冒険者になるだけの…ただの若造とは違った、ふてぶてしさ。
 こういう人物の方が強くなるし、つらい仕事にも耐えられることを親父は長い経験から理解していた。
 
「そうか。じゃあ、宿帳に名前を書いてくれ」
 
 親父は手垢で汚れささくれた羊皮紙の束…冒険者の名簿を、カウンターにどっかと置いた。
 
 これが後に『小さき希望亭』最強の剣士と呼ばれるようになる冒険者シグルトと親父の出会いである。





 “風を纏う者”PyDS(カードワース・Pyダッシュスタンダード)リプレイ、第1話はいかがだったでしょうか。
 と言っても、追っかけの書き直し版なんですけど。

 リプレイRのデータが火災により焼けてしまったため、復活規格としてPyでカードワースダッシュのスタンダードスキンを作って、こいつでまとめて旧リプレイまとめちまおうという企画です。

 今回はキャラクターによっては型や性格まで変えて作り直しを行いました。
 シグルトは最初からスキル持ちで、旧データより若干強くなっています。

 
 最近は店シナリオで含蓄を垂れるようになった“風を纏う者”のリーダーです。
 
 …そうインチキして作った英雄型。元音は特殊な種というテスト用の特殊型作成シナリオに乗っかって、思いっきりヒロイックな冒険者を描いてみたい、みたいな欲目があったような。
 一般のリプレイは、特殊型メインで使うようなぶっ飛んだものはあまりなく、むしろキャラクターの素朴さや平凡さを焦点にしたものが多かった気がするのですが、「本来はへっぽこ扱いなシナリオでも、描き方でここまで違う」みたいなリプレイの可能性というか自由度を追及して、かなり冒険なことやってたなぁ、と今更ながらに思います。
 幸い旧リプレイは意外に好評で、シグルトたちの「かっこいい冒険者像」もたまに見せるちょっとしたギャップも含めて受け入れられていたように思います。

 あとは美形設定ですね。
 シグルトは超絶美形ですが、内面のギャップの表現のためにあえて美形にしました。
 本来は生まれるとき自分の美醜を選べる人がいないよう、美しい容貌は生まれ持った宿命の一つであり、逃げられない頚木としても設定してあるのです。絵師様の美麗絵に対するリスペクトや眼福のために美形にしたのもありますけどね。

 結構その血筋の姓で波乱万丈やってるリプレイの主な主人公です。
 
 クールに見えて実は熱いハートの持ち主。
 誠実でお人好し、武骨で硬派なストイックな青年です。
 彼の禁欲さは、無欲なのではなく、目的のために徹底的に欲を押し殺すタイプ。
 努力家で堅実かつシンプル。
 鈍いけど、変なところで勘が働きます。
 
 旧リプレイ初期でかなり初期設定が変わってしまった人物で、最初の第1話は矛盾が多かったんですね。
 Rの加筆修正で、より初期の頃のどんよりしたシグルトを表現しようとしました。
 
 シグルトという名前は北欧神話の英雄、龍殺しのシグルトからとったものです。
 シグルトの父親は神話マニアで、シグルトの妹もシグルーンというワルキューレ(戦乙女)の名前をつけてるぐらいです。
 折り合いの悪かった異母兄の名前はベーオウルフ(北欧ではシグルト並みに有名な英雄)ですし。
 
 シグルトの父親は、北方にある寒冷な国の一地方に小さな所領を持つ騎士で、一応は男爵様でした。
 母親は妾から正妻になった美しい夫人。
 高慢で貴族であることを鼻にかける異母兄と、同母の妹。
 
 シグルトの母親は没落した大貴族の元令嬢で、形としてはシグルトの父親に囲われてる愛人の時期を経て、正式に妻になったという形ですが…
 実はシグルトの父親が、「愛人として囲う」ことで、好色な貴族たちから、絶世の美女と謳われたシグルトの母親を守ろうとしたのが真相です。
 馬の暴走で森に振り落とされ、途方にくれていたシグルトの母親は、遠乗りに来たシグルトの父に助けられ、そうして2人は知り合いました。
 事業の失敗で、シグルトの母の両親は自殺してしまい、その罪でシグルトの母の家は取り潰し(シグルトの故国では自殺は大罪)、シグルトの母は放っておけばスケベな貴族や商人に奴隷同然として買われていく寸前でした。まぁこれらは過激な教会勢力の暗躍も裏にあったのですが。
 そこを、シグルトの父が、自分が愛人を囲うという不名誉を背負って助けたのです。(こういう形でしか、咎人の娘であるシグルトの母親を救う術はありませんでした。シグルトの母の友人であるアルフリーデが、巧みに貴族のプライドや利権の隙をつく策略としてシグルトの両親に知恵を付けました)
 シグルトの父親は誠実な堅物で、まったく手を出さなかったのですが、シグルトの母親の方から愛を打ち明けます。(助けられたときから好きだったわけでして)
 そのうち両想いになって、シグルトが生まれたわけです。
 
 そんなシグルトの母親は、開国の代、初代国王の弟の家から出た名門ワルト公爵家の血筋です。
 その血筋には、白エルフと呼ばれる上位エルフの族長の娘と亡国の王子との間に生まれた、オルテンシア姫という女傑の血も流れています。
 オルテンシア姫は優れた精霊術師で弓の名手、開国の王とその弟で王国の宰相となった俊才の母親です。
 
 シグルトの瞳は、ハーフエルフだったオルテンシア姫と同じ色で、彼が先祖の特徴を出だすのは、その素質のあらわれです。
 美形で肌が白くて優秀な能力も、それ故、というわけです。
 シグルトは後々、精霊術師としての素質も開花していきますが、それも先祖の影響です。
 
 成長したシグルトは槍使いの戦士になります。
 その実力は、(小国ではあるのですが)国の若手ナンバー1と称えられるほどでした。
 美しい恋人を得、順調な人生を歩んでいたシグルトですが、不幸に巻き込まれ、国を追放されます。
 その不幸ぶりは、前のリプレイでも紹介していますが、全身に重い傷痕と体調不良を抱え、失意を胸に西方に流れてきました。
 
 リプレイ2のオルフとは、後に同じ北方の出身として意気投合し、親友になります。
 
 母譲りの美貌に凛々しくて背が高いので女性にもてるのですが、鈍感で武骨とくれば色恋には当然朴念仁。
 女性の必死のアプローチを「変な行動」と率直に言ってヒンシュクを買うタイプです。

 この男の性格からいって、ハーレムルートはあり得ません。というか、女性の心理的に自分以外の女性にも愛を囁く恋多き男に、都合よく「私もその一人でいい」とか、そんな都合のいい女性の存在は考えられないような気がするんですよね。私が好きな女性に「あんたも私のハーレムの一員で」なんていわれたら、百年の恋も冷めて迷わず別れます。
 捧げた愛に応えてもらえずとも、自分がされたくないことだから「自分は浮気を絶対にしないし、愛するのは一人」というのがシグルトの恋愛観です。そういう気質だからこそ、彼の隣にいたいのだっていうのが異性に好意を持たれやすいことの根幹になるのだと私は思ってます。
 一夫多妻は本来は子孫を残すためであり、女性にとっては他のライバルとしのぎを削って自分の子を跡目に持っていくどろどろな権力闘争だったと思います。
 そう、モテモテはそいつが「誰か一人を愛する真心」を際立たせるエッセンス。波乱の中で貫くのが萌えるんじゃあ!などというのがY2つめの嗜好でございます。
 たった一人の女性に愛を貫く方が、そういう性根も含めて本当のもてる要素だと思うんですよ。
 まぁ、ハーレムな展開を否定はしません。そういうのもジャンルですからね。私は女性の愛情に胡坐描いて一人に絞れないリア充主人公はあまり描けないだけでして。

 子供好きで責任感は強く、面倒見がよくて、親しい女性には誕生日プレゼントとかまめにします。(妹と恋人に躾けられてます)

 「腕っ節が強いだけだ」と本人は言っていますが、知性は高いし、勇敢で根性があります。
 
 身分や種族の差でいわれのない迫害を受けるものが大嫌いで、弱いものを守ることを誓い、その信念を貫くことを名誉としています。これは自分がかつてやられて辛い思いをしたからと、妹や母をそういう悪意から守ってきたためで、ただの善意ではなくアイデンティティです。

 彼を描くひとつの形として、「顔より格好良い生き様」が表現したいなぁと思っています。
  
  
◇シグルト◇
 男性 大人 英雄型

秀麗     高貴の出   誠実
鈍感     勤勉     武骨
硬派     お人好し   名誉こそ命


器用度:5 敏捷度:6 知力:8
筋力:11 生命力:8 精神力:9

好戦性+1 社交性+2 勇猛性+4
正直性+2

◇所持スキル
【強打】
【堅牢】
 
 ダッシュスタンダード版の補正で精神力が上がり、若干好戦性も上がり、社交性も高くなりました。
 勇猛性はぶっちぎりで、そのためにダメージ系アクションカードが強くなっています。
 強過ぎと思わないでください…たくさんのソロシナリオを【癒身の法】無しの縛りでやらねばならず、実際の戦闘はヒリヒリしそうな予感。

 所持スキルは『風鎧う刃金の技』で早速テストを始めた初心技能です。
 イベントを起こすと2枚とも手に入るので探してみてくださいね。
 戦闘経験があるということで、スキルの紹介を狙って初期装備として持たせてみることにしました。
 リプレイで使いながら解説していこうと思っています。
 
 1話はこの辺りで。
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