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『シンバットの洞窟』

2018.06.14(14:11) 450

 ヒバリ村を出て二日目。
 “風を纏う者”一行はリューンに帰還し、『小さき希望亭』に戻る途中である。

 彼らが常宿とする『小さき希望亭』は、このあたりでも老舗の冒険者の宿だ。

 “風を纏う者”が『小さき希望亭』の専属になったのは、仲間のレベッカがこの宿の専属だったためだ。

 宿専属の冒険者には様々な特権があり、例を挙げるなら宿の共有基金の使用権や、宿の倉庫に持ちきれない道具を預かって貰う、などがある。
 専属同士では、情報のやりとりや、状況に応じてメンバーチェンジを行ったりもする。
 
 宿専属の冒険者でも、他の地方や他の冒険者の宿で仕事をすることは可能だ。
 しかし、宿を背負って立つ冒険者としてそれなりの責任が伴う。
 
 反面、属する冒険者の宿からの全面的なバックアップを受けられるし、宿の主人が身元引受人になってくれるので、有事には大きなメリットがある。
 一番大きな特権が仕事の優先的斡旋であった。
 
 宿の専属冒険者は、名指しで仕事を受けられる。
 宿が冒険者たちの住所代わりとなり、宿の店主が冒険者たちの留守の間、代わりに対応してくれるのだ。
 急ぎの仕事でなければ他のフリー冒険者に仕事が流れたりしないので、専属でない者たちよりは仕事を確保しやすくなるのである。

 『小さき希望亭』は表通りに面した街道から間もなく、都市郊外の入り口に建っていた。
 リューン全体から見るとやや中央寄りの西地区、あまり裕福ではない住人が住むリューンの南地区からもそれほど離れていない西南西付近だ。

 このあたりは住宅街から飲みに来る職人たちを相手にした酒場や、旅人を相手にする木賃宿とともに冒険者の宿も多数点在している。

 『小さき希望亭』ができた頃、その周辺は閑散とした田園地帯であったという。
 リューンは交易都市として発展してきたため、少しずつ広がった表通りに隣接するようになったという歴史がある。
 近郊には人情味のあるさっぱりとした下町気質が強く残っており、外からやって来る脛に傷を持った冒険者を暖かく迎え入れきた。

 『小さき希望亭』の主人、ギュスターヴ・オジエは元冒険者でもあり、強面だが、荒くれの冒険者をよくまとめていた。

 現在、『小さき希望亭』を拠点にする冒険者パーティは“風を纏う者”と、同期である“煌めく炎たち”の二チームだけ。
 最近ベテラン冒険者が相次いでパーティを解散してしまい、宿を去っていった。

 戦いに身を置き、身体を張る家業である以上、何時かは引退の時期が来る。

 シグルトたちが世話になったレストールとコッカルトは現在東方に遠征している。
 冒険者たちの中には、特定の宿の専属にはならずフリーの状態で各地を放浪する者も多い。
 この方が柵(しがらみ)が少ないからだ。

 ソロ活動をするベテラン冒険者が数人、『小さき希望亭』に席を置いているが、彼らはしばらく宿に帰還しておらず、【冒険者の宿連盟(以降連盟)】という組織から情報更新の勧告が来ていた。
 行方不明でない限りは二年に一度、冒険者の宿が所属する連盟に、宿を拠点とする冒険者の名簿を提出する義務があり、その期限が数週間後に迫っている。

 立地から、"風を纏う者"が常宿とする『小さき希望亭』はリューンの連盟西支会に所属していた。

 連盟は、冒険者の宿が集まって運営する互助組織だ。
 この組織が成立したのは、冒険者という職業の扱い難さが要因であった。

 冒険者は武辺者の集団である。
 食い詰め者の集まりでもあり、自由を愛する風潮から国や都市の政治が関わった堅苦しい組織への帰属を嫌う。
 身分や出生もほとんど問わず、偽名でも他国の元犯罪者でも、能力とやる気さえあれば職業的に受け入れてしまう傾向があった。

 このようなわけのわからない人間たちが集まって都市活動をするということは、国や都市で人間を管理する立場の者から見れば大変な【問題】だ。
 しかも多くが、他国からの移入者や、職を失って流れてくる放浪者、難民、亡命者、没落した貴族や騎士、傭兵、孤児、旅の武芸者、芸人、研究者、組織に馴染めないはぐれ者、一般的な社会人から逸脱した考えを持つ変人奇人の類などである。
 定住する都市の十人とは一線を画するのだ。

 そういった【不穏分子】を距離を置きつつ管理するためには、と考え出されたのが「【冒険者の宿】に管理役を申し付ける」という方策であり、宿同士が所属する冒険者の情報を交換し冒険者とお役所の間に入って緩衝役となり、軋轢が発生するのを防ぐ【冒険者の宿連盟】という組織であった。

 冒険者の宿経由で依頼を融通するギルドや、冒険者の活動を支援する団体などは各都市ごとに様々なものが存在するが、多くは冒険者の職業的性格の面からまとまりがない。

 都市側でも冒険者の勢力を管理しないと、都市内で起きた暴動などで脅威となる可能性があり、連盟を通じてリューンの自警団から所属する冒険者の人数や活動状況をチェックされる。
 冒険者の宿がある都市や街、あるいは近隣の町や村などが、ドラゴンなどの強大な怪物やモンスターの軍団に襲われた場合、冒険者は臨時の兵役あるいは傭兵として招集される可能性があり、その時は連盟から通達がある。
 
 冒険者が遠方に行く場合は、二年に一度の届け出に間に合わない可能性がある場合、〈冒険者としての活動を停止している〉と届けでる義務があり、活動停止した冒険者は連盟経由の依頼や特権の恩恵を受けられない。

 連盟のブラックリスト…冒険者の業界から除名された冒険者は連盟に属する宿から退去せねばならず、連盟に所属してない冒険者の宿は都市法の関係から営業権を取り上げられ、宿の営業停止や…最悪で取り壊しが行われる。
 無論もぐりの冒険者の宿も存在するのだが、そういう宿はまともではない犯罪者などの巣窟だ。

 非公認の冒険者を、都市に住む貴族や上流市民は人間扱いしない。
 野良犬や社会の屑と呼ばれ、まるで被差別賎民のように扱われる。
 そういう連中の扱いが転じて、冒険者全体を差別する輩もいるのである。

 冒険者の宿に属さないフリーの冒険者は、都市活動のために連盟の公認登録をしておく必要がある。
 これは都市の外から来て冒険者を名乗ると、街門の衛兵に手続きを取らされるごく一般的な処置であり、あるいは宿の専属をやめて活動する場合にも必要だ。

 都市で活動するということは、住人として税を収め、その都市の人間たちと付き合っていくということであり、そういう事務処理ができない冒険者の代わりに手続きを行ってくれるのが冒険者の宿であり連盟である。

 たとえ冒険者であっても宿を住所として連盟に所属しない者は、都市や国にとどまる期間が定められ、期間が過ぎると市外・国外に退去せねばならない。
 こうしないと、都市が冒険者を名乗る難民で溢れてしまう可能性があるのだ。

 貧民街や犯罪組織に隠れて生活するといった抜け道はあるが、税金も払わず好き勝手している者は公共の権利を持てない。
 最低限の権利…生きる権利すら剥奪されるのである。
 すなわち、暴行されても犯されても殺されても、法に訴えることすら許されない。

 この時代、階級制度は当たり前にあり、術との人間に対して人権を尊重するという考えは希薄である。
 封建制度のある国に属したリューンは、交易都市ということで様々な民族が入り乱れはするものの、こういった社会的歪はあちこちに存在していた。

 連盟の利点は一度【冒険者の宿】を経由し、その宿が連盟という組織を組むことで「冒険者の求める自由」を〈直接縛らない配慮〉がされている。
 問題の多い出身の冒険者でも、宿というホームがあって、一応の住所を持つことができる。
 冒険者の宿帳はいわば冒険者たちの戸籍であり、宿は組合、連盟は自治会のようなものであった。


「お前たちが、“風を纏う者”か?」

 “風を纏う者”の五人がいつものルートで宿に向かおうとしていると、それを遮るものがあった。
 恰幅の良い商人風の男で、護衛らしき人物を二人連れている。
 豚面で目付きが嫌らしい、典型的な悪人顔である。

「そうだが、あなたは何者だ?」

 先に名乗らない無礼に少しムッとしつつ、シグルトが誰何する。

「私は、冒険者の宿『金色の栄光亭』の主をしているヤニック・ブーシャルドンだ。
 現在の連盟西支会の支会長でもある。

 私を知らんとは、なっておらんな」

 上から目線で語るヤニック。

 レベッカの眼が剣呑な光を宿す。
 ラムーナ以外の面子も表情を硬化させている。
 
「それは失礼。
 俺はシグルト。
 “風を纏う者”の代表者をしている。

 何分、ひと月以上リューンを離れていたので、支会長の交代があったとは知らなかった。

 あなたも冒険者に関わる立場ならば、こういった遠征から戻った冒険者が拠点とする宿に戻る前は、この手の情報をまだ知らないことも御存じだろう?
 勤労の冒険者とは絶えず〈冒険に出ている〉ということなのだから」

 シグルトはまず自分の立場を名乗って一応の礼儀は尽くし、その後にヤニックの配慮の無さをバッサリ切って捨てた。
 ロマンがその痛快さに思わずニンマリする。

「ふん、生意気な。
 まぁいい。
 今回はお前たちに良い話を持ってきた。

 お前たちは、私の『金色の栄光亭』に移籍するのだ。
 すぐに手続きをするから、私に従え」

 そのぶしつけさな言葉に“風を纏う者”の一行は全員失望をあらわにした。
 「時間の無駄だ」と。

「断る。

 冒険者の宿の移籍は、宿の店主を通じて行われるのがこの業界の伝統だ。
 たとえ『小さき希望亭』が閉店していて店主が亡くなっていても、一度宿の場所に帰らずにそのようなことには従えない」

 シグルトはきっぱりと断ると、これ以上聞く価値も無いとばかりに去ろうとした。

「ふん、少し名が知られればこの様か。

 私の『金色の栄光亭』は、バラチエ男爵家の寵厚く、その御子息が所属している。
 熟練冒険者として名高い“明けの先駆者”や、英傑と言われる“閃傑”レアンドルが所属し、他にも数多くの有力な冒険者が集まっているのだ。

 その教導を受ける栄誉を与えてやるというのに…

 古臭い冒険者の仁義など、新たな秩序の前にはゴミのような物。
 お前たち冒険者は、管理する我々に従わなければ野良犬同然だということを忘れているようだ。

 オジエなどと言う冒険者くずれの経営する、屋根の傾きかかった宿にこだわるなど、愚かなことだぞ?
 お前たちに選択肢は無い。

 もう一度言う、私に従え!」

 シグルトの行く手を遮るように、不本意そうな表情をしたヤニックの護衛が一人立ち塞がる。
 命令されてしかたなく従っている様子だった。
 
 シグルトは眉間にしわを寄せて目を一度閉じ、上を向いて一呼吸置いた。
 そしてヤニックに向いて、かっと目を見開く。

「とっとと失せろ、ブー何とか。
 俺たちは、おつむの緩んだオークの出来損ないからたわごとを聞く気はない。

 連盟は冒険者を支配する組織ではない。
 ただの互助組織だ。
 もし連盟支会の名で我々の自由を縛るというなら、俺は連盟の本部に行って、リューンの都市法からこのことを糺し抗議する。
 その時は、貴様が職権乱用の罪で裁かれて宿が潰れ、自慢のお偉い冒険者たちはその多くが路頭に迷うだろう。

 バラチエ男爵家の威をかさに着て脅しても無駄だ。
 この場に貴族家の者がおらず、与かる紋章も見せずに威を騙るのは、貴族法に違反する詐称行為だぞ?
 軽々しく無断で貴族の名を恐喝に使うのは、斬首に値する愚行と知れ。

 話は終わりだ。
 そこをどけ…通行者の迷惑になる」

 普段罵詈雑言の類はあまり口にしないシグルトであるが、この時の舌鋒は鋭利だった。
 その迫力と目力に護衛は思わず後ずさってしまう。

 本来貴族の関係者は、その貴族当人か親族でない限りシグルトの言うように紋章や証書を示して名乗るもので、単に貴族と仲良くしている程度の者が勝手に庇護されていると思い込み名を騙るのは明確な越権であり、貴族の名を軽んじる侮辱行為である。
 貴族の初歩も知らないと知り、シグルトはわざと名を覚えない形でホームである『小さき希望亭』や冒険者を蔑んだヤニックを侮辱し返し、切って捨てた。
 今回のように虚栄心の強い人間にやり返す時、一番効く手である。

 わなわなと震えるヤニックの横を、シグルトは颯爽と通り過ぎる。
 その後ろからレベッカが続き、ヤニックの耳元で呟く。

「豚ちゃん、オイタが過ぎたわね。

 言っておくけど、私はリューンの裏社会でとっても偉い“片眼鏡”とは仲良しなの。
 そっち経由で嫌がらせとかは無駄だからね?

 あんたが昔、よその花街で強引な女衒やって荒稼ぎした亡八の屑だってことも知ってるわ。
 ありえない借金の利子で、人生台無しにされて恨んでる女の子やその肉親、多いのよぅ?

 朝になったら〈喉笛から真っ赤な水を吹いてた〉、なんてなりたくないでしょ?

 分かったんなら、私たちの前では目を閉じて震えながら息も止めてな。
 吐くもんが全部臭せぇんだよ、ブー何とか」

 一度ぽんとヤニックの肩を叩き、通り過ぎた後に手入れ用のぼろきれを取り出して手を拭き、投げ捨てる。

 口元は優雅に微笑みながら、目は全く笑っていなかった。
 黒い感情を出した時、“風を纏う者”で最も怖いのは彼女である。

「…おじさん、馬鹿でしょ?

 僕はこれでもそれなりに地位のある導師についた魔術師見習いだから、僕の道を閉ざすなら賢者の塔に訴えて抗議するよ?
 多分今みたいなことをしてたら、冒険者やってる魔術師の大半を敵に回すんじゃないかな?
 賢者たちに睨まれたら、連盟の支会長なんて、鼻息で貧民街のどぶまで吹き飛ばされちゃうよ。

 わかったなら、邪魔しないでね…ブーなんとかさん」

 こういう時にまったく遠慮しないロマンである。
 その上、レベッカの捨てたぼろきれをわざと両足で交互に踏みにじって行った。

「う~んと、ブーさんだっけ?
 ええと、〈冒険者の自由を縛るのは、オーガーに平和を説くようなもの〉なんだって。

 シグルトたちを怒らせると怖いのよ。
 この間だって、でっかいハゲの巨人が怒って追いかけてきても【くぅる】だったし。
 もうこういう話しないでね。

 じゃ、ばいば~い」

 ラムーナはなんとなく仲間に合わせた。
 「えいっ」と、しっかりぼろきれを踏んづけて行くあたり、容赦はなかったが。

「…わしは、聖海教会にて司祭職を賜っておるスピッキオじゃ。

 おぬし、冒険者が下級貴族や騎士の継嗣に成れぬ子息がよく就く稼業だと、知ってはおるんじゃろう?
 商人崩れや、魔術師、わしのような聖職にありながら布教伝道と救済を志して野に下った者が多数混じっておることもの。

 今のようなことをやっておったら、その多くを敵に回すじゃろう。
 連盟とはそんな一癖も二癖もある連中と世間の橋渡しをするためにできた組織じゃ。
 幹部たる者が職務に必要な礼節を損なって、冒険者たちが連盟の指示を無視するようになったら、都市騒乱の罪で文字通り首がとぶぞぃ。

 おぬしの顔と役職は覚えた。
 決してこれ以上の悪さをするんじゃないぞ、ブーなんとかよ」

 説教しつつ、さらりと名前はまともに呼ばないスピッキオである。
 商人の子としてヤニックの無礼は目に余るし、聖職者である自分が服従するのは神の御意思にのみ…である。
 教会側から多数の人材が冒険者となっている点からも、教会勢力を完全に無視したヤニックの発言は許し難い。

 加えるなら、教会の司祭として名を出すということは、「冒険者とともに救済活動することを容認している教会の意思を軽んじるのか?」ということ。

 長い話でだいぶ仲間と離れてしまったので、慌てて後を追った。
 そこに狙ったように、風で舞ってきたぼろきれを、本人は知らないまま踏んづけて行く。
 精霊トリアムールの悪戯であろうか。

 扱いが酷かったそれは、スピッキオの体重に耐えられず、ついにびりっと破けた。

「おのれ、おのれぇっ!
 
 私はヤニック・ブーシャルドンだぁ~!!!」

 キレたブー何とかが地団太を踏んで叫ぶ声が聞こえたが、周囲で様子を見ていた者たちは護衛も含めて、〈溜飲が下がった〉とばかりに完全な無視を決め込むのだった。


「あの男の詳細を知っているか?」

 ヤニックの姿が見えなくなった後、シグルトは歩きながらレベッカに問うた。

「もちろん。
 リューンの連盟に入ってる冒険者の宿についての情報は、全部あたしの頭の中に入ってるわ。

 あの糞豚野郎は、三年前ぐらいに西地区の一等地に冒険者の宿『金色の栄光亭』を建てた。
 そのやり方が地上げ同然だったんで商工会ともめたんだけど、リューン市議会のお偉いさんや貴族にたんまり貢いで、示談金を山ほど払ってこの件は治めたの。

 リューンの南にある色町で娼婦になる女を探して売り捌く女衒の元締めが、あいつの父親なのよ。
 青年期は実家の稼業で随分荒稼ぎしてたみたいね。

 地元では美人で有名だった騎士の娘を娼婦にしようと企んで罠にはめ自殺させちゃったもんだから、その父親と婚約者に恨まれて殺されかけたみたい。
 冒険者の宿の店主になったのは、地元にい辛くなったんでしょうね。

 で、過去に稼いだ金に物を言わせて、新人で有力な都市外の冒険者を集めて、そいつらを中心に宿の名声を上げてきたわけ。
 所属してるパーティは、私がリューンを出る前は十二あって、登録してる冒険者は五十人を越えてたわ。
 入れ替わりが多いから今の規模は分からないんだけど。
 二軍みたいなのがあって、『金色の栄光亭』の本館に籍を置けるのは一流だけみたい。

 古株の“閃傑”レアンドルは正統派の剣士で結構な実力派みたいね。
 酒癖・女癖が悪いのと、よく暴力沙汰を起こすから嫌われ者でパーティには所属してない、所謂シングルよ。
 たぶん私たちが束でかかっても、素面の時に勝つのは厳しめね。
 悔しいことに 魔法の武具持ちで、レストールやコッカルトと同格ぐらい。
 才能もあるわ。
 この間のトロールに再生力と岩みたいな硬さが無ければ、いい勝負ができるんじゃないかしら?

 “明けの先駆者”は、アレトゥーザの一流冒険者“海風を薙ぐ者達”と多分同格かちょっと劣るぐらいね。
 昔キーレで飛龍を落としたとか、オーガを倒したって武勇譚があるわ。
 ま、今はロートルの集まりね…みんな五十近い爺ばかりだし。
 一回引退したんだけど、過去の栄光が忘れられなくて再結成したそうよ。

 で、一番厄介なのが…あいつが名を出さなかった“緋の聖騎士”ジスラン。
 まぎれもなく天才よ。
 秘蹟が使えて剣術の才能もある【二重能力者】。
 聖北教会の厚い信者で、父親が御堂騎士団の騎士なの。爺様が子爵様ね。
 普段は品行方正で善良らしいけど、精霊術師や亜人は人間扱いしないっていう差別主義者。
 気障でなまじ美形だから女にもてるのよねぇ…あんたと比べたらその辺の美形が全部凡人になるんだけどさ。

 構成員の特徴としては、仁義知らずの吹き溜まりよ。
 引き抜きに平気で応じる奴とか、実力はあっても素行に問題があって一回連盟のブラックリストに載った奴とかばっかり。
 〈更生のためだ〉とか言って、あの豚がブラックリストから無理やり削除したり、〈支度金〉なんてこと言って実質は金に困ってる冒険者買い取るとか。
 他には後輩冒険者を丁稚扱いで荷物持ちや召使い扱いにしてるわ。

 話が違うって勝手に宿を出た連中は、連盟にブラックリスト入りされた上に、手や足を壊される【仕打ち】をがあるの。
 穏便に宿の所属から抜けるには、高い違約金を払わせるそうよ。

 今のところ、他の宿の冒険者には暴力沙汰を仕掛けていないわ。
 さすがにそれは連盟の規則で禁じられてるからね。

 でも、あの豚は〈報復のために実力行使は必要〉とか言って、規則の改訂をしようとしているわ。
 そんな法案、都市で冒険者の抗争を活発化させるだけだから、たぶん連盟の総長や他の支会長が許さないでしょうね。
 
 私たちへの勧誘は、さしずめ連盟総長を目指す上での兵隊集めってところかしら?」

 よくぞそこまで調べたという情報量である。
 レベッカ曰く「リューンにとって不利益になる存在」として、盗賊ギルドに監視されている人間らしい。

「とりあえず、次の会談で今日あったことを盗賊ギルドに伝えておくわ。

 ちょっと前に“緋の聖騎士”が盗賊狩りやろうとして抗争になりかけたから、盗賊ギルドの連中は目の敵にしてるのよ。
 あれだけぼこぼこに論破してやったのは、多分もうギルドに伝わってるでしょうね。

 シグルト、あんたしばらくは盗賊たちの英雄よ?

 【ブー何とか】…プフッ、やばい、思い出した。
 クフフッ、笑いこらえるの大変だったのよ。

 見たでしょ、【おつむの緩んだオークの出来損ない】って呼ばれた時の顔!
 一瞬あっけにとられて、ゆでだこみたいに真っ赤になって…鼻の穴の広がること。

 あんた、頭に来てる時に、よくもあんな絶妙な呼び方ができたわね。

 いかん、苦し…横腹よじれる!」

 近くにあった商店の壁に手をついて、レベッカは笑いまくった。

「ふむ、あいつを二つ名で現わすなら、“輝く地団太”ブー何某、か。

 あれは絶対【かつら】だ。
 横目で見たが、激しい足踏みで明らかにずれかかっていた…
 あの時吹いた風で落ちていたら、俺も平静ではいられなかっただろう。

 秘めたるものは、宿の名前に相応しい眩さかもしれん。
 黄金ではなく、【真っ赤な栄光】の方が相応しいとも思うんだが。

 だが俺たちは〈頭が寂しい〉とは間違っても言えない。
 それは隠しもしない『小さき希望亭』の親父さんに対して、あまりに失礼だ。

 …このことは親父さんには内緒だぞ?」

 片目を軽く閉じ、真顔でシグルトが冗談を言うと、ロマンとラムーナが同時に噴き出した。
 スピッキオは後ろを向いて、何かを耐えるように肩を震わせている。
 レベッカは会話ができないほどツボにはまって、笑い転げていた。

 普段生真面目なシグルトが、まさか諧謔を弄ぶとは。

 何故か…近くから同じように、笑いに喘ぐ声が続いた。


 『小さき希望亭』に到着すると、"風を纏う者"はヤニックのことを真っ先に報告した。

 宿の親父はその話を苦虫を噛み潰したように聞いていたが、シグルトが啖呵をきったあたりから鼻の穴が膨らみはじめ、スピッキオの説教のあたりで涙を流すほど笑い転げた。
 そして、勝手なことをしてすまなかったと謝るシグルトに親指を突き出して、一言「よくやった!」と褒めてくれた。
 無論、“輝く地団太”云々は、"風を纏う者"全員が墓の中までもっていく秘密扱いである。

「あの野郎は西地区の鼻つまみ者でな。

 他の冒険者の宿は揃って抗議したんだが、役所のお偉いさんが賄賂を弾んだあいつを勝手に支会長にしちまった。
 一週間前のことだ。

 今の連盟総長は俺の古い知り合いなんだが…
 他の連盟幹部の許可が無い人事だったもんだから、完全な会則違反でな。
 総長のブチ切れっぷりは、市長の机をひっくり返す勢いだったそうだぜ。

 支会長って役職は、市議会で推薦はできても、対応した地区にある連盟に属した冒険者の宿の店主から、過半数から承認が必要なんだ。
 当然あんな奴にそれだけの承認なんてあるわけがない。

 奴の息がかかってないリューンの冒険者の宿が揃ってまとめた意見書で、総長がついさっき市議会と市長ををつるし上げたところでな。
 ヤニックの子飼いの宿以外が満場一致で、別の西区支会長を立てるってことで話がまとまってる。
 あの豚野郎には明日一で、支会長解任の辞令が届くだろうぜ。

 本当は連盟から排除したいんだが、お貴族様が関わってるもんだから早急にってわけにはいかないんだよ。

 『金色の栄光亭』に関しては、問題児ばかりでもそれなりに優秀な奴らがいるから、とりあえず様子見に決まった。
 とりあえず野郎がちょっかいかけてこないか今のところ見通しが立たないから、しばらくは用心しておけ。
 そんなことをしたら、必ず奴の店を潰すけどな。

 大丈夫だ…シグルトの啖呵の話を総長にすれば、ククッ、悪いようにはならない」

 親父が請け負ったことで、この話題は終わりになった。

 尚、余談であるが…
 その日の夜、『小さき希望亭』の"風を纏う者"宛で複数の酒樽が届いた。

 添えられたメッセージは一様に、「『真っ赤な栄光亭』の"輝く地団太"に乾杯!」とあった。

 それを読んだレベッカが笑い過ぎて酒を飲めない事態になったのだが、腹筋を痙攣させて息も絶え絶えな彼女に癒しの秘蹟まで使ったスピッキオが「これは仕方あるまいの」と肩を震わせ、ロマンもラムーナもしばらく飲食物が喉を通らなかった。

 シグルトは一人、「拙いな…」と眉間にしわを寄せていたが。


「オークの討伐か。
 随分と冒険者らしい荒事が回って来たな」

 次の日。
 久しぶりにゆっくりと睡眠をとったシグルトは、ラムーナを相手に朝の鍛錬を済ませると、起きてきた仲間たちと朝食をとっていた。
 そこに、連盟経由で"風を纏う者"への【指名依頼】だと、羊皮紙に書かれた依頼書が届けられた。

 妖魔討伐の依頼は中堅として認められた冒険者に回ってくることが多い。
 危険度もさることながら、妖魔の集団を相手とする戦術を立てられ、対処可能な技量が求められるのだ。

 依頼に失敗すれば妖魔側からの復讐もあり得るし、依頼中に妖魔に捕らえられればなぶり殺しにされる。
 
「こういうのを中心にやっている“煌めく炎たち”の連中に回さなくてよかったのか?

 討伐ものは、火力のあるあいつ等の方が得意だと思うんだが」
 
 依頼内容を確認しながら、シグルトが宿の主人に確認する。
 
 “煌めく炎たち”は、戦士マルスを中心とする冒険者たちだ。
 サブリーダー的な存在のゼナは性格が過激で難はあるものの、炎の精霊術師であり戦士としての技量も持つ。
 回復術を得意とする尼僧のレシールもいて、一番大切な治療に関しては及第点。。
 攻撃魔法が得意な魔術師のカロックがおり、探索力に長じた盗賊のジェフという男もいる。

 彼らは総合的に戦闘力が高く、特に炎の精霊術師であるゼナの攻撃能力は極めて高い。
 命懸けの危険な依頼が多い討伐依頼ばかりを受け、高い達成率を誇っていた。
 
 シグルトたちと同期の冒険者であり、近隣の若手では“風を纏う者”と実力を二分するとさえ言われている。
 
 彼らの実力を認めているシグルトは、宿の親父に問うた。
 “風を纏う者”に依頼するというのは、どういう意味があるのか、と。
 
 宿の親父は「確かにあいつらに頼むのが普通だろうが…」と前置いて、話を続けた。
 
「場所は隣町になるんだが、依頼のオークが占拠した洞窟がフォーチュン=ベル方面に向かう街道の近くにあるんだ。
 
 お前たちは、あっちでも討伐依頼をこなしてただろう?
 向こうでの活躍を噂に聞いてたっ、てわけで依頼人の覚えがよくてな。
 
 それに、“煌めく炎たち”の連中は戦闘力こそ高いが、罠の解除や慎重さはまだ未熟だ。。
 元傭兵のマルスは戦術的なセンスはあるんだが、シグルトに比べるといささか力圧しの傾向があってなぁ。
 血の気の多い猪女がいるし、オーク相手には時期尚早だろう。
 
 今回の依頼は、場所が半ば遺跡で、探索能力も必要になりそうなんだ。 
 この宿でレベッカ以上の探索能力を持ってる奴はいないだろ。
 
 あと、この仕事はちょっとばかり因縁があってな。
 一回同じような依頼が、他の宿で出されて、そこそこの冒険者どもが出張った後なんだ。
 その時討伐し損ねたオークが逃げて、戻って、また増えたらしい。
 
 高い金払って仕事をして貰ったのにまたオークに住み着かれちまったから、依頼人にとっちゃ、より完璧にやってくれる奴が良いってことだ。
 だから宿としても、仕事を確実にやってくれるお前たちを推薦したってわけだ。
 
 事前に聞いた情報では、重武装したオークの姿を見たって話もある。
 おそらくは上位種のロードがいるんだろう。
 きっと何かでその洞窟を離れていたロードが、帰ってきたんだな。

 ただのオークどもならたいしたことはないが、ロード種がいるとなれば話は別だ。
 優れたリーダーのいるオークたちは、結束力と戦闘力が段違いになる。
 実際、見張りは二体もいて隙が無く、偶然通りかかった冒険者たちに頼んだところ、太刀打ち出来そうに無かったらしい。
 
 そこで戦術に明るいシグルトの名前が出たってわけだ。
 
 お前の巧みな戦術は、最初にお前たちがやったゴブリン退治の頃から語り草なんだよ」
 
 親父の高い評価に、レベッカがウインクして、「こういう評価には応えなくちゃね」と微笑んだ。
 
「…話は分かった。
 
 だが、馬鹿力のオークどもが相手となれば、ゴブリンを相手にするのとはわけが違う。
 やる以上は、かなりの危険を覚悟する必要があるが、皆構わないか?」
 
 シグルトは、いつものように仲間たちに問うた。
 彼はせっぱ詰まった状態でもない限り、仲間の意見を出来るだけ確認するようにしている。
 
 反対意見は特に無かった。
 此処まで期待されているのに、断るとなれば、名折れとなるからだ。
 
 シグルトはハーティの総意を確認し終えると、すぐにこの依頼に必要な契約を済ませた。
 
「まだ昼前だから、今から立てば今日中に依頼が遂行出来るな。
 
 旅の準備は万端か?」
 
 契約書にサインし終えてシグルトが問うと、抜かり無しとばかりにレベッカが道具の入った袋を持ち上げた。
 
「ではすぐに立とう。
 
 貪欲で気性の荒いオークどものこと。
 依頼の達成が遅くなるほど被害も出る…討伐ものの依頼は、迅速さが大切だ。
 
 昼食は軽く、道中で済ませよう。
 あまり腹が満たされていない方が、仕事は出来る。
 美味いものは、依頼を終えてから食えばいい

 飲む酒は、何故かしばらく困りそうにないしな。
 親父さん、“煌めく炎たち”にマルス経由で昨日の酒を一樽やっておいてくれ。
 指名依頼を貰った前祝だとでも言ってもらえば、あいつらへの不義理を雪ぐ誠意にもなるだろう。
 
 飲む酒があれば、ゼナがごねることも無いはずだ」
 
 あくまでも荒事は“煌めく炎たち”の領分として彼らを立てる。
 この義理堅さがあるからこそ、【瞬間湯沸かし】とか【暴走する炎】と呼ばれる短気なゼナも、シグルトに対してだけは悪意を見せない。
 レベッカと口喧嘩をしていても、シグルトが間に入れば借りてきた猫のように黙るのだ。

 才能がありプライドの高いゼナは、"風を纏う者"が自分たちを飛び越えて討伐の指名依頼を受けたと知れば、必ず機嫌が悪くなるだろう。
 その時の親父やマルスのフォローにもなると、シグルトは細かな気遣いを見せる。

「お前がそれをできるから、冒険者を始めて半年もたってないのに連盟経由で指名を貰えるんだ。
 
 昨晩報告してくれたヒバリ村の一件も、お前たちが商業ギルドで為替のやり取りをすれば、すぐ広まるだろう。
 トロールとやりあって生き残った、しかもその石像が残ってて魔剣持って帰ったなんて話、ちょっとした英雄譚だぞ?

 近いうちに目聡い吟遊詩人どもに追っかけやられて、ゼナとレシールあたりにやっかまれるから覚悟しとけ」

 ニヤリと笑うと親父は、“煌めく炎たち”のフォローを請け負った。

 シグルトは「名が売れるのは冒険者として臨むところだが…話が大きくなり過ぎだ」と困った顔をすると、きびきびと仲間に指示を出し、得物の具合を確認し始めた。
 
 
 数時間後の夕刻近く、シグルトたちは件のオークたちが占拠したという、『山の洞窟』の前に来ていた。
 
 洞窟には見張りのオークが三体。
 そのうち二体は洞窟前方、もう一体は洞窟の入り口から少し上にある岩棚に陣取っていた。
 
 “風を纏う者”は、一端洞窟の風上にならないよう戻って距離を取り、どうするか相談を始める。
 
「…厄介ねぇ。
 
 下手に正面の連中を倒せば、後ろの奴にすぐにばれるでしょう。
 しかも二匹もいるから、忍び寄って暗殺ってわけにもいかないし。
 
 かといって、後ろの奴をロマンの魔術でちまちま攻撃していたらばれるかもしれない。
 やっぱり、岩棚の奴をロマンの魔術で寝かせて、続けて正面でのんきに話してる2匹も眠らせるのが妥当かしら?
 
 飛び道具を持っていないのが痛いわ。
 あれば、同時に仕留める方法とか考えられるのに」
 
 連続で魔術を使うという案に、「疲れそうだね」とロマンが溜息を吐く。
 魔術の使用回数には限りがあるのだ。
 
 そこでシグルトが、話に割って入った。
 
「レベッカのやり方は堅実だが…ロマンの魔術は今後にもっと必要になるはずだ。
 ここは魔力を温存しておくべきだろう。
 
 眠りの魔術は、オークのような群れを作る連中に絶大な効果がある。
 中にいる敵の数が分からない以上、切り札は多い方がいい。
 
 岩棚の一匹は俺の精霊術で何とかする。
 戦闘中は制御が難しいんだが、ゆっくりやれば狙うこともできるだろう。

 ロマンは正面の二匹を眠らせてくれ」
 
 シグルトの言葉に、一同は「あれか」と納得顔になった。
 
「あの精霊術があったの。

 聖海の秘蹟にも【魔法の矢】に似たものがあって、その登場が異教徒との争いを終わらせたほどじゃが…遠距離の攻撃手段はもう少し用意しておいた方がよいかもしれんの」
 
 スピッキオがちらりとレベッカを見て、「だいぶ稼いだはずじゃが」と呟いた。

「そうね。
 延び延びになってたけど、各自の装備や技能向上はやっておいた方がいいでしょう。

 この話は帰ってから、ゆっくりね」

 一行は話を止めると、行動に移る。

 シグルトが虚空にすっと手を差し伸べた。
 それに応えるかのように、ふわりと風が渦巻く。
 彼が虚空に「〈トリアムール〉」と呟くと、彼を包むように一陣の風が吹いた。
 
 
 そのオークは、見張りという貧乏クジを引いたことに不機嫌だった。
 
 もとより真面目にやる気などまるで無い。
 この岩棚からなら周囲を一望可能だし、見張りは他に二匹もいるからだ。
 
 下の連中も暇なので、のんびりと談笑しているではないか。
 
 「〈王〉は神経質過ぎるのだ」、とぼやき、そのオークは下品に鼻を鳴らした。
 
 前に人間たちの襲撃があっが、その時ちょうど〈王〉が他の〈王〉に逢うために巣を留守にしていた。
 〈王〉とその護衛たちがいなかったせいでまとまりの無かったオークたちは、その半数が殺された。
 
 それは、〈王〉がいなかったから仕方なかったのだ。
 今は賢く強い〈王〉がいる。
 
 そしてこの巣には、〈王〉が様々な仕掛けをしてある。
 強欲な人間ならコロリと引っかかるように。
 だから大丈夫だ。
 
 そう思ってオークが下を見下ろすと、下の二匹は呑気にあくびをしている。
 …寄り添って仲良く眠るつもりのようだ。
 
 オークは、「さぼるな」と声をかけようとする。

 …その時不意に、強い風が吹き付けて来た。
 
「…?」
 
 自分の声が出ないことに気付き、オークは目を見開いた。
 だらだらとどす黒いものが、自分の喉からこぼれ出て行くく。
 
「…ヵ…ヒュッゥ―」
 
 それが自分の血ではないかと気付いた時、オークの視界は濁り始めていた。
 
 何故だろう?
 とても眠い。
 
 遠くで人間の牡が立っていた。
 その人間が、自分に向かって手をかざしている。
 
 下の連中に知らせなくては…
 
 続きを考える前に、オークは喉からの失血によって目覚めることのない眠りについた。
 
 
「―――すっご~いっ!!!」
 
 鮮やかに岩棚のオークを仕留めたシグルトを見て、ラムーナがこっそり驚嘆の声を上げた。
 
 シグルトが使ったのは、精霊〈トリアムール〉の力を用いた風の斬撃である。
 敵が気付いておらず油断していたため、正確に遠距離から喉を切り裂いたのだ。
 
 同時にロマンが放った呪文によって眠りについた二体の見張りに止めを刺すと、レベッカが戻って来た。
 
「…この手の術が便利なものだとは聞いていたけど、これじゃ飛び道具がお役御免になるわよ。
 
 使いどころを考えれば、奇襲にはもってこいだわ」
 
 感心するレベッカの言葉に、誇らしそうに強く風が吹いた。
 シグルトの風の精霊〈トリアムール〉が自慢でもしているのだろう。
 
 シグルトは、ふんぞり返った〈トリアムール〉を想像し、戦いの緊張に強ばっていた頬を少しだけ緩めていた。
 
「…この術そのものは数回の使用が限度だ。
 一度の術で、二回風を起こして攻撃が出来るが、乱戦時に狙いを定めるには制御が難しい。
 剣を振るいながら準備するのは、おそらくほとんど無理だと思う。
 俺は専業の精霊術師ではないからな。
 
 今俺に宿っている風の力はあと一回解放できるから、このまま維持して、出会い頭の敵に対する即応攻撃にするつもりだ。
 
 斃したのは見張りだけだから、まだ敵の本体は他にいる。
 中の連中が、この異常に気付く前に攻めるぞ。
 
 油断せず、進むとしよう」
 
 はしゃぐ仲間を軽くいさめ、話を終わらせるシグルト。
 そのまますぐに洞窟進入後の手順を確認する。 
 
「まず俺とレベッカが先頭だ。
 レベッカは罠と敵の気配に注意してくれ。
 俺が敵と遭遇した時には壁になるから、無理せず後衛に下がるんだ。
 
 ロマンは…可能なら小出しでいい、前衛の後ろから魔術で援護を。
 ロード種との一戦までは、可能な限り魔力は温存するんだ。
 特に【眠りの雲】は四体以上の敵と遭遇しない限り、無駄撃ちしないこと。
 
 スピッキオとラムーナはその後ろで、後続の敵に備えつつ付いて来い。
 
 スピッキオが癒しと【聖別の法】による援護を頼む。
 防御の秘蹟も小出しでいい。
 俺の方は自前の体術で補うから、他の仲間優先でな。
 ロード種との戦いまで、治癒の秘蹟は出来るだけ温存する。
 無理はいけないが、使い過ぎにならないよう気を付けてくれ
 
 ラムーナはロマンとスピッキオを護るように、敵と遭遇したなら体勢を崩すように動く。
 前に型合わせをした時のことを思い出して、新しい技が必要なら臨機応変に織り交ぜてくれ。
 お前の剣は俺たちの装備の中で一番良いものだ。
 焦らず盾で身を守りながら、狭い洞窟で武器を振り回さないよう突きを主体で攻めるといい。
 いざ戦いになったら、レベッカと組んで敵を翻弄する形で動くように。
 
 レベッカは調査と探索、罠に対する対応の要だ。
 戦闘では無理せずに、戦いがきつい場合はラムーナと隊列を交代すること。
 ラムーナは戦士として防御もできるように鍛えてあるから、心配は無用だ。
 
 俺は、体勢の崩れた敵を確実に斃していくつもりだ。
 オークは力が強いから、組み合いや正面からのぶつかり合いは止めておくんだぞ。
 
 皆、油断無く自分の役回りに集中してくれれば、不足なく通用するはずだ。
 早々に俺たちの存在が敵にばれたその時は…攻めるが、無理なら意地を張らず引くこと。
 
 …さっき道すがら話した通りだ。
 
 何か問題や提案はあるか?」
 
 オーソドックスな作戦だが、セオリーを守ることが確実な強さになるのだとシグルトは言う。
 奇策に頼るのは時々だからこそ大きな効果になるのであって、本来戦いに必要なのは実力と手堅さであると。
 
 実際、多人数の混乱を利用する大規模な戦略が可能な軍隊同士の戦争とは異なり、冒険者の行う戦闘は堅実さや実力がものを言う。
 そして、満遍なく力を活かせる状況をつくれることがとても重要なのである。
 
 個々の能力があり結束力の強い“風を纏う者”にとって、このスタイルは最も合っていた。
 
「頼りにしてるわよ、リーダー。
 
 こういう荒事ではあんたの戦術眼の方が、臨機応変に対応出来るからね」
 
 レベッカがそう言ってロマンを見ると、彼も頷く。
 
「僕だって古今東西の戦術書は読んでるけど、実際の状況に合わせて素早く指揮をとって対応することは出来ないからね。
 
 頭で考えるのと行うのは、それぞれ専門家がやればいいよ。
 その点で、僕もシグルトのことを信頼してるから」
 
 この少年はひねくれものである。
 だが、目の前の事実には誠実だった。
 
「ここから先は完全に敵の領域だ。
 素早く、静かに、力強く。
 
 では…行こう」
 
 仲間たちの表情と覚悟を確認すると、シグルトはレベッカと並んで洞窟へと足を踏み入れた。
 
 
 洞窟の内部は、硬い岩肌に覆われていた。
 二人並んで歩くにはやや狭い。
 
「この構造であれば、多少なら剣を振り回すことも出来そうだ。
 落盤の心配も無いだろう。
 
 横に並ぶのは、確実に後ろを守る時でいい。
 動き回れる空間を確保しながら戦おう。
 小柄なラムーナなら、俺と並んでも戦えるはずだ。
 
 レベッカ、敵を見つけた後はすぐに下がってくれ」
 
 具体的な指示を出すシグルトに頷きながら、レベッカが周囲を調査していく。
 
「この先が二つに分かれているわ。
 
 敵の気配は全く無し。
 気付かれた様子もないわね」
 
 レベッカの言う分かれ道に着くと、シグルトはすぐに行く先を示した。
 
「このまままっすぐ行くと、洞窟の入り口があった岩壁沿いに進むことになるはずだ。
 
 奧に敵の首領がいるはずだから、こちらには高い確率で伏兵がいる気がする。
 まず後顧の憂いを断ち、挟み撃ちされないようにしよう。
 
 それに、別の入り口があったりすると何匹か逃がす恐れもあるからな。
 今回の依頼は、オークの殲滅だ。
 敵の退路を塞ぐように、まず手を打つとしよう」
 
 レベッカが、ぱっと外から見た様子を思い出して洞窟の構造を予測する。
 
「その入り口を、私たちの退路にするのもありね。
 
 敵地を攻略する時、端から確実にってのは、時間に余裕があれば悪くない選択よ」
 
 他の仲間たちもその意見に反対することなく、一行は真っ直ぐ進むことにした。
 しばらく歩くと、突然景色が変わる。
 
「…これって人造の壁だね。
 
 ということは、此処が遺跡なんだ」
 
 そこはテーブルが二つ置かれた、やや広い部屋だった。
 石を組み上げて作られた壁は堅牢で、周囲が崩れないようしっかりと塗り固められている。
 
「構造から思うに、此処は人間が隠れ住んだ跡だと思う。
 石壁の古さや建築様式だと…数百年前の統一帝国のものだね。
 
 この壁を固めてるのは、帝国が馬車を走らせる石畳を造る時にも使った、砂や石の粉を練って作る接着剤だよ。
 リューンの下水道や水道、賢者の塔にも使われている、優れた建築技術なんだ」
 
 ロマンがレベッカが調べ終わった壁を触りながら、説明する。
 
「大抵の古代建築はこの技術で作られてるのよね。
 
 ま、規模は小さいけど一応遺跡みたい。
 オークが住んでる程度だから、お宝は期待出来ないわね」
 
 一度調べられたって聞いてるし、と付け加え、レベッカは部屋をくまなく探す。
 
「…見るからに怪しい箱が一つあったわ。
 
 それと、棚にあったんだけど…掘り出し物よ」
 
 調べ終えたレベッカが掲げたのは、一本の酒瓶らしきものである。
 
「…ほう、それは聖別した葡萄酒じゃな?
 
 毒や麻痺、加えて石化の呪いすら解除出来るという優れものじゃ」
 
 スピッキオが、瓶に刻まれた不思議な形の十字を示して言った。
 
「この紋章は、異端とされる教派の聖印だね。
 ドルイドたちの文化を吸収して生まれた、古い聖北の一分派が使っているものだよ。
 
 この遺跡は、彼らが弾圧から逃れるために作ったのかもしれない」
 
 ロマンの言葉に、詳しいのうとスピッキオが相槌を打つ。
 
「うへぇ、なんか抹香臭い話ね。
 
 年代物だと思ったんだけど、確か【聖別の葡萄酒】って、味は渋くて薬臭いって奴でしょ?
 後で飲もうと思ったのに…
 
 まあ買うと高価な薬の一種みたいだけど、美味しくない酒はオークの豚面ぐらい罪なことだわ」
 
 レベッカが戯けたように揶揄した。
 スピッキオが、「罰当たり者め」、とそれを睨む。
 
「確か、此処で手に入る物は報酬にしていいという契約だったな?
 
 役に立つなら貰っておこう」
 
 シグルトが決定すると、ラムーナが嬉しそうに酒瓶を受け取って荷物袋に仕舞い込んだ。
 
「さて、次の問題はそこにある箱ね。
 
 さくっと行くわよ」
 
 説教を始めそうなスピッキオをなだめると、レベッカが見つけた小箱を丁寧に調べる。
 
「ほほう?
 外さずに開けると、どこかで鳴り子かベルでも鳴る仕組みね。
 
 で、ちょいなちょいな…と。
 
 やっぱり引っかけの箱だったか。
 中は空っぽ」
 
 レベッカが素早く箱を調べて罠を解除すると、素早く箱を開け、つまらなそうに鼻を鳴らした。
 
「ふん、お前のような欲深には宝よりその空箱の方がお似合いじゃ。
 
 少しは清貧という言葉を知ればよい」
 
 スピッキオの言葉に、疲れたようにレベッカが肩を落とした。
 舌戦を始めれば説教好きのスピッキオは後に引かず、結局付き合った分だけ疲れるのだ。
 
 奧に続く道を見つけ、即座に入って行く。
 
「こ、こりゃ…待たんかっ!」
 
 無視されて怒り出すスピッキオを、シグルトがなだめる。

「説教は後だ。
 
 今は敵地の中なんだから、大声は控えてくれ」
 
 「ぐむぅ」と唸って押し黙るスピッキオ。
 気付けば、シグルトもレベッカに続いて奥に進んでいる。
 
「もう歳なんだから。
 
 あんまり怒らない方が長生きの秘訣だよ」
 
 辛辣にそう言ってロマンも奧に進む。
 
 呆然とするスピッキオの大きな背中を、優しくラムーナが叩いた。
 気にしちゃダメ、という風に。

「おお、主よ。
 
 これは試練ですかの…?」
 
 大きな身体を折り曲げて項垂れ、スピッキオも仲間の後を追うことにした。
 
 
 部屋の奥はまた部屋になっており、石段が上へと続いていた。
 レベッカを先頭に石段を登ると、扉のある部屋に出る。
 
「扉の向こうに気配がするわ。
 多分オーク…複数よ。
 
 どうするリーダー?」
 
 扉を調べていたレベッカが、シグルトを振り返ると小声で囁いた。
 
「討伐が俺たちの仕事だからな。
 
 罠が無いなら、俺が先頭で飛び込もう。
 この広さの扉なら、俺の横はラムーナだ」
 
 仲間を集め、小声で伝えるシグルト。
 その後も扉を調べていたレベッカは、「連中、気付いていないわ」と付け足す。
 
「それなら呑気に援護の術を使うより、一気に踏み込んで奇襲しよう。
 
 3つ数えて踏み込むぞ…1、2、3っ!」
 
 滑るように同時に、シグルトとラムーナが部屋に飛び込んだ。
 
 部屋の中では4匹のオークがひしめいていたが、突然の来訪者に言葉も無い。
 
「ヤァアアアァァッッッ!!!」
 
 全力でラムーナが石畳を蹴ると、部屋の中にあった二段ベットの枠を足場に飛び上がって、半身を起こした状態で身動きの取れないオークの肺に魔剣を突き立てた。
 紙を刺すような容易さで、オークの呼吸器官は完全に破壊される。
 この一撃で即死である。

 トリアムールの起こした突風でよろめいた一体にレベッカがフェイントを決める。

 その横で、シグルトは特攻しつつ硬直しているオークの首に剣を突き刺す。
 致命傷を受けたオークは何もできずに痙攣すると事切れた。

 ロマンとスピッキオはそれぞれ呪文と秘蹟を備えるため集中に入っていた。

 一瞬で二体を反撃も許さず無力化し、レベッカのフェイントで一体は死に体である。

「…ハッ!」

 ラムーナが飛び乗っていたオークを足場に、ようやく硬直から脱したらしいオークを【スティング】で突く。

「《…穿て!》」

 片目を貫かれて後ろに下がったオークの神像をロマンの放った【魔法の矢】が貫通した。
 脱力して、オークは血だまりに沈む。

 最後のオークは、一呼吸前にトリアムールの風が直撃し、レベッカの短剣の動きに反応してバランスが崩れていた、
 シグルトは確実に消耗したそのオークに近寄ると、コメカミ部分を断ち割るように剣を振るった。
 壁と剣に挟まれるようにして、最後のオークは頭蓋を三分の一ほどまで割られると、大きな鼻の穴から血をぼたぼたとこぼして白目を剥き、その最期を迎える。


「…っはぁっ」
 
 シグルトは最後のオークが倒れる数秒、完全に呼吸を止めていたのだろう…すうと息を吸い込み、オークたちの遺骸が放つ生臭い臭気に眉間を寄せた。
 頭蓋にめり込んだ剣を一度突き込んでからぐっと引き抜く。
 返り血を浴びないように、ゆっくりとだ。
 
「…無傷で、完全勝利ってやつね」
 
 レベッカが、一太刀で屠られたオークたちを見下ろして息を吐いた。

 戦いの流れは全く無駄がなかった。
 連携に関しても玄人のそれである。。

 シグルトの使う精霊術には、術者の能力を強化する作用がある。
 吶喊では風に身体が乗るようにその精度や威力をさらに高めるため、一気にたたみかける時には有用な攻撃なのだ。

 ラムーナのは、手に入れたばかりの魔剣の性能が尋常ではなかった。
 使う側のラムーナ自身、前に使っていたお下がりの武器との落差に戸惑っているようだ。

「…鋭利過ぎるのも考え物だな。
 トロールの硬い肉体をやすやすと貫くわけだ。

 それでも、この戦いで実戦での慣らしは終わったな?
 刺し過ぎて抜けなくなったりしないように、気を付けて使うんだぞ」
 
 あまりに迅速な奇襲だったため、オークは仲間を呼ぶ隙も無かった。
 戦闘の結果としては文句のつけようがない。

「あまり消耗しなかったのはよかったね。

 オークの死体の状況は無惨なんだけど」

 部屋に満ちた血臭と肉の放つ湯気の生臭さに、ロマンが青い顔をしている。
 人型の生物を殺すのは、すぐに慣れるものではない。
 
「…ふむ。
 此処で行き止まりか。
 ベッドか…寝室だったようだなこの部屋は。

 今の騒ぎで、他のオークが来ると拙い。
 素早く調べて、さっきの分かれ道に戻るとしよう」
 
 シグルトは剣に着いた血糊と脂を、その部屋にあった腐りかけたシーツでぬぐうと、鞘に剣を納めた。
 
「はいはいっと。
 
 あら、ベッドの下からこんな物が出てきたわ」
 
 調べ終えたレベッカが手に取ったのは、純金製の小さな鍵だった。
 
「何かの鍵みたいだけど、金だから鋳潰せばそこそこで売れるわよ」
 
 思わぬ副収入に、レベッカの顔がほころんだ。

「綺麗だね~」
 
 ラムーナも好奇に瞳を輝かせて、その鍵を見る。
 ロマンは鍵の造りから、出来た年代を推測しているようだ。
 
「宝探しは、討伐の後だ。
 
 どうせやるなら、ゆっくり探したいだろう?」
 
 苦笑してシグルトが肩をすくめると、「戦闘の時とは違って、まとまりが無いのう」と達観したようなスピッキオがばそりと呟いた。
 
 結局その部屋には鍵以外は無く、“風を纏う者”の一行は来た道を慎重に引き返すと、先ほどの分かれ道から奥に進む。
 しばらく天然の岩壁が続いていた。

「…止まって!」
 
 突然のレベッカの鋭い、静止の声。
 一同がはっとなると、その先には黒い影が浮かび上がった。
 
 2体の禍々しい悪魔像が立ち並び、奧を守るように配置されている。

「…これはガーゴイル像だね。
 時々門番…一種のゴーレムだったりするんだけど、この奧にオークがいるとするならただの飾りだと思うよ。
 そうでないと、通る度に襲いかかってきたり、馬鹿なオークが攻撃して傷くらい残ってるはずだからさ。
 
 この像はさっきの遺跡とは建造の時代が違うし、こっちは像以外天然の洞窟だね。
 魔術師の類が、後になって置いたんじゃないかな?」
 
 ロマンがそう推測する。

「【スティング】の能力で調べてみようか?

 命があるなら感じ取れるかもしれないよ」

 ラムーナの持つ魔剣には【生命感知】の魔力が込められている。
 シグルトはそれを止めた。
 
「攻撃してくる魔法生物でないのなら、下手に弄らないのが得策だな。
 その剣で傷をつけたことで罠が発動する可能性もある。
 用心しながら奥に進むとしよう」
 
 危険が無いと判断したシグルトは、自身が先頭になって奥に進む。
 
 その奧には、梯子が掛かった縦穴があった。
 
「私が先頭に行くわ」
 
 レベッカが、しなやかな動きで素早く梯子を駆け上る。
 やがて、縦穴から彼女の白い手が出て手招きした。
 
 全員が登り切ると、さらに奥に進む。
 
「…ストップ。
 
 この先に部屋があるみたいね」
 
 窓のように開いた横穴から、やや赤く夕日が差し込んでいた。
 先ほどシグルトが仕留めたオークが、横穴の外にある岩棚に倒れている。
 
「この分だと、この先気付かれてると考えてもいいでしょうね。
 
 最初に聞いた話だと、この奧は行き止まりの広間になってるから、ロード種のオークはこの先にいるんじゃないかしら?」
 
 レベッカの言葉に、ロマンが頷いた。
 
「少しだけど石壁が見える。
 多分、王の間のつもりなんじゃないかな?
  
 オークロードの性質から言って、こういういかにも高くて、煙と一緒に上がりそうな場所にいる可能性が高いよ。
 見張りの配置から考えてもかなり神経質な奴みたいだし、聞いたとおりの部屋なら、残りの戦力全てで戦いを挑んでくると思う」
 
 言葉にするロマンは、少し緊張して顔が蒼白だ。
 ロード種に率いられたオークはとても強いからである。

「ロマン、こういう時は嫌な奴を蹴っ飛ばすつもりで戦えばいいんだよ?

 ほら、あの輝くブーさんとか!」

 ラムーナが自分の鼻を指でくいと上げて「オークそっくり豚の鼻~♪」と変な掛け声を出す。

 ブフッとその場にいた全員が噴出した。
 そのおかげで強張っていた仲間たちの表情に余裕が生まれる。
 
「…そうだな。
 あのブー何某の代わりに、オークで憂さ晴らしさせてもらおうか。

 皆、決戦の構えで行くとしよう。
 
 スピッキオ、出し惜しみ無く俺以外の皆に防御の秘蹟をかけてくれ。
 ラムーナと俺は突撃する。
 レベッカは援護を頼む。
 ロマン、攻撃魔法は使わなくていい。
 とにかく【眠りの雲】で、敵の出足をくじいてくれ。
 他のことは、一回【眠りの雲】を唱えるまで考えるな」
 
 シグルトは素早く指示を出すと、【堅牢】で防御を固め、手をかざして〈トリアムール〉の名を呼んだ。
 横からシグルトを包み込むように、柔らかな旋風が巻き上がる。
 
 スピッキオが仲間の一人一人に【聖別の法】で、防御の加護をかけた。
 トロールの投げた岩の直撃からレベッカを守った、鉄壁の秘蹟である。
 
「…では、突撃するぞ。
 
 3つ数えたら、一気に、だ。
 
 1、2…3っ!!!」
 
 一気にシグルトが部屋に飛び込む。
 
 景色が一変し、角張った人工の石壁が目に映った。
 
 奧には、重装備のオーク二匹と多数の手勢を引き連れ、大きな体格のオークがシグルトたちを睨み据えていた。
 オークたちはにわかに騒ぎ出すが、大きな体格のオークが一喝すると静かになる。
 
 そして、大柄なオーク…ロードは自身の剣を抜き放ち、がなり声で攻撃を命じる。
 
 素早く二匹の重装備をしたオークが前に出た。
 刺々しい兜をかぶり、気勢を上げて迫ってくる。
 
「むう、この陣形では親玉に攻撃が届きそうにないぞ?」
 
 スピッキオが十字架を前にかざしながら、歯ぎしりをする。
 
「ならば、前衛から切り崩すまでだっ!!!」

 トリアムールの風が迫ってくる一体のオークを打ち据え、シグルトは勢いのまま前衛の重装オークに斬りかかった。
 
 その横から高く飛び上がったラムーナが、重装備のオークを蹴り飛ばした。
 
「…《眠れっ!!!》」
 
 開戦早々、先ほどのラムーナの冗談で緊張が解けていたのか、絶好調のロマンが早々に【眠りの雲】の詠唱を終えて発動した。

「…ぶひぃ!」

 仲間のオークたちが次々と眠りに倒れ、護衛を置いて余裕綽々だったオークロードも驚きの声を上げたと思った瞬間眠ってしまった。

 数匹攻撃の衝撃で目を覚ますが、完全に"風を纏う者"のペースである。
 目を覚ました護衛のオークの反撃でシグルトがかすり傷を負うものの、あとは起きているオークを端から倒していけばいい。
 シグルトが攻撃してきた護衛を壁際に追い詰め、スピッキオが杖でその頭部を殴打して轟沈させる。

「起きている奴から倒して行くぞ。
 ロマンの使った呪文の効果時間をじっくり使いきれ。

 一呼吸に一体でも十分に全部を斃せる!」

 トリアムールの風で消耗しているオークに止めを刺し、シグルトは負った傷を【堅牢】でほぼ完治させると、用意した大振りの一撃で端から殺していくつもりのようだ。

「《…穿て!》」

 十分に魔力を集中したロマンが【魔法の矢】で一匹を即死させた。

 ラムーナの攻撃で重傷を負っていたオークが何とか立とうと震えるが、具体的な行動を許さずシグルトが剣の鍔で殴り床に叩きつける。

「―――イィィヤァァァァッ!!!」

 その時、呼吸を整えていたラムーナが疾った。
 アレトゥーザで習得した闘舞術、【連捷の蜂】である。
 魔剣を加えてその威力が怪物的に転じた必殺の一撃は、もう一体残っていた護衛のオークを即死させた。
 ラムーナが駆け抜けた後、【スティング】のあまりの切れ味に、兜をかぶったままオークの首が断たれてくるくると飛んで行く。

 彼女と同時に確実に止めを刺すつもりで撃ったロマンの【魔法の矢】は、首の無い護衛オークの死体に鞭打つように突き刺さった。

「あ~、いくらあのブーが憎たらしいからって、やり過ぎよ二人とも?」

 レベッカが肉塊になったオークを哀れそうに見て呟いた。
 どう見てもオーバーキルである。

 シグルトが起き上がったオークをまた一匹仕留める。
 交差した瞬間脛を払い、傾いで姿勢が硬直したオークの胴体を、一回転した勢いで一刀両断していた。

 ラムーナが続く動作でオークを吹き飛ばして起こしつつ…くるりと一転していつの間にか構えに入っていた。
 これこそ【連捷の蜂】の神髄、大技の連鎖である。

 闘舞術の基礎となるこの技は、蜂が飛びながら連携して顎と針で交互に攻撃するように連続攻撃を仕掛ける。
 腕が上がれば、その動作からさらに身体を回転させたり、バク転のような動きから戦場を縦横無尽に走って敵を薙ぎ払う動作にもなる。
 その応用性は、初心から玄人になるまで末永く舞踏家の十八番として駆使される妙技であった。

 気づけば残っているのは寝こけたオークロードのみ。

「一気に叩くぞ!」

 シグルトの号令に「応!」と"風を纏う者"の仲間たちが一斉に、巨体のオークロードめがけて殺到した。
 レベッカの狙いすました一撃で叩き起こされたオークロードは、何とかシグルトの斬撃を受け止めるが、その側頭部をラムーナの蹴りが襲って左の鼓膜が弾けた。

「…《眠れっ!》」

 反撃を考える前にロマンの呪文が意識を刈り取る。

「――セェイ、ヤァッ!!」

 【連捷の蜂】の動作で朦朧としているオークロードの逆腕を斬り落としたラムーナはさらに体勢を整え、踵落としと新たに繋いだ【連捷の蜂】の初動作で咽喉を断つ。
 おそらくこれで致命傷だが、まだ動くタフネスが豚鬼の王には残されていた。

(この雌を道連れに…)

 そんな怪しい決意をオークロードが実行しようと、武器を振り上げるため力んだ矢先…

「はい、これでおしまいっと」

 背後に回ってオークロードの背中を駆け上ったレベッカが、首の後ろから性格に短剣を延髄に突き刺した。
 
 オークの王はろくに剣を振る暇も無く、あっけない崩御を迎えたのである。
 それは同時に、洞窟に築かれた小さな王国の終焉であった。


「なんだか、あっさりじゃったのう」

 治癒の秘蹟を用意しつつ、一度も使う必要が無かったスピッキオは「これはこれで重畳」と表情を緩めていた。
 
 スピッキオが、度重なる秘蹟の行使に応えてくれた神に感謝の言葉を捧げつつ、腰をとんとんと叩いている。
 
「部屋は此処で最後のようだし、依頼は達成だ。

 怪我人は俺以外…いないようだな」

 前線で一番危ない場所にいたシグルトも、序盤で負った傷以外受けていなかった。
 その傷も呼吸と体術によって、今はすべて塞ぎ治療すら不要になっている。
 
 ラムーナが心配そうに走ってきた。

 シグルトは自分の肩口にできた傷を確認している。
 「治すかの」と聞くスピッキオには、首を横に振った。
 
「軽い打ち身だ。
 血が出る傷にすらならなかった。
 
 他にも多少打撲はあるが、鍛錬で作る青アザや打撲に比べれば、治癒の秘蹟や薬を使う必要すらない程度のものだ。
 休んでいればすぐ治るだろう」
 
 そう応え、不意にシグルトはラムーナの頭を撫でた。
 
「戦いの舞踏か…凄いものだな。
 
 今回はお前の技に救われたよ、ラムーナ」
 
 賛美を受けて、照れたようにラムーナが頭を掻いた。
 
「本当よ、ラムーナ。
 
 敵のほとんどは貴女の舞踏で、こてんぱんにやっつけてたじゃない。
 投資した価値があるってものだわ」
 
 レベッカもラムーナを絶賛して、抱きしめていた。 

「ロマンもいい判断だったぞ。
 最初の術で趨勢は決したが、その後も起きてくるオークを片端から眠らせたから、体勢を整えながら削り切る理想的な展開に持って行けた。
 
 お前の【眠りの雲】が無ければ、俺たちの装備では、この数のオークを相手にするのは難しかったはずだ。
 今の感覚で術を使ってくれれば、前衛はとても助かる。
 だが、敵の思わぬ攻撃には気をつけるんだぞ」
 
 仲間たちを労いながら、シグルトは仲間の細かいコンディションを確認していく。

「癪だけど、スピッキオの秘蹟のおかげね。
 
 防御の秘蹟があったから、防御とか気にせずに攻撃優先で思いっきり行けたもの。
 ロマンの呪文も、いつも思うんだけど、本当に便利よねぇ…」
 
 自分は仲間の様子を見ながら撹乱に徹し、最後に首魁の止めでいいところを持って行ったレベッカが上機嫌に言った。
 
「ふん、だから言ったのじゃ。
 お前も少しは信仰心というものを持てい。
 
 まあ、皆が無事のようでほっとしたわい」
 
 スピッキオが仲間に無断で秘蹟を修得し、教会への寄付を払ったため、そのことをレベッカが咎めたことがあった。
 だが、件の秘蹟は一行にとって悠々と全力を出すための貴重な手段となっている。
 
「ふんっ。
 
 言っとくけど、無断でお金を使うのはこれからだってダメよ。
 私たちみんなのお金なんだからね」
 
 会計役がすっかり板についているレベッカは、負けずに言い返すと、部屋を探索し始めた。

「この部屋だけ遺跡っぽいから、何かありそうな気がするのよ。
 
 …と、やっぱりあったっ!」
 
 レベッカが壁のひびに紛れて動く石を見つけて慎重に押すと、壁がスライドしてやや小さめの扉が現れた。
 扉を調べて、眉間に皺を寄せる。
 
「…うはぁ、隠し扉に鍵付きねぇ。
 この隠し扉は最近まで使われてたようだから、そこで転がってるロード種がお宝を隠しているんでしょう。
 なんとも用心深いことだわ。

 この間のヒバリ村の時と言い、妖魔の頭目が神経質になる病気でも流行ってるのかしら?
 
 さっき拾った鍵が合いそうね。
 開けるわよ?」
 
 心持ちうきうきした様子で、レベッカが振り向く。
 こういうところは盗賊らしいな、と苦笑してシグルトが頷いた。
 
 先ほど拾った金の鍵はぴったりと鍵穴に合い、隠し部屋の古びた扉が軋んだ音をたてて開いた。


「うわぁ…」
 
 ラムーナがやや狭い天井の部屋を見回して、感嘆の声を上げた。
 
 その部屋は一片の隙もなく石壁に覆われ、ひんやりとした空気が滞っている。 
 部屋の中央には滑らかな肌の禍々しい悪魔像が一体そびえ立ち、その左右に大きな箱が一つずつ置かれていた。

「ちょっとした宝物庫ね。
 
 あの用心深いロードのことを考えると、罠があるかも知れないわ。
 調べるから、少し後ろに下がってて」
 
 前に出たレベッカが、まず像を調べ始める。

「…この石像、これ見よがしに立派な宝石の指輪を持っているわ。
 
 この宝石、百年昔だったなら銀貨千枚は下らない代物だったんだけど、技術の発達と鉱脈が見つかったってことで価値が暴落したものなの。
 今では、通常ルートで銀貨三百枚ぐらいかしら。
 
 価値はそこそこにあるんだから、取って帰りたいところなんだけど…
 像がやけに綺麗なところを見ると、完全な罠ね。
 
 罠でないなら、あのオークロードが身に付けてそうな代物だもの」
 
 レベッカの後ろで悪魔像を観察していたロマンが、同意するように頷いた。

「これはおそらくガーゴイルだよ。
 
 魔法生物の一種で、作り手…魔力付与者にもよるんだけど、そこそこの戦闘力があるんだ。
 何より恐ろしいのは、宝物なんかの守護者として石像に擬態している奴で、正しい手順を踏まないと襲いかかってくるんだ。
 
 それと、この石像って他にも罠がありそうだね。
 普通の擬態したガーゴイルは、近づくだけで襲いかかってくるから。
 指輪を取った瞬間、魔法攻撃を受けるかもしれないよ。
 
 この像からして、キーワードで宝石が外れるか、あるいは完全な囮で指輪は付属品、ということかも知れない。
 
 もしその指輪を取るつもりなら、誰かが犠牲になるか、罠を解除する何かを見つけるしかないよ」
 
 ロマンのアドバイスを聞き、少し思案したレベッカだったが、やがてにんまりすると一同を見て言った。

「…取ると襲ってくるなら、まず壊そっか」
 
 過激な提案に、“風を纏う者”の一行は顔を見合わせた。


 その後、不本意だと言いつつロマンが【魔法の矢】を悪魔像に叩き付ける。
 遠距離から、ガスの罠などが無いことを確認するためだ。
 
 石像に攻撃する、という行為は野蛮な方法ではあったが、それなりに理に適ってる。
 宝箱を開けている最中に襲われては危険だからだ。
 
 シグルトは、もう一度〈トリアムール〉の力を身に宿していた。
 悪魔像の反撃に備えてのことである。
 
 だが、ロマンが唱えた【魔法の矢】が直撃すると、奇っ怪な悲鳴を上げた悪魔像は、びくりと手を動かしたがすぐに動かなくなった。
 念入りにシグルトとラムーナが二人で押して、石像を台座から落とし粉々に破壊する。

「【魔法の矢】は、この手の魔法生物にとっては致命的な威力になるんだよ。
 シンプルな魔法による破壊の力は、ゴーレムの魔導回路や、魔力によって生命を吹き込まれた魔法生物の活動回路を破壊する効果があるんだ。
 
 ガーゴイルは比較的魔法生物としては弱い方だから、一溜まりもなかったんだね」
 
 乗り気でなかったロマンであるが、使った魔術に関しては自慢気であった。
 
 その横で、「はいはい」と適当に相槌を打ちながら、レベッカは飛び散った破片の中から先ほどの指輪を探し出すと、布で綺麗に磨いて包み込んだ。
 
「さて、邪魔なトラップを一つ片付けたし、次は箱の方よね~」
 
 手に入れたお宝を懐に仕舞い込むと、レベッカは壊れた悪魔像の向かって左側にある宝箱に近づく。
 調べるのか、とスピッキオが近づいた時には、がちゃりと鍵の開く音がしていた。

「ふふん♪
 私の手にかかっちゃ、この程度の鍵は可愛いものよ。
 
 それにしても、解除に失敗すると剃刀が出てきて箱が壊れる仕掛けなんて、あのオークロードはほんと性格が悪いわよね」
 
 鮮やかなレベッカの手際に、ラムーナが「すご~い」と感嘆の声を上げた。
 
「盗賊やってて一番楽しいのって、この瞬間よね~♪
 
 さぁて、何が入ってるやら―」
 
 レベッカの後ろから、開いた箱を仲間たちが覗き込む。
 
 箱にはその辺に転がっている綺麗な石や、見方によっては人型に見えなくも無い木の枝、獣の牙などがぎっしり詰め込まれていた。
 だが、古びた銀貨も何枚かがらくたにまみれて入っている。
 
「…ま、オークの宝だものね。
 銀貨で二百枚ってとこか。
 
 あとはほとんどゴミみたいなものだけど…」 
 
 それらをより分けていたレベッカが、やがてやや大振りの綺麗な石を見つけ、目を丸くする。

「これって、魔法の武具を作る時に使うっていう鉱石じゃないっ!
 
 …紅に金か。
 この【金鉱石】なんかはポートリオンでものすごく高値で取引されるのよね~
 ある意味、一番のお宝だわ。
 
 あの石像の指輪を含めれば、今回の報酬込みで銀貨二千枚は堅いわよ」

 「おお~!?」とラムーナがわざとらしく感嘆する。
 この娘はお調子者ではあるが、こういう時は空気を読んで絶妙な相槌を打つのだ。
 ごくたまに調子っぱずれな場合もあるのだが。
 
 他に金目のものが無いことを確認すると、レベッカはもう一つの宝箱に近づいた。
 途端に渋い顔になる。

「これって解除不能の罠、っていうか封印じゃないっ!
 
 だぁあっ、もう~腹立つっっ!!!」
 
 ぷりぷりと怒るレベッカによると、かなりたちの悪い魔法の罠らしい。
 下手に開けたり解除すると、大がかりな罠が発動するかも知れないということだった。

「大抵の盗賊はそうなんだけど、魔法系の罠って専門外なのよ。
 
 これを解除出来るとしたら、魔術師の専門魔術とかなんだけど…」
 
 やや期待の込められた目で、レベッカがロマンを見つめる。

「…だめだね。
 
 そもそもこの罠って、解除を前提に作られてないんじゃないかな?
 レベッカの言う通り、封印に近いよ。
 
 中にあるものは気になるけど、危険だから開けない方がいいよ」
 
 悔しさに身悶えしているレベッカの横で、こんなこともあるよ、ロマンが肩をすくめていた。
 
 その時である。
 突然周囲が揺れ出し、“風を纏う者”はさっと身構えた。
 
 しばらく続いた地震は、ぱらぱらと天井から土埃を落とすと、間もなく静まった。
 
「地揺れか?
 
 余震があると拙い。
 とにかく用心して部屋を…」
 
 シグルトが仲間に脱出を促そうとした、その時である。
 
「な、何でこうなるのよ~っ!!!」
 
 レベッカが頭を抱えていた。
 
「…箱、空いちゃった」
 
 ラムーナが指差す先には、先ほどの激しい地震の衝撃で開いた宝箱が転がっていた。
 
「ぐむぅ…何か臭いぞぃ」
 
 スピッキオは周囲に満ちてきた悪臭に、口元を押さえた。
 もうもうと白い煙が壁から吹き出してくる。

「と、扉が閉まっちゃったよっ!」
 
 ロマンが焦った声で、この部屋の唯一の出口があった場所を指さした。

「やばいわっ!
 
 これ、大量に吸うと昏睡に陥る毒煙よっ!!」
 
 切羽詰まった仲間たちの言葉に、シグルトは即座に行動を起こした。

「《トリアムールっ!》」
 
 シグルトの声に応えるように、渦巻く煙を退けて、旋風がビョウッと吹いた。
 
 ドゥォォオオオオンッ!!!
 
 風を纏いシグルトが起こした行動は単純だった。
 
「煙が晴れるまででいいっ!
 
 隙間を空ければ、すぐに窒息することはないはずだっ!!」
 
 仲間を励ますように叫ぶと、シグルトは繰り返し閉ざされた扉に体当たりをする。
 衝撃で僅かに扉が歪み、そこに出来た隙間めがけ、抜いた剣を突き立てた。
 
 乾いた音を立てて、剣が弾き返される。
 
「くっ…ならばっ!!!」
 
 シグルトは大きく後ろに下がり、全身の筋肉に力を溜め込んだ。
 そうして、ばね仕掛けのように扉に向かって腕を突き出す。
 
 低い体勢から稲妻のように走る、会心の刺突。
 
 何かを壊そうという時、力は線より点の方が効果的である。
 岩盤を破壊するためには鍬よりも鶴嘴の方が向いているように、剣を叩き付けるよりも穿つことを選んだのだ。
 シグルトなりに剣の機構を理解した上での咄嗟の判断だった。
 
 ガシィィィィイインッ!!!!!
 
 その突きを受けて、扉が大きく軋む音。
 
 しかし、絶えきれなかったシグルトの剣は砕け散った。
 
「…―ゥォォオオオオオオッッッ!!!!!!」
 
 腹の底から絞り出すような声を上げ、シグルトはそのまま渾身の体当たりを行う。
 
 歪んでいた密室の扉は、〈トリアムール〉が起こす旋風に守られたシグルトの突進で砕け散った。
 勢い余って部屋から転がり出る。

 転倒によって痺れる身体に鞭打ち、何とか立ち上がって振り返ると、仲間たちが一目散に走り出て来た。
 
「…皆、無事か?」
 
 体当たりをした時、砕けて自分の腕に突き刺さった石の欠片を引き抜きながら、シグルトは周囲に問うた。

「…何とかね。
 
 助かったわ、シグルト」
 
 レベッカが咽せて乱れた呼吸を整えながら答え、忌々しそうに瓦礫を蹴飛ばした。
 彼女が罠を発動させたのではないが、罠で命を落としそうになったこと自体が彼女の自尊心を損なったのだ。

「あ、危なかった~」
 
 蒼白な顔をしてロマンがへたり込んでいる。
 毒煙を吸い込んでそうなったわけではないようで、呼吸は徐々に落ち着いている様子だ。

「シグルトこそ、だいじょうぶ?」
 
 心配そうにラムーナが聞き返した。
 彼女はロマンの手を取っていち早く脱出したので、ダメージは無い。
 
 安堵して自分の腕を見ると、シグルトの腕は大きく裂けて、血が溢れ出していた。

「ふぅ…
 
 儂らよりも、お前の方が酷いようじゃの。
 どれ、手を出すがよい」
 
 頑健なスピッキオは、老いたとは言え全く疲弊していない。
 すぐにシグルトに近寄り、傷ついた腕に癒しの秘蹟をかけてくれる。
 
 無事を確認した“風を纏う者”の面々は、しばし脱力したように押し黙った。
 
 少し経って、シグルトは思い出したように砕けた剣の破片を拾い始める。

「…折れちゃったね」
 
 ラムーナがシグルトを手伝い始めた。
 感謝の言葉を口にすると、シグルトは破片を拾う行為を再開する。

 一通り欠片が集まると、シグルトはそれを袋にしまい、深い溜息を吐く。

「…これで三本目か。

 剣士たるものが、こう頻繁に剣を折るようでは話にならないな」
 
 肩を落とすシグルトを、仲間たちは気まずい心持ちで見つめていた。
 
 シグルトが武器を大切に使うことを、皆知っている。
 彼は手入れを怠ったことはないし、出来る限り折らないように気をつけて使っていた。
 
 砕けた剣は先輩冒険者のお古で、年代物だった。
 厚く屈強な造りだが、現代の優れた鍛冶技術から見れば骨董品と言える代物だ。
 
 度重なる血糊を浴び、激しい鍛錬と戦闘で使われ続けた武器は、何れ壊れる。
 ちゃんとした使い方をして壊れたこの剣は、寿命が来たとも言えるだろう。
 
「仕方ないわよ。
 
 私たちを助けるために無茶したんだし、石の扉をぶち破るなんて芸当…普通は斧か鶴嘴でも使わなきゃ出来ないわ。
 
 それに、太ったオークをぶった斬るシグルトの力じゃ、斧を使っても刃が欠けるんじゃないかしら?
 肉を斬り骨を断つのって難しいし、一回やるだけでかなり切れ味が悪くなるものなのよ。
 
 今までそのなまくらを斬れるように使いこなしてたんだから、大したものよ」
 
 レベッカが自分の得物である短剣を撫でながら、私には無理だわ、と戯けて見せる。
 
 シグルトの使っていた剣は、斬るためのものというよりも、鎧の上から殴り合うことを想定した鈍重な物だった。
 時代としては重装の板金鎧(プレートアーマー)が増えた現代よりも少し昔、鎖帷子(チェインメイル)や鋲鎧(スタデットアーマー)が主流だった頃に使われていたものだ。
 現代では、先端が鋭利になり鎧の継ぎ目から刺すか、穿ち抜くタイプの刀剣が増えている。
 
「仕方ない…不本意だが、この場はこの中から適当なのを探して使うとしよう」
 
 シグルトはまずオークロードが使っていた剣を拾い上げると、具合を確かめていた。
 それは、背の高いシグルトの手にも余るような大剣だ。
 
「…使えそう?」
 
 ラムーナが尋ねると、シグルトは首を横に振った。

「それほど打ち合わなかったから、使えないことは無い。
 ロードが力任せに振り回していたのだろうな。
 あまり良い品とは言えん。

 俺の剣も、トロールとの戦闘で相当ガタが来ていたようだ。
 そうでなければ、あのこまで派手に砕けはしないだろうし、な。
 
 この剣は俺の体格では大き過ぎるし、握りが太すぎるな。
 リカッソ(大剣を振り回すときに掴むための刀身の鍔元で刃の無い部分)も無いのか。
 人間が使うようにできていないな、これは。

 刀身が重いから少しばかりの補強も意味を為さない。
 目釘を換えて、柄を別の物にすれば振り回せなくはないが…
 この刀身の重量なら、分解するのがおちだな。
 
 こんな危なっかしい得物を使うぐらいなら、素手の方がいくらかましだ。

 他も同様だな…
 錆びていたり刃が欠けていたり…量産物の粗悪品ばかりだ。
 たぶん、死体から剥ぎ取った類の物だと思う。
 
 皆手入れがされてないから、傷み方が酷い」
 
 シグルトは慣れた手つきで目釘(刀身を柄に固定するボルト)を抜くと、柄から刃を外し、根本の部分も念入りに確かめる。
 力がかかるこの部分は、よく壊れるのだ。
 そして、鍔迫り合いをした時にこの部分から折れたりすれば、高い確率で大きな手傷を負うことになるだろう。
 
「…とりあえずは、オークの護衛が使っていた得物にするよ。
 
 多少錆びているが、傷みは比較的少ない」
 
 シグルトが最後に手に取ったのは、厚刃の蛮刀(ファルシオン)だ。
 剣士の持ち物、というよりは山賊が振り回す類の武器である。
 
 慣れない武器の性質を確かめるように、シグルトは素振りをしては、重さや握り具合を調べていた。

「―…部屋の中の毒霧が晴れるわよ」
 
 取り損なった宝物を得るために、レベッカは剣の物色をするシグルトの脇で宝物庫の罠が落ち着くのを待っていた。

「死にかけたというのに、がめついのう」
 
 呆れた様子でスピッキオが眉を動かした。

「なればこそよ。
 
 罠まで発動したんだから、お宝を拝まなきゃね」

 レベッカは恥をかいた分、利益で取り戻すつもりのようだ。
 ある意味、このパーティでレベッカが一番図太いと言える。
 
(折れない分、剣よりレベッカの方が強いよね…)
 
 そう考えたことは隠しておこうと、ロマンは笑いを噛みつつ、胸に秘めた。
 同様に感じたのか、シグルトが苦笑している。

 そんな2人の態度は目に入らないかのように、さっさと宝箱の前に来たレベッカが、慎重に空いた箱の中を覗き込んだ。

「…な、何よこれっ!」
 
 レベッカが怒りを露わに箱から取り出したのは、鉄で出来た粗末な輪だった。
 赤く錆びたそれは、まるで何かを拘束するための首輪のようだ。
 売ったとして、銀貨一枚にもならないだろう。

 落胆するレベッカの横で、ロマンが首を傾げた。
 
「こんな物を大げさに罠付きの宝箱に入れるなんて、あのオークは変わった価値観を持っていたみたいだね。
 
 まぁ、ゴブリンロードが動物の手をコレクションしていたり、グリフォンが宝石の変わりにタイルを集めていたって話はざらだから。
 こういうのもアリなんじゃないかな?」
 
 落ち込むレベッカの横でシグルトがその鉄の輪を覗き込むと、何事か考え込む。
 そして、ロマンの言葉を否定するように、首を横に振った。

「…これはかなりの拾い物かも知れんぞ。
 
 輪に付いている紋章…蝶のような形をしているだろう。
 これは古の零落した神々を表しているんだ。
 
 太古に権勢を誇った彼の神々は、聖北の台頭によって追いやられ、姿を虫や獣に変えた。
 それが妖精の起源だとする説がある。
 
 さっきの【聖別の葡萄酒】に描かれた聖印は、確かその時代の名残だったはずだが」
 
 シグルトの言葉に、ロマンが「ああっ!」と叫んで手を打った。

「確かに…かすれてるけど、その紋章の横にあるのは四つ葉のクローバーを表す十字と、三位一体を示す正三角形だ。
 シグルトの言った聖印は、似た紋章を取り込んだって説のものだよ。

 その神々って、〈ダヌの眷属(トゥアハ・デ・ダナーン)〉のことだよね?
 だとすると、古の鉄の民…この西方で最初に鉄器を使った古代人の物じゃないかな。
 
 骨董商に売れば、その手の蒐集家なら結構なお金で買ってくれるかも…」
 
 価値があるかもしれない物だと分かった途端、レベッカの表情がぱっと輝いた。
 
「しかし…何か祭器の類かもしれないぞ。
 鉄の指輪や額冠(サークレット)は、鉄の民が好んで用いた呪物だったはずだ。
 
 確か鉄には妖精や精霊の力を封じる力が宿っていたはずだが…」

 シグルトは伝承に詳しい。
 古い神話や物語では、ロマンが知らないようなことも数多く覚えていた。
 
 感心するロマンやラムーナの横で、やや渋いかををするレベッカ。
 彼女にとっては、金になるかも知れないという以外、この輪は薄汚い鉄の塊でしかないのだ。
 
 とりあえず持ち帰ろうと言うレベッカに、シグルトが注意を促そうとしたとの時…

 パキィィィン…

「…あっ!!!」

 さほど力を入れたわけでもないのに、鉄の輪は真っ二つに割れてしまった。
 
 愕然となるレベッカ。
 仲間たちも肩すかしを喰らったように渋い顔になった。

「…ま、こんなこともあるよね?」
 
 仲間たちを励ますようにラムーナが声をかける中、シグルトは突然視界が霞むのを感じ、目をこする。
 鉄の輪が割れた瞬間、光のようなものが溢れたように感じたのだ。

(「…出られたっ!
  …出られたっ!
  
  暗いところから、やっと出られたよっ!!」)
 
 突然甲高い声が聞こえ、シグルトは周囲を見回した。
 
「どうしたんじゃ?」
 
 挙動不審なシグルトの行動に、スピッキオが声をかける。

「…いや、何か聞こえたような気がしたんだが…」
 
 周囲を見回すシグルトに、レベッカが「止めてよね~」と落ち込んだ様子で言う。

「私の耳には何も聞こえないわ。
 
 敵の残党がいるなら、聞き逃さないわよ」
 
 そうだな、と返事をしようとしたシグルトは、次の瞬間また緊張に眉根を寄せ、身を固めていた。

(「…そこにいるのは白き森の姫君、オルテンシア様の血を引く人間…
  鉄の呪いに囚われた、青黒い髪の一族、“鐵の王家”の末裔だね?
 
  私を解放してくれたのは、貴方?
 
  長い長い時の頚木から開放してくれた、私の恩人。
  風を連れ、〈お母様〉の祝福を受けた、“屈せぬ者”)」
 
 今度は確かに、自分に向かってかけられた〈声〉を聞いたのだ。

「俺に話しかけているのは、一体何者だ?!」
 
 シグルトは、訝しがる仲間たちを制して続きを問うた。
 新しい敵ならば、立ち向かわなければならない。
 そう決意して、虚空を睨む。
  
 空間から滲み出すように、くすくすと笑い声が聞こえる。

(「私は古の者。
 
  貴方たちが“妖精”と呼ぶ、古い神の眷属。
  物語に語られる〈翔精(フェアリー)〉たちの古い始まり。
 
  私は“環を為す隠者”。
  〈常若の国(ティル・ナ・ノーグ)〉より迷い出たる、彷徨う者。

  貴方は“屈せぬ者”。
  私は、暗い闇の底から出してもらえたこの代償に、同じように〈縛られぬための力〉を授けるよ。
  
  私の環は、束縛の頚木から解き放つ、姿を隠す魔法の環。
  妖精の国に通じる、神隠しの環。
  
  私の代わりに〈常若の国〉の入り口を探して。
  それまで、代わりに環の力を貸して上げる」)
  
 そこまで言って、不思議な声はぴたりと止んだ。
 同時にシグルトの右手の指先が、かっと熱くなる。
 
 よく見れば、爪と皮膚の間に小さな模様が浮かび出ていた。
 それは、あの鉄輪に刻まれていた蝶の紋章と同じ形をしている。
 
 シグルトの頭に、ぼんやりと輝く光の環の形がイメージとして伝わり、すぐに理解する。
 声が言う〈縛られぬための力〉のことを。

(…神隠しの環、か。
 妖精が悪戯をする時に現れる、〈妖精の環(フェアリー・リング)〉のことだな。
 
 それにしても…〈常若の国〉の妖精とは。
 〈トリアムール〉の時といい、この間の戦乙女や死神のことといい…
 俺はつくづく、こういった連中と縁があるらしい)
 
 シグルトが苦笑すると、怒ったようにその周囲を風が舞った。

(「何よぅ、新参者のくせにシグルトの身体に宿るなんてっ!
 
  私の方が先輩なんだから、挨拶ぐらいしなさいよねっ!!」)
 
 風の中から聞こえた声に、またはっとする。
 シグルトは、風から感じ取れる確かな〈声〉を聞き取っていた。
 
(今のは〈トリアムール〉の声…?
 
 そうか。
 妖精が身に宿るということは、精霊や妖精に近くなるということだ。
 この感覚を覚えておけば、俺でも精霊の声を聞くことが出来るということか。
  
 これは、怪我の功名かもしれんな…)

 一人感慨深げに頷くシグルトを見て、“風を纏う者”の仲間たちは、揃って心配そうな面持ちになった。
 
「…すまん。
 この鉄輪に封じられていた者が、話しかけてきたのでな。
 
 輪は壊れてしまったが、ちょっと便利なものが手に入った。
 帰る道すがら、説明するよ」
 
 苦笑するシグルトの言葉に、仲間たちはぽかんとしていた。
 
 その時、終に一同は気が付かなかった。
 割れた鉄の輪から、碧い視線がずっとシグルトを眺めていたことを。

(「まずは耳。
  次は目を与えよう。
  
  代わりに何を捧げて貰おうか?
  
  ふふふ、間もなく微睡みで見えよう、愛し子よ…
  お前が【開闢】に届く、その時を夢見ながら」)
 
 〈それ〉は、さも楽しそうに笑みを浮かべると、目を閉じた。



 『シンバットの洞窟』、再録です。

 今回出てきた『冒険者の宿連盟』は、私の小説独自の設定ですが、直接冒険者を支配するのではなく、政府と冒険者を橋渡しするため、冒険者の宿同士で作っている相互扶助団体という設定です。

 そも、私たちの世界で冒険者という職業が発展し中たt理由ですが、怪物退治という需要が無かったせいもあるでしょうが…普通昔の保守的な政治だと、難民やわけのわからない過去を持つ人間を都市や国に迎え入れることなんて簡単にできなかったと思うんですよね。
 でも冒険者って、直接国や都市に帰属して活動するには国際的過ぎますし、束縛が嫌で冒険者になる人間も多いのではないかなと。
 ならば、所属するのが当たり前の冒険者の宿が、冒険者を管理する大きな組織に属していてもおかしくないかなと。

 そして、中世のギルドは現代の組合に比べてもっと保守的でした。
 冒険者のような自由なスタイルの職業が所属した場合、制御が難しいのではないかなと。
 それにカードワースでギルドって言えば、シナリオの投稿所ですしねぇ。

 連盟はそういうのを私の小説の中で辻褄合わせするために出した設定です。


 今回『小さき希望亭』の在所も紹介しました。
 おそらく発展を続けるリューンのことですから、数年後には表通りに吸収合併することになるでしょうが、今はまだリューン郊外ということになっています。


 で、散々やらかしてくれた、テンプレ悪役ヤニックと『黄金の栄光亭』。
 彼は“風を纏う者”の新たな敵役として登場させました。

 前は前半の悪役をアレトゥーザのジョドたちにしていたのですが、連中は昇進して本物のアレトゥーザで敵役になってしまったので、思い切って別の敵とライバルをと思ったわけです。

 まぁ、ヤニックは嫌味なボコられ役みたいなものでして、彼が登場してフルボッコにされ、読む人がスカッとすればいいんじゃないかなと。性格的にそうなっても全く自業自得な奴ですし、生暖かい目で見ていただければ。


 シグルトやレベッカの言葉の中には、身体的特徴を揶揄したり、相手を馬鹿にする言葉が随所に見られます。
 これを見て気分が悪くなった方はすみません。

 ただ、これは時代的な背景からであり、身体的特徴だけでどうこう言っているわけではありません。

 その昔、戦争で片目を失った人間は派手なアイパッチを付けてたり、隻眼をむしろ誇っている人間もいました。
 片腕になった者は鉤のついた凶悪な義手をつけたり、大砲で吹き飛んだ義足に鋼鉄の靴を履いたり、むしろ傷を誇りとし、必ずしも身体的な障害を恥としていた分けではありませんでした。

 小人プロレスなどもそうでしたが、自身の障害をばねにしていた人もいます。
 眼をそむけるのは何か違うと、私も考えています。

 かくいう私も隻眼でして、子供の頃眇めでいじめられたりもしたのですが、前にやっていたネットゲームの設定で、片目や片手片足といった障害者の設定ができなかったことに対し、なんともいえない疎外感を覚えたことがあります。
 「差別的だ!」と騒いで、活動の場を奪う方がよほど差別的であると、私は感じた次第です。
 差別はいけないと示した上で、障害に負けずに頑張ってる人、障害を土台にして強く生きている人は優しく見守るでいいのではないかなと。

 そういうわけで、私はあえてこういった差別や侮蔑の問題、過去にあった偏見や迫害を正面に出して書くと思いますので、悪しからず御了承下さい。
 このスタイルで書くことが言論の自由であると思ってもいます。

 まぁ、シグルトたちがヤニックを外見的に貶めているのは、「醜い心が出た表情」「虚栄心のため隠す態度」を含めて嫌な人間を非難しているのであって、たぶん優しいオーク顔のキャラクターが出てきたら「愛嬌があって可愛い」という評価になるでしょう。
 「坊主憎けれりゃ袈裟まで憎い」そんなものです。(あ、私坊主だった!?)


 さて前置きは置いておきまして。

 今回の再録で、シグルトたちは絶好調でした。
 ほんとにヤニックへの嫌悪感を表すように、強いのなんの。

 戦闘で負傷したのはシグルトだけ。
 しかも防御バフ再付与のために使った【堅牢】でほぼ完治。回復レベル比1なんだけどなぁ。

 オーク戦はロマンがいきなり【眠りの雲】を引いて、使ったら敵が全部眠り、付与しておいた防御バフはあまり活躍しないまま倒し切ってしまいました。
 前のリプレイの時は凄い苦戦した記憶があるんですが…

 ラムーナの【連捷の蜂】は強力ですね。
 しかも来る札来る札皆このカード。
 スキルを使った後はラムーナの独壇場でした。

 まぁ、レベッカが【会心の一撃】でオークロードの止めを刺したんですけどね。


 さて、今回手に入ったものは…
 
◇収入
 ・報酬 600SP
 ・宝箱 200SP

◇アイテム
 ・【聖別の葡萄酒】×1
 ・【金色の鍵】 ×1
 ・【サーフ・レア】×1
 ・【金鉱石】×1
 ・【紅曜石】×1

◇スキル
 ・【妖精の護環】×1
 
 レアリティでは、付帯能力でもある【ジンニャー】がお勧めなのですが、私の場合は自分の関わったスキル【妖精の護環】にしました。このスキルはバフとしても使えるのですが、召喚スロットが余った仲間にかけておくと対呪縛対策になるというものです。
 欲しい方は、うちの『風屋』でも変わらず買えるので、どうぞ。

 シグルトがレベル2→レベル3に。
 【妖精の護環】は彼の装備となります。


〈著作情報〉2018年06月14日現在
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。

 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。

 リプレイ環境であるCardWirthPy Rebootは2018年2月1日リリースされたCardWirthPy 2.3 - CWXEditor同梱版に拙作のカードワースダッシュStandard Editionを使ったスキンを作成してプレイしているものです。
 CardWirthPy Rebootは同名の開発サイト
 ( https://bitbucket.org/k4nagatsuki/cardwirthpy-reboot/wiki/Home )で配布されています。
 カードワースダッシュStandard Editionはこのブログのリンクから行ける、Y字の交差路別院にて配布しています。
 エンジンと付属物の著作権・開発状況・その他の情報は各配布元を御参照ください。

 【CW:リプレイ】、【CW:リプレイ、R】、【CW:リプレイ2】、【CWPyDS:リプレイ】等で書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 また私がお預かりしているMartさんの“風を駆る者たち”リプレイの記事を参考にした内容は、それぞれのシナリオそのものの著作権はそれそれの作者さんにあり、参照記事はMartさんに著作権があります。
 御了承下さい。
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。

 『シンバットの洞窟』はチーム ARA-DDIN(アラ・ジン)のシナリオです。
 現時点でこのサイトの別院(http://sites.google.com/site/waijinokousaro/)で配布されています。
 チーム ARA-DDIN(アラ・ジン)はDjinnさんとるの字さんのユニットです。
 シナリオの著作権は、ARA-DDIN(アラ・ジン)のお二人にあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer1.00です。
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