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『魔剣工房』

2018.06.14(21:14) 451

 『山の洞窟』で、オークを討伐した“風を纏う者”一行は、依頼のあった村で報酬を受け取ると、その村に一つだけある宿で豪勢な夕食にありついた。
 村の依頼を完遂したことに感謝した宿の主人は、その日の宿と夕食を無料で提供してくれたのだ。
 
「あのオークのせいで、随分一般客が減ってしまったんだが…
 あんたたちのおかげで、また客足が戻って来そうだ。
 感謝してるよ。
 
 田舎の宿だから大したことは出来ないが、今日は存分にやってくれ」
 
 宿の主人は上機嫌で、上等の葡萄酒を惜しげもなく振る舞ってくれる。
 
 オークとの激闘で動き回り、空きっ腹を抱えていた一行は、しばらくものも言わず、思う存分暖かい食事を頬張った。
 
 食事が一段落付くと、一行は食後の談笑をしながら、今後のことについて話し合うことになる。

 
「今後のことって言えば、シグルトの剣よね。
 
 うちの主戦力が得物に難ありじゃ、困りものよ」
 
 レベッカがそう切り出すと、シグルトが気まずそうに頭を掻いた。
  
「すまん。
 
 俺の技量が足りないばかりに、皆には迷惑をかけるな…」
 
 シグルトが申し訳なさそうに言うと、仕方ないよ、とロマンが首を振ってくれる。
 
「おぬしは常人離れした膂力を持っておる。
 オークの図太い身体を輪切りにするほどじゃ。
 並の剣ではそれに耐えられまい。
 
 剣の手入れをいつも熱心に、丁寧にしておったのはわしらも知っておるからの。
 
 ましてや、今回は儂らを助けるためじゃったろうが。
 気に病むことではないぞ」
 
 スピッキオが、ほっほ、と苦笑する。
 その横でラムーナも、うんうんと頷いていた。

「私だって、シグルトを責めてるわけじゃないのよ。
 実際、罠が発動した状態のままじゃ全滅だったんだから。
 あの判断は正しかったわ。
 
 私が言いたいのは、現状をどうするかということよ。
 
 戦士にとって、武器は商売道具じゃない。
 それがオークからぶんどった粗悪品じゃ、今後が不安でしょ?」
 
 パーティで一番の現実主義者であるレベッカは、ことに装備に関して厳しい考えの持ち主だった。
 その慎重さが“風を纏う者”の安全を支え、命を長らえてもいるのだが。
 
「確かにそうだが…困ったな。
 
 ここには剣を売る商人などいそうにないし、とりあえず前回のような討伐ものでなければしばらくはオークの蛮刀でも何とかなると思うんだが…」
 
 パーティの資金を気遣って遠慮するシグルト。
 それ以上言うな、とレベッカが制した。
 
「リーダーのあんたが、しみったれたこと言わないっ!
 
 シグルトの豪腕は私たちにとって絶対必要よ。
 元は素人だったラムーナだって、良い剣を持ったらあの働きだったじゃない。
 貴方の力に見合う武器は早急に必要だと思うの。
 
 その腕力に耐えられない武器じゃ、今回みたいにいつ折れるか分からないし、安物や数打ちはいくら買っても無駄になるわ。
 今回みたいに、仕事が終わる間際に武器が壊れるとは限らないしね。
 
 そこで、よ…
 今の私たちはかなり資金もあることだし、この際、銘工の剣というやつを奮発して買ってみない?」
 
 そう言うとレベッカはフォーチュン=ベルに住んでいるという、噂の銘工について語りだした。
 
 
「…ブレッゼンっ!?
 
 もしかして“神の槌”か!!!」
 
 レベッカが語った銘工の名に、シグルトが目を丸くした。
 
「…?
 
 何、シグルト…知ってるの?」
 
 誰も知るまい、と自慢げに話していたレベッカは鼻白んだ。
 
「…俺の住んでいた地方では有名人だ。
 一部の好事家では、その傑作に城を代金にしたという話もある。
 
 “神の槌”ブレッゼンの〈魔剣〉か、ドワーフの銘匠“生み出すもの”マクラホンの〈獣の銘〉。
 武具の、中でも刀剣では、故郷でこの二つが不動の銘だった。
 
 俺が生まれた国では、まともな剣は騎士か優れた戦士しか持てないというしきたりがあったんだが…
 ブレッゼンの銘を持てるということは、その中でも別格扱いされたものだ」
 
 シグルトが冒険者になるまで剣を持たなかったのも、故郷の風習からだった。
 彼の故郷では、刀剣は神聖なものとして珍重されていた。
 
 そして半世紀も経たないうちに、シグルトの故郷を含め北方に名を知らしめた銘工といえば、件のブレッゼンがいるのだという。
 
 “神の槌”と呼ばれるこの人物は、古に存在した伝説の武具を再生出来るという噂だ。
 彼の作った武具、特に刀剣は〈魔剣〉と称され、威力と宿した不可思議な力ゆえに、天井知らずの値段で取引されていた。
 
「ブレッゼンは気難しい人物で、貴族から身を隠すためにどこかに工房を変えたと聞いていたが…」
 
 シグルトの話を聞いていたレベッカは、「その件の銘工がこのフォーチュン=ベルにいるらしいのよ」、と続けた。
 
「シグルトの言う通り、ブレッゼンはもの凄い気難しい人物だって話だわ。
 今では、自分の造った武具を認めた人にしか売らないらしいのよ。
 
 でも、〈魔剣〉以外に普通の武具は作って卸してるみたい。
 無銘の形で市場に出回った業物が、ちょっとした話題になることもあるそうよ。
 
 本物の〈魔剣〉は、市場でも銀貨で万の桁、って世界だから、魔力付きには手が出ないけれど…
 ダメで元々、一度覗いてみましょう。
 運がよければ、そこそこの業物が手にはいるかもしれないわ。
 
 それに私の勘だと、シグルトってその手の職人に気に入られそうなタイプなのよね~」
 
 レベッカの言葉を聞いて苦笑しながらも、シグルトは頷く。
 
「武具に関係無く、偉大な銘工なら俺も会ってみたい。
 
 武器をどう振るうべきか、それを語ってくれるかもしれないしな」
 
 決まりね、とレベッカが手を打った。
 
 
 一度リューンに戻って為替手形などの処分を終え、宿の親父にまたしばらく旅に出る旨を伝えた“風を纏う者”一行は、数日後フォーチュン=ベル郊外へとやってくる。
 
 『ヘフェスト』と呼ばれるブレッゼンの工房は、フォーチュン=ベルにほど近い桃仙山の山裾、森の中にひっそりと在った。
 
 とりあえずは、と「武具の修理、販売承ります」と書かれた販売所の方に顔を出す。
 呼び鈴をならすと、陽気そうな婦人が出てきて対応してくれた。
 
「いらっしゃいませ!

 初めてのお客さんね」
 
 サンディと名乗った人の好さそうなその婦人は、ニコニコと微笑んで一行を迎え入れるとお茶を出し、もてなしてくれた。
 
「俺は冒険者“風を纏う者”の代表者シグルト。
 
 ここの噂を耳にしてやって来たのです。
 活動拠点はリューンなのですが、フォーチュン=ベルには仕事で来たことがあります。
 
 今回は仕事で武器を破損してしまったので、修理か新しい武器の購入を、と思ったのですが…」
 
 シグルトが事情を正直に話す。
 サンディは相槌を打ちながら聞いていたが、それなら、と工房の方を指差した。
 
 工房からは、離れていても休むこと無く鋼を打つ甲高い音が響いてくる。
 
「シグルトさんっておっしゃったわね。
 
 あなたなら主人も武器を打ってくれると思うわ。
 腰の剣、折れてしまったっていうけれど、とても大切に手入れをしていたのがわかるもの…」
 
 この工房では武器の修繕もしてくれると聞き、シグルトはオークの剣を処分して愛用していた剣を持って来た。
 今護身用に持っている得物は、ラムーナが魔剣を手に入れる前に使っていた小剣である。

 壊れた剣の砕けた刃は袋に収めてあるが、磨かれた柄を見れば、どれだけ大切に使われていたか分かるとサンディは言う。
 
「…主人が〈魔剣〉を与える人を選ぶのは、〈魔剣〉にも意思があるからなの。
 
 〈魔剣〉は、使い手に応じて邪剣にも、聖剣にもなりうるわ。
 意思を持つ故に使い手を支配することさえあるのよ。
 愚か者が使えば…剣を振るうはずが、剣に振り回されるような羽目になるというわけ。
 
 優れた〈魔剣〉には、それがあるだけで運命を変革する力を発揮するわ。
 だからこそ、主人は使い手の資質を見極めて〈魔剣〉を託すの。 

 私の勘だと、貴方は剣の方から求められる素質がある…
 きっと、貴方は〈業物〉と称されるような武具を持ったこともあるでしょう?

 匠に対する礼節をわきまえているもの」

 サンディの洞察に、シグルトは内心かなり驚いていた。
 
 かつてシグルトは、世界に一本しかないという特別な槍を所持していたことがある。
 ドワーフの鍛冶師マクラホンの銘を刻んだ、漆黒の槍だ。
 当時シグルトの技量は、その槍を扱うのに相応しいものだった。
 
 だが現在は、身体中に故障を抱え頻繁に武器を破損する始末だ。 
 サンディの言う素質など自分にはあり得ない。
 そう、シグルトは思っていた。

 シグルトの心を知ってか知らずか、サンディはそれ以上は追求しなかった。
 
 「他の方はここでお茶でも飲んでゆっくりなさってね」、と手作りの茶菓子を用意してくれる。

「なんなら、待つ間、商品でも見せましょうか?」
 
 そのように、親しげに話してくれた。
 
 仲間たちがサンディの言葉に甘え、くつろぎ始める。
 ロマンやラムーナなどは、好奇心に目を輝かせて武具を観察し始めた。
 
 シグルトはサンディに一礼すると、販売所を後にして工房に向かった。
 
 
 絶え間無く鉄を打つ音が響いている。
 鍛冶は熱した鉄を叩いて伸ばし、不純物を火花として弾き出す根気のいる作業だ。

 音が大きくなるにつれ、胸が自然と高鳴った。
 
 剣士にとって、優れた刀工とは医者のような存在である。
 武器は使う度に摩耗し、消耗していく。
 それを直すことが出来るのは、専門の技術を持った刀工だけなのだ。
 
 良い刀工に巡り会えば、優れた剣が使える。
 それは、剣士が最大の技量を発揮するために無くてはならないことだ。
 
 優れた剣は、優れた刀工しか直すことが出来ない。
 銘剣の類とは、研ぎ手が達人であって最高の切れ味を取り戻す。
 
 逆に愚鈍な刀工が扱った刀剣は、どんな銘剣の類でもなまくらと化すのである。
 
 シグルトは、自身の剣を普通の鍛冶師に扱わせなかった。
 彼の目に適う刀工がいなかったからだ。
 
 幼少の頃、シグルトは鍛冶師のところに通っていたことがある。
 その鍛冶師は最高レベルの刀工であり、武具の手入れはその鍛冶師から学んだ。
 
 鍛冶師…マクラホンが作った〈獣の銘〉と呼ばれる刀剣は有名だ。
 シグルトの国においては、剣を志す者にとってあこがれの銘柄だった。
 
 優れた武具を見ていたので、自分の目が厳し過ぎるのだという自覚はあった。
 だからシグルトは、あえて今まで優れた剣を使わなかったのだ。
 優れた剣は、手入れをする人間も選ぶのである。
 
 金銭的な余裕ももちろん理由の一つだった。
 だが、本当の理由は別である。
 
 己の腕を磨き、武器の性能に甘えないために。
 そして、思う存分力を込めて振るえるだけの剣が見つからなかったためだ。
 
 妥協を許さないシグルトの鍛錬から繰り出される技は、武具に多大な負担をかける。
 武器そのものが、技によって生まれる力に耐えられない。

 優れた才能が凡庸な剣を壊してしまうことは、剣士の世界では時折あることだ。 
 シグルトが本気で技を放っていたならば、今までの剣では数回の使用で使い物にならなくなったはずだ。
 
 今回の剣の破損も、同様だ。
 堅牢な石の扉を穿つほどの刺突は、頑強だった剣を粉微塵にしてしまった。
 
 初めて振るった剣はロマンを守るために、悪漢の重い得物を止めてへし折れた。
 最初の依頼で振るった剣は、敵の骨に食い込んでやはり折れた。
 
 仲間には話していないが、本当は自身の力と武器の折り合いが取れず、故障だらけの身体の負担にさえなっている。
 
 そんな状況だからこそ、シグルトは伝説的な名を持つブレッゼンに期待していた。
 彼になら、せめて力一杯振るえる剣を作ってもらえるのではないか、と。
 
 高望みはしていなかった。
 魔剣である必要などない。
 シグルトが第一に望むのは、武器の耐久力である。
 
 そのような妥協したことを言えば、匠の誇りを傷つけることも分かっている。
 匠の武器とは、全てを備えているものだ。
 
 伝説の刀工から魔剣を買うことが難しいだろう、とも感じていた。
 ブレッゼンの作る魔法の武具は、一番安い短い物でも銀貨五千枚を下らないで売られている。
 
 この間まで金に困っていた仲間たちに、剣一本で大きな負担をかけるわけにはいかない。
 
(まずは、砕けたこの剣が修理出来るのか尋ねてみよう)
 
 しみったれたことを考えているな、と苦笑したシグルトは、足を速めて工房の扉の前に立つ。
  
 数回ノックしてみたが、聞こえるのは鉄を打つ音ばかり。
 
〝主人は仕事に集中していると、周りのことが見えなくなるわ。

 ノックして返事がなければ、遠慮無く入って待っていてね…〟
 
 サンディが事前に言ってくれた言葉に従い、シグルトは工房の扉を遠慮がちに開けた。
 
 
 そこはむっとする熱気のこもった空間だった。
 
 シグルトが一歩足を踏み入れると、今まで鳴り響いていた金槌の音が不意に止む。
 
「…何者じゃ?
 
 わしはここに入ることを許しておらんぞ」
 
 厳つい、見るからに頑固そうな老人であった。
 不躾にシグルトを見ると、事情を察したのか、ふんと吐息を吐く。
 
「サンディめ、また勝手なことをしおって…
 
 貴様はそこの腰掛に座っておれ。
 今は手が離せん」
 
 そう言うと、老人はシグルトがそこにいないかのように、また作業を再開した。
 
 シグルトは黙って老人の言葉に従い、その作業を静かに眺めていた。
 
 かまどの炎によってぼさぼさにちぢれた灰色の髪と、立派な髭。
 眼光鋭い瞳が、太い眉の下で一心に赤く熱せられた鋼を睨み、武骨で逞しい腕がハンマーを振り下ろす。
 
 火花を散らして響く金属の声。
 
 シグルトは、子供の頃に見た鍛冶の風景を思い出していた。
 
 外で皆で騒ぐ子供たちと違い、シグルトはこうやって鍛冶屋や細工師の作業を眺めるのが好きだった。
 そこには匠と材料との会話があり、何かが形作られていく様は魔法のようだと思ったものだ。
 
 鉄の溶ける匂いと、空気に混じる水分が熱せられる独特の音。
 吸い込むとむせ返るような熱い空気は、シグルトの頭をぼんやりとさせる。
 
 …どれくらい時間がたっただろうか。
 老人はやっとこではさんだ熱い鉄塊を、慎重に水につける。
 
 ジュッゥゥゥゥウ!!! 
 
 直後、もうもうと蒸気が立ち上った。
 老人は取り出したそれをじっと窓にかざして見つめ、その後一心に磨き始める。
 
 また地味な作業が続く。
 リズミカルな、砥石と鉄のこすれる音が繰り返される。
 砥石を変え、時に鑢を使い刃の形にするまで長い時間がかかった。

 用意してあった金属製の鍔に柄。
 手慣れた様子でそれらを取り着け、一本の武骨な剣ができる。
 
 やがて老人の手がようやく止まった。
 
 老人は手に持ったそれを見つめ、一つ頷くと石でできた台の上に同じように置かれた他と一緒にそっと並べる。
 それはまるで、子供をベッドに寝かせようとする父親のようであった。
 
「…待たせたな。
 
 最近の若い者にしては、辛抱というものを知っておるようだ」
 
 そう言って自身の肩を叩きながら、ぎろりとシグルトを見た匠は、隙の無い足取りで側にやって来た。
 
 かつて戦士だったのだろう。
 老人の鋼鉄のような腕には、火傷や作業でついたものとは明らかに違う刀傷や鏃を引き抜いた痕があった。
 
(優れた作り手であるということは、優れた使い手でもある、ということか…)
 
 そんなことを思いつつ、シグルトは名を名乗り、ここにやって来た理由を簡単に告げた。
 
 老人は黙って聞いていたが、その武骨な腕をぐいと前に突き出した。
 
「…砕けた剣を見せてみろ」
 
 低く恫喝するような声であった。
 子供がいれば泣き出してしまっただろう。
 
 シグルトは、鞘に入ったままの折れた剣と袋に入った破片を差し出した。
 
 老人はそれを受け取ると、砕けた破片や剣の全体を丁寧に調べていく。
 いや、調べるというよりはいたわっているかのような手つきであった。
 
「…こやつを産んだ親は未熟者よ。
 そして貴様の前に振るっていた主も未熟だった。
 
 だが貴様は、己の未熟を知って振るったのだろう?
 欠片の一つまで、繰り返し研ぎ磨いてある。
 最後に可愛がってくれる奴に出逢えたのは、幸せというものよ。
 
 得物には領分がある。
 こやつも、己が領分を超えた故に砕けただけだ。
 
 だが、鋼がちゃんと教えてくれるわ。 
 本望だったと。
 
 完全に精が死んでいるが、実に見事な壊れっぷりよ。
 これでは、直すなど無粋というもの。
 鋼に戻し、生まれ変わらせてやるのが一番だ。
 
 形あるものには、何れ終焉が訪れる。
 主の技で結果を出し、死んで逝くのは武器の冥利。
 
 器械の生を全うし役目を終えた、果報者だ」
 
 その剣を静かに石の台に乗せると、老人は幾分優しげな目でシグルトを見た。
 
「お前は未熟だが、武器に愛されている。
 武器を愛でるということも知っているな…
 
 だから、お前にも鋼の声が聞こえるだろう?」
 
 シグルトは黙って頷いた。
 
 剣が砕ける瞬間、シグルトは握っていた剣の悲鳴と、同時に主を守りきったという誇らしげな音を聞いたのだ。
 
 戦い続ける間、剣はシグルトに武骨な歌と頼もしい重さでいつも応えてくれた。
 握り締めるたびに呼び覚まされる勇気と力。
 だからこそ、恐れることも無く剣を振るい続けられた。
 
 そう語ると、老人はシグルトの肩に手を置いた。
 
「…この中から選べ、シグルトとやら。
 
 ここに並んだ鉄の子供らは、お前と同じ未熟なやつらよ。
 
 しかし、貴様が腕を磨くうちに、その精が高まっていく。
 お前と共に強くなるだろう。
 時が来たら、それをわしが磨き、鍛え直してやる。
 
 お前が鋼の声を聞き続ける限り、わしも応えてやろう」
 
 老人は、節くだった太い指で石の台を指差した。
 そこには、この刀工が作り上げた数々の刀剣が並んでいる。
 
 シグルトは、先ほどまで老人が打っていた両刃の長剣を迷わず掴んでいた。
 
「かつて不倫の不名誉を負って、王国を去った最強の騎士ランスロット。
 汚辱の中で、王への忠義と王妃への愛に生きた武骨な心の英傑よ。
 
 これはその騎士の武における伴侶。
 銘はアロンダイトという。
 
 後にはキアレンツァ、アルタキアラ(オートクレール)と呼ばれ、甲冑を断つ無双の切れ味は騎士の誉れと謳われた。
 伝説の英雄ローランの友、騎士オリヴィエもこの剣を振るって武勇を轟かせたという。
 
 これは、その剣を摸して打ったものだ。
  
 お前が来た時に鍛えておったのは、必然だったな…」
 
 にやり、と老人…“神の槌”と呼ばれる匠ブレッゼンは、不敵な笑みを浮かべた。
 
 握った武骨で黒い鉄の塊。
 
 シグルトは、その産声と歓喜の声を確かに感じていた。
 愛おしげにその剣を撫でる。
 
「アロンダイト。
 お前の主となるために励むことを誓おう。
 
 そして生涯の友になれるように願う、幾久しく…」
 
 そっと刃に口付ける。
 古い古い、剣士と剣が交わす契りの儀式だ。
 
 コォォォン…
 
 震えるように啼き、その黒い刃は新しい主の誓いを受け入れるのだった。



 じゃじゃ~んと二話目を連続アップ。

 Djinnさんの『魔剣工房』再録です。
 短い上に内容もほとんどいじっていませんが、このエピソードはある意味完成されていて余計なものはいらないかな、と思ったもので。

 いろんなイベントがあるシナリオですね。
 本来の導入部は冒険者と親父の掛け合いが面白いのですが、私のリプレイではそういう部分はカットしてあります。
 シグルトがハゲハゲ言ったり、エスカルゴと呼ばれたりは無いでしょうし。
 こういう脳内補完もまたリプレイ小説だからこそできるものですね。

 シグルトが選んだアロンダイトは見た目がオーソドックスで、特殊能力に癖がある他の魔剣に比べて扱い易いものの一つです。
 フツノミタマとともに、打って貰う人多いのではないでしょうか。
 本当はもう少し日本刀シリーズとか、ロングソードの類増得てほしかったんですよねぇ。
 フォーチュン=ベルのスピンオフ作品作ってもいいか聞いたら。DjinnさんはOKと言ってくれましたので、Y2つ版の魔剣工房作った場合、需要あるのかなぁと。
 まぁいったん落ち着いてからですね。風呂敷広げすぎると収集憑かなくなりますし。

 永続化できれば販売品もありなのですが、普通は長く使って育てた剣を使いたいですよねぇ。
 アロンダイトでダメージを与えた敵は行動が暴露されるので、一騎討ちではランスロットの如く強くなれます。
 カウンターが入れやすくなるんですよね。
 私の作ったカウンター&チャージのスキルとは相性抜群です。

 一気に話を進めたくなかったため、今回は鉱石を温存しました。
 魔剣の代金は前回と同じ処理でどうにかなってます。
 お金の変動等は次回にでも。


〈著作情報〉2018年06月14日現在
 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。

 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。

 リプレイ環境であるCardWirthPy Rebootは2018年2月1日リリースされたCardWirthPy 2.3 - CWXEditor同梱版に拙作のカードワースダッシュStandard Editionを使ったスキンを作成してプレイしているものです。
 CardWirthPy Rebootは同名の開発サイト
 ( https://bitbucket.org/k4nagatsuki/cardwirthpy-reboot/wiki/Home )で配布されています。
 カードワースダッシュStandard Editionはこのブログのリンクから行ける、Y字の交差路別院にて配布しています。
 エンジンと付属物の著作権・開発状況・その他の情報は各配布元を御参照ください。

 【CW:リプレイ】、【CW:リプレイ、R】、【CW:リプレイ2】、【CWPyDS:リプレイ】等で書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 また私がお預かりしているMartさんの“風を駆る者たち”リプレイの記事を参考にした内容は、それぞれのシナリオそのものの著作権はそれそれの作者さんにあり、参照記事はMartさんに著作権があります。
 御了承下さい。
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。

 『魔剣工房』はDjinnさんのシナリオです。
 現時点でこのサイトの別院(http://sites.google.com/site/waijinokousaro/)で私が代理公開させていただいてます。 
 シナリオの著作権は、Djinnさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer 1.09です。
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