〈希望の都〉と称される、『フォーチュン=ベル』。
偉大な英雄たちを多数輩出した冒険者の都である。
四方を美しい自然に囲まれたこの都市は、風景同様に美しい女王が治めるという都市国家だ。
その街道を賑やかに進む冒険者たちがあった。
“風を纏う者”である。
一行は、先日立ち寄った『魔剣工房ヘフェスト』の話題で盛り上がっていた。
シグルトが工房の主であるブレッゼンの作業が終わるのを待っていた間に日が暮れてしまい、一行はブレッゼンの家に一泊させてもらったのだ。
…遡って前日のことである。
ブレッゼンが打った剣をシグルトが譲り受けたと知ると、サンディは「やっぱり」と微笑んでいた。
そして、剣の料金について話そうとした時である。
「金よりもまずは酒だ。
一日槌を振るったら、喉が渇いた。
今日は、新しく頼んでおいた酒が来る日じゃろう?」
そう言ってブレッゼンが酒を求めると、サンディが困った顔になった。
「それが…いつも配達してくれる酒屋さんが、ぎっくり腰でね。
頼んでおいたお酒が届いてないのよ。
倉庫から秘蔵のお酒でも出してくる?」
途端に凄まじい形相になったブレッゼンは、テーブルを金槌のような拳で叩いて怒鳴った。
「あの馬鹿もんがっ!
ええいっ!
今から行って、そのへたれた腰を鍛え直してやるっ!!!」
地団駄を踏む匠は、まるで子供のようだ。
ロマンやラムーナなどは、ぽかんとしている。
「この人、三度の食事よりお酒が好きなの。
今日は遠方の珍しい地酒が飲めるはずだったから、上機嫌で仕事を始めたんだけど…」
今にも飛び出しそうなブレッゼンを押し止めつつ、サンディが事情を説明してくれた。
しばらく悔しがるブレッゼンを見ていたレベッカは、何かを思いついたように、にやりと笑って荷物袋から酒瓶を取り出した。
それを見たブレッゼンが、ぴたりとその動きを止める。
「も、もしやそれは…やはり【フォレスアス】かっ!!!」
ブレッゼンの興奮は、尋常ではなかった。
酒屋を鍛え直すと息巻いていた時より、鼻息が荒い。
「ふふふ…酒好きなら、この酒に心が動かないわけないわよねぇ。
ポートリオンなら、銀貨二千枚の価値が付く超一品、シグルトの武器代とお近づきの印ってことで…」
レベッカがそう持ちかけた途端、ブレッゼンは目にも止まらぬ速さでその酒瓶をかっさらった。
「乗ったっ!!!!!
…ええいっ、お近づきと言わず泊まっていけぃっ!
この粋な計らいに応えずば、酒好きの名が廃るわっ!!!」
即答して、急に上機嫌になったブレッゼンは、もう待てぬとばかりに手に入れた酒をやり始めた。
その後、サンディが振る舞った御馳走を食べながら、“風を纏う者”一行は大いにブレッゼン夫婦と親交を深めたのだった。
特に自身も酒好きかつ大酒豪のレベッカは、すっかりブレッゼンお気に入りの飲み友達になっていた。
十年来の友のように酒について話すレベッカとブレッゼンに呆れながら、一行はサンディから様々な武具をゆっくり見せて貰うことが出来た。
ロマンがブレッゼンの作った武具や魔法の道具がいかに貴重か興奮して話し出す。
後はラムーナが踊り出し、サンディが手拍子をして、その勢いで夜が明けてしまった。
結局サンディの作ってくれた朝食まで御馳走になった一行は、昼近くになってようやく重い腰を上げたのだ。
「…また良い酒を持ってこい。
美味いなら、泊めてやるぞ」
灰色の髭を撫でながらニヤリと笑い、ブレッゼンが表まで送ってくれた。
シグルトは新しい愛剣を軽く叩くと、ああ、と呟いて工房から出発したのだった。
「ねっ、私の勘は当たったでしょう?」
レベッカは、工房を訪れる前にシグルトがブレッゼンに気に入られるだろうことを予測していた。
「気に入られたのはお前の方だろう?
飲むペースが速すぎて、サンディさんが随分心配していたぞ?」
苦笑して応えるシグルトに、レベッカは冗談めかして舌を出した。
「ま、気持ちの好い酒好きはみんな友だちって奴ね。
サンディさんの話だと、あんなに嬉しそうな顔をする爺さんは最近見たこと無かったそうよ。
シグルトだって、お酒を飲んでる時も無言で並んでて、まるで親子みたいだったわ」
しかも出発の時など目で会話してたし、とレベッカがからかう。
「…そうだな。
また来よう、こいつのためにも」
シグルトは、武骨な腰の剣の柄を撫でた。
「でも、今はどう見ても鋳物や骨董品と大して変わらない鉄の塊に見えるわ。
それがあの【フォレスアス】との交換なら、普通じゃ怒るわよ。
…あのすごい武具の数々を事前に見てなかったらね」
レベッカの意見に同意するように、ロマンもサンディに武具を見せてもらっていた時のことを話し出した。
ある意味、一番驚いていたのはこの少年である。
「す、すごい!
この鎧、真なる銀だよ!!」
翼のような肩当てのついた秀麗な細工の鎧を見て、ロマンが興奮したように溜息を吐いた。
銀には攻撃的な魔法を遮り、実体の無い存在にその光を及ばせ、影響する力を持つ。
鏡に映らない吸血鬼も銀製の鏡に映り、幽霊や精霊のような存在も銀の武器で倒すことが可能なのだ。
しかし、銀は鉄の2倍近い重さがあり柔らかい。
銀の有用性は知られていたが、高価なことに加え加工の難しさに使い勝手の悪さから、それほど銀の武具は普及していなかった。
だが、銀の効果をそのままに軽く頑丈になったものが真なる銀である。
ミスリルという特別な鉱物がある。
魔法の金属として、オリハルコンと並んで称される高価な物質だ。
本来魔法の金属ミスリルは、銀貨一枚分の量で銀貨千枚に匹敵する価値になる。
ミスリルは希少金属なのでめったに手に入らず、それのみで出来た鎖帷子は龍の鱗よりも固く羽根のように軽い…それ一つで国が買える程だ。
だが生成が難しいものの、ミスリルと銀で合金を作ると、堅牢な固さと鉄より軽い魔法の金属になる。
これがミスリル銀、あるいは真なる銀と呼ばれるものだ。
含有するミスリルの量によって効果が違うが、銀に対して1%を切る割合でもかなり優秀な金属となる。
極めてまれだがミスリルを含んだ銀の鉱石が発見されることもあり、これは加工すると真なる銀になるので、真なる銀そのものをミスリルと呼ぶ場合もある。
ミスリルはそれほど世に出回らない幻の金属なのだ。
基部になる銀そのものの価値、ミスリル含有の希少性、合成して真なる銀を作り出す手間、それを鎧に加工する技巧。
ロマンが驚いた軽量の金属鎧を、こともなげにサンディは銀貨三千枚でよいと言った。
それが市場に出たらとしたら、どれほど天井知らずな価格になるだろうか…
「いいのよ~
あの人と私が食べていく蓄えはあるし、私たちが損をしない程度にお金を貰えればそれで充分。
ただ、これらの武具は市場に出さないでほしいの。
もし必要なくなったら、うちで半額出して買い取るわ。
この“子”たちは、あの人の作った子供のようなものだから。
貴方たちを見込んでのことよ…お願いね」
サンディは愛おしそうに、並べられた武具を眺めて、そう言った。
一行は皆頷き、引き続いて武具を見せて貰う。
やがて、ある道具を見てロマンの動きが固まった。
「う、嘘…!
これ、アスクレピオスの知恵の杖じゃないかっ!!」
アスクレピオス…人のために医学を発展させた異国の賢人である。
後に人間を死から蘇生させた咎で、主神の放った雷に打たれて死んだが、天に昇って医学の神になったという。
「うちにある武具は、伝説ほどの力は出さないんだけどね。
前に夫が忠実に魔法の武具を再現したら、あまりに凄まじい効果で、その威力を狙う人たちが現れて、戦争が起きそうになったことがあったのよ。
それ以来、あの人は作る武具の理不尽すぎる力は眠らせて、売る相手も選ぶようになったわ。
人の手に余る武具は、持つ人の運命を歪め不幸を呼んじゃうから。
でも、人に扱える状態にしただけでもその効果は凄いの。
その杖も、人を生き返らせることは無理だけど、魔術師の知恵が込められていてたくさんの魔術を使うことが出来るらしいわ」
ロマンはサンディの言葉にいちいち頷いて、その杖をしっかりと手に取った。
「…カドゥケウス。
原典は魔術師の頂点を象徴する、ヘルメスの双頭の蛇の杖。
ヘルメスの杖ケリュケイオンとも、医学と蘇生の象徴であるアスクレピオスの一蛇(いちだ)の杖とも、本来は別のものなんだけど形が似てるから同一に見られることもあるね。
アスクレピオスはヘルメスの知恵を模すために、同じような一蛇(いちだ)の杖を持っていたと異説が残ってるほどだよ。
だから、あらゆる魔法を封じ、両方の杖の由来を模して生み出され、ヘルメスの杖の別名カドゥケウスの名をあえて冠して、大魔術師が傍らにおいたのがこれ。
この翼の形をした杖の先は、知識への飽くなき探究心と飛躍を表してる。
アスクレピオスの【知恵の杖】とも呼ばれた伝説の杖だよ。
人であったアスクレピオスが知識の研鑽の果てに神になった、その業績と知識を讃えてつけられた異名だね。
いろんな魔法の力を魔術書の助けなく、魔術師の付帯領域…自身の深遠にある魔術回路の要所に喚起することができる。
まさに偉大なる知恵と技術の証。
この歳で見ることが、触れることが出来るなんて、僕は、僕は…!」
拳を握り締め、ロマンは感涙していた。
横で他の者たちは、そうすごいんだね、と意味も分からずなんとなく相槌を打っておいた。
「あの時のロマンは目が怪しかったわよ。
あの杖は高くて買えなかったけど、まだロマンには早いってことよね~」
レベッカにからかわれてロマンがむっとしている。
「あの杖がどれほど貴重か分かってないから、そんなことが言えるんだ…
あれだけで複数の魔法が使えるんだよっ!
それに杖に込められた太古の魔術の知恵…すごいんだよ、あれはっ!!」
むきになったロマンはむせてしまい、ラムーナに背中をさすって貰う。
「求め続ければ、いつかお前の手に来る。
それが優れた道具というものだ。
あの杖が、お前が持つべき杖になるといいな」
シグルトはそう言ってロマンの肩を軽く叩いた。
その姿を見て、ラムーナも昨晩話した匠のことを思い浮かべる。
「あ、これ…私の持ってる剣に似てるよ?」
ロマンの横でラムーナが、非売品だという特別な棚にあった剣を指差した。
その言葉に、いい気持ちで酒を飲んでいる様子だったブレッゼンが近づいてくる。
「ふむ…娘、お前の剣を貸してみろ」
ブレッゼンの有無を言わせぬ言葉にラムーナは困ったように仲間を見るが、シグルトが頷くので黙って自分の【スティング】をブレッゼンに渡す。
「ほう、これは…
娘、良いものを手に入れたな。
これは儂のような【魔剣鍛冶師】が打ったものだ。
制作されたのは二百年ほど前か。
威力調整の癖からして、儂の師の同門かもしれん。
この【スティング】は…ちょっとした欠陥があるな。
武器を振るった時に【生命感知】が攻撃の魔力領域と同化しておるから、一度攻撃をしないと力を発揮できん。
付与された感知の魔力を使いこなすには扱いづらかろう。
ただ、精度向上の魔力がかけられており、儂の打った【スティング】より手先の巧みさ扱うことに向き、命中精度が高い。
儂の方は威力が優れている、といった感じだな。
武器としての性能は良いものだ。
お前は成長期じゃろう?
これは今のお前には少し長すぎるし、悪くはないが最高の相性とは言えんな。
儂の見立てでは、お前は舞踏を取り込んだ技を使うだろう?
こいつの特性である〈刺し貫く攻撃〉より、シャムシールやタルワールのような曲刀で撫で斬る方が良いかもしれん。
突き技は剣が肉に刺さると動きが硬直してしまうからな。
この武器を使い続けるのもまた良いかもしれんが、行き詰まったら儂の言葉を思い出して装備を工夫してみるといい」
さすがは稀代の鍛冶師である。
さっと持って見ただけで、ラムーナの魔剣の特性をいとも簡単に鑑定してみせた。
「【魔剣鍛冶師】?」
聞き慣れない言葉に、ラムーナが首を傾げた。
「武器に剣精を込め、超常なる力を持った剣を打つことができる、儂のような業を持った刀剣鍛冶師よ。
儂は防具職人(アーマースミス)や、他の武器を作れる武器職人(ウェポンスミス)でもある。
一番得意なのは剣や刃を持つ槍なんだがな。
魔力の込められた武具は凄まじい力を持つ。
故に戦争でよく利用される。
良き戦士が戦場で振るうのはいい。
血に飢えた所業とはいえ、武器は戦うための器械だ。
だが、腕も志も無い愚物が、虚飾のために振るうのは我慢ならん。
それは儂ら【魔剣鍛冶師】に対する、侮辱に等しいのだ」
そしてぐいと酒を呷る。
「多くの先達が権力者の下らぬ虚栄心のために打ちたくもない魔剣を造ることを強要され、迫害と弾圧によって鍛冶師は斃れ、多くの業と伝統が奪われた。
かつてともに酒を飲み、その武勇に惚れ込んで会心の一本を譲った友も、そやつを妬む愚か者によって暗殺された。
魔剣の力は強く、魅惑的だ。
それを振るう者はその力に溺れやすく、意志強靭にして賢明なる使い手が力に飲まれずとも…魔剣を扱う者を、妬み、羨み、奪おうとする輩がいる。
力とはそういうものだ。
魔剣を持つ娘よ。
ゆめ忘れるな。
そして身も心も屈すること無く、健やかにあれ」
語る刀匠の目には、どこか寂しげな光が宿っていた。
ラムーナがブレっ禅の言葉を思い出し、感慨にふけっていると、スピッキオが興奮したロマンをなだめるようにほっほと笑う。
「薀蓄はそのあたりにしておけぃ。
もう、街が見えてきたわい」
傾きかけた日差しの下、希望の都は赤く染まりつつあった。
フォーチュン=ベルにある冒険者の宿『幸福の鐘亭』で一晩過ごした“風を纏う者”は、次の日に日用品の買い出しをすることになった。
立ち寄ったのは、先日アレトゥーザで魔法の指輪を売ってくれた商人、ロゴージンの店である。
「おう、あんたらか。
なるほど、ブレッゼンお目にかなったってわけだな?
爺様が造った剣をあずけられた奴、久しぶりに見たぜ。
やっぱり俺の眼に狂いはなかったな。
アレトゥーザじゃあたんまり勉強したんだから、俺んとこの店を贔屓にしてくれよ」
調子よく片目を瞑って見せるロゴージンに「あんたの品揃え次第ね」とレベッカが返した。
ここでいつもの商才を振るったレベッカは、よく吟味の上いくつか道具を仕入れる。
「【ランタン】に【鏡】、あとは新品の【火口箱】…うん、準備万端ねっ!」
資金に余裕が出来たからと、レベッカは今まで間に合わせだった道具を新調していた。
レベッカの持つ道具を見ながら、シグルトは首を傾げる。
「【ロープ】は買わなくて良かったのか?
この際、購入しておけば…」
レベッカはチッチ、と指を振ってその意見を遮ると、道具袋を指差した。
「ただでさえいろんな道具が溜まってるんだから、荷物を増やし過ぎるのは良くないわ。
ロープの類は意外とかさばるし、どこにでも売ってるから、現地調達がベストね。
それにロープは、古くなるとすぐ切れるのよ。
持てる範囲で、よく使うものを揃えればいいの。
今回買った【ランタン】や【火口箱】は野営で頻繁に使うし、【鏡】は髪の手入れから合図の道具になるわ。
荷物袋は、いつも整頓しておかなくちゃね」
レベッカは道具の管理に余念が無い。
無駄な物は即売りさばき、あるいは別の物に交換してしまう。
彼女の差配で“風を纏う者”の荷物が最小限で済んでいるのも事実である。
金銭に関しても、大量の銀貨を持ち歩くことは無かった。
“風を纏う者”の持つ金銭は、総額で銀貨八千枚を超えるほど貯蓄されていた。
だが金持ちに見えると厄介を招くからと、レベッカは銀貨で千枚程度を小分けにして所持し、多くはすぐ都市部で換金可能な金貨に換えてある。
「…今回ちょっと買った物が多かったから、手持ちの銀貨が少なくなって来たわ。
まぁ、手持ちの金貨を両替すれば、使う分ぐらいはすぐ用意出来るんだけど。
せっかく大きな都市に来てるんだし、少し仕事を探しておきましょうよ」
「あいかわらず守銭奴じゃのう」、とスピッキオが呆れる。
「新しい剣が手に入ったから、俺の方は問題無い」
そう言ったシグルトに応えるように、柔らかな風が吹いた。
(「私もいるんだからっ!」)
オーク退治の時妖精の力を得たシグルトは、精霊の言葉を聞くことが出来るようになった。
今でもその姿を見ることは出来ないのだが、風の精霊〈トリアムール〉と意思の疎通が以前より容易に行える。
妖精の術が持つ力も含め説明しているが、精霊との感応は特殊性が高いため、仲間にはいまいちその優位性を理解してもらえない。
シグルトはその反応に、あれトゥーザのレナータが感じているだろう、精霊術師の疎外感というものを味わっていた。
(扱いには注意しなければいかんな。
俺への評価が仲間に及ぶなら、つまらない迫害も道を塞ぐ驚異だ)
そんなことをリーダーが考えている間に、依頼を受ける話は決まっていた。
「それじゃ、『幸福の鐘亭』で、張り紙を探そっ!」
ラムーナが、早く仕事を取らなきゃと、早速駆け出していた。
「…また討伐なんてね。
しかもオーガ退治なんて、随分危ない仕事だよ」
数時間後、フォーチュン=ベル近郊の林道を歩きながら、ロマンがぼやいていた。
「仕方あるまい。
食人鬼とも呼ばれるオーガは危険な上、放っておくと被害が大きいからの。
これも人助けじゃよ」
スピッキオの言葉に、忌々しそうな様子でレベッカが髪を払った。
「オーガの討伐で銀貨五百枚って、受ける奴がいないわけよ。
普通は一体の討伐で、最低線が銀貨六百枚。
話では三体以上いるってんだから、相場は銀貨千枚の仕事になるわ。
その半額なんて…」
オーガは、凶暴で危険な巨人系の怪物である。
性質は好戦的で怪力。
好んで人肉を喰らうため、一体出現すれば村一つを壊滅させることさえあった。
オーガとの戦闘で死亡する冒険者は年間何人も出ており、その討伐は冒険者の仕事の中でも難易度が高いとされている。
反面、オーガの討伐を成し遂げたパーティは、“食人鬼殺し”という称号で呼ばれ、討伐のプロフェッショナルとして高い名声も得るという。
「オーガの巣穴がヘフェストのある桃仙山で見つかっただけに、放ってもおけん。
ブレッゼンがオーガどもに後れを取るとは思わないが、奥方や客が襲われる可能性もある。
とにかく、依頼を受けた以上は最善を尽くす他無い。
正面からぶつからずに、出来るだけ絡め手で行こう」
シグルトは報酬額に依らず「すぐに依頼を受けるべきだ」と断じた。
魔剣工房へフェストに住む夫婦を心配してのことである。
“風を纏う者”の誰もが同感であったので、彼の言葉に一同は頷いた。
“風を纏う者”の一行がオーガと対するためにまず行ったのは、念入りな周囲の調査だった。
調べた地形を参考に、様々な罠を張り巡らしていく。
敵の巣穴から少し上にある丘では、大岩を準備してラムーナが待機することになった。
レベッカが巣穴の近くに蔓で、敵の転倒を狙った罠を張る。
倒れた先を予測して尖らした木の枝を何本も隠しておく。
「シグルト、例の糸分けてくれる?」
レベッカの言う糸とは、ヒバリ村の廃坑で手に入れた酢になった酒を使って作った、強靱な糸のことである。
オーク退治の帰り、シグルトはそのあたりに住む大きな蛾の幼虫から糸を作り出していた。
芋虫を解剖して絹糸腺を引っ張り出すグロテスクな作業に、ロマンが青くなっていたが、作成された糸は強靱でなめらかである。
「わかった。
貴重な糸だから、大切に使ってくれ」
了解と、レベッカは茂みに草で輪を作った罠を仕掛け、その中に一本件の糸を螺旋状に絡ませた蔦を潜ませる。
簡単なものならば切れてしまうだろうが、これならば足を捻挫させるぐらいはできるだろう。
「…よし。
後はオーガを燻り出して、煙に紛れながら罠に誘導するぞ」
シグルトが【堅牢】で防御を固め、〈トリアムール〉に呼び掛けて風を纏い、スピッキオは秘蹟による加護を仲間たちに与えていく。
皆の準備が出来たところで、レベッカが火打ち石を取り出すと、オーガの巣穴の前に積まれた生木に火を着けた。
その少し後ろで、ロマンは緊張に眉根を寄せている。
シグルトが、彼の細い肩に軽く手を置いた。
励ますように、置いた手に力を加える。
「…ロマン、お前は魔術に集中しろ。
少しだか、お前の姿を隠しておく」
その時、ぼんやりとシグルトの手が輝き出した。
「《“環を為す隠者”よ、神隠せ。
集う妖しの輪環は、常若の扉にして見えざる処。
縛られぬ惑いの門。
輝く連なり、姿を隠す…》」
シグルトが朗々と詠うように言葉にすると、ロマンの前を輝く蝶と蜉蝣の翅のような物が沢山横切った。
そして、翅は連なりとなり、終いには光の環となってロマンを包み込んだ。
ロマンの姿が少しだけ風景に溶け込み、ぼんやりとその姿が霞んでいく。
『山の洞窟』でシグルトが得た、妖精の加護である。
「…〈妖精の環(フェアリー・リング)〉の術だ。
これで敵に見つかり難くなる」
数ある妖精伝説の中に、〈神隠しの環〉と呼ばれるものがある。
妖精たちが集い環を作ると、環の中は異界へと続く扉になるという。
シグルトが用いたのは、小さな〈神隠しの環〉を作り出す精霊術だ。
環を構成する妖精は、束縛された者を解き放つことが出来る。
「しっ!!!
こっちの準備は出来たわよ」
レベッカが仲間たちに注意を促す。
もうもうときな臭い煙を上げて、積み上げた生木が燃え始めていた。
数分後、巣穴の中から身の毛もよだつような唸り声が聞こえ、地響きのような音が近づいてくる。
「来たぞっ!
まずは、ラムーナの下まで引きつけるんだ」
巣穴から飛び出したオーガは三体。
その赤銅色の胴体は、岩のような筋肉で覆われている。
「拙いわ…
こいつら、長生きした連中よっ!」
怪物たちの中には長い年月を生きて、その力や体力を増した上位種が存在する。
普通は単独で活動するが、これらの上位種は数匹が共同で生活し、連携して戦うのだ。
「焦るなっ!!!
手はず通りやる。
まずは足を動かせっ!」
シグルトは剣を鞘払うと、食人鬼の前に躍り出る。
挑発するように、背を低くして素早く一歩下がった。
多くの知能の低い肉食の生物は、体格の小さい者が逃げようとすると反射的に追ってしまう習性がある。
特に気が立っていたり驚いている時は、ちょこまかと目の前で動かれると逆上するのだ。
熊などに出遭った時はこれらの挑発と全く逆の、相手を睨み付けてゆっくり油断無く下がるやり方が、正しい対処法である。
シグルトの挑発にまんまとのせられたオーガたちは、競うように向かって来た。
「…掛かった!!!」
一体が張り巡らせてあった蔓に引っかかり、派手に転倒する。
さらに仕込んであった鋭い木の枝が、その食人鬼に幾重にも突き刺さった。
仲間が傷を負ったのを見て、たたらを踏む後続の食人鬼たち。
「ヤャァァァァァァッッッ!!!!!」
そこに絶妙のタイミングで、ラムーナが仕掛けておいた大岩を落とす。
弾んで勢いの付いたそれは、狙い過たず一体のオーガを木立の方へ吹き飛ばした。
「…グゥァァァァァァアアアアアッ!!!!」
直撃した大岩は巨人の腰骨をやすやすと粉砕し、そのままオーガは巨木と岩に挟まれて動かなくなった。
残った二体の前を、ラムーナが一気に駆け抜けた。
転倒していた一体が立ち上がり、無傷のもう一体とともにラムーナを捕まえようと腕を伸ばしてくる。
「こっちよ、ラムーナっ!!!」
レベッカの指示に従って、最も素早いラムーナは跳ねるように疾走する。
食人鬼の丸太のような腕は、残らず空を切った。
忌々しそうに鼻を鳴らし、怒り狂ってそのオーガたちは咆哮する。
ズズゥゥゥンンッ
その罠もまた絶妙な形で決まっていた。
レベッカが茂みに隠して作っておいた、特殊糸入りの足取り(スネア)である。
転倒して身動きが取れなくなる食人鬼たち。
「…ォォォォオオオオ!!!!!!」
そこに雄叫びを上げて、シグルトは斬り込んでいった。
〈トリアムール〉の巻き上げる土埃が、白く舞い上がる。
渾身の一太刀が、オーガの太い腕を斬り落とす。
だが、名匠の打った剣はびくともしない。
(…行けるっ!!!)
返す刀で、その食人鬼の喉笛を斬り裂く。
「あと一体っ!!」
その言葉に合わせてラムーナが跳んだ。
溜め込んでいた力を解放し、最後の敵を蹴り上げる。
オーガの人間の頭蓋骨すら噛み砕くという下顎。
それを支える骨が、鈍く砕ける確かな手応え。
反撃しようとオーガが振り上げた力任せの拳を、防御に専念したレベッカが囮となって引きつけ、素早く躱す。
「《…穿てっ!!!》」
立て続けにロマンの【魔法の矢】が炸裂する。
敵がふらついたためか、“風を纏う者”が用意していた後続の攻撃がなかなか当たらない。
「《…眠れっ!!!!》」
逃がさぬとばかりに、ロマンが【眠りの雲】で敵を動けなくしていた。
「もう少しだっ!」
シグルトの掛け声で、仲間たちが一斉に攻撃を仕掛ける。
突き立った刃と【魔術の矢】でどす黒い血が飛沫き、傷みに覚醒した食人鬼は最後の足掻きと、腕を振り回した。
シグルトは素早い号令で仲間を離れさせる。
そして仲間たちを庇いながら、向かってくる図太い腕を剣で貫き隙を作り出す。
「―…タァァァァッッッ!!!!!!」
機を逃さず、ラムーナが【連捷の蜂】で猛攻撃を仕掛けた。
強いバネの利いた攻撃が繰り返しヒットし、オーガの目の焦点がおぼつかなくなる。
くるり、と旋回したラムーナは、【連捷の蜂】の動作からつなげた【飛襲】で動けなくなった食人鬼の心臓を刺し貫いていた。
「…ったく、何てタフな奴なのよっ!!!」
全員無傷ではあったが、報酬の安さと出てきた敵の凶悪さに、レベッカは悪態をついていた。
「これだけの化け物相手にかすり傷一つ負わんかったのじゃから、ましと思えぃ。
あんな腕で殴られておったら、秘蹟による防御でも重い手傷を負ったはずじゃ」
前もってスピッキオがかけていた防御の秘蹟は、仲間に思い切った行動をさせていた。
迅速に一歩踏み込んだ攻撃ができるということは、それだけでも大きい。
そうでなければ体勢を立て直した食人鬼の太い腕によって、重傷となった仲間がいたかもしれないのだ。
腹が爆ぜる自分を想像して、レベッカは嫌そうに眉を顰めた。
「今度こういう荒事になった時は、ロマンにかけてた精霊術、私にもかけてよね。
私は苦手なのよ、戦うの」
幾分げっそりした雰囲気のレベッカが提案すると、シグルトは軽く頷いた。
「この術は何度も使えない。
ただ、前もってかけておけばやや不安定な条件になるが、長時間恩恵を得られる。
余裕がある時には、備えて使おう」
召喚術、あるいは付帯能力を与える類の術は、その効果が長時間持続するものもある。
力の発動がやや不安定であるが、上手に用いれば大きな恩恵になりうる。
シグルトが使う【妖精の護環】という術は、その典型だ。
特に自分以外にも付与できるという召喚術はとても珍しい。
「俺の本業は剣士だ。
この手の術は本分では無いし、あまりあてにはしないでくれ。
…ブレッゼンのおかげで武器が安定したことだし、俺もそろそろラムーナのように本格的な剣術を身に付けねばならないな…」
ぽつりと漏らしたシグルトの言葉に、レベッカが目を丸くした。
「…はっ?
シグルト、貴方が今まで使ってた技って、剣術じゃなかったの?」
ロマンやスピッキオも、驚いた顔だ。
「…当然だ。
今までは、基礎的な戦闘の動作を反復していたに過ぎない。
使っていた【強打】も、父に幼少の時に教えてもらた武芸の初歩で、純粋な剣の技ではない。
あんなものが【剣技】だと言ったなら、磨き抜いたそれを持つ剣士を冒涜することになるぞ」
つまりシグルトは、ごく最近まで持った武術の知識と基礎のみで剣を振るっていたのである。
緻密に戦術を立てて振るう基礎動作は、中途半端な技を凌ぐのだ。
もしシグルトが、本格的な技を使いこなしたならどれほど強くなるだろうか。
自身も戦いの技を使うラムーナは、好奇心で背筋がぞくぞくしていた。
「それなら、すぐ技を学びなさいよ。
あんたの場合、〈こうなる〉って言ったことは的を外したことが無いでしょ。
投資は惜しまないわ。
ねぇ、みんな?」
レベッカが仲間に同意を求めると、皆首肯して賛同に意を示す。
シグルトの戦闘力は、それだけ仲間から信頼を置かれているのだ。
「…皆がそう言ってくれるなら、考えておくよ。
身体も大分剣術に合ったものになったから、な」
シグルトは中途半端に技を学べば故障を招くと、今までひたすらに基礎訓練と身体作りを行って来た。
戦士とは本来血の気が多く、強くなることに貪欲で、安易な技に流れがちである。
対しシグルトは、技に相応しい素地を作るために徹底的な肉体作りを行っていた。
その方が、戦士として高い次元に届くことを理解していたからだ。
シグルトが非凡な戦士である一番の理由は、鍛え方から戦い方まで合理性を重んじることにある。
そして、錬磨のためにはいかなる努力も惜しまないのだ。
この時代、このような鍛え方をする戦士は至極希であった。
ただ、そうやって慎重過ぎたためか、今のシグルトは剣士と言うより、多少武術を使う魔法使いである。
これは腕っぷしを本分とするシグルトにとっても不本意で、せっかく手に入れた剣が泣くというものだ。
「まず、流派を成すような剣の師を見つけなければならないな。
最近は魔法を含め我流が過ぎる。
投資してもらう以上、中途半端にはしたくない」
リューンの闘技場で教えられている剣術を思い出し、シグルトは誰を師と仰ぐべきか思案を始めた。
その二日後のこと。
報酬を受け取ったシグルトたちがフォーチュン=ベルを去った直後に、一つのパーティが『幸福の鐘亭』にやって来た。
「ええっ、オーガ退治の依頼って解決されたの?!」
一応パーティの代表者だというその青年は、困ったような声を上げた。
「…驚いたぜ。
オーガの討伐が出来るパーティなんて、俺たち以外にそうそういねぇぞ」
やや痩せた盗賊風の男が、頭を掻きながら驚いた顔で言った。
「…しかも、年を経たやつを三体ですって?
私たちが、アリメ村でやった仕事より難儀じゃない」
肌の黒い魔術師風の女が、やや不機嫌な様子で頼んでいた酒を煽る。
彼女の負けず嫌いは、仲間内でも抜きん出ていた。
「何はともあれ…先を越されてしまったようですね。
ですが、危険な仕事をしなくて済んだ、とも考えられます。
話ではかなり報酬が少なかったようですし。
あきらめて別の仕事を探すとしましょう」
僧服を着た中年の男が、穏やかな口調で仲間たちをなだめた。
「ふん、醜いオーガどもを斧の錆にしてやるつもりじゃったが…残念じゃ。
今後、仕事がかち合わんとも限らん。
そやつらは、何という連中なのじゃ?」
このパーティで一番異色の戦士であった。
斧を担いだその老人は、随分背が低い。
彼はドワーフと呼ばれる亜人なのだ。
かつて事故で指を失ったという、武骨な手を撫でながら、そのドワーフは鋭い口調で仲間に問うた。
「…“風を纏う者”ですって。
また聞いたね、この名前」
その少女は冷たい井戸水で喉を潤しながら、首を傾げていた。
「…ああ、デオタトさんが言ってた新進気鋭の。
確かに僕らと名前が似てるよね」
青年は少女の言葉に頷くと、疲れたようにカウンターに腰掛ける。
食人鬼が出たと聞いて、かなり気負っていたのだろう。
前に行った同様の依頼があり、それを受けた時点でかなりの犠牲者が出ていた。
青年は、同じ悲劇は何としても避けるのだと息巻いているのだ。
「俺らの少し後に出て来たってのに、今じゃかなり名前が売れてる連中だぜ。
ま、中でも盗賊のレベッカって奴の腕前は、俺もちょっとばかり知ってる。
切れ者だぞ、あの女は」
盗賊風の男が高い評価を口にすると、黒い肌の女が呆れたような目で睨め付けた。
「また女?
この宿の女将も含めて、あんたってほんと…」
慌てて盗賊風の男は首を横に振った。
この男は、今呆れている黒い肌の女魔術師に惚れていると言ってはばからない。
「よせよ…俺はあいつにゃ興味ねぇ。
それにあの女のことを知ってりゃ、盛ったオークだって逃げ出すぜ。
怖ぇ女なんだ…」
そう言う盗賊男の目には、過去を偲んでいる様子があった。
惚れていた女を思い出すというより、苦手な身内を懐かしんでいるような感じだ。
「…中に子供や成人して間もない小娘がいるじゃと?
ふん、そんな構成…しかも五人で先んじて冒険者になった儂らより名が売れておるのは気に食わん。
最近はエルフどもが混じった冒険者のパーティも見かけるというし、実に気に食わん!」
ドワーフが、忌々しそうに麦酒(エール)を飲み干すと、女将に酒のお代わりを求めた。
古今東西、ドワーフとエルフが犬猿の仲だというのは有名な話である。
“風を纏う者”以外にも、話題にあがる他の優秀な冒険者のパーティに、まだ子供のエルフがいるという。
自尊心の強いこのドワーフにとって、嫌いなエルフの子供がいる連中より名が劣るのは、相当に不愉快なのだろう。
「…仕方ありませんよ。
私たちだって多数の仕事をこなして来ましたが、“風を纏う者”など噂に上がるパーティのメンバーは、仕事での粗が無い上に秀才揃いと聞いています。
外見の美しい方も多いとか。
話題性と人気は、時に同時に高まるものですからね」
僧服の男は、苦笑しながらドワーフにお代わりの酒杯を渡した。
「何時までも他人の噂してるより、次の仕事を探しましょうよ。
〈商船護衛〉…これなんかどう?」
暗い雰囲気を変えようと、少女がつとに明るい声で呼びかけ、一枚の依頼書をカウンターに置いた。
筆の滑りがのってる間に、一気にアップ!偉大な英雄たちを多数輩出した冒険者の都である。
四方を美しい自然に囲まれたこの都市は、風景同様に美しい女王が治めるという都市国家だ。
その街道を賑やかに進む冒険者たちがあった。
“風を纏う者”である。
一行は、先日立ち寄った『魔剣工房ヘフェスト』の話題で盛り上がっていた。
シグルトが工房の主であるブレッゼンの作業が終わるのを待っていた間に日が暮れてしまい、一行はブレッゼンの家に一泊させてもらったのだ。
…遡って前日のことである。
ブレッゼンが打った剣をシグルトが譲り受けたと知ると、サンディは「やっぱり」と微笑んでいた。
そして、剣の料金について話そうとした時である。
「金よりもまずは酒だ。
一日槌を振るったら、喉が渇いた。
今日は、新しく頼んでおいた酒が来る日じゃろう?」
そう言ってブレッゼンが酒を求めると、サンディが困った顔になった。
「それが…いつも配達してくれる酒屋さんが、ぎっくり腰でね。
頼んでおいたお酒が届いてないのよ。
倉庫から秘蔵のお酒でも出してくる?」
途端に凄まじい形相になったブレッゼンは、テーブルを金槌のような拳で叩いて怒鳴った。
「あの馬鹿もんがっ!
ええいっ!
今から行って、そのへたれた腰を鍛え直してやるっ!!!」
地団駄を踏む匠は、まるで子供のようだ。
ロマンやラムーナなどは、ぽかんとしている。
「この人、三度の食事よりお酒が好きなの。
今日は遠方の珍しい地酒が飲めるはずだったから、上機嫌で仕事を始めたんだけど…」
今にも飛び出しそうなブレッゼンを押し止めつつ、サンディが事情を説明してくれた。
しばらく悔しがるブレッゼンを見ていたレベッカは、何かを思いついたように、にやりと笑って荷物袋から酒瓶を取り出した。
それを見たブレッゼンが、ぴたりとその動きを止める。
「も、もしやそれは…やはり【フォレスアス】かっ!!!」
ブレッゼンの興奮は、尋常ではなかった。
酒屋を鍛え直すと息巻いていた時より、鼻息が荒い。
「ふふふ…酒好きなら、この酒に心が動かないわけないわよねぇ。
ポートリオンなら、銀貨二千枚の価値が付く超一品、シグルトの武器代とお近づきの印ってことで…」
レベッカがそう持ちかけた途端、ブレッゼンは目にも止まらぬ速さでその酒瓶をかっさらった。
「乗ったっ!!!!!
…ええいっ、お近づきと言わず泊まっていけぃっ!
この粋な計らいに応えずば、酒好きの名が廃るわっ!!!」
即答して、急に上機嫌になったブレッゼンは、もう待てぬとばかりに手に入れた酒をやり始めた。
その後、サンディが振る舞った御馳走を食べながら、“風を纏う者”一行は大いにブレッゼン夫婦と親交を深めたのだった。
特に自身も酒好きかつ大酒豪のレベッカは、すっかりブレッゼンお気に入りの飲み友達になっていた。
十年来の友のように酒について話すレベッカとブレッゼンに呆れながら、一行はサンディから様々な武具をゆっくり見せて貰うことが出来た。
ロマンがブレッゼンの作った武具や魔法の道具がいかに貴重か興奮して話し出す。
後はラムーナが踊り出し、サンディが手拍子をして、その勢いで夜が明けてしまった。
結局サンディの作ってくれた朝食まで御馳走になった一行は、昼近くになってようやく重い腰を上げたのだ。
「…また良い酒を持ってこい。
美味いなら、泊めてやるぞ」
灰色の髭を撫でながらニヤリと笑い、ブレッゼンが表まで送ってくれた。
シグルトは新しい愛剣を軽く叩くと、ああ、と呟いて工房から出発したのだった。
「ねっ、私の勘は当たったでしょう?」
レベッカは、工房を訪れる前にシグルトがブレッゼンに気に入られるだろうことを予測していた。
「気に入られたのはお前の方だろう?
飲むペースが速すぎて、サンディさんが随分心配していたぞ?」
苦笑して応えるシグルトに、レベッカは冗談めかして舌を出した。
「ま、気持ちの好い酒好きはみんな友だちって奴ね。
サンディさんの話だと、あんなに嬉しそうな顔をする爺さんは最近見たこと無かったそうよ。
シグルトだって、お酒を飲んでる時も無言で並んでて、まるで親子みたいだったわ」
しかも出発の時など目で会話してたし、とレベッカがからかう。
「…そうだな。
また来よう、こいつのためにも」
シグルトは、武骨な腰の剣の柄を撫でた。
「でも、今はどう見ても鋳物や骨董品と大して変わらない鉄の塊に見えるわ。
それがあの【フォレスアス】との交換なら、普通じゃ怒るわよ。
…あのすごい武具の数々を事前に見てなかったらね」
レベッカの意見に同意するように、ロマンもサンディに武具を見せてもらっていた時のことを話し出した。
ある意味、一番驚いていたのはこの少年である。
「す、すごい!
この鎧、真なる銀だよ!!」
翼のような肩当てのついた秀麗な細工の鎧を見て、ロマンが興奮したように溜息を吐いた。
銀には攻撃的な魔法を遮り、実体の無い存在にその光を及ばせ、影響する力を持つ。
鏡に映らない吸血鬼も銀製の鏡に映り、幽霊や精霊のような存在も銀の武器で倒すことが可能なのだ。
しかし、銀は鉄の2倍近い重さがあり柔らかい。
銀の有用性は知られていたが、高価なことに加え加工の難しさに使い勝手の悪さから、それほど銀の武具は普及していなかった。
だが、銀の効果をそのままに軽く頑丈になったものが真なる銀である。
ミスリルという特別な鉱物がある。
魔法の金属として、オリハルコンと並んで称される高価な物質だ。
本来魔法の金属ミスリルは、銀貨一枚分の量で銀貨千枚に匹敵する価値になる。
ミスリルは希少金属なのでめったに手に入らず、それのみで出来た鎖帷子は龍の鱗よりも固く羽根のように軽い…それ一つで国が買える程だ。
だが生成が難しいものの、ミスリルと銀で合金を作ると、堅牢な固さと鉄より軽い魔法の金属になる。
これがミスリル銀、あるいは真なる銀と呼ばれるものだ。
含有するミスリルの量によって効果が違うが、銀に対して1%を切る割合でもかなり優秀な金属となる。
極めてまれだがミスリルを含んだ銀の鉱石が発見されることもあり、これは加工すると真なる銀になるので、真なる銀そのものをミスリルと呼ぶ場合もある。
ミスリルはそれほど世に出回らない幻の金属なのだ。
基部になる銀そのものの価値、ミスリル含有の希少性、合成して真なる銀を作り出す手間、それを鎧に加工する技巧。
ロマンが驚いた軽量の金属鎧を、こともなげにサンディは銀貨三千枚でよいと言った。
それが市場に出たらとしたら、どれほど天井知らずな価格になるだろうか…
「いいのよ~
あの人と私が食べていく蓄えはあるし、私たちが損をしない程度にお金を貰えればそれで充分。
ただ、これらの武具は市場に出さないでほしいの。
もし必要なくなったら、うちで半額出して買い取るわ。
この“子”たちは、あの人の作った子供のようなものだから。
貴方たちを見込んでのことよ…お願いね」
サンディは愛おしそうに、並べられた武具を眺めて、そう言った。
一行は皆頷き、引き続いて武具を見せて貰う。
やがて、ある道具を見てロマンの動きが固まった。
「う、嘘…!
これ、アスクレピオスの知恵の杖じゃないかっ!!」
アスクレピオス…人のために医学を発展させた異国の賢人である。
後に人間を死から蘇生させた咎で、主神の放った雷に打たれて死んだが、天に昇って医学の神になったという。
「うちにある武具は、伝説ほどの力は出さないんだけどね。
前に夫が忠実に魔法の武具を再現したら、あまりに凄まじい効果で、その威力を狙う人たちが現れて、戦争が起きそうになったことがあったのよ。
それ以来、あの人は作る武具の理不尽すぎる力は眠らせて、売る相手も選ぶようになったわ。
人の手に余る武具は、持つ人の運命を歪め不幸を呼んじゃうから。
でも、人に扱える状態にしただけでもその効果は凄いの。
その杖も、人を生き返らせることは無理だけど、魔術師の知恵が込められていてたくさんの魔術を使うことが出来るらしいわ」
ロマンはサンディの言葉にいちいち頷いて、その杖をしっかりと手に取った。
「…カドゥケウス。
原典は魔術師の頂点を象徴する、ヘルメスの双頭の蛇の杖。
ヘルメスの杖ケリュケイオンとも、医学と蘇生の象徴であるアスクレピオスの一蛇(いちだ)の杖とも、本来は別のものなんだけど形が似てるから同一に見られることもあるね。
アスクレピオスはヘルメスの知恵を模すために、同じような一蛇(いちだ)の杖を持っていたと異説が残ってるほどだよ。
だから、あらゆる魔法を封じ、両方の杖の由来を模して生み出され、ヘルメスの杖の別名カドゥケウスの名をあえて冠して、大魔術師が傍らにおいたのがこれ。
この翼の形をした杖の先は、知識への飽くなき探究心と飛躍を表してる。
アスクレピオスの【知恵の杖】とも呼ばれた伝説の杖だよ。
人であったアスクレピオスが知識の研鑽の果てに神になった、その業績と知識を讃えてつけられた異名だね。
いろんな魔法の力を魔術書の助けなく、魔術師の付帯領域…自身の深遠にある魔術回路の要所に喚起することができる。
まさに偉大なる知恵と技術の証。
この歳で見ることが、触れることが出来るなんて、僕は、僕は…!」
拳を握り締め、ロマンは感涙していた。
横で他の者たちは、そうすごいんだね、と意味も分からずなんとなく相槌を打っておいた。
「あの時のロマンは目が怪しかったわよ。
あの杖は高くて買えなかったけど、まだロマンには早いってことよね~」
レベッカにからかわれてロマンがむっとしている。
「あの杖がどれほど貴重か分かってないから、そんなことが言えるんだ…
あれだけで複数の魔法が使えるんだよっ!
それに杖に込められた太古の魔術の知恵…すごいんだよ、あれはっ!!」
むきになったロマンはむせてしまい、ラムーナに背中をさすって貰う。
「求め続ければ、いつかお前の手に来る。
それが優れた道具というものだ。
あの杖が、お前が持つべき杖になるといいな」
シグルトはそう言ってロマンの肩を軽く叩いた。
その姿を見て、ラムーナも昨晩話した匠のことを思い浮かべる。
「あ、これ…私の持ってる剣に似てるよ?」
ロマンの横でラムーナが、非売品だという特別な棚にあった剣を指差した。
その言葉に、いい気持ちで酒を飲んでいる様子だったブレッゼンが近づいてくる。
「ふむ…娘、お前の剣を貸してみろ」
ブレッゼンの有無を言わせぬ言葉にラムーナは困ったように仲間を見るが、シグルトが頷くので黙って自分の【スティング】をブレッゼンに渡す。
「ほう、これは…
娘、良いものを手に入れたな。
これは儂のような【魔剣鍛冶師】が打ったものだ。
制作されたのは二百年ほど前か。
威力調整の癖からして、儂の師の同門かもしれん。
この【スティング】は…ちょっとした欠陥があるな。
武器を振るった時に【生命感知】が攻撃の魔力領域と同化しておるから、一度攻撃をしないと力を発揮できん。
付与された感知の魔力を使いこなすには扱いづらかろう。
ただ、精度向上の魔力がかけられており、儂の打った【スティング】より手先の巧みさ扱うことに向き、命中精度が高い。
儂の方は威力が優れている、といった感じだな。
武器としての性能は良いものだ。
お前は成長期じゃろう?
これは今のお前には少し長すぎるし、悪くはないが最高の相性とは言えんな。
儂の見立てでは、お前は舞踏を取り込んだ技を使うだろう?
こいつの特性である〈刺し貫く攻撃〉より、シャムシールやタルワールのような曲刀で撫で斬る方が良いかもしれん。
突き技は剣が肉に刺さると動きが硬直してしまうからな。
この武器を使い続けるのもまた良いかもしれんが、行き詰まったら儂の言葉を思い出して装備を工夫してみるといい」
さすがは稀代の鍛冶師である。
さっと持って見ただけで、ラムーナの魔剣の特性をいとも簡単に鑑定してみせた。
「【魔剣鍛冶師】?」
聞き慣れない言葉に、ラムーナが首を傾げた。
「武器に剣精を込め、超常なる力を持った剣を打つことができる、儂のような業を持った刀剣鍛冶師よ。
儂は防具職人(アーマースミス)や、他の武器を作れる武器職人(ウェポンスミス)でもある。
一番得意なのは剣や刃を持つ槍なんだがな。
魔力の込められた武具は凄まじい力を持つ。
故に戦争でよく利用される。
良き戦士が戦場で振るうのはいい。
血に飢えた所業とはいえ、武器は戦うための器械だ。
だが、腕も志も無い愚物が、虚飾のために振るうのは我慢ならん。
それは儂ら【魔剣鍛冶師】に対する、侮辱に等しいのだ」
そしてぐいと酒を呷る。
「多くの先達が権力者の下らぬ虚栄心のために打ちたくもない魔剣を造ることを強要され、迫害と弾圧によって鍛冶師は斃れ、多くの業と伝統が奪われた。
かつてともに酒を飲み、その武勇に惚れ込んで会心の一本を譲った友も、そやつを妬む愚か者によって暗殺された。
魔剣の力は強く、魅惑的だ。
それを振るう者はその力に溺れやすく、意志強靭にして賢明なる使い手が力に飲まれずとも…魔剣を扱う者を、妬み、羨み、奪おうとする輩がいる。
力とはそういうものだ。
魔剣を持つ娘よ。
ゆめ忘れるな。
そして身も心も屈すること無く、健やかにあれ」
語る刀匠の目には、どこか寂しげな光が宿っていた。
ラムーナがブレっ禅の言葉を思い出し、感慨にふけっていると、スピッキオが興奮したロマンをなだめるようにほっほと笑う。
「薀蓄はそのあたりにしておけぃ。
もう、街が見えてきたわい」
傾きかけた日差しの下、希望の都は赤く染まりつつあった。
フォーチュン=ベルにある冒険者の宿『幸福の鐘亭』で一晩過ごした“風を纏う者”は、次の日に日用品の買い出しをすることになった。
立ち寄ったのは、先日アレトゥーザで魔法の指輪を売ってくれた商人、ロゴージンの店である。
「おう、あんたらか。
なるほど、ブレッゼンお目にかなったってわけだな?
爺様が造った剣をあずけられた奴、久しぶりに見たぜ。
やっぱり俺の眼に狂いはなかったな。
アレトゥーザじゃあたんまり勉強したんだから、俺んとこの店を贔屓にしてくれよ」
調子よく片目を瞑って見せるロゴージンに「あんたの品揃え次第ね」とレベッカが返した。
ここでいつもの商才を振るったレベッカは、よく吟味の上いくつか道具を仕入れる。
「【ランタン】に【鏡】、あとは新品の【火口箱】…うん、準備万端ねっ!」
資金に余裕が出来たからと、レベッカは今まで間に合わせだった道具を新調していた。
レベッカの持つ道具を見ながら、シグルトは首を傾げる。
「【ロープ】は買わなくて良かったのか?
この際、購入しておけば…」
レベッカはチッチ、と指を振ってその意見を遮ると、道具袋を指差した。
「ただでさえいろんな道具が溜まってるんだから、荷物を増やし過ぎるのは良くないわ。
ロープの類は意外とかさばるし、どこにでも売ってるから、現地調達がベストね。
それにロープは、古くなるとすぐ切れるのよ。
持てる範囲で、よく使うものを揃えればいいの。
今回買った【ランタン】や【火口箱】は野営で頻繁に使うし、【鏡】は髪の手入れから合図の道具になるわ。
荷物袋は、いつも整頓しておかなくちゃね」
レベッカは道具の管理に余念が無い。
無駄な物は即売りさばき、あるいは別の物に交換してしまう。
彼女の差配で“風を纏う者”の荷物が最小限で済んでいるのも事実である。
金銭に関しても、大量の銀貨を持ち歩くことは無かった。
“風を纏う者”の持つ金銭は、総額で銀貨八千枚を超えるほど貯蓄されていた。
だが金持ちに見えると厄介を招くからと、レベッカは銀貨で千枚程度を小分けにして所持し、多くはすぐ都市部で換金可能な金貨に換えてある。
「…今回ちょっと買った物が多かったから、手持ちの銀貨が少なくなって来たわ。
まぁ、手持ちの金貨を両替すれば、使う分ぐらいはすぐ用意出来るんだけど。
せっかく大きな都市に来てるんだし、少し仕事を探しておきましょうよ」
「あいかわらず守銭奴じゃのう」、とスピッキオが呆れる。
「新しい剣が手に入ったから、俺の方は問題無い」
そう言ったシグルトに応えるように、柔らかな風が吹いた。
(「私もいるんだからっ!」)
オーク退治の時妖精の力を得たシグルトは、精霊の言葉を聞くことが出来るようになった。
今でもその姿を見ることは出来ないのだが、風の精霊〈トリアムール〉と意思の疎通が以前より容易に行える。
妖精の術が持つ力も含め説明しているが、精霊との感応は特殊性が高いため、仲間にはいまいちその優位性を理解してもらえない。
シグルトはその反応に、あれトゥーザのレナータが感じているだろう、精霊術師の疎外感というものを味わっていた。
(扱いには注意しなければいかんな。
俺への評価が仲間に及ぶなら、つまらない迫害も道を塞ぐ驚異だ)
そんなことをリーダーが考えている間に、依頼を受ける話は決まっていた。
「それじゃ、『幸福の鐘亭』で、張り紙を探そっ!」
ラムーナが、早く仕事を取らなきゃと、早速駆け出していた。
「…また討伐なんてね。
しかもオーガ退治なんて、随分危ない仕事だよ」
数時間後、フォーチュン=ベル近郊の林道を歩きながら、ロマンがぼやいていた。
「仕方あるまい。
食人鬼とも呼ばれるオーガは危険な上、放っておくと被害が大きいからの。
これも人助けじゃよ」
スピッキオの言葉に、忌々しそうな様子でレベッカが髪を払った。
「オーガの討伐で銀貨五百枚って、受ける奴がいないわけよ。
普通は一体の討伐で、最低線が銀貨六百枚。
話では三体以上いるってんだから、相場は銀貨千枚の仕事になるわ。
その半額なんて…」
オーガは、凶暴で危険な巨人系の怪物である。
性質は好戦的で怪力。
好んで人肉を喰らうため、一体出現すれば村一つを壊滅させることさえあった。
オーガとの戦闘で死亡する冒険者は年間何人も出ており、その討伐は冒険者の仕事の中でも難易度が高いとされている。
反面、オーガの討伐を成し遂げたパーティは、“食人鬼殺し”という称号で呼ばれ、討伐のプロフェッショナルとして高い名声も得るという。
「オーガの巣穴がヘフェストのある桃仙山で見つかっただけに、放ってもおけん。
ブレッゼンがオーガどもに後れを取るとは思わないが、奥方や客が襲われる可能性もある。
とにかく、依頼を受けた以上は最善を尽くす他無い。
正面からぶつからずに、出来るだけ絡め手で行こう」
シグルトは報酬額に依らず「すぐに依頼を受けるべきだ」と断じた。
魔剣工房へフェストに住む夫婦を心配してのことである。
“風を纏う者”の誰もが同感であったので、彼の言葉に一同は頷いた。
“風を纏う者”の一行がオーガと対するためにまず行ったのは、念入りな周囲の調査だった。
調べた地形を参考に、様々な罠を張り巡らしていく。
敵の巣穴から少し上にある丘では、大岩を準備してラムーナが待機することになった。
レベッカが巣穴の近くに蔓で、敵の転倒を狙った罠を張る。
倒れた先を予測して尖らした木の枝を何本も隠しておく。
「シグルト、例の糸分けてくれる?」
レベッカの言う糸とは、ヒバリ村の廃坑で手に入れた酢になった酒を使って作った、強靱な糸のことである。
オーク退治の帰り、シグルトはそのあたりに住む大きな蛾の幼虫から糸を作り出していた。
芋虫を解剖して絹糸腺を引っ張り出すグロテスクな作業に、ロマンが青くなっていたが、作成された糸は強靱でなめらかである。
「わかった。
貴重な糸だから、大切に使ってくれ」
了解と、レベッカは茂みに草で輪を作った罠を仕掛け、その中に一本件の糸を螺旋状に絡ませた蔦を潜ませる。
簡単なものならば切れてしまうだろうが、これならば足を捻挫させるぐらいはできるだろう。
「…よし。
後はオーガを燻り出して、煙に紛れながら罠に誘導するぞ」
シグルトが【堅牢】で防御を固め、〈トリアムール〉に呼び掛けて風を纏い、スピッキオは秘蹟による加護を仲間たちに与えていく。
皆の準備が出来たところで、レベッカが火打ち石を取り出すと、オーガの巣穴の前に積まれた生木に火を着けた。
その少し後ろで、ロマンは緊張に眉根を寄せている。
シグルトが、彼の細い肩に軽く手を置いた。
励ますように、置いた手に力を加える。
「…ロマン、お前は魔術に集中しろ。
少しだか、お前の姿を隠しておく」
その時、ぼんやりとシグルトの手が輝き出した。
「《“環を為す隠者”よ、神隠せ。
集う妖しの輪環は、常若の扉にして見えざる処。
縛られぬ惑いの門。
輝く連なり、姿を隠す…》」
シグルトが朗々と詠うように言葉にすると、ロマンの前を輝く蝶と蜉蝣の翅のような物が沢山横切った。
そして、翅は連なりとなり、終いには光の環となってロマンを包み込んだ。
ロマンの姿が少しだけ風景に溶け込み、ぼんやりとその姿が霞んでいく。
『山の洞窟』でシグルトが得た、妖精の加護である。
「…〈妖精の環(フェアリー・リング)〉の術だ。
これで敵に見つかり難くなる」
数ある妖精伝説の中に、〈神隠しの環〉と呼ばれるものがある。
妖精たちが集い環を作ると、環の中は異界へと続く扉になるという。
シグルトが用いたのは、小さな〈神隠しの環〉を作り出す精霊術だ。
環を構成する妖精は、束縛された者を解き放つことが出来る。
「しっ!!!
こっちの準備は出来たわよ」
レベッカが仲間たちに注意を促す。
もうもうときな臭い煙を上げて、積み上げた生木が燃え始めていた。
数分後、巣穴の中から身の毛もよだつような唸り声が聞こえ、地響きのような音が近づいてくる。
「来たぞっ!
まずは、ラムーナの下まで引きつけるんだ」
巣穴から飛び出したオーガは三体。
その赤銅色の胴体は、岩のような筋肉で覆われている。
「拙いわ…
こいつら、長生きした連中よっ!」
怪物たちの中には長い年月を生きて、その力や体力を増した上位種が存在する。
普通は単独で活動するが、これらの上位種は数匹が共同で生活し、連携して戦うのだ。
「焦るなっ!!!
手はず通りやる。
まずは足を動かせっ!」
シグルトは剣を鞘払うと、食人鬼の前に躍り出る。
挑発するように、背を低くして素早く一歩下がった。
多くの知能の低い肉食の生物は、体格の小さい者が逃げようとすると反射的に追ってしまう習性がある。
特に気が立っていたり驚いている時は、ちょこまかと目の前で動かれると逆上するのだ。
熊などに出遭った時はこれらの挑発と全く逆の、相手を睨み付けてゆっくり油断無く下がるやり方が、正しい対処法である。
シグルトの挑発にまんまとのせられたオーガたちは、競うように向かって来た。
「…掛かった!!!」
一体が張り巡らせてあった蔓に引っかかり、派手に転倒する。
さらに仕込んであった鋭い木の枝が、その食人鬼に幾重にも突き刺さった。
仲間が傷を負ったのを見て、たたらを踏む後続の食人鬼たち。
「ヤャァァァァァァッッッ!!!!!」
そこに絶妙のタイミングで、ラムーナが仕掛けておいた大岩を落とす。
弾んで勢いの付いたそれは、狙い過たず一体のオーガを木立の方へ吹き飛ばした。
「…グゥァァァァァァアアアアアッ!!!!」
直撃した大岩は巨人の腰骨をやすやすと粉砕し、そのままオーガは巨木と岩に挟まれて動かなくなった。
残った二体の前を、ラムーナが一気に駆け抜けた。
転倒していた一体が立ち上がり、無傷のもう一体とともにラムーナを捕まえようと腕を伸ばしてくる。
「こっちよ、ラムーナっ!!!」
レベッカの指示に従って、最も素早いラムーナは跳ねるように疾走する。
食人鬼の丸太のような腕は、残らず空を切った。
忌々しそうに鼻を鳴らし、怒り狂ってそのオーガたちは咆哮する。
ズズゥゥゥンンッ
その罠もまた絶妙な形で決まっていた。
レベッカが茂みに隠して作っておいた、特殊糸入りの足取り(スネア)である。
転倒して身動きが取れなくなる食人鬼たち。
「…ォォォォオオオオ!!!!!!」
そこに雄叫びを上げて、シグルトは斬り込んでいった。
〈トリアムール〉の巻き上げる土埃が、白く舞い上がる。
渾身の一太刀が、オーガの太い腕を斬り落とす。
だが、名匠の打った剣はびくともしない。
(…行けるっ!!!)
返す刀で、その食人鬼の喉笛を斬り裂く。
「あと一体っ!!」
その言葉に合わせてラムーナが跳んだ。
溜め込んでいた力を解放し、最後の敵を蹴り上げる。
オーガの人間の頭蓋骨すら噛み砕くという下顎。
それを支える骨が、鈍く砕ける確かな手応え。
反撃しようとオーガが振り上げた力任せの拳を、防御に専念したレベッカが囮となって引きつけ、素早く躱す。
「《…穿てっ!!!》」
立て続けにロマンの【魔法の矢】が炸裂する。
敵がふらついたためか、“風を纏う者”が用意していた後続の攻撃がなかなか当たらない。
「《…眠れっ!!!!》」
逃がさぬとばかりに、ロマンが【眠りの雲】で敵を動けなくしていた。
「もう少しだっ!」
シグルトの掛け声で、仲間たちが一斉に攻撃を仕掛ける。
突き立った刃と【魔術の矢】でどす黒い血が飛沫き、傷みに覚醒した食人鬼は最後の足掻きと、腕を振り回した。
シグルトは素早い号令で仲間を離れさせる。
そして仲間たちを庇いながら、向かってくる図太い腕を剣で貫き隙を作り出す。
「―…タァァァァッッッ!!!!!!」
機を逃さず、ラムーナが【連捷の蜂】で猛攻撃を仕掛けた。
強いバネの利いた攻撃が繰り返しヒットし、オーガの目の焦点がおぼつかなくなる。
くるり、と旋回したラムーナは、【連捷の蜂】の動作からつなげた【飛襲】で動けなくなった食人鬼の心臓を刺し貫いていた。
「…ったく、何てタフな奴なのよっ!!!」
全員無傷ではあったが、報酬の安さと出てきた敵の凶悪さに、レベッカは悪態をついていた。
「これだけの化け物相手にかすり傷一つ負わんかったのじゃから、ましと思えぃ。
あんな腕で殴られておったら、秘蹟による防御でも重い手傷を負ったはずじゃ」
前もってスピッキオがかけていた防御の秘蹟は、仲間に思い切った行動をさせていた。
迅速に一歩踏み込んだ攻撃ができるということは、それだけでも大きい。
そうでなければ体勢を立て直した食人鬼の太い腕によって、重傷となった仲間がいたかもしれないのだ。
腹が爆ぜる自分を想像して、レベッカは嫌そうに眉を顰めた。
「今度こういう荒事になった時は、ロマンにかけてた精霊術、私にもかけてよね。
私は苦手なのよ、戦うの」
幾分げっそりした雰囲気のレベッカが提案すると、シグルトは軽く頷いた。
「この術は何度も使えない。
ただ、前もってかけておけばやや不安定な条件になるが、長時間恩恵を得られる。
余裕がある時には、備えて使おう」
召喚術、あるいは付帯能力を与える類の術は、その効果が長時間持続するものもある。
力の発動がやや不安定であるが、上手に用いれば大きな恩恵になりうる。
シグルトが使う【妖精の護環】という術は、その典型だ。
特に自分以外にも付与できるという召喚術はとても珍しい。
「俺の本業は剣士だ。
この手の術は本分では無いし、あまりあてにはしないでくれ。
…ブレッゼンのおかげで武器が安定したことだし、俺もそろそろラムーナのように本格的な剣術を身に付けねばならないな…」
ぽつりと漏らしたシグルトの言葉に、レベッカが目を丸くした。
「…はっ?
シグルト、貴方が今まで使ってた技って、剣術じゃなかったの?」
ロマンやスピッキオも、驚いた顔だ。
「…当然だ。
今までは、基礎的な戦闘の動作を反復していたに過ぎない。
使っていた【強打】も、父に幼少の時に教えてもらた武芸の初歩で、純粋な剣の技ではない。
あんなものが【剣技】だと言ったなら、磨き抜いたそれを持つ剣士を冒涜することになるぞ」
つまりシグルトは、ごく最近まで持った武術の知識と基礎のみで剣を振るっていたのである。
緻密に戦術を立てて振るう基礎動作は、中途半端な技を凌ぐのだ。
もしシグルトが、本格的な技を使いこなしたならどれほど強くなるだろうか。
自身も戦いの技を使うラムーナは、好奇心で背筋がぞくぞくしていた。
「それなら、すぐ技を学びなさいよ。
あんたの場合、〈こうなる〉って言ったことは的を外したことが無いでしょ。
投資は惜しまないわ。
ねぇ、みんな?」
レベッカが仲間に同意を求めると、皆首肯して賛同に意を示す。
シグルトの戦闘力は、それだけ仲間から信頼を置かれているのだ。
「…皆がそう言ってくれるなら、考えておくよ。
身体も大分剣術に合ったものになったから、な」
シグルトは中途半端に技を学べば故障を招くと、今までひたすらに基礎訓練と身体作りを行って来た。
戦士とは本来血の気が多く、強くなることに貪欲で、安易な技に流れがちである。
対しシグルトは、技に相応しい素地を作るために徹底的な肉体作りを行っていた。
その方が、戦士として高い次元に届くことを理解していたからだ。
シグルトが非凡な戦士である一番の理由は、鍛え方から戦い方まで合理性を重んじることにある。
そして、錬磨のためにはいかなる努力も惜しまないのだ。
この時代、このような鍛え方をする戦士は至極希であった。
ただ、そうやって慎重過ぎたためか、今のシグルトは剣士と言うより、多少武術を使う魔法使いである。
これは腕っぷしを本分とするシグルトにとっても不本意で、せっかく手に入れた剣が泣くというものだ。
「まず、流派を成すような剣の師を見つけなければならないな。
最近は魔法を含め我流が過ぎる。
投資してもらう以上、中途半端にはしたくない」
リューンの闘技場で教えられている剣術を思い出し、シグルトは誰を師と仰ぐべきか思案を始めた。
その二日後のこと。
報酬を受け取ったシグルトたちがフォーチュン=ベルを去った直後に、一つのパーティが『幸福の鐘亭』にやって来た。
「ええっ、オーガ退治の依頼って解決されたの?!」
一応パーティの代表者だというその青年は、困ったような声を上げた。
「…驚いたぜ。
オーガの討伐が出来るパーティなんて、俺たち以外にそうそういねぇぞ」
やや痩せた盗賊風の男が、頭を掻きながら驚いた顔で言った。
「…しかも、年を経たやつを三体ですって?
私たちが、アリメ村でやった仕事より難儀じゃない」
肌の黒い魔術師風の女が、やや不機嫌な様子で頼んでいた酒を煽る。
彼女の負けず嫌いは、仲間内でも抜きん出ていた。
「何はともあれ…先を越されてしまったようですね。
ですが、危険な仕事をしなくて済んだ、とも考えられます。
話ではかなり報酬が少なかったようですし。
あきらめて別の仕事を探すとしましょう」
僧服を着た中年の男が、穏やかな口調で仲間たちをなだめた。
「ふん、醜いオーガどもを斧の錆にしてやるつもりじゃったが…残念じゃ。
今後、仕事がかち合わんとも限らん。
そやつらは、何という連中なのじゃ?」
このパーティで一番異色の戦士であった。
斧を担いだその老人は、随分背が低い。
彼はドワーフと呼ばれる亜人なのだ。
かつて事故で指を失ったという、武骨な手を撫でながら、そのドワーフは鋭い口調で仲間に問うた。
「…“風を纏う者”ですって。
また聞いたね、この名前」
その少女は冷たい井戸水で喉を潤しながら、首を傾げていた。
「…ああ、デオタトさんが言ってた新進気鋭の。
確かに僕らと名前が似てるよね」
青年は少女の言葉に頷くと、疲れたようにカウンターに腰掛ける。
食人鬼が出たと聞いて、かなり気負っていたのだろう。
前に行った同様の依頼があり、それを受けた時点でかなりの犠牲者が出ていた。
青年は、同じ悲劇は何としても避けるのだと息巻いているのだ。
「俺らの少し後に出て来たってのに、今じゃかなり名前が売れてる連中だぜ。
ま、中でも盗賊のレベッカって奴の腕前は、俺もちょっとばかり知ってる。
切れ者だぞ、あの女は」
盗賊風の男が高い評価を口にすると、黒い肌の女が呆れたような目で睨め付けた。
「また女?
この宿の女将も含めて、あんたってほんと…」
慌てて盗賊風の男は首を横に振った。
この男は、今呆れている黒い肌の女魔術師に惚れていると言ってはばからない。
「よせよ…俺はあいつにゃ興味ねぇ。
それにあの女のことを知ってりゃ、盛ったオークだって逃げ出すぜ。
怖ぇ女なんだ…」
そう言う盗賊男の目には、過去を偲んでいる様子があった。
惚れていた女を思い出すというより、苦手な身内を懐かしんでいるような感じだ。
「…中に子供や成人して間もない小娘がいるじゃと?
ふん、そんな構成…しかも五人で先んじて冒険者になった儂らより名が売れておるのは気に食わん。
最近はエルフどもが混じった冒険者のパーティも見かけるというし、実に気に食わん!」
ドワーフが、忌々しそうに麦酒(エール)を飲み干すと、女将に酒のお代わりを求めた。
古今東西、ドワーフとエルフが犬猿の仲だというのは有名な話である。
“風を纏う者”以外にも、話題にあがる他の優秀な冒険者のパーティに、まだ子供のエルフがいるという。
自尊心の強いこのドワーフにとって、嫌いなエルフの子供がいる連中より名が劣るのは、相当に不愉快なのだろう。
「…仕方ありませんよ。
私たちだって多数の仕事をこなして来ましたが、“風を纏う者”など噂に上がるパーティのメンバーは、仕事での粗が無い上に秀才揃いと聞いています。
外見の美しい方も多いとか。
話題性と人気は、時に同時に高まるものですからね」
僧服の男は、苦笑しながらドワーフにお代わりの酒杯を渡した。
「何時までも他人の噂してるより、次の仕事を探しましょうよ。
〈商船護衛〉…これなんかどう?」
暗い雰囲気を変えようと、少女がつとに明るい声で呼びかけ、一枚の依頼書をカウンターに置いた。
ということで、『希望の都フォーチュン=ベル』、オーガ討伐の再録で御座います。
前半はブレッゼンとの会話部分で、もう少し内容を厚くできないか試してみました。
ブレッゼンに【フォレスアス】を飲ませたかったのですが、このシナリオの作成後にできたシナリオなどでは新しいお酒も対応してないのですよね。
多くのシナリオが入手不可能になり、対応されたお酒も手に入らなくなって最近は寂しい限り。
それでもブレッゼンに飲ませるために、前のリプレイと同じ手法を使いました。
ポートリオンでぴったり2000SPに換金できるため、このお金でアロンダイトを購入。
手に入った星の金貨とかは、レベッカがどこぞの哀れな誰かから巻き上げてきたんでしょう…
ミスリルの扱いは『ロード・オブ・リング』を参考にしているのですが、最近は自作シナリオの『防具屋』にもそれを取り入れてY2つの公式設定っぽくなってきました。
ちなみに同じように有名な魔法物質のオリハルコン、実は見た目が銅(あかがね)って説があるのですよね。
私は緋金(日本のヒヒイロカネと同種とした場合)という当て字にしようかな、なんて考えてます。
アダマンタイトから精錬するアダマス(神鋼)は、元の鉱石が黒っぽくて、精錬すると光輝を纏った刃金になるなんてどうかな~と。
鍛冶師のブレッゼンのネタではこういう材料や素材ネタ、あってもいいですよね。
【カドゥケウス】に関しては旧リプレイにも載せましたが…
アスクレピオスの杖とヘルメスの杖に関しては、似ているものの違うというのが今の定説だったはずです。
本来アスクレピオスの杖は、ヘルメスの杖【カドゥケウス】に形が似ているだけでして、本当はお医者さんがシンボルで使っているアスクレピオスの杖は、カドゥケウスと呼ぶのが誤りであるようです。
ラムーナの【スティング】に関して。
私の小説内でブレッゼンが欠点云々言ってますが、これは『ヒバリ村の救出劇』の作者さんの設定された仕様を非難しているわけではないことを御了承下さい。
カードワースのキーコードシステムでは、召喚獣タイプの能力を使用時の選択肢で発行すると、便利な代わりにすごく面倒なんです。そういう意味では攻撃時にキーコードの生命感知を入れてしまう仕様もありだと思います。
戦闘以外で召喚選択、なんてのもいいとは思うのですが…他のファンタジーの理を、限られたシステムの中で取り入れるのって大変なんですよね。
で、実際の討伐部分に関して。
ちょっぴり攻略法を申しますと…
まずこのシナリオに行く前にロープは持って行かない方がいいかと。調べると入手できます。
【盗賊の手】や〈野外活動〉のキーコードがあれば罠をもう一つ作れる場所があります。
あとは着火できるアイテムを何か持っていくとよいでしょう。誘き出す手段が無いと手痛いダメージを負います。
手を尽くしていたので、今回はノーダメージ。完勝でした。
トゥルーオーガがレベルが高いため攻撃が当たり難いです。ペナルティがあっても結構外すので、行動力アップや命中精度の高い攻撃があるといいですよ。
今回クロスで“風を駆る者たち”が登場しました。
こっちは前に許可をいただいてあり、あのパーティの活動は歴史固定ということで、ほぼそのまま設定を使わせて頂いた感じです。
龍使いさんのパーティとのクロスは、今回も直接的にはでてない形にさせて頂きました。
前に話した時、やるとしたらキャラクターを作り直したいようなことも言ってましたので、具体的なアクションがあるまではぼかしますということで。
前回・前々回も含め、ここで会計処理を。
・【サーフ・レア】売却(+350SP)
・【金色の鍵】売却(+50SP)
・【フォレスアス】換金(+2000SP)
・【星の金貨】×3
・【鉄塊(アロンダイト)】購入(-2000SP)
・【火口箱】購入(-50SP)
・【ランタン】購入(-20SP)
・【鏡】購入(-50SP)
・オーガ退治の報酬(+500SP)
◇所持金 8663SP(じゃり~ん♪)
〈著作情報〉2018年06月15日現在
カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。
このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
リプレイ環境であるCardWirthPy Rebootは2018年2月1日リリースされたCardWirthPy 2.3 - CWXEditor同梱版に拙作のカードワースダッシュStandard Editionを使ったスキンを作成してプレイしているものです。
CardWirthPy Rebootは同名の開発サイト
( https://bitbucket.org/k4nagatsuki/cardwirthpy-reboot/wiki/Home )で配布されています。
カードワースダッシュStandard Editionはこのブログのリンクから行ける、Y字の交差路別院にて配布しています。
エンジンと付属物の著作権・開発状況・その他の情報は各配布元を御参照ください。
【CW:リプレイ】、【CW:リプレイ、R】、【CW:リプレイ2】、【CWPyDS:リプレイ】等で書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
また私がお預かりしているMartさんの“風を駆る者たち”リプレイの記事を参考にした内容は、それぞれのシナリオそのものの著作権はそれそれの作者さんにあり、参照記事はMartさんに著作権があります。
御了承下さい。
また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。
『魔剣工房』はDjinnさんのシナリオです。
シナリオの著作権は、Djinnさんにあります。
このリプレイの時のバージョンはVer 1.09です。
『希望の都フォーチュン=ベル』はDjinnさんのシナリオです。
シナリオの著作権は、Djinnさんにあります。
このリプレイの時のバージョンはVer. 1,06です。
現時点でこれらのシナリオは、このサイトの別院(http://sites.google.com/site/waijinokousaro/)で私が代理公開しています。
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