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PC1:オルフ

2018.07.21(13:10) 463

 北風が冷たい二月。
 今日が何日だったかまでは、もう憶えていない。

 北方の戦場で、男は乾燥した土埃に塗れながら戦っていた。
 
 周囲では絶えず剣戟の音が響き、むせ返るような血と鉄の臭いが満ちている。
 踏みしめる雪が、流れた熱い血液で融け、ぽつぽつと斑に穴が開く。
 
 駆け寄ってくる粗末な鎧の兵士を斬り伏せ、刃こぼれだらけの剣の柄でもう一人の敵を殴り倒す。
 返り血の粘りつくような不快感に慣れたのは、どれほど前だっただろうか?

 死体を漁る鴉の鳴き声が、ひときわ耳障りに耳を突く。 
 眉をひそめ、肺に溜まった血の臭いがする不快な空気を吐き出すと、男は再び剣を振るった…
 
 
「…朝、か」
 
 空が白んで、目蓋に鋭い朝日の光が突き刺さってくる。

 身を護るために剣を抱いて寝ていたせいか、触れていた指先が少しあかぎれで裂けていた。
 温めるために軽く口に含むと、血に混じって泥の味と香りがする。
 
 額に滲んだ汗を拭い、水袋からきな臭くなった水を一口啜って口を濯ぎ、雪をゆっくり齧って渇きを癒しながら、ふらりと男は立ち上がった。
 
 がっしりとした体格の巨漢である。
 
 むっつりとした厳つい顔だち。
 絶えず敵を睨んでいたせいか、眉根を寄せて凶悪になった目付きと放たれる鋭い眼光。
 縮れた髪は伸びるにまかせ、まるで獅子の鬣のようだ。
 角ばった顎には無精髭が針のように生えていた。
 顔や首など見える場所には刀傷が走り、雪焼けした浅黒い肌は栄養不足でガサガサしている。
 手の甲と頬には霜焼けの痕…寒冷な北方に住む人間の証であった。
 
 腰にはやや大きな、古びた剣を下げている…古道具屋で二束三文にもならない数打の安物だった。
 防具として 皮製の胸当てを着けているが、寒気による乾燥で撫でれば革の欠片がパラパラと落ちる。
 あちこちに裂けたものを無理に縫い付けた修理痕があり、染み付いた血の跡が汚らしい。

 他に服装といえば、みすぼらしいつぎはぎだらけの外套…というよりは襤褸だ。
 防寒用に襟の部分には毛がついているが、汗と血とよくわからない汚れで薄汚く染まり、嫌な悪臭を放っている。
 この鼻が曲がりそうな臭気に慣れてしまったのはいつからだったろうか。

 その下に着たキルト以外には下着すら身に着けていない。
 隙間風が冷たかった。
 
 …傭兵なら武具には金をかけるから、こんな貧乏臭い装備などしていない。
 詳しい者なら、男の掌にある肉刺(まめ)の潰れて硬くなったものが、農民が持つ手にできる特徴だと分かるだろう。
 
 男は兵役中の農民、といったところだった。
 …元農民といった方が正しい。

 祖国は二年も前に、敵国に滅ぼされてしまった。
 耕すべき畑は、実質作物を作っても搾取されるだけで、彼や家族の所有物とは言い難かったが。

 自分を徴兵してこき使った祖国はあっさり負け、男は半月も立たずに捕虜となった。
 その後は捕虜収監所に入り、一年間は敗戦国の元兵士として強制労働を課せられ、恩赦とは名ばかりの厄介払いで再び元敵国の兵士として配置されると、あっけなく自分の属していた隊は敗北した。
 
 参加した戦争は、いつも負け戦だった。
 
 男は北方にあった小さな国の、国の中でしか威張れない貴族にこき使われる貧農の次男として生まれ、十三歳で無理やり兵士にさせられた。
 彼が初めての殺人をして、死に掛けて…なんとか生き残った後も、負け戦を繰り返した亡き故国は、大国に蹂躙されてあっけなく滅んだ。
 
 諸国の乱立するこの地方は小競り合いが多く、弱い者は戦争で淘汰される。
 男のように、故郷を失った者も多い。
 
 生き残れる者は少数だった。
 
 多くの兵士は、栄養の行き届かない身体で慣れない武器を振るって、ただ死んで逝く。
 自分が何故戦っているのかと考え込めば頭を割られ、悲観すればその胸を貫かれる。
 悩む余裕も無い者は、悪運が強い者だけが生き残り、生き残った者も新しい戦いや虜囚としての苛酷な環境で次々と死ぬ。
 追い討ちをかけるように、北方の冬は弱者にとりわけ厳しかった。

 生き残った者の心にも虚しさがあるばかりだ。
 死ぬのが延びたに過ぎないのだから。
 
 帰る国を失った男のような敗残兵のできることは、ただあても無く彷徨うだけだった。
 
 手持ちといえば、わずかな装備。
 懐には銀貨一枚すら無い。
 これでは一晩の宿すら泊まれないだろう。
 
 ここ数日は雪をそのまま啜り、野草を生のまま齧る日々。
 農民時代、食べれるものなら何でも食べた経験から、食せる類の野草は知り尽くしている。
 それができないものが栄養失調で、壊血病で、脚気で先に倒れて逝く。

 貧しかった故にたくさんの苦労をし、知恵を得て生き残れたことも、果たして幸せと言えるのか分からない。
 生きていても延々と、逃亡と寒さに震える日々が続いているのだ。
 
 男はゆらりゆらりと歩きながら、今までの人生を振り返ると唇を噛み締めた。
 
「…また生き残っちまったか」
 
 自嘲的に呟く。
 
 強制労働から解放された男が、次に送られた戦場はラトリアという小国であった。
 規模は小さいが、とても古い歴史があるのだという。
 
 彼の祖国を滅ぼしたギマール共和国が、ライバルとされるマルディアン帝国と、このラトリアの領土を巡って争っていた。
 男はギマールの歩兵として、恩赦を得られるという名目で最前線に立たされ、ラトリア軍との戦いに参加していた。
 ところが、たいして力の無いラトリア王国軍を破って疲弊したギマール共和国軍の隙を突き、マルディアン帝国軍がラトリアの王都を陥落させた。

 マルディアン帝国軍が越境して攻めてきた理由などは、とても酷い。
 「同じ統一帝国の末裔を名乗りながら、敵の侵入を許すなど許されない。力無きラトリアは帝国に接収されるべきである」、などと宣戦布告したのだそうだ。

 ギマール共和国軍の宣戦理由は、「腐敗した僭主と貴族政治から民を解放するため」だったか。
 蚤の背比べである。

 どちらも盗人猛々しい言いがかりだった。

 その後、得物をかっさらわれたギマール共和国軍は侵略兵として追われた。
 男の部隊は真っ先に見捨てられて殿という名目で放置、すぐに敗走して散り尻となる。
 
 おそらく、男を含めた恩赦と名ばかりの兵士たちは、死んだものとされるのだろう。
 ギマールに戻ってもまた戦わされるかもしれない。

 不幸中の幸いか、敵国は拠点確保に夢中で敗残兵狩りには穴がある。
 戦場からそれほど離れていない場所で寝こけていても、見つからないぐらいなのだ。
 
 男はふと灰色の空を見上げる。
 
 自分が徴兵された時、泣いてすがった母を思い出した。
 風の噂に、男の村が今まで彼の属していたギマール共和国軍によって皆殺しにされたと聞いている。
 
 皺だらけの、肉刺の潰れた武骨な掌で撫でてくれた父。
 男より要領が良く、ひょうきんだった兄。
 二人は徴兵されて間も無く、戦場で死んだ。
 
 美しい髪が自慢だった妹は、ろくな食事が取れず、流行り病であっけなく死んでしまった。
 
 ただ一人の肉親である母も、重税と過労で痩せていた。
 きっと、殺されてしまったのだろう。
 あるいは村が滅ぼされる前に、弱って死んでしまったのかもしれない。
 母と別れた年は記録的な不作で、尻の毛まで毟られる搾取があり、何人もが飢えと税を払えなかった懲罰で死んだという。
 
 群雄割拠する北方ラダニール諸国。
 底辺にいる者は、搾り取られ、こき使われ、磨り減ることに慣れてしまっている。
 男もまた、そんな人間の一人だった。
 
「…でも、俺はまだ生きている」
 
 北方の冷たい風でずれた襤褸を、ぐい、と直しまた歩き出す。
 踏みしめた新しい雪が喘いで、鳴く。
 まだ死んでいないのだ、と主張するように。
 
 灰色の空からわずかに刺す日差しの下を、男…オルフは目的も無く歩いていった。



 事情があってダッシュ版リプレイ2を書いているY2つです。
 とある件を確認中、ということで嫌になったとかではありませんので、本編の1もまたいずれ復帰するかなと。

 シナリオを上げようにもなんだかギルドの方が403エラーが起きてる様子。う~ん、Androidの方は大丈夫っぽいですが、なんでだろう?
 皆さんの方はエラー起きてませんか?

 気分転換にリプレイ2のPyDS化を、プレイヤー紹介までぼちぼちとやってしまうことに。

 リプレイ2はずいぶん昔に書いてたやつで、実際にシナリオは結構遊んでいたものの、本編に入る前にデータがハードディスクごとお陀仏になってしまったので、こっちはもう心機一転…型からやり直します。

 まずダッシュスタンダードのスペックを考えて、全員の型を検討してほぼすべてのキャラを作成し直しました。
 オルフは勇将型から豪傑型に、フィリは豪傑型から勇将型に。
 この辺はダッシュのバランス調整のしやすさと、型ごとの性格補正の見直しのおかげがあってか、すんなりやることができました。
 原本のカードワースエンジンはそのピーキーさが味ではあるものの、能力値1や12が極端に発生しやすく豪傑型と策士型の合計能力値が若干低くなるため、旧リプレイ2では特徴づけでかなり無茶した記憶があります。
 ダッシュは低い方にバランスが悪くなるのが発生し難い仕様になってるので、一般型を作成するのはやりやすいです。

 私の場合、たまたまエンジン環境の再現をしたところから紹介がてらダッシュエンジンをリプレイに使うようになりましたが、傍目には「自作エンジンでチートしている」ように見えますかね?

 Y2つと言えば『特殊な種』という危険物を世に出した奴、という印象を持たれている方もいるかもしれませんね。
 …特殊型キャラクターが簡単に制作できる『特殊な種』って、実は結構需要があるんですよ。特に神仙型や凡庸型のデータ検証する時は便利ですし。
 反則だとわかっているけど、「私は使っちゃうよ」って方、時々見かけます。

 特殊型でも英雄型が発生するのは三代目ぐらいからですし、神仙型は狙って出そうとしても面倒で難しいですからね。
 無為に発生するまでシナリオを消費してしまったとか、エディタで作ったキャラクターを連れ込んで直接使うよりは反則度が低いのでしょうかね?
 比べる話じゃないんでしょうけれども。
 そういう自由な遊び方が選択できるのも、カードワースらしいんじゃないかなと思います。

 オルフは使うイラストも換えたので、ごっついキャラになりました。

 初期の装備品として、Martさんのシナリオ『焔紡ぎ』から【担ぎ颪】を購入。
 レベルアップそのものはしていないけど(というか戦場生活で身体が衰えた)、技量は少し残っているという扱いです。

 後にシグルトの親友となり、同じ北方出身の冒険者として肩を並べる英傑“嵐を砕く者”のリーダーです。
 すっごい強面で2メートル近い巨漢。
 怪力で巌のようなタフネスがあります。

 戦士としてはとても優秀で、決断力に優れているタイプ。
 
 賎民農奴と呼ばれる最下層の貧農の生まれで、シグルトとは同様の戦士でありながら、全く違うタイプの印象があります。
 今回のリプレイでは、名前はただラインドの子、オルフにしました。

◆オルフ
 
 男性 若者 豪傑型

下賎の出   田舎育ち   貧乏
誠実     進取派    鈍感
勤勉     地味     粗野
武骨     硬派     お人好し

 
器用度:2 敏捷度:6 知 力:4
筋 力:12 生命力:10 精神力:6

好戦性+2 内向性+1 勇猛性+2 大胆性+2 正直性+1

・初期装備
 スキル【担ぎ颪】-600SP

 ついでに、「Inkarnate Worlds」(https://inkarnate.com/)というファンタジーマップ作製のオンラインサービスを使って、シグルトとオルフの故郷である北方のグロザルム地方とラダニール地方の地図を作ってみました。

※【北方グロザルム・ラダニール全図】
北方グロザルム・ラダニール全図

 うん、地図作ってみるとけっこう話に矛盾があったと気がつきます。
 これをもとに、内容は直していこうかな…


〈著作情報〉2018年07月21日現在

 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。

 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。

 リプレイ環境であるCardWirthPy Rebootは2018年2月1日リリースされたCardWirthPy 2.3 - CWXEditor同梱版に拙作のカードワースダッシュStandard Editionを使ったスキンを作成してプレイしているものです。
 CardWirthPy Rebootは同名の開発サイト
 ( https://bitbucket.org/k4nagatsuki/cardwirthpy-reboot/wiki/Home )で配布されています。
 カードワースダッシュStandard Editionはこのブログのリンクから行ける、Y字の交差路別院にて配布しています。
 エンジンと付属物の著作権・開発状況・その他の情報は各配布元を御参照ください。

 【CW:リプレイ】、【CW:リプレイ、R】、【CW:リプレイ2】、【CWPyDS:リプレイ】、【CWPyDS:リプレイ2】等で書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 また私がお預かりしているMartさんの“風を駆る者たち”リプレイの記事を参考にした内容は、それぞれのシナリオそのものの著作権はそれそれの作者さんにあり、参照記事はMartさんに著作権があります。
 御了承下さい。
 また、リプレイ中に使われる内容には、各シナリオで手に入れたスキルやアイテム、各シナリオに関連した情報等が扱われることがあります。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。

 『焔紡ぎ』はMartさんのシナリオです。現時点でVectorにて配布されています。
 シナリオの著作権は、Martさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンはVer1.14です。

※【北方グロザルム・ラダニール全図】は「Inkarnate Worlds」(https://inkarnate.com/)というファンタジーマップ作製のオンラインサービス(無料版の方)を使って作成しました。
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