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『私』

2018.09.25(16:09) 478

 美しい朝日が差し込む時間、私は部屋のカーテンを勢い良く開いた。

 窓からいっぱいに飛び込んでくる、光の雨。
 少し前までの、夜型だった頃の私は、こんな日々を過ごすことなんて考えてもいなかったと思う。

 私がこの『小さき希望亭』に来て、もうすぐ一週間になろうとしている。

 この宿を含めた〈冒険者の宿〉と呼ばれる場所では、冒険者と呼ばれる人たちに、仕事の斡旋をしたり、彼らの駐留先になる拠点だ。
 かくいう私も、新米だが冒険者である。

 冒険者は、ありていに言えば何でも屋みたいな仕事。
 魔物や盗賊の討伐といった荒事も多いけど、荷物の輸送や遺跡の探索、珍しいものでは対立した組織同士の調停なんかもやるらしい。

 〈冒険者〉なんて浪漫溢れる名称だけど、お伽噺に登場する勇者のような冒険者は、実際ほんの一部だ。

 私が旅の吟遊詩人に聞いて初めて抱いた冒険者像は、そんな格好良くて英雄と呼ぶに相応しいものだった。
 そして、このリューンにやってくる前に酒場で聞いた冒険者のイメージは、ならず者そのもの。

 実際に冒険者になって彼らと交流してみたが、その本質は〈十人十色〉。
 本当に英雄そのものと言える凄い人もいれば、私のような女の子には「隙あらばものにしてやる」とばかりに近づく色ボケ、ちんぴらと変わらない人間の屑までいる。

 その点、私の所属した『小さき希望亭』は、良質の冒険者の集まりだった。
 
 冒険者の宿には、〈専属〉と呼ばれる冒険者たちがいる。

 彼らは、その宿から優先的に仕事を受けられる代わりに、宿から要請される仕事を受ける義務もある。
 つまり身元のはっきりした仕事人たちで、ギルドと呼ばれる各組織…商人、職人、漁師他色々ある…や、地位の高い人から依頼を貰うことができる。

 私もまた、そんな〈専属〉冒険者の登録し終えて数日、といったところ。
 目下、鍛錬しつつ、自分の所属する〈パーティ〉のメンバーを探している、そんな立場にある。

 〈パーティ〉と呼ばれる、冒険者のグループを示す単位がある。
 〈専属〉の優秀なパーティを持つことは、宿のステータスになるのだが、『小さき希望亭』は小さい宿にも関わらず、話題の多い〈専属〉パーティが所属していることで、名が知られていた。

 でも、うちの宿の〈専属〉パーティは現在、なんとたった二つきり。
 あ、違った三つになったばかりか。
 つい昨日、新人のパーティが一つできたんだっけ。
 正直言って、とても少ない。

 そのうちの一つ、“煌く炎たち”は、マルスという元傭兵の戦士がリーダーのパーティだ。

 彼らは戦闘力が高く、討伐の依頼を得意にしている。 
 他のメンバーは、炎の精霊術師でもある女戦士ゼナ、聖北の元修道女だったレシール、老獪な魔術師カロック、玄人盗賊のジェフで、五人組。

 うちの宿の特徴、と言えば、女性冒険者が多いことだろう。

 それはこの『小さき希望亭』が、女性に居心地の良い宿だからだ。
 此処の主人は、酔って女性冒険者に絡むような奴は締め出しをする。

 あと、宿の娘さんが空き部屋を女性用の沐浴部屋として開放してくれてたりする。

 知ってる?
 沐浴ってね、下町なんかじゃ、平気で女の人が井戸端で行水してたりするのよ。
 一般人は川で水浴びとかするんだけど、リューンみたいな都市の中に流れる川の水はなんだか泥臭くて、洗った人の側を通ると濡れた動物みたいな悪臭がするんだよ。
 だから一生のうちほとんどは体を洗わないなんて人も存在する。
 不潔な人の側では、なんとも言えない悪臭がするし、蚤や虱なんかをうつされかねない。

 その点、『小さき希望亭』は大きな木のたらいにお湯や水を汲んで身体を拭けるんだ。
 鍵付きの部屋の中でね。

 なんと、とても清潔な女性専用のトイレもある。
 汚物を落とす穴が下水に通じてて、近くの川から水を入れて流せる水洗だから、全然臭くならないんだ。
 女の子は月に数日困ったことになるんだけど、ここの宿のおかげで恥かしい思いをしなくて済んでる。
 男女共用だと後始末が大変だから。
 便座は陶器製の椅子みたいな形で、使う時にお貴族様みたいなちょっとした優越感が味わえるんだ。
 なんでも、貴族に縁ができたから、そういう人が使える清潔なものにした方がいいってことになったみたい。

 冒険者全体から見ると、女性冒険者の絶対数はとても少ない。
 どの位かっていうと、全冒険者のうち一割を切るんじゃないかな?

 何故かって、それはこの仕事がきつくて汚くて危険な仕事だからだ。
 この時代女であれば、理想は十代のうちに玉の輿。
 男と並んで、切った張った~て世界は、はしたないと言われても仕方が無い。
 
 そんな、私と同じ女性冒険者のゼナやレシールとは、ここ数日で喧嘩友達みたいな関係になった。
 彼女たちは“煌く炎たち”のメンバーで、優秀な冒険者だ。
 仲良くなってみれば、二人とも人間味のある面白い人たちである。

 ゼナは感情的でとっても過激。
 怒るとすぐに炎の精霊を召喚しそうになって皆で止めるのだけど、きちんとした矜持を持っていて、弱い者いじめが大嫌い。
 因習なんかには囚われない自由人だ。

 子爵様の御令嬢だったレシールは、プライドが高くて考え方が固いけど、清楚で情が厚い。
 物凄く教養があって、頭脳も明晰だ。

 “煌く炎たち”リーダーのマルスは男前(顔じゃないのがやや残念だが)で、他の男性たちもしっかり者。
 マルスたちは女性を差別したり下に見ず、女性を立てることも心得ているから、ぎくしゃくすることも無くうまくやっている。

 本来、冒険者のパーティは六人を一単位とするので、私は五人組の“煌く炎たち”に入ったらどうかと、宿の親父さんに声をかけられていた。
 しかし、今のところ私が入りたいと念願しているパーティは、もう一方の“風を纏う者”の方だ。

 “風を纏う者”のメンバーのうち、面識があるのは一人だけだが、私にとってその人は特別。
 こうして冒険者になったのも、また冒険者としての手ほどきをしてくれたのも、皆彼だからだ。

 “風を纏う者”は、新進気鋭のパーティで、結成して半年も経っていない。
 だが、依頼の達成率は九割以上!
 失敗した依頼というのは無いらしい。ほとんどが依頼通りの契約が遂行されなくて御破算になったり、依頼遂行の結果が予想外(良い結果になって報酬が増えたりというパターンの方が多い)のものになってしまったものだという話。
 成功の街道を躍進というより驀進している。

 貴族にコネがあったり、各ギルドのお偉いさんに注目されてたり、彼らに教えを請いにくる冒険者もいるぐらい。
 『小さき希望亭』が有名になったのも、このパーティのおかげといっていい。 

 “煌く炎たち”同様、まだメンバーが五人なので、空いた最後の座を得ようと狙ってる冒険者も多いが、今のところ全て撃沈している。
 なんでも“風を纏う者”の盗賊であるレベッカという人は、とても理想が高いんだとか。

 私も“風を纏う者”に入りたいと希望しているのだが、最初のアプローチはすっぱりと断られた。
 諦めきれない私は、鋭意修業中でいつかその座を射止めようと頑張っている。

 …見ると、窓の下で、あの人が何時ものように剣の鍛錬をしていた。
 上半身裸で、汗がその白い肌を濡らしている姿は、ちょっとセクシーで野性的だ。

 あんなに綺麗な人なのに、身体には無数の傷がある。
 彼が歴戦の戦士である、証なのかも知れない。

 でも、彼ならこう言うだろう…

〝この傷を負った分、俺は及ばなかったということだ〟

 …こんな感じにね。

 ふふ、この宿に来てから、彼のことはたくさん知った。
 女の子がキャーキャー騒ぐ美貌以上に、素敵で逞しい内面を持っているのに、実はちょっと鈍感で可愛らしい一面があることも。

 …お、あそこに並んでるのは、彼の教導目当てにやって来た他の宿の新米冒険者っぽい。
 あっちの桃色なオーラ全開の連中は、性懲りも無く彼の心を射止めようとやってきた娘たちね。
 うわ、マダムっぽいのもちらほらといるわ。
 あそこの子供たちは、彼に遊んでほしい子たちね…意外だけど子供好きで優しいからなぁ。

 …おや?

 ちょっと、待て、待てっ!
 アレは、何?!
 いかにも「ヤラナイカ」な、黒髪の兄貴っぽいのの集団は…
 あ、女の子たちに踏まれた…あーめん。

 相変わらず人気よね…はぁ。


 窓からの観察を終え、借りている二階の部屋から一階の店に降りると、何時もの様に宿の親父さんが食器を磨いていた。

 頭が少し寂しいけれど、それは言わないのが礼儀というもの。
 不真面目な冒険者に対しては厳しい評価をする人だけれど、私には良くしてくれる。

 親父さんは「早いな」と言いつつ、私の好みに合わせて朝食を用意してくれた。

 此処の料理は、賄いでもちょっとした高級料理店より美味しいらしい。
 朝食だけ食べにくる人がいるくらいだから、よっぽどだ。

 賄い、と言えば…今日私は仕事を休んでいる。
 冒険者では無く、副業の方だ。

 顔見せに行って、数回店番をした程度だが、最初から休んでばかりだと辞めさせられるかもしれない。
 あの仕事は好きだし、明日は行くことにしよう。

 今私は『ささやかな宝』というファンシーなお店で、雇われ店員の様な仕事もやっていた。
 冒険者として生活が安定するまで、生活費を稼ぐために、世話してもらったのだ。

 そこの店主さんは上品な女性で、全然怒ったりしないし、サービスばっかりするので店の経営が心配。

 品揃えが豊富で、化粧品なんかは毎日売れているので、そこそこに忙しい。
 店主さんには私の身元保証人にもなって貰っているし、時給扱いで銀貨五枚もくれる。
 
 たかが銀貨五枚って笑う人もいるけど、それだけあればこの宿で一日分の食事が賄える。
 にこにこ笑って、可愛らしい小物の説明をして、店主さんとお茶を飲みつつ店番すれば稼げるんだから、正直正規の店員になるべきか真面目に悩んでいる。

 こう言ってはなんだが、私は化粧品にはうるさいのだ。
 特に香水に関しては、専門家に負けない知識があると自負している。

 調香師になるほど器用ではないし、鼻だって特別良い方ではないが…

 香水の産業が活発なリューンのブランドは全部覚えているし、どんな心理作用があって、どの年代のために作られたか、なんていう蘊蓄は誰にも負けない。
 自前でブレンドしたオリジナルの香水は自信作。
 副業採用のきっかけになったくらいで、店主さんが私の名前で出さないか~なんて誘ってくれてる。

 …数日前までの私は、それはそれは腐っていた。
 お金は無いし、稼ぎ方は知らないし、そのくせお腹ばかり減るので、泣きそうだった。

 市民税を取られたくなくて、歓楽街の廃墟に潜伏して、通りすがりの助平なお兄さんからこっそりあるものを戴く。
 そのあるものは植物や虫からもそ取れるのだが、どうやっても微々たるものだったから、大きな対象から奪う必要があった。
 つまりは人間から無理やり貰うわけね。

 立派な犯罪よね、生きるためでも。

 おかげで心が荒むわ、飢えるわ、散々だった。
 ま、逞しくはなったけどね。

 香水の知識の多くは、そんな頃、歓楽街にくる行商人や消費者の女性たちから仕入れた。
 実は、脇の路地や壁の向こうで聞いてただけなんだけど。
 
 そう、香水の消費が最も多いのは、貴族の女性と夜の女なのだ。
 
 夜の女っていうのは、売春や風俗やってる女の人のこと。
 何時の世も、助平な男は後を絶たない。

 特に娼婦さんたちが、ばかすか香水を使う。
 事に及んだ後、嫌な臭いを消すためだ。
 香水は高いけど、相手が萎えてしまったらお仕事にならない。
 つまり、商売道具である。

 本当はお風呂に入りたいんだろうけど、こういう大きな都市で水はとても貴重なのだ。
 仕事の度に沐浴するのも無理。
 歓楽街ともなれば、飲み水や生活用水まで澱んでいて生臭い。
 水桶にボウフラが泳いでいることなんて、日常茶飯事。

 私は雨水を貯めて、止んだら掛物をして虫が入らないようにした水を煮沸して身体を拭くのに使ってたよ。
 リューンに来る前は、近くに綺麗な川があったから沐浴するのは当たり前だったんだ。

 まぁ、水が汚いから飲み水の代わりにお酒が沢山売れるし、温泉水を売り歩く仕事まである。
 染みついた生臭い悪臭を隠すために香水が大切になるわけ。
 ものによっては蚤や虱、蚊なんかの虫除けを兼ねてるって、知ってる人は少ないだろう。

 高級な娼館には少ないけど、梅毒や淋病といった花柳病(性病)に苦しむ娼婦さんも多い。
 酷い話だが、病気で出た膿の悪臭を隠すために、香水を使う娼婦さんもいる。

 世知辛い世の中である。

 そんな苦しい生活の場の近くにいて、実用的にもなる香りぐらいは、楽しみたかった。
 悪臭を消すと、別世界になったみたいで安心できたし。
 
 買うお金なんて当然無いから、捨てられていた香水の瓶を集めて、残って無いか瓶をひっくり返し見てるうちに、もっと詳しくなってしまったわけだ。

 香水の瓶はお洒落で高価なので、ひびが入ってるとか割れてるのでなければ、再利用が普通。
 私のこの趣味は、瓶を原料に戻して売る人たちに恨まれるので困難を極めたけど、冷や冷やしながら結局続けていた。
 
 何の因果かその時得た知識が、今の仕事ではすごく役立っている。

 『小さき希望亭』の娘であるクリスティアーヌ…通称娘さんは生粋のリューンっ子で、香水には詳しく、仲良くなるきっかけになった。
 働いてるお店では、お客さんに蘊蓄を披露すれば喜んで買ってくれるし、香水の話は楽しくて時間を忘れてしまう。

 まったく、世の中どう転ぶか分からない。

 腐ってた頃は、「もう死にたい」とか真面目に悩んでたけれど、今の私は結構幸せだった。


 食事をしていると、不意に隣に誰か座る気配がする。
 軟派野郎なら、隣に移るか毒の一つも吐こうとして、その人が〈彼〉であることに気付いた。

 同然そんな不遜な考えは、全部撤回。
 私が出来る最上の笑顔で話し掛ける。

「お早う、シグルト」

 彼は、何時もの様に苦笑して、「お早う」と返してくれた。

 …そう、彼こそ“風を纏う者”のリーダーにして、この宿の中心人物であるシグルト。
 
 名前が竜殺しの英雄と同じだが、それがこれほど似合う人も珍しい。
 背が高くて、凄く綺麗な顔立ちで、神秘的な瞳をしている素敵な男性だ。

 容貌も魅力的だが、能力も優秀。
 天がここまで贔屓して贈り物をした人はいないだろう。
 強くて教養があって、医術の知識や魔法にまで通じている。

 ついこの間なんて、リューンに滞在していたある国の王族を救ったってことで、女王様から直接感状を貰い、リューンの市長さんからも表彰されてた。
 なんでもその国の王配…女王様の夫である将軍様が不慮の事故で死んでしまったのだそうだ。
 他国から滞在に来てた要人が死んじゃったわけだから、リューンのお偉いさんにとって大失態だったわけ。
 ところが、シグルトがリューンで何者かに拉致されてた世継ぎの王子様を助けたので、女王様がそのことに感謝して、将軍様の死亡に関する責任問題を取り下げてくれたの。

 シグルトは、ヴェルヌー女伯というお貴族様からも目をかけられてて、噂だと本物のお貴族様の生まれらしい。
 普段は武骨なしゃべり方をしてて、そういう生まれっぽくは見えないんだけど、時々見せる教養は多分この宿でも随一だ。 
 
 軽い嫉妬とともに、誰からも注目される、そんな人。
 そして、私をあの掃き溜めの様な地獄から救ってくれた、大好きな人だ。

 …仕方ないでしょ?
 ただでさえこんなに格好良いのに、私を救ってくれた騎士様だったんだから。

 彼との出逢いは何というか…ええい、言ってしまおう。

 私はサキュバスで、最初は捕食者みたいなものだったのだ。

 サキュバス、というのは女淫魔のこと。
 ちょっと卑猥な種族名かもしれないが、本来のサキュバスは、何というか淫靡なイメージしかない。

 まあ、異性から精気(生気)を、交わって奪うから当然なのだが。
 
 私もそういうことしてたかって?
 いいえ、してません。(きっぱり)

 …ここからは身の上話になるのだが、私の場合はかなり特殊だったのだ。

 私は事に及ばなくても、触れれば精気を奪い取れるのである。
 だから、男の人とそういう関係になったことは一度も無い。

 本来この能力は、上位の妖魔でなければ使えないものだ。
 やり方としては、「精気を奪う見返りに快楽を与える」という淫魔の王道からは外れた行為で、邪道扱いされる。
 さらに私の場合、飢えた状態でなければ力をコントロールできるし、万全の時は生物以外の様々な物体からも、精気として力を吸収可能だ。

 私は、言ってみればサキュバスでも、超の付く異端だったわけ。
 孤独な身の上になった原因でもあった。

 相手に接触するために、魔法の鎖で相手を呪縛する呪術も使えるのだけど、これは兄に習った。
 その兄に、一人で生きるように言われてリューンに連れてこられたのだ。
 私が前にいた部屋は、淫魔である兄が女の人といたすための隠れ家の一つだったわけ。
 …実の妹をなんつ~場所に押し込むのよ…

 この都市はとても広くて、隠れる場所には事欠かなかったけれど、同時に官憲やら教会やら、私たちの天敵もうようよしていた。

 私は生きるために適当な獲物を見つけて精気を奪って気絶させ、逃げ回っていたのだが、頻繁に食事するとやばい勢力に狙われるので、都市伝説に溶け込む程度に仕事を控えてやっていた。
 それに、こう言うと変かもしれないが、私は好きでもない人とその…まぐわって精気を奪うのがものすごく嫌。
 本当は他人から精気を奪うのにも、お茶の代わりに泥水を啜っている、程度の忌避感がある。

 この〈異性と交わって吸精することに対する嫌悪感〉は、私が淫魔の一族の中で異端と呼ばれても仕方ないことだと思っている。

 本来のサキュバスたちは、獲物の男性から精気を吸い尽して殺すことをなんとも思わない。
 人間ってね、淫魔にとっては捕食対象で、恋愛とか憐憫の対象ではないの。
 快楽のうちに殺すのだから、感謝されてしかるべき、なんて考えてる連中もいる。
 つまり、嬉々として食い殺すことができなければ、結局仲間にはなれなかったのだ。

 私を追放した母や兄、淫魔の里のみんなは、きっと私がこういうジレンマを持つことに気が付いていたんだろう。

 そんな私でも、定期的に精気を吸わないと猛烈な飢餓感に苛まれる。
 空腹になった者は、人でもサキュバスでも関係なく、荒む。
 食事をするには嫌悪する力を使わねばならず、食事をしないと飢える。
 
 シグルトに逢った頃の私は、仲間から捨てられた境遇とこの矛盾に疲れきっていて、半ば自棄になっていた。

 最初にシグルトを見つけた時、私は容姿端麗な彼からなら力を吸い取っても平気かも知れないと思った。
 嫌悪する力でも、食事をしなければ七転八倒の苦しみだし、どうせやるなら誘惑に負けたって形にしたかった。
 ていのよい言い訳を作ったわけね。

 サキュバスって種族は、〈男好き〉のする物凄い美人(これは種族的進化だと思う)が多くて、大抵の男の人は、花に吸い寄せられる蝶のようにふらふら寄ってくる。
 特に飢えてる時のサキュバスは、生存本能が働くのか、男を誘う魅力が全開になる。

 一度私の淫気に当てられて、振り切るまでひたすら追い掛けてきた男の人がいたけど、あれは完全に正気を失っていた。
 私の魅力全開で誘えなかった男の人は、今まで一人もいなかった。

 だがシグルトは、その魅惑にまったく、これっぽっちも靡かなかったのだ。
 挙句、お説教されました…

 結局私は、飢えに耐えきれず彼から精気を頂戴したのだけど(もちろん手を握って、楚々とやりましたよ)、彼に対して特別な執着を…要は私の方が魅了されてしまっていた。
 それに…別れ際の彼は、私と同じ孤独を分かる瞳をしていた。
 
 次の晩に会う約束を無理やりして…果たして、彼は来てくれた。
 しかも、律儀に私と決別をするためにだ。

 彼は、私の中に死んでしまった知り合いの女の子を見てたので、正体に気付きつつ優しくしてくれたらしい。
 でも、そういうのは私に失礼だからって、はっきりともう会わないって、別れを告げて来た。

 私は無我夢中で彼を引き止めようとして、全開で彼から精気を吸ってしまった。
 
 気絶したシグルトを見て、私は殺してしまった~と、慌てたが、幸い彼は生きていた。
 彼はすでに私の正体を看破していて、対策を立てていたのだ。 

 無我夢中で隠れ家に彼を運んで、介抱して…起きた彼に、いつの間にか私は、溜まっていたものを吐き出すように、身の上話をした。
 そうして、自分の節操の無い力にほとほと嫌気がさしていた私は、一通り身の上を告白した後、彼に殺してくれと頼んだ。

 シグルトはそこで、憐憫も敵意も無く、私を叱りつけた。
 いかに私が身勝手なことを言っているのか、激しい口調で叱咤し、そして私に生きるように言ったのだ。

 もし私が少しでも生きる気があるのなら、自分が手を貸すからと。

 恥ずかしい話、私は泣いてしまった。
 ただの同情では無い、そんな優しい言葉をかけてくれたのって、里を出てからは彼が初めてだったからだ。

 後は彼に導かれるまま、『小さき希望亭』にやってきた。

 シグルトが凄かったのはここからで、何と私に近しい魔物の伝承から、精気の代わりに飢えを満たす代用品を見つけ出してくれたのだ。
 私もまさか、【柘榴酒】があんなに効くとは思いもしなかった。
 高価なんだけど、一口飲むと一週間ぐらいは飢えの症状が起きない。
 
 精気を奪うことで教会とかに狙われることを避けるために、飢える寸前まで我慢する同族もいるから、【石榴酒】はたぶん淫魔や吸血鬼みたいな特殊な種族にとって特別な薬になるかもしれない。
 機会があれば、困っている同族に教えたいなと思っている。

 話を戻すね。

 そんなわけで私は、人並に生きる手段を得たのである。

 さらにシグルトは、私が生活できるように、様々な手を打ってくれた。

 さっき紹介したお店の仕事や、私の身元保証人を作る交渉、宿に冒険者として登録するための口添えや、後々市民権を取ることができるよう前準備。
 当面の生活費と宿代、武具や装備品(お下がりだけど)。
 冒険者として生きて行くための知識の伝授と、教育まで…

 彼は、道端で遭遇して命を奪おうとまでした私を、「約束したから」と一言で済ませて、救ってくれたのだ。

 私はシグルトに一目惚れし、励まされて惚れ直し、救ってもらって虜になった。
 完全に参ってしまった、というやつである。

 だが、シグルトのストイックさは化物だった。
 多分、淫魔の女王が魔力全開で裸で迫っても、失せろとばかりに睨み返して終わるだろう。

 私もここ数日で何度もモーションを掛けたが、惨敗している。
 唯一の救いは、彼に色目を使う他の女性たちも尽く敗れ去っているので、彼が色恋沙汰で陥落する心配はまず無いということぐらい。

 つい先日も、なんと二人っきりで狭い部屋に籠って(彼が私に冒険者のやり方を教導するという目的だったが)半日一緒にいたのだが、した話といえば、生存術やら仕事のコツの話ばっかり。

 私、勝負用の香水まで用意して流し目やしなを作って迫ったのに、露出させた肌の話題から「冒険者は刺す虫に気をつけなければならない」という話になって、瘧(おこり…マラリアのこと)や脳炎は蚊が、悪名高い黒死病は鼠が媒介する蚤などがもたらす病気なのだという話に思いっきり反れてしまった。いや、まぁ…とってもためになる話だったけど。

 暑くても長袖にすることや、薬草をあぶって滲み出た茶色っぽい液体を薄荷(はっか)や蓬(よもぎ)を磨り潰して植物油に混ぜて塗る虫除けの軟膏や、木タールから精製した黒っぽくて臭い物体に薬草を混ぜて練り上げた怪しげな下痢止めの丸薬なんかの、調合の仕方と使い方を叩き込まれ、香水の匂いが吹き飛ぶほど手が薬臭くなった。
 恋や色気なんて、どこの世界の話って雰囲気だった。

 親父さんなど「シグルトなら間違いは決して犯さんだろう」と断言していたし…
 二人っきりの状況をやっかんだ娘さんやゼナ、レシールに至っては、「どんな風に振られたの?」と、敗北前提で話を聞いてくる始末…ええぃ、確かに駄目でしたともっ!

 でも、私は諦めるつもりなど無い。
 例え、シグルトが何かとち狂ってこれから先恋人ができたとしても、奪うか二号さんになってやる、ぐらいのつもりである。

 ぽんこつとはいえ、私はサキュバスだ。
 奪う恋は、その領分。

 だが、決意を新たにしている私の横で、当のシグルトはどこか幸せそうに朝食を頬張っていた。


「ね、シグルト。

 今日は私に付き合ってくれない?」

 健康のために良く噛んでしっかり食べるシグルトの、ちょっと長い食事が終わるのを待ち、私は切り出した。

「ふむ。

 どういったことをだ?」

 〈デート〉と言いたいところだが、冗談も本気も通じないだろうからとりあえず飲み込む。
 要は、誘うのが先決だ。

「引っ越し。

 前に住んでたところから、お気に入りの家具を持ち帰りたいの」

 言ってみて思わずにんまりする。
 私自身、この宿が帰る場所だと認識していることが、ちょっと嬉しい。

「もしからしたら、力仕事があるかもしれないし。

 …駄目?」

 シグルトは、こういう頼り方をすれば、先約が無い限り引き受けてくれるはずだ。 
 
「…いいだろう。
 俺も、教導の続きを進めておきたかった。

 話しながらで良ければ引き受けよう。
 君の今後に関して、少し思うところもあったしな。

 だが、今日の仕事は休んだのだろう?
 明日は必ず店に出るんだぞ。

 あの店の店主さんは、時間が空いてる時だけでいいと言ってくれたが、あれほど好条件の仕事は中々無い。
 落ち着くまでは辞めさせられないように、励んでおけ」

 あ、おんなじこと考えてたんだ。
 ちょっと嬉しい。

「うん!」

 私は元気に返事をして、準備をするために、自室に向かった。


 現在、シグルトが私に行ってくれている〈教導〉なるものがある。
 
 これば冒険者たちの伝統みたいなもので、後輩冒険者に先輩の冒険者が技術指導してくれることである。
 他の呼び方もあるらしいが、『小さき希望亭』ではこう呼ばれている。

 「冒険者なんて所詮ライバル同士なんだから、失敗しつつ覚えるべき。後輩なってほっとけ」…なんていう放任主義な宿もあるらしいけど、うちの宿は、主人も所属メンバーもそういうのに真っ向から対抗する姿勢だ。

 宿に所属するメンバーの死や失敗は即宿の看板に泥を塗り、宿の冒険者全員の仕事にも影響する。
 冒険者は人気商売なのだから、この考えは正当だと思う。

 それに、冒険者の失敗は=死亡というシビアな一面だってよくあるのだ。
 同じ宿のメンバーが死ぬのって、気分も悪いよね?って話になる。
 
 有能な人材を育てつつ、宿の名声を高めて組織力強化していくことが、教導の目的である。
 指導した後輩は先輩の意向を尊重して協力するし、後輩は先輩冒険者が手間を裂けない仕事を紹介して貰える。

 まさに相互扶助。
 
 『小さき希望亭』は、〈相互扶助〉を特別重んじる宿として、小規模なのにもかかわらずリューンでは一線を画している冒険者の宿なのだ。
 斬新と言ってもいい。

 実は、他の宿の場合、仕事…依頼の獲得って、ほとんどが「早い者勝ち」なのね。
 同じ宿の専属メンバー同士でも、仕事を取り合って喧嘩が起きることがある。

 ところが、うちの宿は基本的に「譲り合って恨まない」が原則。
 シグルトの属してる“風を纏う者”なんかは、この宿に来る彼ら目当ての仕事を吟味して、ほとんど後輩や宿のパーティに譲っちゃう。

 仕事が無ければ、出稼ぎやコネクションで仕事を探すか、先輩冒険者や宿の親父さんが、冒険者それぞれの技能でできる仕事を見つけ斡旋する。
 特に、自分の名前で宿に紹介した冒険者の面倒は、紹介したも者が責任を持って見る、という規約まである。

 結果、このスタイルが大当たり。
 秩序がしっかりしてるって評価されて、公的機関から仕事を貰えるほどになった。 

 うちの基本になったこのスタイルの立役者は、『小さき希望亭』の親父さんとシグルト。
 二人とも、ほんと凄い。

 特にシグルトは、東方の難しい軍学書の知識があって、早いうちから無秩序な冒険者のスタイルに異を唱えていた。

 …冒険者って、場合によりコソ泥やちんぴら扱いされてるの。

 まぁ一分の冒険者が、〈遺跡探索〉なんていう盗掘まがい(このため盗賊用語で冒険者は〈穴熊〉と呼ばれる)や、悪漢討伐にかこつけて乱闘騒ぎ起こしたり、自由=身勝手を勘違いして各地で問題起こしてるのがいるんだから、そういう評価も仕方ないんだけど。

 シグルトは、パーティ結成の頃から「自分たちの立場を守るために、規則や秩序はそれなりに必要だ」って主張して、自分たちの“風を纏う者”で実行し始めたのね。
 親父さんはそれを支持して、今のスタイルがすっかり定着した。
 
 この背景には、ある事件が関わっていた。

 うちのもう一つの主力パーティである“煌く炎たち”が結成して間も無い頃のこと。
 そのメンバーであるゼナが、生意気な後輩冒険者と乱闘騒ぎを起こしてしまったのよ。

 話を聞いてみると、短気なゼナも悪いんだけど、その後輩たちのリーダーだった魔術師が〈出し抜き契約〉っていう反則をやったことが問題だったらしい。
 
 〈出し抜き契約〉というのは、宿の依頼を受ける約束をしている冒険者を出し抜いて、先んじて依頼主と直接契約を結んでしまうこと。
 今の『小さき希望亭』では、やれば即出入り禁止だ。

 “煌く炎たち”は親父さんから確約貰ってたので、短気な性格から“炎の猛女”なんて呼ばれてたゼナの怒ること…
 件の魔術師は、腕っ節の強い彼女を馬鹿にした次の瞬間、鼻を折られて寝込む羽目になった。

 そのまま後輩パーティと乱闘になって、居合わせたマルスと駆け付けたシグルトで止めたんだけど、壊したもののツケで、暫くの間“煌く炎たち”は随分苦しい思いをしたらしい。

 不遜にも、その魔術師とそのパーティは、ゼナの宿追放を親父さんに迫ったのね。 
 ところが…親父さんはゼナを擁護して、魔術師の〈出し抜き契約〉を厳しく叱った。

 面子を潰された魔術師は、親父さんに暴言を吐いて、『小さき希望亭』の他のメンバーを扇動したの。
 「そんな依怙贔屓するなら、俺たちにも考えがある」ってね。

 あわや、宿分裂ってところで、親父さんはそういった不良冒険者に、選択を迫った。
 「ルールを守るか、出て行くか」ってね。

 それを機に、高飛車で乱暴だったのや、専属を止める冒険者が相次いで、うちの専属パーティは新米二つっきりになった。
 
 これは、シグルトたち“風を纏う者”の台頭が面白くなかった先輩同輩冒険者の嫌がらせや、元々厳しかった『小さき希望亭』の綺麗過ぎるスタイルに対する抵抗でもあったみたい。
 ま、この事件が起きる直前に、宿の最強メンバーが相次いで引退してしまったので、『小さき希望亭』で活動するモチベーションが低下してたってこともあるんだけど。

 不良冒険者たちが一斉に宿を辞めたのが春季だったから、この事件〈春風騒動〉と呼ばれたわ。
 『小さき希望亭』はもともと小規模だったので、こんな呼び方や実際に事件があったことを知ってるのは、残ったメンバーくらい。
 
 そうやって傾きかけた『小さき希望亭』を、“風を纏う者”や“煌く炎立ち”のメンバーは必死に守ろうとした。

 『小さき希望亭』の根本になる規則や、後輩育成の綱要(マニュアル)、柵が無いからこそ開拓可能な新しいコネクション、冒険者の死亡によってできる孤児の引き取りから発展した孤児救済機関…
 親父さん、シグルト、専属では古株の“風を纏う者”のレベッカという人と、“煌く炎たち”のリーダーであるマルスが中心になって、うちの宿の新基準がまとまったってわけ。

 それがつい最近のことだ。

 シグルトは、元々こういう組織編成の素質があったみたいで(聞いた話では、故郷で十六歳の時に、民兵の自警組織作って盗賊討伐とかやってたらしい…凄!)、サポートしたレベッカって人がこれまた盗賊ギルドみたいな裏の組織に特別詳しい人だったの。
 
 半年を待たずに、大改革をやっちゃったわけね。

 騒動の後、シグルトたち“風を纏う者”は、拠点をフォーチュン=ベルやアレトゥーザに移して活動してたらしい。
 『小さき希望亭』経由の仕事が激減してたし、自分たち新人に対するやっかみの目をそらすこと、宿の名前の宣伝なんかも目的だったらしいんだけど…

 「“煌く炎たち”に、汚名を雪ぐ機会をくれたんだ」と、マルスが言っていた。
 素敵な話よね。

 私もそうだけど、今『小さき希望亭』に所属している冒険者は、多分皆この宿の新しいやり方に強い共感を覚えている。

「誠意を見せない者に、誰が誠意を示してくれる?

 好ましい仕事を受けたいのなら、そうして貰える価値を態度で示すべきだと俺は思っている」

 シグルトは反対したり甘いとか綺麗過ぎるとなじる連中を、この言葉で黙らせた。
 彼の言葉や公正な態度に、同業者として惚れ込んでしまった冒険者も少なくない。
 
 うちの宿の〈教導〉は、こういった教訓や背景を踏まえて、冒険者が問題を起こさないための規則や生き方を叩き込む。
 だから、〈教導〉なんて硬い呼び方するのね。

 私も、シグルトの生徒として〈教導〉を受けている。
 彼の教導はとても厳しい。

 間違ってるところはずばずば突っ込むし、女の子に教える時でも容赦なく叱りつける。

 生意気な後輩が武術の教導で顔を鼻血塗れにした(文字通り鼻っ柱をへし折ったわけだ)こともあるし、ちょっぴり上流社会に生まれたとやたら威張っていた貴族の庶子に貴族の紋章や系譜の暗唱ができないと「よくそんな貧相な知識で上流階級などと言えたものだ」とへこませて追い払ったこともあった。

 でも、シグルトに教導を望む駆け出し冒険者は後を絶たない。
 彼の教えてくれることは厳しさ以上に正確で、習得すれば必ず役に立つからだ。

 名医を師として学んでいるシグルトの医学的知識は凄い。
 虫除けの軟膏と蚊遣りを徹底すれば野宿しても虫刺されに悩まされないし、下痢止めの丸薬は薬師のギルドで扱われている薬よりよく効く。

 貴族の法規や契約の仕方を参考にシグルトが取り入れた依頼人との契約法は、依頼金をとりっぱぐれることが無いということでとても評価されている。

 貧しくて払える金銭が無い村に、物品の為替を使うことで報酬を捻出できるようにした方法は、商業ギルドで絶賛されたそうだ。

 力任せに戦うのではなく、情報を集め、人材を活かし、戦術を立てて敵と戦う軍人みたいな慎重な戦い方は、初依頼で彼から学んだ冒後輩の死亡率を激減させたと聞いている。
 そんなすごい冒険者に、私は特別目をかけて貰っているのだ。

 …私は今幸運である。
 シグルトという、師であり恩人であり好きな人と一緒にいられる。

 一緒に並んで歩きながら、また彼のことを考えていた。
 そんな時間さえ、とても愛おしかった。
 

 考え事しながらにやけている間に、目的地についていた。
 
 そこは、あの時のままだった。
 そりゃそうか、だって一週間も経ってないもの。

 あの頃の私に相応しい、寂しい部屋だ。
 微かに、私の香水の匂いが残っている。

 部屋を見廻して、覚悟を新たにする。

 …私はこの部屋に来ることを決めた時、ある決意をしていた。

 本当は、その気になれば、引っ越しなんてすぐに済む。
 私が持ち出そうとしているお気に入りのテーブルは小さくて、女でも軽々と持ちあがるからだ。

 本当の目的は別にあった。
 それは、彼…シグルトが一緒でなければできないことだ。

 当のシグルトは、物珍しそうに部屋に描かれた壁画を見ていた。
 それは、ある聖人の物語の様子である。
 殺風景だからと兄が描いたものらしい。
 
 身を犠牲にして殉教する聖人の姿はとてもシュールで、夢の中の話みたいだ。
 正直、ここまでする聖職者の気持ちは理解できない。

 自己犠牲は尊いのだろうけど、ここまでした聖人を救ってくれない神様は酷いと思う。
 犠牲になることを美談にして騒ぎ立てる後の人たちも。
 それは、大衆や大義のために身を捧げるのは、正当だと言っているように感じるからだ。

 本人がその気ならば、問題は無いかもしれない。
 でも、犠牲を出して助かる側が、それを求めるのは間違ってると思う。

 だって、「必要なら生贄になれ」って言ってるのと同じでしょ? 
 
 兄が人間に持っていた畏怖と心地悪さが伝わってくるようだった。
 …壁画で派手に飾っているけど、皮肉じみていて、敬虔さという部分はがらんどう。
 描かれた絵のように現実感が無くて、空虚で、拠り所が無い。

 だから、この場に彼が必要だった。
 私が、しっかりと未来を自覚して踏み出すために。

「…目的の物は、このテーブルだったな。

 この程度なら、すぐに梱包できるだろう」

 慣れた様子でシグルトは、毛布にテーブルを包んでいく。
 
「この包み方は、家具類全般に使えるから、覚えておくといい」

 「わかったわ」と頷きつつ、横で私は微笑んでいる。

 こういう彼も好きだ。
 何時でも師のように頼もしく私を導いてくれるから。

 側で見ていると、シグルトは手際良く作業を進めて行く。
 コツを丁寧に説明している彼の横顔は、とても奇麗だ。

 でも、美貌には似合わないほど、その手は胼胝と傷にまみれている。
 彼が、毎朝激しい鍛錬で刻んできた強さの証。

「あ、そうやってクッションにするのね?」

 丁寧に、慎重に、彼はテーブルを包んでくれる。
 まるで私の思い出を包もうとしてくれてるみたいだ。
 彼の優しさは、言葉よりも行動にある。
 少し不器用な、彼らしい。

「…案外、ロープはこういった木製の品を傷つけるからな」

 何時もの苦笑。
 彼は何時も、こんな風に苦しげに笑う。
 まるで、心の底から笑うことを戒めているかのように、つらそうに。

 数日シグルトを観察していて、気付いたことがある。

 彼は、研ぎ澄まされた刃物のように鋭くて、綺麗で、どこか武骨で…とても儚い。
 生命の迸りも、燃え尽きる前の炎のように激しくて、弱々しいのだ。

 だから信じられる。

 彼は、弱さを持ち、弱さを知り、だから強くなれた人だと思うから。
 深い深い闇を抱え、それでも生きることを選び、同じように生きる道を私に示してくれたから。

 私は街で、虚栄に満ちた人たちを沢山見てきた。
 生きる者は、何かしら弱さや背徳を抱えている。

 それを自分から認めて、背負って行く人はとても少ない。
 言い訳をしたり、偽善に満ちた正義感を振るったり…醜悪な姿が満ちている。

 でも彼は、そういった自分の中の醜さと向き合って、だからこそ高潔になろうと努力している。
 彼の見つめる先はとても高い所で、至るために身を律し、進むことができる強い人だ。

 …本当は、テーブルのことはあんまり大切じゃなかった。
 こんな風に一生懸命な彼には悪いのだけれど、彼とだから踏み出せるきっかけが欲しかったのだ。

「…よし。

 こんなものだろう」

 シグルトが梱包を終えたことを告げた。

「…ん。

 じゃあ、ちょっとだけ待ってて」

 私はおもむろに、彼の後ろにあった棚に近づく。
 そこには、木製の小さな箱が置かれていた。

 【音聞き箱】と呼ばれる機械仕掛けだ。
 捻子を捲き、蓋を開けると曲が鳴る。
 ドワーフの細工師ぐらいしか作れない、高価な品だ。

 それを高く、両手で持ち上げる。
 頭を超える位置まで掲げ…床に叩きつけた。
 
 飛び散った木片が服を叩き、跳ねた釘が頬をかすめていった。

「…ふう」

 溜息とともに、ずっと昔の記憶が溢れ、思い返された。


 私の生まれた場所。
 
 それは、山奥の里にある名も無い小さな村だった。

 父は最初からおらず、ただとても奇麗な母と兄が側にいた。
 何時もその美しさに見とれ、見上げていたように思う。

 私が十五歳になった頃、私は他の人間とは違っている自分に気がついた。
 その力を知ったのはもっと前だけれど、それがとても危険で嫌な力であると気付いたのは、悲しい思いをした後だ。

 その日、夕食の魚を獲ろうと、私と母は村近くの浅い川に来ていた。

 私たちサキュバスは、いつも精気を啜っているわけではない。
 人間的に言うなら、サキュバスにとっての精気は大人になると必要不可欠の(シグルトの話では、たぶん精気によって他者を魅了する魔力を得ているのではないかとの話だった)な栄養分みたいなもので、子供のうちは普通の食事で身体を養うし、大人になっても食べ物を摂取することである程度の飢えを凌ぐことができるのだ。

 当たり前である。
 子供のうちから男女のまぐわいなんて倫理的にも肉体的にもできるわけないし、私たちサキュバスやインキュバスが精気に飢えるようになるのは、普通だと初潮や精通がきてから数年後だ。
 私の場合は、里の他のサキュバスより少し遅かったと思う。

 必然、普通の食事を得る必要があるから、食べ物を集めるわけだ。
 普通の人間とちょっと違って、私たちは小麦や芋みたいな植物性の食べ物より、動物性の食物を好む傾向にある。
 まぁ、パンとかでもお腹は膨れるんだけど、腹持ちが全然違うのだ。
 うちは母系であり、兄は荒事は嫌っていたから、動物を狩るのは危険だということで、もっぱら淡水の海老や川魚なんかを食べ物にしていた。

 海老や魚を取る小さな網を用意している母の横で、彼女が喜んでくれると信じて、私は「効率の良い方法がある」と、川に手を突っ込んだ。
 そして、水の中から精気を奪い取る。
 
 すると、虫や蛙と一緒に、ぷかぷかと沢山魚が浮いて来た。

 「ね?」と自慢げに振り向くと、美しい母の顔は見る影もなく恐怖に歪んでいた。
 そのまま、母は逃げ去って家の扉を閉め、私が泣いて懇願しても、扉を開けてくれなかった。

 不意に窓から、小さな旅行鞄が投げられ、私の横に転がった。
 すぐに、雨戸まで閉められる。

 鞄の中には、幾許かの銀貨と食べ物、そしてこの【音聞き箱】が入っていた。

 私は、箱から流れる音色がとても好きだった。
 珍しい品なので誰も持っていなかったし、もの心付く頃からずっと、寝る時は子守唄代わりにその音色を聞いていたのだ。

 茫然として、導かれるように箱を持ち上げると、中に手紙が入っていた。

 母からの別離を告げる、簡素な言葉。
 手紙は、人間のいる町で暮らせと締めくくっていた。

 今思えば、母もサキュバスだからこそ私の異質さをはっきり理解したのだろう。
 母は何かに脅え、そして力を隠し、村にいたのだ。
 私が異端の力に目覚めたから、村人に殺される前に追放しようとしたのかもしれない。

 手紙には、沢山の新しい涙の痕があった。


 シグルトは、壊れた箱の前で立ち尽くす私を、静かに、でも優しい目で見つめていた。
 不意に私の頭を撫でる。

「…この箱ね、故郷を追い出される時に母親から渡されたものなの。

 開けるとね、綺麗な音が鳴る仕掛けがしてあって、子守唄代わりに何時も流れる曲を聴いていたわ。
 そうすると、ぐっすり眠れたから」

 その続きを言う前に、シグルトは少し強く頭を撫でた。

「過去との決別は、できたか?」

 胸に染み入る優しい声で、彼が聞いた。
 私のやった行動の意味を分かっていたのだ。

「…過去を象徴する物品を壊しても投げ捨てても、自分という過去までは捨てられない。
 
 でも、何かの徴を捨て去ることは、進み出すきっかけになる。
 俺も、そうだったからな」

 言葉に滲むシグルトの本音に、私は思わず彼を見上げる。
 彼は優しい目のまま、一度だけ強く頷いてくれた。

 私の中のわだかまりは、その眼差しを見ただけで木端微塵に消し飛んだ。
 そこに転がってる箱の残骸のように。

「…ん。

 帰ろうか」

 私がそう言うと、シグルトは頷いて、包んだテーブルを持ち上げた。

「ね、手、繋いでもいい?」

 甘えてみると、シグルトは撫でていた手を拳にして、軽く私の頭を小突いた。

「あたっ!」

 実はそんなに痛くないが、思いっきりおどけて見せると、シグルトは深いため息一つ。

「…調子に乗るな」

 何時もの仏頂面に戻ったシグルトは、私を置いて部屋を後にする。
 
 …何?
 こんなところまでスパルタ?
 
 もう、私、頑張ったのよ!
 過去を捨てるのって、凄く怖くて、大変なことなんだから…

 むっとした私が追いかけようとすると、彼は外で立ち止まり空を仰いでいた。
 待っていてくれたらしい。

 …ちっ、仕方無い。
 今回はこれで妥協しておくか。

 私は、彼の背中に向けて走り出す。

 外はすっかり昼の日差しになっている。
 部屋に入って少ししか時間が経っていないはずなのに、随分時間が経っていたように思う。

 追いついた時、シグルトはまた歩き出した。
 彼の長い又下は驚異的な歩幅を約束している…足早っ!

「ねぇ~、待ってよぅっ!!」

 悪魔をやめた〈私〉。
 人間になった〈私〉。
 
 でも、彼のことでは小悪魔に戻る。
 それは、シグルトという好い男を捕まえたい〈私〉の本能かもしれない。

 彼はとても難敵だけれど。
 何時の日か振り向かせたいから、頑張り続けてみよう。

 
 しばらくシグルトの周りで、女性への扱いを改善するように申し立てながら一緒に歩いていると、彼は宿に行く方とは違う場所に向かった。

 どこに行くのだろう、とついて行く。
 荷物はシグルトが持ってくれてるから楽ちんだし、彼と歩く時間が増えるのは嬉しい。
 
 そうして、もう少し行くと…
 薔薇の花が一面に咲き乱れる見事な庭園があった。

「うわぁ…」

 リューンにこんな綺麗なところがあったとは、知らなかった。
 シグルトってちょっとミステリアスなところがあるけど、別の一面を垣間見た気がする。

 薔薇園には、庭師らしいお爺さんと、主らしい優しそうな貴婦人が立っていた。
 シグルトはお金の入った袋を渡すと、薔薇の鉢植と羊皮紙の巻物を貰い、婦人に頭を下げる。

 二人は顔見知りの様子で、婦人はにこにこ笑って、姿勢を直すように勧めていた。
 シグルトは言葉に甘え、私に軽く目くばせする。

 彼の意図を汲んで、私も一礼した。
 婦人は優雅に会釈して返すと、老人を伴って去って行った。

 見送った後、シグルトは側までやって来て、鉢植と巻物を私に差し出す。
 
「新しい門出のために。

 辛いこともあるだろうが、君の人生で役に立つことを願ってこれを贈ろう」

 ええ、私に?
 プレゼントって奴?

 うう、スパルタの後、これは反則…

 私は、思いっきりにやけそうになる頬を何とか保っている。
 やばい、泣きそう。

「…薔薇の花は、薬にも香水の原料にもなる。
 君はクリス嬢(宿の娘さん)とよく香水の話題で盛り上がっていたからな。

 その巻物はスイートピーを使った香水のレシピだ。
 傷や疲労を癒し、毒を清めるとされるから、扱えれば冒険者として重宝されるだろう。

 仲間を探す時にも、治癒の手段を持っていれば特別目をかけて貰えるはずだ」

 …え?
 
 シグルトの言葉に従って、巻物を読んで見る。

 これ、有名な調香師さんの秘蔵レシピだ。
 出回らなくなってた香水のものだから、あの貴婦人…引退していた調香師さんだったのかな?

 巻物には、一緒にスイートピーの花言葉も書かれている。

 ほのかな喜び・門出・別離・優しい思い出…うわぁ、今の私にピッタリ。

 シグルトは、不意に私の頭の上に薔薇の葉っぱをちょこんと置いた。

 「彼らしくない悪戯だ」と困惑しつつ、ふと私は、香水関係から何時の間にか覚えた、ある花言葉を思い出す。
 薔薇の葉の花言葉は…「頑張れ」あるいは「希望あり」。

 私が言い知れぬ感激で震えていると、シグルトは「では帰ろうか」と何時もの調子で歩き出した。
 
 そうか。
 シグルトはもうすぐ仲間の元に還る。
 だから、私が寂しくないように、この花をくれたのだ。

 同時に、頑張ろうな、という意味。

 …うん、頑張るよ!
 私はそう心で返事をして、彼の広い背中を追いかけた。



 まず、このシナリオに入る前に変更点を。
 本来旧リプレイでは、この話の前に『ある日森の中』のリプレイが、アンジュの教導の描写として入っていました。

 抜いてしまったのには、やむにやまれぬ事情が…
 今後再録予定の『ジゼリッタ』の続編やら、サキュバスシリーズの続編やらを将来プレイすると踏んだ場合、実はシグルトの成長速度が抜きんでてしまうのです。
 精霊術師の徴をとっつけても、ちょっと多いかも。
 現状で他の仲間とレベル差がつくと困る場合もあり、考えた末に『ある日森の中』をカット致しました。

 カットしたシナリオは、いずれ別の機会に別のパーティーでやらせてもらおうかなと。

 再録ということで、だいたい流れは昔のままですが、サキュバスシリーズの続編の内容も意識したものになっています。

 途中で登場した「新人のパーティ」という言葉に「ん?」と思った方もいたのではないかなと。
 前回の続きでもちらっと書きましたが、カードワースダッシュのコモナーエディションで作った“地平を征く者”という新パーティが、この時点でシグルトたちの後輩として宿に加わっています。
 リーダーはなんと凡庸型!

 カードワースダッシュコモナーは、若干弱めのキャラクターで縛りプレイをすることができます。
 うちの別院でダウンロードできますよ。Pyへのスキン導入のやり方なんかもこのブログ紹介してるので、よろしければ参考になさってください。
 標準エンジンの豪傑型や策士型の能力値をもう少し平らにしたような感じで一般の才能型のキャラクターを作成でき、実は標準エンジンの一般キャラクターはそこそこ優秀であるということを、やってみると感じることができます。
 Pyであれば簡単にスキンができ、ゲーム中に設定で交換できて、同じように作ったスタンダードエディションのキャラクターとコラボプレイができたりしますので、よかったら試してみて下さい。
 ポンコツパーティ、やってみると楽しい!

 “地平を征く者”は今後もぼちぼち登場させると思います。


 さて本題に戻って。

 『私』はアンジュとプレイヤーキャラクターの心情で交互に語られていくシナリオです。
 私のリプレイでは、本来の甘い男女の恋愛っぽい話がシグルトには向かなかったため、アンジュの目線で片想いっぽい感じになっています。

 Y2つめは、どうにも恋愛っぽい描写が苦手でして…惚れた腫れたの内容が上手く書けません。
 いやぁ、決して「アンジュのラブラブ光線を受ける主人公爆発しろ!」とか思ってませんよ?
 本当ですって!(地獄を味合わせてやるとしか思ってません)←をい!

 
 まぁ、リプレイの内容は書いた通りです。

 で、もう一つ…最後にアンジュが貰う薔薇の鉢植の話が、何故か+香水のレシピになっていて、精霊術云々の話が出てこない点。
 これは、アンジュが続編で将来続編で得るだろうスキルや能力を吟味した上で、薔薇の精霊のスキル…微妙だなぁということに気づきまして。
 方針変更して、もうちょっと役立つ品物をと考えたわけです。

 あと、アンジュが精霊術師になってしまうと宿の精霊術師が増加しすぎてしまうという問題点にも気が付きました。
 “風を纏う者”にはシグルトと将来的に別口で増えそうな予感…
 “煌く炎たち”には火の精霊術師であるゼナ。
 新パーティ“地平を征く者”には、将来精霊術師にしようかなと思ってる人物が一人。
 さらに合流予定のパーティにも専業精霊術師が一人、別口でもう一人…人口比がえらいことに。

 で、アンジュは調香師っぽいのを混ぜたサキュバスにしようかなと。
 方針転換をしてしまいました。

 アンジュがシグルトから貰ったレシピは、Leeffesさんの『調香師の部屋』というシナリオの【慈雨の源】というスキルになります。
 レベル比影響の回復+固定解毒効果を仲間全体に、という結構優秀なスキル。しかも沈黙は影響せず物理属性なので魔法カッチンが起きません。
 是非Leeffesさんのブログの関連記事も読んで、ニヤリとしていただければ。
 このスキルはなるべくして彼女のもとにもたらされたのかもしれません。
 
 『調香師の部屋』は中堅になったころ合いで、知力+慎重系の魔術師や錬金術師、あるいは器用+狡猾系の盗賊や暗殺者がサブ装備的なスキルを探している場合に良質なスキルが揃ってるので、お勧めです。
 特にレベル6のバフ2種4つはまとめて強化できるので、レベル4~6ぐらいで補助効果がほしい時期には便利です。
 スキル絵も綺麗ですよ。

 ここでシグルトは1400SP使用しました。
 所持金はまだ彼のお金だけで4005SP残っています。
 籠手が余裕で買える!

 私のリプレイでは、治癒や回復の使い手がとても貴重という描写になっています。
 システム的には【癒身の法】を学んで装備すればいいだけという話ではありますが、傷を一瞬で癒せるって、医療の発達してない世界だととても需要が高いと思うんですよ。
 人々が教会を敬うのも、多分治癒ができるからじゃないかなと。
 怪我人を治療してお布施貰ってれば、生活できますよね…という。
 同時に命を大切にするでしょうし、癒しが得意な職業の人は切った張ったの冒険者の業界には来難いかなと。

 女性冒険者の扱いも、結構生々しいことを書きました。
 ですが、女性の月の物は現実の中でも宗教的な穢れとして扱われてきた事情がありますし、実際に祭事を行う時に月の物が来ている女性を避ける傾向はあるものです。
 私の場合、姉がいたので生々しいことを実際に知っているのですが、生理用品の無かった時代の女性は大変だったのではないかなと。
 血の臭いでモンスターを招いてしまったり、冒険中に事が始まって途方にくれたり…そういうことがあるのだと思います。
 下ネタとして描写を嫌う場合もあることですが、冒険者のような社会の底辺で生きる者は、スラングや考え方に地に沿う事柄を絡めやすい傾向もあるはずです。
 トイレや整理はサキュバスのような性に密接にかかわる種族にとっても他人ごとではないよなぁ、ということで書かせて頂きました。

 中世世界をモデルにしたゲームですので、差別や貧困といった重いテーマも目を背けずに入れて行きたいと思っています。


 私のリプレイ形式は、場合により本来のシナリオの結果通りにはならないことがあります。
 当たり前のことなんですが、シナリオ作者さんはすべての台詞形式に対応とか、各個PCキャラクターの細かい設定に対応させるといったことは、膨大な手間がかかることでできないのが現状です。
 キャラクターの性格や行動理念などを考慮した場合、「絶対それはしない!」とか「この時はこういう行動をする!」という時には、内容から外れることになっても「リプレイ小説側の流れや都合を優先する」方式で書いています。
 登場キャラクターの扱いが本筋と大きく乖離する場合も御座います。
 ですので、「正確なリプレイになっていない!」と感じた方には申し訳ないのですが、そういうものだと思ってくださいませ。

 もしY2つ目のリプレイを読んで、それが許せないと感じた【原作者様】は、おっしゃって下されば描写部分の取り下げや若干の変更は考慮致します。多くの場合は描写部分のカットということになりますが。これは二次創作というジャンルの特質上、原作者様の著作権が最優先されるという点を考慮しています。
 【原作者様以外】の読者様や原作ファンの方々の御意見は、Y2つめが納得のする誤文や内容あれば対応致しますが、基本はプレイヤー視点での自由な見地から対応しないことも御座います。
 悪しからず御了承下さい。

 …実は原作者様から「新鮮だった」とか「こういう流れもありだね」という好感触な感想を頂けることも多く、原作者様とのトラブルは現時点で御座いません。ありがたや…

 私自身はシナリオを作る見地からすると、案外プレイしてもらった感想を参考にして次のシナリオに反映させるので、リプレイ書きの都合丸出しな内容が「別視点」として「IF」や「スピンオフ」として考えると新鮮に感じてもらてるのではないかなと。
 「こういう結果にしたいプレイヤーさんもいるんだ…」という感想の一形式になりうると、身勝手に思っていたり。
 まぁ、これがカードワースの「自由な魅力」なのではないかなと思う次第です。
 
 気づかずに不快に思った方がいたのでしたらごめんなさい。(土下座)



〈著作情報〉2018年09月25日現在

 カードワースはgroupAskに著作権があり、カードワースの管理、バージョンアップ、オフィシャルな情報等はgroupAsk official fansiteにて、カードワース愛護協会の皆さんがなさっています。

 このリプレイは各シナリオをプレイした上で、その結果を小説風リプレイとしてY2つが書いたものです。
 書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。

 リプレイ環境であるCardWirthPy Rebootは2018年2月1日リリースされたCardWirthPy 2.3 - CWXEditor同梱版に拙作のカードワースダッシュStandard Editionを使ったスキンを作成してプレイしているものです。
 CardWirthPy Rebootは同名の開発サイト
 ( https://bitbucket.org/k4nagatsuki/cardwirthpy-reboot/wiki/Home )で配布されています。
 カードワースダッシュStandard Editionはこのブログのリンクから行ける、Y字の交差路別院にて配布しています。
 エンジンと付属物の著作権・開発状況・その他の情報は各配布元を御参照ください。

 【CW:リプレイ】、【CW:リプレイ、R】、【CW:リプレイ2】、【CWPyDS:リプレイ】等で書かれた記事、書かれる記事は、特定のシナリオの名前が出たときは、そのシナリオの著作権はすべてそのシナリオの作者さんにあります。
 また私がお預かりしているMartさんの“風を駆る者たち”リプレイの記事を参考にした内容は、それぞれのシナリオそのものの著作権はそれそれの作者さんにあり、参照記事はMartさんに著作権があります。
 御了承下さい。
 リプレイ中に使われる内容には、各シナリオ・過去のシナリオで手に入れたスキルやアイテム、関連した情報等が扱われることがあります。過去のシナリオで登場した人物の再登場・過去の出来事に関してのクロスは「話の延長的に」頻繁に起きうるので御了承下さい。
 それらの著作権は、それぞれのシナリオの作者さんにあります。
 またカード絵等の素材に関しては、シナリオ付属の著作情報等を参考にして下さい。

 『私』はL'ecrin(レカン)さん(楓さん)のシナリオです。
 現時点でL'ecrinさんのサイト Treasure Chest
 ( https://cwlight0303.wixsite.com/treasurechest ) Old work にある
 「アンジュシリーズ 全6作」に含まれ、一括ダウンロードができます
 シナリオの著作権は、L'ecrinさんにあります。
 このリプレイの時のバージョンは※ver1.00です。


 『調香師の部屋』はLeeffesさんのシナリオです。
 現時点でLeeffesさんのシナリオアップロード場所
 ( https://ux.getuploader.com/leeffescardwirth/ )でダウンロードできます。
 ギルドにも登録されています。
 Leeffesさんのサイト( http://leeffes.blog.fc2.com/ )はリプレイや沢山のシナリオの紹介があって読みごたえがありますよ。
 このリプレイの時のバージョンはver1.03です。
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