Y字の交差路

 ここはY2つめがノリで作ったブログです。  カードワースを中心に、私が思ったことや考えたことを徒然なるままに書きたいと思います。

『鉱石と銘工』

 新しいメンバーを加えた“風を纏う者”は、1週間ほどの休日を過ごして準備を済ませると、フォーチュン=ベルへと旅立った。
 
 先日、リューンへの帰路で訪れた時にブレッゼンは留守だった。
 今回の訪問は手に入れた2つの鉱石を換金するためである。
 
 レナータはここ数日でさらに仲間のためになる術を、とパーティが相談して出したお金を使って精霊術を1つ習得していた。
 
 南方の大河近郊に住むシャーマンが使うという治癒術である。
 
 レナータの【水精召喚】は、今は1度の使用が限度だ。
 そこで、数回は使える呪文をと【水精の一雫】という術を習ったのである。
 水の精霊の力を圧縮して治療を行うこの術は、解毒と傷の治療を同時に行える上、1度精霊を召喚して行使する呪文と違い、即座に効果を発揮できる。
 同時に精神の異常も癒すこの術は、極めて効果が多様で、“風を纏う者”が求めていた力に合うものである。
 
 加えてレベッカが簡単な解毒薬を調達してきた。
 毒に関する装備が随分減っていたためである。
 
「レナータの術とあわせれば、毒対策は万全ね」
 
 今回の買物でだいぶ消費した資金を補うべく、一行は“風を駆る者たち”との道具交換で手に入れた鉱石を売ることにしたのだ。
 
 
 フォーチュン=ベルに到着した一行は、早速ブレッゼンの工房に向かった。
 
 その日は好い天気だった。
 ブレッゼンの妻のサンディのはからいで、一行は野外でお茶を御馳走になっていた。
 
「ふむ、黒に紅か。
 
 2つも鉱石を手に入れられるとは重畳(ちょうじょう)。
 最近はなかなか鉱石が手に入らず、困ったものよ…」
 
 昔は数多くの鉱山があったという、不思議な5つの鉱石。
 強い魔剣を作成するにはどうしても必要だという。
 
 ブレッゼンはレベッカに礼として盗賊王バロの道具のレプリカをくれた。
 加えて銀貨千五百枚である。
 
「うん、鉱石の売買は互いに利益が大きいわ。
 
 なんとか大量に手に入れることはできないかしらね」
 
 レベッカが考え込む。
 
「では、お前たち…
 
 最近、風の噂に聞いた鉱山に行って掘ってこぬか?」
 
 その言葉に、一同が振り向く。
 
「めったに見つからぬが、まだ鉱石の鉱脈が生きている鉱山があるらしい。
 儂としては工夫か冒険者を雇って掘りに行かせようと思っておったところよ。
 報酬は鉱石の買取、加えて特別な武具を売ってやろう。
 
 お前たちならば、悪い結果にはなるまい」
 
 レベッカが、なるほどと腕を組む。
 
「ただ、危険な鉱山らしい。
 
 奥の方には古い坑道があり、そこでは鉱石も出やすい分、毒ガスが吹くという。
 厄介な仕事になるが…」
 
 レベッカが頷く。
 
「毒対策が出来たところで、降って湧いたような仕事だわ。
 
 少しギャンブル要素はあるけど、上手くいけば見返りも大きい。
 私は乗りたいけど、どう?」
 
 ロマンが頷く。
 
「1度、鉱石の鉱脈を見てみたかったし、僕も賛成。
 
 シグルトがいればこういう時頼りになるし」
 
 シグルトは何故か宝を掘り起こす天性の勘がある。
 前に遺跡の発掘を行った時も、彼が見つけた宝はパーティの貴重な財源になった。
 
「ふむ。
 
 骨休めには良いかも知れん。
 温泉でも近くに湧き出しておればさらに、都合が良いが」
 
 スピッキオも特に反対ではないようだ。
 
「お宝探しだよね。
 
 私も頑張って掘るね~」
 
 ラムーナも乗り気のようである。
 
「正直、いきなりモンスターとの戦闘というのも。
 
 私は非力ですけど、できることは頑張ります」
 
 レナータも頷く。
 
「分かった。
 
 少なくともいくつか鉱石を持ち帰るつもりで、やってみようか」
 
 そして、一行はブレッゼンに別れを告げ、件の鉱山へと向かったのだった。
 
 
「…また鉄鉱石?
 
 まるででないわね~」
 
 一行は数日かけて寒風吹きつける鉱山へと到着した。
 冬の鉱山は身が切れるように寒い。
 
 防寒具に身を包んだ一行は、鉱山にたどり着くと鉱山の管理人に会った。
 そこで鉱山に出入り自由の登録をし、つるはしを1本買い込んで、早速その日から採石を始めた。
 
 シグルトが豪腕で穴を掘り、その疲労をスピッキオが癒す。
 掘り起こした土をレベッカが丁寧に調べる。
 ロマンが知識を頼りに、鉱石の出そうな場所を予測し、ラムーナが調べた土砂を捨てる。
 
「あの、私も何か…」
 
 近くで休んでいるように言われたレナータが所在無げに言うと、レベッカが首を振る。
 
「レナータは秘密兵器よ。
 
 毒ガスが出たり、スピッキオの秘蹟が底をついたらお願いね」
 
 ロマンも頷く。
 レナータもそれ以上のことは言えず、黙って岩に腰掛けていた。
 
 そして黙々とつるはしを振るうシグルトの後姿を見つめていたが、不意にシグルトが作業を止めた。
 
「…ここはよほど掘らないと鉱石は出ない。
 
 少し危険だという奥を掘ってみるから、皆は少し離れていてくれ」
 
 ロマンが、何を根拠に、と首をかしげる。
 
「…鉄は俺と縁が深い。
 
 この鉱山に来てから、鐵(てつ)の精霊ダナの力を強く感じるんだ。
 ここは彼女の眷属の領域で、あまり鉱石の魔力は感じない。
 
 ダナは最初に俺がその息吹を感じた精霊でな。
 
 かつてはダヌという名で、鍛冶や山の女神として信仰されていたこともある古い金属の上位精霊だ。
 その神格の分霊から生まれた精霊だと言うが、鉱山でダナの声を聞くと宝にありつけるという。
 
 レナータも聞こえないか?」
 
 シグルトは蘇生した後、さらに精霊と干渉する力が強くなっていた。
 
「…ごめんなさい。
 
 鐡の精霊は他の精霊と仲が悪いので。
 存在は強く感じるんですけど、私の呼びかけにはあまり応えてくれないようです」
 
 鐡の精霊は、孤高の勇気と屈強さを司る精霊である。
 気難しく、そもそも気に入られること自体がとても稀有なのだ。
 
「ただ、私もここでは鉱石は出ないと思います。
 
 勘ですけど…」
 
 しかし、ロマンはそうか、とため息をついた。
 
 精霊術師の勘はよく当たる。
 実際、シグルトの勘が仲間を救ったことは1度ではない。
 
「ま、今日中に少しは結果が出したいから、ねぇ」
 
 そして奥に進んで発掘を始めたシグルトたちは、頻繁に噴出する毒ガスに悩まされることになった。
 
「…はぁっはぁっ、私の力で行える解毒はこれが限界です」
 
 レナータの召喚したウンディーネの最後の力でシグルトを侵す毒が和らぐ。
 
「ここの鉱山の毒素はかなり強いな…」
 
 完全に毒が抜けないシグルトが脂汗をかきながら言う。
 シグルトだからこの程度でいられるのだが。
 先ほど誤って少量の毒ガスを吸ったロマンは1度昏倒し、今は休んでいる。
 
「仕方ないわ。
 
 まぁ、変わった石が発掘できたからよしとしましょう」
 
 シグルトたちは珍しい石をいくつか発見していた。
 鉱山労働者の持ち物だったのだろう、それは鉱山での事故や疲労から身を守るという守り石である。
 少なくともそれらの入手で数日分の報酬には十分になるだろう。
 
 レベッカの言葉に従い、鉱山を出る一行。
 
 その日は1つの鉱石を見つけることも出来ずに、何とか鉱山にある宿泊施設に帰り着いた。
 
 しかも、次の日もその次の日も、鉱石は1つも見つけられなかった。
 
「…もう4日目ね。
 
 甘く見すぎていたかしら」
 
 爪の間に入り込んだ土を穿り出しながら、レベッカが呻くように言った。
 
「簡単に見つかるようなら、あれほど高額で買い取ってはくれない。
 
 根気よくやらなければな…」
 
 水筒の水を飲みながら、シグルトが力なく微笑む。
 この数日、文句1つ言わずに黙々とシグルトが掘り続けたおかげて、鉱石とはいかないまでも沢山の鉱物が見つかった。
 それらを売り払えば、数日の報酬にはなりそうである。
 
 この数日、シグルトたちは毒ガスと格闘する羽目になった。
 レナータがいなければここまでの強行な採掘は出来なかっただろう。
 
「さて、頑張ってもう少し…うん?」
 
 シグルトが立ち上がると突然坑道の奥に向かって歩き出した。
 
 そこには立入禁止と書かれた古びた立て札と、閉鎖された坑道がある。
 
「…どうしたのよ、シグルト?」
 
 仲間たちが近寄ってくる。
 
「…間違いない。
 
 この奥に鉱石がある。
 だが、どうやらただの坑道ではないようだな」
 
 坑道を塞ぐ木の壁は腐りかけ、簡単にどけることができるだろう。
 
 だが、一行はその不気味な雰囲気に立ち止まっていた。
 
「…昔、ここが普通の鉱山だったころ、落盤で大量の死人が出たらしいよ。
 
 そして封鎖されたって。
 たぶんこれ、その坑道だよ」
 
 ロマンが唾を飲み込む。
 
「ここまで来たんだ。
 
 …結果を出そう。
 それに、呼んでいるんだ…」
 
 シグルトはすっと坑道を塞ぐ木の壁に触れる。
 それは見る間に朽ちて崩れ、暗い洞が姿を現した。
 
 迷わず進むシグルトに、一行はおっかなびっくりついていく。
 
「…凄まじい負の力じゃ。
 
 この奥は亡霊の巣窟じゃよ」
 
 スピッキオにシグルトは頷いた。
 
「ブレッゼンの頼みでなければ遠慮したいな…」
 
 そう言ってシグルトは黙々と採掘を開始した。
 
 
 数時間後、一行は崩れた坑道を疲弊しきった顔で見つめていた。

 鉱山の奥ではひっきりなしに亡霊の呻く声が聞こえ、精神と肉体を病ませた。
 ロマンが、ラムーナが、レベッカが脱落する中、シグルトは驚異的な精神力で鉱石を次々と発掘していった。
 
 しかし、さすがのシグルトも疲弊して引き上げると、亡霊たちがシグルトたちを引きずり込もうとし、一行は何とか逃げ出したものの坑道は完全に崩れてしまったのだ。
 
 だが、持ち出したレベッカの担ぐ袋には、大量の鉱石が詰まっている。
 
「…大漁だったけど、2度とこの奥には行きたくないわね」
 
 一行はこれ以上この坑道の話は止めだとばかりに、宿泊施設に引き返した。
 
「シグルト、大丈夫ですか?」
 
 やつれた口調でレナータが聞く。
 
「俺は平気だよ」
 
 そう言って振り返ったシグルトの目が、淡い緑の光を放っていた。
 
「シグルト、眼がっ!」
 
 ロマンが声を上げるとシグルトは微笑んだ。
 
「大丈夫だ。
 
 なぜ、俺があそこに呼ばれたか分かったよ。
 あそこで俺の中に入ってきたダナが呼んでいたんだ」
 
 レナータがその力の脈動にはっとする。
 
「【鋼鐵の淑女】…
 
 人の付帯領域に宿るダナの分霊。
 眠れる上位精霊の力を、手に入れたんですね」
 
 ダナは鋼の勇気を宿り主に与えるという、不思議な特性がある。
 もちろん、それはダナを受け入れられるほどの強力な精神力と魂を持つ必要があるのだが。

「確かに、シグルトほどの高い霊格ならばダナが宿るのも…」
 
 シグルトが眼を閉じ、再び眼を開けると元の深い青黒い瞳に戻っている。
 
「かつて、俺の先祖のオルテンシアというハーフエルフの姫君も、【鋼鐵の淑女】ダナを使う精霊術師だったという。
 青黒い髪と目はその祝福だと言われていたそうだ。
 
 俺の中にいるダナはオルテンシア姫に宿っていた分霊だ。
 ここは受刑者が流されて強制労働させられていた時代もあったらしい。
 その中に、北方から政治犯として流されてきた、ダナの担い手もいたようだ。
 
 ダナが眠る前に教えてくれた」
 
 シグルトの話だと、このダナの分霊…力の欠片はここでずっとシグルトがくるのを待っていたという。
 
「正しくはオルテンシア姫の血筋の戦士らしい。
 
 …問題は無いよ。
 彼女は普段眠っているからな。
 
 ダナに悪意は無い。
 
 この狭い坑道から出してやる代わりに、俺に力を貸してくれるらしい。
 彼女を宿すと、鎧を纏ったような屈強さも得られるから、戦士の俺としては有難いな。
 
 彼女が俺から出たくなるまではそっとしておくよ」
 
 そう言って微笑んだシグルトは、また少し人間離れした雰囲気を放つようになっていた。
 
 
 一行は鉱石以外の鉱物を管理人に預けておいた。
 いざという時の資金にするためである。
 
 今回、4泊5日の日程でシグルトたちは30個近い鉱石を手に入れていた。
 
 売り払えば数万の銀貨に換わるだろう。
 
 しかし今回の精神的疲労は大きなもので、一行はしばらくフォーチュン=ベル近郊で休日をとることにした。
 
 防寒具や滞在費、旅費に細かい出費を加えると銀貨数千枚になったが、ブレッゼンに鉱石を渡した見返りは大きかった。
 
 鉱石の駄賃だと、ブレッゼンは魔法の靴や短剣をくれた。
 加えて、シグルトの剣を真なる魔剣に打ち直してくれる準備ができたという。
 
 あまりに多くの鉱石で一度には買えないと言われ、数度に分けて鉱石の取引をすることになった。
 
 シグルトは今回の功労者として銀貨を二千枚ほど持って、古城の剣の師グロアの元に向かった。
 数日後にはそこで出会ったという東方の剣士から新しい剣術を習って身につけ、ブレッゼンに預けた【アロンダイト】の代わりに古びた長剣をグロアから買って帰ってきた。
 
 ラムーナもフォーチュン=ベルを訪れていた踊り子から、仲間を鼓舞するという南方のダンスを習得していた。
 
 レナータはフォーチュン=ベルの湖の前で瞑想し、精霊を見る力をより強化することができた。
 
 ロマンは新しい魔術を習得するためと、宿にこもって呪文の触媒になる魔術書のページを呪文で埋めていった。
 
 スピッキオはフォーチュン=ベルの教会で説教しつつ、祈る生活をしていた。
 
 レベッカは疲れたからと、酒場で飲んだくれていたが、何時の間にか必要な道具を買い込んでいた。
 
 一行が集結して魔剣工房にやってきたのは1週間経ってからだった。
 冬の最中であるフォーチュン=ベルは、その日雪が降っていた。
 
 
「やっほ、ブレッゼン。
 
 魔剣の出来具合を確認に来たわよ」
 
 レベッカが声をかけると、めずらしく慌てた様子のブレッゼンがやって来た。
 
「お前ら、良いところに来たっ!
 
 サンディが攫われたんじゃっ!!!」
 
 下手糞な字の書かれた手紙を握り締め、ブレッゼンは眼を血走らせてごついハンマーを握り、甲冑を纏っていた。
 
 
「…人騒がせな話よねぇ」
 
 レベッカがぼやくと、ロマンが大きく頷く。
 
「まったくじゃ。
 
 肝が冷えたぞ」
 
 ブレッゼンがそう言うと、そこにいた赤毛の男が申し訳なさそうに頭を下げた。
 
「俺もとんだ人選ミスをしたもんだよ。
 
 悪かったな」
 
 その男はキッド。
 ブレッゼンの息子である。
 
 ことはキッドが静かに母親と食事をしたいと言い出したことだった。
 
 この場所を根城にしている“金色のハイエナ”という盗賊団の首領ハリーがキッドと知己で、この場所を提供したのだ。
 しかしハリーは誘拐の脅迫状めいた書体で手紙を書いたので、ブレッゼンが勘違いしたのである。
 
「…〝奥方は『デッドマンズ・マウス(死人の口)』にて『金のハイエナ』が預かった〟って、どう見ても脅迫状よ。
 
 まぁ、よく見れば要求が書いてないんだけどね。
 でも、まさかあんたがねぇ」
 
 レベッカが隅で小さくなっているブロンドの男を小突く。
 
「か、勘弁してくれよ。
 
 もう俺は悪さはしない義賊なんだぜ?」
 
 ハリーは昔レベッカと面識があった。
 レベッカを口説こうとして酒の飲み比べをし、見事潰されて尻の毛まで抜かれたというのは部下の野郎どもの談。
 どうやらレベッカには頭が上がらないらしい。
 
「まぁ、良いわ。
 
 それよりお前たちには鉱石の件といい、世話になっているな…」
 
 そういうブレッゼンに、レベッカがいいのよ、と笑う。
 
「今回、このダンジョンでそれなりに好い物を得たし、それに飲み友達じゃないの。
 
 固いことは抜き抜き」
 
 レベッカたちは広大なハリーたちのアジトをくまなく調査し、鉱石2個とお宝を2つ発見していた。
 
「まさか風の精霊術の禁呪が書かれた巻物が見つかるなんて、ね」
 
 それは東方の風の魔神を召喚する精霊術が記された書物だった。
 レナータによると、とても今の彼女には使いこなせないという。
 
「妖霊(ジン)の一種で…竜巻を呼ぶ風の上位精霊です。
 
 このような上位精霊は名前を大変重んじるので、召喚して契約を交わすまではその真の名はわかりませんが…
 
 嵐の竜リンドヴルムや鳥神ハルピュイアイに匹敵するものすごい精霊で、今の私では魔力の全てを奪われてしまいます。
 そもそも、このレベルの上位精霊を召喚するなんて、常人のできることではありません。
 
 上位精霊の召喚や顕現は、気をつけなければ地形が変わってしまったり、多くの死人を出してしまいます。
 …それほど力が強いのです。
 
 シグルトさんの中で眠っているダナも上位精霊ですが、彼女は深い眠りについているので力の大半を封じているのです。
 今、シグルトさんを護っているのは、彼女からあふれた魔力のほんの一部のようです。
 
 上位精霊は多神教の神格に匹敵する、あるいは神として信仰される存在そのものなんです」
 
 神にも匹敵する存在を呼ぶ…だから《禁呪》なのである。
 
「まぁ、いつかそれが使いこなせるようになればいいわね」
 
 そう言ったレベッカに、必要な状況がこないことを祈ります、とレナータがため息を付いた。

 
「…ふむ。
 
 サンディ、今度こいつらに特別な値段で武具を売ってやれ」
 
 ブレッゼンはしばらく考えていたが、そうサンディに言った。
 サンディはニコニコして頷いている。
 
 話では半額で武器を売ってくれるという。
 
「ちょっと、ブレッゼン。
 
 半額って原価じゃないの?」
 
 レベッカが訪ねると、ブレッゼンはにやりと笑った。
 
「何、飲み友達じゃからな。
 
 固いことは抜きだ」
 
 サンディが大きく頷く。
 
「いいのよ。
 
 貴方たちが持ち込んだ鉱石、本来は商人を通して買っているから価格が数倍もするの。
 うちもおかげで商売が出来るんだから、安心してね」
 
 半額、という言葉にロマンが乗り出した。
 
「じゃ、じゃあ、あの【カドゥケウス】も半額!」
 
 いつ工房を訪れてもロマンはもの欲しそうにその杖を見ていた。
 銀貨四千枚という大金で、今までとても買えなかったのだが。
 
「それなら、今回手に入った鉱石を加えて、また10個ばかり引き取ってもらえば買えるわね。
 
 最近ロマンには我慢してもらってたし、次の買物はロマン中心でいいわよ」
 
 レベッカが子供に玩具を買い与える心境で頷いた。
 
「うむ、次の来店までには調整しておいてやろう。
 
 あの杖の価値が分かるものはなかなかおらんかったからな」
 
 ロマンが瞳を輝かせて頷いている。
 
「賢者にとって、杖はシンボルみたいなものなんだ。
 
 僕は今まで杖は持たなかったけどね。
 必ず、【カドゥケウス】に相応しい賢者になって見せるよ」
 
 ブレッゼンが目を細める。
 その横でキッドがにやりと笑った。
 
「随分親父に気に入られているな。
 
 ま、“風を纏う者”っていえば、そこそこ有名だからな。
 フォーチュン=ベルじゃ、食人鬼(オーガ)を倒したってのは有名な話だ」
 
 まぁね、とレベッカが少し胸を張る。
 胸元を故意に露出させているレベッカのそのポーズは、かなり扇情的だった。
 
 後ろの野郎どもが唾を飲みつつ、ちょっと嬉しそうな顔をしていた。
 
 
 次の日、シグルトたちはフォーチュン=ベルの郊外にある屋敷に巣くうという怪物を退治する仕事を請けていた。
 
 屋敷に近づくにつれ、周りが異様な雰囲気になっていく。
 
「なに?
 
 ここって植物が枯れて、石ころばかりじゃない…」
 
 周囲の淀んだ悪臭に、レベッカは顔をしかめて言った。
 
「…原因はあれだよ」
 
 それは石の彫像だった。
 
「…何?
 
 随分リアルな格好をしてるけど」
 
 ロマンが頷く。
 
「正しくは《その格好のまま石になった》からだね。
 
 可哀想だけど首が落ちてる。
 これじゃ、戻っても生きられないよ」
 
 レベッカがぞっとしてその像を確認する。
 首の無い像の前に、苦悶の症状のまま頭部が転がっていた。
 
「たぶん、この状況から考えるとコカトライスかバジリスクがいる。
 
 どっちも石化能力をもつ、恐ろしい怪物だよ。
 でも、腐ったり枯れたりした植物を見るとバジリスクの線が濃厚だね。
 あの怪物は強力な毒を持ってる。
 このあたりの植物は、バジリスクの唾液や血に含まれる毒、呼吸から放たれる瘴気にやられたんだ。
 
 あのモンスターには亜種が沢山いて、基本的に砂漠に生息しているんだけど、趣味の悪い好事家か頭の変な魔法使いが、捕まえて持ってきたんじゃないかな?
 卵や子供のうちなら、運んでくることは容易だからね。
 
 まぁ、怪しい研究をする魔法使いがいたとすれば、この屋敷に怪物が巣くっていることも説明がつくよ」
 
 歩みを進めつつロマンが説明する。
 
 やがて、少し先行していたレベッカが一同を留める。
 
「でかい蜥蜴がいるわ。
 
 足がいっぱいある薄気味悪い奴」
 
 それは異様に大きな蜥蜴であった。
 屋敷の入り口で目を閉じ、眠っているようである。
 
「…間違いない、バジリスクだ。
 しかも、まだ若いけど成体だね。
 
 正直、石化対策をしてないとあの怪物とやりあうのは自殺行為だよ」
 
 ロマンは、バジリスクの視線には強力な石化能力があり、さらに血飛沫の一滴すら大人を瞬殺する猛毒があることを告げる。
 
「…困ったな。
 
 さすがに一滴の血飛沫も被らずに戦うとなると、俺の新しい奥の手かロマンの魔法による遠距離からの攻撃を使うしかないのだろうが…
 あの巨体…簡単に倒せるほど弱くはなさそうだ」
 
 バジリスクは、ロマン程度の体格ならば飲み込めそうなほどの巨体である。
 
「…危険だけど手が無いわけじゃないよ。
 
 ただ、すごく難しい方法なんだ」
 
 ロマンがレベッカを見て言った。
 
「…私にしか出来ないのね?」
 
 ロマンの意図を少し理解して、レベッカが頷く。
 
「…バジリスクの目は石化の光を放つんだ。
 驚いた時によく使う能力だよ。
 
 その光は鏡で跳ね返すことができるんだ。
 そしてバジリスクの目以外に当てると、逆にアイツを石化できる。
 
 バジリスクが砂漠で、繁殖期以外は単体で生活しているのは、同族を石化しないためだとも言われてるんだ。
 
 でも、光線を跳ね返す、そんな器用な芸当が出来るとしたら、うちのパーティじゃレベッカだけだよ」
 
 レベッカはため息をつくと、手持ちの鏡を取り出した。
 
「サイズが心もとないけどやりましょう。
 
 ま、私が石になったときは回収よろしくね」
 
 シグルトが頷く。
 
「安心してよ。
 
 僕が調合した石化回復のアイテムがあるから、これを使えば壊れてない限りは大丈夫だから」
 
 ロマンが正直に現状を語ると、レベッカは少し眉をひそめた。
 
「大丈夫。
 
 絶対レベッカならできるから」
 
 ラムーナが微笑んでくれた。
 
「まぁ、貴女が大丈夫って言うなら成功するわね」
 
 レベッカは微笑み返すと、素早い動きでバジリスクに10メートルほどのところまで駆けていき、手に持った小石をバジリスクにぶつけた。
 
 驚いたバジリスクが目をかっと開き、同時に石化の光線を放つ。
 
 レベッカは手に持った手鏡の角度を上手く調整して、こともなげに光線を跳ね返した。
 そしてバジリスクは見る間に石化していく。
 
「…凄い」
 
 レベッカの手際にレナータが息を呑んだ。
 
「ふむ、レベッカの奴は戦闘ではなく、この手の手先を使った仕事が本分じゃからの」
 
 スピッキオが特に心配した様子もなく頷いた。
 
「さぁて、通路の確保は出来たわ。
 
 行くとしましょうか」
 
 レベッカは石化したバジリスクを一瞥すると、慎重な歩で屋敷に入っていく。
 
 一行もすぐにそれに倣った。
 
 
 屋敷の奥に進むと周囲は蜘蛛の巣だらけだった。
 
「これは普通の蜘蛛の糸じゃない…
 
 魔獣を作る過程で生まれた、強靭な糸を出す巨大な毒蜘蛛のものだよ。
 呪縛対策を考えておかないと…」
 
 ロマンは周囲を警戒しつつ、糸を調べる。
 
「油分が多いね。
 
 これなら炎に弱いはずだよ」
 
 ロマンの声に誘われたのか、巨大な蜘蛛が数匹、張り巡らされた糸を伝ってやってくる。
 
「どうやら、あっちはやる気みたいだぞ」
 
 シグルトが剣を抜き放つ。
 魔剣ではないそれは、無名だがそれなりの業物である。
 しかし、【アロンダイト】に比べればやはり心許無い。
 
「…僕が蜘蛛の巣を焼いて、眠りの魔法で牽制するよ。
 
 腕力の仕事は任せたよっ!」
 
 ロマンが【焔の竜巻】で周囲の蜘蛛の巣を一掃する。
 みるみる巣は焼かれて消えて行き、蜘蛛たちが怯んだところでさらに【眠りの雲】を放つ。
 
 数匹がロマンの魔力の前に動きを止める。
 しかし、耐えた残りが襲い掛かってきた。
 
「《風よ…》」
 
 シグルトが剣に疾風を纏い、敵陣を駆け抜ける。
 その攻撃に眠っていた蜘蛛が目を覚ますが、切り裂かれた腹部から体液を流し、喘ぐように足を蠢かせている。
 
 ビュワっ!
 
 一匹の蜘蛛が吐いた糸にレベッカが捕縛された。
 
「ちょっと、何よこれっ!
 
 ねばねばして動けないったら…」
 
 その横でロマンが【魔法の矢】を撃ち放った。
 
 
 毒蜘蛛との戦いは長期戦になった。
 頑強で数の多い蜘蛛は連携して休みながら攻撃してくる。
 
 対して“風を纏う者”はシグルトが猛烈な剣で敵を押していく。
 ロマンの魔法が糸を焼き敵を穿ち、眠らせる。
 レベッカが呪縛から開放されると、巧みに蜘蛛の気を引きながら仲間が攻撃する隙を作る。
 スピッキオが傷を癒しながら祝福で援護する。
 ラムーナは新しく憶えた【戦士の勲】を踊り、仲間を鼓舞しながら戦いの舞踏で疾走する。
 
 そして、今回仲間に有難かったのがレナータの精霊術だった。
 彼女の癒しは毒を消すため、強力な麻痺毒を持つ敵に対し、一行は驚くべき堅牢さで戦うことが出来た。
 加えてレナータはナイアドを召喚して仲間に防御支援をする。
 
 数分続いた長い戦いは、ラムーナが最後の1匹を蹴り飛ばしてかたがついた。
 
「うげぇ、気持ち悪ぅ…」
 
 蜘蛛の糸と体液のネバネバにレベッカが顔をしかめていた。
 
「早く帰って風呂に入ろう。
 
 皆、よくやった。
 今日はゆっくり休むとしよう」
 
 シグルトが剣についた脂を拭き取り、鞘に収める。
 彼の獅子奮迅の戦いぶりは仲間にとって頼もしかった。
 
「シグルトの新しい必殺技、凄いねぇ~」
 
 ラムーナがニコニコとしながら言う。
 
「本当だよ。
 
 剣から稲妻を放つなんて、僕初めて見た…」
 
 ロマンが知的好奇心で目を輝かせている。
 
 話題となっているのは、シグルトが使って1体の蜘蛛を黒焦げにした技…【剣叫ぶ雷霆】のことである。
 
「あれは東方の剣士から習った技でな。
 
 丹田、臍の近くにある器官に木気…風や雷を象徴する闘気を収束して剣の圧力と一緒に打ち放つ、という技だ。
 剣術でありながら、魔法に近しい射撃攻撃となる。
 
 当てるにはコツがいるが、俺たちのように白兵戦ばかりしている戦士は、距離の掌握が気になるところだ。
 
 俺たちのパーティは距離をとって戦うことが苦手だった。
 この間もロマンに頼ってしまったからな。
 
 この技なら威力も高いし、敵を痺れさせる効果もある。
 実体の無い敵のも通じるから、今の剣でもその類の敵と戦える利点も有難かったんだ…」
 
 シグルトは戦士として優れた戦術観を持っている。
 力任せに戦っていた最初の頃にくらべ、最近は攻撃の中に巧みに大きな技を加えた戦い方をする。
 
 シグルトと単純な技量が同じぐらいの者は割と多いが、彼ほど手持ちの技術を巧みに発揮する剣士は希であろう。
 
「ふむ、ラムーナの使った鼓舞の舞踏は有難かったぞ」
 
 スピッキオが言うとレベッカが頷く。
 
「私やロマンみたいな装備が貧弱な後衛には嬉しいわ。
 
 おかげで何度もあの蜘蛛の牙や爪に耐えられたし」
 
 照れたようにラムーナが頭を掻く。
 
「フォーチュン=ベルの酒場に来ていた南方出身の踊り子さんに習ったんだ。
 
 【戦士の勲】って言って、戦う前に戦士が見る舞踏なの。
 鎧を着たように頑強になれるし、魔法を退ける力も得られるんだって。
 
 ただ、儀礼的なダンスだから効果はあんまり長くもたないんだけど」
 
 そしてシグルトがレナータの方を向く。
 
「加えて、今回はレナータの癒しが有難かったな。
 
 毒に関して弱かった俺たちにとって、やはり水の浄化と癒しは助かるよ」
 
 レベッカが頷く。
 
「シグルトが麻痺毒を喰らった時はどうなるかと思ったけど、【水精の一雫】だっけ?
 
 あれは傷ごと毒を回復できるから本当に便利だわ」
 
 レナータがはにかんで説明しだす。
 
「海の向こうの南方大陸、そのさらに南にある大河近くの出身の方に習ったのです。
 
 効果は強くないのですが、毒と傷を同時に癒し、加えて心の障害も癒せるというもの。
 スピッキオが、精神の癒しも必要かもしれないとおっしゃっていたので、相応しい術だな、と。
 
 海蛇の一件で、どうしても召喚して使う術の発動の遅さがもどかしく感じましたので。
 それに私ではウンディーネを1度召喚するのが限界ですから、私に期待されている癒し手としての部分を強化しておきたかったんです」
 
 ロマンが大きく頷く。
 
「こういう弱点の補強は大切だね。
 
 できる仕事が増えるし、危険の中で生存していく確率も高くなるよ。
 僕も、あの杖が手に入ったら術のスタイルをある程度変更するつもりなんだ。
 
 もっと多様な行動が可能になるはずだよ」
 
 “風を纏う者”の一行は、互いの成長点を讃え合いながら、フォーチュン=ベルへと帰還した。
 
 
 次の日、仕事の報酬の銀貨七百枚を受け取った“風を纏う者”は、またブレッゼンの工房へと向かった。
 
「うむ、来たのか。
 
 すまんが、魔剣はまだ出来んぞ」
 
 どこか嬉しそうに、ブレッゼンが顔を出す。

「そっちは急かすつもりは無いわよ。
 
 今回はサンディさんに鉱石を買い取ってもらうことになってるの。
 10個2種類ずつ用意したわ。
 
 それとロマンの杖。
 調整できてる?」
 
 伝説の匠はにやりと頷いた。
 もはや、“風を纏う者”とブレッゼンの付き合いは親友のそれに近いものだ。
 
「…ふむ。
 
 この間は山中で分かれたからな。
 よし、今日の仕事は止めじゃ。
 
 おぉ~い、サンディっ!」
 
 ブレッゼンは妻を呼ぶと、酒と食事の準備をさせる。
 
「この間の慰労をやっておらん。
 
 付き合え…珍しい酒を飲ませてやろう」
 
 サンディの食事付きとあって、一行は有難くブレッゼンの好意を受けた。
 
 そしてこの後、この間の窃盗のわびをしに、キッドに連れられたハリーと盗賊団がやってきて、勢いでそのまま大きな酒宴となった。
 
 そのまま夜になり、工房はやがて酔いつぶれた男たちであふれかえった。
 美しいレナータを酔いつぶして口説こうとした野郎どもの末路である。
 影でレベッカが、片端から野郎どもの酒を強いものに換えるという、暗躍があってのことだが、レナータの酒豪ぶりはそれでもたいしたものであった。
 
 まだ飲んでいるレベッカたちを置いて、シグルトは少し風に当たるために外に出た。
 
 冷たい冬の風は身を切るような痛みを感じさせたが、今のシグルトにはあまり堪えない。
 
「…ここにおったのか」
 
 そう後ろから声をかけたのはブレッゼンである。
 
「…ああ。
 
 少し冷たいが、酔いには程好い」
 
 そう応えたシグルトの瞳は、淡い緑の光を放っている。
 
「…ダナの加護か。
 
 お前はいつも儂を驚かせるな」
 
 ブレッゼンが近くの岩に腰を下ろして呟く。
 
「…知っているのか?」
 
 シグルトの言葉に、ブレッゼンは少しむっとしたように言う。
 
「…儂は鍛冶屋だぞ。
 
 ダナは今でこそ信仰が薄れたとはいえ、かつては鍛冶の守護神として祀(まつ)られていた女神。
 それに鐡の精霊は儂らの友よ。
 彼らの息吹が聞こえぬ奴は、良い鍛冶師にはなれん」
 
 シグルトが目を閉じて頷く。
 
「ここは心地よいとダナが喜んでいる。
 
 ブレッゼンの子供たち(武具のこと)のことも讃えていたよ。
 どうやらもう眠ってしまったようだがな」
 
 シグルトがもう一度開いた瞳は元の青黒いものに戻っていた。
 
「…どうやらお前の中のダナは、力を随分失っている様子だな。
 
 その精霊の源流は主神級の力ある女神、ダヌだった。
 
 時代を経るごとに沢山の地方で祀られ、司る者が増え、多くの司るものを持ち、その性格ごとに神格として分離して祀られた。
 
 だが、聖北の到来でその信仰は駆逐された。
 その後に精霊としてその存在を世界に止めながら、あまりに力あるゆえに、自らの存在を維持する力が足りず眠ったという。
 
 ダナはそうして残ったわずかな数の、強大な力の化身、分霊の1つよ。
 
 儂の信仰する鍛冶の神もまた、聖北の到来で信仰が廃れていったが、その魂は武具に宿って生きておる。
 
 お前に宿る神格は、北方のハーフエルフの姫が大地より救いその身に宿した分霊のようだな。
 かつて、彼の姫君の弓を再生したことがある。
 【紺碧の宝弓】と呼ばれ、風を矢にして放つ宝の弓だ。
 その武勇伝は、心躍るものだったぞ。
 
 ダナの精霊術は堅牢なる守備の力。
 使いこなせれば不死身になれると聞いたことがある。
 
 その貴重な力の欠片。
 
 お前ならおろそかにはすまいが…」
 
 ふうとブレッゼンは白い息を吐いた。
 
「…心無き戦士が多くなった。
 強く正しい姿の戦士が少なくなった。
 
 その精霊は正しき戦士の守護者だった。
 
 この工房を訪れる輩の多くは、下らん虚栄心や見栄のために魔法の武具を求める。
 武具は振るわれるべきだが、それを飾り物にする愚物どもよ。
 
 主に使われ、主を守り、主を助ける…
 それが武具の悦びなのだ。
 だが、そんなことも分からん愚か者ばかりだった。
 
 …お前は違ったな、シグルト。
 
 【アロンダイト】に触れれば分かる。
 真の戦士は黙して鋼を振るう。
 
 武具を使い、武具に委ね、武具を愛すること。
 それでいいのだ。
 
 久しぶりに良い剣が打てた。
 礼を言うぞ…」
 
 最初あったころのブレッゼンは、どこか退廃的な隠者のような雰囲気があった。
 しかし今のブレッゼンはとても穏やかで優しい目をしていた。
 
「お前を見ていると、ある男を思い出す。
 かつて共に肩を並べ歩んだ戦友をだ。
 
 クハハっ、昔の奴は男を語るには可憐過ぎる容貌だったがな。
 
 あの頃は楽しかった。
 
 命を失いそうなこともあったが、儂が一番輝き、そして充実していた時だ。
 
 魔剣を打つ業(わざ)を得てから、下らん奴ばかりが儂の元にやってきたが、今思えばあ奴のような男もおった。
 
 思い出せたこの昂ぶり。
 また良い武具が鍛えられるだろう。
 
 お前のその鋼のような心と姿、変わらんでほしいものよ」
 
 そう言ってブレッゼンは立ち上がった。
 そして、手に持った何かをシグルトに突き出す。
 
「これは…」
 
 それは片手に持てる鎚だった。
 
「ミョルニール、【トールハンマー】か…」
 
 シグルトがそれを掴む。
 ズシリとした重さ。
 
「儂が冒険者だった頃愛用していた武器だ。
 
 お前たちにやろう。
 今の儂では使ってやれん。
 
 お前やあの司祭あたりならば使いこなせるだろう。
 
 大切にしてやってくれ」
 
 シグルトは黙ってブレッゼンを見つめ、頷いた。
 
「…好い夜だ。
 
 もう少し飲もう。
 行くぞ、シグルト」
 
 そう言ってすでに踵を返した銘工の背を、シグルトは微笑して見つめ、後を追った。

 
 
 久しぶりの更新は佐和多里さんの新作『鉱石集め』と『魔剣工房』です。
 根性で掘りましたよ鉱石。
 その数実に27個。
 凝り性です私。
 
 このリプレイでは私のシナリオ『風屋』のスキルも試運転で使っています。
 バグの無いやつオンリーですが。
 
 一応ブレッゼンとの交流は今回で一段落ですが、また彼には武具を作ってもらう予定です。
 次は【ミストルティン】です。
 渋い武具が好きです、私。
 
 資金と一緒に大量のアイテムが転がり込みました。
 ただ、“風を纏う者”の性格上【ソウルイーター】は貰わなかったことにして何か売った代金分のアイテムを買おうと思っています。
 
 今回の複雑な経路は以下の通り…
 
 
・『魔剣工房』(Djinnさん)
 【紅曜石】売却+500
 【黒曜石】+1000
 【バロの手】入手
 
・『風たちがもたらすもの』(拙作)
 【消毒の水薬】購入-200
 【水精の一雫】購入-1400
 
・『鉱石集め』(佐和多里さん)
 【つるはし】購入-300
 滞在費-400(四泊五日)
 
 このシナリオプレイ中【消毒の水薬】完全消費
 
 【鉄鉱石】28個
 【水晶】12個
 【黄色い原石】13個
 【赤い原石】11個
 【青い原石】10個
 
 【金鉱石】3個
 【紅曜石】5個
 【黒曜石】4個
 【緑曜石】4個
 【碧曜石】11個(鉱石はすべて最深部)
 
 【炎水晶】
 【星水晶】
 【森水晶】まで入手
 
・『魔剣工房』
 【金鉱石】2個売却
 【紅曜石】2個売却
 【黒曜石】2個売却
 【緑曜石】2個売却
 【碧曜石】2個売却
 
 合計+8000SP
 
 【早足の靴】入手(ラムーナ)
 【スワローナイフ】入手(レベッカ)
 【魔崑石】入手
 
 アロンダイト魔剣化依頼(【魔崑石】消費)
 
・『風たちがもたらすもの』
 【剣叫ぶ雷霆】-1400SP(シグルト)
 【鋼鐡の淑女】-3000SP(シグルト)
 …シグルトは自分でこの精霊を目覚めさせたとしその分の3000SPは滞在費などに消えたことになりました。
 
 【戦士の勲】-1400SP(ラムーナ)
 【交霊の異能】-3000SP(レナータ)まで購入
 (ここで『風屋』販売表示バグ発覚。1400SPではありません。単に値札が間違ってるだけのバグなので、Ver0.99J以降で修正します)
 
・『古城の老兵』(SIGさん)
 【ロングソード】(シグルト)
 …しばらくアロンダイトが使えないことを考慮して手に入れた予備の剣。
 
・『魔剣工房』
 デッドマンズ・マウス編
 
 【碧曜石】
 【金鉱石】
 【風精王召喚】
 【活力の霊薬】まで入手
 
・『希望の都フォーチュン=ベル』(Djinnさん)
 館の魔物退治
 
 報酬+700SP
 
 
・『魔剣工房』
 最終イベント
 【トールハンマー】入手

 【金鉱石】2個売却
 【紅曜石】2個売却
 【黒曜石2】個売却
 【緑曜石】2個売却
 【碧曜石】2個売却
 
 合計+8000SP
 
 【ソウルイーター】(お金にする予定)
 【魔崑石】
 【バロの指輪】
 
 【カドゥケウス】購入(-2000SP)
 【真なる銀の鎧】購入(-1500SP)

◇現在の所持金 6001SP◇(チ~ン♪) 
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この記事のコメント

こんにちは、まるこです。
おおっ! 楽しいですよね、鉱石集め。
交換アイテムのためにすごくがんばりました。
毒が厄介なのはごもっとも;
毒って、レベルがあっても、防御など関係なく体力奪っていきますもんね。
やっぱり、毒は自分が使うほうがいいです。

ミストルティンは、最初にぢんちゃんに薦められた魔剣で、あちきもすごく気に入ってるんですよ。
戦闘補助に特化していて、フェイントや追撃効果があって面白いんです。舞踏スキルの武器版ミニ効果!
札絵も霧の森みたいできれいですし。

それにしても、シグルドはかっこいいですね~
主人公食った話って多いですが、シグルドは主人公らしくってとってもイイです!
是非いずれは神殺しの剣を覚えてほしいところです~
レナータが酒豪には笑いました(ノ´∀`*)
うちのぱーちーにはオロフと一緒に入れてるんですけど、どっちが(お酒)強いんだろうなーと。
それではまた♪
2006-10-07 Sat 18:01 | URL | マルコキエル #SFo5/nok[ 編集]
 もうすぐおはようございます。
 いらっしゃいませ、マルコキエルさん。
 
 鉱山の毒はハードですね。
 私、レナータの解毒とアイテムの解毒で何とか。
 でもリプレイで無限に儲けられるシナリオはあんまり使えないので、期日を区切ってやりました。
 泣きそうなシビアな状況になりましたが。
 
 【ミストルティン】は盗賊の戦力UPにはもってこいです。
 たいてい召喚スペース余るので。
 
 シグルトが【神殺しの剣】憶えると多分、完璧に人間止めちゃいます。
 あれは危険なスキルです。
 なんというか、カードワースではミサイルみたいなものです。
 
 レナータ、お酒に強いですが、水の精霊術師は酒豪が多いという個人設定です。
 実際精神力強いので耐えるの得意そうですし。
 
 ジハードの方も何れプレイします。
 オロフの指輪が欲しいので。
 たぶん、ドワーフの酒豪ぶりは図体がでかい分強力かと。
 
 また遊びに来てくださいね~
2006-10-08 Sun 03:55 | URL | Y2つ #TIXpuh1.[ 編集]
シグルドにダナが宿りましたか。
蟲も将来的に使う事もあるのでしょうか。
冒険者するには少々人格者すぎやしないかとちょっと心配だったりします。
(ウチのキャラクターがひねくれているだけかも知れませんが…)

鉱石掘りですか…神龍の御力でもって強行採掘などしていませんよ。…してないですってば。

>ドワーフの酒豪ぶりは図体がでかい分強力かと。
ええと、ドワーフって身長的には人間の子供かそれ以下だと思っていたんですが、Martさん、Y2つさんのドワーフの体格ってどうなっていますか?
頭の良い酒樽、と呼ばれるほどにドワーフと酒とは切れないものだとも思っていますけれど。
2006-10-24 Tue 07:08 | URL | 愛・舞・魅 #mQop/nM.[ 編集]
 シグルトは一時的に宿主になってやってるつもりです。
 蟲は多分使いません。
 存在は知っているんですけどね。
 
 “風を纏う者”、誰しも誠実かお人好しを持っています。
 正義を語る連中ではありませんが、善を尊ぶ奴らかと。
 ひねくれものはロマンのみですが、彼も謙虚で誠実ですからねぇ。
 
 でも、レベッカの姐さんがしっかり腹黒くやってますので、大丈夫です。
 
 付帯能力+発掘ですか。
 本当にやったら、ばちが当たりそう…(一応神様の力ですから)
 
>ドワーフ
 私の表現が悪かったですね。
 
 私の考えるドワーフは背は低いですが、並の人間より筋肉質で寸胴で横幅があって体重がある、というイメージです。
 だからタフで筋力がある感じです。
 その図太い胴に消えるお酒や食料の量はものすごいかと。
2006-10-24 Tue 17:14 | URL | Y2つ #TIXpuh1.[ 編集]
 こんばんは。なんか久しぶりのコメントですね。
 こちらではご無沙汰しています。表立ってコメントしていませんがリプレイ楽しんで拝見しています。

>マルコキエルさん
 はじめまして。
 私の中ではレナータはお酒飲みませんね。体内の水気を純粋に保つ必要があるんじゃないかなっていうのが理由のひとつです。血液にアルコールが混じらない方がいいかな、と。お酒飲んで霊気を蓄える人もいるかもしれませんけれどね。

>愛・舞・魅さん
 お久しぶりです。ドワーフはその名の如く背は低いと思います。子どもよりは少し高いぐらい。といっても最近の子どもは背が高いですが(笑)。私もY2つさんと同意見で人間より筋肉多めで横幅があると思っています。内蔵が丈夫で、特に胃が大きくて強いイメージです。お酒は体格より体質ですからドワーフは種族的に強い傾向にあるんだろうな、って思っています。こんな感じでいいんでしょうか。

 それではY2つさん、お邪魔しました。
 失礼しますね。
2006-10-24 Tue 23:45 | URL | mart #WkyY9OVg[ 編集]

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